説明

無水酢酸と酢酸エステルの同時製造

無水酢酸と酢酸エステルを同時製造する方法は、高温で酢酸を熱分解して、ケテン、酢酸および水を含む気相流である第一ケテン流を製造する工程;その第一ケテン流を冷却して、そこから酢酸と水を凝縮させ、それにより(i)弱酸水性流および(ii)ケテン供給流を製造する工程;そのケテン供給流を、無水酢酸反応器に供給し、そこで、ケテンを酢酸と反応させて無水酢酸を製造する工程;および工程(c)と同時に、弱酸水性流をエステル化反応器に供給し、そこで、その弱酸流中の酢酸を有機アルコールと反応させて、酢酸エステルを製造する工程を含む。好ましくは、有機アルコールは、(i)酢酸エステルを形成し、そのエステルおよび任意にアルコールが水を有する共沸混合物を提供し、そして(ii)その場合、反応混合物から酢酸エステルを容易に共沸分離させるために、その共沸混合物が、アルコールと酢酸との反応によって生成される水の量に比べてより多い水含量を有することを特徴とする有機アルコールから選択する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般的に、無水酢酸と酢酸エステルの同時製造に関する。更に詳しくは、弱酸流を発生させ、エステルを製造するためにその弱酸流を利用するケテン法により無水酢酸を製造する方法を本発明にしたがって提供する。
【0002】
発明の背景
ケテン法による無水酢酸の製造は公知である。その方法は:例えばリン酸トリエチル脱水触媒を使用して高温で酢酸を熱分解してケテン(I)を製造し、次いで、過剰な酢酸と反応させて無水酢酸(II)を製造することを含む:
【0003】
【化1】

【0004】
ケテン法の第一工程は、低圧および高温で、典型的には700℃を超える温度で行われる。生成物流中の触媒は、アンモニアで中和することができる。ケテン法は、広く使用されているが;特に工程Iで発生する水を除去する必要があり、また、酢酸を取り出して回収する必要もあるので、大きな投資を要する。換言すれば、弱酸の回収は、所要の投資が著しく増えることになり、更に運転のエネルギーコストにも悪影響がある。無水酢酸およびケテン製造の様々な面に関する代表的な文献を、以下で少し検討する。
【0005】
1984年6月19日にHoechst AGに与えられた米国特許第U.S4,455,439号には、減圧下での酢酸の熱接触分解によるケテンの調製法が記載されている。そこでは、熱分解ガスは、0℃〜−10℃に冷却され、そして、水、未反応酢酸および無水酢酸は凝縮される。
【0006】
1988年4月12日にDaicel Chemical Industriesに与えられた米国特許第U.S.4,737,318号には、無水酢酸および酢酸を含む水溶液(酢酸を熱分解し、そして形成されたガスを冷却することによって、ケテン製造で形成された分解ガスを冷却する工程で得られた凝縮物を含む)から無水酢酸を回収方法が記載されている。
【0007】
1993年11月23日にEastman Kodakに与えられた米国特許第U.S.5,264,087号には、ケテンと酢酸との反応によって製造された無水酢酸を精製するための連続法が記載されている。その方法は、減圧蒸留工程を含み、高純度の無水酢酸が製造される。
【0008】
Nishiokaらによる米国特許出願第U.S.2001/0029309号には、蒸留した無水酢酸をオゾンで処理して、ジケテン含量を低下させる更なる精製工程が記載されている。
【0009】
Nihon Gosei Companyに与えられた日本国特許第41021981号に記載されている精製された無水酢酸中のジケテンを減らすための別の方法は、ジケテン重合触媒の存在下で、例えばアルカリ金属水酸化物アルコラート、酢酸ナトリウムまたは有機塩基の存在下で、反応液を加熱することから成る。
【0010】
様々なアルカノールから酢酸のアルキルエステルを製造することも公知である。ここでも、水分除去は、投資および運転経費の重要な成分である。いくつかの代表的な特許を、以下で検討する。
【0011】
1984年11月6日にHoechst AGに与えられた米国特許第U.S.4,481,146号では、蒸留塔において酸触媒の存在下でカルボン酸によってアルコールをエステル化し、そして同じ蒸留塔で、得られたエステル混合物からエチルエステルを連続的に分離する、脂肪族アルコールのエタノール含有混合物からエチルエステルを調製する方法が記載されている。
【0012】
