説明

無端状ベルト、その製造方法、それを製造するための円筒状塗布型、及び、それからなる中間転写ベルト、並びに、その中間転写ベルトを有する中間転写装置

【課題】十分な光沢度等の光学的特性を得ることができると共に、光沢度等の光学的特性を制御することができ、しかも、ベルトの捩れや変形等が可能となる無端状ベルトを提供する。
【解決手段】軸方向と周方向とに異方性をもたせた面粗さとする微少な凹凸を一方の表面に有する合成樹脂で構成される無端状ベルト4において、(イ)前記微少な凹凸が、円筒状成形型の内面に設けられた研磨又は研削による微少な凹凸の転写によって形成され、(ロ)前記微少な凹凸が、前記無端状ベルトの軸方向の全域又は一部領域に設けられ、そして、(ハ)前記無端状ベルトの軸方向の全域又は一部領域の光学的な特性(例えば、光沢度)が、前記微少な凹凸によってもたらされると共に、該無端状ベルトの軸方向と周方向とに異方性を有するものとする。図1において、4aは、異方性領域形成部であり、「光学的な特性が無端状ベルトの軸方向と周方向とに異方性を有する領域」に相当するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面層の反射光沢度を向上させた無端状ベルト、その製造方法、それを製造するための円筒状塗布型、及び、それからなる中間転写ベルト、並びに、その中間転写ベルトを有する中間転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等の画像形成装置による画像形成の分野において、感光体上に各色のトナー画像を形成し、続いて、中間転写体である無端状ベルト上に順次多重転写して、無端状ベルト上に多色画像を形成した後、この多色画像を転写材に静電的に一括して再転写することにより、画像ずれのない多色画像を形成することは、斯界で知られている。
【0003】
このような中間転写体上に多色画像を得るには、中電気抵抗の基体に高電気抵抗層を設けて、多層の無端状ベルトとすることが有効な手段であった。多層の無端状ベルトにおいては、その表面の抵抗値が低すぎると転写チリという異常画像が発生し、また、その裏面の抵抗値が高すぎると電荷注入が不充分となって異常放電による画像ムラが発生するという問題があった。また、単層の無端状ベルトにおいては、その表面と裏面との表面抵抗を違った抵抗値にすることは、困難であるので、単層での電気的な特性値の許容範囲は非常に狭いものとなり、そのために、作り込みが困難であるという問題があった。さらに、中間転写体である無端状ベルトの表面に付着したトナーのクリーニングをし易くするには、その表面層が離型性を有することも必要であった。
【0004】
従来、画像形成装置において高画質を得るためには、画像濃度を正しく検知し、検知した情報をフィードバックしてトナーの供給量を調整する必要があるが、その検知方法としては、トナーの乗っている状態と乗っていない状態での感光体や中間転写体からの反射光を検知する方法が採用されている。
【0005】
ところで、中間転写体を構成する無端状ベルトには、伸び縮みしないような機械的強度の強い材料を用いるが、転写時のニップ幅を確保するためには、無端状ベルトに弾性層を設ける例が多い。しかし、このような弾性層を設けない場合もある。弾性層が設けられた場合でも、また、設けられない場合でも、トナーのクリーニング性は必要であるので、一般的には、無端状ベルトの表面に離型性を有する塗布膜が設けられる。
【0006】
中間転写体として使用される無端状ベルトは、画像パターンを忠実に再現するために伸縮性が少ない材質を用いなければならない。また、難燃性、強度、及び、電気安定性が要求され、それらを満たす基材として、ポリイミド樹脂等の耐熱性樹脂が用いられている(特許文献1を参照。)。
【0007】
しかしながら、これらのポリイミド樹脂等の耐熱性樹脂は、平滑な膜を形成すると、それ自体は、反射光沢度が100以上のかなりの光沢性が得られるが、中間転写体として離型性を持たせるために、その表面に離型層を形成すると、一般的に離型層が薄いために膜の配向秩序性がなく、また離型層膜での光吸収が起こり、そのために、トナー有無での充分な反射強度コントラストが得られず、検出感度が不充分となる、という問題があった。
【特許文献1】特開平11−235765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明者らは、中間転写体として使用される単層無端状ベルトの反射率を大きく維持するためには、積層せずに単層膜としてさらに配向性を持たせることが望ましいと考えて、「合成樹脂で構成される無端状ベルトにおいて、その軸方向と周方向とに対する光沢度が異方性であり、かつ、その軸方向の光沢度が周方向より大きいことを特徴とする単層無端状ベルト。」(特願2003−170621)を提案した。
【0009】
この単層無端状ベルトは、ラビングによって形成された微小なラダー構造を有する遠心成型用塗布金型の内表面にポリアミド酸溶液を塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を加熱硬化させてポリイミド化させることにより得たものである。しかしながら、この単層無端状ベルトにおける微小なラダー構造は、ラビングによって形成されたものであるので、その微少なラダー構造を構成する微少な凹凸を十分に配行させることができないと共に、その配行を制御できないという問題があり、それらのために、十分な光沢度を得ることができないと共に、光沢度を制御することができない、という問題があった。また、先に提案した単層無端状ベルトでは、ベルトの捩れや変形、ベルト一周での位置検知、ベルトの周期的なタイミング検知等ができないという問題もあった。
【0010】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。
【0011】
