説明

無段変速伝動機構

【課題】径方向外方へ附勢された可動歯を中心ボス部に対し径方向位置決めするに際し、別部品の追加無しに、既存部品の有効利用によって当該位置決めを実現可能にする。
【解決手段】可動歯9はバネ手段12により径方向外方へ附勢され、中心ボス部8の外周面から突出する可動歯9の歯部9bに無終端チェーンリンク1の可動歯噛合溝1aが噛み合ってスリップを防止され得る。可動歯9の径方向外方への突出限界位置を規定するに当たっては、可動歯基部9aの両端9c,9dをプーリ中心ボス部8の外周面よりも径方向内方に位置させ、これら可動歯基部9aの両端9c,9dがシーブ3,4の内周面3b,4aに対し径方向外方へ衝接することにより、可動歯9の径方向限界位置を規定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無終端チェーンリンクと、この無終端チェーンリンクを無段変速可能に巻き掛けしたプーリとから成り、該プーリの中心ボス部外周にバネ手段で径方向外方へ附勢して径方向進退可能に設けた可動歯と、無終端チェーンリンクに設けた可動歯噛合溝との噛み合いにより、該噛み合いが可能な伝動比でのスリップ防止を可能にした無段変速伝動機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の無段変速伝動機構としてはVベルト式無段変速機が良く知られており、無終端チェーンリンクを、プーリの固定シーブおよび可動シーブ間に画成されたV溝に掛け渡して動力伝達可能となす一方、
この動力伝達中に、可動シーブをプーリ軸線方向へ変位させてプーリV溝の溝幅を変更することにより、プーリに対する無終端チェーンリンクの巻き掛け径を連続的に変化させ、これにより無段変速が可能となるよう構成する。
【0003】
他方、無段変速伝動機構のスリップを防止し、これにより伝動効率を高める技術として従来、例えば特許文献1に記載のごとく、プーリV溝の底面を画成するプーリの中心ボス部外周面に歯を突設し、
無終端チェーンリンクの内周に形成した歯溝がプーリ中心ボス部外周面の歯と噛み合う伝動比である間、プーリおよび無終端チェーンリンク間のスリップを防止して無段変速伝動機構の伝動効率を高める技術が提案されている。
【0004】
他方で特許文献1には、プーリ中心ボス部の外周面に設ける歯を、バネ手段で径方向外方へ附勢して径方向進退可能に設けた可動歯となし、この可動歯が、無終端チェーンリンクに設けた可動歯噛合溝と噛み合った伝動比でのスリップ防止を実現可能にした技術も提案されている。
【0005】
この提案技術によれば上記の可動歯が、無終端チェーンリンクの内周歯溝と噛み合い損なった場合、無終端チェーンリンクの内周によりバネ手段のバネ力に抗し径方向内方へ後退され得ることから、
プーリ中心ボス部外周の歯が無終端チェーンリンクとの干渉により、この無終端チェーンリンクを損傷させるようなことがなく、耐久性の点で有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−014269号公報(図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のごとく可動歯をプーリ中心ボス部の外周にバネ手段で径方向外方へ附勢して径方向進退可能に設ける場合、プーリ中心ボス部に対する可動歯の径方向外方への限界位置を規定する必要がある。
【0008】
この目的のため上記した先の提案技術にあっては、プーリ中心ボス部に別部品の可動歯ガイドを追加して設け、この可動歯ガイドに対し可動歯を径方向外方へ弾支して、可動歯の径方向限界位置を規定していた。
【0009】
しかし、可動歯ガイドのような別部品を追加するのでは、部品点数の増大によりコスト高になるだけでなく、追加部品の組み付け工数も増え、この点でもコスト高になるという問題を生ずる。
【0010】
更に、当該追加する可動歯ガイドの組み付けに際しては、プーリ中心ボス部の外周に配置した多数の可動歯を上記のバネ手段の弾力に抗し、プーリ中心ボス部の外周面よりも径方向内方へ押し込んだ状態で当該可動歯ガイドの組み付けを行う必要があり、可動歯ガイドの組み付け作業性が頗る悪くて、上記のコスト高が助長されるという問題を避けられない。
【0011】
