説明

無線アクセスポイント決定方法及び無線通信器

【課題】従来の固定機では、電源投入時の立ち上がり時間が長くなる、又はリアルタイム通信中に通信が途絶えるため通信品質が劣化するという課題があった。
【解決手段】本発明の無線アクセスポイント決定方法は、固定機1により、第1の時点において、複数のAP2を検索してAP情報を取得して第1の情報を作成する検索処理と、第1の情報のうち、最も強い前記電界強度Fを有するAP2を選択して記憶し、第1の時点以前の第2の時点における複数のAP情報からなる第2の情報と第1の情報とを比較して、固定機1とAP2との関係の変化を判定し、新たに適正な帰属AP21が見つかったと判定されたときは、第1の情報に基づき第2の情報を更新する更新処理と、適正な前記帰属AP21が見つからなかったと判定されたときは、再度検索を実行し、適正な帰属AP21が見つける再検索処理とを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信を用いて通信を行う固定電話機やビデオ通信装置等のリアルタイム通信装置であって、固定場所に設置されて使用される固定機の無線アクセスポイントの決定方法及びこれを用いた無線通信器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、固定機である無線通信器の電源投入時又は通信中の無線アクセスポイント(以下単に「AP」という。)のダウン時には、無条件にAPの検索処理を実施する技術が一般的である。
【0003】
移動機においては、特許文献1の段落0028に記載されているように、移動機の移動線に注目し、APの履歴情報を残すことで、以前アクセスしたAPへハンドオーバを実施する場合には、その周囲無線アクセスポイントの状況が判断できるため、検索時間短縮が可能であるとする技術が知られている。更に、段落0029には、履歴情報の変形パターンにより検索を実施せずに、無線アクセスポイントに帰属処理を実施することが可能であるとの技術の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−306510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の固定機である無線通信器は、電源投入時又は通信中のAPのダウン時には、無条件にAPの検索処理を実施するので、電源投入時の立ち上がり時間が長くなる、或いは、リアルタイム通信中に通信が途絶えるため通信品質が劣化するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の無線アクセスポイント決定方法は、第1の情報を記憶する第1の記憶手段及び第2の情報を記憶する第2の記憶手段を有し、相互に無線通信を行う固定場所設置型の複数の対象装置と、前記複数の対象装置間の無線通信の中継を行う複数の無線アクセスポントとを備えた無線通信システムにおいて、前記各対象装置は、第1の時点において、通信可能な複数の前記無線アクセスポイントを検索して前記無線アクセスポイントの識別子及び電界強度情報を有する無線アクセスポイント情報を取得して前記第1の情報を作成し、前記第1の記憶手段に記憶する検索処理と、前記第1の情報のうち、最も強い前記電界強度を有する前記無線アクセスポイントを選択してこれを第1の帰属無線アクセスポイントとし、その第1の無線アクセスポイントにおける前記無線アクセスポイント情報を第1の帰属無線アクセスポイント情報として前記第1の記憶手段に記憶する帰属処理とを行う。
【0007】
更に、前記第1の時点以前の第2の時点における複数の前記無線アクセスポイント情報からなる第2の情報と前記第1の情報とを比較して、前記対象装置と前記対象装置が通信可能な前記無線アクセスポイントとの関係の変化を解析し、前記第1の帰属アクセスポイントが適正か否かを判定する帰属判定処理と、前記帰属判定処理において、新たに適正な前記帰属無線アクセスポイントが見つかったと判定されたときは、前記第1の情報に基づき前記第2の情報を更新して前記第2の記憶手段に与える更新処理と、前記帰属判定処理において、適正な前記帰属無線アクセスポイントが見つからなかったと判定されたときには、前記検索処理及び前記帰属処理を再度行う再検索再帰属処理を実施するタイミングを判断し、その結果に応じた待機時間の経過後に前記再検索再帰属処理を実行し、前記再検索再帰属処理を一定回数繰り返しても適正な前記帰属無線アクセスポイントが見つからなかったときは、前記再検索再帰属処理の実行を停止する再検索再帰属判定処理とを行う。
【0008】
本発明の無線通信器は、第1の記憶手段と、第2の記憶手段と、無線通信制御手段と、帰属先適正度判定手段とを備えている。
【0009】
前記第1の記憶手段は、第1の時点における複数の無線アクセスポイントの識別子及び電界強度情報を有する無線アクセスポイント情報からなる第1の情報を記憶する機能を有している。
【0010】
前記第2の記憶手段は、前記第1の時点以前の第2の時点における複数の前記無線アクセスポイントの前記識別子及び前記電界強度情報を有する無線アクセスポイント情報からなる第2の情報を記憶する機能を有している。
【0011】
前記無線通信制御手段は、通信可能な複数の前記無線アクセスポイントを検索して前記無線アクセスポイント情報を取得し、前記第1の情報を作成して前記第1の記憶手段に記憶する検索手段と、前記第1の情報から最も強い前記電界強度を有する前記無線アクセスポイントを選択し、その無線アクセスポイント情報を第1の帰属無線アクセスポイント情報として前記第1の記憶手段に記憶する選択手段とを有している。
【0012】
前記帰属先適正度判定手段は、前記第1の情報と前記第2の情報を比較して前記対象装置と前記対象装置が通信可能な前記無線アクセスポイントとの関係の変化を判定する帰属判定手段と、前記帰属判定手段の判定結果に応じて、前記第1の情報に基づき前記第2の情報を更新して前記第2の記憶手段に与える更新手段と、前記帰属判定手段の判定結果に応じて、再度前記無線アクセスポイントの検索帰属処理を行う再検帰属手段とを有している。
【発明の効果】
【0013】