即ち、本発明は、十分な光沢度等の光学的特性を得ることができると共に、光沢度等の光学的特性を制御することができ、しかも、ベルトの捩れや変形、ベルト一周での位置検知、ベルトの周期的なタイミング検知等が可能となる無端状ベルト、その製造方法、それを製造するための円筒状塗布型、及び、それからなる中間転写ベルト、並びに、その中間転写ベルトを有する中間転写装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、円筒状塗布型の軸方向と周方向とに異方性をもたせた面粗さとする研磨又は研削による微少な凹凸が該円筒状塗布型の内面における軸方向の全域又は一部領域に設けられた円筒状塗布型を用いて、『軸方向と周方向とに異方性をもたせた面粗さとする微少な凹凸を一方の表面に有する合成樹脂で構成される無端状ベルトにおいて、(イ)前記微少な凹凸が、筒状成形型の内面に設けられた研磨又は研削による微少な凹凸の転写によって形成され、(ロ)前記微少な凹凸が、前記無端状ベルトの軸方向の全域又は一部領域に設けられ、そして、(ハ)前記無端状ベルトの軸方向の全域又は一部領域の光学的な特性が、前記微少な凹凸によってもたらされると共に、該無端状ベルトの軸方向と周方向とに異方性を有する無端状ベルト』としたところ、本発明者らが先に提案したラビングによらなくても、十分な光沢度等の光学的特性を得ることができると共に、光沢度等の光学的特性を制御することができ、しかも、ベルトの捩れや変形、ベルト一周での位置検知、及び、ベルトの周期的なタイミング検知が可能となる無端状ベルトとすることができることを見出して本発明を完成するに至った。
【0013】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、
軸方向と周方向とに異方性をもたせた面粗さとする微少な凹凸を一方の表面に有する合成樹脂で構成される無端状ベルトにおいて、
(イ)前記微少な凹凸が、円筒状成形型の内面に設けられた研磨又は研削による微少な凹凸の転写によって形成され、
(ロ)前記微少な凹凸が、前記無端状ベルトの軸方向の全域又は一部領域に設けられ、そして、
(ハ)前記無端状ベルトの軸方向の全域又は一部領域の光学的な特性が、前記微少な凹凸によってもたらされると共に、該無端状ベルトの軸方向と周方向とに異方性を有する
ことを特徴とする無端状ベルトである。
【0014】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記合成樹脂が、ポリイミド樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、及び、ポリアミドイミド樹脂から選ばれることを特徴とするものである。
【0015】
請求項3に記載された発明は、請求項1又は2に記載された発明において、前記無端状ベルトの軸方向と周方向とに対する光沢度が異方性であり、かつ、該無端状ベルトの周方向の光沢度がその軸方向の光沢度より大きいことを特徴とするものである。
【0016】
請求項4に記載された発明は、請求項1又は2に記載された発明において、前記無端状ベルトの軸方向の端部領域に、該無端状ベルトの軸方向と周方向とに光沢度異方性を有する一つの領域を形成したことを特徴とするものである。
【0017】
請求項5に記載された発明は、請求項1又は2に記載された発明において、前記無端状ベルトの軸方向の端部領域に、該無端状ベルトの軸方向と周方向とに光沢度異方性を有する多数の領域を等間隔に形成したことを特徴とするものである。
【0018】
請求項6に記載された発明は、
1)円筒状塗布型の軸方向と周方向とに異方性をもたせた面粗さとする研磨又は研削による微少な凹凸が該円筒状塗布型の内面における軸方向の全域又は一部領域に設けられた円筒状塗布型を準備する工程、
2)前記円筒状塗布型を回転させてその内表面にポリアミド酸ワニスを塗布することによりポリアミド酸塗布膜を形成する工程、
3)前記ポリアミド酸塗布膜を加熱硬化させてポリイミド樹脂で構成される円筒膜を形成する工程、及び、
4)前記ポリイミド樹脂で構成される円筒膜を円筒状塗布型から剥離する工程
を順次経て無端状ベルトを製造することを特徴とする無端状ベルトの製造方法である。
【0019】
請求項7に記載された発明は、円筒状塗布型の軸方向と周方向とに異方性をもたせた面粗さとする研磨又は研削による微少な凹凸が、該円筒状塗布型の内面における軸方向の全域又は一部領域に設けられていることを特徴とする円筒状塗布型である。
【0020】
請求項8に記載された発明は、請求項7に記載された発明において、前記研磨又は研削による微少な凹凸が、軸方向に所定の面粗度とされて設けられていることを特徴とするものである。
【0021】
請求項9に記載された発明は、請求項8に記載された発明において、前記軸方向に所定の面粗度とされた研磨又は研削による微少な凹凸が、周方向の円筒研磨又は円筒研削によって設けられていることを特徴とするものである。
【0022】
請求項10に記載された発明は、請求項7に記載された発明において、前記研磨又は研削による微少な凹凸が、周方向に所定の面粗度とされて設けられていることを特徴とするものである。
【0023】
請求項11に記載された発明は、請求項10に記載された発明において、前記周方向に所定の面粗度とされた研磨又は研削による微少な凹凸が、軸方向の円筒研磨又は円筒研削によって設けられていることを特徴とするものである。
【0024】
請求項12に記載された発明は、請求項7〜11のいずれかに記載された発明において、前記研磨又は研削による微少な凹凸を設けた円筒状塗布型の内表面に離型層を設けたことを特徴とするものである。
【0025】
請求項13に記載された発明は、請求項12に記載された発明において、前記円筒状塗布型の軸方向と周方向とに異方性をもたせた面粗さとする研磨又は研削による微少な凹凸が、前記離型層の内表面の全域又は一部域に設けられていることを特徴とするものである。
【0026】
請求項14に記載された発明は、請求項12又は13に記載された発明において、前記離型層が、ポリイミド樹脂又はフッ素樹脂で構成されていることを特徴とするものである。
【0027】
請求項15に記載された発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載された無端状ベルトからなることを特徴とする中間転写ベルトである。
【0028】
請求項16に記載された発明は、請求項3に記載された無端状ベルトを中間転写ベルトとして有する中間転写装置において、該無端状ベルトの捩れを検出する検出装置が該無端状ベルト近傍に配設されていることを特徴とする中間転写装置である。
【0029】
請求項17に記載された発明は、請求項4に記載された無端状ベルトを中間転写ベルトとして有する中間転写装置において、該無端状ベルトが一周の間に光沢度の急激な増加又は減少を検出する検出装置が配設されていることを特徴とする中間転写装置である。
