無線中継システム、無線中継方法および中継局
【課題】トータルスループットの向上を図った無線中継システムを提供する。
【解決手段】無線中継システムは、複数の送受信局と中継局から構成され、中継局が各送受信局から受けた信号に一定の処理をした後多重化し、各送受信局へ一括送信する。ここで、中継局は、各送受信局と自中継局との間の各伝送路の伝送路利得を各々推定し、各伝送路利得から、各伝送路の不均衡を抑制する電力配分係数を決定し、電力配分係数に基づいて各送受信局へ送信する信号を制御した後、多重化する。また、送受信局は、所望信号以外の信号を予め取得し、中継局から受信した信号から予め取得した信号を減算することにより所望信号を得る。
【解決手段】無線中継システムは、複数の送受信局と中継局から構成され、中継局が各送受信局から受けた信号に一定の処理をした後多重化し、各送受信局へ一括送信する。ここで、中継局は、各送受信局と自中継局との間の各伝送路の伝送路利得を各々推定し、各伝送路利得から、各伝送路の不均衡を抑制する電力配分係数を決定し、電力配分係数に基づいて各送受信局へ送信する信号を制御した後、多重化する。また、送受信局は、所望信号以外の信号を予め取得し、中継局から受信した信号から予め取得した信号を減算することにより所望信号を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチホップ無線通信を行う際の無線中継システム、それに応じた無線中継方法、それを実現するための中継局に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アドホックネットワークなどのマルチホップ通信では、使用可能チャネルが1つしかなく、かつ2つの通信フローが1つの中継ノード(中継局)を共有する時、中継ノードがそれぞれの通信を交互に中継するため、中継ノードがシステムスループットのボトルネックとなる。それを解決する手段として、中継ノードが各通信フローのアナログ信号である各変調シンボルを加算により重ね合わせ、宛先局に重ね合わせたシンボルを一括伝送する変調シンボル重畳による一括中継伝送が提案されている(非特許文献1参照)。このアナログ変調信号多重化を用いた中継ノードにおける処理としては、生起局から受信した信号を一度復調し、再変調してから多重化して中継するDF(Decode and Forward)方式によるアナログ変調信号多重化と、受信した信号をそのまま増幅してから多重化して中継するAF(Amplify and Forward)方式によるアナログ変調信号多重化がある。
以下では、DF方式の具体例として、変調シンボル重畳を用いた一括中継伝送が適用可能である代表的なマルチホップ無線トポロジである双方向のAlice & Bobトポロジを挙げて、従来の変調シンボル重畳一括伝送技術を説明する。
【0003】
< Alice & Bobトポロジ>
Alice & Bobトポロジの概要図を図14に示す。このトポロジは両端の送受信ノードA、B(送受信局)が互いに中継ノードRを介して双方向の通信を行うものである。各ノードA、Bの送信タイミングはタイムスロットにより区切られていて、互いに干渉することがないことを前提とする。この時の通信の手順を説明する。なお、パケットとはあるノードが持つビット情報のことであり、変調シンボルとは、ビット情報をベースバンドで変調(マッピング)した後の信号のことであり、RF信号とは、変調シンボルをRF(Radio Fre‐quency)帯にアップコンバートした信号である。
【0004】
○ 時刻T1において、ノードAがパケットAのRF信号AをノードRに送信する.同時に変調シンボルAを記憶する。ノードRはRF信号Aを受信・復調し、パケットAを記憶する。
○ 時刻T2において、ノードBがパケットBのRF信号BをノードRに送信する。同時に変調シンボルBを記憶する。ノードRはRF信号Bを受信・復調し、パケットBを記憶する。
○ 時刻T3において、ノードRはパケットAとBを変調し、2つの変調シンボルを1:1の割合で加算することにより重畳して、重畳RF信号C(「A+B」)を生成する。その後アップコンバートし重畳RF信号CをノードAとBに同報送信を行う。同報送信とは、ヘッダ情報の宛先局として複数のノードを指定することにより、無線の同報性を利用して同時に同じ情報を複数の宛先局に対して送信することである。RF信号Cを受信したノードAは、RF信号Cをダウンコンバートし(AGCによる出力レベルの調整も含む)、重畳変調シンボルCを得る。次に、記憶しておいた変調シンボルAを変調シンボルCから減算することにより、変調シンボルBを得る。これを復調し、所望のパケットBを得ることができる。ノードBも同様に、RF信号Cを受信し、ダウンコンバートした変調シンボルCから、記憶しておいた変調シンボルBを減算することにより変調シンボルAを得る。これを復調し、所望のパケットAを得ることができる。
上記手順を経ることにより、ノードAとBの双方向の通信が完了する。必要なタイムスロット数は3である。
【0005】
図15は、上述したDF方式を用いた無線中継システムの中継ノード内に設けられる中継装置の構成を示す概略ブロック図である。この図に示すように、中継装置10は、無線部11、信号検出回路12、チャネル推定回路13、復調回路14、変調回路15、重畳回路16を備えている。
無線部11は、送受信する信号を所望の周波数の信号にアップコンバート、またダウンコンバートする回路であり、同期回路、A/D(Analog to Digital)変換器、D/A(Digital to Analog)変換器を有している。この無線部11は、入力される信号を送信すると共に、受信信号から所望の信号を検出し出力する。信号検出回路12は、受信信号から変調シンボル信号を検出し出力する。チャネル推定回路13は、送受信ノードと中継ノードとの間の伝送路の状態(伝搬路係数)を推定する。復調回路14は、信号検出回路12から出力される変調シンボルを復調する。なお、復調回路14においては、変調シンボル信号が誤り訂正符号化された信号である場合は、誤り訂正復号を行う。変調回路15は、復調回路14から入力される送信データの信号を予め定められた方式を用いて変調し、変調シンボルを生成する。なお、変調回路15においては、誤り訂正符号化を行う場合には、この誤り訂正符号化処理も行う。重畳回路16は、変調回路15で生成された変調シンボルを記憶しておき、最終的に全てを足し合わせて合成し、一括送信する。
【0006】
図16は上述したノードA、Bに設けられた送受信装置20の構成を示すブロック図である。この送受信装置20は、無線部21、信号検出回路22、所望波抽出回路23、復調回路24、出力切替回路25、チャネル推定回路26、信号記憶回路27、変調回路28、出力切替回路29を備えている。
無線部21は、送受信する信号を所望の周波数の信号にアップコンバート、またダウンコンバートする回路であり、同期回路、A/D変換器、D/A変換器を有している。この無線部21は、入力される信号を送信すると共に、受信信号から所望の信号を検出し出力する。信号検出回路22は、受信信号から所望の変調シンボルの信号を検出し出力する。チャネル推定回路26は、中継ノードと自ノード、および生起ノードと自ノードとの間の伝送路の状態(伝搬路係数)を推定する。この伝搬路係数は、所望波抽出回路23に出力される。所望波抽出回路23は、信号検出回路12から入力される信号(中継ノードから受信した多重化信号)から、所望信号以外のシンボルを減算して除去し、所望信号の変調シンボルの信号を抽出する。この所望波抽出回路23において、所望信号を抽出する際には、チャネル推定回路26から入力される伝搬路係数が、重み係数として使用される。
【0007】
所望波抽出回路23で抽出された所望信号の変調シンボルは、復調回路24へ入力される。復調回路24は、所望波抽出回路23から入力される変調シンボルを復調する。この復調の際に、シンボル信号が誤り訂正符号化されている場合は、誤り訂正復号を行う。出力切替回路25は、復調した信号を所望信号以外の信号として記憶する場合、入力信号を信号記憶回路27に出力し、自ノードの処理で用いる場合、入力信号を出力信号として出力する。信号記憶回路27は、予め取得した所望信号以外の信号(例えば、適時聴取した所望信号以外の直接信号)、および自ノードが送信する送信データを、ビット信号として記憶する。
【0008】
変調回路28は、信号記憶回路27から入力される信号をシンボル信号に変調する。この場合、変調する信号に誤り訂正符号化を行う場合は、この誤り訂正符号化処理も行う。出力切替回路29は、変調回路28から入力した変調シンボル信号の出力先を切り替える回路であり、所望信号以外の信号として、所望波抽出回路23に出力するか、または、送信データとして、無線部21に出力する。以上がDF方式の詳細である。
次に、AF方式による変調シンボル重畳を用いたAlice & Bobトポロジにおける一括伝送の手順を以下に説明する.