本発明の無線アクセスポイント決定方法及び無線通信器によれば、対象装置の電源投入時又はAPのダウンが発生したとき、第1の情報である新たに検索したAP情報と第2の情報である過去に検索したAP情報とを比較し、対象装置とその周囲のAPとの関係の変化を判定して、第2の情報を第1の情報に基づいて更新するか否か、又は再検索再帰属判定処理を実行するか否かを決めるので、無駄な検索時間を削除することができる。
【0014】
更に、再検索再帰属判定処理において、通信中には、再検索再帰属判定処理を実行しないようにしたので通信の瞬断が許されないリアルタイム通信においてその通信品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本発明の実施例1における図2の固定機の概略を示す構成図である。
【図2】図2は本発明の実施例1における無線通信システムの全体を示す構成図である。
【図3】図3は図1の記憶装置の構成を示す説明図である。
【図4】図4は図3のAP情報の構成を示す説明図である。
【図5】図5は電源投入時の検索処理及び帰属処理を示すフローチャートである。
【図6】図6は帰属判定処理を示すフローチャートである。
【図7】図7は再検索再帰属判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0017】
(実施例1における無線通信システムの構成)
図2は、本発明の実施例1における無線通信システムの全体を示す構成図である。
【0018】
本実施例1の無線通信システムは、相互に無線通信を行う固定場所設置型の複数の対象装置(例えば、固定電話機、ビデオ通信装置等の固定機)1と、複数の固定機1の無線通信の中継を行う複数の無線アクセスポイント2(=2−1〜2−7)とから構成されている。なお、無線アクセスポイント2を以下、単に「AP2」という。
【0019】
各AP2は、無線通信エリアA(A1〜A7)を有しており、このエリア内に固定機1が設置されているとき固定機1は、そのAP2と通信が可能となる。例えば、図2において、固定機1は、無線通信エリアA1、A2、及びA5に属しており、AP2−1、AP2-2及びAP2−5と通信が可能になっている。
【0020】
固定機1が接続される可能性がある複数のAPは、通信エリア圏を構成している。例えば、図2の例では、AP2−1〜AP2−7は、一つの通信エリア圏内Inを構成しており、AP3−1及び3−2は通信エリア圏外Outに存在している。
【0021】
通信サービスエリア圏内Inが全体でひとつである必要はなく、AP2−1〜2−5のグループとAP2−6及び2−7のグループのように通信可能な範囲が重ならない2以上のグループが同一通信サービスエリア圏内Inに存在してもよい。
【0022】
一方、固定機1が接続されることのないAP2は、単に無線妨害源とみなし図2のように通信サービスエリア圏外Outに存在していることもあれば通信サービスエリア圏内Inに存在することもある。これら無線通信システムのネットワーク上に存在している固定機1は、一度ネットワークに接続された場合には、場所を移動することがないことを想定しているが、使用者の引越し等のように比較的稀な状況によって不定期に通信サービスエリア圏内Inで接続可能な範囲を移動する可能性を持つ。
【0023】
(実施例1における固定機1の構成)
図1は、本発明の実施例1における図2の固定機の概略を示す構成図である。
【0024】
固定機1は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリで構成された第1の記憶手段(例えば、一時記憶エリア)20とフラッシュメモリ等の不揮発性メモリで構成された第2の記憶手段(例えば、記憶エリア)30とRAM等の揮発性メモリで構成された第3の記憶手段(例えば、一時記憶)35とを有する記憶装置10と、アンテナ46を介してAP2と無線による通信を行い変復調処理やアナログーデジタル変換、デジタルーアナログ変換等を行い、送受信データ45bを無線通信制御APP42との間で受け渡す無線通信インタフェース部45と及び通信制御を行う無線通信制御アプリケーションプログラム(以下「無線通信制御APP」という。)42から構成される無線通信制御手段と、固定機1とAP2との関係の変化を判定する帰属先適正度判定部41とを備えている。
【0025】
更に、固定機1は、無線通信制御APP42と送受信データ43aの受け渡しを行い装置全体を制御する機能アプリケーション部である機能アプリケーションプログラム(以下、機能APPという。)43と、利用者の入力を受付、利用者への通知を出力するユーザ操作部44と、時間の計測を行うタイマ47とを備えている。これらの無線通信インタフェース部45、通信制御無線通信制御APP42、帰属先適正度判定部41、機能APP43、及びユーザ操作部44は、図示しない単独又は共通のプロセッサを有しており、所定のプログラム(=コード)によって動作するように構成されている。
【0026】
無線通信インタフェース部45は、固定機1に電源が投入されると、無線通信制御APP42からの制御信号45cに基づき周辺のAP2を検索し、見つかったAP2のAP情報を情報45aとして無線通信制御へ出力する検索処理を行う。無線通信制御APP42は、入力された複数のAP情報42cを記憶する。更に、無線インタフェース部45は、複数の選択されたAP情報のうちから最も強い電波を有するAP2を選択してそのAP情報41bを記憶する帰属処理を実行する。無線通信制御APP42は、帰属先適正度判定部41に対して、帰属判定処理を再判定要求信号42aにより依頼し、帰属先適正度判定部41は、固定機1と周囲のAP2との関係の変化を判定して、更新処理、再検索再帰属判定処理を実行する。
【0027】
(実施例1における記憶装置の構成)
図3は、図1の記憶装置の構成を示す説明図である。
【0028】
