説明

無線センサーネットワークシステム

【課題】 伝達遅延や特定の端末へのトラフィック負荷の集中を防ぐことができ、システム全体を効率よく運用することができる無線センサーネットワークシステムを提供する。
【解決手段】 センサー端末が、第1の送信出力で既存のノードを介して管理端末に加入要求を送信し、管理端末が、加入要求の受信経路上のノードのトラフィック負荷を算出し、ホップ数とトラフィック負荷が共に許容範囲内ならば、当該センサー端末の通信経路を当該受信経路とし、ホップ数と負荷の少なくとも一方が許容範囲外であれば、センサー端末に、第1よりも大きい第2の送信出力で、管理端末又はトラフィック負荷の小さい特定のノードに直接接続する指示を出力して通信経路を再構築し、センサー端末が、当該指示を受信した場合には、管理端末宛のデータ送信時に、第2の送信出力で管理端末又は特定のノードに送信する無線センサーネットワークシステムとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線センサーネットワークシステムに係り、特にシステム全体のトラフィック量の増加を抑制して遅延時間を短縮し、特定の端末への負荷の集中を防いで効率的な運用を可能とする無線センサーネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
無線センサーネットワークシステムは、複数のセンサー端末を備え、工場やプラントにおける機器監視や、電力、ガス、水道の使用量メータのデータを無線通信によって収集するシステムとして用いられている。
無線センサーネットワークシステムでは、センサー端末から収集したデータを管理するために、有線ネットワークを介してサーバ等と接続されることが多い。有線ネットワークと接続する機能を備え、ネットワーク内のセンサー端末からのデータをまとめてサーバに送信するセンサー端末をゲートウェイ端末(以下、GW端末とする)と呼ぶ。
【0003】
無線センサーネットワークシステムで用いられる無線端末(センサー端末)としては、特定小電力無線機が用いられることが多い。特定小電力無線機の最大無線送信出力は、10mWに制限されているが、上限を上げることが検討されている。
【0004】
また、無線センサーネットワークシステムでは、1つのネットワークでセンサー端末の台数が数千〜数万台になる場合も想定され、センサー端末相互の干渉及び消費電力を抑えるため、無線送信出力や無線送信頻度を抑えるよう動作することが望ましい。
【0005】
そこで、センサー端末では、無線通信品質の信頼性を確保するために、携帯電話機や無線データモジュールのようにダイナミックに送信電力を微調整する制御を行うのではなく、伝搬路の通信品質が劣悪の場合でも確実に通信できるようマージンを見込んだ無線送信出力で通信を行う。無線送信出力は、センサー端末の設置時に設定されるのが一般的である。
【0006】
無線センサーネットワークシステムでは、センサー端末がアドホック的に近隣の端末を介してネットワークに参入し、順次ネットワークトポロジ(通信経路)を形成していく。そして、各ノード(センサー端末)がトラフィックを次のノードに順次転送(ホップ)することにより通信を行う。マルチホップ通信を行うことで、広いエリアをカバーすることが可能となる。
【0007】
しかし、GW端末からのホップ数が多くなると伝送遅延が大きくなり、また、センサー端末の配置によっては、特定のセンサー端末にトラフィック負荷が集中して、当該端末を介したデータ伝達遅延が大きくなることがある。
【0008】
[関連技術]
尚、無線センサーネットワークシステムに関する技術としては、特開2009−296262号公報「無線通信装置」(株式会社日立国際電気、特許文献1)がある。
特許文献1には、端末が、通信範囲の広い狭帯域無線機と通信範囲の狭い広帯域無線機とを備え、通信を行う際に、宛先情報を狭帯域無線機から送信させ、一定時間以内に狭帯域無線機で宛先ノードから経路情報を受信し、当該経路情報が記憶している情報と一致した場合に、広帯域無線機を用いて当該経路情報を用いて宛先との通信を行うものであり、無線リソースの有効利用を図るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−296262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の無線センサーネットワークシステムでは、センサー端末の配置によってはホップ数の増大による遅延や、特定の端末へのトラフィック負荷の集中が生じてしまうという問題点があった。
【0011】
本発明は、上記実状に鑑みて為されたもので、伝達遅延や特定の端末へのトラフィック負荷の集中を防ぐことができ、システム全体を効率よく運用することができる無線センサーネットワークシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、センサーを備え無線通信を行う複数のセンサー端末と、複数のセンサー端末と通信する通信経路を構築し、通信経路に基づいて各センサー端末との無線通信を行う管理端末とを備え、センサー端末と管理端末とをノードとする無線センサーネットワークシステムであって、センサー端末が、ネットワークに参入する際に、第1の送信出力で、既存のノードを介して管理端末に加入要求を送信し、管理端末が、加入要求を受信すると、受信した経路上のノードのトラフィック負荷を算出し、ホップ数とトラフィック負荷が共に許容範囲内であれば、当該センサー端末の通信経路を受信した経路とし、ホップ数とトラフィック負荷の少なくとも一方が許容範囲外であれば、当該センサー端末に対して、第1の送信出力よりも大きい第2の送信出力で、管理端末又はトラフィック負荷の小さい特定のノードに直接接続するよう指示を出力して通信経路を再構築し、センサー端末が、指示を受信した場合には、管理端末宛にデータを送信する際に、第2の送信出力で管理端末又は特定のノードに送信することを特徴としている。
【0013】
また、本発明は、複数のセンサー端末と共に無線センサーネットワークシステムのノードを構成し、各センサー端末と通信する通信経路を構築して、通信経路に基づいてセンサー端末との無線通信を行う管理端末であって、センサー端末から第1の送信出力で送信された、ネットワークへの加入要求を受信すると、受信した経路に基づいて要求元のセンサー端末のホップ数を算出すると共に、受信した経路上のノードのトラフィック負荷を算出し、ホップ数とトラフィック負荷が共に許容範囲内であれば、当該センサー端末の通信経路を受信した経路とし、ホップ数とトラフィック負荷の少なくとも一方が許容範囲外であれば、当該センサー端末に対して、第1の送信出力よりも大きい第2の送信出力で、管理端末又はトラフィック負荷の小さい特定のノードに直接接続するよう指示を出力して通信経路を再構築することを特徴としている。