【0030】
請求項18に記載された発明は、請求項5に記載された無端状ベルトを中間転写ベルトとして有する中間転写装置において、該無端状ベルトが一周の間に定期的な光沢度の急激な増加又は減少を検出する検出装置が配設されていることを特徴とする中間転写装置である。
【発明の効果】
【0031】
請求項1,2に記載された発明によれば、(イ)前記微少な凹凸が、筒状成形型の内面に設けられた研磨又は研削による微少な凹凸の転写によって形成され、(ロ)前記微少な凹凸が、前記無端状ベルトの軸方向の全域又は一部領域に設けられ、そして、(ハ)前記無端状ベルトの軸方向の全域又は一部領域の光学的な特性が、前記微少な凹凸によってもたらされると共に、該無端状ベルトの軸方向と周方向とに異方性を有しているので、十分な光沢度等の光学的特性を得ることができると共に、光沢度等の光学的特性を制御することができ、しかも、ベルトの捩れや変形、ベルト一周での位置検知、及び、ベルトの周期的なタイミング検知が可能となる無端状ベルトとすることができる。また、請求項1,2に記載された発明によれば、無端状ベルトの面粗さをその軸方向と周方向とで異方性となるようにするだけで、前述したような、さまざまな光学的特性を利用する用途に使用できる。
【0032】
請求項2に記載された発明によれば、前記無端状ベルトを構成する合成樹脂がポリイミド樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、及び、ポリアミドイミド樹脂から選ばれる合成樹脂であるので、これらの樹脂で形成される単層無端状ベルトは、耐熱性、電気安定性及び強度において優れたものとなる。
【0033】
請求項3に記載された発明によれば、前記無端状ベルトの軸方向と周方向とに対する光沢度が異方性であり、かつ、該無端状ベルトの周方向の光沢度がその軸方向の光沢度より大きいので、無端状ベルトに捩れが生じたとき光沢度が低下することとなり、そのために、無端状ベルトの捩れを検知することができる。
【0034】
請求項4に記載された発明によれば、前記無端状ベルトの軸方向の端部領域に、該無端状ベルトの軸方向と周方向とに光沢度異方性を有する一つの領域を形成したので、無端状ベルトが一周する間に、光沢度が大きく変化する領域があるとき、この変化を光沢度計又はPセンサーのような光検知器で検出することが可能となる。
【0035】
請求項5に記載された発明によれば、前記無端状ベルトの軸方向の端部領域に、該無端状ベルトの軸方向と周方向とに光沢度異方性を有する多数の領域を等間隔に形成したので、特定ピッチで光沢度の大小が繰り返されるのであれば、この変化を光沢度計あるいはPセンサーのような光検知器で検出することが可能となる。
【0036】
請求項6に記載された発明によれば、
1)円筒状塗布型の軸方向と周方向とに異方性をもたせた面粗さとする研磨又は研削による微少な凹凸が該円筒状塗布型の内面における軸方向の全域又は一部領域に設けられた円筒状塗布型を準備する工程、
2)前記円筒状塗布金型を回転させてその内表面にポリアミド酸ワニスを塗布することによりポリアミド酸塗布膜を形成する工程、
3)前記ポリアミド酸塗布膜を加熱硬化させてポリイミド樹脂で構成される円筒膜を形成する工程、及び、
4)前記ポリイミド樹脂で構成される円筒膜を円筒状塗布型から剥離する工程
を順次経て無端状ベルトを製造するので、十分な光沢度等の光学的特性を得ることができると共に、光沢度等の光学的特性を制御することができ、しかも、ベルトの捩れや変形、ベルト一周での位置検知、及び、ベルトの周期的なタイミング検知が可能となる無端状ベルトを低コストで提供することができる。
【0037】
請求項7に記載された発明によれば、円筒状塗布型の軸方向と周方向とに異方性をもたせた面粗さとする研磨又は研削による微少な凹凸が、該円筒状塗布型の内面における軸方向の全域又は一部領域に設けられているので、十分な光沢度等の光学的特性を得ることができると共に、光沢度等の光学的特性を制御することができ、しかも、ベルトの捩れや変形、ベルト一周での位置検知、及び、ベルトの周期的なタイミング検知が可能となる無端状ベルトを形成することができる。
【0038】
請求項8,9に記載された発明によれば、前記研磨又は研削による微少な凹凸が軸方向に所定の面粗度とされて設けられているので、軸方向の光沢度が周方向よりも大きい無端状ベルトを形成することができる。
【0039】
請求項10,11に記載された発明によれば、前記研磨又は研削による微少な凹凸が周方向に所定の面粗度とされて設けられているので、かかる円筒状塗布型によって形成された無端状ベルトは、周方向の光沢度が軸方向よりも大きい無端状ベルトを形成することができる。
【0040】
請求項12〜14に記載された発明によれば、前記研磨又は研削による微少な凹凸を設けた円筒状塗布型の内表面に離型層を設けたので、円筒状塗布型の表面の離型性が向上する。
【0041】
請求項15に記載された発明によれば、中間転写ベルトが請求項1〜5のいずれか1項に記載された無端状ベルトからなるので、十分な光学的特性(例えば、光沢度)を得ることができると共に、光学的特性(例えば、光沢度)を制御することができ、しかも、ベルトの捩れや変形、ベルト一周での位置検知、及び、ベルトの周期的なタイミング検知が可能となる。
【0042】
請求項16に記載された発明によれば、請求項3に記載された無端状ベルトを中間転写ベルトとして有する中間転写装置において、該無端状ベルトの捩れを検出する検出装置が該無端状ベルト近傍に配設されているので、無端状ベルトの捩れを検知することができる。また、光沢度の変化を光沢度計又はPセンサーのような光検知器で検出し、所定の光強度以下になったときに無端状ベルトを停止するようにすれば、無端状ベルトの亀裂や破断を未然に防止することができる。
【0043】
請求項17に記載された発明によれば、請求項4に記載された無端状ベルトを中間転写ベルトとして有する中間転写装置において、該無端状ベルトが一周する間に光沢度の急激な増加又は減少を検出する検出装置が配設されているので、無端状ベルトの回転速度や、無端状ベルトの所定位置を検知することが可能となる。また、本発明の中間転写装置によれば、無端状ベルトに反射膜を新たに付け加えることもなく、無端状ベルト自体で光沢度の急激な増加又は減少を検出できるので、中間転写装置の構成が簡略できる。
