説明

無端ベルトの製造方法および無端ベルト、並びに、画像形成装置

【課題】 表面欠陥を効率よく減少可能な無端ベルトの製造方法および無端ベルト、並びに、画像形成装置を提供する。
【解決手段】 円筒状基体の外周にベルト状部材を装着して無端ベルトを製造する方法であって、ベルト状部材の内周長(A)と円筒状基体の外周長(B)の関係を「100μm≦A−B≦1500μm」として円筒状基体の外周に前記ベルト状部材を設置し、かかるベルト状部材の外周面に塗布液を塗布して塗膜を形成する塗膜形成工程と、前記円筒状基体の外周に前記ベルト状部材を装着した状態で一次加熱を行う一次加熱工程と、前記円筒状基体から前記ベルト状部材を外した状態で二次加熱を行う二次加熱工程と、をこの順に含む無端ベルトの製造方法である。また、上記無端ベルトの製造方法により製造された無端ベルトである。さらに、当該無端ベルトを、少なくとも、定着ベルトおよび転写ベルトのいずれかに使用してなる画像形成装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端ベルトの製造方法および無端ベルト、並びに、画像形成装置に関し、詳しくは、欠陥の発生を減少することができる無端ベルトの製造方法および無端ベルト、並びに、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒状の被塗布物の表面に、塗布によって感光層やその他の層を形成し、塗膜の固定にあたっては、塗布した後、加熱工程、調湿工程、及び、光照射工程などを経て、なされる方法が従来広く行われている。そして、このような方法が適用される場合のほとんどは、柔軟性を有していない基体の表面に層を形成する場合である。
【0003】
このような柔軟性を有するベルト状の部材の表面に目的の機能膜を形成する方法としては、以下のような方法がある。まず、特許文献1では、感光体ベルトの製造方法として、感光体シートを超音波融着を用いて無端ベルト形状に仕上げる方法が開示されている。また、特許文献2では、エンドレス基材の表面にシリコーンゴム層を設ける方法としてベルトを周方向に駆動させながらブレード塗布により行う方法が開示されている。さらに、特許文献3では、定着用ベルトの製造方法として、最表層から支持層へと内面塗布を順次行う、いわゆる逆作りにより製造する方法が開示されている。このように、様々な工法、手段により目的を達成する努力が成されている。
【0004】
しかしながら、いずれの方法においても、表面層がシームレス形状ではなかったり、得率の向上が計り難い等の難点があった。さらに、円筒状基体の外周にベルト状の部材を装着した状態で表面に塗膜を形成する場合、円筒状基体の外周長とベルト状の部材の内周長とを規定することにより、装着を可能としても、塗膜の固定時に円筒状基体を加熱することで、基体の素材が熱膨張してしまう。そのため、ベルト状部材の寸法が拡張する形で変形し、ベルト表面にその履歴を残す欠陥などが発生する。
【特許文献1】特開平10−16058号公報
【特許文献2】特開2001−287280号公報
【特許文献3】特開2002−202675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上から本発明は、表面欠陥を効率よく減少、もしくは無くすことが可能な無端ベルトの製造方法および当該製造方法によって得られる無端ベルト、並びに、当該無端ベルトを構成部材に含む画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、柔軟性を有するベルト状部材の表面に目的の機能膜を効率よく形成する方法を鋭意検討した結果、円筒状基体とベルト状部材との関係や塗膜を形成した後の被塗布物の加熱手段に改善の余地があることを見出し、本発明に至ったものである。
【0007】
即ち、本発明は、円筒状基体の外周にベルト状部材を装着して無端ベルトを製造する方法であって、前記ベルト状部材の内周長(A)と前記円筒状基体の外周長(B)との関係を「100μm≦A−B≦1500μm」として円筒状基体の外周に前記ベルト状部材を設置し、前記ベルト状部材の外周面に塗布液を塗布して塗膜を形成する塗膜形成工程と、前記円筒状基体の外周に前記ベルト状部材を装着した状態で一次加熱を行う一次加熱工程と、前記円筒状基体から前記ベルト状部材を外した状態で二次加熱を行う二次加熱工程と、をこの順に含むことを特徴とする無端ベルトの製造方法である。
【0008】
本発明の無端ベルトの製造方法には、下記第1〜第7の態様のうち、少なくとも1の態様が適用されることが好ましい。
【0009】
(1)第1の態様は、前記塗布液に含有される溶質が、加熱硬化型の反応性を有する態様である。
(2)第2の態様は、前記塗膜形成工程における塗布液の塗布方法が、前記円筒状基体の軸を鉛直方向と平行とし、前記円筒状基体をその軸方向へ上下方向に移動させて塗布槽内の前記塗布液に浸漬し、前記ベルト状部材の外周面に前記塗布液を塗布する浸漬方法である態様である。
(3)第3の態様は、前記塗膜形成工程における塗布液の塗布方法が、前記円筒状基体の軸を水平に支持し、その軸を中心軸として回転させ、前記ベルト状部材の外周面に前記塗布液を流下して塗布する回転塗布方法である態様である。
【0010】
(4)第4の態様は、前記塗布液に含有される溶質が、フルオロカーボンシロキサンゴムの前駆体である態様である。
(5)第5の態様は、前記塗布液に含有される溶質が、シリコーンゴムの前駆体である態様である。
(6)第6の態様は、前記ベルト状部材が、ポリイミド樹脂よりなる態様である。
(7)第7の態様は、前記一次加熱の温度(C)と前記二次加熱の温度(D)との関係が「C≦D」である態様である。
【0011】
また、本発明は、上記本発明の無端ベルトの製造方法により製造されたことを特徴とする無端ベルトである。
【0012】
さらに、本発明は、上記本発明の無端ベルトを、少なくとも、定着ベルトおよび転写ベルトのいずれかに使用してなることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、表面欠陥を効率よく減少、もしくは無くすことが可能な無端ベルトの製造方法および当該製造方法によって得られる無端ベルト、並びに、当該無端ベルトを構成部材に含む画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[無端ベルトの製造方法および無端ベルト]
本発明の無端ベルトの製造方法は、円筒状基体の外周にベルト状部材を設置して行うものであるが、このとき、当該ベルト状部材の内周長(A)と円筒状基体の外周長(B)との関係を、「式(1):100μm≦A−B≦1500μm」とする。
【0015】
「A−B」が100μm未満になると、円筒状基体へのベルト状部材の装脱着が困難になるとともに加熱時に欠陥の発生を抑制し難くなる。「A−B」が1500μmを越えると塗布時にベルト状部材のヨレが発生し易くなり、膜厚不良やブラッシングなどの塗布欠陥が発生する。「A−B」は、100μm〜1000μmであることが好ましい。
【0016】
本発明に使用される円筒状基体は、耐熱性や機械的強度より、主に金属製のものが使用される。特に、アルミニウム、ステンレス製のものが好適に使用される。また、樹脂製のものを使用する場合は、PTFE製のものを用いることができる。円筒状基体の外周長は、60〜1600mmであることが好ましい。
【0017】
本発明に使用されるベルト状部材は、耐熱性や機械的強度が要求され、ニッケル、アルミニウム、ステンレス等の金属シートや、PET、PBT、ポリイミド、ポリイミドアミド等の樹脂フィルムを用いることができる。耐熱性や強度を考慮すると、ポリイミド樹脂が好ましい。ポリイミド樹脂は導電性粉体などを添加分散して体積抵抗率を制御されていてもよく、カーボンブラックを添加分散して体積抵抗率を制御しておいてもよい。さらに、長尺のポリイミド樹脂シートの両端部をパズル上に組合せ、熱圧着部材を用いて熱圧着し、無端ベルト状に仕立てたものを使用することもできる。
【0018】
ベルト状部材の厚みは、20〜400μmの範囲が好ましく、より好ましくは30〜250μmの範囲、さらに好ましくは40〜150μmの範囲が適している。ベルト状部材の厚みが20μmより薄いと、寸法安定性や、強度が不足することがある。400μmを越えると、材質を問わず、ベルト状部材の剛性が増大して円筒状基体の外周への装着が困難になることがある。
【0019】
(塗膜形成工程)
塗膜形成工程では、既述の式(1)を満たす円筒状基体とベルト状部材とを用い、円筒状基体の外周にベルト状部材を装着し、ベルト状部材の外周面に塗布液を塗布して塗膜を形成する。塗膜を形成する際の塗布方法としては、特に限定されないが、浸漬塗布法や回転塗布法を使用することが好ましい。以下、浸漬塗布法および回転塗布法について説明する。
【0020】
(1)浸漬塗布方法:
浸漬塗布法は、円筒状基体の軸を鉛直方向と平行とし、円筒状基体をその軸方向へ上下方向に移動させて塗布槽内の塗布液中に浸漬し、ベルト状部材の外周面に塗布液を塗布する方法である。
【0021】
当該浸漬塗布方法について、その第一は、通常の浸漬塗布方法であり、塗膜前駆体溶液中に浸漬した円筒状基体(以下、「芯体」ということがある)を相対的に上昇させることにより、芯体表面に塗膜を形成するものであり、形成される塗膜の膜厚は、塗布液の粘度、固形分の濃度と上昇速度により規定されるものである。
【0022】
第二は図面を用いて具体的に説明する。図1は、環状体を用いた浸漬塗布方法の一例について示した模式断面図であり、一旦、塗膜前駆体溶液中に浸漬した円筒状基体(以下、「芯体」ということがある)を上昇させることにより、芯体表面に、塗膜が形成されている状態を示したものである。なお、図1は、環状体を用いた浸漬塗布に関する主要部のみを示したものであり、浸漬/引き上げ装置等の周辺部については省略している。図1中、1は芯体を、2は塗布液を、3は塗布槽を、4は塗膜を、5は環状体を、6は環状体の孔を表す。
【0023】
なお、本発明において、「芯体上に塗布する」とは、芯体の表面上、及び該表面に層を有する場合はその層上に塗布することを意味する。また、「芯体を上昇」とは、塗布液の液面に対する相対的な上昇を意味し、「芯体を停止し、塗布液の液面を下降」させる場合を含む。
【0024】
図1に示す環状体を用いた浸漬塗布方法では、塗布槽3中の塗布液2の液面に環状体5を自由に移動できるように浮設する。次に、芯体1を、環状体の孔6を通して、塗布液2中へ浸漬し、次いで、矢印U方向(軸を鉛直方向と平行とし、円筒状基体をその軸方向)へ上昇させることにより芯体1表面に塗膜4が形成される。また、塗膜4の膜厚は、芯体1の外径と、環状体の孔6の孔径との差に応じて調整される。
【0025】
環状体5は、塗布液に用いられる溶剤により浸食されない種々の金属、プラスチック等から作られ、軽量化のために中空構造であってもよい。また、環状体5が、塗布液2中に沈没するのを防止するために、環状体の外周面および/または塗布槽に、環状体5を支える足や腕を設けてもよい。
【0026】
芯体1の外径と、環状体の孔6の最小孔径と、の差を2で割った値(以下、「間隙幅」と略す)は、所望する塗膜4の塗布直後の厚み(以下、「濡れ膜厚」と略す)が得られるように調整される。乾燥後の塗膜4の膜厚(以下、「乾燥膜厚」と略す)は、濡れ膜厚および塗布液2の不揮発分濃度の積で表され、この関係から所望の濡れ膜厚が求められる。但し、使用する塗布液2の粘度及び/又は表面張力などにより、間隙幅が、そのまま濡れ膜厚として反映されるとは限らない。このため、使用する塗布液2に応じて、間隙幅を、所望する濡れ膜厚の1倍〜2倍の範囲内にすることが好ましい。
【0027】
環状体5の孔6の形状は、図1に示すように、塗布液2の液面に対して下部が広く、上部が狭い形状であれば特に限定されないが、下部から上部へと、直線的に徐々に狭くなる形状のほか、階段状や曲線状に徐々に狭くなる形状でもよい。
【0028】
(2)回転塗布方法:
回転塗布方法とは、円筒状基体の軸を水平に支持し、その軸を中心軸として回転させ、ベルト状部材の外周面に塗布液を流下して塗布する方法である。塗膜を形成する際は、円筒状基体表面に塗布液が流下する流下点近傍に形成された塗膜をへらで平坦化させつつ、円筒状基体または前記ノズルを軸方向に平行移動させることにより円筒状基体の表面に塗布液を塗布することが好ましい。
【0029】
この回転塗布方法について、図面を用いて具体的に説明する。図2は、回転塗布方法の一例を示す模式図であり、1は(円筒状)芯体を、4は塗膜を、10は塗布液供給用の容器を、11はノズルを、12はノズル11から流下している塗布液(流下液)を、13はへらを表す。
【0030】
図2中、芯体1は、その芯体の軸方向を水平にして設置され、周方向(矢印R方向)に回転可能である。また、塗布液を満たした容器10は、ノズル11が接続されておりノズル11の先端より、塗布液を流下することができる。ノズル11およびへら13は、芯体1の軸方向(矢印Aおよび矢印Aの反対方向)に平行移動でき、且つ、芯体1表面に塗布液を流下できるように、ノズル11は芯体1の上部に設置されている。また、へら13は、流下液12の芯体1表面への流下点よりも下流側に、芯体1表面に軽く接触するように配置されており、ノズル11と連動して矢印A方向に移動することができる。
なお、容器10は、図2に示したようにノズル11を取り付けたものであってもよいが、容器10を固定し、これに、チューブを介してノズル11を接続したものであってもよい。
【0031】
回転塗布法は、矢印R方向に回転している芯体1表面に、ノズル11から塗布液を流下させつつ、ノズル11およびへら13を、芯体1の一端から他の一端へ矢印A方向に移動させることにより行われる。この際、流下点近傍に形成された塗膜が、矢印R方向へ移動し、へら13により平坦化される。なお、へら13を通過した直後の塗膜4には筋が残る場合もあるが、時間とともに塗膜4の粘性により筋は消滅する。このようにして回転塗布により芯体1の表面全面にわたって塗膜4を形成することができる。
【0032】
なお、ノズル11およびへら13の矢印R方向への移動速度を塗布速度といい、該塗布速度は下式(2)で表される。
【0033】
・式(2):V=f/(t・k・π)
〔但し、式(2)において、Vは塗布速度を意味し、tは濡れ膜厚(へら13により平坦化された後の塗膜4の厚み)を意味し、fは塗布液の単位時間当りの流下量を意味し、kは芯体1の外径を意味し、πは円周率を意味する。〕
【0034】
芯体1の回転速度は20〜200rpmの範囲内に調整されることが好ましい。図2に説明したような回転塗布を行う際の塗布条件は、上記した式(2)の関係を利用して決定される。
【0035】
なお、塗布液をノズル11の先端から流下させる際に、塗布液が高粘度であるために重力だけでは流下しにくい場合には、エア圧やポンプ等を利用して圧力をかけてノズル11から押し出すことが有効である。ノズル11の先端から芯体1表面の流下点までの距離は特に限定されないが、流下液12が途切れることがないよう、10〜100mm程度の範囲であることが好ましい。液下液12に途切れが生じると、塗膜4が泡を巻き込むことがある。
【0036】
へら13は、溶剤に侵されないポリエチレンやフッ素樹脂等のプラスチック、または、真鍮やステンレス等の金属の、幅10〜50mmの薄い板から成り、弾力性を有するものである。へら13は芯体1表面に軽く押し当てられた状態で用いられるが、流下点で形成された塗膜4がへら13と芯体1表面との間を通過した際に、へら13は芯体1からある隙間をもって離れ、その際に流下点で形成された塗膜4が押し広げられ平坦化される。
【0037】
既述の塗布液としては、無端ベルトの用途に合わせて種々選択される。例えば、塗布液に含有される溶質としては、フルオロカーボンシロキサンゴムの前駆体やシリコーンゴムの前駆体が挙げられる。これらは、無端ベルトを定着ベルトとして使用する場合に有意である。
【0038】
既述のフルオロカーボンシロキサンゴムの前駆体は、主鎖にパーフルオロアルキルエーテル基及び/又はパーフルオロアルキル基を有するものが好ましい。
【0039】
既述のシリコーンゴムの前駆体としては、例えば、ジメチルシリコーンゴム、メチルビニルシリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、等の前駆体が挙げられる。これらのシリコーンゴムの前駆体は、加熱加硫(HTV)のものであり、重合形態は付加型、縮合型のどちらであっても良い。
【0040】
さらに、フルオロカーボンシロキサンゴム前駆体に対しては、必要に応じてm−キシレンヘキサフロライド、パーフロロアルカン、パーフロロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、ベンゾトリフロライド、パーフロロポリエーテル等の溶剤で希釈して適当な粘度の塗布液とし、塗布することができる。シリコーンゴム前駆体組成物に対しては、必要に応じてヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等の溶剤で希釈して適当な粘度の塗布液とし、塗布することができる。
【0041】
(一次加熱工程)
一次加熱工程では、塗膜形成工程を経た円筒状基体の外周にベルト状部材を装着した状態で一次加熱を行う。本発明では、当該一次加熱と、その後の後述する二次加熱とを行う少なくとも二段階の加熱を行う。まず、一次加熱では、既述のように円筒状基体の外周にベルト状部材を装着した状態で加熱を行う。この加熱により、余分な水分などを除去し、次工程の二次加熱で効率よく最終的な皮膜を形成することが可能となる。
【0042】
一次加熱の温度は、30〜150℃とすることが好ましく、50〜130℃とすることがより好ましい。また、加熱時間は、加熱温度にもよるが3〜120分とすることが好ましく、5〜60分とすることがより好ましい。当該加熱は公知の電気炉や反応器等の加熱装置を用いて行うことができる。
【0043】
(二次加熱工程)
二次加熱工程では、一次加熱工程を経た後で円筒状基体からベルト状部材を外し二次加熱を行う。円筒状基体からベルト状部材を外して加熱を行うことで、加熱中もしくは加熱後の表面の欠陥の発生を防ぐことができる。これは、取り外して加熱することで、基体の熱膨張に伴うベルト状部材の変形がなくなるため、当該熱膨張に起因する欠陥の発生がなくなることによるためと考えられる。
【0044】
二次加熱の温度は、50〜250℃とすることが好ましく、80〜220℃とすることがより好ましい。また、加熱時間は、加熱温度にもよるが5〜1440分とすることが好ましく、10〜720分とすることがより好ましい。また、当該加熱も公知の電気炉や反応器等の加熱装置を用いて行うことができる。
【0045】
また、一次加熱の温度(C)と二次加熱の温度(D)との関係は、「C≦D」であることが好ましい。「C≦D」とすることで、次工程の作業を容易にするため、塗膜の固定のみを目的とすることにより低温、短時間の処理条件を設定することができる。一次加熱の温度(C)と二次加熱の温度(D)との関係は、より好ましくは、「D+10≦C≦D+100」である。
【0046】
以上のような各工程を経て、また、必要に応じて公知の工程をも経て無端ベルトが製造される。このようにして製造された本発明の無端ベルトは、その表面が鏡面状で非常に良好な面となっている。具体的には、加熱により芯体が膨張することにより、基材裏面と芯体間の異物の挟み込み、若しくは芯体の突起によって生ずる凸状の欠陥発生のないものとなっている。従って、当該無端ベルトは、種々の画像形成装置の構成部材の一部に用いることができるが、特に、転写ベルトや定着ベルトに使用することが好ましく、定着ベルトに使用することがより好ましい。
【0047】
[画像形成装置]
本発明の画像形成装置は、既述の本発明の無端ベルトを、少なくとも、定着ベルトおよび転写ベルトのいずれかに使用してなる画像形成装置である。本発明の画像形成装置を図面を用いて説明する。
【0048】
図3は、本発明の画像形成装置の第1の態様であるフルカラー画像形成装置を示す概略構成図である。
図3に示す画像形成装置1000は、定着装置200を備える。定着装置200は、加熱ロール210と、剥離ロール220と、ウォーク制御ロール230と、からなる3つのロールにより回動可能に張架された定着ベルト240、及び、定着ベルト240を介して加熱ロール210に圧接する加圧ロール250を備えている。定着ベルト240は、裏面側の、加熱ロール210と剥離ロール220とが配備された間に、この定着ベルト240を強制的に冷却する冷却用ヒートシンク260を備えている。
【0049】
定着ベルト240の表面は、この冷却用ヒートシンク260によって、剥離ロール220付近で50℃〜80℃の範囲まで冷却される。また、定着装置200には、冷却用ヒートシンク260と加熱ロール210との間に、定着ベルト240に一定のテンションを付与する小径のテンションロールが配設されてもよい。ここで、定着装置200の構成要素となっている定着ベルト240が、本発明の無端ベルトである。
【0050】
加熱ロール210としては、例えば、アルミニウムやステンレス等からなる金属製コアの表面に、JIS K 6253に基づき測定されるJIS A硬度が、好ましくは20度〜60度の範囲であるシリコーンゴム等からなる弾性体層を、好ましくは1mm〜3mmの範囲の厚さで被覆し、更に、弾性体層の表面にPFAチューブ等からなる離型層を被覆して、所定の外径に形成したものが用いられる。この加熱ロール210の内部には、加熱源として、発熱量が、好ましくは300〜350Wの範囲であるハロゲンランプ(不図示)が配設されている。このハロゲンランプにより、加熱ロール210の表面は、所定の温度(好ましくは130〜195℃の範囲)となるように内部から加熱される。
【0051】
また、加圧ロール250としては、例えば、加熱ロール210と同様に構成したものが用いられ、アルミニウムやステンレス等からなる金属製コアの表面に、JIS K 6253に基づき測定されるJIS A硬度が、好ましくは20度〜60度の範囲であるシリコーンゴム等からなる弾性体層を、厚さが好ましくは1mm〜3mmの範囲で被覆し、更に、弾性体層の表面にPFAチューブ等からなる離型層を被覆して、所定の外径に形成したものが用いられる。加圧ロール250の内部にも、加熱源として、発熱量が、好ましくは、300W〜350Wの範囲であるハロゲンランプが配設されている。このハロゲンランプにより、加圧ロール250の表面は、所定の温度(好ましくは85℃〜155℃の範囲)となるように内部から加熱される。尚、この加圧ロール250においては、加熱源を省略してもよい。
【0052】
定着ベルト240は、既述の如く、加熱ロール210と、剥離ロール220と、ウォーク制御ロール230と、からなる3つのロールにより周動可能に張架されており、図示しない駆動源により回転駆動される加熱ロール210により、所定の移動速度で図3においては反時計回りに循環する。なお、定着ベルト240に近接する位置には、定着ベルト240の表面に離型剤(ジメチルシリコーンオイル)を供給する離型剤供給装置が設けられていてもよい。
【0053】
また、画像形成装置1000は、その他に、4つの電子写真感光体110a〜110d(例えば、電子写真感光体110aがイエロー、電子写真感光体110bがマゼンタ、電子写真感光体110cがシアン、電子写真感光体110dがブラックの色からなる画像をそれぞれ形成可能である)が中間転写ベルト120に沿って相互に並列に配置されている。
【0054】
電子写真感光体110a〜110dのそれぞれは所定の方向(紙面上は反時計回り)に回転可能であり、その回転方向に沿って帯電ロール125a〜125d、現像装置140a〜140d、1次転写ロール130a〜130d、クリーニングブレード115a〜115dが配置されている。現像装置140a〜140dのそれぞれにはトナーカートリッジ145a〜145dに収容されたブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナーが供給可能であり、また、1次転写ロール130a〜130dはそれぞれ中間転写ベルト120を介して電子写真感光体110a〜110dに当接している。
【0055】
さらに、ハウジング内の所定の位置には露光装置が配置されており、露光装置から出射されたレーザー光を帯電後の電子写真感光体110a〜110dの表面に照射することが可能となっている。これにより、電子写真感光体110a〜110dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニングの各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト120上に重ねて転写される。
【0056】
中間転写ベルト120は駆動ロール100、バックアップロール150及びテンションロール155により所定の張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく回転可能となっている。また、2次転写ロール160は、中間転写ベルト120を介してバックアップロール150と当接するように配置されている。バックアップロール150と2次転写ロール160との間を通った中間転写ベルト120は、例えば駆動ロール100の近傍に配置されたクリーニングブレードにより清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。
【0057】
また、ハウジング内の所定の位置にはトレイ(被転写体トレイ)180が設けられており、トレイ180内の紙等の被転写体190が移送ロール195により中間転写ベルト120と2次転写ロール160との間、さらには相互に当接する2個のロールを有する一次定着装置170に順次移送された後、さらに、本発明の無端ベルトを有する二次定着装置200に移送された後、装置外に排出される。
【0058】
ここで、図3に示す画像形成装置1000のトナー像形成部における、記録媒体に未定着トナー像を担持させる方法について述べる。
【0059】
図3に示す画像形成装置1000には、カラー画像においては、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色の各画像信号が入力される。これらの画像信号が入力されると、この画像形成装置1000では、感光体ドラム110a〜110dの表面を、帯電器125〜125dにより一様に帯電した後、入力された画像情報に応じたレーザ光を光書き込みユニットから感光体ドラム110a〜110dに向けて照射することで感光体ドラム110の表面に静電潜像を形成する。続いて、各感光体ドラム110a〜110dの表面に形成された静電潜像を、トナーカートリッジ145a〜145dから供給されたトナーを収納した各現像器140a〜140dにより現像し、感光体ドラム110a〜110dの表面にトナー像を形成する。次いで、1次転写位置において感光体ドラム110上のトナー像を中間転写ベルト120に1次転写する。トナー像が中間転写ベルト120に1次転写された後の各感光体ドラム110a〜110dの表面からは、クリーニング装置のクリーニングブレード115a〜115dによって残存トナーが除去され、除電装置によって残存電荷が除去される。
【0060】
以降、1次転写位置において、中間転写ベルト120に先に1次転写されたトナー像と重なるように順次1次転写する。こうすることにより、中間転写ベルト120には、各色のトナー像が1つに重なり合ったトナー像が形成される。そして、この1つに重なり合ったトナー像を、バイアスロール150と転写ロール160とで挟まれた2次転写位置において用紙(記録媒体)に2次転写する。こうして、未定着トナー像が用紙に担持される。
【0061】
未定着トナー像が担持された用紙は、一次定着装置170に送られる。定着装置170では、未定着トナー像を担持した用紙を所定のニップ領域を通過させることでその未定着トナー像に熱を加えると共に圧力も加え、未定着トナー像を用紙に定着させる。
【0062】
トナー像が定着した用紙は、次いで二次定着装置200に送られる。定着装置200では一次定着されたトナー像を担持した用紙を所定のニップ領域を通過させることでその定着済トナー像に再度熱を加えると共に圧力も加え、定着ベルト230を画像面に密着させ、さらに冷却装置を通して、画像面の温度を低下させて、トナー像が固定化されたのちに剥離ロール220で用紙と定着ベルトが剥離され、この画像形成装置1000に備えられた排出トレイに排出される。このようにして、所望の画像が記録媒体上に形成される。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例は、本発明を制限するものではない。
【0064】
(実施例1)
ベルト状部材として、径168mmΦ×幅140mm×厚さ85μmで、内周長の実測値は527.7mmの大きさであり、カーボンブラックを添加して体積抵抗率をRv=1012Ω・cmに調整したポリイミド製のベルト状部材を、外径167.75mmΦで外周長の実測値は527.0mmの円筒状基体の外周に装着した。
【0065】
このときベルト状部材の内周長(A)と前記円筒状基体の外周長(B)との差「A−B」は、700μmであった。該部材に対して、フルオロカーボンシロキサンゴム前駆体であるSIFEL610(信越化学工業社製):100質量部とフッ素系溶媒(m−キシレンヘキサフロライド、パーフロロアルカン、パーフロロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)の混合溶剤):10質量部により調整した塗布液を浸漬塗布により塗膜を形成後、120℃:10分の一次加熱(一次加硫)を行い、冷却後、円筒状基体を取り外した後、200℃:4時間の二次加熱(二次加硫)を行い、表面層としてフルオロカーボンシロキサンゴム層(40μmの膜厚)を形成して無端ベルトを作製した。かかる無端ベルトについて、二次加熱による芯体の膨張に起因する凸状の欠陥のない無端ベルトであることが確認された。
【0066】
(比較例1)
ベルト状部材として、径168mmΦ×幅140mm×厚さ85μmで内周長の実測値は527.7mmの大きさであり、カーボンブラックを添加して体積抵抗率をRv=1012Ω・cmに調整したポリイミド製のベルト状部材を、外径167.75mmΦで外周長の実測値は527.0mmの円筒状基体の外周に装着した。このとき「A−B」は700μmであった。
【0067】
該部材に対して、フルオロカーボンシロキサンゴム前駆体であるSIFEL610(信越化学工業社製):100質量部とフッ素系溶媒(m−キシレンヘキサフロライド、パーフロロアルカン、パーフロロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)の混合溶剤):10質量部により調整した塗布液を浸漬塗布により塗膜を形成後、120℃:10分の一次加熱を行い、冷却後、円筒状基体を取り外さずに、200℃:4時間の二次加熱を行い、表面層としてフルオロカーボンシロキサンゴム層(40μmの膜厚)を形成して無端ベルトを作製した。この無端ベルトの表面には欠陥である凸状の突起が多数存在していた。
【0068】
(比較例2)
ベルト状基材として径168mmΦ×幅140mm×厚さ85μmで内周長の実測値は527.7mmの大きさであり、カーボンブラックを添加して体積抵抗率をRv=1012Ω・cmに調整したポリイミド製のベルト状部材を、外径167.95mmΦで外周長の実測値は527.63mmの円筒状基体の外周に装着した。このとき「A−B」は70μmであり、装着には時間を要した。
【0069】
該部材に対して、フルオロカーボンシロキサンゴム前駆体であるSIFEL610(信越化学工業社製):100質量部とフッ素系溶媒(m−キシレンヘキサフロライド、パーフロロアルカン、パーフロロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)の混合溶剤):10質量部により調整した塗布液を浸漬塗布により塗膜を形成後、120℃:10分の一次加熱を行い、冷却後、円筒状基体を取り外すのに時間が要するともに、この時点で凸状の表面故障が確認できた。さらに200℃:4時間の二次加熱を行い、表面層としてフルオロカーボンシロキサンゴム層(40μmの膜厚)を形成して無端ベルトを作製した。この無端ベルトの表面には、欠陥である凸状の突起が多数存在していた。
【0070】
(実施例2)
ベルト状基材として径168mmΦ×幅140mm×厚さ85μmで内周長の実測値は527.7mmの大きさであり、カーボンブラックを添加して体積抵抗率をRv=1012Ω・cmに調整したポリイミド製のベルト状部材を、外径167.75mmΦで外周長の実測値は527.0mmの円筒状基体の外周に装着した。このとき「A−B」は700μmであった。
【0071】
該部材に対して、シリコーンゴム用プライマーであるDY39−115(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)をウェスに含浸し塗布後、風乾30分の後、シリコーンゴム前駆体組成物であるDY35−796AB(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製):100質量部とn−ヘキサン:30質量部により調整した塗布液を浸漬塗布により塗膜を形成、120℃:10分の一次加熱を行い、冷却後、円筒状基体を取り外した後、200℃:4時間の二次加熱を行い、表面層としてシリコーンゴム層(膜厚40μmの膜厚)を形成して無端ベルトを作製した。また、その表面には突起などの欠陥はなかった。
【0072】
(比較例3)
ベルト状基材として径168mmΦ×幅140mm×厚さ85μmで内周長の実測値は527.7mmの大きさであり、カーボンブラックを添加して体積抵抗率をRv=1012Ω・cmに調整したポリイミド製のベルト状部材を、外径167.45mmΦで外周長の実測値は526.06mmの円筒状基体の外周に装着した。このとき「A−B」は1640μmであった。
【0073】
該部材に対して、シリコーンゴム用プライマーであるDY39−115(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)をウェスに含浸し塗布後、風乾30分の後、シリコーンゴム前駆体組成物であるDY35−796AB(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製):100質量部とn−ヘキサン:30質量部により調整した塗布液を浸漬塗布により塗膜を形成、120℃:10分の一次加熱を行い、冷却後、円筒状基体を取り外した後、200℃:4時間の二次加熱を行い、表面層としてシリコーンゴム層(膜厚40μmの膜厚)を形成して無端ベルトを作製した。この無端ベルトは、塗布時に表面にブラッシングが発生したため、部分的に表面性が低いベルトとなっていた。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】環状体を用いた浸漬塗布方法の一例を示す模式断面図である。
【図2】回転塗布方法の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0075】
1・・・芯体
2・・・塗布液
3・・・塗布槽
4・・・塗膜
5・・・環状体
6・・・環状体の孔
7・・・環状塗布槽
8・・・環状シール材
9・・・中間体
10・・・塗布液供給用の容器
11・・・ノズル
12・・・ノズル11から流下している塗布液(流下液)
13・・・へら
110a〜110d・・・感光体ドラム
120・・・中間転写ベルト
130・・・1次転写ロール
140a〜140d・・・現像装置
145a〜145d・・・トナーカートリッジ
150・・・バックアップロール
160・・・2次転写ロール
170・・・一次定着装置
200・・・二次定着装置
210・・・加熱ロール
220・・・剥離ロール
240・・・定着ベルト
250・・・加圧ロール
260・・・冷却装置
1000・・・画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状基体の外周にベルト状部材を装着して無端ベルトを製造する方法であって、
前記ベルト状部材の内周長(A)と前記円筒状基体の外周長(B)との関係を「100μm≦A−B≦1500μm」として円筒状基体の外周に前記ベルト状部材を設置し、
前記ベルト状部材の外周面に塗布液を塗布して塗膜を形成する塗膜形成工程と、
前記円筒状基体の外周に前記ベルト状部材を装着した状態で一次加熱を行う一次加熱工程と、
前記円筒状基体から前記ベルト状部材を外した状態で二次加熱を行う二次加熱工程と、をこの順に含むことを特徴とする無端ベルトの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の無端ベルトの製造方法により製造されたことを特徴とする無端ベルト。
【請求項3】
請求項2に記載の無端ベルトを、少なくとも、定着ベルトおよび転写ベルトのいずれかに使用してなることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−255675(P2006−255675A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−80560(P2005−80560)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】