酢酸をアルコールでエステル化するための固体酸触媒を使用する接触蒸留法である酢酸のエステルを製造する方法は、1999年12月7日にIndustrial Technology Research Instituteに与えられた米国特許第U.S.5,998,658号に記載されている。
【0013】
2000年2月22日にBASF AGに与えられた米国特許第U.S.6,028,215号には、アルコールとカルボン酸との混合物を、反応性の従来の内部構造物(internals)を含む分離セクションを有する蒸留塔の中に供給し、不均一触媒の存在下で反応性内部構造物においてアルコールとカルボン酸とを反応させ、それによって発生した反応混合物を、高沸点エステルと、アルコール、水およびエステルを含む低沸点共沸混合物とに蒸留して分離し、そして、その共沸混合物を相分離器で分離することによって、アルコールとカルボン酸からエステルを調製する方法が記載されている。
【0014】
2002年10月1日にSulzer Chemtech AGに与えられた米国特許第U.S.6,458,992号は、触媒活性な分離装置においてエステル化と共に反応生成物の分離が起こる塔を使用して、蒸留と化学反応を組み合わせることによって酢酸をブタノールでエステル化する、酢酸ブチルを合成する方法に関するものである。
【0015】
2004年2月17日にSulzer Chemtech AGに与えられた米国特許第U.S.6,693,213号では、塔中で接触蒸留を使用し、その間に、触媒活性な充填材に関する反応と、反応生成物の精留および分離とが同時に起こる、エチルアルコールによる酢酸のエステル化によって、または、無水酢酸とエチルアルコールとの反応によって、酢酸エチルを合成する方法が記載されている。
【0016】
いずれにしても、精製に必要とされる投資を減らし、且つ収率と運転効率を上げる必要がある。本発明は、統合された製造設備を使用して、無水酢酸と酢酸エステルを同時に製造することによって、これらのニーズを満たす。
【0017】
発明の概要
本発明の方法は、無水物製造と一緒に酢酸水性流を発生させ、そして、酢酸エステルを製造するために弱酸流を使用する。エステル化ユニットに弱酸流を供給する前に水を除去する必要はないので、精製全体に対する投資が減る。更に、特に好ましい場合では、エステル化ユニットに提供される弱酸流中の水は、共沸分離に関して有益な効果を有する。これらの特に好ましい場合とは、酢酸エステル/水共沸混合物が、有機アルコールによるエステル化によって生成される水の化学量論量に比べて高い水含量を有する場合である。下記の詳細な説明から明らかなように、酢酸ブチルは、特に好ましい副生物である。
【0018】
而して:高温で酢酸を熱分解して、ケテン、酢酸および水を含む気相流である第一ケテン流を製造する工程;その第一ケテン流を冷却して、そこから酢酸と水を凝縮させ、それにより(i)弱酸水性流および(ii)ケテン供給流を製造する工程;そのケテン供給流を、無水酢酸反応器に供給し、そこで、ケテンを酢酸と反応させて無水酢酸を製造する工程;および工程(c)と同時に、弱酸水性流をエステル化反応器に供給し、そこで、その弱酸流中の酢酸を有機アルコールと反応させて、酢酸エステルを製造する工程を含む、無水酢酸と酢酸エステルを同時製造する方法を本発明にしたがって提供する。典型的には、有機アルコールは、酢酸エステルを形成し、そのエステルおよび任意にアルコールが共沸混合物に水を提供する有機アルコールから選択され;そして、好ましくは、有機アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールから成る群より選択される。最も好ましい実施態様では、有機アルコールは、(i)酢酸エステルを形成し、そのエステルおよび任意にアルコールが共沸混合物に水を提供し、そして(ii)その場合、その共沸混合物が、アルコールと酢酸との反応によって生成される水含量に比べてより多い水含量を有することを特徴とする有機アルコールから選択される。好ましいアルコールとしては、n−ブタノール、s−ブタノールおよびi−ブタノールが挙げられる。
【0019】
任意には、本発明方法は、更に、エステル化反応器に弱酸流を供給する前に、弱酸流をフラッシュし、それによって、エステル化反応器に気相酢酸および蒸気を供給し、そして同時に副生物を除去する工程も含む。熱分解工程は、(i)反応後にアンモニアで中和されるリン酸触媒または(ii)リン酸アンモニウム触媒によって、触媒することができる。一つの好ましい脱水触媒は、リン酸トリエチルであり、もう一つはリン酸ジアンモニウムである。本発明方法は、フラッシング工程に対して、強酸、例えばリン酸を加えて、弱酸流中に含まれるアンモニウム塩の分解を最小限に抑えることを含むこともできる。