本発明は、可動歯ガイドのような追加部品に頼ることなく、既存部品の有効利用により可動歯の径方向限界位置を規定し得るようにして、上記の問題を解消可能にした無段変速伝動機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的のため、本発明による無段変速伝動機構は、以下のごとくにこれを構成する。
先ず、本発明の要旨構成の基礎前提となる無段変速伝動機構を説明するに、これは、無終端チェーンリンクと、この無終端チェーンリンクを巻き掛けしたプーリとから成る。
そして、上記無終端チェーンリンクを挟圧する上記プーリの軸線方向対向シーブのうち、一方の固定シーブをプーリ中心ボス部に対し固定し、他方の可動シーブを該プーリ中心ボス部に対し軸線方向へ変位させることにより無段変速可能である。
また、上記プーリ中心ボス部の外周に、バネ手段で径方向外方へ附勢すると共に径方向限界位置に弾支して設けた可動歯と、上記無終端チェーンリンクに設けた可動歯噛合溝との噛み合いにより、該噛み合いが可能な伝動比でのスリップ防止を可能にしたものである。
【0013】
本発明は、このような無段変速伝動機構において、上記可動歯のプーリ軸線方向両端を、上記軸線方向対向シーブの内周部に対し径方向外方へ衝接させて、上記可動歯の径方向限界位置を規定するよう構成した点に特徴づけられる。
【発明の効果】
【0014】
かかる本発明の無段変速伝動機構にあっては、可動歯のプーリ軸線方向両端を軸線方向対向シーブの内周部に対し径方向外方へ衝接させることにより、可動歯の径方向限界位置を規定するよう構成したため、
別部品の追加なしに可動歯の径方向限界位置を規定することとなり、部品点数の増大に伴うコスト高の問題を回避し得ると共に、追加部品の組み付け工数が増えることによるコスト高の問題を回避することができる。
【0015】
とりわけ別部品の追加は、当該追加部品の組み付けが、可動歯をバネ手段の弾力に抗しプーリ中心ボス部の外周面よりも径方向内方へ押し込む作業を必要とし、作業性の頗る悪いものであることに起因して、上記のコスト高が更に助長される問題を生ずるが、
本発明によれば、別部品の追加なしに、既存部品の有効利用により、可動歯の径方向限界位置を規定するため、コスト高が更に助長されるという上記の問題を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例になる無段変速伝動機構の無終端チェーンリンクとセカンダリプーリとの巻き掛け伝動部を示す縦断側面図で、 (a)は、最ハイ変速比選択状態である時の巻き掛け伝動部を示す縦断側面図、 (b)は、最ロー変速比選択状態である時の巻き掛け伝動部を示す縦断側面図である。
【図2】図1(a)に示した巻き掛け伝動部の詳細拡大断面図である。
【図3】図1(b)に示した巻き掛け伝動部の詳細拡大断面図である。
【図4】図1〜3に示した無段変速伝動機構におけるセカンダリプーリの中心ボス部を、固定シーブ組み付け直前の状態で示す分解斜視図である。
【図5】図1〜3に示した無段変速伝動機構におけるセカンダリプーリの中心ボス部を、可動シーブ組み付け直前の状態で示す分解斜視図である。
【図6】図1〜3に示した無段変速伝動機構におけるセカンダリプーリの中心ボス部を、可動シーブが除去された状態で示す分解斜視図である。
【図7】図1〜3に示した無段変速伝動機構に用いるバネ手段の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
<実施例の構成>
図1〜7は、本発明の一実施例になる無段変速伝動機構を示し、この無段変速伝動機構は図1(a),(b)における無終端チェーンリンク1を、同じく図1(a),(b)における従動側のセカンダリプーリ2と、図示せざる同様な駆動側のプライマリプーリとの間に掛け渡して成るもので、
図1(a),(b)に示す無終端チェーンリンク1およびセカンダリプーリ2間の巻き掛け伝動部を特に、後述のごとくに構成した点に特徴づけられる。
【0018】
プライマリプーリ(図示せず)およびセカンダリプーリ2はそれぞれ同様なもので、セカンダリプーリ2につき図1(a),(b)を参照しつつ説明すると、プーリ回転軸線方向に正対する対向シーブ3,4を具え、これら対向シーブ3,4間にプーリV溝を画成したV溝プーリとする。