【0014】
また、本発明は、管理端末と共に無線センサーネットワークシステムのノードを構成し、管理端末からの指示に基づいて無線通信を行うセンサー端末であって、ネットワークに参入する際に、第1の送信出力で、既存のノードを介して管理端末に加入要求を送信し、管理端末から、第1の送信出力よりも大きい第2の送信出力で、管理端末又はトラフィック負荷の小さい特定のノードに直接接続する指示を受信した場合には、管理端末宛にデータを送信する際に、第2の送信出力で管理端末又は当該特定のノードに送信することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、センサーを備え無線通信を行う複数のセンサー端末と、複数のセンサー端末と通信する通信経路を構築し、通信経路に基づいて各センサー端末との無線通信を行う管理端末とを備え、センサー端末と管理端末とをノードとする無線センサーネットワークシステムであって、センサー端末が、ネットワークに参入する際に、第1の送信出力で、既存のノードを介して管理端末に加入要求を送信し、管理端末が、加入要求を受信すると、受信した経路上のノードのトラフィック負荷を算出し、ホップ数とトラフィック負荷が共に許容範囲内であれば、当該センサー端末の通信経路を受信した経路とし、ホップ数とトラフィック負荷の少なくとも一方が許容範囲外であれば、当該センサー端末に対して、第1の送信出力よりも大きい第2の送信出力で、管理端末又はトラフィック負荷の小さい特定のノードに直接接続するよう指示を出力して通信経路を再構築し、センサー端末が、指示を受信した場合には、管理端末宛にデータを送信する際に、第2の送信出力で管理端末又は特定のノードに送信する無線センサーネットワークシステムとしているので、ホップ数の増大によるデータ伝達遅延や、いずれかのノードへの負荷の集中を防ぎ、ネットワーク全体のトラフィック量の増加を抑制して、システムを効率的に運用することができる効果がある。
【0016】
また、本発明によれば、複数のセンサー端末と共に無線センサーネットワークシステムのノードを構成し、各センサー端末と通信する通信経路を構築して、通信経路に基づいてセンサー端末との無線通信を行う管理端末であって、センサー端末から第1の送信出力で送信された、ネットワークへの加入要求を受信すると、受信した経路に基づいて要求元のセンサー端末のホップ数を算出すると共に、受信した経路上のノードのトラフィック負荷を算出し、ホップ数とトラフィック負荷が共に許容範囲内であれば、当該センサー端末の通信経路を受信した経路とし、ホップ数とトラフィック負荷の少なくとも一方が許容範囲外であれば、当該センサー端末に対して、第1の送信出力よりも大きい第2の送信出力で、管理端末又はトラフィック負荷の小さい特定のノードに直接接続するよう指示を出力して通信経路を再構築する管理端末としているので、センサー端末に対して適切な送信出力及び接続先を指示して、ホップ数の増大やノードへの負荷集中を防ぎ、ネットワーク全体のトラフィック量の増加を抑制して、システムを効率的に運用することができる効果がある。
【0017】
また、本発明によれば、管理端末と共に無線センサーネットワークシステムのノードを構成し、管理端末からの指示に基づいて無線通信を行うセンサー端末であって、ネットワークに参入する際に、第1の送信出力で、既存のノードを介して管理端末に加入要求を送信し、管理端末から、第1の送信出力よりも大きい第2の送信出力で、管理端末又はトラフィック負荷の小さい特定のノードに直接接続する指示を受信した場合には、管理端末宛にデータを送信する際に、第2の送信出力で管理端末又は当該特定のノードに送信するセンサー端末としているので、管理端末の指示に基づいて適切な出力及び接続先で通信を行って、効率的に運用可能なシステムを構築できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る無線センサーネットワークシステムの概略構成例を示す模式説明図である。
【図2】本システムのセンサー端末の概略構成図である。
【図3】本システムのGW端末の概略構成図である。
【図4】TSCH方式のリソース管理を示す模式説明図である。
【図5】本システムの第1の運用例を示す模式説明図である。
【図6】本システムの第2の運用例を示す模式説明図である。
【図7】本システムの第3の運用例を示す模式説明図である。
【図8】本システムの第4の運用例の下り方向の通信を示す模式説明図である。
【図9】本システムの第4の運用例の上り方向の通信を示す模式説明図である。
【図10】GW端末のルーティングテーブルの例を示す説明図である。
【図11】センサー端末のルーティングテーブルの例を示す説明図である。
【図12】GW端末における新規センサー端末の参入時の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る無線センサーネットワークシステムは、センサー端末及びGW端末(管理端末)が、アドホック通信を行う10mW程度の低出力モードと、それより高出力で広範囲の通信を行う高出力モードとを備え、ネットワーク加入時には、低出力モードで近隣のセンサー端末を介してGW端末にアクセスし、GW端末が、受信経路における当該センサー端末のホップ数と、受信経路上の各ノードのトラフィック負荷を算出して、ホップ数とトラフィック負荷が許容範囲内であれば当該新加入のセンサー端末の通信経路を当該受信経路で決定し、少なくとも一方が許容範囲外であれば、当該センサー端末に、高出力モードに切り替えて、GW端末に直接接続するよう指示して、通信経路の再構築を行うものであり、ホップ数の増大による遅延や負荷の集中を防ぐことができ、システムを効率的に運用することができるものである。
【0020】
また、本発明の実施の形態に係るGW端末は、センサー端末から、経路情報を付した加入要求を受信すると、当該センサー端末のホップ数と、経路上のノードのトラフィック負荷を算出して、それぞれしきい値と比較し、ホップ数及びトラフィック負荷が共に許容範囲内であれば、当該経路情報に基づいて当該センサー端末を接続し、ホップ数とトラフィック負荷の少なくとも一方が許容範囲外であれば、当該センサー端末を高出力モードに切り替え、GW端末と直接接続するよう経路を再構築して当該センサー端末に通知するものであり、ホップ数の増大による遅延や負荷の集中を防ぐことができ、システムを効率的に運用することができるものである。
【0021】
また、本発明の実施の形態に係るセンサー端末は、低出力モードと高出力モードとを備え、ネットワーク加入時には、低出力モードで近隣のセンサー端末を介して加入要求をGW端末に送信し、GW端末から高出力モードへの切り替えと接続先とが指定されると、高出力モードに切り替えて、高出力で当該接続先に接続して経路の再構築を行うものであり、ホップ数の増大による遅延や負荷の集中を防ぎ、システム全体を効率的に運用することができるものである。