【0044】
請求項18に記載された発明によれば、請求項5に記載された無端状ベルトを中間転写ベルトとして有する中間転写装置において、該無端状ベルトが一周の間に定期的な光沢度の急激な増加又は減少を検出する検出装置が配設されているので、無端状ベルトの回転ムラやその補正フィードバック等が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
図1は、本発明の一実施形態を示す無端状ベルトを示す図であって、(a)は、その断面図であり、そして、(b)は、その斜視図である。図2は、本発明の他の一実施形態を示す無端状ベルトの斜視図である。図3は、本発明の他の一実施形態を示す無端状ベルトの斜視図である。図4は、本発明の一実施形態を示す無端状ベルトの製造過程を示す説明図であって、(a)は、円筒状塗布型の内表面を周方向に研磨している状態を示し、(b)は、円筒状塗布型の内表面に離型層を形成した状態を示し、(c)は、離型層を形成した円筒状塗布型の内表面を周方向に研磨している状態を示し、(d)は、円筒状塗布型の内表面に塗布膜を形成した状態を示し、そして、(e)は、塗布膜を所望の寸法に切断して無端状ベルトとする状態を示す。
【0046】
図1に示されているように、本発明の合成樹脂で構成される無端状ベルト4は、軸方向と周方向とに異方性をもたせた面粗さとする微少な凹凸を一方の表面に有している。(イ)前記微少な凹凸は、円筒状成形型の内面に設けられた研磨又は研削による微少な凹凸の転写によって形成され、(ロ)前記微少な凹凸は、前記無端状ベルト4の軸方向の全域又は一部領域に設けられ、そして、(ハ)前記無端状ベルト4の軸方向の全域又は一部領域の光学的な特性は、前記微少な凹凸によってもたらされると共に、該無端状ベルト4の軸方向と周方向とに異方性を有している。前記「光学的な特性」は、好ましくは、光沢度であるが、光反射強度、光透過率、偏光度、チルド角、又は、光磁気的な特性であってもかまわない。図1において、4aは、異方性領域形成部であり、そして、4bは、等方性領域形成部である。図1における「異方性領域形成部4a」は、後述する本発明における「光学的な特性が無端状ベルトの軸方向と周方向とに異方性を有する領域」に相当するものである。図1における「等方性領域形成部4b」は、後述する本発明における「光学的な特性が無端状ベルトの軸方向と周方向とに等方性を有する領域」に相当するものである。
【0047】
このように、(イ)前記微少な凹凸が、円筒状成形型の内面に設けられた研磨又は研削による微少な凹凸の転写によって形成され、(ロ)前記微少な凹凸が、前記無端状ベルト4の軸方向の全域又は一部領域に設けられ、そして、(ハ)前記無端状ベルト4の軸方向の全域又は一部領域の光学的な特性が、前記微少な凹凸によってもたらされると共に、該無端状ベルトの軸方向と周方向とに異方性を有していると、十分な光沢度等の光学的特性を得ることができると共に、光沢度等の光学的特性を制御することができ、しかも、ベルトの捩れや変形、ベルト一周での位置検知、及び、ベルトの周期的なタイミング検知が可能となる無端状ベルト4とすることができる。また、本発によれば、無端状ベルトの面粗さをその軸方向と周方向とで異方性となるようにするだけで、前述したような、さまざまな光学的特性を利用する用途に使用できる。さらに、本発明の無端状ベルトによれば、その散乱光による光沢度はその無端状ベルトの表面の面粗さと密接な関係があるので、その無端状ベルトの表面の面粗さが小さいほど、その光沢度は増加する。
【0048】
本発明の無端状ベルト4を構成する合成樹脂は、好ましくは、ポリイミド樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、及び、ポリアミドイミド樹脂から選ばれる合成樹脂である。このように、無端状ベルトを構成する合成樹脂が、ポリイミド樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、及び、ポリアミドイミド樹脂から選ばれる合成樹脂であると、これらの樹脂で形成される無端状ベルト4は、耐熱性、電気安定性及び強度において優れたものとなる。
【0049】
カラー複写機における中間転写体として用いられる無端状ベルトを構成する合成樹脂としては、難燃性、強度、電気安定性が要求されるので、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂が好適に用いられている。特に、ポリイミド樹脂は、強度や摩擦帯電性が優れているので、カラー複写機における中間転写体として用いられる無端状ベルトを構成する合成樹脂として期待されている。このようなポリイミド樹脂は、それ自体は成形し難いので、その前駆体であるポリアミド酸を用いて成形する。このポリアミド酸は、熱又は触媒によってイミド閉環してポリイミドに変化する性質を有し、そして、特定の溶剤によって溶解する性質を有しているので、希釈可能な樹脂となっている。また、中電気抵抗の無端状ベルトを得るためには、予め、ポリアミド酸にカーボン等の抵抗制御剤を分散して用いることもできる。
【0050】
本発明においては、好ましくは、前記無端状ベルト4の軸方向と周方向とに対する光沢度が異方性であり、かつ、該無端状ベルト4の周方向の光沢度がその軸方向の光沢度より大きい。このように、合成樹脂で構成される無端状ベルト4において、その軸方向と周方向とに対する光沢度が異方性であり、かつ、その軸方向の光沢度が周方向より大きいものとすると、無端状ベルト4に捩れが生じると光沢度が低下することとなり、そのために、無端状ベルト4の捩れを検知することができる。
【0051】
図2に示すように、本発明においては、無端状ベルト5の軸方向の端部領域に、該無端状ベルト5の軸方向と周方向とに光沢度異方性を有する一つの領域5aを形成することができる。この「無端状ベルト5の軸方向と周方向とに光沢度異方性を有する一つの領域5a」は、前記「異方性領域形成部4a」に相当するものである。このように、無端状ベルト5の軸方向の端部領域に、該無端状ベルトの軸方向と周方向とに光沢度異方性を有する一つの領域5aを形成すると、無端状ベルトが一周する間に、光沢度が大きく変化する領域があるとき、この変化を光沢度計又はPセンサーのような光検知器で検出することが可能となる。図2において、5bは、等方性領域形成部である。
【0052】