【0020】
一般的には、弱酸水性流は、約10〜約90重量%の酸分を有し;典型的には、弱酸水性流は、約30〜約70重量%の酸分を有し;そして、好ましくは、弱酸水性流は、約40〜約60重量%の酸分を有する。酢酸を熱分解する工程は、一般的には、680℃〜約750℃の温度で行う。一つの実施態様では、ケテンは、アンモニアの存在下で、酢酸と反応させる。
【0021】
一つの好ましい方法は:高温で酢酸を熱分解して、ケテン、酢酸および水を含む気相流である第一ケテン流を製造する工程;その第一ケテン流を冷却して、そこから酢酸と水を凝縮させ、それにより(i)弱酸水性流および(ii)ケテン供給流を製造する工程;
そのケテン供給流を、無水酢酸反応器に供給し、そこで、ケテンを酢酸と反応させて無水酢酸を製造する工程;工程(c)と同時に、弱酸水性流をエステル化反応器に供給し、そこで、エステル化媒体において、弱酸流中の酢酸を有機アルコールと反応させて酢酸エステルを製造する工程、有機アルコールが酢酸エステルを形成する場合、エステルおよび任意にアルコールが共沸混合物に水を提供する;および、エステル化媒体からそのようにして形成された酢酸エステルを共沸分離する工程を含む、無水酢酸と酢酸エステルを同時製造する方法である。
【0022】
別の好ましい方法は:高温で酢酸を熱分解して、ケテン、酢酸および水を含む気相流である第一ケテン流を製造する工程;その第一ケテン流を冷却して、そこから酢酸と水を凝縮させ、それにより(i)弱酸水性流および(ii)ケテン供給流を製造する工程;そのケテン供給流を、無水酢酸反応器に供給し、そこで、ケテンを酢酸と反応させて無水酢酸を製造する工程;および、工程(c)と同時に、弱酸水性流をエステル化反応器に供給し、そこで、エステル化媒体において、弱酸流中の酢酸を有機アルコールと反応させて、酢酸エステルを製造する工程、その場合、有機アルコールは、(i)酢酸エステルを形成し、そのエステルおよび任意にアルコールが共沸混合物に水を提供し、そして(ii)その場合、その共沸混合物が、アルコールと酢酸との反応によって生成される水の量に比べてより多い水含量を有することを特徴とする有機アルコールから選択され;そして、エステル化媒体からそのようにして形成された酢酸エステルを共沸分離する工程を含む、無水酢酸と酢酸エステルを同時製造する方法である。
【0023】
発明の方法は、本発明の方法を例示している概略図である図1によって例示され説明される。
発明の詳細な説明
本発明を、特有の特徴について以下で詳細に説明する。添付の請求の範囲に記載されている本発明の範囲の真の趣旨および範囲から逸脱することのない改良は、当業者には容易に了解されるだろう。
【0024】
既に説明したように、ケテン法による無水酢酸の製造は公知である。その方法は:脱水触媒を使用して高温で酢酸を熱分解してケテンを製造し(I)、次いで、過剰な酢酸と反応させて無水酢酸を製造する(II)ことを含む:
【0025】
【化2】

【0026】
工程Iも、反応の化学量論から明らかなようにケテン1モルあたり1モルの水を生成する。反応熱は、約147のkJ/molである。ケテンの最適収率は、約680〜750℃の温度を必要とする。低圧の場合、収率は増加するが、プロセス効率は低下する。第一工程で形成される水のための脱水触媒として、通常は、リン酸トリエチルを使用する。リン酸トリエチルは、アンモニアによって流出ガス中で中和される。液体リングポンプを使用するケテンの圧縮は、実質的に、無水物の形成を向上させる。ニッケル無含有合金、例えばフェロクロム合金、クロム・アルミニウム鋼が、酢酸熱分解管には必要である。その理由は、ニッケルが、煤煙およびコークスの形成を促進し、また、一酸化炭素と反応して高毒性の金属カルボニルを生成するからである。コークスの形成により、重大な効率損失が生じる。従来の運転条件では、85〜88%の転化率および90〜95モル%のケトン選択率である。
【0027】
リン酸トリエチルの代わりに、脱水触媒としてリン酸ジアンモニウムを使用してもよい。
酢酸エステルの製造も公知である。典型的には、酢酸は、酸触媒、例えば鉱酸またはカチオン性強酸イオン交換樹脂を使用して、有機アルコールと液相中で反応を起こす。ここで再び、生成物エステル1モルあたり1モルの水が形成される。本発明方法は、多くの場合、水との共沸混合物として粗生成物を精留することを含む。反応混合物からのエステル/水共沸混合物の除去は、エステル生成物に有利に平衡を移動させる。選択された酢酸エステル共沸混合物組成は、下記の表Aに示してある。