無終端チェーンリンク1は、走行方向を横切る断面形状が当該プーリV溝の対向面に面接触するV字状のもので、この面接触下に対向シーブ3,4間に挟圧され、プライマリプーリ(図示せず)およびセカンダリプーリ2間で動力伝達を行うことができる。
【0019】
これらプライマリプーリ(図示せず)およびセカンダリプーリ2を成す軸線方向対向シーブ3,4のうち、一方のシーブ3は、プーリ軸5に固着した固定シーブとし、他方のシーブ4は、プーリ軸5にボールスプライン6を介して軸線方向スライド可能に回転係合させた可動シーブとする。
【0020】
プライマリプーリ(図示せず)およびセカンダリプーリ2は、固定シーブ3および可動シーブ4が軸線方向反対側に位置するよう配置する。
そして、シリンダ室7内における油圧の加減により、プライマリプーリ(図示せず)の可動シーブを固定シーブに対し接近させてプーリV溝幅を狭くすると同時に、セカンダリプーリ2の可動シーブ4を図1(a)のごとく固定シーブ3から遠ざけてプーリV溝幅を広くするにつれ、
無終端チェーンリンク1は、プライマリプーリ(図示せず)に対する巻き掛け径を増大されると共に、セカンダリプーリ2に対する巻き掛け径を図1(a)のごとく小さくされ、無段変速伝動機構は図1(a)に示す最ハイ変速比選択状態に向け無段変速下にアップシフト可能である。
【0021】
逆に、プライマリプーリ(図示せず)の可動シーブを固定シーブから遠ざけてプーリV溝幅を広くすると同時に、セカンダリプーリ2の可動シーブ4を図1(b)のごとく固定シーブ3に対し接近させてプーリV溝幅を狭くするにつれ、
無終端チェーンリンク1は、プライマリプーリ(図示せず)に対する巻き掛け径を小さくされると共に、セカンダリプーリ2に対する巻き掛け径を図1(b)のごとく大きくされ、無段変速伝動機構は図1(b)に示す最ロー変速比選択状態に向け無段変速下にダウンシフト可能である。
【0022】
上記した図1(a)の最ハイ変速比選択状態でセカンダリプーリ2に対する無終端チェーンリンク1のスリップを防止して無段変速伝動機構の伝動効率を向上させるため、
図1(a)のチェーンリンク巻き掛け伝動部を拡大して示す図2に明示するごとく、セカンダリプーリ2の中心ボス部8に、その外周面から突出するよう複数個の可動歯9を円周方向等間隔に配して設ける。
【0023】
セカンダリプーリ2のプーリ中心ボス部8は、図1(b)のチェーンリンク巻き掛け伝動部を拡大して示す図3、および図2に明示するごとく、シーブ3,4間におけるプーリ軸5の部分を拡径させて形成する。
可動歯9はそれぞれ、その基部9aが、図1(a)および図2に示した最ハイ変速比選択状態のシーブ3,4間を橋絡するようプーリ軸線方向へ延在させ、この基部9aを、プーリ中心ボス部8の外周面に設けた可動歯ガイド溝11内に径方向進退可能に嵌合させる。
【0024】
また可動歯9は図2〜6に示すごとく、径方向外側に張り出した歯部9bを有し、これら歯部9bを図1(a)および図2に示す最ハイ変速比選択状態のシーブ3,4間において、プーリ中心ボス部8の外周面から径方向外方へ突出させる。
【0025】
上記の可動歯9は、図7に示すようなバネ手段12により、図2〜5に示すごとく径方向外方へ附勢し、径方向外方への進出限界位置(径方向限界位置)を規定するに当たっては、
可動歯基部9aの両端9c,9dをプーリ中心ボス部8の外周面よりも径方向内方に位置させ、これら可動歯基部9aの両端9c,9dがシーブ3,4の内周部に対し径方向外方へ衝接することにより、可動歯9の径方向限界位置を規定する。
可動歯9は、かかる径方向限界位置において、歯部9bがプーリ中心ボス部8の外周面から径方向外方へ突出するものとする。
【0026】
バネ手段12は図2〜4に示すごとく3個一組とし、これらバネ手段12を可動歯9の長手方向、つまりプーリ中心ボス部8の軸線方向へ分散配置する。
この分散配置に当たり、好ましくはバネ手段12をできるだけ可動歯9の長手方向等分配置となるよう分散させるのが良い。
【0027】
各バネ手段12は全て、図7に示すごとき同様なものとし、線状体のU字状エレメント13と、同じく線状体の連結エレメント14とを交互に同一円周上に配置して一体ユニットとなす。
U字状エレメント13は、プーリ中心ボス部8の外周条溝8a(図2参照)と各可動歯基部9aとの間において、該プーリ中心ボス部8の母線方向へ延在するよう介在させる。