図3に示すように、本発明においては、無端状ベルト6の軸方向の端部領域に、該無端状ベルト6の軸方向と周方向とに光沢度異方性を有する多数の領域6aを等間隔に形成することができる。この「無端状ベルト6の軸方向と周方向とに光沢度異方性を有する一つの領域6a」は、前記「異方性領域形成部4a」に相当するものである。このように、無端状ベルト6の軸方向の端部領域6aに、該無端状ベルト6の軸方向と周方向とに光沢度異方性を有する多数の領域6aを等間隔に形成すると、特定ピッチで光沢度の大小が繰り返されるのであれば、この変化を光沢度計あるいはPセンサーのような光検知器で検出することが可能となる。図3において、6bは、等方性領域形成部である。
【0053】
本発明の無端状ベルトは、1)円筒状塗布型の軸方向と周方向とに異方性をもたせた面粗さとする研磨又は研削による微少な凹凸が該円筒状塗布型の内面における軸方向の全域又は一部領域に設けられた円筒状塗布型を準備する工程、2)前記円筒状塗布金型を回転させてその内表面にポリアミド酸ワニスを塗布することによりポリアミド酸塗布膜を形成する工程、3)前記ポリアミド酸塗布膜を加熱硬化させてポリイミド樹脂で構成される円筒膜を形成する工程、及び、4)前記ポリイミド樹脂で構成される円筒膜を円筒状塗布型から剥離する工程を順次経て製造される。このように、1)工程、2)工程、3)工程、及び、4)工程を順次経て製造されると、十分な光沢度等の光学的特性を得ることができると共に、光沢度等の光学的特性を制御することができ、しかも、ベルトの捩れや変形、ベルト一周での位置検知、及び、ベルトの周期的なタイミング検知が可能となる無端状ベルトを低コストで提供することができる。
【0054】
本発明の無端状ベルトは、具体的には、図4の(a)〜(e)に示される手順で製造される。即ち、(a)においては、円筒状塗布型1の内表面を回転する研磨バイト又は研磨テープ7によって周方向に研磨した後、その内表面の中央部分(即ち、無端状ベルトの画像形成領域に相当する部分)を電解研磨し、(b)においては、円筒状塗布型1の内表面に離型層2を形成して、円筒状塗布型1の軸方向の端部近傍部分(即ち、無端状ベルトの非画像形成領域に相当する部分)に軸方向と周方向とで面粗度の異なっていない領域2a、及び、円筒状塗布型1の中央部分に軸方向と周方向とで面粗度の異なる領域2bを形成し、(c)においては、軸方向と周方向とで面粗度の異なっていない領域2aの内表面を軸方向に前後する研磨バイト又は研磨テープ7によって軸方向に研磨し、(d)においては、円筒状塗布型の内表面にポリアミド酸ワニスを塗布して塗布膜3を形成することにより、異方性領域形成部3a及び等方性領域形成部3bを形成して、そして、(e)においては、塗布膜3をカッター8で所望の寸法に切断して無端状ベルト4(図1を参照。)とする。
【0055】
図4に示すように、本発明の円筒状塗布型1は、円筒状塗布型1の軸方向と周方向とに異方性をもたせた面粗さとする研磨又は研削による微少な凹凸が、該円筒状塗布型1の内面における軸方向の全域又は一部領域に設けられている。このように、円筒状塗布型1の軸方向と周方向とに異方性をもたせた面粗さとする研磨又は研削による微少な凹凸が、該円筒状塗布型1の内面における軸方向の全域又は一部領域に設けられていると、十分な光沢度等の光学的特性を得ることができると共に、光沢度等の光学的特性を制御することができ、しかも、ベルトの捩れや変形、ベルト一周での位置検知、及び、ベルトの周期的なタイミング検知が可能となる無端状ベルトを形成することができる。
【0056】
本発明においては、前記研磨又は研削による微少な凹凸は、軸方向に所定の面粗度とされて設けられる。このような軸方向に所定の面粗度とされた微少な凹凸は、例えば、周方向の円筒研磨又は円筒研削によって設けられる(図4の(a)を参照。)。このように、研磨又は研削による微少な凹凸が軸方向に所定の面粗度とされて設けられていると、周方向の光沢度が軸方向の光沢度よりも大きい無端状ベルトを形成することができる。
【0057】
本発明においては、前記研磨又は研削による微少な凹凸は、周方向に所定の面粗度とされて設けられる。このような周方向に所定の面粗度とされた微少な凹凸は、例えば、軸方向の円筒研磨又は円筒研削によって設けられる(図4の(c)を参照。)。このように、前記研磨又は研削による微少な凹凸が周方向に所定の面粗度とされて設けられていると、軸方向の光沢度が周方向の光沢度よりも大きい無端状ベルトを形成することができる。
【0058】
図4(b)に示されているように、本発明においては、前記研磨又は研削による微少な凹凸を設けた円筒状塗布型1の内表面には、好ましくは、離型層2が設けられる。このような離型層2の内表面の全域又は一部域には、円筒状塗布型1の軸方向と周方向とに異方性をもたせた面粗さとする研磨又は研削による微少な凹凸を設けてもかまわない。前記離型層2は、例えば、ポリイミド樹脂又はフッ素樹脂で構成されている。このように、前記研磨又は研削による微少な凹凸を設けた円筒状塗布型1の内表面に離型層2を設けると、円筒状塗布型1の表面の離型性が向上する。
【0059】
本発明においては、前記離型層2は、ポリイミド樹脂又はフッ素化ポリイミド樹脂を用いたが、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、及び、ポリアミドイミド樹脂から選ばれる合成樹脂を用いたものであっても、同様に製造することができる。中電気抵抗の単層無端ベルトを得るには、例えば、前記ポリアミド酸ワニス及びフッ素化ポリアミド酸ワニスにカーボンを分散させておくことができる。
【0060】
本発明の中間転写ベルトは、請求項1〜5のいずれか1項に記載された無端状ベルトからなる。このように、請求項1〜5のいずれか1項に記載された無端状ベルトからなっていると、十分な光学的特性(例えば、光沢度)を得ることができると共に、光学的特性(例えば、光沢度)を制御することができ、しかも、ベルトの捩れや変形、ベルト一周での位置検知、及び、ベルトの周期的なタイミング検知が可能となる。
【0061】
請求項3に記載された本発明の無端状ベルトを中間転写ベルトとして有する中間転写装置においては、無端状ベルトの捩れを検出する検出装置が該無端状ベルト近傍に配設される。このように、無端状ベルトの捩れを検出する検出装置が該無端状ベルト近傍に配設されると、無端状ベルトの捩れを検知することができる。また、光沢度の変化を光沢度計又はPセンサーのような光検知器で検出し、所定の光強度以下になったときに無端状ベルトを停止するようにすれば、無端状ベルトの亀裂や破断を未然に防止することができる。