【0028】
【表1】

【0029】
「共沸分離」および同様の用語は、生成物酢酸エステルと水との共沸混合物を蒸発させることによって、水と、反応体と、および触媒との反応混合物から、生成物酢酸エステルを分離することを指している。共沸混合物は、任意に、アルコール反応体を含む。前記分離を行って、エステル/水共沸混合物の低沸点を利用して、平衡を生成物エステルへと移動させる。
【0030】
連続エステル化による酢酸エチルエステルの製造は、エステルを高収率で得るための共沸原理の使用例である。酢酸、濃硫酸、および過剰の95%エチル平衡が混合物で得られ、そしてそれを、レシービングタンク中に注入し、そして予熱器を通して泡鐘段塔の上部セクションへと通す。この塔の頂部の温度を、約80℃に維持し、そして、その蒸気(形成されたエステルと約10%の水を有するアルコール)を凝縮器に通す。第一の回収塔は、頂部温度70℃で運転し、83%のエステル、9%のアルコールおよび8%の水から成る三元共沸混合物を製造する。その三元混合物を、スタティックミキサに供給し、そしてそこに、水を加えて二層を形成させ、そしてデカンタで分離できる。上層は、約93%の酢酸エチル、5%の水、および2%のアルコールを含んでおり、第二の回収塔またはエステル乾燥塔に送る。この塔からの塔頂留出物は、95〜100%の酢酸エチルエステルであり、冷却器に送り、次いで貯蔵タンクへと送る。
【0031】
本発明を実施する装置10は、図1に概略示してある。装置10は、無水物反応器16およびフラッシャ18と連通している冷却器トレイン(chiller train)14に連結されたケテン炉12を含む。フラッシャ18は、カチオン性強酸イオン交換樹脂の触媒床22を有するエステル化反応塔20への出力を有する。塔18は、デカンタ24に連結している。
【0032】
本発明方法を実施するために、酢酸および触媒を、炉12に供給し、そこで、酢酸を、約680〜750℃の温度で、ケテンおよび水へと熱分解する。その後で、その高温のガスを、冷却器トレイン14で冷却する。
【0033】
冷却器トレイン14は、熱炉頂ガスから水および酢酸を凝縮させ、そしてその凝縮物をフラッシャ18に供給するが、炉からの不凝縮出力は、図1に示してあるように、無水物反応器16に供給する。反応器16では、ケテンを、追加の酢酸と反応させて、無水酢酸を製造する。粗無水物を液体として除去する一方で、塔頂留出物を更に精製して、再循環させることができるか、または、他で利用することができる。
【0034】
ケテン無水物プロセス冷却器トレインからのプロセス凝縮物流は、主として、酢酸、水、無水酢酸を含み、また、リン含有触媒(例えばリン酸アンモニウム)および炭素(ケテン分解および炉コーキング由来)を含む不揮発性成分を含む。次いで、無水酢酸を、プロセス凝縮物流中に存在する水と反応させて、酢酸を形成させる。このプロセス凝縮物流を、好ましくは調整または精製して、前記凝縮物流中に含まれる酢酸から製造される酢酸エステルの品質に悪影響を与え得ると考えられる不純物を排除し、また、酢酸エステルの同時製造時における酢酸およびアルコールのエステル化に使用される触媒を中和し得ると考えられる化合物を除去する。場合によっては、凝縮された炉の出力または弱酸流は、酢酸塩の形態で不所望のアンモニア塩を含んでいてもよい。これらの塩は、不所望の副生物の潜在的な供給源であるので、フラッシング工程前にリン酸のような鉱酸を凝縮物に加えることによって、有利に最小限に抑える。
【0035】
ケテンを反応器16に供給しながら、フラッシャ18では冷却器トレインからの凝縮物(上記したように、およそ組成が50/50の酢酸/水の典型的組成物を有する弱酸流である)を再沸騰させる。気化した酢酸および蒸気は、反応器16にケテンを供給すると同時に、エステル化反応塔20に供給する。而して、固体と、より重い成分は、エステル化塔に弱酸流を供給する前に、フラッシャによって弱酸流から除去される。
【0036】
反応器20には、追加の酢酸および有機アルコールが26でも供給される。その反応混合物を、反応器20において酢酸エステルへと転化させる;その反応は床20によって触媒される。エステル生成物は、蒸留によって、好ましくは上記したような共沸混合物を含む蒸留によって、塔の下端において反応媒体から分離される。塔20の出力は、24でデカントする。
【0037】
いくらかの粗エステルを塔20に還流し、その一方で、粗生成物を、更なる精製のために引き出す。
このようにして、本発明は、従来の製造法に優る相当な利点を提供する。その一つの利点として、ケテン製造から生じる水副生物は、エステル化プロセス装置を経由して処理されるので、回収装置を設ける必要がなく、投資が相当に節約される点が挙げられる。別の利点は、本発明の同時製造法により、ケテン製造(ケテン製造では、塔20の反応媒体から生成物を共沸分離するのに化学量論的に充分な水は発生しない)の水副生物を共沸エステルに対して使用できる点である。そのような場合、従来は、水を別に加えており、それによって運転コストが増す。また一方で、本発明は、水供給源および酢酸の供給源の両方として利用可能な弱酸流を使用する。具体例を以下に示す。
【0038】
実施例
炉12ようなケテン炉およびトレイン14のような冷却器トレインから得られたプロセス凝縮物流を、(凝縮器へと蒸気を指向し、そして塔頂蒸気流から凝縮された液体を捕集するための受け器へと指向する真空ジャケット付き気・液分離セクションに結合された)0.5リットルの電気加熱再沸器から成る実験室用フラッシャ装置に連続供給した。大気圧条件下でフラッシャ留出物として約97.2%(w/w)の供給物を取り出しながら、約61.3重量%の酢酸、38.2重量%の水および0.5重量%の不揮発性成分を含むプロセス凝縮物サンプルを、フラッシャ装置に供給した。
【0039】
フラッシュされたプロセス凝縮物を分析すると、約61.6重量%酢酸および38.4重量%の水を含んでいた。次いで、それを、触媒床に、すなわち45−トレイOldershaw酢酸n−ブチル反応塔(例えば塔20のような塔)へと供給した。均一触媒床は、1+/−0.3重量%のメタンスルホン酸を含んでいた。反応塔からの塔頂蒸気を、凝縮し、そして塔頂デカンタ(例えばデカンタ24のようなデカンタ)で二相を形成させた。デカンタからの酢酸n−ブチル富化上層を、頂部トレーに還流して、例えば、〜97.8重量%の酢酸n−ブチル、1.1重量%の n−ブタノール、1.1重量%の水およびほんの極微量の酢酸を含む粗生成物流を製造する。水性富化下相をデカンタからポンプで汲み出した。
【0040】
いくつかの実施例と関連させて本発明を説明してきたが、本発明の範囲の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、これらの実施例の改良は、当業者には直ちに明らかであろう。上記の検討、当業における関連知識、および発明の背景と詳細な説明に関して上で既に検討した引例を考慮すれば、それらの開示の内容は参照によって本明細書にすべて引用したものとされ、更なる説明は不要と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の方法を例示している概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:すなわち、
(a)高温で酢酸を熱分解して、ケテン、酢酸および水を含む気相流である第一ケテン流を製造する工程;
(b)該第一ケテン流を冷却して、そこから酢酸および水を、凝縮させ、それによって
(i)弱酸水性流および
(ii)ケテン供給流
を発生させる工程;
(c)そのケテン供給流を、無水酢酸反応器に供給し、そこで、ケテンを酢酸と反応させて無水酢酸を製造する工程;および
(d)工程(c)と同時に、該弱酸水性流をエステル化反応器に供給し、そこで、該弱酸流中の酢酸を有機アルコールと反応させて、酢酸エステルを製造する工程
を含む、無水酢酸と酢酸エステルを同時製造する方法。
【請求項2】
該有機アルコールを、酢酸エステルを形成し、該エステルおよび任意にアルコールが共沸混合物に水を提供する有機アルコールから選択する請求項1記載の方法。
【請求項3】
該有機アルコールを、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールから成る群より選択する請求項2記載の方法。
【請求項4】
該有機アルコールを、
(i)酢酸エステルを形成し、該エステルおよび任意にアルコールが共沸混合物に水を提供し;そして、
(ii)その場合、該共沸混合物が、該アルコールと酢酸との反応によって発生される水含量に比べてより多い水含量を有することを特徴とする有機アルコールから選択する請求項2記載の方法。
【請求項5】
該有機アルコールがブタノールである請求項1記載の方法。
【請求項6】
該アルコールを、n−ブタノール、s−ブタノールおよびi−ブタノールから選択する請求項1記載の方法。
【請求項7】
該弱酸流をエステル化反応器に供給する前に該弱酸流をフラッシュし、それにより、気相酢酸および蒸気をエステル化反応器に供給し、それと同時に副生物を除去する工程を更に含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
該熱分解工程が、
(i)その後にアンモニアで中和されるリン酸触媒、または
(ii)リン酸アンモニウム触媒
によって触媒される請求項1記載の方法。
【請求項9】
該脱水触媒がリン酸トリエチルである請求項8記載の方法。
【請求項10】
該脱水触媒がリン酸ジアンモニウムである請求項8記載の方法。
【請求項11】
該弱酸水性流からアンモニウム塩を除去する工程を更に含む請求項8記載の方法。
【請求項12】
該弱酸流からアンモニウム塩を除去する工程が、該弱酸流を鉱酸で処理することを含む請求項11記載の方法。
【請求項13】
該鉱酸がリン酸である請求項12記載の方法。
【請求項14】
該弱酸水性流が、約10〜約90重量%の酸分を有する請求項1記載の方法。
【請求項15】
該弱酸水性流が、約30〜約70重量%の酸分を有する請求項1記載の方法。
【請求項16】
該弱酸水性流が、約40〜約60重量%の酸分を有する請求項1記載の方法。
【請求項17】
該酢酸を熱分解する工程を、約720℃〜約775℃の温度で行う請求項1記載の方法。
【請求項18】
該ケテンを、アンモニアの存在下で、酢酸と反応させる請求項1記載の方法。
【請求項19】
以下の工程:すなわち、
(a)高温で酢酸を熱分解して、ケテン、酢酸および水を含む気相流である第一ケテン流を製造する工程;
(b)該第一ケテン流を冷却して、そこから酢酸と水を凝縮させ、それにより(i)弱酸水性流および(ii)ケテン供給流を製造する工程;
(c)該ケテン供給流を、無水酢酸反応器に供給し、そこで、該ケテンを酢酸と反応させて無水酢酸を製造する工程;
(d)工程(c)と同時に、該弱酸水性流をエステル化反応器に供給し、そこで、エステル化媒体中で、該弱酸流中の酢酸を有機アルコールと反応させて、酢酸エステルを製造する工程、その場合、該有機アルコールは、酢酸エステルを形成し、該エステルおよび任意にアルコールが共沸混合物に水を提供する;および
(e)エステル化媒体からそのようにして形成された該酢酸エステルを共沸分離する工程を含む、無水酢酸と酢酸エステルを同時製造する方法。
【請求項20】
以下の工程:すなわち、
(a)高温で酢酸を熱分解して、ケテン、酢酸および水を含む気相流である第一ケテン流を製造する工程;
(b)該第一ケテン流を冷却して、そこから酢酸と水を凝縮させ、それにより(i)弱酸水性流および(ii)ケテン供給流を製造する工程;
(c)該ケテン供給流を、無水酢酸反応器に供給し、そこで、ケテンを酢酸と反応させて無水酢酸を製造する工程;
(d)工程(c)と同時に、該弱酸水性流をエステル化反応器に供給し、そこで、エステル化媒体中で、該弱酸流中の酢酸を有機アルコールと反応させて、酢酸エステルを製造する工程、その場合、該有機アルコールは、
(i)酢酸エステルを形成し、該エステルおよび任意にアルコールが共沸混合物に水を提供し、そして
(ii)その場合、該共沸混合物が、アルコールと酢酸との反応によって生成される水の量に比べてより多い水含量を有することを特徴とする
有機アルコールから選択する;および
(e)該エステル化媒体からそのようにして形成された該酢酸エステルを共沸分離する工程を含む、無水酢酸と酢酸エステルを同時製造する方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−510016(P2008−510016A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527924(P2007−527924)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/029031
【国際公開番号】WO2006/062558
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(500175107)セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション (77)
【Fターム(参考)】