説明

無線タグ情報読み取り装置

【課題】装置1つを設けるだけで、物品収容器内に配置される複数の物品の移動状況(収容状況)を検出する。
【解決手段】リーダ5は、物品を出し入れ可能な物品収容器1の近傍に配置され、情報を記憶するIC回路部及びこのIC回路部に接続されたタグ側アンテナを備えた無線タグ回路素子Toと無線通信を行うためのアンテナ30と、制御回路12とを有しており、制御回路12は、アンテナ30による無線通信領域を、物品収容器1の物品出し入れ側となるように設定する無線通信領域設定処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品に関連して取り扱われる無線タグ回路素子から、無線通信により情報の読み出しを行える無線タグ情報読み取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小型の無線タグとリーダ(読み取り装置)/ライタ(書き込み装置)との間で非接触で情報の読みとり/書き込みを行うRFID(Radio Frequency Identification)システムが知られている。例えばラベル状の無線タグに備えられた無線タグ回路素子は、所定の情報を記憶するIC回路部とこのIC回路部に接続されて情報の送受信を行うアンテナ部とを備えており、無線タグが汚れている場合や見えない位置に配置されている場合であっても、リーダ/ライタ側よりIC回路部に対して情報の読み取り/書き込みが可能であり、物品管理や物流等の様々な分野において実用が期待されている。
【0003】
このような無線タグを、書類等の管理に応用した従来技術として、例えば特許文献1に記載のものが既に提唱されている。
【0004】
この従来技術は、書類のファイル(探索対象物)を引き出しに収納する引き出し型の物品収容器(キャビネット)において、各ファイルに無線タグ回路素子(RFIDデータキャリア)を取り付けるとともに、各引き出しの上方に上記無線タグ回路素子と通信可能なリーダ(無線タグ情報読み取り装置、RFIDアンテナ)を設けることにより、各ファイルの出し入れ管理を行うようにしたものである。
【0005】
【特許文献1】特開2000−128315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、物品を物品収容器内から外部へ取り出したり物品収容器外から内部へ収納したり等、物品の移動状況(収容状況)を検出したい場合には、各段の引き出しそれぞれに無線タグ情報読み取り装置を設ける必要がある。このため、構造が大掛かりとなるとともに、コスト高を招くという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、装置1つを設けるだけで、物品収容器内に配置される複数の物品の移動状況(収容状況)を検出できる無線タグ情報読み取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の発明は、物品を出し入れ可能な物品収容器の近傍に配置された無線タグ情報読み取り装置であって、情報を記憶するIC回路部及びこのIC回路部に接続されたタグ側アンテナを備えた無線タグ回路素子と無線通信を行うための装置側アンテナと、この装置側アンテナによる通信可能領域を、前記物品収容器の物品出し入れ側となるように設定する通信制御手段と
を有することを特徴とする。
【0009】
本願第1発明においては、物品収容器の近傍に配置された装置側アンテナを介し無線タグ回路素子と無線通信が行われ、このときの通信可能領域が、通信制御手段によって当該物品収容器の物品出し入れ側になるように設定される。これにより、物品を物品収容器内から外部へ取り出したり逆に物品収容器外から内部へ収納したりしたときには、上記通信可能領域を必ず通過することになる。この結果、物品収容器内に配置される複数の物品に対し物品用無線タグ回路素子を添付・同梱等によりそれぞれ関連付けておくことで、1つの無線タグ情報読み取り装置を設けるだけで、各物品の移動状況(収容状況)を物品用無線タグ回路素子との通信状況の変化(履歴)によって検出することが可能となる。
【0010】
第2発明は、上記第1発明において、前記通信制御手段は、前記通信可能領域が前記物品収容器の内部を略含まないように設定することを特徴とする。
【0011】
物品収容器内部が通信可能領域とならないようにすることにより、物品が物品収容器内から外部へ取り出されたときには、その移動に伴って通信可能領域外→通信可能領域内という順の挙動となり、逆に物品収容器外から内部へ収納されたときには、その移動に伴って通信可能領域内→通信可能領域外という順の挙動となることから、これらの挙動を利用して確実に物品の収容状況を検出することができる。
【0012】
第3発明は、上記第2発明において、前記通信制御手段は、前記物品収容器の内部の所定箇所に配置された第1通信設定用無線タグ回路素子との通信結果に基づき、前記通信可能領域を設定することを特徴とする。
【0013】
これにより、第1通信設定用無線タグ回路素子と通信がほぼ不可能となるように通信制御手段が制御することで、確実に通信可能領域が物品収容器内部を略含まないように設定することができる。
【0014】
第4発明は、上記第1発明乃至第3発明のいずれかにおいて、前記通信制御手段は、前記通信可能領域が、前記物品収容器の前記物品出し入れ側のうち前記装置側アンテナより略最遠となる位置まで到達するように、設定することを特徴とする。
【0015】
これにより、通信可能領域が物品収容器の物品出し入れ側全域をカバーするように設定することができるので、物品収容器のどの位置において物品の出し入れが生じた場合でも、物品用無線タグ回路素子の通信状況の変化(履歴)によって確実に物品の収容状況を検出することができる。
【0016】
第5発明は、上記第4発明において、前記通信制御手段は、前記物品収容器の外部で前記物品収容器の前記物品出し入れ側の所定箇所に配置された第2通信設定用無線タグ回路素子との通信結果に基づき、前記通信可能領域を設定することを特徴とする。
【0017】
これにより、第2通信設定用無線タグ回路素子と通信が可能となるように通信制御手段が制御することで、確実に通信可能領域が物品収容器の物品出し入れ側全域をカバーするように設定することができる。
【0018】
第6発明は、上記第1乃至第5発明のいずれか1つにおいて、前記装置側アンテナを介した前記物品に関連付けて取り扱われる物品用無線タグ回路素子に対する通信結果の履歴に応じ、対応する物品の収容状況を判断する判断手段を有することを特徴とする。
【0019】
これにより、たとえば物品用無線タグ回路素子の読み取り状態の通信可能領域内外に変化する挙動の変化の仕方から物品収容器内から当該物品が取り出されたのかあるいは収納されたかを判断することができる。
【0020】
第7発明は、上記第6発明において、前記判断手段は、前記物品収容器近傍の所定の周囲領域へ人物が入場後、当該周囲領域から退場したときに前記収容状況の判断を行うことを特徴とする。
【0021】
人物が物品収容器の周囲領域から退場したときに収容状況の判断を行うことにより、当該人物が物品収容器の物品に対しどのような行動をとったのか(持ち出し、返却、閲覧、一瞥のみ等)を判断することが可能となる。
【0022】
第8発明は、上記第7発明において、前記判断手段は、前記所定の周囲領域へ人物が入場した後における前記物品用無線タグ回路素子に対する通信結果の履歴に応じ、前記収容状況の判断を行うことを特徴とする。
【0023】
人物が物品収容器の周囲領域に入場してからの物品用無線タグ回路素子との通信履歴に応じて収容状況の判断を行うことにより、当該人物が遠方より物品収容器に到達した後、物品収容器の物品に対しどのような行動をとったのか(持ち出し、返却、閲覧、一瞥のみ等)を確実に判断することができる。
【0024】
第9発明は、上記第6乃至第8発明のいずれかにおいて、前記判断手段は、前記物品用無線タグ回路素子に対する通信結果の履歴と、前記人物と関連付けられる人物用無線タグ回路素子に対する通信結果の履歴とに応じ、前記収容状況の判断を行うことを特徴とする。
【0025】
これにより、例えば、人物用無線タグ回路素子が通信可能領域内へ→物品用無線タグ回路素子が通信可能領域内へ→両無線タグ回路素子が通信可能領域外へという順の挙動となれば物品収容器内から当該物品が取り出され持ち出されたと判断し、人物用無線タグ回路素子及び物品用無線タグ回路素子が通信可能領域内へ→物品用無線タグ回路素子が通信可能領域外へ→人物用無線タグ回路素子が通信可能領域外へという順の挙動となれば当該物品が返却され収納されたと判断し、人物用無線タグ回路素子が通信可能領域内へ→物品用無線タグ回路素子が通信可能領域内へ→物品用無線タグ回路素子が通信可能領域外へ→人物用無線タグ回路素子が通信可能領域外へという順の挙動となれば物品収容器内から当該物品が一旦取り出されたがそのまま収納された(戻された、閲覧)と判断し、人物用無線タグ回路素子が通信可能領域内へ→人物用無線タグ回路素子が通信可能領域外へという順の挙動となれば人物は物品収容器内の物品を移動させることなく一瞥したのみであると判断することができる。
【0026】
第10発明は、上記第9発明において、前記通信制御手段は、前記人物用無線タグ回路素子との通信結果に基づき、前記通信可能領域を設定することを特徴とする。
【0027】
例えば物品収容器近傍の取り出し側の所定位置に人物を位置させておき、当該人物に関連づけられた人物用無線タグ回路素子と通信が可能となるように通信制御手段が制御することで、通信可能領域を適正に設定することができる。
【0028】
第11発明は、上記第7乃至第10発明のいずれかにおいて、前記判断手段は、前記周囲領域へ人物が入場し、前記物品用無線タグ回路素子に対する通信状態値が相対的に大きな値から小さな値に減少した後、所定時間経過後に前記周囲領域より前記人物が退場した場合、当該物品用無線タグ回路素子に対応した物品が前記物品収容器内へ返却されたと判断することを特徴とする。
【0029】
物品返却の際には、物品を所持した人物(返却者)が遠方より物品収容器の周囲領域に到達し、物品収容器の出し入れ側にて物品のみを物品収容器内部へ収納し(戻し)、その後人物のみが去っていく挙動となることにより、周囲領域へ人物が入場→物品用無線タグ回路素子の通信状態値減少→人物退場という順の推移に応じて、物品返却と判断することができる。
【0030】
第12発明は、上記第11発明において、前記判断手段は、さらに、前記周囲領域又は前記通信可能領域への前記人物の入場時期と、前記物品用無線タグ回路素子に対する通信状態値の前記大きな値の検出開始時期とが所定範囲内で一致したことを条件に、前記物品が返却されたと判断することを特徴とする。
【0031】
物品返却の際には、物品を所持した人物(返却者)が遠方より物品収容器の周囲領域に到達することから、人物入場時期と物品用無線タグ回路素子の通信状態値増大時期との略一致を条件とすることにより、さらに正確に物品返却を判断することができる。
【0032】
第13発明は、上記第7乃至第10発明のいずれかにおいて、前記判断手段は、前記周囲領域へ人物が入場した後、所定時間経過後に前記物品用無線タグ回路素子に対する通信状態値が相対的に小さな値から大きな値に増大し、前記周囲領域より前記人物が退場した場合、当該物品用無線タグ回路素子に対応した物品が前記物品収容器より持ち出されたと判断することを特徴とする。
【0033】
物品持ち出しの際には、人物(持ち出し者)が遠方より物品収容器の周囲領域に到達し、物品収容器の出し入れ側にて物品を物品収容器内部から取り出し、その後その物品を所持して去っていく挙動となることにより、周囲領域へ人物が入場→物品用無線タグ回路素子の通信状態値増大→人物退場という順の推移に応じて、物品持ち出しと判断することができる。
【0034】
第14発明は、上記第13発明において、前記判断手段は、さらに、前記周囲領域又は前記通信可能領域からの前記人物の退場時期と、前記物品用無線タグ回路素子に対する通信状態値が前記大きな値から前記小さな値に減少した時期とが所定範囲内で一致したことを条件に、前記物品が持ち出されたと判断することを特徴とする。
【0035】
物品持ち出しの際には、物品を所持した人物(返却者)が物品収容器の周囲領域から去っていくことから、人物退場時期と物品用無線タグ回路素子の通信状態値減少時期との略一致を条件とすることにより、さらに正確に物品持ち出しを判断することができる。
【0036】
第15発明は、上記第11乃至第14発明のいずれかにおいて、前記判断手段は、前記物品用無線タグ回路素子に対する前記通信状態値として、当該物品用無線タグ回路素子との通信電波強度、又はその通信電波強度の時間変化量、若しくは前記物品用無線タグ回路素子からの応答率のうち、少なくとも1つに基づき、各種判断を行うことを特徴とする。
【0037】
これにより、例えば物品用無線タグ回路素子との通信電波強度が大きくなったり、その時間変化量が正の値で大きくなったり、応答率が大きくなったりしたときには、当該物品が通信可能領域外から通信可能領域内に移動したと判断することができ、逆に物品用無線タグ回路素子との通信電波強度が小さくなったり、その時間変化量が負の値で大きくなったり、応答率が小さくなったりしたときには、当該物品が通信可能領域内から通信可能領域外に移動したと判断することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、1つの無線タグ情報読み取り装置を設けるだけで、物品収容器内に配置される複数の物品の移動状況(収容状況)を物品用無線タグ回路素子との通信状況の変化(履歴)によって検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0040】
図1は、本実施形態の無線タグ情報読み取り装置を備えた物品収容器の全体概略構造を表す斜視図である。
【0041】
図1において、物品収容器1は、複数段(この例では4段)の収容部を備える収容器本体2と、この収容器本体2の近傍に設置(この例では天板2a上面に設置)された無線タグ読み取り装置としてのリーダ5とを有している。
【0042】
収容器本体2は、左右方向に長い長方形の天板2aと底板2bのそれぞれの両端を上下に長い側板2cで連結固定した枠組みにその背面を覆うように背面板2d(図2参照)を設け、さらにその枠組みの内部に上下に均等な間隔で3枚の載置板2eを設けて4段の収容部3を形成している。そして上から1段目の収容部3の底面(載置板2eの上面)及び4段目の収容部3の底面(底板2bの上面)のそれぞれの左右方向中央位置には内部基準無線タグ(第1通信設定用無線タグ回路素子としての無線タグ回路素子Toを備える。詳細は後述)Tnが設置(この例では、載置板2eや底板2bから少し浮かせた状態となるように、非金属製の仕切部材Uを介しその上に配置)されている。また、底板2bの左右方向中央位置で前方に向かう方向にタグ設置部4が突設されており、このタグ設置部4の上面には外部基準無線タグ(第2通信設定用無線タグ回路素子としての無線タグ回路素子Toを備える)Tgが設置(例えば埋設)されている。この収容器本体2の全体は無線通信信号の信号強度を低減する材料(例えばアルミニウム等、シールド性の材料)を用いて構成されている。
【0043】
各段の収容部3には、複数の物品6(この例では多様な形状の工具。以下単に工具6という)が収容されており、それぞれの工具6には物品用無線タグ(物品用無線タグ回路素子としての無線タグ回路素子Toを備える)Tbが貼付されている。また、それら工具6を取り扱うことが許可されている従業員、作業員などの管理対象者は、人物用無線タグ(人物用無線タグ回路素子としての無線タグ回路素子Toを備える)Tjを貼付した名札7や身分証明書を所持している。
【0044】
図2は、収容器本体2の図1中II−II′断面による側断面図とともに、その上面に設置されるリーダ5の機能的構成を表す機能ブロック図を示す図である。なお、図示の煩雑を避けるために、収容部3は内部基準無線タグTnが設置されている1段目及び4段目だけを示し、他の2〜3段目の引き出し部4は1、4段目のものと同様な構成であるとして図示を省略する。
【0045】
図2において、各収容部3は略直方体形状の中空の容器であり、それらの前方が開放されて内部のほぼ全体が視認できるようになっている。そしてこの各収容部3の開放されている側が、物品(工具)の取り出しと収納を行う物品出し入れ側(図2中の左側)となる。
【0046】
上記の内部基準無線タグTn、外部基準無線タグTg、物品用無線タグTb、人物用無線タグTj(以下適宜、これらを総称して無線タグTという)はいずれも同じ構成の無線タグTであり、それらが備える後述のIC回路部に予め記憶された識別情報(タグID)の種別によって内部基準無線タグTn、外部基準無線タグTg、物品用無線タグTb、人物用無線タグTjの区別が可能となっている。
【0047】
これら無線タグTは、例えば適宜の接着剤により載置板2e、底板2b、工具6、名札7に貼り付けられるベースフィルムTfと、その表面に表設される無線タグ回路素子Toとを有している。ベースフィルムTfの表面において、情報の送受信を行う2本の細長いダイポールアンテナ(タグ側アンテナ)72が一体に設けられており、これに接続するように情報を記憶するIC回路部74が形成され、これらによって無線タグ回路素子Toが構成されている(無線タグ回路素子Toの詳細構造については後述する)。
【0048】
一方、リーダ5は、リーダ5全体を収容するケーシング5aと、各無線タグTに備えられる無線タグ回路素子Toとの間で所定の帯域の電波を用いて無線通信により信号の送受を行うアンテナ30(装置側アンテナ)と、このアンテナ30を介し上記無線タグ回路素子Toへアクセスするための高周波回路10と、無線タグ回路素子Toとの間で送受信する信号を処理するための信号処理回路11と、収容器本体2の物品出し入れ側の近傍における人物の存在を感知する人感センサ(なお図1では不図示)13と、物品用無線タグTb及び人物用無線タグTjとの通信結果の履歴を格納保持するデータベース15と、上記信号処理回路11、人感センサ13、及びデータベース15を介しリーダ5全体を制御するための制御回路12とを有する。
【0049】
制御回路12は、いわゆるマイクロコンピュータであり、詳細な図示を省略するが、中央演算処理装置であるCPU、ROM、及びRAM等から構成され、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うようになっている。
【0050】
また、ケーシング5aの一部は、収容器本体2の前面から物品出し入れ側に突出するように設けられており、上記アンテナ30は、このケーシング5aの突出部分の下面に、収容器本体2の物品出し入れ側の外部領域を臨むような配置で設けられている。これにより、アンテナ30の設置位置は、2つの内部基準無線タグTn及び外部基準無線タグTgのいずれとも左右方向位置でほぼ一致している。そして、アンテナ30を介した無線通信領域(通信可能領域)は、2つの内部基準無線タグTnの両方に対し無線通信信号の低減材である天板2a、載置板2eの影となって通信不可となり、かつ外部基準無線タグTgに対しては通信可能となる領域に設定される(この無線通信領域の設定については後に詳述する)。
【0051】
アンテナ30は、ダイポールアンテナで構成され、無線タグTへ向けて前記質問波を送信すると共に、その質問波に応じてその無線タグTから返信される応答波を受信する。
【0052】
人感センサ13は、収容器本体2の物品出し入れ側において上記無線通信領域Arを含むより広い領域に何者かの人物(この場合人物用無線タグTjの所持・非所持にかかわらない)が入場しているか否かのオン・オフ信号を制御回路12に出力するものであり、赤外線センサなどといった公知の検出器で構成される。
【0053】
データベース15は、ハードディスクドライブなどの大容量記憶装置からなり、制御回路12がアンテナ30等を介して物品用無線タグTb及び人物用無線タグTjと通信した結果の履歴を時系列で記録される時系列履歴テーブルなどの情報を格納保持する(時系列履歴テーブルについては後に詳述する)。
【0054】
図3は、リーダ5の詳細構成を表す機能ブロック図である。この図3に示すように、上記信号処理回路11は、無線タグTへの送信信号に対応するコマンドビット列を生成するコマンドビット列生成部20と、そのコマンドビット列生成部20から出力されたディジタル信号をパルス幅変調等により符号化する符号化部22とを有している。
【0055】
高周波回路10は、上記符号化部22により符号化された信号をAM方式で変調するAM変調部24と、所定の局発信号を出力する局部発振器32と、その局部発振器32から出力される局発信号に応じて上記AM変調部24から出力される送信信号をアップコンバートして所定の増幅率で増幅し上記アンテナ30から質問波として送信すると共に、アンテナ30により受信される受信信号を所定の増幅率で増幅し上記局部発振器32から出力される局発信号に応じてダウンコンバートして出力する高周波送受信部34と、その高周波送受信部34から出力される受信信号をAM方式で復調してAM復調波を検出するAM復調部40と、このAM復調部40がAM復調波の検出状態に応じて出力する制御信号によりアンテナ30から出力する送信信号の増幅率を設定し高周波送受信部34に出力する(送信電力を可変に設定できる)出力制御部35とを有している。
【0056】
また、一方、信号処理回路11は、上記AM復調部40により復調されたAM復調波をパルス幅変調等により復号する復号部42と、その復号部42により復号された復号信号を解釈して前記無線タグTの変調に関する情報信号を読み出す返答ビット列解釈部44も有している。
【0057】
図4は、高周波送受信部34の詳細機能を表す機能ブロック図である。この図4に示すように、高周波送受信部34は、AM変調部から供給される送信信号をアナログ信号に変換する送信信号D/A変換器50と、その送信信号D/A変換器50によりアナログ変換された送信信号の周波数を前記局部発振器32から出力される局発信号の周波数だけ高くするアップコンバータ52と、そのアップコンバータ52によりアップコンバートされた送信信号を前述した出力制御部から設定される増幅率で増幅する送信信号増幅器54と、その送信信号増幅器54から出力される送信信号をアンテナ30に供給すると共に、そのアンテナ30から供給される受信信号を受信信号増幅部58に供給する方向性結合器56と、その方向性結合器56から供給される受信信号を所定の増幅率で増幅する受信信号増幅器58と、その受信信号増幅器58から出力される受信信号の周波数を局部発振器32から出力される局発信号の周波数だけ低くするダウンコンバータ60と、そのダウンコンバータ60によりダウンコンバートされた受信信号をディジタル信号に変換して前記AM復調部40に供給する受信信号A/D変換器62とを有している。
【0058】
図5は、無線タグTに備えられた上記無線タグ回路素子Toの詳細機能を表す機能ブロック図である。この図5に示す無線タグ回路素子Toは、前述したように、リーダ5との間で信号の送受信を行うための上記ダイポールアンテナで構成されるアンテナ部72と、そのアンテナ部72により受信された信号を処理するためのIC回路部74とを有している。そのIC回路部74は、上記アンテナ部72により受信されたリーダ5からの質問波を整流する整流部76と、その整流部76により整流された質問波のエネルギを蓄積するための電源部78と、上記アンテナ部72により受信された搬送波からクロック信号を抽出して制御部86に供給するクロック抽出部80と、タグID等の所定の情報信号を記憶し得る情報記憶部として機能するメモリ部82と、上記アンテナ部72に接続されて信号の変調及び復調を行う変復調部84と、上記整流部76、クロック抽出部80、及び変復調部84等を介して上記無線タグ回路素子Toの作動を制御するための制御部86とを機能的に含んでいる。
【0059】
この制御部86は、リーダ5と通信を行うことにより上記メモリ部82に上記所定の情報を記憶する制御や、上記アンテナ部72により受信された質問波を上記変復調部84において上記メモリ部82に記憶された情報信号に基づいて変調したうえで応答波として上記アンテナ部72から反射返信する制御等の基本的な制御を実行する。
【0060】
クロック抽出部80は受信した信号からクロック成分を抽出して制御部86にクロックを抽出するものであり、受信した信号のクロック成分の速度に対応したクロックを制御部86に供給する。
【0061】
なお、例えばメモリ部155に記憶されている情報信号のうちの内部基準無線タグTn、外部基準無線タグTg、物品用無線タグTb、人物用無線タグTjを個別に識別するためのタグIDについては、そのタグIDを構成するビット列中の内容により、上記各種タグの種別を区別できるとともに、さらに各単体のタグを一意に特定できる情報となっている。
【0062】
以上において、本実施形態の最も大きな特徴は、リーダ5のアンテナ30による無線通信領域を、収容器本体2の物品出し入れ側における適切な領域に設定することで、各物品の移動状況(収容状況)を物品用無線タグTbとの通信状況の変化(履歴)によって検出することにある。以下、その詳細を順次説明する。
【0063】
図6は、リーダ5の制御回路12によって実行される制御手順を表すフローチャートである。
【0064】
この図6において、リーダ5の電源が投入されるとこのフローが開始される。
まずステップS100において、収容器本体2の前方に位置する物品出し入れ側においてアンテナ30からの無線通信領域を適切な領域となるよう設定する無線通信領域設定処理を行う(後述の図7のフローを参照)。これによりリーダ5を起動させる度にその時点での電波状態に応じた適切な無線通信領域を設定し、後のタグ管理処理においてより性格に無線タグの挙動を検出することができる。
【0065】
次にステップS200で、物品用無線タグTb及び人物用無線タグTjと無線通信を行いつつその通信結果の履歴に基づく物品(工具)の収容状況を判断するタグ管理処理を行う(後述の図11のフローを参照)。このタグ管理処理が本実施形態の無線タグ読み取り装置の目的とする処理であり、そして電源が切断された際にこのフローを終了する。
【0066】
図7は、上記図6中におけるステップS100の無線通信領域設定処理の詳細手順を表すフローチャートである。この図7において、まずステップS105において、アンテナ30から出力する送信信号の出力値を最大に設定する。これにより無線通信領域Ar(後述の図8等を参照。以下同様)は最も広い領域に設定される。なおこの状態では、収容器本体2の上方に位置するアンテナ30から収容器本体2を載置している床面まで無線通信領域Arが到達し、すなわちアンテナ30から最も遠い(最も下方の段の)収容器の物品出し入れ側領域まで達していることになるが、その一方で送信信号の出力が大きすぎる場合には各段の収容器の内部まで深く到達する可能性がある。
【0067】
次にステップS110へ移り、2つの内部基準無線タグTnの読み取りが可能であるか否かを判定する。具体的には、各内部基準無線タグTnのそれぞれ固有のタグIDに基づいてそれらの無線タグ回路素子Toに記憶された情報を読み出す「Scroll ID」コマンドを信号処理回路11に出力し、高周波回路を介してアンテナ30から質問波として各内部基準無線タグTnの無線タグ回路素子Toに送信され、返信を促す。そして、この質問波に対応していずれかの内部基準無線タグTnの無線タグ回路素子Toからリプライ信号(少なくともタグIDを含む)が受信されたか否かを判定する。
【0068】
いずれかの内部基準無線タグTnからのリプライ信号が受信された場合、判定が満たされ、すなわち送信信号の出力が大きすぎて収容器内に無線通信領域Arが深く到達しすぎているとみなし、ステップS115で送信信号出力を所定幅で減少した後、ステップS110に戻って同じ手順を繰り返す。このステップS110及びステップS115のループにより、各内部基準無線タグTnに無線通信領域Arが到達しない程度にかつそのうちで最も大きい無線通信領域Arを確保できるよう送信信号出力を設定することができる。なお、ステップS115における減少幅は小さい値であるほどより高い調整精度で無線通信領域Arを設定することができる。
【0069】
一方、上記ステップS110において、いずれの内部基準無線タグTnからもリプライ信号が受信されない場合、判定が満たされず、すなわち収容器内における無線通信領域Arの到達深さが適度となるよう送信信号の出力を減少できたとみなし、次のステップS120へ移る。
【0070】
ステップS120では、2つの外部基準無線タグTgの読み取りが可能であるか否かを判定する。具体的には、外部基準無線タグTgを読み取り対象の無線タグとして上記ステップS110と同様に質問波を出力し、それに対応するリプライ信号が受信できたか否かの判定を行う。外部基準無線タグTgからのリプライ信号が受信された場合、判定が満たされ、最下段の収容器の物品出し入れ側領域まで無線通信領域Arが確保されて適切に無線通信領域Arが設定されたとみなしてこのフローを終了する。なお、この際にはすぐに図6のフローにリターンしてもよいが、操作者から特に図示しないリーダ5の操作部からの操作入力があるまでスリープ状態として待機するようにしてもよい。
【0071】
一方、ステップS120において、外部基準無線タグTgからリプライ信号が受信されない場合、判定が満たされず、すなわち上記ステップS110とステップS115のループにより送信信号の出力が減少され過ぎてしまったために最下段の収容器の物品出し入れ側領域まで無線通信領域Arが確保できず、無線通信領域Arの設定が失敗したとみなしてステップS125でエラー処理(例えば、図示しないランプやブザーなどで操作者にエラー報知するなど)を行い、リーダ5の制御自体を終了する。
【0072】
図8、図9、図10は、本実施形態において上記の無線通信領域設定処理により適切な設定が実現された無線通信領域Arの態様を概念的に表す図であり、図8は収容器本体2を側面から見た図、図9は収容器本体2を上方から見た平面図、図10は収容器本体2を正面から見た正面図である。
【0073】
これら図8、図9、図10において、破線で示す無線通信領域Arは、全ての収容部3における物品出し入れ側の領域を全体的に覆うとともに、各収容部3の内部に対しては、上記天板2a又は各載置板2eにより遮られてほとんど入り込んでいない状態となっている。また、この適切な無線通信領域Arの設定状態において、上記2つの内部基準無線タグTnはともに検出不可能となるように設置されている。
【0074】
また、各図中において二点鎖線で示す領域は人感センサ13の検出可能領域(所定の周囲領域)Bであり、このように無線通信領域Ar全体を包含し、それよりも少しだけ広い領域を形成するよう設定される。これにより、人物が無線通信領域Arに入場する直前に収容器本体2に近づきつつあることを事前に感知し、後述する時系列履歴テーブルの記録の準備を行って物品用無線タグTb及び人物用無線タグTjの正確な検出履歴を記録することができる。
【0075】
次に、タグ管理処理について詳細に説明する。図11は、上記図6中におけるステップS200のタグ管理処理の詳細手順を表すフローチャートである。なお、以下に説明する制御手順では、無線通信領域Arに対して人物が一人だけで入退場し、またその人物が扱える工具は一つだけであることを前提とする。これは後述する各変形例においても同様とする。
【0076】
この図11において、まずステップS205において、人感センサ13がオン出力(人感センサ13の検出領域内に人の存在を確認)しているか否か、すなわち何者かが収容器本体2の物品出し入れ側に位置する無線通信領域Arに近づいているか否かを判定する。誰も無線通信領域Arに近づかずに人感センサ13がオフ出力のままである場合、判定が満たされず、ステップS205の判定を繰り返す。そしてステップS205で人感センサ13がオン出力となった場合、判定が満たされ、すなわち何者かが無線通信領域Arに近づきつつあるとみなしてステップS210以降の無線タグ検出ループを開始する。
【0077】
ステップS210では、人物用無線タグTjの検出を行う。具体的には全ての人物用無線タグTjに共通するタグIDの種別情報に基づき、例えば、それらの無線タグ回路素子Toに記憶された情報を階層的に読み出す「Ping ID」コマンドを信号処理回路11に出力し、高周波回路を介してアンテナ30から質問波として無線通信領域Ar内に送信され、返信を促す。そして、この質問波に対応して人物用無線タグTjの無線タグ回路素子Toからリプライ信号(少なくともタグIDを含む)が検出されたかどうかの有無(通信状態値)と、検出された場合におけるリプライ信号からの固有のタグIDの抽出を行う。
【0078】
そして次のステップS215では、物品用無線タグTbの検出を行う。具体的には全ての物品用無線タグTbに共通するタグIDの種別情報に基づき、上記ステップS205と同様「Ping ID」コマンドを用いて物品用無線タグTbの無線タグ回路素子Toからリプライ信号が検出されたかどうかの有無と、検出された場合におけるリプライ信号からの固有のタグIDの抽出を行う。なお、この際には、前記図8で説明したように無線通信領域Arは各収容部3の内部にほとんど到達しないように設定されているため、各収容部3に収容されている各物品(この例では工具)6に貼付されている物品用無線タグTbは検出されることがない。
【0079】
次にステップS220へ移り、上記ステップS210と上記ステップS215でのそれぞれの通信結果をデータベース15内の時系列履歴テーブルに記録する。
【0080】
そしてステップS225に移り、人感センサ13がオン出力しているか否かを判定する。人感センサ13がオン出力のままである場合、判定が満たされ、すなわちステップS210に戻って上記ステップS210〜ステップS225の無線タグ検出ループを繰り返す。また一方、人感センサ13がオフ出力に切り替わった場合、判定が満たされず、すなわち人物が無線通信領域Arからすでに退場したものとみなして上記無線タグ検出ループから抜け出し、ステップS300へ移る。
【0081】
そしてステップS300では、上記ステップS210〜ステップS225での無線タグ検出ループにより記録された時系列履歴テーブルを参照して、各収容器の内部に収容されている物品(工具)の収容状況を判断する収容状況判断処理を行う(後述の図14のフローを参照)。その後、ステップS205へ戻り同様のタグ管理処理の手順を繰り返す。なお、操作者によりリーダ5の電源を停止するなどによって、このフローを停止することができる。
【0082】
このフローによれば、収容状況判断処理を行う前に、人物が無線通信領域Arに入場する直前から退場した直後までの間における物品用無線タグTbの通信状況の変化を時系列履歴テーブルに記録することができる。図12は、上記フローにより作成されデータベース15に格納保持される時系列履歴テーブルの例を概念的に表す図であり、図12(a)は人物が返却動作を行った場合の例の図、図12(b)は人物が持ち出し動作を行った場合の例の図である。
【0083】
図中、「T1」「T2」「T3」「T4」「T5」「T6」‥‥は、例えば所定間隔(サイクル)における時系列経過を表しており、人物用無線タグTjや物品用無線タグTbを検出できた場合は「有り」検出できなかった場合は「無し」で表している。また、「ID」は検出されたタグIDを表しており、この表では説明の便宜上、簡略的に1文字の数字又はアルファベットで当該IDを記載している(実際のタグIDは例えば64ビット長のデータにより構成されている)。タグIDが検出されていない場合は「−」と記載している。
【0084】
図12(a)において、まず人物用無線タグTjについては、人感センサ13がオン出力となった後、時間T1では検出されず、時間T2で検出された後に時間T3,T4,T5,T6まで検出状態が継続した後(タグIDは「C」)、時間T7で検出されなくなっている。物品用無線タグTbについては、人感センサ13がオン出力となった後、時間T1では検出されず、時間T2で検出された後に時間T3,T4まで検出状態が継続した後(タグIDは「7」)、時間T5で検出されなくなり、以降は非検出状態となっている。
【0085】
すなわち、これらの検出結果は、時間T2で人物と工具6が略同時に無線通信領域Arに入場して検出が開始され、時間T5で工具6だけが検出終了し、その後2サイクルの時間差が経過してから時間T7に人物が無線通信領域Arを退場して検出が終了したという通信履歴を表し、人物が工具6の返却動作を行った場合に対応している。
【0086】
また、図12(b)において、人物用無線タグTjについては、人感センサ13がオン出力となった後、時間T1では検出されず、時間T2で検出された後に時間T3,T4,T5,T6まで検出状態が継続した後(タグIDは「E」)、時間T7で検出されなくなっている。物品用無線タグTbについては、人感センサ13がオン出力となった後、時間T1,T2,T3までは検出されず、時間T4で検出された後に時間T5,T6まで検出状態が継続した後(タグIDは「2」)、時間T7で検出されなくなっている。
【0087】
これらの検出結果は、人感センサ13がオン出力となった後に時間T2で人物だけが無線通信領域Arに入場して検出が開始され、その後2サイクルの時間差が経過してから時間T4で工具の検出も開始し、その後時間T7で人物と工具が略同時に無線通信領域Arを退場して両方の検出が終了したという通信履歴を表し、人物が工具6の持ち出し動作を行った場合に対応している。
【0088】
図13は人物用無線タグTjと物品用無線タグTbの検出の有無の時系列変化を概念的に表した図であり、図13(a)は人物が返却動作を行った場合に対応する図であって、上記図12(a)の通信履歴に対応する図であり、図13(b)は人物が持ち出し動作を行った場合に対応する図であって、上記図12(b)の通信履歴に対応する図である。また、図13(c)は人物が閲覧動作を行った場合に対応する図であり、図13(d)は人物が一瞥動作を行った場合に対応する図である。各図とも、横軸には時間をとって表している。
【0089】
図13(a)において、この場合は、図12(a)を用いて前述したように、人物と工具6が略同時に検出が開始され、先に工具6だけが検出終了し、その後人物の検出が終了する挙動である。すなわち、人物が工具6を携帯して収容器本体2の前の無線通信領域Arに入場し、いずれかの段の収容部3に工具6を収納したことによってその時点で工具6だけが無線通信領域Arから離脱して検出が終了し、その後時間差t1の経過後に工具6を携帯していない人物だけが無線通信領域Arから退場したことを表している。つまり、この場合には人物が工具6を収容器本体2に返却した動作を意味している。
【0090】
また、図13(b)において、この場合は、図12(b)を用いて前述したように、先に人物だけが検出開始され、その後工具6の検出も開始され、その後人物と工具6が略同時に検出終了する挙動である。すなわち、人物が何も工具6を携帯せずに収容器本体2の前の無線通信領域Arに入場し、その後時間差t2の経過後にいずれかの段の収容部3から工具を取り出したことによってその時点で工具が無線通信領域Arに入り込み検出が開始され、さらにその後人物が工具6を携帯したまま無線通信領域Arから退場したことを表している。つまり、この場合には人物が収容器本体2から工具6を持ち出した動作を意味している。
【0091】
一方、図13(c)においては、先に人物だけが検出開始され、その後工具6の検出も開始され、さらにその後工具6が検出終了し、最後に人物が検出終了する挙動である。すなわち、人物は何も工具6を携帯せずに収容器本体2の前の無線通信領域Arに入場し、その後時間差t3の経過後にいずれかの段の収容部3から工具6を取り出したことによってその時点で工具6の検出が開始され、その後いずれかの段の収容部3へ同じ工具6を収納したことによってその時点で検出が終了し、その後時間差t4の経過後に何も工具6を携帯していない人物だけが無線通信領域Arから退場したことを表している。つまり、この場合には人物が収容器本体2から工具を閲覧した動作を意味している。
【0092】
また、図13(d)においては、人物だけが検出開始され、その後工具6は検出されないままに、人物が検出終了する挙動である。すなわち、人物は何も工具6を携帯せずに収容器本体2の前の無線通信領域Arに入場し、収納器本体2に収容されている工具6を手に取ることなく、そのまま何も工具6を携帯していない人物だけが無線通信領域Arから退場したことを表している。つまり、この場合には人物は収容器本体2を一瞥しただけの動作を意味している。
【0093】
なお、上記「収納」、「取り出し」は人物が収納器本体2の前で工具6に対しその場で行う動作であり、「返却」、「持ち出し」、「閲覧」、「一瞥」は人物が無線通信領域Arに入場してから退場するまでに行う一連の挙動の結果によって成される一連の動作(又は収容状況の変化)を意味している。
【0094】
図14は、上記図11中におけるステップS300の収容状況判断処理の詳細手順を表すフローチャートであり、図12に一例を示した時系列履歴テーブルの内容に基づいて、人物が無線通信領域Arの入退場の間にどのような収容状況となったかを判断する処理である。
【0095】
この図14において、まずステップS305において、人感センサ13がオン出力となっている間を通して(時系列履歴テーブルの全時間行程を通して)時系列履歴テーブルに物品用無線タグTbの検出履歴があるか否かを判定する。物品用無線タグTbの検出履歴が全くない場合、判定が満たされず、ステップS310で、工具6を携帯していない人物が収容器本体2を一瞥しただけであると判断してこのフローを終了する。
【0096】
また一方、上記ステップS305の判定において一回でも物品用無線タグTbの検出履歴があった場合には、判定が満たされ、ステップS315に移り、時系列履歴テーブルの全時間行程を通して時系列履歴テーブルに人物用無線タグTjの検出履歴があるか否かを判定する。人物用無線タグTjの検出履歴が全くない場合、判定が満たされず、すなわち工具の動きが検出されていながらそれを移動させるはずの人物が検出されていないタグ検出エラーが生じたものとみなされてステップS320でエラー処理を行いこのフローを終了する。この場合、物品用無線タグTbが貼付された管理対象物品である工具6を、人物用無線タグTjを所持していない管理対象者以外の不審者が携帯して移動させた可能性があるため、リーダ5の制御回路12が図示しない通信ネットワークを介して物品管理者に対し警告などの報知を行うことも有用である。
【0097】
また一方、上記ステップS315の判定において一回でも人物用無線タグTjの検出履歴があった場合には、判定が満たされ、すなわち、物品用無線タグTbと人物用無線タグTjの両方の検出履歴があったとみなされ、次のステップS325へ移る。
【0098】
ステップS325では、時系列履歴テーブルから物品用無線タグTbと人物用無線タグTjのそれぞれの検出の開始時刻と終了時刻を読み出す。そしてステップS330へ移り、人物用無線タグTjの検出開始時刻と物品用無線タグTbの検出開始時刻との間に所定以上の時間差があるか否か、すなわち明らかに略同時に無線通信領域Arに入場したと見なせないほどの時間差があるか否かを判定する。
【0099】
人物用無線タグTjと物品用無線タグTbのそれぞれの検出開始時刻の間に所定以上の時間差がない場合、判定が満たされず、すなわち人物と工具がほぼ略同時に無線通信領域Arに入場したと見なされてステップS335へ移る。ステップS335では、2つの検出終了時刻の間に所定以上の時間差があるか否か、すなわち明らかに略同時に無線通信領域Arから退場したと見なせないほどの時間差があるか否かを判定する。
【0100】
人物用無線タグTjと物品用無線タグTbのそれぞれの検出終了時刻の間に所定以上の時間差がある場合、判定が満たされ、すなわち工具が収容部3に収納されてから時間経過後に人物だけが無線通信領域Arから退場したと見なされてステップS340へ移る。この場合、上記図13(a)に示したパターンと同じ状況であり、ステップS340で人物が工具6を返却したと判断し、このフローを終了する。
【0101】
また、上記ステップS335の判定において、人物用無線タグTjと物品用無線タグTbのそれぞれの検出終了時刻の間に所定以上の時間差がない場合、判定が満たされず、すなわち人物と工具がほぼ略同時に無線通信領域Arから退場したと見なされてステップS345へ移る。この場合には、人物が工具6を携帯して無線通信領域Arに入場していながらその工具6を収容部3へ収納することなくそのまま無線通信領域Arから退場したものと見なせることから、ステップS345で工具6を携帯していながら収容器本体2を一瞥しただけ(例えば工具6を返却しようとして来たが、思い直して返却を中止した)と判断してこのフローを終了する。
【0102】
また一方で、上記ステップS330の判定において、人物用無線タグTjと物品用無線タグTbのそれぞれの検出開始時刻の間に所定以上の時間差がある場合、判定が満たされ、すなわち人物が無線通信領域Arに入場してから時間経過後に工具が収容部3から取り出されたと見なされてステップS350へ移る。ステップS350では、2つの検出終了時刻の間に所定以上の時間差があるか否か、すなわち明らかに略同時に無線通信領域Arから退場したと見なせないほどの時間差があるか否かを判定する。
【0103】
人物用無線タグTjと物品用無線タグTbのそれぞれの検出終了時刻の間に所定以上の時間差がない場合、判定が満たされず、すなわち人物と工具6がほぼ略同時に無線通信領域Arから退場したと見なされてステップS355へ移る。この場合、上記図13(b)に示したパターンと同じ状況であり、ステップS355で人物が工具6を持ち出したと判断してこのフローを終了する。
【0104】
また、上記ステップS350の判定において、人物用無線タグTjと物品用無線タグTbのそれぞれの検出終了時刻の間に所定以上の時間差がある場合、判定が満たされ、すなわち人物だけが無線通信領域Arに入場してから時間経過後に工具6が収容部3から取り出され、また再び収納されてから時間経過後に人物だけが無線通信領域Arから退場したと見なされてステップS360へ移る。この場合には、上記図13(c)に示したパターンと同じ状況であり、ステップS360で人物が工具を閲覧したと判断してこのフローを終了する。
【0105】
以上のフローにより、時系列履歴テーブルの内容に基づいて人物が無線通信領域Arの入退場の間にどのような収容状況(動作)となったかを判断することができる。なお、上記の各判断はデータベース15に収容状況履歴として記録され、リーダ5の操作者がこの収容状況履歴を閲覧してどの工具6がどの人物によって持ち出されたかを確認できるようになっている。
【0106】
以上において、図7の無線通信領域設定処理のフローが、アンテナ30による無線通信領域Arを、収容器本体2の物品出し入れ側となるように設定する通信制御手段として機能する。
【0107】
また、図14の収容状況判断処理のフローが、アンテナ30を介した物品に関連付けて取り扱われる物品用無線タグTbに対する通信結果の履歴に応じ、対応する物品の収容状況を判断する判断手段として機能する。
【0108】
以上説明したように、本実施形態のリーダ5においては、物品収容器1に配置されたアンテナ30を介し無線タグTb,Tjと無線通信が行われ、このときの無線通信領域Arが、図7の無線通信領域設定処理のフローによって物品収容器(収容部3)の物品出し入れ側になるように設定される。これにより、工具6を物品収容器1内から外部へ取り出したり逆に物品収容器1外から内部へ収納したりしたときには、無線通信領域Arを必ず通過することになる。これに基づき、人物用無線タグTjが無線通信領域Ar内へ→物品用無線タグTbが無線通信領域Ar内へ→両無線タグが無線通信領域Ar外へという順の挙動となれば物品収容器1内から工具6が取り出され持ち出されたと判断し、人物用無線タグTj及び物品用無線タグTbが無線通信領域Ar内へ→物品用無線タグTbが無線通信領域Ar外へ→人物用無線タグTjが無線通信領域Ar外へという順の挙動となれば工具6が返却され収納されたと判断し、人物用無線タグTjが無線通信領域Ar内へ→物品用無線タグTbが無線通信領域Ar内へ→物品用無線タグTbが無線通信領域Ar外へ→人物用無線タグTjが無線通信領域Ar外へという順の挙動となれば物品収容器1内から工具6が一旦取り出されたがそのまま収納された(戻された、閲覧)と判断し、人物用無線タグTjが無線通信領域Ar内へ→人物用無線タグTjが無線通信領域Ar外へという順の挙動となれば人物は物品収容器1内の工具6を移動させることなく一瞥したのみであると判断する。このようにして、1つのリーダ5を設けるだけで、各工具6の移動状況(収容状況)を人物用タグTjや物品用タグTbの通信状況の変化(履歴)によって検出することができる。
【0109】
また、この実施形態では特に、図14の収容状況判断処理のフローのステップS330において、無線通信領域Arへの人物の入場時期と、物品用無線タグTbに対する通信状態値の大きな値の検出開始時期(検出有りに変化した時期)とが所定範囲内で一致したことを条件に、工具6の返却を判断する。このように、動作時期の一致も併せて判断条件として加味し、返却かどうかの判断を行うことにより、さらに正確に返却を判断することができる。なお、ステップS330において人物用無線タグTjの検出開始時期に代えて、人感センサ13による検出開始時期によって判断してもよい。但しこの場合、人感センサ13検出可能領域Bと無線通信領域Arとの大きさの差を加味して判断する必要がある。
【0110】
また、この実施形態では特に、図14の収容状況判断処理のフローのステップS350において、無線通信領域Arからの人物の退場時期と、物品用無線タグTbに対する通信状態値が大きな値から小さな値に減少した時期(検出有りから検出無しに変化した時期)とが所定範囲内で一致したことを条件に、工具6の持ち出しを判断する。このように、動作時期の一致も併せて判断条件として加味し、持ち出しかどうかの判断を行うことにより、さらに正確に持ち出しを判断することができる。なお、ステップS350において人物用無線タグTjの検出終了時期に代えて、人感センサ13による検出終了時期によって判断してもよい。但しこの場合、人感センサ13検出可能領域Bと無線通信領域Arとの大きさの差を加味して判断する必要がある。
【0111】
また、この実施形態では特に、図7に示したフローのステップS110及びステップS115で、内部基準無線タグTnとの通信結果(通信不能も含む)に基づき、内部基準無線タグTnと通信がほぼ不可能となるように無線通信領域Arを設定する。これにより、確実に無線通信領域Arが物品収容器内部を略含まないように設定することができる。
【0112】
また、この実施形態では特に、図7に示したフローのステップS120及びステップS125で、外部基準無線タグTgとの通信結果(通信不能も含む)に基づき、外部基準無線タグTgと通信が可能となるように無線通信領域Arを設定する。これにより、確実に無線通信領域Arが物品収容器の物品出し入れ側全域をカバーするように設定することができる。
【0113】
なお、本実施形態における物品収容器の収容器本体2は、全ての収容部3が正面からの一方向に対してのみ工具6を取り出し、収納するものであるため、その正面側の外側領域を物品出し入れ側としてその上方に位置する一つのアンテナ30により無線通信領域Arを設定していたが、本発明はこれに限られず、収容部3が複数方向に対して工具6を取り出し、収納できる収容器本体2に対しても適用できる。例えば、物品収容器の全体が垂直に立設される円柱形状であり、水平方向の全周方向に対して物品の取り出しと収納が可能であるよう収容部3が形成されている場合、収容器本体2を囲む外側全体を物品出し入れ側とし、天板2aに複数(例えば4つ)のアンテナ30を配置して複数の無線通信領域Arで包囲する構成とすることができる。
【0114】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0115】
(1)受信信号強度の時間変化量を通信状態値とした場合
上記実施形態では、人物用無線タグTj又は物品用無線タグTbからのリプライ信号の有無(無線タグの検出の有無)を通信状態値としてそれによる通信結果の履歴に基づき収容状況を判断していたが、本発明はこれに限られるものではなく、リプライ信号の受信強度(信号強度)の時間変化量を通信状態値として収容状況を判断してもよい。
【0116】
例えば、上記図3においてAM復調部40にRSSI(Received Signal Strength Indicator)回路を設けてリプライ信号の受信強度を検出し、その時間変化量の変化により人物用無線タグTj又は物品用無線タグTbの無線通信領域Arに対する移動挙動を判断できる。
【0117】
図15は、人物用無線タグTjと物品用無線タグTbからのリプライ信号の受信強度の時系列変化を概念的に表した図であって、図15(a)は人物が返却動作を行った場合に対応する図であり、図15(b)は人物が持ち出し動作を行った場合に対応する図であり、図15(c)は人物が閲覧動作を行った場合に対応する図であり、図15(d)は人物が一瞥動作を行った場合に対応する図である(各図の対応は後述の変形例においても同様である)。これらは上記実施形態における図13(a)〜(d)にそれぞれ相当する図である。
【0118】
図15(a)〜(d)の各図を見て分かるように、人物用無線タグTj及び物品用無線タグTbはどちらも無線通信領域Arの入退場時には受信信号強度が比較的ゆるやかに変化し、すなわち時間変化量の絶対値が小さいことになる。これに対して物品用無線タグTbが収容部3に収納された場合と、収容部3から取り出した場合には、受信信号強度が比較的急激に変化し、すなわち時間変化量の絶対値が大きいことになる。これは特に電波信号の低減材で構成する天板2a又は載置板2eの遮蔽により収容部3内部と物品出し入れ側との無線通信領域Arの境界が明確となっていることによる。本変形例はこの受信信号強度の時間変化量の絶対値の差を利用して収容状況判断を行うものである。
【0119】
図16は本変形例における収容状況判断処理の詳細手順を表すフローチャートであり、上記実施形態における図14に対応する図である。この図16のフローは概略的に図14のフローとほぼ同じであり、図14のフローにおけるステップS325、ステップS330、ステップS335、及びステップS350の各手順が異なっている。図14と同等の手順には同一の符号を付し説明を省略するとともに、以下その相違する手順のみを説明する。
【0120】
図16において、まず図14のステップS325に代えて行うステップS325Aでは、時系列履歴テーブルから物品用無線タグTbと人物用無線タグTjのそれぞれの検出の開始時刻と終了時刻を読み出し、さらに各無線タグの検出開始時刻、検出終了時刻のそれぞれにおける受信信号強度の時間変化量を算出する。なお、検出の開始と終了の判断はそれぞれ受信信号を所定の閾値と比較することで行い(あるいは人感センサ13の検出結果を基に判断してもよい)、時間変化量の算出は前後の受信信号との差分を算出することにより行う。
【0121】
そして図14のステップS330に代えて行うステップS330Aでは、各無線タグの検出開始時刻における受信信号の時間変化量に所定以上の差があるか否かを判定する。所定以上の差がない場合、判定が満たされず、ステップS335Aへ移り、所定以上の差がある場合、判定が満たされ、ステップS350Aへ移る。これは、所定以上の差がある場合には物品用無線タグTbが収容部3から取り出された場合(時間変化量が急激に増大)を意味することに基づく。
【0122】
そして図14のステップS335に代えて行うステップS335Aでは、各無線タグの検出終了時刻における受信信号の時間変化量に所定以上の差があるか否かを判定する。所定以上の差がない場合、判定が満たされず、ステップS345へ移り、所定以上の差がある場合、判定が満たされ、ステップS340へ移る。これは、所定以上の差がある場合には物品用無線タグTbが収容部3に収納された場合(時間変化量が急激に減少)を意味することに基く。
【0123】
また一方で、図14のステップS350に代えて行うステップS350AでもステップS335Aと同様の判定を行い、所定以上の差がない場合、判定が満たされず、ステップS355へ移り、所定以上の差がある場合、判定が満たされ、ステップS360へ移る。
【0124】
以上のように構成した本変形例においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0125】
(2)受信応答率を通信状態値とした場合
本変形例はリプライ信号の受信応答率を通信状態値として収容状況を判断するものである。例えば、上記図11におけるステップS210とステップS215において、それぞれ無線タグを検出する際に所定の複数回数(例えば10回等)の質問波の送信とリプライ信号の受信を繰り返し、そのうちのリプライ信号の受信回数を計数すると、無線通信領域Arの中と外とでは明確にリプライ信号を受信できる確率(以下、応答率という)が大きく異なる。
【0126】
図17は、人物用無線タグTjと物品用無線タグTbからのリプライ信号の応答率の時系列変化を概念的に表した図であり、上記実施形態における図13に相当する図である。この図17と図13を比較して分かるように、各無線タグの応答率の時系列変化(図17)は、リプライ信号の検出の有無の時系列変化(図13)とほぼ同じように変化することがわかる。すなわち図13におけるリプライ信号の非検出状態から検出状態になるときが応答率の増大時と対応し、図13におけるリプライ信号の検出状態から非検出状態になるときが応答率の減少時と対応し、図13におけるリプライ信号の検出の継続状態が応答率略一定時に対応する。このことから、上記実施形態におけるリプライ信号の検出の有無に代えて、リプライ信号の応答率が所定の閾値を超えているか否か(あるいは、例えばほぼ100%であるか否か)の履歴を時系列履歴テーブルに記録し、それに基づいて上記図14の収容状況判断処理で各無線タグの検出の開始時刻と終了時刻を読み出せばよい。
【0127】
以上のように構成した本変形例においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0128】
(3)非金属材料で収容器本体を形成した場合
上記実施形態では、収容器本体2全体を電波信号を低減させる金属などの材料で形成し、無線通信領域Arが収容部3の内部を確実に含まないようにしていたが、本発明はこれに限られるものではなく、電波信号を低減させる性質を持たない材料、例えば非金属の材料で収容器本体2を形成してもよい。
【0129】
図18は、本変形例において適切に設定された無線通信領域Arの態様を概念的に表す図であり、上記実施形態における図8に相当する図である。この図8において、リーダ5のアンテナ30は収容器本体2の前方側(図18中の左側)により一層突出させる位置に配置させることで、無線通信領域Arの下方到達長さを確保しつつ無線通信領域Arを収容器本体2の内部に入り込むことを回避できる。これにより最下段(上から4段目)の収容部3の物品出し入れ側の領域まで無線通信領域Arを含ませることができるとともに、各段の収容部3内部まで無線通信領域Arを含ませることを回避し、各収容部3に対する工具6の収納と取り出しの挙動を明確に検出することができる。
【0130】
本変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0131】
(4)人物用無線タグTjで無線通信領域Arを設定する場合
上記実施形態では、収容部3内部に設けた内部基準タグの検出が不可能とし、かつ底板2bより物品出し入れ側に位置させた外部基準タグを検出可能とするよう無線通信領域Arを設定したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば人物用無線タグTjを使用して無線通信領域Arを設定するようにしてもよい。
【0132】
図19は、本変形例において適切に設定された無線通信領域Arの態様を概念的に表す図であり、上記実施形態における図8に相当する図である。この図8において、人物用無線タグTjを所持した人物は、物品出し入れ側で収容器本体2から離間した所定位置(例えば、リーダ5により人物用無線タグTjを検出させたい最も遠方限度の位置)に立たせており、無線通信領域Arは少なくともこの配置状態の人物用無線タグTjを検出できる範囲を最大限度とするよう領域設定されている。本変形例は、無線通信領域設定処理を行うに当たってあらかじめこのように人物用無線タグTjを検出させる最大限度範囲の境界の近傍に人物用無線タグTjを配置し、この位置をティーチングさせるようにして無線通信領域Arを設定するものである。なお、この例では他に外部基準無線タグTgを設けて無線通信領域Arの下方到達長さも設定するものとし、2つの内部基準無線タグTnは設けずにそれらによる設定は行わないものとする。
【0133】
図20は、本変形例における無線通信領域設定処理の詳細手順を表すフローチャートであり、上記実施形態における図7に対応する図である。この図20のフローチャートは概略的には図7のフローとほぼ同じであり、図7のフローにおけるステップS105、ステップS110及びステップS115の各手順が異なっている。図7と同等の手順には同一の符号を付して説明を省略し、以下その相違する手順のみを説明する。
【0134】
図20において、まず図7のステップS105に代えて行うステップS105Aでは、アンテナ30から出力する送信信号の出力値を最小に設定する。次にステップS110Aは移り、設定位置に配置した人物用無線タグTjの読み取りが可能であるか否かを判定する。人物用無線タグTjからのリプライ信号が受信できない場合、判定が満たされず、すなわちまだ送信信号の出力が小さすぎて設定しようとする範囲まで無線通信領域Arが到達していないとみなし、ステップS115Aで送信信号出力を所定幅で増大した後、ステップS110Aに戻って同じ手順を繰り返す。このステップS110A及びステップS115Aのループにより、人物用無線タグTjに無線通信領域Arが到達する程度にかつそのうちで最も小さい無線通信領域Arとなるよう送信信号出力を設定することができる。
【0135】
一方、上記ステップS110Aにおいて、人物用無線タグTjからのリプライ信号が受信された場合、判定が満たされ、すなわち無線通信領域Arが適切な広さに設定されたものとみなし、次のステップS120へ移る。以下図7と同様の手順となる。
【0136】
以上において、上記図20の無線通信領域設定処理のフローが、アンテナ30による無線通信領域Arを、物品収容器の物品出し入れ側となるように設定する通信制御手段として機能する。
【0137】
以上のように構成した本変形例においては、ステップS110A及びステップS115Aにおいて人物用無線タグTjと通信が可能となるように制御することで、無線通信領域Arを適正に設定することができる。
【0138】
(5)その他
なお、以上は物品の一例として工具6を例にとって説明したが、これに限られるものではなく、書類、本、文具、その他の器具等、人間が手にとって携帯することができるものであれば何でも本発明を適用可能であり、この場合も同様の効果を得る。
【0139】
また、以上で用いた「Ping ID」信号等は、EPC globalが策定した仕様に準拠しているものとする。EPC globalは、流通コードの国際機関である国際EAN協会と、米国の流通コード機関であるUniformed Code Council(UCC)が共同で設立した非営利法人である。なお、他の規格に準拠した信号でも、同様の機能を果たすものであればよい。
【0140】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0141】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明の一実施形態の無線タグ情報読み取り装置を備えた物品収容器の全体概略構造を表す斜視図である。
【図2】収容器本体の図1中II−II′断面による側断面図とともに、その上面に設置されるリーダの機能的構成を表す機能ブロック図を示す図である。
【図3】リーダの詳細構成を表す機能ブロック図である。
【図4】高周波送受信部の詳細機能を表す機能ブロック図である。
【図5】無線タグに備えられた無線タグ回路素子の詳細機能を表す機能ブロック図である。
【図6】リーダの制御回路によって実行される制御手順を表すフローチャートである。
【図7】図6中におけるステップS100の無線通信領域設定処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【図8】実施形態において以上の無線通信領域設定処理により適切に設定された無線通信領域Arの態様を概念的に表す側面図である。
【図9】実施形態において以上の無線通信領域設定処理により適切に設定された無線通信領域Arの態様を概念的に表す平面図である。
【図10】実施形態において以上の無線通信領域設定処理により適切に設定された無線通信領域Arの態様を概念的に表す正面図である。
【図11】図6中におけるステップS200のタグ管理処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【図12】返却動作の場合と持ち出し動作の場合とでそれぞれデータベースに格納保持される時系列履歴テーブルの例を概念的に表す図である。
【図13】人物用無線タグTjと物品用無線タグTbの検出の有無の時系列変化を概念的に表した図である。
【図14】図11中におけるこのステップS300の収容状況判断処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【図15】人物用無線タグTjと物品用無線タグTbからのリプライ信号の受信強度の時系列変化を概念的に表した図である。
【図16】受信信号強度の時間変化量を通信状態値とする変形例における収容状況判断処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【図17】人物用無線タグTjと物品用無線タグTbからのリプライ信号の応答率の時系列変化を概念的に表した図である。
【図18】非金属材料で収容器本体を形成した変形例において適切に設定された無線通信領域Arの態様を概念的に表す図である。
【図19】非金属材料で収容器本体を形成した変形例において適切に設定された無線通信領域Arの態様を概念的に表す図である。
【図20】人物用無線タグTjで無線通信領域Arを設定する変形例における無線通信領域設定処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0143】
1 物品収容器
2 収容器本体
3 収容部
4 タグ設置部
5 リーダ
6 工具
7 名札
10 高周波回路
11 信号処理回路
12 制御回路
13 人感センサ
15 データベース
30 アンテナ
Ar 無線通信領域
T 無線タグ
Tn 内部基準無線タグ
Tg 外部基準無線タグ
Tb 物品用無線タグ
Tj 人物用無線タグ
To 無線タグ回路素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を出し入れ可能な物品収容器の近傍に配置された無線タグ情報読み取り装置であって、
情報を記憶するIC回路部及びこのIC回路部に接続されたタグ側アンテナを備えた無線タグ回路素子と無線通信を行うための装置側アンテナと、
この装置側アンテナによる通信可能領域を、前記物品収容器の物品出し入れ側となるように設定する通信制御手段と
を有することを特徴とする無線タグ情報読み取り装置。
【請求項2】
請求項1記載の無線タグ情報読み取り装置において、
前記通信制御手段は、
前記通信可能領域が前記物品収容器の内部を略含まないように設定することを特徴とする無線タグ情報読み取り装置。
【請求項3】
請求項2記載の無線タグ情報読み取り装置において、
前記通信制御手段は、
前記物品収容器の内部の所定箇所に配置された第1通信設定用無線タグ回路素子との通信結果に基づき、前記通信可能領域を設定することを特徴とする無線タグ情報読み取り装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の無線タグ情報読み取り装置において、
前記通信制御手段は、
前記通信可能領域が、前記物品収容器の前記物品出し入れ側のうち前記装置側アンテナより略最遠となる位置まで到達するように、設定することを特徴とする無線タグ情報読み取り装置。
【請求項5】
請求項4記載の無線タグ情報読み取り装置において、
前記通信制御手段は、
前記物品収容器の外部で前記物品収容器の前記物品出し入れ側の所定箇所に配置された第2通信設定用無線タグ回路素子との通信結果に基づき、前記通信可能領域を設定することを特徴とする無線タグ情報読み取り装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載の無線タグ情報読み取り装置において、
前記装置側アンテナを介した前記物品に関連付けて取り扱われる物品用無線タグ回路素子に対する通信結果の履歴に応じ、対応する物品の収容状況を判断する判断手段を有することを特徴とする無線タグ情報読み取り装置。
【請求項7】
請求項6記載の無線タグ情報読み取り装置において、
前記判断手段は、
前記物品収容器近傍の所定の周囲領域へ人物が入場後、当該周囲領域から退場したときに前記収容状況の判断を行うことを特徴とする無線タグ情報読み取り装置。
【請求項8】
請求項7記載の無線タグ情報読み取り装置において、
前記判断手段は、
前記所定の周囲領域へ人物が入場した後における前記物品用無線タグ回路素子に対する通信結果の履歴に応じ、前記収容状況の判断を行うことを特徴とする無線タグ情報読み取り装置。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか1項記載の無線タグ情報読み取り装置において、
前記判断手段は、
前記物品用無線タグ回路素子に対する通信結果の履歴と、前記人物と関連付けられる人物用無線タグ回路素子に対する通信結果の履歴とに応じ、前記収容状況の判断を行うことを特徴とする無線タグ情報読み取り装置。
【請求項10】
請求項9記載の無線タグ情報読み取り装置において、
前記通信制御手段は、
前記人物用無線タグ回路素子との通信結果に基づき、前記通信可能領域を設定することを特徴とする無線タグ情報読み取り装置。
【請求項11】
請求項7乃至10のいずれか1項記載の無線タグ情報読み取り装置において、
前記判断手段は、
前記周囲領域へ人物が入場し、前記物品用無線タグ回路素子に対する通信状態値が相対的に大きな値から小さな値に減少した後、所定時間経過後に前記周囲領域より前記人物が退場した場合、当該物品用無線タグ回路素子に対応した物品が前記物品収容器内へ返却されたと判断することを特徴とする無線タグ情報読み取り装置。
【請求項12】
請求項11記載の無線タグ情報読み取り装置において、
前記判断手段は、さらに、
前記周囲領域又は前記通信可能領域への前記人物の入場時期と、前記物品用無線タグ回路素子に対する通信状態値の前記大きな値の検出開始時期とが所定範囲内で一致したことを条件に、前記物品が返却されたと判断することを特徴とする無線タグ情報読み取り装置。
【請求項13】
請求項7乃至10のいずれか1項記載の無線タグ情報読み取り装置において、
前記判断手段は、
前記周囲領域へ人物が入場した後、所定時間経過後に前記物品用無線タグ回路素子に対する通信状態値が相対的に小さな値から大きな値に増大し、前記周囲領域より前記人物が退場した場合、当該物品用無線タグ回路素子に対応した物品が前記物品収容器より持ち出されたと判断することを特徴とする無線タグ情報読み取り装置。
【請求項14】
請求項13記載の無線タグ情報読み取り装置において、
前記判断手段は、さらに、
前記周囲領域又は前記通信可能領域からの前記人物の退場時期と、前記物品用無線タグ回路素子に対する通信状態値が前記大きな値から前記小さな値に減少した時期とが所定範囲内で一致したことを条件に、前記物品が持ち出されたと判断することを特徴とする無線タグ情報読み取り装置。
【請求項15】
請求項11乃至14のいずれか1項記載の無線タグ情報読み取り装置において、
前記判断手段は、前記物品用無線タグ回路素子に対する前記通信状態値として、当該物品用無線タグ回路素子との通信電波強度、又はその通信電波強度の時間変化量、若しくは前記物品用無線タグ回路素子からの応答率のうち、少なくとも1つに基づき、各種判断を行うことを特徴とする無線タグ情報読み取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−137636(P2007−137636A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336118(P2005−336118)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】