【0062】
請求項4に記載された本発明の無端状ベルトを中間転写ベルトとして有する中間転写装置においては、無端状ベルトが一周する間に光沢度の急激な増加又は減少を検出する検出装置が配設されている。無端状ベルトが一周する間に光沢度の急激な増加又は減少を検出する検出装置が配設されているので、無端状ベルトの回転速度や、無端状ベルトの所定位置を検知することが可能となる。また、本発明の中間転写装置によれば、無端状ベルトに反射膜を新たに付け加えることもなく、無端状ベルト自体で光沢度の急激な増加又は減少を検出できるので、中間転写装置の構成が簡略できる。
【0063】
請求項5に記載された本発明の無端状ベルトを中間転写ベルトとして有する中間転写装置においては、無端状ベルトが一周の間に定期的な光沢度の急激な増加又は減少を検出する検出装置が配設されている。このように、無端状ベルトが一周の間に定期的な光沢度の急激な増加又は減少を検出する検出装置が配設されていると、無端状ベルトの回転ムラやその補正フィードバック等が可能となる。
【実施例】
【0064】
(実施例1)
スレンレススチール(SUS)で構成される内径180mmの円筒状塗布型の内表面を回転する研磨バイト(図4の(a)を参照。)で周方向に円筒研削してその円筒軸方向の面粗さRaを0.4μmとした後、その内表面の中央部分(即ち、無端状ベルトの画像形成領域に相当する部分)を電解研磨した。この円筒状塗布型における該中央部分以外の部分(即ち、電解研磨未処理の非画像形成領域に相当する部分)での周方向の面粗さRaを測定したところ、そのRaは0.07μmであったが、電解研磨処理をした該中央部分は、その軸方向と周方向が等方的であり、その面粗さRaは0.02μm以下であった。そして、この塗布型内面の全域に0.1μm厚のフッ素樹脂で構成されるの離型層を形成した(図4の(b)を参照。)。その各部分の面粗さを確認したが、粗さは被覆前と同等であった。このようにして得た円筒状塗布型を回転させ、その内表面にカーボンブラックを分散したポリアミド酸ワニス(ポリアミック酸ワニス)を希釈した塗布液を流し込み塗布し、指触乾燥した後、円筒状塗布型の回転を止めて円筒状塗布型ごと取り外し、続いて、これを加熱炉に入れて加熱硬化して平均膜厚60μmの無端状ベルトを得た(図1(a),(b)を参照。)。
【0065】
(実施例2)
スレンレススチール(SUS)で構成される内径180mmの円筒状塗布型の内表面を回転する研磨バイト(図4の(a)を参照。)で周方向に円筒研削してその円筒軸方向の面粗さRaを0.4μmとした。この円筒状塗布型の軸方向の端部近傍部分(即ち、無端状ベルトの非画像形成領域に相当する部分)の一部の領域に、10mm×10mmの広さのレジストでマスキングして、その残り領域と画像形成領域に対応する部分は電解研磨を行なった。電解研磨未処理の非画像形成領域での周方向の面粗さを測定したところ、そのRaは0.07μmであったが、電解研磨処理部では、軸方向と周方向は等方的であり、そのRaは0.02μm以下であった。さらに、実施例1と同様に塗布型内面の全域に0.1μm厚のフッ素樹脂で構成される離型層を形成した。このようにして得た円筒状塗布型を回転させ、その内表面にカーボンブラックを分散したポリアミド酸ワニスを希釈した塗布液を流し込み塗布し、指触乾燥した後、円筒状塗布型の回転を止めて円筒状塗布型ごと取り外し、続いて、これを加熱炉に入れて加熱硬化して平均膜厚60μmの無端状ベルトを得た(図2を参照。)。
【0066】
(実施例3)
スレンレススチール(SUS)で構成される内径180mmの円筒状塗布型の内表面を回転する研磨バイト(図4の(a)を参照。)で周方向に円筒研削してその円筒軸方向の面粗さRaを0.4μmとした。この円筒状塗布型の軸方向の端部近傍部分(即ち、無端状ベルトの非画像形成領域に相当する部分)の多数の領域に、円周方向に等間隔に配置された10mm×10mmの広さのレジストでマスキングして、その残りの領域と画像形成領域に対応する部分は電解研磨を行なった。電解研磨未処理の非画像形成領域での周方向の面粗さを測定したところ、その面粗さRaは0.07μmであったが、電解研磨処理部では、軸方向と周方向は等方的であり、その面粗さRaは0.02μm以下であった。さらに、実施例1と同様に塗布型内面の全域に0.1μm厚のフッ素樹脂で構成される離型層を形成した。このようにして得た円筒状塗布型を回転させ、その内表面にカーボンブラックを分散したポリアミド酸ワニスを希釈した塗布液を流し込み塗布し、指触乾燥した後、円筒状塗布型の回転を止めて円筒状塗布型ごと取り外し、続いて、これを加熱炉に入れて加熱硬化して平均膜厚60μmの無端状ベルトを得た(図3を参照。)。
【0067】
(実施例4)
アルミニウムで構成される内径180mmの円筒状塗布型の内表面を回転する研磨バイト(図4の(a)を参照。)で周方向に円筒研削してその円筒軸方向の面粗さRaを0.4μmとした。そして、この円筒状塗布型の表面全面をバフ研磨して面粗さをRa0.02μm以下とした後、その全面にフッ素樹脂を20μm厚に被覆した。次に、無端状ベルトの非画像形成領域の端部に相当する一部領域を10mm×10mmの広さにメッシュ#400の研磨テープで軸方向へ研磨して周方向の面粗さRaを0.4μmとした。軸方向の面粗さRaは0.04μmであった。このようにして得た円筒状塗布型を回転させ、その内表面にカーボンブラックを分散したポリアミド酸ワニスを希釈した塗布液を流し込み塗布し、指触乾燥した後、円筒状塗布型の回転を止めて円筒状塗布型ごと取り外し、続いて、これを加熱炉に入れて加熱硬化して平均膜厚60μmの無端状ベルトを得た(図2を参照。)。
【0068】
(実施例5)
アルミニウムで構成される内径180mmの円筒状塗布型の内表面を回転する研磨バイト又は研磨テープ(図4の(a)を参照。)で周方向に円筒研削してその円筒軸方向の面粗さRaを0.4μmとした。そして、この円筒状塗布型の表面全面をバフ研磨して面粗さRaを0.02μm以下とした後、その全面にフッ素樹脂を20μm厚に被覆した。次に、非画像形成領域の端部に相当する領域で円周方向に等間隔の所定部分と画像形成領域に対応する部分は残して非画像形成領域で等間隔の所定領域にメッシュ#400の研磨ペーパーで軸方向へ研磨して周方向の面粗さRaを0.4μmとした。軸方向の面粗さRaは0.04μmであった。このようにして得た円筒状塗布型を回転させ、その内表面にカーボンブラックを分散したポリアミド酸ワニスを希釈した塗布液を流し込み塗布し、指触乾燥した後、円筒状塗布型の回転を止めて円筒状塗布型ごと取り外し、続いて、これを加熱炉に入れて加熱硬化して平均膜厚60μmの無端状ベルトを得た(図3を参照。)。
【0069】
(実施例6)
(a)アルミニウムで構成される内径180mmの円筒状塗布型の円筒状塗布型の内表面を回転する研磨テープによって周方向に研磨した後、その内表面の中央部分(即ち、無端状ベルトの画像形成領域に相当する部分)を電解研磨する工程、(b)円筒状塗布型の内表面にフッ素樹脂で構成される離型層を形成して、円筒状塗布型の軸方向の端部近傍部分(即ち、無端状ベルトの非画像形成領域に相当する部分)に軸方向と周方向とで面粗度の異なっていない領域、及び、円筒状塗布型の中央部分に軸方向と周方向とで面粗度の異なる領域を形成する工程、(c)軸方向と周方向とで面粗度の異なっていない領域の内表面を軸方向に前後する研磨テープによって軸方向に研磨する工程、(d)円筒状塗布型の内表面にポリアミド酸ワニスを塗布して塗布膜を形成することにより、異方性領域形成部及び等方性領域形成部を形成する工程、並びに、(e)塗布膜をカッターで所望の寸法に切断して無端状ベルトとする工程(図4における(a)〜(e)を参照。)、を順次経て、無端状ベルト(図1を参照。)を得た。
【0070】
(比較例1)
実施例1と同様に形成した円筒状塗布型の内面全域をクロムメッキで面粗さRaを0.02μm以下として、その全面にフッ素樹脂を2μm厚に被覆し平滑な面を形成した。このようにして得た円筒状塗布型を回転させ、その内表面にカーボンブラックを分散したポリアミド酸ワニスを希釈した塗布液を流し込み塗布し、指触乾燥した後、円筒状塗布型の回転を止めて円筒状塗布型ごと取り外し、続いて、これを加熱炉に入れて加熱硬化して平均膜厚60μmの無端状ベルトを得た。この無端状ベルトに、従来どおり、端部に横ずれ防止の寄り止めと片面アルミ薄膜層を形成した補強テープを貼り付けて、レーザー加工で間隔のピッチを設け、さらに、無端状ベルトの端部表面に10mm×10mmのアルミ薄層を貼り付けた無端状ベルトを作成した。
【0071】
以上、実施例1〜5及び比較例1で得た無端状ベルトについて次の評価を行った。
【0072】
(評価1)
(ア)実施例1で用いた周方向に円筒研削した円筒状塗布型表面における軸方向及び周方向の面粗さRa(μm)、(イ)実施例1で得られた無端状ベルト表面及び無端状ベルト裏面における軸方向及び周方向の面粗さRa(μm)、並びに、(ウ)実施例1で得られた無端状ベルト表面及び無端状ベルト裏面における軸方向及び周方向の光沢度、の関係を調べたところ、次の表1に示される測定結果が得られた。また、実施例1〜4及び比較例1で用いた円筒状塗布型表面の軸方向を0度、周方向を90度とし、その間の角度を変えた場合の無端状ベルトの光沢度の関係を調べたところ、次の表2に示される測定結果が得られた。なお、光沢度の測定に当たっては、光沢度計として日本電色グロスチェッカーPG−1(入射角度60度)を用いた。光量検知のPセンサーの出力は、濃度調整のために最低で3.5V必要であるが、4.0V以上とした。また、センサー出力については、これと反射面の光沢度と比例することがわかっており、3.5Vのセンサー出力に対しては、光沢度が89であり、そして、4.0Vのセンサー出力に対しては、光沢度が100強である。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
表1からみると、円筒状塗布型の面粗さと得られた無端状ベルトの光沢度は対応していることがわかる。また、その光沢度は、異方性を持つことがわかる。そして、表2からみると、円筒状塗布型の面粗さの角度に対する光沢度の変化は、リニヤーに変化するのではなく、面粗さの角度が周方向に近づいた時に、光沢度が急激に増加することがわかる。
【0076】
実施例1で得た無端状ベルトを、光沢度が80に以下になったときにベルトの回転を停止するようにしたフィードバック機構を有する捩れ防止機構を設けた転写ユニット(リコー社製、Imajio Color 5100)に、搭載して、画像形成を繰り返したところ、光沢度が下がり始めて70以下になった時点でベルトの回転は停止した。ユニットを取り外して無端状ベルトを観察すると、その一端部で捩れてゆがんでいた。捩れを戻して再度取り付けて作像を繰り返したが、画像には問題なかった。他方、停止機構を解除し光沢度が80以下に下がってもそのまま繰り返したところ、光沢度が50付近になった時点で、無端状ベルトは亀裂を生じて停止した。
【0077】
(評価2)
実施例2で得た無端状ベルト及び実施例4で得た無端状ベルトを、異方性を付与した領域を基準マークとして光沢度の大小を検知して同期タイミングを読みとることにより同期タイミングを調整するようにしたフィードバック機構を設けた転写ユニット(リコー社製、Imajio Color 5100)に、搭載して、画像形成を繰り返したところ、画像での色ずれがなく良好な画像が得られた。
【0078】
(評価3)
実施例3で得た無端状ベルト及び実施例5で得た無端状ベルトを、光沢度の大小を検知してベルトの位置を読みとり、同期をフィードバック機構を設けた転写ユニット(リコー社製、Imajio Color 5100)に、搭載して、画像形成を繰り返したところ、無端状ベルトの走行性は安定しており、また、画像での色ずれがなく良好な画像が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の一実施形態を示す無端状ベルトを示す図であって、(a)は、その断面図であり、そして、(b)は、その斜視図である。
【図2】本発明の他の一実施形態を示す無端状ベルトの斜視図である。
【図3】本発明の他の一実施形態を示す無端状ベルトの斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態を示す無端状ベルトの製造過程を示す説明図であって、(a)は、円筒状塗布型の内表面を周方向に研磨している状態を示し、(b)は、円筒状塗布型の内表面に離型層を形成した状態を示し、(c)は、離型層を形成した円筒状塗布型の内表面を周方向に研磨している状態を示し、(d)は、円筒状塗布型の内表面に塗布膜を形成した状態を示し、そして、(e)は、塗布膜を所望の寸法に切断して無端状ベルトとする状態を示す。
【符号の説明】
【0080】
1 円筒状塗布型
2 離型層
2a 軸方向と周方向とで面粗度の異なっていない領域
2b 軸方向と周方向とで面粗度の異なる領域
3 塗布膜
3a 異方性領域形成部
3b 等方性領域形成部
4 無端状ベルト
4a 異方性領域形成部
4b 等方性領域形成部
5 無端状ベルト
5a 無端状ベルトの軸方向と周方向とに光沢度異方性を有する一つの領域(異方性領域形成部)
5b 等方性領域形成部
6 無端状ベルト
6a 無端状ベルトの軸方向と周方向とに光沢度異方性を有する多数の領域(異方性領域形成部)
6b 等方性領域形成部
7 研磨バイト又は研磨テープ
8 カッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向と周方向とに異方性をもたせた面粗さとする微少な凹凸を一方の表面に有する合成樹脂で構成される無端状ベルトにおいて、
(イ)前記微少な凹凸が、円筒状成形型の内面に設けられた研磨又は研削による微少な凹凸の転写によって形成され、
(ロ)前記微少な凹凸が、前記無端状ベルトの軸方向の全域又は一部領域に設けられ、そして、
(ハ)前記無端状ベルトの軸方向の全域又は一部領域の光学的な特性が、前記微少な凹凸によってもたらされると共に、該無端状ベルトの軸方向と周方向とに異方性を有する
ことを特徴とする無端状ベルト。
【請求項2】
前記合成樹脂が、ポリイミド樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、及び、ポリアミドイミド樹脂から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の無端状ベルト。
【請求項3】
前記無端状ベルトの軸方向と周方向とに対する光沢度が異方性であり、かつ、該無端状ベルトの周方向の光沢度がその軸方向の光沢度より大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の無端状ベルト。
【請求項4】
前記無端状ベルトの軸方向の端部領域に、該無端状ベルトの軸方向と周方向とに光沢度異方性を有する一つの領域を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の無端状ベルト。
【請求項5】
前記無端状ベルトの軸方向の端部領域に、該無端状ベルトの軸方向と周方向とに光沢度異方性を有する多数の領域を等間隔に形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の無端状ベルト。
【請求項6】
1)円筒状塗布型の軸方向と周方向とに異方性をもたせた面粗さとする研磨又は研削による微少な凹凸が該円筒状塗布型の内面における軸方向の全域又は一部領域に設けられた円筒状塗布型を準備する工程、
2)前記円筒状塗布型を回転させてその内表面にポリアミド酸ワニスを塗布することによりポリアミド酸塗布膜を形成する工程、
3)前記ポリアミド酸塗布膜を加熱硬化させてポリイミド樹脂で構成される円筒膜を形成する工程、及び、
4)前記ポリイミド樹脂で構成される円筒膜を円筒状塗布型から剥離する工程
を順次経て無端状ベルトを製造することを特徴とする無端状ベルトの製造方法。
【請求項7】
円筒状塗布型の軸方向と周方向とに異方性をもたせた面粗さとする研磨又は研削による微少な凹凸が、該円筒状塗布型の内面における軸方向の全域又は一部領域に設けられていることを特徴とする円筒状塗布型。
【請求項8】
前記研磨又は研削による微少な凹凸が、軸方向に所定の面粗度とされて設けられていることを特徴とする請求項7に記載の円筒状塗布型。
【請求項9】
前記軸方向に所定の面粗度とされた微少な凹凸が、周方向の円筒研磨又は円筒研削によって設けられていることを特徴とする請求項8に記載の円筒状塗布型。
【請求項10】
前記研磨又は研削による微少な凹凸が、周方向に所定の面粗度とされて設けられていることを特徴とする請求項7に記載の円筒状塗布型。
【請求項11】
前記周方向に所定の面粗度とされた研磨又は研削による微少な凹凸が、軸方向の円筒研磨又は円筒研削によって設けられていることを特徴とする請求項10に記載の円筒状塗布型。
【請求項12】
前記研磨又は研削による微少な凹凸を設けた円筒状塗布型の内表面に離型層を設けたことを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載の円筒状塗布型。
【請求項13】
前記円筒状塗布型の軸方向と周方向とに異方性をもたせた面粗さとする研磨又は研削による微少な凹凸が、前記離型層の内表面の全域又は一部域に設けられていることを特徴とする請求項12に記載された円筒状塗布型。
【請求項14】
前記離型層が、ポリイミド樹脂又はフッ素樹脂で構成されていることを特徴とする請求項12又は13に記載の円筒状塗布型。
【請求項15】
請求項1〜5のいずれか1項に記載された無端状ベルトからなることを特徴とする中間転写ベルト。
【請求項16】
請求項3に記載された無端状ベルトを中間転写ベルトとして有する中間転写装置において、該無端状ベルトの捩れを検出する検出装置が該無端状ベルト近傍に配設されていることを特徴とする中間転写装置。
【請求項17】
請求項4に記載された無端状ベルトを中間転写ベルトとして有する中間転写装置において、該無端状ベルトが一周の間に光沢度の急激な増加又は減少を検出する検出装置が配設されていることを特徴とする中間転写装置。
【請求項18】
請求項5に記載された無端状ベルトを中間転写ベルトとして有する中間転写装置において、該無端状ベルトが一周の間に定期的な光沢度の急激な増加又は減少を検出する検出装置が配設されていることを特徴とする中間転写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−11049(P2006−11049A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188194(P2004−188194)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】