従ってU字状エレメント13は可動歯9と同数だけ存在し、これらU字状エレメント13を可動歯9に着座させ、連結エレメント14をプーリ中心ボス部8の外周条溝8aに着座させる。
かくてバネ手段12は、線状エレメント13,14の交互組み合わせに成る捩りバネ型式のバネ手段として、各可動歯9を径方向外方へ附勢することができる。
【0028】
可動歯9の径方向限界位置(径方向外方への進出限界位置)を規定するため、可動歯基部9aの両端9c,9dをシーブ3,4の内周部に対し径方向外方へ衝接させる構造を以下に説明する。
シーブ3は、固定シーブであっても、図2,3に示すごとくプーリ軸5と別体に構成し、該固定シーブ3の内周部に図2〜4,6に示すごとく環状切り欠き3aを形成して、可動歯基部9aの端部9cが径方向外方へ衝接するための内周面3bを設定し、かように成形したシーブ3を図2,3に示すごとくプーリ軸5に固着して固定シーブとなす。
【0029】
一方で、可動シーブ4に近い側における可動歯基部9aの端部9dは、図2,3,5に示すごとくプーリ中心ボス部8の外周に嵌合する可動シーブ4の内周面4aに対し径方向外方へ衝接させる。
【0030】
無終端チェーンリンク1の内周縁を画成する各リンク板の内側縁には、セカンダリプーリ2に対する巻き掛け領域において、可動歯9の歯部9bが図1(a)および図2のごとく噛み合うための可動歯噛合溝1a(図2参照)を設け、
可動歯9(歯部9b)と可動歯噛合溝1aとの噛み合いにより、図1(a)および図2の最ハイ変速比選択状態でセカンダリプーリ2に対する無終端チェーンリンク1のスリップを防止し、無段変速伝動機構の伝動効率を向上させることができる。
【0031】
しかして可動歯9(歯部9b)は、可動歯噛合溝1aと整列せずこれとの噛み合いが不能である場合、無終端チェーンリンク1の内周縁によりバネ手段12のバネ力に抗しプーリ中心ボス部8内に、図1(b)および図3の位置へと押し込まれ得て、無終端チェーンリンク1が可動歯9(歯部9b)との干渉により損傷されるのを防止することができる。
【0032】
<実施例の作用>
上記した無段変速伝動機構はその伝動中、セカンダリプーリ2の可動シーブ4を図1(a)のごとく固定シーブ3から遠ざけてプーリV溝幅を広くすると、無終端チェーンリンク1がセカンダリプーリ2に対する巻き掛け径を図1(a)のごとく小さくされ、最ハイ変速比選択状態に無段変速される。
【0033】
このとき、無終端チェーンリンク1の内周縁における可動歯噛合溝1a(図2参照)が、図1(a)および図2のごとく、可動歯9の歯部9bに噛み合うようになり、セカンダリプーリ2に対する無終端チェーンリンク1のスリップを防止し得て、最ハイ変速比選択状態での伝動効率を向上させることができる。
【0034】
ここで、無終端チェーンリンク1の可動歯噛合溝1a(図2参照)と、可動歯9(歯部9b)とが不整列より噛み合い損なうと、可動歯9(歯部9b)が無終端チェーンリンク1の内周縁によりバネ手段12のバネ力に抗しプーリ中心ボス部8内に、図1(b)および図3の位置へと押し込まれるため、無終端チェーンリンク1が可動歯9(歯部9b)との干渉により損傷されるのを防止することができる。
【0035】
セカンダリプーリ2の可動シーブ4を図1(b)および図3のごとく固定シーブ3に対し接近させてプーリV溝幅を狭くすると、
無終端チェーンリンク1は、セカンダリプーリ2に対する巻き掛け径を図1(b)のごとく大きくされ、無段変速伝動機構は図1(b) および図3に示す最ロー変速比選択状態に無段変速される。
【0036】
このとき図1(b) および図3に示すごとく、可動シーブ4の内周面4aが可動歯9の歯部9bに乗り上げて、可動歯9(歯部9b)をバネ手段12のバネ力に抗しプーリ中心ボス部8内に押し込むため、
可動シーブ4は可動歯9の存在にもかかわらず、固定シーブ3に接近してプーリV溝幅を狭くする上記のダウンシフトを行うことができる。
【0037】
<実施例の効果>
ところで、バネ手段12により径方向外方へ附勢されている可動歯9の径方向限界位置を規定するに際し、本実施例においては可動歯9(基部9a)の両端9c,9dをシーブ3,4の内周部3b,4aに対し径方向外方へ衝接させることにより、つまり既存部品の有効利用により当該可動歯9の径方向限界位置を規定するため、