【0022】
[実施の形態に係る無線センサーネットワークシステムの概略構成:図1]
本発明の実施の形態に係る無線センサーネットワークシステムの概略構成例について図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る無線センサーネットワークシステムの概略構成例を示す模式説明図である。
図1に示すように、本実施の形態に係る無線センサーネットワークシステムは、ゲートウェイ端末(GW端末)と、複数のセンサー端末とを備えている。
図中の数字は、各端末のノード番号を表しており、ノード1はGW端末であり、ノード2〜11はセンサー端末である。尚、GW端末は、請求項に記載した管理端末に相当する。
【0023】
GW端末は、構築された経路情報に従って複数のセンサー端末と双方向無線通信を行うと共に、有線ネットワークに接続してサーバ等との通信を行う。
また、センサー端末は、無線通信のみを行う。
【0024】
図1のネットワークトポロジでは、GW端末(ノード1)には、ノード2、ノード5、ノード8が接続している。
更に、ノード2には、ノード3,4が順次接続し、ノード5には、ノード6,7が順次接続し、ノード8にはノード9が接続している。そして更に、ノード9にはノード10及び11が接続している。
【0025】
本システムでは、GW端末によって無線リソースの割り当てが行われるTSCH(Time Slotted Channel Hopping)方式を用いているが、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)方式でも可能である。
また、本システムのネットワークトポロジーはツリー型としているが、メッシュ型にも適用可能である。
【0026】
[センサー端末の構成:図2]
次に、センサー端末の構成について図2を用いて説明する。図2は、本システムのセンサー端末の概略構成図である。
図2に示すように、センサー端末は、センサー1と、制御部2と、無線部3とを備えた無線通信端末である。
[センサー1]
センサー1は、例えば電力メータ等の、センシングデータを取得するものであり、センシングしたデータ(例えば消費電力量の値)を制御部2に出力する。
【0027】
[制御部2]
制御部2は、処理部及び記憶部を備えたマイコン等で構成され、センサー端末全体の制御を行うものであり、処理部として、アプリケーション管理部21と、経路管理部22と、無線通信アクセス制御部23と、無線通信インタフェース部24とを備えている。
制御部2では、各処理部が記憶部に記憶されたプログラムを起動して所定の処理を行う。
【0028】
[制御部2の各部]
制御部2の各部について説明する。
[アプリケーション管理部21]
アプリケーション管理部21は、センサー1からのセンシングデータを受信して受信日時と共に蓄積する処理を行う。また、設定されているスケジュールに従って、GW端末へのデータ送信のタイミングになると、センシングデータを読み出して、パケット情報を生成する。
【0029】
[経路管理部22]
経路管理部22は、ネットワーク(NW)層の機能であり、ルーティングテーブルを記憶している。ルーティングテーブルには、上り方向用として、宛先となるGW端末のアドレスと、当該センサー端末からGW端末への経路上にある次ノードのアドレスを記憶している。また、下り方向用として、当該センサー端末より下位のノードのアドレスと、経路上にある次ノードのアドレスを記憶している。
そして、経路管理部22は、GW端末からの指示に基づいてルーティングテーブルを更新して、経路情報を変更する。経路の変更については後述する。
【0030】
更に、本システムの特徴として、経路管理部22は、ルーティングテーブルに、宛先毎に送信出力を規定する出力モードを記憶している。
出力モードとしては、送信電力が小さく(10mW程度)アドホック通信に用いられる低出力モードと、送信電力が大きい(1W程度)高出力モードがあり、宛先毎にいずれかを記憶している。そして、データ送信時には、宛先に応じて記憶している出力モードを読み出して、設定する。
【0031】
そして、本システムの特徴として、経路管理部22は、送信モードに応じて無線部3における送信電力の切り替えを行う。つまり、低出力モードが設定されると無線部3を低出力に切り替え、高出力モードが設定されると高出力に切り替える。
低出力モードにおける送信出力は、請求項に記載した第1の送信出力に相当し、高出力モードにおける送信出力は、請求項に記載した第2の送信出力に相当している。
【0032】
これにより、例えば、上り方向のGW端末を宛先とする場合には高出力モードとし、下位ノードを宛先とする隣接ノードへの通信では低出力モードとすることが可能となる。
また、経路管理部22は、GW端末からの指示に従って出力モードの切り替えを行う。尚、センサー端末の経路管理部22は、デフォルトとして低出力モードを記憶している。
【0033】
[無線通信アクセス制御部23]
無線通信アクセス制御部23は、MAC(Media Access Control)層の機能であり、CSMA/CA方式やTSCH方式等のアクセス方式による無線通信制御を行う。そして、送信時には、経路管理部22から指定された出力モードを無線通信インタフェース部24に出力する。
【0034】
[無線通信インタフェース部24]
無線通信インタフェース部24は、物理(PHY)層の機能であり、無線フレームデータの生成及び分解を行う。
【0035】
[無線部3]
無線部3は、変復調部31と、周波数変換部32と、アンテナ33とを備えている。
[変復調部31]
変復調部31は、送信時には、無線通信インタフェース部24からの無線フレームデータを変調処理を施したベースバンド信号に変換する。
また、受信時には、周波数変換部32からのベースバンド信号を復調し、ビット判定を行い、受信データを出力する。
【0036】
[周波数変換部32]
周波数変換部32は、送信時には、変調されたベースバンド信号を、無線周波数の信号へ変換し、アンテナ33に出力する。
特に、本システムのセンサー端末では、無線部3は、送信時には低出力又は高出力のいずれかの出力で送信を行う。送信出力の切り替えは、制御部2の経路管理部22によって行われる。
受信時には、アンテナ33で受信された無線周波数帯の信号をベースバンド信号へ変換する。
【0037】
アンテナ33は、送信信号を増幅する増幅部を備え、無線周波数に変換された送信信号を、制御部から指示された送信出力となるよう増幅して空中に出力する。
また、空中から無線周波数信号を受信して、周波数変換部32に出力する。
【0038】
無線部3は、低出力に切り替えられると10mW程度の出力で送信を行い、近隣のノードに送信し、高出力に切り替えられると、低出力よりも大きい出力、例えば1W程度の出力で送信を行う。高出力モードが設定されている場合には通信範囲が広くなり、地理的に離れているGW端末や他の上位ノードと直接通信が可能となる。
【0039】
[GW端末の構成:図3]
次に、GW端末の構成について図3を用いて説明する。図3は、本システムのGW端末の概略構成図である。
図3に示すように、GW端末は、制御部4と、無線通信処理部5と、無線部6と、有線通信処理部7とを備えている。GW端末は、基本的には図2に示したセンサー端末の構成に有線通信処理部7を付加した構成であるが、制御部4の構成及び動作がセンサー端末とは異なっている。
また、GW端末も、センサー端末と同様に送信出力を高出力又は低出力のいずれかに切り替えて通信を行うものである。
【0040】
そして、無線通信処理部5は、無線通信アクセス制御部51と、無線通信インタフェース部52とを備え、有線通信処理部7は、有線通信アクセス制御部71と、有線通信インタフェース部72とを備えている。
【0041】
各部について説明する。
[制御部4]
制御部4は、アプリケーション管理部41と、経路管理部42と、トラフィック負荷算出部43と、データ伝達遅延算出部44とを備えている。
[アプリケーション管理部41]
制御部4のアプリケーション管理部41は、各センサー端末から収集した情報を有線通信用にデータ変換したり、有線通信を介して受信したサーバからの制御情報等を無線通信用に変換する。
【0042】
[経路管理部42]
経路管理部42は、ネットワーク全体の経路情報を構築するものであり、経路の再構築やセンサー端末に対する出力モードの切り替えの指示を行う。そして、経路管理部42は、GW端末に接続される全てのセンサー端末の経路情報として、ルーティングテーブルを備えている。GW端末のルーティングテーブルについては、後述する。
【0043】
更に、本システムの特徴として、経路管理部42は、GW端末と直接接続しているセンサー端末について出力モード(高出力モード/低出力モード)を記憶しており、各センサー端末への送信時には、各センサー端末に対応した出力モードに合わせて、送信出力を切り替えるよう無線部3に指示を出力する。
つまり、経路管理部42は、低出力モードが設定されている端末に送信する場合は低出力で送信し、高出力モードが設定されている端末に送信する場合には高出力で送信するよう制御する。
【0044】
そして、経路管理部42は、ネットワークトポロジの変更をセンサー端末に指示するための制御パケットを生成する。具体的には、制御パケットは各センサー端末のルーティングテーブルを更新するための情報を含み、出力モードの切り替えや、接続先の変更を指示するものである。
また、経路管理部42は、有線通信の通信先となるサーバ等のアドレスを記憶している。
【0045】
そして、新規端末の加入時に、後述するトラフィック負荷算出部43及びデータ伝達遅延算出部44からの算出結果に基づいて、必要な場合には経路の再構築を行って自己のルーティングテーブルを更新し、該当するセンサー端末に制御パケットを送信する。経路管理部42の動作については後述する。
【0046】
[トラフィック負荷算出部43]
トラフィック負荷算出部43は、新規端末のネットワーク参入時に、ルーティングテーブルを参照して、経路上のセンサー端末のトラフィック負荷を計算する。トラフィック負荷は、各センサー端末に割り当てられているスロット数に基づいて計算され、当該センサー端末に直接又は間接的に接続されている下位のセンサー端末の数に応じて負荷が大きくなる。そして、算出されたトラフィック負荷が予め記憶されているトラフィック負荷のしきい値を超えているか否かを判断し、その結果を経路管理部42に通知する。
【0047】
これにより、本システムのGW端末の経路管理部42では新規センサー端末がネットワークに加入する際に、当該端末の追加によってトラフィック負荷が集中してしまうセンサー端末があるかどうかを判断し、トラフィック負荷が集中する端末がある場合、負荷が集中しないように下位ノードのいずれかを高出力モードに切り替えて、負荷が集中しているノードを経由しないよう接続先を選択して、経路の再構築を行うものである。
【0048】
[データ伝達遅延算出部44]
また、データ伝達遅延算出部44は、新規端末のネットワーク参入時に、ルーティングテーブルを参照して、当該新規センサー端末のホップ数を求め、データ伝達遅延量を算出し、予め記憶されているしきい値と比較して、データ伝達遅延量が許容範囲内であるか否かを判断し、結果を経路管理部42に通知する。
【0049】
これにより、本システムのGW端末の経路管理部42では、新規端末のデータ伝達遅延量が許容範囲外となった場合には、新規センサー端末の出力モードを高出力モードに切り替えて、GW端末と直接通信を行うよう、経路の再構築を行うものである。
【0050】
尚、データ伝達遅延算出部44では、データ伝達遅延量を算出せずに当該センサー端末からGW端末までのホップ数のみで判断してもよい。この場合にはホップ数のしきい値が記憶されており、当該センサー端末からのホップ数をしきい値と比較して、しきい値以内であれば許容範囲内とし、しきい値を超えた場合には許容範囲外とする。
【0051】
[無線通信処理部5]
[無線通信アクセス制御部51]
無線通信アクセス制御部51は、MAC層の機能であり、センサー端末における無線通信アクセス制御部と同様に、CSMA/CA方式やTSCH方式の無線アクセス方式の制御を行う。
【0052】
[無線通信インタフェース部:52]
無線通信インタフェース部52は、PHY層の機能であり、無線フレームデータの生成及び分解を行う。
【0053】
[無線部6]
無線部6は、変復調部61と、周波数変換部62と、アンテナ63とを備え、無線信号の送受信を行う。無線部6の各部の構成及び動作は、センサー端末の無線部3の各部と同様であり、アンテナ63は、送信信号を増幅する増幅部を備え、経路管理部42によって設定された送信モードに対応する送信出力で送信信号を送信する。
また、GW端末の送信出力は、センサー端末と同様であり、低出力時には10mW程度、高出力時には例えば1W程度とする。
【0054】
[有線通信処理部7]
有線通信処理部7は、有線通信アクセス制御部71と、有線通信インタフェース部72とを備えている。
[有線通信アクセス制御部71]
有線通信アクセス制御部71は、有線ネットワークのアクセス方式に基づいて通信制御を行う。
[有線通信インタフェース部72]
有線通信インタフェース部72は、有線ネットワークのフレームデータを通信ケーブルを介して有線ネットワーク上のサーバ等に送信し、また、サーバからの制御情報等のフレームデータを受信する。
【0055】
[TSCH方式のリソース管理:図4]
次に、本システムで用いられているTSCH方式のリソース管理について図4を用いて説明する。図4は、TSCH方式のリソース管理を示す模式説明図である。
ここでは、使用可能な無線チャネル数を7としており、GW端末の無線通信アクセス制御部51が、各ノードに使用可能なタイムスロットを割り当てる。
【0056】
具体的には、GW端末は、タイムスロット毎に、送信先ノード(D)と、送信元ノード(S)と、無線チャネル番号とを指定して割り当て(予約)を行い、多重通信を行うよう制御する。
このように、送信可能なタイムスロット及び受信可能なタイムスロットが予め決められるために、センサー端末では、自ノードに割り当てられたスロットのみを送受信する。
そして、自ノードに割り当てられていないスロットは送受信しない、若しくは当該タイムスロット時間はスリープすることができ、干渉の発生を防ぎ、消費電力の低減を図ることができるものである。
【0057】
CSMA/CA方式でも本システムを実現することは可能であるが、TSCH方式のような帯域予約制のほうが、遅延時間やトラフィック負荷を抑えることができ、システムを効率的に運用可能となる。
【0058】
[本システムの第1の運用例:図5]
次に、本システムの第1の運用例について図5を用いて説明する。図5は、本システムの第1の運用例を示す模式説明図である。
第1の運用例は、ホップ数の増大によりデータ伝達遅延が発生してしまう場合の経路再構築である。
【0059】
図5では、図1に示したネットワークに新たにセンサー端末が追加される場合の例を示している。
ここではホップ数の上限を3としており、GW端末の制御部4のデータ伝達遅延算出部44にホップ数のしきい値として3が設定されている。
【0060】
図5に示すように、まず、GW端末(ノード1)と、複数のセンサー端末(ノード2〜11)から成るネットワークが構築されている状態で、新たにノードAがノード7に接続してGW端末宛に加入要求を送信する。この場合にはデフォルトである低出力モードで送信を行う。この時点でノードAのルーティングテーブルには、宛先をGW端末とする場合の次ノードとしてノード7が記憶される。
【0061】
そして、ノード7で受信されたノードAからの加入要求は、既に構築されている経路に基づいて、ノード7,6,5を介してGW端末に受信される。
GW端末では、制御部4が、受信したデータからノードAの経路情報(ノードA→ノード7→ノード6→GW端末)を取得して、経路管理部42のルーティングテーブルを参照して、ノードAのホップ数を求める。
【0062】
具体的には、GW端末のデータ伝達遅延算出部44は、ルーティングテーブルから、ノードAの親ノードとなっているノード7のホップ数を読み取り、それに1を加算してノードAのホップ数とする。そして、図5の場合、伝達遅延算出部44が、ノードAのホップ数は4であり、上限値の3を超えていると判断する。
【0063】
そこで、GW端末の経路管理部42は、ノードAに対して、出力モードを高出力モードに切り替え、GW端末と直接通信を行う許可を与える経路再構築を行う。
具体的には、経路管理部42が、ノードAに対して、出力モードを低出力モードから高出力モードに切り替え、通信先をGW端末とする指示を含む制御パケットを生成して、加入要求を受信したマルチホップ経路の逆経路でノードAに送信する。この場合、GW端末は制御パケットを低出力で送信する。
当該制御情報は、ノード5,6,7を介してノードAに受信される。
【0064】
ノードAでは、受信したGW端末からの制御情報に基づいて、ルーティングテーブルを更新する。具体的には、上り通信について、宛先がGW端末の場合の次ノードをGW端末として、他のノードを介さずにGW端末と直接通信を行うように設定する。これにより、ノードAとノード7との接続は切断される。それと共に、ノードAでは、上り通信に対応する出力モードを高出力モードに設定する。
【0065】
これにより、ノードAは、ノード7との接続を切断し、高出力無線通信によってGW端末と直接通信を行うことが可能となる。
その結果、図5に示すように、ノードAのホップ数は1となり、遅延時間が増大するのを防ぐことができるものである。
そして、ノードAはGW宛に制御パケットに対する応答を送信する。
【0066】
また、GW端末の経路管理部42は、ノードAから制御情報に対する応答を受信すると、ルーティングテーブルのノードAに対応する経路情報として、ノードAの親ノードをノード7からGW端末に書き換えて更新する。
また、経路管理部42は、ノードAとの通信時には高出力モードで通信する旨記憶する。そして、ノードAに送信する際には高出力で送信を行う。
【0067】
このように、本システムの第1の運用例では、新規参入するセンサー端末のホップ数が上限値を超えてデータ伝達遅延時間が大きくなると予想される場合に、GW端末が、新規参入するセンサー端末を高出力モードに切り替えて、GW端末と直接通信を行わせるよう経路を再構築するものであり、データ伝達遅延時間の増大を防ぐことができるものである。
【0068】
[本システムの第2の運用例:図6]
次に、本システムの第2の運用例について図6を用いて説明する。図6は、本システムの第2の運用例を示す模式説明図である。
第2の運用例は、ホップ数の上限は超えていないものの、トラフィック負荷の増大が発生する場合の経路再構築を示している。
第2の運用例では、ホップ数の上限値を10としており、GW端末の制御部4のデータ伝達遅延算出部44にホップ数のしきい値として10が設定されている。
【0069】
図6に示すように、まず、ノードAがノード7に接続して新規追加されると、GW端末の伝達遅延算出部44はノードAのホップ数をしきい値と比較してホップ数が上限を超えていないと判断し、経路管理部32は、そのままのマルチホップ経路(GW端末→ノード5→ノード6→ノード7→ノードA)をルーティングテーブルに登録する。
【0070】
その後、ノードAの子ノードとしてノードA1及びA3が接続され、更に孫ノードとしてノードA2,A4,A5が接続される。孫ノードでもホップ数は6であり、ホップ数の上限は超えていない。
【0071】
一方、GW端末のトラフィック負荷算出部43は、新規端末が追加される度に、当該新規センサー端末からGW端末への経路上にあるノードのトラフィック負荷を計算する。
尚、経路上の全てのノードについてトラフィック負荷を計算しなくてもよいが、この場合には、GW端末からノードA〜A5への経路上で最も負荷が大きくなるのは、多くの下位ノードが接続されている最上位ノードのノード5であり、少なくともノード5についてはトラフィック負荷の算出を行う。
【0072】
そして、トラフィック負荷算出部43が、ノード5のトラフィック負荷がしきい値を超えたことを検出すると、経路管理部42は、ノード5のトラフィック負荷を軽減するために、ノードAを高出力モードに切り替え、GW端末と直接通信を行うようルーティングテーブルを更新し、第1の運用例と同様にノードAに制御パケットを送信する。
【0073】
ノードAでは、自己のルーティングテーブルを書き換えて、GW端末とは高出力モードで直接通信を行う。
これにより、ノードAとノード7との接続は切断され、ノード5の下位ノードの数は2となってノード5にかかるトラフィック負荷は大幅に低減されるものである。
また、ノードAは、下位のA1,A3との通信については今まで通り低出力モードで通信を行う。
【0074】
このように、第2の運用例では、新規センサー端末の加入によって、より上位にあるノードのトラフィック負荷の増大が予想される場合に、GW端末が、経路上の適当な位置にあるセンサー端末を高出力モードに切り替えて、GW端末と直接通信を行わせるよう経路を再構築するものであり、特定のノードへのトラフィック負荷の集中を防ぐことができるものである。
【0075】
また、第2の運用例では、高出力モードを許可されたセンサー端末が、GW端末との通信のみを高出力モードに切り替え、下位のノードとの通信には従来通り低出力モードを用いることにより、電力の浪費を防ぐと共に干渉の発生を防ぐことができるものである。
【0076】
[接続先の選択]
また、ノードAを高出力に切り替えた場合に、接続先をGW端末に限定せず、別の負荷の小さいノードを接続先として選択し、当該ノードにノードAとGW端末との通信を中継させるルートを構築してもよい。
図6の場合、例えばノードAの接続先をノード2とすると、GW端末は、ノードAに対して上り方向の宛先をGW端末とし、それに対応する次ノードをノード2とし、更に高出力モードで送信するよう指示する。
また、GW端末は、ノード2に対して、下り方向のノードA及びその下位ノードを宛先とする場合の次ノードをノードAとし、高出力モードで通信するよう指示する。
【0077】
ノードA及びノード2は、制御パケットに基づいて自己のルーティングテーブルを書き換え、ノードAとノード2とが高出力モードの通信で接続されることになる。尚、ノード2とGW端末とは引き続き低出力モードで通信を行う。
【0078】
また、GW端末が、負荷の小さい複数のノードを中継ノードの候補として選択し、実際に高出力モードを用いて、ノードAとの間で候補ノードを介した既知データの通信を行ってみて、最も通信品質のよかった経路に決定する、というようにしてもよい。
【0079】
[経路の確定]
更に、本システムでは、経路の再構築を行った場合には、新しいルートに基づいて、GW端末から既知のデータを送信し、宛先のセンサー端末から当該データを正常に受信した旨の応答を受信した場合に、新しいルートを確定してルーティングテーブルを更新するようにしている。新しい経路での送受信が正常にできない場合には、再度、経路の再構築を行う。
これにより、ルーティングテーブルには、確実に通信できる経路が記憶されることなり、通信の信頼性を確保することができるものである。
【0080】
[本システムの第3の運用例:図7]
次に、本システムの第3の運用例について図7を用いて説明する。図7は、本システムの第3の運用例を示す模式説明図である。
第3の運用例では、高出力に切り替えたいノードが、高出力対応の機種ではなかった場合の経路再構築を示す。
第3の運用例では、ホップ数の上限値を10としており、GW端末の制御部4のデータ伝達遅延算出部44にホップ数のしきい値として10が設定されている。
【0081】
まず、ノードBがノード7に接続されて新たにネットワークに加入する。
その後、ノードA、ノードA1がノードBの配下に順次追加される。
GW端末のトラフィック負荷算出部43が、ノード5にかかるトラフィック負荷を算出し、ノード5のトラフィック負荷がしきい値を超えたことを検出すると、経路管理部42は、第2の運用例と同様に、現在のトポロジから効率的に負荷を分散するために、ノードBを高出力モードに切り替えて直接通信を行うことを試みる。
【0082】
GW端末の経路管理部42は、まず、ノードBに対して、高出力対応の機種であるかどうかの問い合わせを行う。
そして、ノードBから「高出力対応ではない」旨の応答を受信すると、経路管理部42は、ルーティングテーブルを参照して、ノードBの下位に接続されているノードAに対して、高出力対応の機種であるかどうかの問い合わせを行う。
【0083】
ノードAから「高出力対応である」旨の応答を受信すると、GW端末の経路管理部42は、ノードAに対して、高出力モードに切り替えてGW端末と直接通信を行うと共に、ノードBをノードAの配下とするよう制御パケットを送信する。
また、GW端末の経路管理部42は、ノードBに対して、ノードAの配下となるよう制御パケットを送信する。
【0084】
GW端末では、問い合わせによって判明した各センサー端末の高出力対応/非対応の情報をルーティングテーブルに記憶しておく。これにより、後の経路再構築時に何度も問い合わせずに済み、経路の再構築を効率的に行うことが可能となる。
尚、高出力対応/非対応の情報は、予め外部から設定されるものであってもよいし、センサー端末がネットワーク加入時に自らGW端末に通知してもよい。
【0085】
そして、ノードA及びノードBは自己のルーティングテーブルを書き換え、経路を再構築する。
ノードBでは、上り方向のGW端末宛に対応する次ノードはノードAとして更新し、ノード7との接続は切断される。これにより、ノードBはノードAの子ノードとなり、それまでと親子関係が逆転する。
ノードAは、GW端末とは高出力モードで直接通信し、下位のノードB、ノードA1とは低出力モードで通信を行う。
【0086】
このように、第3の運用例では、GW端末が、トポロジ変更に伴い任意のセンサー端末を高出力モードに切り替える場合に、当該端末宛に高出力対応か否かを問い合わせ、高出力対応ではなかった場合に、当該高出力非対応端末の下位のノードを高出力モードに切り替えてGW端末と直接通信を行い、高出力非対応の端末を、高出力対応端末の下位ノードとするよう経路を再構築して、トラフィック負荷の増大を防ぐと共に経路構築の自由度を増大させることができるものである。
【0087】
尚、ここでは、ノードBの直下のノードAが高出力対応の端末であった場合について説明したが、ノードAも非対応であった場合には、更に下位のノード(ここではA1)について高出力対応か否かを問い合わせ、高出力対応であったノードを親として経路を再構築することも可能である。
【0088】
[本システムの第4の運用例:図8,9]
次に、本システムの第4の運用例について図8、図9を用いて説明する。図8は、本システムの第4の運用例の下り方向の通信を示す模式説明図であり、図9は、本システムの第4の運用例の上り方向の通信を示す模式説明図である。
上述した第1〜第3の運用例は、双方向通信の経路を示しており、上りと下りで同一の経路を用いている。しかしながら、高出力での無線通信の機会が増えると、同一ネットワークの他の端末への干渉や、隣接するネットワークへの干渉の恐れが生ずる。
【0089】
そこで、第4の運用例では、高出力での通信の回数をできるだけ少なくするため、遅延時間の制約に応じて、下り方向と上り方向とで異なるルートを構築するようにしている。
図8,9は、図7に示したものと同じセンサー端末でのネットワーク構成を示しており、ノードBは高出力モードに対応していないセンサー端末であり、ノードAは高出力モードに対応したセンサー端末である。
【0090】
一般に、GW端末からセンサー端末宛の下り方向の通信では、制御情報等が伝送され、遅延の制約は厳しくない。そのため、ホップ数が増大してもあまり影響はないと考えられる。
そこで、図8に示すように、高出力非対応の端末であるノードBを含む経路を、下り通信時には、低出力モードで、GW端末→ノード5→ノード7→ノードB→ノードA→ノードA1とする。
このように、ある程度の遅延が許容される下り通信では、高出力通信を用いず、低出力のマルチホップ通信でデータを伝送する。
【0091】
一方、上り通信では、センサー端末でセンシングしたデータを伝達するため、遅延の制約が厳しい場合が多い。
そのため、図9に示すように、上り方向の通信では、ノードAを高出力モードに切り替え、ノードBをノードAの配下とする経路の再構築を行う。
これにより、ノードB、ノードA、ノードA1は1ホップ又は2ホップでGW端末に接続でき、遅延時間を少なくすることができるものである。
【0092】
[GW端末のルーティングテーブル例:図10]
次に、GW端末の経路管理部42に記憶されているルーティングテーブルの例について図10を用いて説明する。図10は、GW端末のルーティングテーブルの例を示す説明図である。
図10に示すように、GW端末のルーティングテーブルは、当該GW端末の配下にある全てのセンサー端末についての経路を管理するものであり、ノードIDに対応して、親ノード、子ノードの数、高出力対応の可否、出力モード、ホップ数をマトリクス状に記憶しているものである。
【0093】
図10のルーティングテーブルは、図7のネットワークトポロジに対応したテーブルを示している。
ノードIDは、ネットワークに加入しているセンサ端末の識別情報である。
親ノードは、当該ノードに直接接続する上位ノードである。
子ノードの数は、当該ノードに直接又は間接に接続する下位ノードの数である。
【0094】
高出力対応の可否は、当該ノードのセンサー端末が、高出力での通信が可能であるか否かを示す情報であり、センサー端末がネットワーク加入時に加入要求に付して送信して、その情報をGW端末で取得するようにしてもよいし、第3の運用例に記載したように、GW端末が各センサー端末に問い合わせてもよい。
また、ホップ数は、GW端末から当該ノードまでのホップ数である。
【0095】
図10の例では、例えば、ノードAは、高出力モードに切り替わってGW端末(ノード1)と直接通信を行っているので、「親ノード」はGW端末、子ノードとしてノードA1とノードBが接続されているので、「子ノードの数」は2、また「高出力対応の可否」は可(図では「○」と記載)、「ホップ数」は1が記憶されている。
【0096】
また、ノードBについては、「親ノード」はノードA、「子ノードの数」は0、また「高出力対応の可否」は不可(図では「×」と記載)、「ホップ数」は2が記憶されている。
【0097】
[センサー端末のルーティングテーブル:図11]
次に、センサー端末のルーティングテーブルの例について図11を用いて説明する。図11は、センサー端末のルーティングテーブルの例を示す説明図である。
図11の例は、図6に示したネットワークトポロジにおけるノードAのルーティングテーブルである。
【0098】
図11に示すように、センサー端末のルーティングテーブルには、宛先と、それに対応する次ノード及び出力モードが記憶されている。
図6のネットワークトポロジにおけるノードAのルーティングテーブルの場合、上り方向について、GW端末(ノード1)を宛先として、それに対応する次ノードとしてGW端末が記憶され、出力モードは高出力が記憶されている。
つまり、ノードAは、高出力モードでGW端末に直接接続して通信を行うことが記憶されている。
【0099】
また、下り方向については、ノードAの下位ノードである宛先A1〜A5に対応して、それぞれ次ノードが記憶され、出力モードとして低出力が記憶されている。
このルーティングテーブルでは、ノードA1とノードA3はノードAに直接接続され、ノード2はノードA1を経由する経路上にあり、また、ノードA4,5はノードA3を経由する経路上にあり、ノードAは下り方向については全て低出力モードで通信を行うことが記憶されているものである。
【0100】
[GW端末の処理:図12]
次に、GW端末の制御部における新規端末参入時の処理について図12を用いて説明する。図12は、GW端末における新規センサー端末の参入時の処理を示すフローチャートである。
図12に示すように、GW端末の制御部(以下、単に「GW端末」とする)は、新規センサー端末からネットワークへの加入要求を受信して、新規端末が参入すると(100)、受信した加入要求に付された経路情報と記憶しているルーティングテーブルに基づいて、当該新規センサー端末のホップ数を求め、ホップ数が設定されている上限値以内であるかどうかを判断する(102)。
【0101】
ホップ数が上限以内であれば(Yesの場合)、GW端末は、新規センサー端末の経路上にあるノードのトラフィック負荷を算出し、トラフィック負荷がしきい値以内であるかどうかを判断し(104)、しきい値以内であれば(Yesの場合)、当該マルチホップの経路を確定し、ルーティングテーブルに記憶する(106)。
【0102】
また、処理102で、新規参入端末のホップ数が上限を超えていた場合(Noの場合)と、処理104でトラフィック負荷がしきい値を超えていた場合(Noの場合)には、GW端末は、運用例に示したような経路の再構築を行う(108)。
【0103】
そして、GW端末は、新経路を構築すると、当該新経路を用いて既知データを新経路上のセンサー端末宛に送信する(110)。
そして、送信先のセンサー端末から当該データを正常に受信した旨示す応答を受信すると、当該新経路を確定してルーティングテーブルを更新する(114)。
このようにして、本システムのGW端末における処理が行われる。
【0104】
[実施の形態の効果]
本発明の実施の形態に係る無線センサーネットワークシステムは、GW端末と、GW端末に直接又は間接的に接続する複数のセンサー端末とを備え、センサー端末が、送信出力が小さい低出力モードと、それより送信出力が大きい高出力モードとを備え、ネットワーク加入時には、低出力モードで近隣のセンサー端末に接続して、既存のマルチホップ経路を用いてGW端末にアクセスし、GW端末が、当該マルチホップ経路における当該新規加入端末のホップ数と、当該経路上のノードのトラフィック負荷を算出して、ホップ数とトラフィック負荷が共に予め設定された上限以内であれば、当該端末の経路を当該マルチホップ経路で確定し、ホップ数とトラフィック負荷の少なくとも一方が上限を超えている場合には、当該センサー端末に対して、高出力モードに切り替えて、GW端末と直接通信を行うよう指示を出力して経路の再構築を行うシステムとしており、ホップ数の増大によるデータ伝達遅延や特定のノードへの負荷の集中を抑えることができ、ネットワーク全体のトラフィック量の増加を抑制して、システムを効率的に運用することができる効果がある。
【0105】
また、本システムによれば、GW端末が、高出力モードに切り替えた端末の接続先を、GW端末に限らずトラフィック負荷の小さい端末に指定することも可能であり、システム全体をより効率的に運用できる効果がある。
【0106】
また、本システムによれば、GW端末が、経路の再構築の際に、高出力モードに切り替えたいノードが高出力モードに対応していないセンサー端末の場合には、当該ノードの下位ノードで高出力モードに対応しているセンサー端末を高出力モードに切り替えてGW端末と直接通信を行うよう、経路を再構築するシステムとしているので、経路構築の自由度を増大させ、ホップ数の増大によるデータ伝達遅延や特定のノードへの負荷の集中を抑え、システムを効率的に運用することができる効果がある。
【0107】
また、本システムによれば、GW端末からセンサー端末への下り方向の通信については、マルチホップの経路を用いて通信を行い、上り方向の通信については、ホップ数が少なくなるよう、一部のセンサー端末を高出力モードに切り替えた経路を用いて通信を行うようにしているので、なるべく高出力通信を行わなくて済むよう、許容される遅延時間に応じて上りと下りとでホップ数を変えた経路として、消費電力の増大及び干渉の発生を最低限に抑えることができる効果がある。
【0108】
また、本システムによれば、センサー端末が、宛先毎に出力モードを記憶しているので、GW端末と高出力モードで通信を行う場合でも、下位のノードとは低出力モードでアドホック通信を行うことができ、無駄に消費電力を増大させず、干渉の発生を最低限に抑えることができる効果がある。
【0109】
また、上述した例では、出力モードが高出力モードと低出力モードの2段階である場合について説明したが、センサー端末の位置がわかる場合には、指定された接続先からの距離に応じた送信出力を設定するようにしてもよいし、また、少しずつ送信出力を上げていって、接続先との正常な送受信が可能な送信出力を設定するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、特にシステム全体のトラフィック量の増加を抑制して遅延時間を短縮し、特定の端末への負荷の集中を防いで効率的な運用を可能とする無線センサーネットワークシステムに適している。
【符号の説明】
【0111】
1...センサー、 2,4...制御部、 3,6...無線部、 5...無線通信処理部、 7...有線通信処理部、 21,41...アプリケーション管理部、 22,42...経路管理部、 23,51...無線通信アクセス制御部、 24,52...無線通信インタフェース部、 71...有線通信アクセス制御部、 72...有線通信インタフェース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサーを備え無線通信を行う複数のセンサー端末と、前記複数のセンサー端末と通信する通信経路を構築し、前記通信経路に基づいて前記各センサー端末との無線通信を行う管理端末とを備え、前記センサー端末と前記管理端末とをノードとする無線センサーネットワークシステムであって、
センサー端末が、ネットワークに参入する際に、第1の送信出力で、既存のノードを介して前記管理端末に加入要求を送信し、
前記管理端末が、前記加入要求を受信すると、前記受信した経路上のノードのトラフィック負荷を算出し、前記ホップ数と前記トラフィック負荷が共に許容範囲内であれば、前記センサー端末の通信経路を前記受信した経路とし、前記ホップ数と前記トラフィック負荷の少なくとも一方が許容範囲外であれば、前記センサー端末に対して、前記第1の送信出力よりも大きい第2の送信出力で、前記管理端末又はトラフィック負荷の小さい特定のノードに直接接続するよう指示を出力して通信経路を再構築し、
前記センサー端末が、前記指示を受信した場合には、前記管理端末宛にデータを送信する際に、前記第2の送信出力で前記管理端末又は前記特定のノードに送信することを特徴とする無線センサーネットワークシステム。
【請求項2】
複数のセンサー端末と共に無線センサーネットワークシステムのノードを構成し、前記各センサー端末と通信する通信経路を構築して、前記通信経路に基づいて前記センサー端末との無線通信を行う管理端末であって、
センサー端末から第1の送信出力で送信された、ネットワークへの加入要求を受信すると、受信した経路に基づいて要求元のセンサー端末のホップ数を算出すると共に、前記受信した経路上のノードのトラフィック負荷を算出し、前記ホップ数と前記トラフィック負荷が共に許容範囲内であれば、前記センサー端末の通信経路を前記受信した経路とし、前記ホップ数と前記トラフィック負荷の少なくとも一方が許容範囲外であれば、前記センサー端末に対して、前記第1の送信出力よりも大きい第2の送信出力で、前記管理端末又はトラフィック負荷の小さい特定のノードに直接接続するよう指示を出力して通信経路を再構築することを特徴とする管理端末。
【請求項3】
管理端末と共に無線センサーネットワークシステムのノードを構成し、前記管理端末からの指示に基づいて無線通信を行うセンサー端末であって、
ネットワークに参入する際に、第1の送信出力で、既存のノードを介して前記管理端末に加入要求を送信し、前記管理端末から、前記第1の送信出力よりも大きい第2の送信出力で、前記管理端末又はトラフィック負荷の小さい特定のノードに直接接続する指示を受信した場合には、前記管理端末宛にデータを送信する際に、前記第2の送信出力で前記管理端末又は前記特定のノードに送信することを特徴とするセンサー端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−55451(P2013−55451A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191503(P2011−191503)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】