記憶装置10は、RAM等の揮発性メモリから構成される一時記憶エリア20と、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリから構成される記憶エリア30とを有している。一時記憶エリア20には、第1の時点(例えば、今回の電源投入時)で作成された第1のアクセスポイント接続先候補リスト(以下「AP接続先候補リスト」という。)22と第1の帰属アクセスポイントのAP情報(例えば、帰属しているAP)21からなる第1の情報が記憶されており、不揮発性の記憶エリア30には、第1の時点以前である第2の時点(例えば、前回の電源投入時)における第2のアクセスポイント接続先候補リスト(以下「AP接続先候補リスト」という。)32と第2の帰属アクセスポイントのAP帰属情報(例えば、帰属していたAP)31からなる第2の情報が記憶されている。なお、より正確には、第1の時点とは、固定機1に電源が投入された時点、又は固定機1が帰属しているAP21に対応するAP2と通信不可能と判定された時点であり、第2の時点とは、第1の時点以前であって、固定機1に電源が投入された時点、又は固定機1が帰属しているAP21に対応するAP2と通信不可能と判定された時点である。実施例1の説明においては、説明を簡略化かするため第1の時点を、今回の電源投入時、第2時点を、前回の電源投入時で説明する。
【0029】
第1の時点において、固定機1は、通信可能な複数のAP2を検索して、そのAP2のAP情報を取得し、AP接続先候補リスト22を作成して一時記憶エリア20に記憶する。AP接続先候補リスト22は、アクセスポイント候補のAP情報(以下「AP候補」という。)23−1〜23−Nから構成されている。ここで、AP候補23−1〜23−Nを特に区別する必要のないときは、AP候補23と表記することにする。更に、固定機1は、このAP接続先候補リスト22から所定のAP候補23を選択して帰属しているAP21として一時記憶エリア20に記憶する。
【0030】
同様に、不揮発性の記憶エリアには、第2の時点のAP接続先候補リスト32と帰属AP情報31が記憶されており、AP接続先候補リスト32は、AP候補33−1〜33−Nから構成されている。AP候補33−1〜33−Nを特に区別する必要のないときは、AP候補33と表記することにする。
【0031】
図4(a)、(b)は、図3のAP情報の構成を示す説明図である。
AP情報は、アクセスポイント識別子(例えば、AP識別子)Rと電界強度情報(例えば、電界強度)Fとから構成されている。AP識別子Rは、例えば、IEEE802.11シリーズでは、BSSID(Basic Service Set Identifier)である。電界強度Fは、固定機1におけるAP2の検索時にAP2からの電波を固定機1で測定された値である。
【0032】
前述した帰属しているAP21、AP候補23、帰属していたAP31、AP候補33、及び一時記憶35に記憶される、帰属しているAP21は、全て、AP情報であり、AP識別子Rと、電界強度Fとを1組として保持している。これらのAP情報群は、電源が投入された第1の時点において、固定機1とその周辺のAP2との関係の変化を判定するために使用される。例えば、電源が投入される前に固定機1が移動させられているのか否か等の判定に使用される。また、保持されるAP接続先候補リスト22のAP候補23−1〜23−Nは、比較処理が容易であるように、予めソート処理が実施されていることが望ましい。AP接続先候補リスト32についても同様である。ソートは、例えば、電界強度Fをキーにして行われる。
【0033】
なお、帰属しているAP21のAP識別子Rを示す場合は、帰属しているAP21Rと表記する。帰属しているAP21の電界強度Fを示す場合は、帰属しているAP21Fと表記する。帰属していたAP31、AP候補23−1〜23−N、AP先候補33−1〜33−Nについても同様の表記とする。
【0034】
AP接続先候補リスト22のリストに含まれるAP候補23−1〜23−Nの各要素のAP識別子Rをまとめて示す場合は、単にAP候補23Rと表記する。AP接続先候補リスト32のリストに含まれるAP候補33−1〜33−Nの各要素のAP識別子Rをまとめて示す場合は、単にAP候補32Rと表記する。AP接続先候補リスト22のリストに含まれるAP候補23−1〜23−Nの各要素の電界強度Fをまとめて示す場合は、単にAP候補23Fと表記する。AP接続先候補リスト32のリストに含まれるAP候補33−1〜33−Nの各要素の電界強度Fをまとめて示す場合は、単にAP候補33Fと表記する。
【0035】
(実施例1における無線アクセスポイント決定方法)
図5は、電源投入時の検索処理及び帰属処理を示すフローチャートである。
【0036】
固定機1の電源を投入すると処理が開始され、ステップS1において、無線インタフェース部45によって、AP2の初回の検索処理が実行される。
【0037】
検索処理は、例えば、プローブ要求(Probe-Request)に対するプローブ応答(Probe-Response)が返って来た場合のみMAC(Media Access Control)でリストアップする第1の方法、見えるビーコン(Beacon)を全てMACでリストアップする第2の方法、受信している全てのパケットのMACでリストアップする第3の方法等があり、第1の方法より第2の方法が、第2の方法より第3の方法が、無関係なMACがリストアップされリストが肥大化する危険性が増える。
【0038】
第2の方法、及び第3の方法しか取れない仕様のモジュールを使用している場合における対処のひとつとして、使用するAP2のベンダーが予め判断できる場合にはベンダーコードでフィルタを掛けてしまう方法もある。但し、第3の方法では、AP2と同一ベンダーの端末が含まれるとフィルタが有効に働かない恐れがある。
【0039】
ステップS2において、無線通信制御APP42は、検索処理により得られた結果をAP接続先候補リスト22に記憶する。
【0040】
ステップS3〜S6において帰属処理が実行される。ステップS3において、無線インタフェース部45は、AP接続先候補先リスト22から、最も電界強度Fの強いAP2を選択し、ステップS4及びステップS5において、選択されたAP2のAP情報を無線通信制御APP42により、帰属しているAP21に記憶する。更に、一時記憶エリア20上の図示しないカウンタである再検索回数Sに対して再検索回数0を示す初期値を設定する。以上の処理により電源投入時における検索処理及び帰属処理が終了する。
【0041】
図6は、帰属判定処理を示すフローチャートである。
図5で説明した電源投入時の検索処理及び帰属処理が終了すると、帰属判定処理が開始され、帰属しているAP21の適正度を判断する。
【0042】
図5においては、帰属しているAP21、帰属していたAP31、AP接続先候補リスト22、AP接続先候補リスト32、帰属しているAP21R、AP接続先候補リスト22R、帰属していたAP31R、AP接続先候補リスト32R、帰属しているAP21F、AP候補23F、帰属していたAP31F、及びAP候補33Fを省略して、単に、21、31、22、31、21R、22R、31R、32R、21F、23F、31F、及び33Fのように表記する。
【0043】
(第1のステップ;ステップS11)
ステップS11において、前回の電源投入時点で不揮発性メモリの記憶エリア30に記憶した、帰属していたAP31のAP識別子31Rと、今回の電源投入時点で揮発性メモリである一時記憶エリア20に記憶した帰属しているAP21のAP識別子21Rとを比較し、前回と同じAP2に固定機1が帰属したか否かを判断する。
【0044】
比較の結果が一致である場合は、前回の電源投入時点から固定機1は、設置された場所から移動していないものと判断し、帰属していたAP31の内容は変更が必要ないものと判断できるため、何も実施せず処理を終了する。以上で第1のステップが終了する。
【0045】
(第2のステップ;ステップS12)
ステップS11において、比較の結果が不一致であった場合には、ステップS12へ進み、帰属していたAP31のAP識別子Rと一致するAP識別子RのAP情報が今回の電源投入時に記憶したAP接続先候補リスト22の中に含まれているか否かを検索することにより、前回と同じAP2が固定機1の周囲に存在しているか否かを判断する。
【0046】
(第3のステップ;ステップS13)
ステップS12において、判断の結果が非検出となった場合は、ステップS13へ進み、前回のAP接続先候補リスト32と今回のAP接続先候補リスト22についての類似度を比較する。ステップS13において、類似度とは、各AP接続先候補リスト22、32に含まれるAP識別子Rが何パーセント以上同一かについて閾値を設けて、両者の内容が近いことを判断した結果によって決まる。例えば、20個のAP候補33と20個のAP候補23のうち15のAP候補が一致した場合は75%であると判断され、閾値が70%以上と定義されていれば類似であると判断する処理のことである。
【0047】
更に、AP候補23−1〜23−NとAP候補33−1〜33−NのAP識別子Rが同一のAP候補23、33で電界強度Fの値を比較して値の差分が、予め設定した閾値の範囲内であることを判断することでより適正な類似度を判断することも可能であり、実施例1では、この判断方法を用いている。
【0048】
ステップS13において、類似していないと判断された場合は、固定機1の設置場所が移動されたと判断できるため、一時記憶エリア20に記録されている、帰属しているAP21を適正な帰属先として再度認識し、第2の情報を第1の情報基づき更新する更新処理を行う。更新処理とは、具体的には、帰属しているAP21を帰属していたAP31へ書き込み、更に、AP接続先候補リスト22の情報をAP接続先候補リスト32へ書き込む動作を指す。
【0049】
このケースは、例えば、図2においてケースC1であり、当初、固定機1は、AP2−1に帰属していたが、固定機1が固定機1cまで移設されたため周囲のAP2の環境が大きく変わったケースである。
【0050】
(第4のステップ;ステップS14)
ステップS13において、類似していると判断された場合には、ステップS14へ進み、帰属していたAP31と帰属しているAP21との電界強度Fを比較し、近い値であるか否かを判断する。
【0051】
電界強度21Fと電界強度31Fとが近いと判断された場合には、固定機1の電源が落とされている期間にAP2が故障し、交換を行った等、帰属していたAP31の位置に別のAP識別子Rを持つAP2が設置され、帰属していたAP31Rと異なるAP識別子Rを持つAP2が新たに選択されて、帰属しているAP21が更新されたと想定される。更に、電界強度21Fと電界強度31Fとが近いので、帰属しているAP21及びAP接続先候補リスト22からなる第1の情報は、適正であると判断して、前述した通り、不揮発性メモリである記憶エリア30の第2の情報を第1の情報に基づき更新処理を行って処理を終了する。
【0052】
ステップS14において、電界強度21Fと電界強度31Fとが大きく異なる値をとるときは、適正な帰属先AP2が電源投入時点で存在しないか、存在しても検索処理及び帰属処理に失敗したことにより再検索を必要とすると判断して再検索再帰属判定処理に移行する。
【0053】
(第5のステップ;ステップS15〜ステップS17)
ステップS12において、帰属していたAP31のAP識別子Rと一致するAP識別子Rの情報が今回の電源投入時に記憶したAP接続先候補リスト22の中に含まれていたときは、帰属していたAP31が見えているにもかかわらず異なるAP2に帰属したことを示している。このときは、ステップS15に進む。ステップS15において、帰属しているAP21が帰属していたAP31より良環境か否かを判断する。帰属していたAP31の電界強度31Fに、より良環境と判断するために設けた閾値Xを加算した(31F+X)の値と帰属しているAP21の電界強度21Fとを比較する。
【0054】
比較の結果、帰属しているAP21の方が良いと判断される場合、又は、AP接続先候補リスト22に含まれる帰属していたAP31と同じAP識別子Rを持つAP2の電界強度(31⊂22)Fに、より良環境と判断するため設けた閾値Yを加算した(31⊂22)B+Yの値と帰属しているAP21の電界強度21Fで比較した結果が帰属しているAP21Bの方が良いと判断される場合、の2条件のどちらかを満たす場合には、帰属していたAP31が検索で見える距離である比較的近距離な範囲に固定機1の設置場所が移動されたと判断できるため、ステップS16、S17において、揮発性メモリである一時記憶エリア20に記録されている第1の情報を適正な帰属先として、不揮発性メモリである記憶エリア30の第2の情報を第1の情報に基づき更新して処理を終了する。
【0055】
このケースは、例えば、図2においてケースC3であり、当初、固定機1は、AP2−1に帰属していたが、固定機1が固定機1aまで移設されたためAP2−2に帰属したケースである。
【0056】
ステップS15において、帰属しているAP21が充分に良環境と判断できない場合には、適正な帰属先APが電源投入時点で存在しないか、存在しても帰属処理に失敗したことにより再検索を必要とすると判断して再検索再帰属判定処理に移行する。
【0057】
これらの適正なAP2の判定に関わる仕組みは図3の帰属先適正度判定部41に実装されるコードによって実現され、電源投入時に無線通信制御APP42からの再判定要求42aによって開始され、判定結果41aは無線通信制御APP42に渡される。
【0058】
次に、上述した帰属判定処理の判定結果を元に再検索を実施するタイミングを判断するための第6のステップ、適正と判断できるAP2に帰属できない場合に再検索をどのような間隔で実施するか決定する第7のステップ、及び適正なAP2に対して帰属が難しいと判断した場合は検索を停止する第8のステップを行う再検索処理について説明する。
【0059】
図7は、再検索処理を示すフローチャートである。
【0060】
(第6のステップ;ステップS21〜S28)
ステップS21において、検索を実施することが望ましくない期間、例えば、業務時間中等、使用される可能性が高い期間を検索抑止期間と定義し、検索抑止期間に該当しているか判断する。検索抑止期間でないときは、ステップS22において、検索を行う検索間隔をレジスタWに設定してステップS24へ進む。
【0061】
ステップS21において、検索を抑止すべき期間である場合は、ステップS23へ進み、検索を抑止していない期間よりも長い間隔である抑止中検索間隔をWに設定する。
【0062】
Wに設定された検索間隔だけ待機し、ステップS25へ進む。ステップS25において、検索実施前に検索禁止期間か否かが判定される。検索禁止期間とは、例えば、業務時間の中で特に通信の瞬断が許されないと判断される期間で、例えば電話機で考えると、お昼の前後や定時業務の終了前など頻繁に、又は長時間使用されることが、予め予想される時間帯をいう。このような時間帯では、検索を停止させる必要があり、この期間に該当している場合には検索をせず、ステップS21へ戻り、更に、検索間隔で待機する。
【0063】
ステップS25において、検索禁止期間でなかったときは、ステップS26へ進み、リアルタイム通信が実施されているか否かを機能APP43からの状態通知43aを元に確認し、リアルタイム通信中のときは、通信中検索間隔をWに設定して、ステップS24に戻る。この通信中検索間隔については、通信が終わったタイミングを直ちに検出して次の通信が始まる前に検索を終了させるために、検索間隔及抑止中検索間隔とは別の値を設定できるようにすることが望ましい。実施例1では、図7に示すように、通信中検索間隔を別途設定して待機する仕組みを持たせ、検索禁止期間の判定前(ステップS24)まで処理を戻すことで、検索禁止期間に突入した場合には直ちに余分な計算の負荷を減らすように構成している。
【0064】
ステップS26において、リアルタイム通信中でなかったときは、ステップS27へ進む。リアルタイム通信でない待機中(電話機では待受中、ビデオ配信コマーシャルを受付で流すシステムでは、ビデオデータの入れ換えタイミング等)を検出した場合は、現在の帰属しているAP21を一時記憶35に退避し、ステップS28において、再検索再帰属処理を実施する。帰属しているAP21の情報は再検索再帰属が実施されることにより変更され新しい帰属APのAP情報となり、一時記憶35に退避した情報が再検索前に帰属していたAP31となる。以上が再検索を実施するタイミングを判断するという第6のステップである。
【0065】
(第7のステップ;ステップS29〜S33)
ステップS29において、上述した第6のステップで得た帰属しているAP21と一時記憶35の内容からAP識別子Rが一致しているかの比較を実行し、両者が一致している場合には、適切なAP2であった帰属していたAP31に何らかの理由があり、現時点では適正なAP2に帰属ができないと状況と判断される。例えば、帰属していたAP31が故障した状態で取り外されたままであるため、より遠いAP2に仕方なく帰属している等の状況が考えられる。この場合は、暫く再検索は行わない方が良いと判断できるのでステップS33へ進む。
【0066】
ステップS28において、帰属しているAP21と一時記憶35の内容のAP識別子Rが一致していないときは、ステップS30において、適正なAP2として記憶した、帰属していたAP31と検索後に帰属した、帰属しているAP21のAP識別子Rとを比較して、適正なAP2に復帰できたか否かを判断する動作が実施され、比較の結果一致したときは、一時記憶エリア20に記憶されている第1の情報を適正と判断し、第1の情報に基づき第2の情報を更新して、処理を終了する。
【0067】
ステップS30において、比較の結果、不一致のときは、不適正な別のAP2に帰属したと判断される。この場合は、ステップS31において、検索後の帰属しているAP21と検索前の一時記憶35に記憶したAP2との電界強度Fが近いか、又は検索後の帰属しているAP21の方が一時記憶35記憶した検索前のAP2より良いかを比較する。
【0068】
比較の結果、検索後の帰属しているAP21と検索前の一時記憶35に記憶したAP2との電界強度Fが近いか、又は検索後の帰属しているAP21の電界強度Fの方が一時記憶35記憶した検索前のAP2の電界強度Fより良い場合は、固定機1から同程度の距離に複数の無線アクセスポイントが存在している状態であり、そのどれもが同程度に良い電界強度Fであるという状況が考えられる。この場合には、何度再検索を実施してもきりがないことになるので検索を打ち切り、一時記憶エリア20に記録されている第1の情報を適正な情報として、第1の情報に基づき、第2の情報を更新して処理を終了する。
【0069】
ステップS31において、検索後の帰属しているAP21と検索前の一時記憶35に記憶したAP2との電界強度Fが近くなく、更に、検索後の帰属しているAP21の方が一時記憶35に記憶した検索前のAP2より、電界強度Fが明らかに悪い場合は、通信の安定のために、検索のやり直しを直ちに実施しなくてはならず、短い待ち時間を経過後、ステップS34へ進む。以上が第7のステップで、適正と判断できるAP2に帰属できない場合に再検索をどのような間隔で実施するかを決定する。
【0070】
(第8のステップ;ステップS34〜S35)
ステップS34において、再検索回数Sの値をインクリメントし、ステップS35において、再検索が必要となった状況をログに記録する。ログに記録する情報の例として再検索を実施した回数Sやどのルートを経由した結果であるかを記録するための事前に待機した時間の情報、及びその時点で帰属を行っている帰属しているAP21とその比較対象の一時記憶35の内容や帰属していたAP31等の情報が考えられる。
【0071】
ステップS36において、検索回数Sが検索停止回数を越えたか否かが判定される。越えていないときは、ステップS21へ戻る。越えたときは、検索を停止し、一時記憶エリア20に記録されている第1の情報を適正な情報として、第1の情報に基づき、第2の情報を更新して処理を終了する。以上が第8のステップで、適正なAP2に帰属することが難しいと判断したときには、検索を停止する処理である。
【0072】
検索の停止の決定をする状況には2つあり、長い待機時間を設定したケース(ステップS33)では、故障したアクセスポイントが修理、または交換されることを期待して待機するが、改善がない場合で、このケースは以前の場所に近いサービスエリア圏外付近に設置されてしまった場合に発生する可能性がある。短い待機時間のケース(ステップS32)では、同程度の距離に複数のアクセスポイントがあり、また無線の環境が悪いために電界強度Fが大きく揺らいでしまい、いつまでも判定条件を満たせない場合等に発生する可能性がある。いずれのケースでも再検索を継続する意味はないいため、一時記憶エリア20の第1の情報を適正な情報として再度認識して、第1の情報に基づき第2の情報の更新を行い、処理を終了する。
【0073】
以上述べたように適正な帰属先として確定している記憶エリア30の第2の情報との比較を行う第1の情報は、再検索のたびに変更されてしまう。本再検索再帰属判定処理では、第1の情報と第2の情報とを比較することにより、更に再検索を実施するか否かの判断を行う。一時記憶35を設けたことにより、第1の情報のもつAP接続先候補リスト22を用いないで判断が可能となるため、第1の情報と同様な構造の大きなメモリエリアを作る必要がなくなる。これによりメモリ資源の削減と本再検索処理における比較処理の簡素化を実現している。
【0074】
(実施例1の効果)
本実施例1の無線アクセスポイント決定方法によれば、次の(1)〜(14)の効果がある。
【0075】
(1) 揮発性メモリである一時記憶エリア20と不揮発性メモリである記憶エリア30を備えているので固定機1の電源が投入されていない期間においても適正と確定している帰属先の情報を失うことがなく、電源投入時で帰属先となったAP2が適正であるかの判断が可能となる。
【0076】
(2) 図3に示す簡素なメモリ配列構造のみで適正な帰属先を判断することが可能な方法を示したことで、処理の複雑化を防止し、実装コストの低減と開発期間の短縮、処理速度の向上に効果が得られる。
【0077】
(3) 図5に示した方法により、電源投入時に帰属した無線AP2の情報と、その時点で固定機1の周囲に複数存在しているAP2の情報を知る効果が得られる。
【0078】
(4) 図6に示した方法により、図5で得た第1の情報と不揮発性メモリである記憶エリア30に記憶済みの適正として、確定した帰属していたAP31を含む第2の情報とを比較することにより、電源投入時に帰属しているAP21が適正であるかを判断することが可能となる。
【0079】
(5) 図6の帰属判定処理の第1のステップでは、帰属しているAP21が不揮発メモリである記憶エリア30に記憶している適正な、帰属していたAP31へ帰属したことを判断する効果が得られる。
【0080】
(6) 同第2のステップでは、電源投入時点で、第1の情報に適正な、帰属していたAP31が存在しているかを確認する効果を得られる。
【0081】
(7) 同第3のステップでは、固定機1が移動しているか否かの判断と第2のステップで得た結果に基づき、図2で示すケースC1である固定機1が遠方に移動されたか否かが判断できる効果が得られる。
【0082】
(8) 同第4のステップでは、固定機1の電源が落とされている間に、不揮発性メモリ媒体である記憶エリア30で記憶していた帰属していたAP31が交換されたか否かを判断できる効果が得られる。
【0083】
(9) 同第5のステップでは、固定機1が不揮発性メモリである記憶エリア30で記憶していた帰属していたAP31を検出できる距離で移動した、図2で示すケースC3の状況であるか否かを判断できる効果が得られる。
【0084】
(10) 図2で示したケースC2の状況は、第1のステップで帰属していたAP31へ既に帰属している場合には、再検索を実施する必要がないため移動していないと判断された場合と同様の動作となる。又、帰属していたAP31と異なるAP2に帰属している場合には、第2のステップから第5のステップのいずれかにより再検索が必要ない動作となる。以上の動作より様々な状況において、固定機1の移動が行われた場合でも図6の帰属判定処理が実施されることで不要な再検索を一切実施しないという効果が得られる。
【0085】
(11) 図7の再検索再帰属判定処理の第1のステップを実施することにより図6の帰属判定処理の結果において再検索が必要であると判断された場合、直ちに検索を実施してしまう動作ではなく、固定機1の使用者が設定した使用環境を示す設定値、特に使用者が通信を実施する状況に関する時刻に関わる設定値や実際に固定機1の動作を示す状態、特に機能APP43によって通知される状態通知43aを検出することにより、検索を実施するか否かを判断する間隔を制御する。このことにより、最も通信に影響を与えないタイミングを見計らって再検索を実施することが可能となる効果が得られる。
【0086】
(12) 同第7のステップを実施することで再検索を実施した結果を元にして帰属していたAP31へ復帰できた場合には、再検索を停止させ、不適切なAP2へ再帰属する場合には、その状況に応じて次回再検索を実施するまでの期間を決定することにより、再検索が頻繁に実施されることによる通信処理への処理コストを抑えて、更に、再検索が直ちに必要な場合は可能な限り迅速に再検索が実施されるように動作を動的に変更することが可能となる効果が得られる。
【0087】
(13) 同第8のステップを実施することにより、再検索が再度必要となった理由や状況をログ記録すると共に再検索を何度実施しても電源が投入された場所で適正なAP2を決定することが困難と考えられる状況では、検索を意図的に停止することができるという効果が得られる。
【0088】
(14) 同第6のステップの再検索を実施する前に帰属先の情報をバックアップする目的で使用するメモリを一時記憶エリア20と同じ構造ではなく、一時記憶35という記憶エリア20と比較して非常に小さなメモリエリアを準備するだけで済ませることにより、メモリ資源の削減効果と再検索を実施する理由の処理を省いて処理する仕組みを持つことによって処理コストの削減効果が得られる。
【0089】
本実施例1の無線通信器によれば、上述した(1)〜(14)の効果に加え、次の効果がある。
【0090】
図3で示した固定機1には、記憶装置10にある不揮発性メモリである記憶エリア30、揮発性メモリである一時記憶エリア20、及び一時記憶35を有しており、帰属先適正度判定部41の新規機構の追加、既存の無線通信制御APP42に僅かな変更が必要となる以外は機能APP43等従来から使用されている処理に大幅な変更を加えることなく実現可能である。更に、固定機1の機能に関する開発と無線通信制御に関する開発が分離されるために、開発コストを削減する効果と実装に必要なコストを最低限に抑える効果がある。又、容易なコードの保守が可能となり保守コスト削減の効果が得られる。
【0091】
即ち、機能APP43は、通信状況を通知する動作のみであり、無線通信制御APP42において、機能APP43からのデータを受信しているか否かを追加すれば、特に新規に追加する機能はない。
【0092】
(変形例)
本発明は、上記実施例に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(c)のようなものがある。
【0093】
(a) 実施例1では、記憶エリア30には、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリを用いることで説明したが、RAM等の揮発性メモリと記憶を継続するために、電源供給を継続するバッテリやスーパーキャパシタ等を用いる構成にしてもよい。このように構成することにより、固定機1の電源が落とされる場合においてバッテリ等の電源供給装置から揮発性メモリに対して電源を供給する仕組みを追加して実装することにより、電源投入までの期間の記憶保持を実施することが可能となる。更に、処理での高速化が可能となり、迅速な検索が可能となる効果が期待できる。
【0094】
(b) RAM等の揮発性メモリの代わりとしてフラッシュメモリ等の不揮発性メモリに電源投入時点で初期化を行ってRAMと同様な使用方法を可能とすることもできる。電源投入の時点で揮発性メモリの代わりに使用している不揮発性メモリのエリアに対して初期化を実施する仕組みを追加実装することにより揮発性メモリと同様な使い方をすることが可能となる。更に、比較的高価な揮発性メモリの領域を削減することで、コストダウンが図れる効果が期待できる。
【0095】
変形例(a)と(b)とは全く逆の構成を持つが、得られる効果も、全く逆の利点と不利な点を持つ。変形例(a)では、処理速度の向上が図れるが揮発性メモリの使用エリアが大きくなり、バッテリを搭載するなどの理由からコストが掛かる点が不利である。変形例(b)では、コストダウンの一方で処理速度の低下という不利な点が出てくる。これは揮発性メモリのサイズに余裕がある場合やコストダウンが重要な場合などの状況により柔軟な選択が可能であることを示す。特に、変形例(a)を最初に挙げている理由はバランスが取れているため汎用性が高いからである。
【0096】
(c) 図1で示したように、ユーザ操作部44において操作が実施された場合、機能APP43を経由して情報を伝達する仕組みを実装することにより、実施例1の図5、図6、図7の処理とは無関係に使用者から意図的に再検索をかける構成にしてもよい。
【0097】
図3に示す機能APP43においてユーザ操作部44からの操作情報を無線通信制御APP42に通知する機能が実装されることにより無線通信制御APP42は、帰属先適正度判定部41に判定依頼を出すことなく、再検索処理を無線インタフェース部45に指示する追加処理を加えることで、ユーザが操作を実施したトリガーで再検索を行うための機能が追加されることになる。
【0098】
この変形例では、リアルタイム通信が実施されている状態の判断や、適正なAP2に帰属しているか否かに関わらず使用者の意思で再検索を実施することが可能になる効果があり、これは固定機1が使用者により意図的に電源が投入された状態のままで移動された場合や、対象装置と同型の装置が多数収容されているネットワーク上で使用者が固定機1に発生している通信状況の悪化を確認した場合に使用者自信の手により直ちに回復させることができるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0099】
1 固定機
2 無線アクセスポイント
3 無線妨害源
10 記憶装置
20 一時記憶エリア
21 帰属しているAP
22 AP接続先候補リスト
23 AP候補
30 記憶エリア
31 帰属していたAP
32 AP接続先候補リスト
33 AP候補
35 一時記憶
41 帰属先適正度判定部
42 無線通信制御APP
43 機能APP
44 ユーザ操作部
45 無線通信インタフェース部
A 無線通信エリア
In 通信サービスエリア圏内
Out 通信サービスエリア圏外
R AP識別子
F 電界強度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の情報を記憶する第1の記憶手段及び第2の情報を記憶する第2の記憶手段を有し、無線通信を行う固定場所設置型の対象装置と、
前記対象装置の無線通信の中継を行う複数の無線アクセスポントと、
を備えた無線通信システムにおいて、
前記対象装置は、第1の時点において、通信可能な複数の前記無線アクセスポイントを検索して前記無線アクセスポイントの識別子及び電界強度情報を有する無線アクセスポイント情報を取得して前記第1の情報を作成し、前記第1の記憶手段に記憶する検索処理と、
前記第1の情報のうち、最も強い前記電界強度を有する前記無線アクセスポイントを選択してこれを第1の帰属無線アクセスポイントとし、その第1の帰属無線アクセスポイントにおける前記無線アクセスポイント情報を第1の帰属無線アクセスポイント情報として前記第1の記憶手段に記憶する帰属処理と、
前記第1の時点以前の第2の時点における複数の前記無線アクセスポイント情報からなる第2の情報と前記第1の情報とを比較して、前記対象装置と前記対象装置が通信可能な前記無線アクセスポイントとの関係の変化を解析し、前記第1の帰属アクセスポイントが適正か否かを判定する帰属判定処理と、
前記帰属判定処理において、新たに適正な前記帰属無線アクセスポイントが見つかったと判定されたときは、前記第1の情報に基づき前記第2の情報を更新して前記第2の記憶手段に与える更新処理と、
前記帰属判定処理において、適正な前記帰属無線アクセスポイントが見つからなかったと判定されたときには、前記検索処理及び前記帰属処理を再度行う再検索再帰属処理を実施するタイミングを判断し、その結果に応じた待機時間の経過後に前記再検索再帰属処理を実行し、前記再検索再帰属処理を一定回数繰り返しても適正な前記帰属無線アクセスポイントが見つからなかったときは、前記再検索再帰属処理の実行を停止する再検索再帰属判定処理と、
を行うことを特徴とする無線アクセスポイント決定方法。
【請求項2】
前記第1の時点は、前記対象装置に電源が投入された時点、又は前記対象装置が前記第1の帰属無線アクセスポイントと通信不可能と判定された時点であり、
前記第2の時点は、第1の時点以前であって、前記対象装置に電源が投入された時点、又は前記対象装置が前記第1の帰属無線アクセスポイントと通信不可能と判定された時点であることを特徴とする請求項1記載の無線アクセスポイント決定方法。
【請求項3】
前記第1の情報は、前記第1の時点における複数の前記無線アクセスポイント情報からなる第1の無線アクセスポイント接続先候補リストと、前記第1のアクセスポイント接続先候補リストのうちから選択された前記第1の帰属無線アクセスポイント情報とを有しており、
前記第2の情報は、前記第2の時点において、前記第1の無線アクセスポイント接続先候補リストに基づいて生成された第2の無線アクセスポイント接続先候補リストと、前記第1の無線帰属アクセスポイント情報に基づいて生成された第2の無線帰属アクセスポイント情報とを有していることを特徴とする請求項1又は2記載の無線アクセスポイント決定方法。
【請求項4】
前記再検索再帰属判定処理は、
再検索の実行を一時抑止する抑止期間中であるか否かを判定し、その判定結果に応じた待機時間経過後に前記検索処理、及び前記選択処理を実行することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無線アクセス決定方法。
【請求項5】
前記再検索再帰属判定処理は、
前記対象装置が通信中のときは、前記再検索再帰属処理を実行せず、通信中でないときには、前記再検索再帰属処理を実行することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の無線アクセス決定方法。
【請求項6】
前記再検索再帰属判定処理は、
前記第1の帰属無線アクセスポイント情報を第3の記憶手段に記憶して第3の帰属無線アクセスポイント情報とし、前記再検索再帰属処理を実行した後、前記第1の帰属無線アクセスポイント情報、前記第2の帰属無線アクセスポイント情報、及び前記第3の帰属無線アクセスポイント情報を相互に比較することにより、適正なアクセスポイントが見つかったか否かを判定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の無線アクセスポイント決定方法。
【請求項7】
前記第1の記憶手段は、揮発性メモリ、又は電源投入時に初期化を行って記憶している情報を消去する不揮発性メモリであり、
前記第2の記憶手段は、不揮発性メモリ、又は電源供給によって記憶を保持する揮発性メモリである請求項1〜6のいずれか1項に記載の無線アクセスポイント決定方法。
【請求項8】
第1の時点における複数の無線アクセスポイントの識別子及び電界強度情報を有する無線アクセスポイント情報からなる第1の情報を記憶する第1の記憶手段と、
前記第1の時点以前の第2の時点における複数の前記無線アクセスポイントの前記識別子及び前記電界強度情報を有する無線アクセスポイント情報からなる第2の情報を記憶する第2の記憶手段と、
通信可能な複数の前記無線アクセスポイントを検索して前記無線アクセスポイント情報を取得し、前記第1の情報を作成して前記第1の記憶手段に記憶する検索手段と、前記第1の情報から最も強い前記電界強度を有する前記無線アクセスポイントを選択し、その無線アクセスポイント情報を第1の帰属無線アクセスポイント情報として前記第1の記憶手段に記憶する選択手段とを有する無線通信制御手段と、
前記第1の情報と前記第2の情報を比較して前記対象装置と前記対象装置が通信可能な前記無線アクセスポイントとの関係の変化を判定する帰属判定手段と、前記帰属判定手段の判定結果に応じて、前記第1の情報に基づき前記第2の情報を更新して前記第2の記憶手段に与える更新手段と、前記帰属判定手段の判定結果に応じて、再度前記無線アクセスポイントの検索帰属処理を行う再検帰属手段を有する帰属先適正度判定手段と、
を備えたことを特徴とする無線通信器。
【請求項9】
前記第1の記憶手段は、揮発性メモリ、又は電源投入時に初期化を行って記憶している情報を消去する不揮発性メモリであり、
前記第2の記憶手段は、不揮発性メモリ、又は電源供給によって記憶を保持する揮発性メモリである請求項8記載の無線通信器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−77644(P2011−77644A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224560(P2009−224560)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(308033722)株式会社OKIネットワークス (165)
【Fターム(参考)】