別部品の追加なしに可動歯9の径方向限界位置を規定することができ、部品点数の増大に伴うコスト高の問題を回避し得ると共に、追加部品の組み付け工数が増えることによるコスト高の問題を回避することができる。
【0038】
とりわけ別部品の追加は、当該追加部品の組み付けが、可動歯9をバネ手段12の弾力に抗しプーリ中心ボス部8の外周面よりも径方向内方へ押し込む作業を必要とし、作業性の頗る悪いものであることから、上記のコスト高が更に助長される問題を生ずるが、
本実施例によれば、別部品の追加なしに、既存部品の有効利用により、可動歯9の径方向限界位置を規定するため、コスト高が更に助長されるという問題を回避することができる。
【0039】
また本実施例においては、可動歯9(基部9a)の両端9c,9dをシーブ3,4の内周部3b,4aに対し径方向外方へ衝接させるに際し、
可動歯9(基部9a)の両端9c,9dを、プーリ中心ボス部8の外周面よりも径方向内方に位置させ、
可動シーブ4に近い可動歯9(基部9a)の一端9dを、プーリ中心ボス部8に嵌合する可動シーブ4の内周面4aに対し径方向外方へ衝接させ、
固定シーブ3に近い可動歯9(基部9a)の他端9cを、固定シーブ3の内周部に形成した環状切り欠き3aの内周面3bに対し径方向外方へ衝接させたため、
固定シーブ3の内周部に環状切り欠き3aを形成するのみで、他の部品に対する変更は全く無しに、安価に上記の効果を達成することができる。
【0040】
更に本実施例においては、環状切り欠き3aが形成されている固定シーブ3を、プーリ中心ボス部8(プーリ軸5)と別体に構成し、環状切り欠き3aの形成後プーリ中心ボス部8(プーリ軸5)に固着するため、
固定シーブ3に環状切り欠き3aを形成すると雖も、その加工が、プーリ中心ボス部8(プーリ軸5)の存在によって困難になるということもない。
【符号の説明】
【0041】
1 無終端チェーンリンク
1a 可動歯噛合溝1a
2 セカンダリプーリ
3 固定シーブ
3a 環状切り欠き
3b 環状切り欠き内周面
4 可動シーブ
4a 可動シーブ内周面
5 プーリ軸
6 ボールスプライン
7 油圧室
8 プーリ中心ボス部
9 可動歯
9a 基部
9b 歯部
11 可動歯ガイド溝
12 バネ手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無終端チェーンリンクと、この無終端チェーンリンクを巻き掛けしたプーリとから成り、
前記無終端チェーンリンクを挟圧する前記プーリの軸線方向対向シーブのうち、一方の固定シーブをプーリ中心ボス部に対し固定し、他方の可動シーブを該プーリ中心ボス部に対し軸線方向へ変位させることにより無段変速可能であり、
前記プーリ中心ボス部の外周に、バネ手段で径方向外方へ附勢すると共に径方向限界位置に弾支して設けた可動歯と、前記無終端チェーンリンクに設けた可動歯噛合溝との噛み合いにより、該噛み合いが可能な伝動比でのスリップ防止を可能にした無段変速伝動機構において、
前記可動歯のプーリ軸線方向両端を、前記軸線方向対向シーブの内周部に対し径方向外方へ衝接させて、前記可動歯の径方向限界位置を規定するよう構成したことを特徴とする無段変速伝動機構。
【請求項2】
請求項1に記載された無段変速伝動機構において、
前記可動歯のプーリ軸線方向両端を、前記プーリ中心ボス部の外周面よりも径方向内方に位置させ、
前記可動シーブに近い前記可動歯のプーリ軸線方向一端を、前記プーリ中心ボス部に嵌合する可動シーブの内周面に対し径方向外方へ衝接させ、
前記固定シーブに近い前記可動歯のプーリ軸線方向他端を、該固定シーブの内周部に形成した環状切り欠きの内周面に対し径方向外方へ衝接させたものであることを特徴とする無段変速伝動機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載された無段変速伝動機構において、
前記環状切り欠きが形成されている前記固定シーブを、前記プーリ中心ボス部と別体に構成して、該プーリ中心ボス部の外周に固着したものであることを特徴とする無段変速伝動機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate