説明

無線ネットワークにおける事前登録/事前認証

【課題】 無線ネットワーク・モビリティ及び無線ネットワーク・リソースを管理するためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】 本発明の一態様では、ネットワーク装置は、以前のユーザ・デバイスがネットワーク装置のサービスエリア範囲内にとどまっていた時間に関連するサンプルを取得し、取得したサンプルに基づいてユーザ・デバイスが現在セル内にとどまっている時間を推定する。他の態様では、推定した時間に基づいて他のネットワーク内のユーザ・デバイスの事前認証及び事前登録が実行される。さらに他の態様では、ユーザ・デバイスのために予約されたネットワーク・リソースが、推定した時間に基づいて解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2009年8月18日に出願された米国仮特許出願第61/234757号の出願日の利益を請求するものであり、これにより同出願の開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本発明は、一般に、事前登録(pre-registration)/事前認証(pre-authentication)を実行し、無線通信ネットワーク内のリソースを予約するための方法及びシステムに関し、より具体的には、次世代ユニバーサル地上無線アクセス・ネットワーク(E−UTRAN)及び進化型高速パケット・データ(eHRPD)ネットワークにおけるこのような方法及びシステムの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 第4世代(4G)の無線システムは、エンドツーエンド(無線アクセス・ネットワークからコア・ネットワークまで)の全IPシステムである。4Gシステムは、既存の通信ネットワーク、例えば、3Gネットワークをアップグレードし、かなり高いデータ転送速度で「いつでも、どこでも(Anytime, Anywhere)」安全なユビキタスIPベース通信を提供することが期待されている。4Gネットワークは、既存のサービス(例えば、音声、電子メール)を強化し、例えば、ワイヤレス・ブロードバンド・アクセス、ビデオ・チャット、モバイルTV、HDTVコンテンツ、及びデジタル放送(DVB)などの新しいサービスを提供するものと予想されている。このようなネットワークは、スペクトル効率を強化し(周波数単位あたりのビット数/時間単位の増加)、より多くの容量、滑らかなハンドオフ、シームレスな接続性、複数のネットワーク間のグローバル・ローミングを提供することが期待されている。
【0004】
[0004] 主要な4G無線システムは、第3世代パートナーシップ・プロジェクト(3GPP)によって定義された進化型パケット・システム(EPS)である。これは、無線アクセス・ネットワーク(RAN)用のロング・ターム・エボリューション(LTE)と、コア・ネットワーク用のサービス・アーキテクチャ進化(SAE)を含む。また、これは、異種無線アクセス技術をサポートし、グレースフルなネットワーク進化(graceful network evolution)を可能にするために、3GPP2進化データ最適化(EV−DO)などの他の無線技術により網間接続するためのアーキテクチャも含む。3GPP LTE及びSAEによって定義された無線アクセス・ネットワーク及びコア・ネットワークは、それぞれ、次世代ユニバーサル地上無線アクセス・ネットワーク(E−UTRAN)及び進化型パケット・コア(EPC)と呼ばれる。
【0005】
[0005] EV−DOは、一般に、3GPP2高速パケット・データ(HRPD)及び進化型HRPD(eHRPD)規格を参照する。HRPDは、3GPP2 C.S0024−A v3.0の仕様書に記載されているように、パケット伝送用のCDMA2000ベースの技術である。eHRPDネットワークは、進化した動作モードをサポートする無線アクセス・ネットワークを提供し、3GPP EPCによる複数のパケット・データ・ネットワークへの接続をサポートするIP環境を提供する。この網間接続アーキテクチャは、3GPP2 X.S0057の仕様書に記載されているように、E−UTRAN及びeHRPD網間接続と呼ばれる。
【0006】
[0006] 3GPP及び3GPP2などの規格団体は網間接続(internetworking)アーキテクチャ(例えば、図1を参照)、呼び出しの流れ(例えば、図2を参照)、及びネットワーク間のユーザ装置又は移動局/デバイスのハンドオフに関連する高レベルの仕様書を提供する際に相当な量の作業を実行してきたが、多くの詳細は実現に委ねられている。例えば、図2を参照して説明すると、事前登録する時期に関連する手順は指定されていない(図2のブロック208を参照)。加えて、リソースをどのくらい予約しなければならないかを決定するための手順は同様に設計実現に開放されている(図2のブロック218を参照)。
【0007】
[0007] 一般的な問題として、規格団体は通常、事前登録及び事前認証を実行するためのアルゴリズムを標準化しない。従って、事前認証及び事前登録を使用してハンドオフ遅延を削減するために種々の手法が提案されてきた。1つの手法では、独立して或いは1つ又は複数の基地局と共同で機能しているユーザ装置又は移動局は、そのユーザ装置又は移動局を隣接ネットワークにハンドオフする前に、候補基地局に対する事前登録/事前認証、事前対応のキー配布、及びその他の手順を実行する際に訪問し関与する可能性のある隣接基地局を選択する。しかし、ほとんどの既存の事前登録/認証メカニズムは、典型的に、ユーザ装置の移動を予測すること、並びに、このような移動に基づいて、ユーザ装置のハンドオフ先になる可能性のあるターゲット基地局を選択する方法に焦点を合わせている。
【0008】
[0008] より具体的には、いくつかのメカニズムでは、サーバに関連する集中型データベースを使用して、セル間のユーザ装置移動履歴を収集し、例えば、WiFiネットワーク内のアクセス・ポイント間の隣接グラフを構築することにより、今後のハンドオフ挙動を予測している。しかし、アクセス・ポイント間で交換される余分な信号メッセージによって、同じアルゴリズムを使用しない他のアクセス・ポイントに対して信号送出する際に一貫性の問題を引き起こす可能性がある。さらに、集中型サーバは性能上のボトルネックになる可能性がある。加えて、アクセス・ポイントは同じ管理ドメイン下にある必要があるので、この技法は異種ネットワーク(異なるアクセス技法を使用する複数のネットワーク)には適していない。
【0009】
[0009] 他のメカニズムでは、それぞれのアクセス・ポイントは、移動局又はユーザ装置がその隣接移動局又はユーザ装置に到達できる平均所要時間間隔を記録する。ユーザ装置が事前認証を要求すると、サービング・アクセス・ポイントは、その要件を満足するすべての隣接移動局又はユーザ装置を識別するのを支援する。これらのメカニズムは、多数の移動局が存在する場合、実現するのが難しいものになる。
【0010】
[0010] 既存の技法を考慮すると、事前登録/事前登録が効果的にハンドオフ遅延を削減できるようにするために、いくつかの技術的問題を解決する必要がある。上述の通り、1つの問題は、事前登録/事前認証をいつ実行しなければならないかである。モバイル・デバイス又はユーザ装置は、任意の速度で移動し、任意の時期にその現在セルを離れることができる。事前登録/事前認証を実行すべきである場合、実際のハンドオフが行われる前にそれを実行しなければならない。しかし、現在セルが小さく、ユーザ装置が高速で移動している場合、ユーザ装置は、隣接セルのうちのいくつか又はすべてに対して事前登録/事前認証を実行するための十分な時間がない可能性がある。従って、隣接セルに対する事前登録/事前認証をトリガする時期及びトリガすべきかどうかを決定することは重要である。
【0011】
[0011] もう1つの問題は、どの隣接ネットワーク又はセルに対して事前登録/事前認証を実行しなければならないかである。ユーザ装置は、任意の方向に移動することができ、任意の時期にその移動方向を変更することができる。従って、それに対してユーザ装置が事前登録及び事前認証を実行しなければならない隣接セルを決定することは重要である。複数の隣接ネットワーク又はセルに対して事前登録及び事前認証を実行すべきである場合、これらの隣接セルに対してユーザ装置が事前登録及び事前認証を実行する順序を決定することも重要である。これは、事前登録及び事前認証が時間のかかる処理であり、移動局が事前登録及び事前認証しようとしているすべての隣接ネットワーク又はセルに対して事前登録及び事前認証動作を完了する前にその移動局が現在セルを離れる可能性があるからである。
【0012】
[0012] もう1つの問題は、隣接ネットワーク内で事前登録/事前認証によって予約されたネットワーク・リソースをいつ解除しなければならないかである。図2に示されているように、隣接セル又はネットワークに対して事前登録/事前認証が遂行されると、IPアドレス、セキュリティ・キー、及びモビリティ・コンテキストを含む何らかのコンテキストが隣接ネットワーク内の特定のユーザ装置又は移動局のために予約される。しかし、ユーザ装置は、そのユーザ装置が事前登録/事前認証を実行した候補セルのうちのいくつかを訪問しない可能性がある。従って、適切な時期にこれらのセル内のコンテキストを削除することが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
[0013] この場合、ハンドオフを実行する時期並びに無線ネットワーク内及び特定の全IP無線ネットワーク内でリソースを予約する期間を決定することに関連する問題及び短所に対処することを対象とするシステム及び方法は有益である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[0014] 本発明の一態様は、無線ネットワーク・モビリティを管理するための方法である。この方法は、好ましくは、第1のネットワーク装置(network equipment)で、1つ又は複数のユーザ・デバイス(user device)が第1のネットワーク装置のサービスエリア範囲(coverage range)内にとどまる時間に関連する1つ又は複数の時間サンプル(time sample)を取得することを含む。また、この方法は、好ましくは、第2のネットワーク装置で、取得した時間サンプルに基づいて他のユーザ・デバイスがサービスエリア範囲内にとどまる可能性のある時間を推定することも含む。
【0015】
[0015] 本発明のこの態様により、この方法は、好ましくは、確率過程(stochastic process)を使用して取得したサンプルを処理することを含み、確率過程はウィーナ過程(Wiener process)を含む。
【0016】
[0016] さらに、本発明のこの態様により、この方法は、時系列分析を使用して取得したサンプルを処理することを含むことができる。
【0017】
[0017] さらに、本発明のこの態様により、この方法は、第2のネットワーク装置により、推定した時間を他のユーザ・デバイスに伝送することを含むことができる。
【0018】
[0018] さらに、本発明のこの態様により、第1のネットワーク装置及び第2のネットワーク装置は同じネットワーク装置を含む。
【0019】
[0019] さらに、本発明のこの態様により、第1又は第2のネットワーク装置は、基地局、携帯電話、モビリティ管理エンティティ(mobility management entity)、ホーム加入者サーバ(home subscriber server)、サービング・ゲートウェイ(serving gateway)、及び認証認可アカウンティング・サーバ(authentication, authorization and accounting server)から構成されるグループから選択することができる。
【0020】
[0020] さらに、この方法は、あるネットワーク装置で、他のユーザ・デバイスから事前認証/事前登録要求を受信することと、推定した時間に基づいてそのネットワーク装置で事前認証/事前登録要求を実行することを含むことができる。
【0021】
[0021] さらに、本発明のこの態様により、この方法は、他のユーザ・デバイスに関連する1つ又は複数の隣接基地局のサービスエリアによって定義された1つ又は複数の隣接セルの信号対雑音比を取得することと、隣接セルの中から、取得した信号対雑音比に基づいて他のユーザ・デバイスをハンドオフするためのターゲット・セルを決定することを含むことができる。
【0022】
[0022] 他の態様では、本発明は、無線ネットワーク・リソースを管理する方法を含む。この方法は、好ましくは、第1のネットワーク装置で、第1の基地局に関連する複数のユーザ・デバイスに関する1つ又は複数の時間サンプルを取得することと、第2のネットワーク装置で、取得した時間サンプルに基づいて第1の基地局に関連する他のユーザ・デバイスに関するセル在留時間(cell residence time)を推定することと、第2のネットワーク装置で、推定したセル在留時間に基づいてネットワーク・リソースを解除する時期を決定することを含む。
【0023】
[0023] さらに、本発明のこの態様により、推定することは、推定したセル在留時間の標準偏差を計算することをさらに含む。
【0024】
[0024] さらに、本発明のこの態様により、ネットワーク・リソースは、ネットワーク・アドレス、QoSプロファイル、セキュリティ・キー、又はベアラ(bearer)を含むことができる。
【0025】
[0025] さらに、本発明のこの態様により、この方法は、第2の基地局で、他のユーザ・デバイスから事前認証又は事前登録要求を受信することと、第2の基地局で、推定した時間に基づいて他のユーザ・デバイスを事前認証及び事前登録することと、他のユーザ・デバイスに関連する隣接セルに他のユーザ・デバイスをハンドオフするためのネットワーク・リソースを予約することを含むことができる。
【0026】
[0026] さらに、推定することは、確率過程又は時系列分析を使用して、取得した時間サンプルを処理することを含むことができ、確率過程はウィーナ過程を含むことができる。
【0027】
[0027] さらに、この方法は、ネットワーク装置により、推定した時間を他のユーザ・デバイスに伝送することを含むことができる。
【0028】
[0028] 他の態様では、本発明は、基地局に関連する複数のユーザ・デバイスに関する1つ又は複数の時間サンプルを取得するための基地局と、取得した時間サンプルに基づいて基地局に関連する他のユーザ・デバイスに関するセル在留時間を推定するためのネットワーク・デバイスに関連するプロセッサとを含むことができるシステムである。
【0029】
[0029] さらに、本発明のこの態様により、ネットワーク・デバイスは、基地局、携帯電話、モビリティ管理エンティティ、ホーム加入者サーバ、サービング・ゲートウェイ、及び認証認可アカウンティング・サーバから構成されるグループから選択することができる。
【0030】
[0030] さらに、本発明のこの態様により、時間サンプルは、セル在留時間と、ユーザ・デバイスがセルに入る時間と、ユーザ・デバイスがセルを離れる時間を含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1A】[0031]E−UTRAN及びeHRPDネットワークの網間接続ネットワーク・トポロジを示す図である。
【図1B】[0032]E−UTRAN及びeHRPD網間接続アーキテクチャのシステム図である。
【図2】[0033]E−UTRAN及びeHRPD網間接続における事前登録及び事前認証に関する呼び出し流れ図である。
【図3】[0034]本発明の一態様による流れ図である。
【図4】[0035]本システム及び方法の一態様によるシステム図である。
【図5A】[0036]本発明の一態様による呼び出し流れ図である。
【図5B】[0037]本発明の一態様による呼び出し流れ図である。
【図5C】[0038]本発明の一態様による呼び出し流れ図である。
【図5D】[0039]本発明の一態様による呼び出し流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な説明
[0040] 図1Aは、E−UTRAN及びeHRPDネットワークの網間接続ネットワーク・トポロジを示している。図示の通り、トポロジ100は、eHRPDネットワーク部分又はセル101と、E−UTRANネットワーク部分又はセル102とを含む。ユーザ装置、移動局、又はネットワーク・デバイス103はこれらのネットワーク又はセル101、102の間を移動するので、基地局109、113により、適宜、シームレスに通信を確立する必要がある。これは、ネットワーク又はセル間の滑らかでシームレスなハンドオフを可能にするために、ネットワーク・リソースの事前認証及び事前登録並びに割り振りを必要とする。
【0033】
[0041] 図1Bは、簡略化したE−UTRAN及びeHRPD網間接続アーキテクチャ160を示している。図示の通り、E−UTRANネットワークは、基地局又はeNodeB(基地局を含むことができる進化型ノードB又はeNB)113を含む無線アクセス・ネットワーク168を含む。eNodeB113は、3GPP進化型パケット・コア(EPC)ネットワーク170内の1つ又は複数のネットワーク装置又は要素に接続される。具体的には、eNodeB113は、サービング・ゲートウェイ164又はモビリティ管理エンティティ174のいずれかに接続することができる。サービング・ゲートウェイ164は、パケット・データ・ネットワーク・ゲートウェイ176並びにポリシー及び課金ルール機能ネットワーク要素184に接続することができる。モビリティ管理エンティティ174は、それ自体が3GPP認証認可アカウンティング(AAA)サーバ186に接続されるホーム加入者サーバ180に接続される。図1Bはこのようなネットワーク装置間の線として接続を示しているが、ネットワーク装置又は要素間に中間装置が存在する可能性があることを理解されたい。それぞれのネットワーク装置間に示されている線は、これらのネットワーク装置又は要素が相互に直接又は間接的に通信することを示すためのものである。
【0034】
[0042] 機能的には、サービング・ゲートウェイ164は、ネットワークのE−UTRAN168部分とEPC170部分との間でデータ・パケットを移送する。モビリティ管理エンティティ174はモビリティ管理及び認証に関連する機能を担当する。サービング・ゲートウェイ164はそれぞれのユーザ装置1031に関連付けられている。ユーザ装置がeNodeB113の全域を移動する場合、サービング・ゲートウェイ164はローカル・モビリティ・アンカ・ポイントとして機能する。即ち、これは、ユーザ・パケット・データを経路指定し転送する。パケット・データ・ネットワーク・ゲートウェイ176は、3GPP EPCと外部パケット・データ・ネットワーク(図示せず)との間でパケット・データのアンカ・ポイントとして機能する。複数のパケット・データ・ネットワークにアクセスするために2つ以上のパケット・データ・ネットワーク・ゲートウェイが存在する可能性がある。ホーム加入者サーバ180は加入者に関する情報を保管する。ポリシー及び課金ルール機能要素184は、QoSリソースのポリシー制御及び管理をサポートする。3GPP AAAサーバ186は認証、認可、およびアカウンティングを担当する。
【0035】
[0043] 図1Bに示されているように、ユーザ装置1031はeHRPD無線アクセス・ネットワーク192を介してeHRPDネットワーク188にローミングすることができる。無線アクセス・ネットワーク192はユーザ装置103と通信する基地局109を含む。基地局109は進化型アクセス・ネットワーク/進化型パケット制御機能(eAN/ePCF)194に接続される。eAN/ePCF194は、HRPDサービング・ゲートウェイ190、アクセス・ネットワークAAA196に接続され、好ましくは、モビリティ管理エンティティ174に接続される。HRPDサービング・ゲートウェイ190は3GPP2 AAAサーバ198に接続される。
【0036】
[0044] 3GPP2 eHRPDネットワーク188では、HRPDサービング・ゲートウェイ190はeHRPDアクセス・ネットワークを3GPP HPCと接続するサービング・ネットワークである。eAN/ePCF194は進化型アクセス・ネットワーク(eAN)と進化型パケット制御機能(ePCF)の組み合わせである。eANはユーザ装置との無線通信に使用される。ePCFは、eANとHRPDサービング・ゲートウェイ190との間のパケットのリレーを管理する。論理的にはeANとePCFを分離することができるが、実際問題としては、これらは、通常、実現される時に物理的に同じ場所に配置されることが期待されている。アクセス・ネットワークAAA196は、図1BではeHRPD無線アクセス・ネットワーク192であるアクセス・ネットワークの認証を担当する。3GPP2 AAA198はeHRPDシステム内のAAAサーバとして機能する。
【0037】
[0045] 図1A及び図1Bに関連して説明すると、ユーザ装置は、現在在留しているセルから他のセルに移動する時にハンドオフされる。セルは、基地局によって対応される無線信号サービスエリアによって定義される。3GPP LTEでは、セル・サービスエリアは1kmから100kmに及ぶ可能性がある。アクティブ・ハンドオフ(active handoff)とは、ユーザ装置103がアクティブ状態にある時、即ち、ユーザ装置103とeAN/ePCF194との間に物理的なトラフィック・チャネルが存在し、eAN/ePCF194とHSGW190との間に接続が存在する時に行われるハンドオフを指す。また、ユーザ装置103とHSGW190との間にはポイントツーポイント・プロトコル(PPP)リンクも存在する。休止ハンドオフ(dormant handoff)では、ユーザ装置103とeAN/ePCF194との間に物理的なトラフィック・チャネルが存在しない。従って、休止ハンドオフでは、HSGW190とユーザ装置103との間でパケット・データを送信する前にユーザ装置をページングしなければならない。
【0038】
[0046] ハンドオフには2つのフェーズが存在する。第1のフェーズは、ターゲット隣接セルに対して事前登録及び事前認証を実行することである。この点に関しては、隣接セルが異なるネットワーク、例えば、3GPP EPCと3GPP2 eHRPDにある時に、隣接ネットワーク間でハンドオフが行われる。第2のフェーズであるハンドオフ・フェーズは、ハンドオフ手順の残りの部分、即ち、ユーザ装置又はネットワーク・デバイスに実際にネットワーク又はサービング基地局を変更させることを含む。研究によれば、登録及び認証は、通常、ハンドオフ中に実行されるその他の手順より長い時間がかかることが分かっている。従って、事前登録及び事前認証はハンドオフ待ち時間を大幅に短縮することができるであろう。
【0039】
[0047] 次に図2を参照すると、3GPP1 X.0057に規定されているように、E−UTRAN及びeHRPDネットワーク間のハンドオフ手順の一部として事前登録及び事前認証のためのステップを描写する呼び出し流れ図が示されている。図示の通り、ユーザ装置103は、eHRPDシステム内で新しいセッション209の確立を開始する。デバイス認証210の後に、eHRPD eAN/ePCF194はHRPDサービング・ゲートウェイ190との主要なA10接続を確立する。次にユーザ装置103とHRPDサービング・ゲートウェイ190はPPP接続確立手順212を開始する。次にユーザ装置103は、IETF RFC4187に記載されているように、2121〜2123でEAP−AKAを使用することによってユーザ認証及び認可を実行する。EAP−AKAメッセージは、ポイントツーポイント・プロトコル(PPP)を使用してユーザ装置103とHRPDサービング・ゲートウェイ190との間で交換される。EAP−AKAメッセージは3GPP2 AAAサーバ198によって3GPP AAAサーバ186にさらにリレーされ、その3GPP AAAサーバ186がユーザ装置を認証し認可する。
【0040】
[0048] 認証及び認可が成功すると、3GPP AAAサーバ186は、ホーム加入者サーバ180に照会し、パケット・データ・ネットワーク・ゲートウェイ・アドレスをeHRPDシステムに返す。HRPDサービング・ゲートウェイ190は、213、214で、3GPP AAAサーバ186又はホーム加入者サーバ180から受信したPDN GW IPアドレス、QoSプロファイル、及びその他のユーザ・コンテキスト情報を保管する。上記のステップの後に、ネットワークは、すべての専用ベアラを確立し、事前登録/認証プロセスを完了するために、リソース予約手順を開始する。この手順を使用して、eHRPD及びIPコンテキストが確立される。
【0041】
[0049] 本発明の様々な態様により、ユーザ装置が、いつ、どの隣接無線セル又はネットワークに対して、事前登録/事前認証を実行しなければならないかどうかを予測し、ハンドオフ遅延を短縮するために事前登録/事前認証中に確立されたコンテキスト(例えば、予約されたネットワーク・リソース)の存続期間(lifetime)を推定するための方法及びシステムによって、無線ネットワーク・モビリティ及びリソース管理が強化される。具体的には、この方法及びシステムは履歴情報を使用してユーザ装置のセル在留時間を予測するが、このセル在留時間は、ユーザ装置が基地局に接続する時からユーザ装置が他の基地局にハンドオフされるまでの時間間隔として定義される。以下に詳細に説明するように、履歴情報は、好ましくは、前にあるセルに在留していたユーザ装置に関する在留時間サンプルを含む。
【0042】
[0050] 次に図3を参照すると、本発明の一態様による方法を示す流れ図300が示されている。この方法はステップ305で、ネットワーク装置(例えば、基地局)がネットワーク装置に関連するセル内に在留していたユーザ装置(複数も可)に関するセル在留時間のサンプルを取得することから始まる。典型的に、セル在留時間は、ユーザ装置(複数も可)がそれぞれの元のサービング・セルから隣接セルにハンドオフされる時に取得される。他の諸実施形態では、ユーザ装置をポーリングするか又はユーザ装置にその現在の在留時間をネットワーク装置に対して定期的に報告させることにより、セル在留時間を定期的に取得することができる。
【0043】
[0051] ステップ310では、ネットワーク装置は、ステップ305で取得したサンプルに基づいて、セル内に在留しているユーザ装置に関するセル在留時間を推定する。次に、推定したセル在留時間に基づいて、ネットワーク装置はステップ315でユーザ装置のために予約すべきネットワーク・リソースの存続期間を推定し、ステップ320でユーザ装置に関する事前認証及び事前登録を実行する。
【0044】
[0052] 図4は、本発明の一態様により実現可能なシステム400を示している。特に、図4は、基地局401とユーザ装置402とを含むシステム400を例示的に描写している。上記で説明したように、基地局401は、eNodeB又はeNBを含むか或いはeNodeB又はeNBと呼ばれる場合がある。一般に、基地局401は、ユーザ装置402との間でユーザ及び制御情報を通信するためのアンテナと受信機及び送信機(まとめてトランシーバ・ユニット)とを含む。その点に関しては、アンテナは、ユーザ装置に無線周波を放射するか又はユーザ装置から無線周波を受信するように構成される。図1及び図2に示されているように、基地局は、RANの一部を含み、コア・ネットワーク、例えば、EPC170又はeHRPD188に結合される。
【0045】
[0053] 基地局401は、前に基地局401のセル又はサービング・エリア内に在留していたユーザ装置に関するセル在留時間の取得サンプルを含むデータベース403を含むことができる。図4は基地局の一部としてデータベース403を示しているが、データベースは図2に示されているようにコア・ネットワーク内に在留することもできる。例えば、データベースは、図1Bに示されているネットワーク装置又は要素のいずれかに、或いは個別のデータベースとして在留することができる。同様に、ステップ413〜423のいずれのステップもこのようなネットワーク装置のいずれかによって実行することもできる。
【0046】
[0054] 図4に示されているように、ステップ410でユーザ装置402は、それが現在接続されているか又は、例えば、他のユーザ装置と通信するために使用している基地局の信号対雑音比(SNR)をモニターする。その点に関しては、基地局は、ユーザ装置402にコンテンツ(例えば、音声、ビデオなど)を提供するために使用される基地局であるという点で、サービング基地局と呼ぶこともできる。このようにして、ユーザ装置402は他の基地局を聴取することができるが、基地局401はそれが在留している(又はとどまっている)現在セルを定義する。さらに、上述の通り、ユーザ装置が基地局のサービスエリア又はセル内にとどまるか又は在留する時間は、一般に、ユーザ装置のセル在留時間と呼ばれる。
【0047】
[0055] ユーザ装置又はユーザ装置402は、一般に、基地局401と無線で通信することができる任意のモバイル・デバイス又は移動局を含む。ユーザ装置402の例としては、携帯電話、スマートフォン、携帯情報端末、又はモバイル・コンピューティング・デバイスを含む。
【0048】
[0056] ステップ411では、ユーザ装置402は、現在の測定SNRを所定のしきい値T1(例えば、T1≦50%)と比較する。SNRがT1より小さい場合、ユーザ装置は、ステップ412で、候補隣接基地局又はセルに対して事前登録及び事前認証を実行することを望んでいることを基地局に通知する。ステップ413〜420では、基地局401(又はその他のネットワーク装置)は、ユーザ装置402のセル在留時間を推定することにより、事前登録/事前認証をトリガすべきかどうかを決定する。
【0049】
[0057] 具体的には、基地局401は、ステップ413で、ユーザ装置402から事前登録及び事前認証要求を受信する。次に、ステップ414では、基地局401は、基地局401によって対応されるセルから隣接セルにハンドオフされるユーザ装置に関するセル在留時間について収集したサンプルをデータベース403から検索する。ステップ415〜418については以下にさらに詳細に説明するが、これらのステップでは、基地局401は統計モデルに基づいてユーザ装置のセル在留時間を推定する。ステップ419では、ユーザ装置の残余時間(residual time)が計算される。この残余時間は、推定したセル在留時間と、ユーザ装置が現在セルに在留していた時間との差である。420では、ユーザ装置の残余時間がしきい値T2、例えば、T2≦500msより小さい場合、基地局401はステップ423に移行して、事前登録/事前認証を実行するようユーザ装置に指示し、ステップ421でセル在留時間の標準偏差を推定し始める。ステップ422では、セル在留時間について推定した標準偏差を使用して、ハンドオフを実行するためのユーザ装置のために予約すべきネットワーク・リソースの存続時間を推定することができる。残余時間が所定のしきい値T2に等しいか又はそれより大きい場合、基地局401は事前登録及び事前認証要求を認可しない。
【0050】
[0058] 次に図5Aを参照すると、本発明の追加の態様を示す呼び出し流れ図が示されている。上記で説明したように、ステップ411では、ユーザ装置402は、現在の測定SNRを所定のしきい値T1(例えば、T1≦50%)と比較する。SNRがT1より小さい場合、ユーザ装置は、ステップ412で、候補隣接基地局又はセルに対して事前登録及び事前認証を実行することを望んでいることを基地局に通知する。基地局401は、ステップ418〜419で、ユーザ装置402に関するセル在留時間及び残余時間を推定する。図4に関して前述したように、ステップ420では、残余時間が所定のしきい値T2に等しいか又はそれより大きい場合、基地局401はステップ424で事前登録及び事前認証要求を拒否する。これに反して、ユーザ装置の残余時間がしきい値T2より小さい場合、基地局401はステップ423で事前登録/事前認証要求を認可する。
【0051】
[0059] 図5Bは本発明の他の態様を示している。この態様では、基地局401は、ユーザ装置が基地局に接続する時に、又は基地局とのそのSNRがしきい値T1より低いことをユーザ装置が基地局に報告する時に、予測セル在留時間をユーザ装置に送信する。次にユーザ装置自体は、基地局から受信した予測セル在留時間を使用して、いつ事前登録及び事前認証を開始しなければならないか(並びに、開始しなければならないかどうか)を決定することができる。
【0052】
[0060] 本発明の他の態様では、基地局は、1つ又は複数のユーザ装置から取得するセル在留時間を他のネットワーク装置に伝送することもできる。これらの取得した在留時間又はサンプルは、他のネットワーク装置又は要素に保管し、他のネットワーク装置内のセル在留時間を推定するために使用することができる。前述の通り、このようなネットワーク装置は、モビリティ管理エンティティ174、ホーム加入者サーバ180、サービング・ゲートウェイ164、又はAAAサーバ186などの3GPP EPC内のネットワーク・コンポーネントを含むことができる。3GPP2 eHRPDネットワークの場合、この装置は、eAN/ePCF194、アクセス・ネットワークAAA196、又はAAAサーバ198を含むことができる。
【0053】
[0061] 本発明の他の態様では、基地局は、SNRの降順に基づいてソートされたリスト内の隣接セルに対して事前登録/事前認証を実行するようユーザ装置に指示することができる。図5C及び図5Dは、ユーザ装置がステップ453で基地局の隣接セルのSNRを収集し、ステップ454で収集したSNRを基地局に報告することを示している。典型的に、E−UTRAN又はeHRPDにすることができる隣接セルの数は10より小さい。E−UTRANからeHRPDへのハンドオフでは、基地局はまずeHRPDのセルをリストする。次に基地局はステップ455で、ユーザ装置によって報告されたSNRに基づいてeHRPDセルのリストをソートする。事前登録及び事前認証を開始する前にユーザ装置がすべての隣接セルを検出できない可能性があるので、リスト内の一部又はすべてのセルのSNRがゼロになる可能性がある。次にネットワークはステップ456で、ソートしたリストをユーザ装置に返送し、SNRの降順に基づいてリスト内のセルに対して事前登録/事前認証を実行するようユーザ装置に指示する。SNRが最も高いセルに対して事前登録/事前認証を実行すべき理由は、ユーザ装置がそのセルにローミングする可能性があることである。
【0054】
[0062] 本発明の他の態様では、基地局は、SNR自体ではなく、SNRの増加率に基づいて、ユーザ装置の事前登録及び事前認証に関する候補セルのランク付けを決定する。SNRの増加率が高いということは、ユーザ装置がその候補セルに向かって移動しているという表示である。図5A及び図5Bでは、ユーザ装置が事前登録及び事前認証を実行することを決定すると、ユーザ装置は、ステップ453で所与の期間[t1,t2]について候補セルに関するSNRをサンプリングし、ステップ454でt1及びt2における候補セルのSNRを基地局に報告する。ユーザ装置からSNRを受信すると、基地局はステップ455で各候補セルについてこの期間におけるSNRの増加率を計算する。次に基地局は、SNRの増加率に応じて降順に候補セルをランク付けし、ステップ456でそのリストをユーザ装置に返送する。
【0055】
[0063] 図5A〜図5Dは、SNRの増加率が最も高いか又はSNRが最も高い候補セルから、ユーザ装置が事前登録及び事前認証を実行することを示している。ネットワークがユーザ装置の事前登録及び事前認証に移行した後、基地局はステップ459でネットワーク在留時間の標準偏差を推定し、ユーザ装置をハンドオフするために予約されたコンテキスト・データの存続期間を計算し始め、ステップ460でそれに応じてコンテキスト・データの存続期間を設定する。本発明の他の諸実施形態では、コンテキスト存続期間の計算は他のネットワーク装置又は要素で実行することができる。このようなネットワーク装置は、モビリティ管理エンティティ174、ホーム加入者サーバ180、サービング・ゲートウェイ164、又はAAAサーバ186などの3GPP EPC内のネットワーク・コンポーネントを含むことができる。3GPP2 eHRPDネットワークの場合、この装置は、eAN/ePCF194、アクセス・ネットワークAAA196、又はAAAサーバ198を含むことができる。
【0056】
[0064] 本発明のさらに好ましい一態様では、ウィーナ過程を使用してセル在留時間を推定することができる。ウィーナ過程とは、確率変数の値が多数の独立した要因又は弱く従属する要因による影響を受け、そのそれぞれが比較的小さい影響力を有するプロセスをモデル化する際に効果的であることが証明されている確率過程である。セル在留時間は、独立しているか又は互いに弱く従属する多数の要因による影響を受けるモデルである。従って、ウィーナ過程はセル在留時間をモデル化するための効果的な方法を提供する。
【0057】
[0065] 一般に、ウィーナ過程Xtは、以下の3つの特性によって定義される。即ち、Xtは、すべてのt≧0について分布したN(0,c2t)である。Nは、平均が0で分散がc2tである正規分布を示す。{Xt;t≧0}は独立した増分を有する。0≦s≦tの場合、増分{Xt−Xs}は分布したN(0,c2(t−s))である。
【0058】
[0066] c=1である標準的なウィーナ過程は{Wt;t≧0}によって示され、この場合、すべての0≦s≦tについて、E[Wt]=0、Var(Wt)=tである。その上、ずれ又は傾向がμtである一般的なウィーナ過程は以下のように表される。
【数1】

【0059】
[0067] Δtが予測時間間隔であり、αが標準正規確率変数であるとする。一般的なウィーナ過程を使用することにより、変動ΔKは以下のように表すことができる。
【数2】

【0060】
[0068] ΔKはt−Δtからtまでの変動である。ΔKという量はすべてのΔt時間単位ごとに計算される。ΔKは任意の所与のΔtに関する正規確率変数としてモデル化することができる。さらに、以下の式のウィーナ過程の変動により、ΔKの平均及び標準偏差は時間の経過につれて変化することができる。
【数3】


[0069]ここで、μ及びδは定数である。式(3)に示されているように、ΔKは平均がμΔtで標準偏差がδ√Δtである正規分布確率変数になる。これは、任意の所与の時間間隔Δtの場合、ΔKの平均及び標準偏差をμ及びδから直接計算できることを示唆している。従って、μ及びδは、それぞれ、ΔKの期待されたずれ及び標準偏差率と呼ばれる。その上、任意の所与の時間間隔θの場合、長さθの前の時間間隔におけるΔKのサンプル値の平均及び分散に基づいてμ及びδを推定することができる。k(t)がK(t)のサンプル値であるとすると、前のr個の時間間隔[t−iθ−θ,t−iθ]におけるΔKのサンプル値はk(t−iθ)−k(t−iθ−θ)になり、ここで、i=0,...,r−1である。このため、μは以下のように
【数4】


によって推定することができる。
【数5】

【0061】
[0070] また、δの推定である
【数6】


は以下の式によって得られる。
【数7】

【0062】
[0071] 式(3)〜式(5)を使用することにより、rが十分大きい時にΔKを厳密に推定することができる。通常、rについては25で十分である。ウィーナ過程は、任意の所与のサンプリング時間間隔θにおいて古い記録を使用することにより、近い将来のK(t+Δt)を推定することができる。
【0063】
[0072] セル在留時間は、特にE−UTRAN−eHRPD網間接続ネットワーク・システムにおいて、異なるユーザ装置について幅広く変化する可能性がある。従って、k(t−iθ)は、すべてのi=0,...,r−1について、t−iθ以前に隣接セルへのハンドオフを実行した最後のn個のユーザ装置に関するセル在留時間の瞬間平均(instantaneous mean)を表すように定義される。次に式(4)〜式(5)でk(t−iθ)を使用して、
【数8】


及び
【数9】


を計算し、次にこれらを使用して式(3)を使用することによりΔKを生成する。ウィーナ過程を使用する場合、最初は、基地局がr×θの時間単位を実行して十分なサンプルを収集する必要がある。その後、基地局は、式(3)〜式(5)を使用してΔKの推定値を計算し始めることができる。次に推定したK(t+Δt)はΔK及びK(t)によって計算することができる。
【0064】
[0073] ウィーナ過程の上記のステップは図4にステップ413〜418として示されている。具体的には、時間tにおいて基地局401はステップ413でユーザ装置402から事前登録及び事前認証要求を受信する。次にステップ414で、基地局は、例えば、長さθのr−1個の時間間隔について最後のn個のユーザ装置に関するセル在留時間について収集したサンプルをデータベース403から検索する。ステップ415で、t−(r−1)θ以前のセル在留時間の瞬間平均が計算される。次にステップ416で、基地局401は、t−Δtからtまでのセル在留時間の変動について期待されたずれ及び標準偏差を計算する。次にステップ417で、t−Δtからtまでのセル在留時間の変動が計算される。ステップ418では、t−Δtからtまでのセル在留時間について計算された変動に基づいてユーザ装置402に関するセル在留時間が推定される。
【0065】
[0074] 本発明の他の諸実施形態では、時系列分析などのその他の統計モデルを使用して、セル在留時間を推定することができるであろう。また、平均化を含むその他のモデルを使用して、セル在留時間を推定することもできる。
【0066】
[0075] 本発明の他の態様では、事前登録/認証によって予約されたネットワーク・リソースのコンテキスト存続期間は、セル在留時間に基づいて推定することができる。予測されたコンテキスト存続期間が残余セル在留時間より短い場合、ハンドオフが始まる前に予約されたコンテキストが期限切れになる可能性がある。これは、事前登録/事前認証プロセスに影響を及ぼし、場合によってはそのプロセスを無意味なものにする可能性がある。
【0067】
[0076] 式(3)〜式(5)によって推定されたセル在留時間の標準偏差を計算することができる。std(t−iθ)は、すべてのi=0,...,r−1について、t−iθ以前に隣接セルへのハンドオフを実行したn個のユーザ装置のセル在留時間の瞬間標準偏差として定義される。また、std(t−iθ)は、すべてのi=0,...,r−1について、時間間隔[t−iθ−θ,t−iθ]内のセル内のすべてのユーザ装置及びk(t−iθ)によって計算される。
【0068】
[0077] 前述の通り、次にΔK及びK(t)によってK(t+Δt)を計算することができる。σ(t+Δt)はセル在留時間について推定した標準偏差を示すものとする。即ち、σ(t+Δt)=std(t)である。ユーザ装置がハンドオフを実行する前にユーザ装置のコンテキスト存続期間が期限切れにならない確率を高めるために、以下のようにコンテキスト存続期間を予測することができ、ここでaは正の実数の信頼係数である。例えば、a=2である場合、ユーザ装置の実際のコンテキスト存続期間が予測されたコンテキスト存続期間より長くなる確率は5%未満になる。
コンテキスト存続期間=K(t+Δt)+a×σ(t+Δt)
【0069】
[0078] 予約されたネットワーク・リソースを解除する手法の1つは、ユーザ装置がセル内に移動した時に、そのコンテキストを削除するようにその他のセルをトリガするための明示的な信号を使用することである。しかし、この手順を実現するために、ネットワーク・アーキテクチャ及び新しい信号の流れを変更するか又は定義する必要がある可能性がある。3GPP2 eHRPDでは、基地局は他の基地局と直接交信することはできない。信号メッセージは、他の基地局に到達するためにeAN/ePCFを通過するか又はHSGWさえ通過することが必要になる。eGPP EPS内のeNodeBはX2インターフェースというインターフェースによって接続することができるが、X2インターフェースの主要目的は、ハンドオフ後に古いeNodeBから新しいeNodeBにパケットを転送することである。未使用のコンテキストを削除するためのX2インターフェースの使用は標準化することが必要になる。E−UTRAN及びeHRPDからのハンドオフの場合、基地局間の信号メッセージはPDN GWを通過することが必要になり、その結果、経路指定パスが長くなる。標準化の問題に加えて、この手法は事前登録/事前認証の複雑さを大幅に増加するものである。
【0070】
[0079] 上記の目的のために、それぞれの事前確立したコンテキストは、自動的に期限切れになるコンテキスト存続期間を有することができる。これにより、事前確立したコンテキストを除去するよう隣接ネットワークを指示するためにユーザ装置が追加の信号を使用する必要性が回避され、このため、事前登録/事前認証の複雑さが大幅に低減される。
【0071】
[0080] 事前確立したコンテキストの存続期間を決定する方法は重要である。コンテキスト存続期間が長すぎるか又は無限である場合、未使用のコンテキスト内の予約されたリソースは、他のユーザ装置によって使用することができないので、候補ネットワーク及びユーザ装置のいずれでも浪費されることになる。事前登録/事前認証を実行するユーザ装置が多数存在する場合、各セル内のリソースは不必要に消耗する可能性もある。その上、未使用のセキュリティ・キー資料は、削除されない場合、結果的にセキュリティ問題を引き起こす可能性がある。これに反して、ハンドオフが行われる前にコンテキストが削除される場合、ユーザ装置は、そのセルを訪問する時に再登録/認証をやり直し、そのコンテキストを再確立する必要がある。それ以前に実行された事前登録/事前認証は無用なものになり、ユーザ装置及び基地局におけるメッセージング・オーバヘッド及びコンピューティング・オーバヘッドは増加する。この問題は、大規模ネットワークの場合に特に重要になる。
【0072】
[0081] 静的コンテキスト存続期間が任意に選択されると、結果的に性能が悪くなることが証明されている。評価基準の1つは呼び出しブロック/ハンドオフ低下確率(call blocking/handoff dropping probability)である。存続期間が長くなると、その結果、呼び出しブロック/ハンドオフ低下確率が高くなる。明らかに、ハンドオフ呼び出しのためにより多くのリソースが予約される場合、新しい呼び出しのブロック確率が低下することになる。これに反して、新しい呼び出しのためにより多くのリソースが予約される場合、ハンドオフ低下確率が低下することになる。従って、存続期間が短くなると、呼び出しブロック/ハンドオフ低下確率の点で性能が良好になる。
【0073】
[0082] もう1つの評価基準は、予約されているコンテキストのうちのいくつが実際に使用されるかを示す測定値である。これは、以下のようにヒット率として定義することができるであろう。
[0083] ヒット率=NNotExpired/NUE×100%
【0074】
[0084] コンテキスト存続期間が長くなるにつれて、ヒット率も上昇する。逆に、コンテキスト存続期間が短くなると、結果的にヒット率が低くなる。従って、静的コンテキスト存続期間の使用により、呼び出しブロック/ハンドオフ低下確率及びヒット率という2通りの性能尺度は互いに矛盾する。従って、動的コンテキスト存続期間アルゴリズムが必要である。
【0075】
[0085] ユーザ装置が候補セル内にハンドオフされた後、この候補セル内のユーザ装置のために予約されたコンテキスト存続期間は、ユーザ装置がこのセル内にとどまる限り持続するようにリセットされる。
【0076】
[0086] 本明細書で使用する用語は特定の諸実施形態のみを記述するためのものであって、本発明を制限するためのものではない。本明細書で使用する「a」、「an」、及び「the」という単数形は、明らかに文脈が特に指示しない限り、複数形も含むものである。本明細書で使用される場合、「comprises」及び/又は「comprising」という用語は、明記された特徴、整数、ステップ、操作、要素、及び/又はコンポーネントの存在を指定するが、1つ又は複数のその他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、コンポーネント、及び/又はそのグループの存在又は追加を排除しないことはさらに理解されるであろう。
【0077】
[0087] 本発明の様々な態様は、コンピュータ又はマシンで使用可能又は読み取り可能な媒体に実施されたプログラム、ソフトウェア、又はコンピュータ命令として実施することができ、それにより、コンピュータ、プロセッサ、及び/又はマシン上で実行された時に、コンピュータ又はマシンにこの方法の諸ステップを実行させる。詳細には、本明細書に記載されている方法は、メモリ内に保管され、プロセス又は中央演算処理装置(CPU)、マイクロプロセッサなどによって実行されるプログラミング命令に変換することができる。このようなプロセッサは、Intel、AMD、又は任意のその他の同様の製品によって作られたものを含むことができる。加えて、特定用途向け集積回路(ASIC)を使用して動作するよう命令をプログラミングすることもでき、これにより、この方法を、例えば、基地局又はユーザ装置にとってよりポータブルなものにすることができる。
【0078】
[0088] 本発明のシステム及び方法は、汎用コンピュータ又は専用コンピュータ・システム上で実現し実行することができる。このコンピュータ・システムは、任意のタイプの既知のシステムであるか又は今後、既知のシステムになる可能性があり、典型的に、プロセッサ、メモリ・デバイス、記憶装置、入出力装置、内部バス、及び/又は通信ハードウェア及びソフトウェアなどと協力して他のコンピュータ・システムと通信するための通信インターフェースを含むことができる。
【0079】
[0089] 上述の通り、本発明のユーザ装置、移動局、又はユーザ・デバイスは、携帯電話、モバイル・コンピュータ、モバイル・メディア・レコーダ、モバイル・メディア・プレーヤ、モバイル・ゲーム・コンソール、ナビゲーション装置、通信装置、及び付属品などのモバイル・デバイスを含むことができる。それらの間でモバイル・デバイスがハンドオフを実行する無線ネットワークは、3GPP、3GPP2、又はWiFiネットワークを含むことができる。
【0080】
[0090] 本明細書では特定の諸実施形態に関連して本発明を説明してきたが、これらの実施形態は本発明の原理及び適用例の例証に過ぎないことを理解されたい。従って、特許請求の範囲によって定義された本発明の精神及び範囲を逸脱せずに、例示的な諸実施形態に対して多数の変更を行うことができ、その他の配置を考案できることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線ネットワーク・モビリティを管理するための方法であって、
第1のネットワーク装置で、1つ又は複数のユーザ・デバイスが前記第1のネットワーク装置のサービスエリア範囲内にとどまる時間に関連付けられた1つ又は複数の時間サンプルを取得することと、
第2のネットワーク装置で、前記取得した時間サンプルに基づいて他のユーザ・デバイスが前記サービスエリア範囲内にとどまる可能性のある時間を推定すること
を含む、方法。
【請求項2】
取得すること及び推定することが、基地局、携帯電話、モビリティ管理エンティティ、ホーム加入者サーバ、サービング・ゲートウェイ、及び認証認可アカウンティング・サーバから構成されるグループから選択されたネットワーク装置によって実行される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1のネットワーク装置及び前記第2のネットワーク装置が同じネットワーク装置を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
推定することが、確率過程を使用して前記取得したサンプルを処理することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記確率過程がウィーナ過程を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
推定することが、時系列分析を使用して前記取得したサンプルを処理することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記第2のネットワーク装置により、前記推定した時間を前記他のユーザ・デバイスに伝送することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記ユーザ・デバイスが、携帯電話、モバイル・コンピュータ、モバイル・メディア・レコーダ、モバイル・メディア・プレーヤ、モバイル・ゲーム・コンソール、ナビゲーション装置、通信装置、及び通信付属品から構成されるグループから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
第3のネットワーク装置で、前記他のユーザ・デバイスから事前認証要求を受信することと、
前記第3のネットワーク装置で、前記推定した時間に基づいて前記他のユーザ・デバイスを事前認証すること
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
第3のネットワーク装置で、前記他のユーザ・デバイスから事前登録要求を受信することと、
前記第3のネットワーク装置で、前記推定した時間に基づいて前記他のユーザ・デバイスの事前登録を実行すること
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記他のユーザ・デバイスに関連付けられた1つ又は複数の隣接基地局の前記サービスエリア範囲によって定義された1つ又は複数の隣接セルの信号対雑音比を取得することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記隣接セルの中から、前記取得した信号対雑音比に基づいて前記他のユーザ・デバイスをハンドオフするためのターゲット・セルを決定することをさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
無線ネットワーク・リソースを管理する方法であって、
第1のネットワーク装置で、第1の基地局に関連付けられた複数のユーザ・デバイスに関する1つ又は複数の時間サンプルを取得することと、
第2のネットワーク装置で、前記取得した時間サンプルに基づいて前記第1の基地局に関連付けられた他のユーザ・デバイスに関するセル在留時間を推定することと、
前記第2のネットワーク装置で、前記推定したセル在留時間に基づいてネットワーク・リソースを解除する時期を決定すること
を含む、方法。
【請求項14】
推定することが、前記推定したセル在留時間の標準偏差を計算することをさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記ネットワーク・リソースが、ネットワーク・アドレス、ネットワーク・ベアラ、サービス品質プロファイル、又はセキュリティ・キーを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
第2の基地局で、前記他のユーザ・デバイスから事前認証又は事前登録要求を受信することと、
前記第2の基地局で、前記推定した時間に基づいて前記他のユーザ・デバイスを事前認証及び事前登録することと、
前記他のユーザ・デバイスに関連付けられた隣接セルに前記他のユーザ・デバイスをハンドオフするためのネットワーク・リソースを予約すること
をさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記第1又は第2のネットワーク装置が、基地局、携帯電話、モビリティ管理エンティティ、ホーム加入者サーバ、サービング・ゲートウェイ、及び認証認可アカウンティング・サーバから構成されるグループから選択される、請求項14記載の方法。
【請求項18】
推定することが、確率過程又は時系列分析を使用して前記取得した時間サンプルを処理することをさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項19】
前記確率過程がウィーナ過程を含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記ネットワーク装置により、前記推定した時間を他のユーザ・デバイスに伝送することをさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項21】
基地局に関連付けられた複数のユーザ・デバイスに関する1つ又は複数の時間サンプルを取得するための基地局と、
前記取得した時間サンプルに基づいて前記基地局に関連付けられた他のユーザ・デバイスに関するセル在留時間を推定するためのネットワーク要素に関連付けられたプロセッサと
を含む、システム。
【請求項22】
前記ネットワーク要素が、基地局、携帯電話、モビリティ管理エンティティ、ホーム加入者サーバ、サービング・ゲートウェイ、及び認証認可アカウンティング・サーバから構成されるグループから選択される、請求項21記載のシステム。
【請求項23】
前記時間サンプルがセル在留時間を含む、請求項22記載のシステム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【公表番号】特表2013−502838(P2013−502838A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525654(P2012−525654)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/045826
【国際公開番号】WO2011/022448
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(511130818)ティーティーアイ インベンションズ ディー エルエルシー (5)
【Fターム(参考)】