【0009】
○ 時刻T1において、ノードAがパケットAのRF信号AをノードRに送信する。同時に変調シンボルAを記憶する。ノードRはRF信号Aを受信・ダウンコンバートし、変調シンボルAを記憶する。
○ 時刻T2において、ノードBがパケットBのRF信号BをノードRに送信する。同時に変調シンボルBを記憶する。ノードRはRF信号Bを受信・ダウンコンバートし、変調シンボルBを記憶する。
○ 時刻T3において、ノードRは記憶しておいた変調シンボルAとBを1:1の割合で加算することにより重畳する。その後アップコンバートし重畳RF信号CをノードAとBに同報送信を行う。RF信号Cを受信したノードAは、RF信号Cをダウンコンバートし、変調シンボルCを得る。記憶しておいた変調シンボルAを変調シンボルCから減算することにより、変調シンボルBを得る。これを復調し、所望のパケットBを得ることができる。ノードBも同様に、RF信号Cを受信し、ダウンコンバートした後変調シンボルCから、記憶しておいた変調シンボルBを減算することにより変調シンボルAを得る。これを復調し、所望のパケットAを得ることができる。
【0010】
図17は、上述したAF方式による無線中継システムの中継ノードR内の中継装置の構成を示す概略ブロック図である。この図に示すように、中継装置30は、無線部31、信号検出回路32、信号記憶回路33、重畳回路34を備えている。無線部31は、送受信する信号を所望の周波数の信号にアップコンバート、またダウンコンバートする回路であり、同期回路、A/D変換器、D/A変換器を有している。この無線部31は、入力される信号を送信すると共に、受信信号から所望の信号を検出し出力する。信号検出回路32は、受信信号から所望の変調シンボルの信号を検出し出力する。信号記憶回路33は、信号検出回路32から出力される変調シンボルの信号を記憶する。重畳回路34は、信号記憶回路33に記憶された送受信局から受信した各変調シンボルを、足し合わせて合成し、一括送信する。
【0011】
ところで、DF方式による変調シンボル重畳は、時刻T1とT2における中継ノードRでの変調シンボルAの復調時に判定誤りが発生した場合、その先のノードRから宛先ノードBとAへの通信までノードRでの判定誤りが伝搬し、必ず判定誤りが発生するが、中継ノードRの復調が成功した場合は、変調シンボルAとBに付加された雑音を除去することができるため、その先の伝送品質がAF方式に比べて良好である。AF方式による変調シンボル重畳は、ノードRにおいて復調していないため雑音を除去することはできないが、判定誤り伝搬も発生しない。しかしながら、シンボルの電力増幅時にノードRで付加された雑音も同時に増幅してしまうため、End-to-endの通信品質が中継の度に劣化する。
【0012】
送信パケットに誤り判定符号等による誤り判定機能を持たせ、中継ノードRにおいて復調したパケットが誤っているかどうかが判定可能な時は、パケットの誤り判定結果により、ノードRが重畳するシンボルを再生した変調シンボルと非再生の変調シンボルで切り替える,DF方式とAF方式のハイブリッド変調シンボル重畳も可能である。ハイブリッド変調シンボル重畳は、ノードRでの復調の結果のパケットが誤りであった場合判定誤り伝搬を防止するために復調する前の変調シンボルを記憶しておく。パケットが正しかった場合は復調結果のパケットを記憶しておく。そして、重畳時には、記憶してあるパケットを変調器に通して再変調した変調シンボルを重畳する。パケットが誤っていた場合は、復調する前の変調シンボルを記憶しておき、重畳時にはその変調シンボルを読みだして重畳する。
【0013】
上述したハイブリッド変調方式の中継ノードのブロック回路図を図18に示す。ノードA、Bの送受信装置ブロック回路図はAF方式、DF方式と同様である(図16参照)。
図18に示すように、中継装置40は、無線部41、信号検出回路42、復調回路43、チャネル推定回路44、等化回路45、誤り検出回路46、変調回路47、入力切替回路48、重畳回路49を備えている。これらの構成において、無線部41、信号検出回路42、復調回路43、チャネル推定回路44、変調回路47は図15における構成要素11、12、14、13、15と同様の構成であるので説明を省略する。
【0014】
等化回路45は、信号検出回路42により検出した変調シンボルに対して等化処理を行う。等化回路45により等化処理された変調シンボルは、入力切替回路48に出力される。誤り検出回路46は、復調回路43により復調したパケットについて、パケット内の誤りビットの存在を検出する。誤り検出回路46において誤りがないと判定された場合は、そのパケットのビット信号を変調回路47に出力する。また、誤り検出の結果を入力切替回路48に通知する。入力切替回路48は、誤り検出回路46の検出結果を受け、誤りがあった場合は変調回路47の出力を、誤りがなかった場合は等価回路45の出力を選択し、重畳回路49へ出力する。重畳回路49は、多重化メモリを有しており、入力切替回路48から出力される信号を記憶する。そして、誤り検出回路46における誤り検出結果に誤りがない場合において、変調回路47により変調されたDF方式の中継信号と、誤り検出回路46における誤り検出結果に誤りがある場合において、等化回路105により等化処理されたAF方式の中継信号とを足し合わせ、一つのアナログ多重化信号に合成する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】原田諭,宮本伸一,三瓶政一,“双方向トラヒックの一括伝送方式を適用したマルチホップ無線ネットワークの伝送特性に関する検討”,信学技報MoMuC2006-82.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
AF方式による変調シンボル重畳一括中継伝送と、AF方式の要素を持つAF・DFハイブリッドによる変調シンボル重畳一括中継伝送は、ノードAとBの送信電力が常に等しいとしたとき、パケットAとBの中継ノードRでの受信SNRが等しい場合、すなわち、ノードAからノードR間の伝搬路利得をGA、ノードBからノードR間の伝搬路利得をGBとすると、GAとGBが等しい場合に、システム全体としてバランスの取れた最も良好な伝送品質を達成する。どちらかの伝搬路利得が劣化もしくは改善した場合すなわち伝搬路利得の不均衡が発生した場合、相対的に伝搬路利得の低い伝搬路を2ホップ目とするパケットの伝送品質が、逆方向の伝搬路利得が高い伝搬路を2ホップ目とするパケットに比べて劣化し、各パケットの伝送品質にも不均衡が発生する。伝送品質が相対的に劣悪なパケットの影響により、トータルスループット特性を低下させる問題がある。
また、DF方式による変調シンボル重畳一括中継伝送の場合は、伝送品質の不均衡は発生しないが、伝搬路利得の低い伝搬路が双方のパケット伝送品質のボトルネックとなる。これにより全体の伝送品質が急激に悪化しトータルスループットがAF方式同様に低下する問題がある。
【0017】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、送信ノードから中継ノードに送信されてくる双方向の信号の受信SNRに不均衡が生じた場合においても、中継した先での最終的な所望信号のSNRを等しくすることができ、これにより、トータルスループットの向上を図ることができる無線中継システム、無線中継方法、中継局(中継ノード)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1に記載された発明は、複数の送受信局と中継局から構成され、前記中継局が前記各送受信局から受けた信号に一定の処理をした後多重化し、前記各送受信局へ一括送信する無線中継システムにおいて、前記中継局は、前記各送受信局と自中継局との間の伝送路の各伝送路利得を各々推定し、前記各伝送路利得から、前記各伝送路の不均衡を抑制する電力配分係数を決定し、前記電力配分係数に基づいて各送受信局へ送信する信号を制御した後、多重化し、前記送受信局は、所望信号以外の信号を予め取得し、前記中継局から受信した信号から前記予め取得した信号を減算することにより所望信号を得ることを特徴とする無線中継システムである。
【0019】
請求項2に記載された発明は、複数の送受信局と中継局から構成され、前記中継局が、前記送受信局から受信した信号に一定の処理をした後、多重化して前記各送受信局へ一括送信し、前記送受信局が、所望信号以外の信号を予め取得し、前記中継局から受信した信号から前記予め取得した信号を減算することで所望信号を得る無線中継システムにおいて、前記中継局は、前記送受信局から受信した信号から前記各送受信局と自中継局間の伝送路の各伝送路利得を推定する伝送路利得推定手段と、前記各伝送路利得から、前記各伝送路の不均衡を抑制する電力配分係数を決定する電力配分算出手段と、送信する信号を前記電力配分係数に基づいて制御する電力制御手段と、前記電力配分係数に基づく制御が行われた信号を加算して多重化する重畳手段と、前記多重化した信号を前記送受信局へ一括送信する無線部とを備えることを特徴とする無線中継システムである。
【0020】
請求項3に記載された発明は、請求項2に記載の無線中継システムにおいて、前記中継局は、前記送受信局から受信した信号から抽出された変調シンボルを伝送路状態に応じて復調する復調手段と、前記復調された信号を再変調し、前記電力制御手段へ出力する変調手段とを具備することを特徴とする。
請求項4に記載された発明は、請求項2に記載の無線中継システムにおいて、前記中継局は、前記送受信局から受信した信号から抽出された変調シンボルを伝送路状態に応じて等価処理し、前記電力制御手段へ出力する等価手段と、前記受信信号毎の雑音電力を推定する雑音電力推定手段とを具備し、前記電力配分算出手段は、前記伝送路利得および前記雑音電力に基づいて電力配分係数を決定することを特徴とする。
請求項5に記載された発明は、請求項2に記載の無線中継システムにおいて、前記中継局は、前記送受信局から受信した信号から抽出された前記変調シンボルを伝送路状態に応じて復調する復調手段と、前記復調回路で復調された信号の誤り検出を行う誤り検出手段と、前記復調された信号を再変調する変調手段と、前記送受信局から受信した信号から抽出された前記変調シンボルを伝送路状態に応じて等価処理する等価手段と、前記誤り検出状態に応じて前記変調手段からの信号と前記等価回手段からの信号とを切り換えて前記電力制御手段へ出力する入力切替手段と、前記送受信局から受信した信号毎の雑音電力を推定する雑音電力推定手段とを具備し、前記電力配分算出手段は、前記伝送路利得および前記雑音電力に基づいて電力配分係数を決定することを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載された発明は、請求項3または請求項5に記載の無線中継システムにおいて、前記中継局は、前記復調手段、復調処理に加えて誤り訂正復号処理を行い、前記変調手段が、変調処理に加えて誤り訂正符号化処理を行うことを特徴とする。
請求項7に記載された発明は、請求項1〜請求項6のいずれかの項に記載の無線中継システムにおいて、前記送受信局は、前記中継局から送信された多重化信号を受信する受信手段と、前記受信手段によって受信された信号から前記電力配分係数を推定する送信電力推定手段と、前記受信手段によって受信された多重化信号から、前記送信電力推定手段の出力および予め取得した所望信号に基づいて所望信号以外の信号を除き、前記所望信号を抽出する所望波抽出手段と、前記所望波抽出手段によって抽出された信号を復調する復調手段とを具備することを特徴とする。
【0022】
請求項8に記載された発明は、請求項1〜請求項6のいずれかの項に記載の無線中継システムにおいて、前記送受信局は、前記所望信号を送信する送受信局から直接受信した直接信号と、前記中継局から受信した信号から前記予め取得した信号を減算することで得た所望信号とを最大比合成する合成手段と、前記合成手段の出力を復調する復調手段と、を具備することを特徴とする。
請求項9に記載された発明は、複数の送受信局と中継局から構成され、前記中継局が前記各送受信局から受けた信号に一定の処理をした後多重化し、前記各送受信局へ一括送信する無線中継システムにおいて、前記中継局が、前記各送受信局と自中継局との間の各伝送路の伝送路利得を各々推定する伝送路利得推定処理と、前記各伝送路利得から、前記各伝送路の不均衡を抑制する電力配分係数を決定する電力配分係数決定処理と、前記電力配分係数に基づいて各送受信局へ送信する信号を制御する電力制御処理と、前記電力制御が行われた信号を多重化する多重化処理とを有し、前記送受信局が、所望信号以外の信号を予め取得し、前記中継局から受信した信号から前記予め取得した信号を減算することにより所望信号を得る所望信号抽出処理を有することを特徴とする無線中継方法である。
【0023】
請求項10に記載された発明は、請求項9に記載の無線中継方法において、前記中継局が、前記送受信局から受信した信号から抽出された前記変調シンボルを伝送路状態に応じて復調し、前記復調された信号を再変調し、前記電力制御処理において前記再変調された信号を前記電力配分係数に基づいて制御することを特徴とする。
請求項11に記載された発明は、請求項9に記載の無線中継方法において、前記中継局が、前記送受信局から受信した信号毎の雑音電力を推定し、前記電力配分算出処理において、前記伝送路利得および前記雑音電力に基づいて電力配分係数を決定し、前記送受信局から受信した信号から抽出された前記変調シンボルを伝送路状態に応じて等価処理し、前記電力制御処理において前記等価処理された信号を前記電力配分係数に基づいて制御することを特徴とする。
【0024】
請求項12に記載された発明は、請求項9に記載の無線中継方法において、前記中継局は、前記送受信局から受信した信号毎の雑音電力を推定し、前記電力配分算出処理において、前記伝送路利得および前記雑音電力に基づいて電力配分係数を決定し、前記送受信局から受信した信号から抽出された前記変調シンボルを伝送路状態に応じて復調し、前記復調された信号を再変調し、前記送受信局から受信した信号から抽出された前記変調シンボルを伝送路状態に応じて等価処理し、前記復調された信号の誤り検出を行い、前記誤り検出の結果に応じて前記再変調された信号と前記等価処理された信号を切り替え、前記電力制御処理において前記切り替えによって得られた信号を前記電力配分係数に基づいて制御することを特徴とする。
【0025】
請求項13に記載された発明は、請求項10または請求項12に記載の無線中継方法において、前記中継局が、前記復調処理において復調処理と共に誤り訂正復号処理を行い、前記変調処理において変調処理と共に誤り訂正符号化処理を行うことを特徴とする。
請求項14に記載された発明は、請求項9〜請求項13のいずれかの項に記載の無線中継方法において、前記送受信局が、前記中継局から送信された多重化信号を受信する受信処理と、前記受信処理によって受信された信号から前記電力配分係数を推定する送信電力推定処理と、前記受信処理によって受信された多重化信号から、前記電力配分係数および予め取得した所望信号に基づいて所望信号以外の信号を除き、前記所望信号を抽出する所望波抽出処理と、前記所望波抽出処理によって抽出された信号を復調する復調処理とを有することを特徴とする。
【0026】
請求項15に記載された発明は、請求項9〜請求項14のいずれかの項に記載の無線中継方法において、前記送受信局は、前記所望信号を送信する送受信局から直接受信した直接信号と、前記中継局から受信した信号から前記予め取得した信号を減算することで得た所望信号とを最大比合成する合成処理と、前記合成処理が行われた信号を復調する復調処理とを有することを特徴とする。
請求項16に記載された発明は、複数の送受信局と無線通信による中継を行う中継局であって、前記各送受信局と自中継局との間の各伝送路の伝送路利得を各々推定し、前記各伝送路利得から、前記各伝送路の不均衡を抑制する電力配分係数を決定し、前記電力配分係数に基づいて各送受信局へ送信する信号を制御した後、多重化し、該多重化した信号を前記各送受信局へ一括送信することを特徴とする中継局である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、送信ノードから中継ノードに送信されてくる双方向の信号の受信SNRに不均衡が生じた場合においても、中継ノードにおいて重畳させる変調シンボルの送信電力を適応的に制御することにより、中継した先での最終的な所望信号のSNRを等しくすることが可能になる。これにより、システムスループットの向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態による中継装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による送受信装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す中継装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】図2に示す送受信装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態による中継装置の構成を示すブロック図である。
【図6】図5に示す中継装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】本発明の第3の実施形態による中継装置の構成を示すブロック図である。
【図8】図7に示す中継装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の第4の実施形態による送受信装置の構成を示すブロック図である。
【図10】図9に示す送受信装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図11】第4の実施形態の効果を説明するための図であり、計算機シミュレーションの条件を記載した図である。
【図12】第4の実施形態の効果を説明するための図であり、中継ノードの位置によるパケット誤り率を示す図である。
【図13】第4の実施形態の効果を説明するための図であり、システムスループットを示す図である。
【図14】無線中継システムの全体構成を示す図である。
【図15】従来の無線中継システムにおけるDF方式の中継装置の構成を示す図である。
【図16】従来の無線中継システムにおける送受信装置の構成を示す図である。
【図17】従来の無線中継システムにおけるAF方式の中継装置の構成を示す図である。
【図18】従来の無線中継システムにおけるDF/AFハイブリッド方式の中継装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明では、図14における中継ノードRにおいて、ノードAとノードR、ノードBとノードRの双方の伝搬路利得と、ノードA、Bにおいて付加される雑音電力を考慮することにより、最終的にノードAとBにおける所望変調シンボルのSNRが均等になるように、中継ノードRで各変調シンボルに与える送信電力を適応的に制御する。すなわち、2ホップ目の伝搬路利得が小さい方の変調パケットに中継ノードRが与える送信電力を大きくする。中継ノードRのトータルの送信電力が増幅器の性能等により制限されている場合は、2ホップ目の伝搬路利得が小さい方の変調パケットの送信電力を大きくする一方、2ホップ目の伝搬路利得が大きい方の変調パケットの送信電力を小さくする。これにより、伝送品質の不均衡を抑制することが可能になり、従来法に比べてトータルスループット特性の向上が実現可能となる。
【0030】
以下、実施形態について詳述する。
(第1実施形態):DF方式による変調シンボル重畳一括中継伝送の場合
図1は、本発明の第1実施形態による無線中継システムの中継ノードRに設けられる中継装置100の構成を示すブロック図である。この図に示すように、中継装置100は、無線部101、信号検出回路102、チャネル推定回路103、復調回路104、変調回路105、重畳回路106、伝播路利得推定回路111、電力配分算出回路112、電力制御回路113を備えている。この構成において、無線部101、信号検出回路102、チャネル推定回路103、復調回路104、変調回路105、重畳回路106はそれぞれ前述した図15の各構成要素11〜16と同様に構成されており、従って説明は省略する。
【0031】
図において、伝播路利得制御回路111は、各伝播路の利得を推定し、電力配分算出回路112へ出力する。電力配分算出回路112は、伝播路利得推定回路111から出力された伝播路利得から重畳させる各変調シンボルに割り当てるべき電力を算出し、電力制御回路113へ出力する。電力制御回路113は、電力配分算出回路112から入力された配分電力値に基づいて変調回路105から出力される変調シンボルを制御し、重畳回路106へ出力する。重畳回路106は、電力制御回路113から出力される変調シンボルを記憶しておき、最終的に全てを足し合わせて合成し、一括送信する。
【0032】
図2は本発明の第1実施形態による無線中継システムの送受信ノードA、Bに設けられる送受信装置200の構成を示すブロック図である。この図に示すように、送受信装置200は、無線部201、信号検出回路202、所望波抽出回路203、復調回路204、出力切替回路205、チャネル推定回路206、信号記憶回路207、変調回路208、出力切替回路209、中継送信電力推定回路211、電力制御回路212を備えている。この構成において、無線部201、信号検出回路202、所望波抽出回路203、復調回路204、出力切替回路205、チャネル推定回路206、信号記憶回路207、変調回路208、出力切替回路209はそれぞれ前述した図16の各構成要素21〜29と同様に構成されており、従って説明は省略する。
【0033】
図において、中継送信電力推定回路211は、中継ノードRにおいて使用された送信電力係数を推定し、推定結果を電力制御回路212へ出力する。電力制御回路212は、中継送信電力推定回路211から出力される送信電力係数に基づいて自送信変調シンボルのレプリカの電力制御を行い、所望波抽出回路203へ出力する。所望波抽出回路203は、電力制御回路212から出力される自送信変調シンボルのレプリカを使って、重畳変調シンボルから自分の送信成分すなわち干渉成分を除去する。
【0034】
次に、上述した第1実施形態を、Alice & Bobトポロジ(図14)に適用した場合について、図3、図4に示すフローチャートを参照して詳述する。
図14における時刻T1において、中継ノードRの無線部101が送受信ノードAから送信されたRF信号Aを受信し、DC(ダウンコンバート)を行う(図3のステップSa1)。また、時刻T2において、中継ノードRの無線部101はノードBから送信されたRF信号Bを受信し、DCを行う(ステップSa2)。また、ノードRの伝播路利得推定回路111はノードAからノードRへの伝搬路利得GAを推定すると共に、ノードBからノードRへの伝搬路利得GBを推定する(ステップSa3)。伝搬路利得の推定は既知のプリアンブルをノードAとBにおいて変調シンボルに付加することにより行われる。受信されたRF信号Aは信号検出回路102において検出され、復調回路104において復調される(ステップSa4)。同様に、受信したRF信号Bは信号検出回路102において検出され、復調回路104において復調される(ステップSa5)。
【0035】
電力配分算出回路112は、伝播路利得推定回路111から出力される伝播路利得GA、GBを下記の式(1)、式(2)に適用して送信電力配分係数α、βを求め、電力制御回路113へ出力する(ステップSa6)。
【0036】
【数1】
なお、伝搬路利得は時刻T1、T2、T3において変動がないものとする。また、中継ノードにおける総送信電力を正規化することから式(1)、式(2)が得られる。
上記復調回路104において復調された変調シンボルAは変調回路105において再変調され(ステップSa7)、電力制御回路113においてαの平方根が乗算されることによって送信電力制御が行われ(ステップSa8)、重畳回路106内のメモリに記憶される(ステップSa9)。同様に、復調回路104において復調された変調シンボルBは変調回路105において再変調され(ステップSa10)、電力制御回路113においてβの平方根が乗算されることによって送信電力制御が行われ(ステップSa11)、重畳回路106内のメモリに記憶される(ステップSa12)。重畳回路106は、メモリ内に記憶された変調シンボルA、B同士を加算することにより重畳し、無線部101へ出力する(ステップSa13)。
【0037】
無線部101は、時刻T3において重畳変調シンボルに共通プリアンブルを付加したものをアップコンバート(UC)し、重畳RF信号をノードAとノードBに同報通信する(ステップSa13)。送信電力配分係数αもしくはβはプリアンブルの中に格納され、データと同時にノードAとBに対し同報通信される。αとβはβ=1−αの関係が成り立つため、格納する電力係数はどちらかでよい。
【0038】
次に、ノードAの無線部202(図2)は受信した重畳RF信号(RF信号C)をダウンコンバートし(図4のステップSb1)、中継送信電力推定回路211がダウンコンバートされた信号のプリアンブルから送信電力配分係数を取出し(ステップSb2)、電力制御回路212へ出力する。電力制御回路212は、送信電力係数に基づいて自送信変調シンボルのレプリカの電力制御を行い、所望波抽出回路203へ出力する。所望波抽出回路203は、電力制御回路212から出力される自送信変調シンボルのレプリカを使って、重畳変調シンボルから自分の送信成分すなわち干渉成分を除去し(ステップSb3)、次いで復調回路204が所望の変調シンボルを復調する(ステップSb4)。これにより、所望の変調シンボルBを得ることができる。変調シンボルBは復調されパケットBを得る。ノードBも同様に、受信した重畳RF信号をダウンコンバートし、プリアンブルから取り出した電力配分係数と記憶していた自送信変調シンボルを使って、重畳変調シンボルから干渉成分を除去する。これにより、所望の変調シンボルAを得ることができる。変調シンボルAは復調されパケットAを得る。
なお、ノードRが記憶する信号は、再変調シンボルではなく、もちろんパケットでも可能である。また伝搬路利得はAGC(Automatic Gain Control)の利得を読み取って、その逆数を取ってもよい。
【0039】
(第2実施形態):AF方式による変調シンボル重畳一括中継伝送
図5は、本発明の第2実施形態による無線中継システムの中継ノードRに設けられる中継装置300の構成を示すブロック図である。この図に示すように、中継装置300は、無線部301、信号検出回路302、チャネル推定回路303、等価回路304、伝播路利得推定回路311、雑音電力推定回路307、電力配分算出回路308.電力制御回路313、重畳回路306を備えている。この構成において、無線部301、信号検出回路302、チャネル推定回路303、重畳回路106、伝播路利得推定回路311、電力制御回路313はそれぞれ、図1における各構成要素101、102、103、106、111、113と同様に構成されており、従って説明は省略する。
【0040】
等価回路304は、信号検出回路302から出力される信号の等価処理を行い、電力制御回路313へ出力する。雑音電力推定回路307は、受信変調シンボル毎の雑音電力を推定する。電力配分算出回路308は、伝播路利得推定回路311から出力される伝播路利得と雑音電力推定回路307から出力される雑音電力から、重畳させる各シンボルに割り当てるべき電力を算出し、電力制御回路313へ出力する。
【0041】
次に、第2実施形態の動作を図5、図14および図6に示すフローチャートを参照して説明する。
図14の時刻T1において、中継ノードRの無線部301(図5)がノードAから送信されたRF信号Aを受信し、受信したRF信号Aをダウンコンバートする(ステップSc1)。また、時刻T2において、無線部301がノードBから送信されたRF信号Bを受信し、受信したRF信号Bをダウンコンバートする(ステップSc2)。また、伝播路利得推定回路311はノードAおよびノードBからノードRへの伝搬路利得GA、GBを推定する(ステップSc3)。伝搬路利得の推定は、既知のプリアンブルをノードAとBにおいて変調シンボルに付加することにより測定可能である。次に、雑音電力推定回路307が雑音電力σ2を推定する。雑音電力も伝播路利得と同様に、既知のプリアンブルを用いることにより推定可能である。雑音電力の推定は、ノードAから中継ノードRへの通信時において,またはノードBから中継ノードRへの通信時において推定する.もしくはノードAからの通信時と、ノードBからの通信時の測定結果の両方を用いてその推定精度を向上させることも可能である(ステップSc4)。電力配分算出回路308は、伝播路利得GA、GBと雑音電力σ2から電力配分係数α、βを算出し、電力制御回路313へ出力する(ステップSc5)。なお、算出の過程については後に説明する。
【0042】
前述した無線部301で受信され、信号検出回路302において検出された変調シンボルAは、等価回路304において等化処理によってフェージングの影響を除去した変調シンボルAとされ、電力制御回路313へ出力される(ステップSc6)。電力制御回路313はこの変調シンボルAに係数αの平方根を乗算することによって電力制御を行い(ステップSc7)、重畳回路306へ出力する。重畳回路306はこの変調シンボルを内部のメモリに記憶する(ステップSc8)。
【0043】
同様に、無線部301で受信され、信号検出回路302において検出された変調シンボルBは、等価回路304において等化処理によってフェージングの影響を除去した変調シンボルBとされ、電力制御回路313へ出力される(ステップSc9)。電力制御回路313はこの変調シンボルに係数βの平方根を乗算することによって電力制御を行い(ステップSc10)、重畳回路306へ出力する。重畳回路306はこの変調シンボルを内部のメモリに記憶する。
重畳回路306は、メモリ内の変調シンボル同士を加算することにより重畳し、無線部301へ出力する(ステップSc11)。無線部301は、電力時刻T3(図14)において重畳変調シンボルに共通プリアンブルを付加したものをアップコンバートし、重畳RF信号をノードAとノードBに同報通信する(ステップSc12)。係数αとβはプリアンブルに格納され、データと同時にノードAとBに対し同報通信される。
【0044】
ノードAおよびノードBの構成は前述した第1実施形態のものと同じであり(図2参照)、第1実施形態と同様の過程で変調シンボルが復調される。すなわち、ノードAは受信した重畳RF信号をダウンコンバートし、プリアンブルから取り出した電力配分係数と記憶していた自送信変調シンボルを使って、重畳変調シンボルから自分の送信成分すなわち干渉成分を除去する。これにより、所望の変調シンボルBを得ることができる。変調シンボルBは復調されパケットBを得る。ノードBも同様に、受信した重畳RF信号をダウンコンバートし、プリアンブルから取り出した電力配分係数と記憶していた自送信変調シンボルを使って、重畳変調シンボルから干渉成分を除去する。これにより、所望の変調シンボルAを得ることができる。変調シンボルAは復調されパケットAを得る。
【0045】
次に、電力配分係数α、βの算出過程を説明する。
伝搬路利得は時刻T1、T2、T3において変動がなく、全てのノードにおいて付加される雑音電力は等しいと仮定する。また、中継ノードの送信電力は1に正規化する。
変調シンボルAに与えられる電力と変調シンボルBに与えられる電力の比を
【0046】
【数2】
とすると、連立方程式
【0047】
【数3】
を解くことにより、
【0048】
【数4】
となる。AFの変調シンボルに含まれている雑音電力を考慮し、中継ノードRにおける総送信電力が1となるように正規化係数を乗算することで、αとβはそれぞれ以下のように与えられる。
【0049】
【数5】
【0050】
(第3実施形態): AF/DFハイブリッドによる変調シンボル重畳一括中継伝送
図7は、本発明の第3実施形態による無線中継システムの中継ノードRに設けられる中継装置400の構成を示すブロック図である。この図に示すように、中継装置400は、無線部401、信号検出回路402、チャネル推定回路403、復調回路404、等価回路414、誤り検出回路415、変調回路405、入力切替回路416、伝播路利得推定回路411、雑音電力推定回路407、電力配分算出回路412.電力制御回路413、重畳回路406を備えている。この構成において、無線部401、信号検出回路402、チャネル推定回路403、復調回路404、変調回路405、電力制御回路413、重畳回路406はそれぞれ、図1における各構成要素101、102、103、104、105、113、106と同様に構成され、また、等価回路414、伝播路利得推定回路411、雑音電力推定回路407、電力配分回路412はそれぞれ、図5における各構成要素304、311、307、308と同様に構成されており、従って説明は省略する。
【0051】
誤り検出回路415は、復調回路404から出力されるパケットの誤り検出を行い、誤りがあったか否かの結果を電力配分算出回路412および入力切替回路416へ出力し、また、誤りがなかった場合に、復調回路404から受けたパケットを変調回路405へ出力する。変調回路405は、そのパケットを再変調し、入力切替回路416へ出力する。入力切替回路416は、誤り検出回路415において誤りが検出された場合は等価回路414の出力を電力制御回路413へ出力し、誤りが検出されなかった場合は変調回路405の出力を電力制御回路413へ出力する。
【0052】
次に、第3実施形態の動作を図8に示すフローチャートを参照して説明する。
ノードAとBは送信したいパケットに誤り判定機能を付加し、それを受信したノードRではそのパケットの誤り判定が可能であることを前提とする。
図14の時刻T1において中継ノードRの無線部401がノードAから送信されたRF信号Aを受信し、受信したRF信号Aをダウンコンバートする(ステップSd1)。また、時刻T2において無線部401がノードBから送信されたRF信号Bを受信し、受信したRF信号Bをダウンコンバートする(ステップSd2)。伝播路利得推定回路411は伝播路利得GA、GBを推定する(ステップSd3)。また、雑音電力推定回路407は変調シンボルA、Bの雑音電力を推定する(ステップSd4)。
【0053】
無線部401において受信された変調シンボルAは信号検出回路402において検出され、復調回路404において復調される(ステップSd5)。同様に、無線部401において受信された変調シンボルBは信号検出回路402において検出され、復調回路404において復調される(ステップSd6)。そして、復調回路404において復調されたパケットA、Bについて、誤り検出回路415においてCRC(Cyclic Redundancy Check)符号によって誤り検出が行われる(ステップSd7、Sd8)。そして、その結果が“正しい”であればパケットが変調回路405において再変調され、入力切替回路416へ出力される。
【0054】
また、パケットA、Bが共に“正しい”であった場合は、電力配分算出回路412において電力配分係数α、βが算出される(ステップe1)。なお、係数α、βの算出過程については後に説明する。また、パケットAが変調回路405において再変調され(ステップe2)、再変調シンボルAが入力切替回路416を介して電力制御回路413へ入力される。電力制御回路413は再変調シンボルAに係数αの平方根を乗算することによって送信電力制御を行い(ステップe3)、重畳回路406へ出力する。重畳回路406はその変調シンボルAを内部のメモリに記憶させる(ステップe4)。同様に、パケットBが変調回路405において再変調され(ステップe5)、再変調シンボルBが入力切替回路416を介して電力制御回路413へ入力される。電力制御回路413は再変調シンボルBに係数βの平方根を乗算することによって送信電力制御を行い(ステップe6)、重畳回路406へ出力する。重畳回路406はその変調シンボルBと内部のメモリに記憶されている再変調シンボルAを加算し、無線部401へ出力する(ステップSi1)。無線部401はそのシンボルに共通プリアンブルを付加してアップコンバートし、ノードA、Bへ同時に送信する(ステップSi2)。電力配分係数α、βはプリアンブルに格納され、データと共にノードA、Bに送信される。
【0055】
次に、ステップSd7、Sd8の判断結果が、パケットAが“正しい”、パケットBが“誤り”であった場合は、ステップf1において電力配分係数α、βが算出された後、パケットAについては上記ステップe2〜e4と同じ処理が行われる(ステップf2〜f4)。一方、パケットBについては使用されない。この場合、復調する前の等価回路414において等化処理され(ステップf5)、フェージングの影響を除去した変調シンボルBが入力切替回路416を介して電力制御回路413へ入力される。電力制御回路413は再変調シンボルBに係数βの平方根を乗算することによって送信電力制御を行い(ステップf6)、重畳回路406へ出力する。重畳回路406はその変調シンボルBと内部のメモリに記憶されている再変調シンボルAを加算し、無線部401へ出力する(ステップSi1)。無線部401はそのシンボルをアップコンバートし、ノードA、Bへ送信する(ステップSi2)。
【0056】
次に、ステップSd7、Sd8の判断の結果、パケットAが“誤り”、パケットBが“正しい”であった場合、ステップg1において電力配分係数α、βが算出された後、変調シンボルAについては等価回路414から出力される変調シンボルAが入力切替回路416を介して電力制御回路413へ入力され、係数αの平方根が乗算され、重畳回路406のメモリ内に記憶される(ステップg2〜g4)。一方、パケットBは誤り検出回路415から出力され、変調回路405において再変調され(ステップg5)、入力切替回路416を介して電力制御回路413へ入力される。電力制御回路413は再変調シンボルBに係数βの平方根を乗算することによって送信電力制御を行い(ステップg6)、重畳回路406へ出力する。重畳回路406はその変調シンボルBと内部のメモリに記憶されている変調シンボルAを加算し、無線部401へ出力する(ステップeSi1)。無線部401はそのシンボルをアップコンバートし、ノードA、Bへ送信する(ステップSi2)。
【0057】
次に、ステップSd7、Sd8の判断の結果、パケットAが“誤り”、パケットBも“誤り”であった場合、ステップh1において電力配分係数α、βが算出された後、変調シンボルA、Bの双方について、等価回路414から出力される変調シンボルA、Bが入力切替回路416を介して電力制御回路413へ入力され、係数α、βの平方根が乗算され、重畳回路406のメモリ内に記憶される(ステップh2〜h6)。重畳回路406は変調シンボルA、Bを加算し、無線部401へ出力する(ステップeSi1)。無線部401はそのシンボルをアップコンバートし、ノードA、Bへ送信する(ステップSi2)。
【0058】
次に、電力配分係数α、βの算出過程を説明する。
伝搬路利得は時刻T1、T2、T3において変動がなく、全てのノードにおいて付加される雑音電力は等しいと仮定する。また、中継ノードの送信電力は1に正規化する。
ノードRにおける誤り判定結果が
(1)A:正しい B:正しい の場合
第1実施形態より
【0059】
【数6】
(2)A:正しい B:誤り の場合
【0060】
【数7】
を解くことにより、
【0061】
【数8】
を得る.中継送信電力正規化のための係数を乗算し、
【0062】
【数9】
(3)A:誤り B:正しい の場合
【0063】
【数10】
を解くことにより、
【0064】
【数11】
を得る.中継送信電力の正規化のための係数を乗算し、
【0065】
【数12】
(4)A:誤り B:誤り の場合
第2実施形態より
【0066】
【数13】
とすると、
【0067】
【数14】
と与えられる。
【0068】
(第4実施形態):AF/DFハイブリッドによる変調シンボル重畳一括中継伝送およびオーバーリーチ信号とのダイバーシチ合成
この第4実施形態による無線中継システムは、上述した第3実施形態によるシステムに、ノードAからB、ノードBからAへオーバーリーチする信号(適時聴取した直接信号)を利用した、中継信号とのダイバーシチ合成を行う構成を加えたものである。
【0069】
すなわち、この実施形態によるシステムにおける中継ノードRは図7に示す中継装置400備えており、一方、ノードA、Bは各々図9に示す送受信装置500を備えている。
送受信装置500は、無線部501、信号検出回路502、所望波抽出回路503、復調回路504、出力切替回路505、チャネル推定回路506、信号記憶回路507、変調回路508、出力切替回路509、中継送信電力推定回路511、電力制御回路512、出力切替回路515、中継状況判定回路516、合成回路517を備えている。この構成において、無線部501、信号検出回路502、所望波抽出回路503、復調回路504、出力切替回路505、チャネル推定回路506、信号記憶回路507、変調回路508、出力切替回路509、中継送信電力推定回路511、電力制御回路512はそれぞれ前述した図2の各構成要素201〜209、211、212と同様に構成されており、従って説明を省略する。
【0070】
出力切替回路515は、信号検出回路502から入力された変調シンボルの出力先を、信号条件により切り替える。例えば、適時聴取した直接信号か、または中継ノードRから受信した中継信号かに応じて切り替える。適時聴取した直接信号の場合は合成回路517に出力し、中継信号の場合は所望波抽出回路503に向けて出力する。
【0071】
合成回路517は、適時聴取した直接信号が所望信号である場合には、所望波抽出回路503から出力される所望信号と、適時聴取した直接信号とを、重み係数を用いて最大比合成する。この重み係数は中継状況判定回路516から出力される中継信号の正誤条件である中継状況の情報と、チャネル推定回路506から出力される伝搬路係数の情報とを基に決定される。この最大比合成に用いる重みは、中継状況により切り替えられるが、DF方式を用いた場合は、その信号に対する中継ノードRにおける雑音電力を考慮する必要がない。しかし中継信号にAF方式を用いた信号が多重されている場合は、その雑音電力を考慮した最大比合成に用いる重みを使用する(この重み係数の決定方法の詳細については後述する。)。一方、合成回路517は、適時聴取した直接信号が所望信号以外である場合には、適時聴取した直接信号を、復調回路504に出力する。
【0072】
中継状況判定回路516は、中継ノードRから受信した中継信号の中継状況、すなわち、中継信号の誤り検出結果に応じて選択された方式(DF方式またはAF方式)を判定し、判定結果を合成回路517に出力する。
次に、この第4実施形態による無線中継システムにおいて、中継ノードRの動作は前述した通り(図8の説明参照)であるので、以下、ノードA、Bの送受信装置500の動作を説明する。
【0073】
ノードAとノードBは、受信した中継信号から、タイムスロットT1とT2においてそれぞれ送信した自送信信号パケットA、パケットBを減算し、ノードAにおいてはパケットBの変調シンボルを、ノードBにおいてはパケットAの変調シンボルを取得する。
【0074】
その後、ノードBはタイムスロットT1において適時聴取したパケットAの変調シンボルとタイムスロットT3において受信し抽出したパケットAの変調シンボルを最大比合成する。
【0075】
その際、中継されてきたシンボルに対する重み係数w2は、中継ノードRにおける中継状況、すなわち中継信号の正誤判定状況によって使い分ける。各無線ノードにおいて付加される雑音の電力が同一で、かつAGCが理想的に動作しているものとし、ノードAからノードBへの伝搬路におけるフェージングの変動を表す係数をHAB’とする.この時,伝搬路利得,中継局における電力制御係数及びフェージング係数を考慮した実効的な伝搬路係数は,それぞれHAB=(GAB)−1/2HAB’,HAR=(GA)−1/2HAR’,HBR=(α/βGB)−1/2HBR’,HRB=(αGB)−1/2HRB’と与えられる.ここでGABは無線ノードAからBへの伝搬路利得である.これらより,重み係数w2は以下のように表わされる。
【0076】
パケットAもパケットBも正しく復調できた場合は、重み係数w2は、
w2=HRB*、とする。ここで、HRB*は、HRBの複素共役行列を示す。
【0077】
パケットAは正しく、パケットBは誤って復調した場合は、重み係数w2は、
w2=|HBR|2・HRB*/(|HBR|2+|HRB|2)、とする。
【0078】
パケットAは誤り、パケットBは正しく復調した場合は、重み係数w2は、
w2=|HAR|2・HRB*/(|HAR|2+|HRB|2)、とする。
【0079】
パケットAもパケットBも誤って復調した場合は、重み係数w2は、
w2=|HAR|2・|HBR|2・HRB*/(|HAR|2|HBR|2+|HBR|2|HRB|2+|HRB|2|HAR|2)、とする。
【0080】
適時聴取したシンボルに対する重み係数w1は中継ノードRの正誤状況に依らず、常に
w1=HAB*、である。
【0081】
そして、最大比合成により所望シンボルのSNR(Signal to Noise Ratio)を改善した後に復調を行う。
【0082】
ノードAにおいては、パケットBに対して上記で説明した最大比合成を行い、パケットBのSNRを改善する。伝搬路係数をそれぞれHBA=(GAB)−1/2HBA’,HAR=(β/αGA)−1/2HAR’,HBR=(GB)−1/2HBR’,HRA=(βGA)−1/2HRA’とすると,その際の重み係数w2は以下のようになる。
【0083】
パケットAもパケットBも正しく復調できた場合は、重み係数w2は、
w2=HRA*、とする。
【0084】
パケットAは正しく、パケットBは誤って復調した場合は、重み係数w2は、
w2=|HBR|2・HRA*/(|HBR|2+|HRB|2)、とする。
【0085】
パケットAは誤り、パケットBは正しく復調した場合は、重み係数w2は、
w2=|HAR|2・HRA*/(|HAR|2+|HRB|2)、とする。
【0086】
パケットAもパケットBも誤って復調した場合は、重み係数w2は、
w2=|HAR|2・|HBR|2・HRA*/(|HAR|2|HBR|2+|HBR|2|HRA|2+|HRA|2|HAR|2)、とする。
【0087】
適時聴取したシンボルに対する重み係数w1は中継ノードRの正誤状況に依らず、常に
w1=HBA*、である。
【0088】
このように中継ノードRの正誤判定状況により中継方法及び宛先局の合成に用いる重みを変えることにより、常に最大比合成によるダイバーシチ効果を実現することができる。
図10は、上述した送受信装置500の動作を説明するためのフローチャートである。以下、このフローチャートに沿って送受信装置500の動作を説明する。
ノードA(またはノードB)の無線部501が、生起ノードからの信号をノードRが受信するのと同じタイミングで、宛先局までオーバーリーチする信号を直接受信により適時聴取する(ステップSj1)。合成回路517が、この適時聴取した受信シンボルを記憶する(ステップSj2)。さらに、無線部501が、ノードRから中継信号として送信される一括送信信号を受信する(ステップSj3)。
【0089】
この中継信号は、複数の生起局(例えば、ノードAとノードB)から中継ノードRが受信した信号がアナログ多重化されたものであるため、送受信装置内の所望波抽出回路503では、事前に取得しておいた所望信号以外の信号のレプリカ、すなわち、自局が送信した信号のレプリカを中継信号から減算することにより、所望波の変調シンボルを抽出する(ステップSj4)。なお、所望信号以外の信号は、生起局が最初に中継局に対して送信する際に適時聴取により取得するか、自分の送信信号を記憶しておくことで取得する。もしくはその両方を使い取得する。
【0090】
そして、中継状況判定回路516が、ノードRにおける中継状況を判定する(ステップSj5)。この中継状況は、パケットがDF方式により復調されたか、または、パケットがAF方式により等化処理されたかの情報であり、ノードRから送信されるプリアンブル信号に含まれる。また、合成回路517において、中継状況の判定結果を基に、伝搬路係数から合成重みを算出する(ステップSj6)。
【0091】
送受信局(ノードAおよびノードB)では、合成回路517が、ノードRから中継されてきた所望信号の変調シンボルと、オーバーリーチした所望信号の変調シンボルとを最大比合成する(ステップSj7)。最大比合成に用いる重みは、前述した中継状況により切り替える。そして、復調回路504が、合成された変調シンボルを復調する(ステップSj8)。
【0092】
このように、本実施形態の送受信装置500においては、中継信号から抽出した所望信号と、オーバーリーチした所望信号を最大比合成するので、中継ノードRで受信した信号に誤りがある場合においても、オーバーリーチ信号を利用したダイバーシチ効果を実現することが可能となり、伝送品質の改善が達成できる。
なお、上記第4実施形態は、第3実施形態にオーバーリーチ信号の処理を加えたものであるが、前述した第1、第2実施形態にそれぞれオーバーリーチ信号の処理を加えてもよいことは勿論である。
以上のように、変調シンボル重畳による一括中継伝送を用いた双方向マルチホップ通信において本発明を適用することで、送信ノードから中継ノードに送信されてくる双方向の信号の受信SNRに不均衡が生じた場合においても、中継ノードにおいて重畳させる変調シンボルの送信電力を適応的に制御することにより、中継した先での最終的な所望信号のSNRが等しくすることが可能になる。これにより、システムスループットの向上が期待できる。
【0093】
第4実施形態について、計算機シミュレーションにより評価する。各リンクの物理層にはIEEE802.11a規格を用いた。シミュレーション条件を図11に示す。各伝搬路環境は独立のレイリーフェージングのモデルとし、距離の3.5乗に比例して減衰するものとする。各ノードにおいて付加される白色雑音の電力は一定で同一であるとする。各ノードの送信電力は一定で同一であるものとする。伝搬減衰定数αはα=3.5とした。この時の中継ノードの位置によるパケット誤り率を図12に示す。
【0094】
この図において、従来法とはDF/AFハイブリッド方式のことをいう。また、Packetα、Packetβとは、それぞれノードAから中継ノードRを介してノードBへ」送信したいパケットと、逆に、ノードBから中継ノードRを介してノードAへ送信したいパケットである。パラメータは同じであるが通るリンクの順番が異なる。Packetαは、A→R→Bの順に伝送されるが、Packetβは、B→R→Aの順に伝送される。図12においては、中継ノードの位置dによりPacketα、Packetβの特性が変わってくるため、それを示すために分けて示している。
【0095】
また、図12において、横軸dはノードRの位置を示している。各ノードの送信電力は中継ノードRがd=1の位置(ノードAとノードBの中間点)にある時に中継ノードにおける受信Eb/N0がEb/N0=24dBとなるように規定している。ノードAからノードB及びノードBからノードAへのオーバーリーチ信号の伝搬距離は、中継ノードRが中間点にある時の各ノードからノードRへそれぞれ伝播される信号の伝搬距離に比べて2倍になる。そのため、ノードAからノードB及びノードBからノードAへの伝搬路利得GAB、GBAは、ノードRが中間点に配置された時のノードAからノードR及びノードBからノードRへの伝搬路利得と比べて2の3.5乗分の1となる。すなわち、オーバーリーチ信号のノードA、Bにおける受信Eb/N0は、Eb/N0=13.5dBとなる。中継ノードRの位置を固定の送受信局の間で動かして評価することで、2つの伝搬路の不均衡を表現し、その時のPER(Packet Error Rate)を評価している。本発明により、従来法に比べてパケットAとBの誤り率の差が、中間点以外のd=0.2〜1.8の間で縮まっていることがわかる。伝送品質の不均衡が改善していることを意味する。従来法ではPacketαとPacketβの特性差が大きいのに対し、提案法では、その特性差が小さくなっている。
【0096】
また、この時のシステムスループットを図13に示す。システムスループットとは、PacketαとPacketβによりどれだけの情報が単位時間当たりシステム上をながれたかを示しているので、PacketαとPacketβを加算したものとなっている。そのため、αとβを分けていない。図12と同様に、中間点以外のd=0.2〜1.8の間でシステムスループットが改善していることがわかる。
【0097】
なお、図1、図2、図5、図7、図9における各部の処理(アナログ処理を除く)を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の機能を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
【0098】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0099】
101、301、401…無線部
102、302、402…信号検出回路
103、303、403…チャンネル推定回路
104、404…復調回路
105、405…変調回路
106、306、406…重畳回路
111、311、411…伝播路利得推定回路
112、308、412…電力配分算出回路
113、313、413…電力制御回路
201、501…無線部
202、502…信号検出回路
203、503…所望波抽出回路
204、504…復調回路
205、505…出力切替回路
206、506…チャンネル推定回路
207、507…信号記憶回路
208、508…変調回路
209、509…出力切替回路
211、511…中継送信電力推定回路
212、512…電力制御回路
304、414…等価回路
307、407…雑音電力推定回路
415…誤り検出回路
416…入力切替回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチホップ無線通信を行う際の無線中継システム、それに応じた無線中継方法、それを実現するための中継局に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アドホックネットワークなどのマルチホップ通信では、使用可能チャネルが1つしかなく、かつ2つの通信フローが1つの中継ノード(中継局)を共有する時、中継ノードがそれぞれの通信を交互に中継するため、中継ノードがシステムスループットのボトルネックとなる。それを解決する手段として、中継ノードが各通信フローのアナログ信号である各変調シンボルを加算により重ね合わせ、宛先局に重ね合わせたシンボルを一括伝送する変調シンボル重畳による一括中継伝送が提案されている(非特許文献1参照)。このアナログ変調信号多重化を用いた中継ノードにおける処理としては、生起局から受信した信号を一度復調し、再変調してから多重化して中継するDF(Decode and Forward)方式によるアナログ変調信号多重化と、受信した信号をそのまま増幅してから多重化して中継するAF(Amplify and Forward)方式によるアナログ変調信号多重化がある。
以下では、DF方式の具体例として、変調シンボル重畳を用いた一括中継伝送が適用可能である代表的なマルチホップ無線トポロジである双方向のAlice & Bobトポロジを挙げて、従来の変調シンボル重畳一括伝送技術を説明する。
【0003】
< Alice & Bobトポロジ>
Alice & Bobトポロジの概要図を図14に示す。このトポロジは両端の送受信ノードA、B(送受信局)が互いに中継ノードRを介して双方向の通信を行うものである。各ノードA、Bの送信タイミングはタイムスロットにより区切られていて、互いに干渉することがないことを前提とする。この時の通信の手順を説明する。なお、パケットとはあるノードが持つビット情報のことであり、変調シンボルとは、ビット情報をベースバンドで変調(マッピング)した後の信号のことであり、RF信号とは、変調シンボルをRF(Radio Fre‐quency)帯にアップコンバートした信号である。
【0004】
○ 時刻T1において、ノードAがパケットAのRF信号AをノードRに送信する.同時に変調シンボルAを記憶する。ノードRはRF信号Aを受信・復調し、パケットAを記憶する。
○ 時刻T2において、ノードBがパケットBのRF信号BをノードRに送信する。同時に変調シンボルBを記憶する。ノードRはRF信号Bを受信・復調し、パケットBを記憶する。
○ 時刻T3において、ノードRはパケットAとBを変調し、2つの変調シンボルを1:1の割合で加算することにより重畳して、重畳RF信号C(「A+B」)を生成する。その後アップコンバートし重畳RF信号CをノードAとBに同報送信を行う。同報送信とは、ヘッダ情報の宛先局として複数のノードを指定することにより、無線の同報性を利用して同時に同じ情報を複数の宛先局に対して送信することである。RF信号Cを受信したノードAは、RF信号Cをダウンコンバートし(AGCによる出力レベルの調整も含む)、重畳変調シンボルCを得る。次に、記憶しておいた変調シンボルAを変調シンボルCから減算することにより、変調シンボルBを得る。これを復調し、所望のパケットBを得ることができる。ノードBも同様に、RF信号Cを受信し、ダウンコンバートした変調シンボルCから、記憶しておいた変調シンボルBを減算することにより変調シンボルAを得る。これを復調し、所望のパケットAを得ることができる。
上記手順を経ることにより、ノードAとBの双方向の通信が完了する。必要なタイムスロット数は3である。
【0005】
図15は、上述したDF方式を用いた無線中継システムの中継ノード内に設けられる中継装置の構成を示す概略ブロック図である。この図に示すように、中継装置10は、無線部11、信号検出回路12、チャネル推定回路13、復調回路14、変調回路15、重畳回路16を備えている。
無線部11は、送受信する信号を所望の周波数の信号にアップコンバート、またダウンコンバートする回路であり、同期回路、A/D(Analog to Digital)変換器、D/A(Digital to Analog)変換器を有している。この無線部11は、入力される信号を送信すると共に、受信信号から所望の信号を検出し出力する。信号検出回路12は、受信信号から変調シンボル信号を検出し出力する。チャネル推定回路13は、送受信ノードと中継ノードとの間の伝送路の状態(伝搬路係数)を推定する。復調回路14は、信号検出回路12から出力される変調シンボルを復調する。なお、復調回路14においては、変調シンボル信号が誤り訂正符号化された信号である場合は、誤り訂正復号を行う。変調回路15は、復調回路14から入力される送信データの信号を予め定められた方式を用いて変調し、変調シンボルを生成する。なお、変調回路15においては、誤り訂正符号化を行う場合には、この誤り訂正符号化処理も行う。重畳回路16は、変調回路15で生成された変調シンボルを記憶しておき、最終的に全てを足し合わせて合成し、一括送信する。
【0006】
図16は上述したノードA、Bに設けられた送受信装置20の構成を示すブロック図である。この送受信装置20は、無線部21、信号検出回路22、所望波抽出回路23、復調回路24、出力切替回路25、チャネル推定回路26、信号記憶回路27、変調回路28、出力切替回路29を備えている。
無線部21は、送受信する信号を所望の周波数の信号にアップコンバート、またダウンコンバートする回路であり、同期回路、A/D変換器、D/A変換器を有している。この無線部21は、入力される信号を送信すると共に、受信信号から所望の信号を検出し出力する。信号検出回路22は、受信信号から所望の変調シンボルの信号を検出し出力する。チャネル推定回路26は、中継ノードと自ノード、および生起ノードと自ノードとの間の伝送路の状態(伝搬路係数)を推定する。この伝搬路係数は、所望波抽出回路23に出力される。所望波抽出回路23は、信号検出回路12から入力される信号(中継ノードから受信した多重化信号)から、所望信号以外のシンボルを減算して除去し、所望信号の変調シンボルの信号を抽出する。この所望波抽出回路23において、所望信号を抽出する際には、チャネル推定回路26から入力される伝搬路係数が、重み係数として使用される。
【0007】
所望波抽出回路23で抽出された所望信号の変調シンボルは、復調回路24へ入力される。復調回路24は、所望波抽出回路23から入力される変調シンボルを復調する。この復調の際に、シンボル信号が誤り訂正符号化されている場合は、誤り訂正復号を行う。出力切替回路25は、復調した信号を所望信号以外の信号として記憶する場合、入力信号を信号記憶回路27に出力し、自ノードの処理で用いる場合、入力信号を出力信号として出力する。信号記憶回路27は、予め取得した所望信号以外の信号(例えば、適時聴取した所望信号以外の直接信号)、および自ノードが送信する送信データを、ビット信号として記憶する。
【0008】
変調回路28は、信号記憶回路27から入力される信号をシンボル信号に変調する。この場合、変調する信号に誤り訂正符号化を行う場合は、この誤り訂正符号化処理も行う。出力切替回路29は、変調回路28から入力した変調シンボル信号の出力先を切り替える回路であり、所望信号以外の信号として、所望波抽出回路23に出力するか、または、送信データとして、無線部21に出力する。以上がDF方式の詳細である。
次に、AF方式による変調シンボル重畳を用いたAlice & Bobトポロジにおける一括伝送の手順を以下に説明する.
【0009】
○ 時刻T1において、ノードAがパケットAのRF信号AをノードRに送信する。同時に変調シンボルAを記憶する。ノードRはRF信号Aを受信・ダウンコンバートし、変調シンボルAを記憶する。
○ 時刻T2において、ノードBがパケットBのRF信号BをノードRに送信する。同時に変調シンボルBを記憶する。ノードRはRF信号Bを受信・ダウンコンバートし、変調シンボルBを記憶する。
○ 時刻T3において、ノードRは記憶しておいた変調シンボルAとBを1:1の割合で加算することにより重畳する。その後アップコンバートし重畳RF信号CをノードAとBに同報送信を行う。RF信号Cを受信したノードAは、RF信号Cをダウンコンバートし、変調シンボルCを得る。記憶しておいた変調シンボルAを変調シンボルCから減算することにより、変調シンボルBを得る。これを復調し、所望のパケットBを得ることができる。ノードBも同様に、RF信号Cを受信し、ダウンコンバートした後変調シンボルCから、記憶しておいた変調シンボルBを減算することにより変調シンボルAを得る。これを復調し、所望のパケットAを得ることができる。
【0010】
図17は、上述したAF方式による無線中継システムの中継ノードR内の中継装置の構成を示す概略ブロック図である。この図に示すように、中継装置30は、無線部31、信号検出回路32、信号記憶回路33、重畳回路34を備えている。無線部31は、送受信する信号を所望の周波数の信号にアップコンバート、またダウンコンバートする回路であり、同期回路、A/D変換器、D/A変換器を有している。この無線部31は、入力される信号を送信すると共に、受信信号から所望の信号を検出し出力する。信号検出回路32は、受信信号から所望の変調シンボルの信号を検出し出力する。信号記憶回路33は、信号検出回路32から出力される変調シンボルの信号を記憶する。重畳回路34は、信号記憶回路33に記憶された送受信局から受信した各変調シンボルを、足し合わせて合成し、一括送信する。
【0011】
ところで、DF方式による変調シンボル重畳は、時刻T1とT2における中継ノードRでの変調シンボルAの復調時に判定誤りが発生した場合、その先のノードRから宛先ノードBとAへの通信までノードRでの判定誤りが伝搬し、必ず判定誤りが発生するが、中継ノードRの復調が成功した場合は、変調シンボルAとBに付加された雑音を除去することができるため、その先の伝送品質がAF方式に比べて良好である。AF方式による変調シンボル重畳は、ノードRにおいて復調していないため雑音を除去することはできないが、判定誤り伝搬も発生しない。しかしながら、シンボルの電力増幅時にノードRで付加された雑音も同時に増幅してしまうため、End-to-endの通信品質が中継の度に劣化する。
【0012】
送信パケットに誤り判定符号等による誤り判定機能を持たせ、中継ノードRにおいて復調したパケットが誤っているかどうかが判定可能な時は、パケットの誤り判定結果により、ノードRが重畳するシンボルを再生した変調シンボルと非再生の変調シンボルで切り替える,DF方式とAF方式のハイブリッド変調シンボル重畳も可能である。ハイブリッド変調シンボル重畳は、ノードRでの復調の結果のパケットが誤りであった場合判定誤り伝搬を防止するために復調する前の変調シンボルを記憶しておく。パケットが正しかった場合は復調結果のパケットを記憶しておく。そして、重畳時には、記憶してあるパケットを変調器に通して再変調した変調シンボルを重畳する。パケットが誤っていた場合は、復調する前の変調シンボルを記憶しておき、重畳時にはその変調シンボルを読みだして重畳する。
【0013】
上述したハイブリッド変調方式の中継ノードのブロック回路図を図18に示す。ノードA、Bの送受信装置ブロック回路図はAF方式、DF方式と同様である(図16参照)。
図18に示すように、中継装置40は、無線部41、信号検出回路42、復調回路43、チャネル推定回路44、等化回路45、誤り検出回路46、変調回路47、入力切替回路48、重畳回路49を備えている。これらの構成において、無線部41、信号検出回路42、復調回路43、チャネル推定回路44、変調回路47は図15における構成要素11、12、14、13、15と同様の構成であるので説明を省略する。
【0014】
等化回路45は、信号検出回路42により検出した変調シンボルに対して等化処理を行う。等化回路45により等化処理された変調シンボルは、入力切替回路48に出力される。誤り検出回路46は、復調回路43により復調したパケットについて、パケット内の誤りビットの存在を検出する。誤り検出回路46において誤りがないと判定された場合は、そのパケットのビット信号を変調回路47に出力する。また、誤り検出の結果を入力切替回路48に通知する。入力切替回路48は、誤り検出回路46の検出結果を受け、誤りがあった場合は変調回路47の出力を、誤りがなかった場合は等価回路45の出力を選択し、重畳回路49へ出力する。重畳回路49は、多重化メモリを有しており、入力切替回路48から出力される信号を記憶する。そして、誤り検出回路46における誤り検出結果に誤りがない場合において、変調回路47により変調されたDF方式の中継信号と、誤り検出回路46における誤り検出結果に誤りがある場合において、等化回路105により等化処理されたAF方式の中継信号とを足し合わせ、一つのアナログ多重化信号に合成する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】原田諭,宮本伸一,三瓶政一,“双方向トラヒックの一括伝送方式を適用したマルチホップ無線ネットワークの伝送特性に関する検討”,信学技報MoMuC2006-82.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
AF方式による変調シンボル重畳一括中継伝送と、AF方式の要素を持つAF・DFハイブリッドによる変調シンボル重畳一括中継伝送は、ノードAとBの送信電力が常に等しいとしたとき、パケットAとBの中継ノードRでの受信SNRが等しい場合、すなわち、ノードAからノードR間の伝搬路利得をGA、ノードBからノードR間の伝搬路利得をGBとすると、GAとGBが等しい場合に、システム全体としてバランスの取れた最も良好な伝送品質を達成する。どちらかの伝搬路利得が劣化もしくは改善した場合すなわち伝搬路利得の不均衡が発生した場合、相対的に伝搬路利得の低い伝搬路を2ホップ目とするパケットの伝送品質が、逆方向の伝搬路利得が高い伝搬路を2ホップ目とするパケットに比べて劣化し、各パケットの伝送品質にも不均衡が発生する。伝送品質が相対的に劣悪なパケットの影響により、トータルスループット特性を低下させる問題がある。
また、DF方式による変調シンボル重畳一括中継伝送の場合は、伝送品質の不均衡は発生しないが、伝搬路利得の低い伝搬路が双方のパケット伝送品質のボトルネックとなる。これにより全体の伝送品質が急激に悪化しトータルスループットがAF方式同様に低下する問題がある。
【0017】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、送信ノードから中継ノードに送信されてくる双方向の信号の受信SNRに不均衡が生じた場合においても、中継した先での最終的な所望信号のSNRを等しくすることができ、これにより、トータルスループットの向上を図ることができる無線中継システム、無線中継方法、中継局(中継ノード)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1に記載された発明は、複数の送受信局と中継局から構成され、前記中継局が前記各送受信局から受けた信号に一定の処理をした後多重化し、前記各送受信局へ一括送信する無線中継システムにおいて、前記中継局は、前記各送受信局と自中継局との間の伝送路の各伝送路利得を各々推定し、前記各伝送路利得から、前記各伝送路の不均衡を抑制する電力配分係数を決定し、前記電力配分係数に基づいて各送受信局へ送信する信号を制御した後、多重化し、前記送受信局は、所望信号以外の信号を予め取得し、前記中継局から受信した信号から前記予め取得した信号を減算することにより所望信号を得ることを特徴とする無線中継システムである。
【0019】
請求項2に記載された発明は、複数の送受信局と中継局から構成され、前記中継局が、前記送受信局から受信した信号に一定の処理をした後、多重化して前記各送受信局へ一括送信し、前記送受信局が、所望信号以外の信号を予め取得し、前記中継局から受信した信号から前記予め取得した信号を減算することで所望信号を得る無線中継システムにおいて、前記中継局は、前記送受信局から受信した信号から前記各送受信局と自中継局間の伝送路の各伝送路利得を推定する伝送路利得推定手段と、前記各伝送路利得から、前記各伝送路の不均衡を抑制する電力配分係数を決定する電力配分算出手段と、送信する信号を前記電力配分係数に基づいて制御する電力制御手段と、前記電力配分係数に基づく制御が行われた信号を加算して多重化する重畳手段と、前記多重化した信号を前記送受信局へ一括送信する無線部とを備えることを特徴とする無線中継システムである。
【0020】
請求項3に記載された発明は、請求項2に記載の無線中継システムにおいて、前記中継局は、前記送受信局から受信した信号から抽出された変調シンボルを伝送路状態に応じて復調する復調手段と、前記復調された信号を再変調し、前記電力制御手段へ出力する変調手段とを具備することを特徴とする。
請求項4に記載された発明は、請求項2に記載の無線中継システムにおいて、前記中継局は、前記送受信局から受信した信号から抽出された変調シンボルを伝送路状態に応じて等価処理し、前記電力制御手段へ出力する等価手段と、前記受信信号毎の雑音電力を推定する雑音電力推定手段とを具備し、前記電力配分算出手段は、前記伝送路利得および前記雑音電力に基づいて電力配分係数を決定することを特徴とする。
請求項5に記載された発明は、請求項2に記載の無線中継システムにおいて、前記中継局は、前記送受信局から受信した信号から抽出された前記変調シンボルを伝送路状態に応じて復調する復調手段と、前記復調回路で復調された信号の誤り検出を行う誤り検出手段と、前記復調された信号を再変調する変調手段と、前記送受信局から受信した信号から抽出された前記変調シンボルを伝送路状態に応じて等価処理する等価手段と、前記誤り検出状態に応じて前記変調手段からの信号と前記等価回手段からの信号とを切り換えて前記電力制御手段へ出力する入力切替手段と、前記送受信局から受信した信号毎の雑音電力を推定する雑音電力推定手段とを具備し、前記電力配分算出手段は、前記伝送路利得および前記雑音電力に基づいて電力配分係数を決定することを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載された発明は、請求項3または請求項5に記載の無線中継システムにおいて、前記中継局は、前記復調手段、復調処理に加えて誤り訂正復号処理を行い、前記変調手段が、変調処理に加えて誤り訂正符号化処理を行うことを特徴とする。
請求項7に記載された発明は、請求項1〜請求項6のいずれかの項に記載の無線中継システムにおいて、前記送受信局は、前記中継局から送信された多重化信号を受信する受信手段と、前記受信手段によって受信された信号から前記電力配分係数を推定する送信電力推定手段と、前記受信手段によって受信された多重化信号から、前記送信電力推定手段の出力および予め取得した所望信号に基づいて所望信号以外の信号を除き、前記所望信号を抽出する所望波抽出手段と、前記所望波抽出手段によって抽出された信号を復調する復調手段とを具備することを特徴とする。
【0022】
請求項8に記載された発明は、請求項1〜請求項6のいずれかの項に記載の無線中継システムにおいて、前記送受信局は、前記所望信号を送信する送受信局から直接受信した直接信号と、前記中継局から受信した信号から前記予め取得した信号を減算することで得た所望信号とを最大比合成する合成手段と、前記合成手段の出力を復調する復調手段と、を具備することを特徴とする。
請求項9に記載された発明は、複数の送受信局と中継局から構成され、前記中継局が前記各送受信局から受けた信号に一定の処理をした後多重化し、前記各送受信局へ一括送信する無線中継システムにおいて、前記中継局が、前記各送受信局と自中継局との間の各伝送路の伝送路利得を各々推定する伝送路利得推定処理と、前記各伝送路利得から、前記各伝送路の不均衡を抑制する電力配分係数を決定する電力配分係数決定処理と、前記電力配分係数に基づいて各送受信局へ送信する信号を制御する電力制御処理と、前記電力制御が行われた信号を多重化する多重化処理とを有し、前記送受信局が、所望信号以外の信号を予め取得し、前記中継局から受信した信号から前記予め取得した信号を減算することにより所望信号を得る所望信号抽出処理を有することを特徴とする無線中継方法である。
【0023】
請求項10に記載された発明は、請求項9に記載の無線中継方法において、前記中継局が、前記送受信局から受信した信号から抽出された前記変調シンボルを伝送路状態に応じて復調し、前記復調された信号を再変調し、前記電力制御処理において前記再変調された信号を前記電力配分係数に基づいて制御することを特徴とする。
請求項11に記載された発明は、請求項9に記載の無線中継方法において、前記中継局が、前記送受信局から受信した信号毎の雑音電力を推定し、前記電力配分算出処理において、前記伝送路利得および前記雑音電力に基づいて電力配分係数を決定し、前記送受信局から受信した信号から抽出された前記変調シンボルを伝送路状態に応じて等価処理し、前記電力制御処理において前記等価処理された信号を前記電力配分係数に基づいて制御することを特徴とする。
【0024】
請求項12に記載された発明は、請求項9に記載の無線中継方法において、前記中継局は、前記送受信局から受信した信号毎の雑音電力を推定し、前記電力配分算出処理において、前記伝送路利得および前記雑音電力に基づいて電力配分係数を決定し、前記送受信局から受信した信号から抽出された前記変調シンボルを伝送路状態に応じて復調し、前記復調された信号を再変調し、前記送受信局から受信した信号から抽出された前記変調シンボルを伝送路状態に応じて等価処理し、前記復調された信号の誤り検出を行い、前記誤り検出の結果に応じて前記再変調された信号と前記等価処理された信号を切り替え、前記電力制御処理において前記切り替えによって得られた信号を前記電力配分係数に基づいて制御することを特徴とする。
【0025】
請求項13に記載された発明は、請求項10または請求項12に記載の無線中継方法において、前記中継局が、前記復調処理において復調処理と共に誤り訂正復号処理を行い、前記変調処理において変調処理と共に誤り訂正符号化処理を行うことを特徴とする。
請求項14に記載された発明は、請求項9〜請求項13のいずれかの項に記載の無線中継方法において、前記送受信局が、前記中継局から送信された多重化信号を受信する受信処理と、前記受信処理によって受信された信号から前記電力配分係数を推定する送信電力推定処理と、前記受信処理によって受信された多重化信号から、前記電力配分係数および予め取得した所望信号に基づいて所望信号以外の信号を除き、前記所望信号を抽出する所望波抽出処理と、前記所望波抽出処理によって抽出された信号を復調する復調処理とを有することを特徴とする。
【0026】
請求項15に記載された発明は、請求項9〜請求項14のいずれかの項に記載の無線中継方法において、前記送受信局は、前記所望信号を送信する送受信局から直接受信した直接信号と、前記中継局から受信した信号から前記予め取得した信号を減算することで得た所望信号とを最大比合成する合成処理と、前記合成処理が行われた信号を復調する復調処理とを有することを特徴とする。
請求項16に記載された発明は、複数の送受信局と無線通信による中継を行う中継局であって、前記各送受信局と自中継局との間の各伝送路の伝送路利得を各々推定し、前記各伝送路利得から、前記各伝送路の不均衡を抑制する電力配分係数を決定し、前記電力配分係数に基づいて各送受信局へ送信する信号を制御した後、多重化し、該多重化した信号を前記各送受信局へ一括送信することを特徴とする中継局である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、送信ノードから中継ノードに送信されてくる双方向の信号の受信SNRに不均衡が生じた場合においても、中継ノードにおいて重畳させる変調シンボルの送信電力を適応的に制御することにより、中継した先での最終的な所望信号のSNRを等しくすることが可能になる。これにより、システムスループットの向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態による中継装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による送受信装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す中継装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】図2に示す送受信装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態による中継装置の構成を示すブロック図である。
【図6】図5に示す中継装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】本発明の第3の実施形態による中継装置の構成を示すブロック図である。
【図8】図7に示す中継装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の第4の実施形態による送受信装置の構成を示すブロック図である。
【図10】図9に示す送受信装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図11】第4の実施形態の効果を説明するための図であり、計算機シミュレーションの条件を記載した図である。
【図12】第4の実施形態の効果を説明するための図であり、中継ノードの位置によるパケット誤り率を示す図である。
【図13】第4の実施形態の効果を説明するための図であり、システムスループットを示す図である。
【図14】無線中継システムの全体構成を示す図である。
【図15】従来の無線中継システムにおけるDF方式の中継装置の構成を示す図である。
【図16】従来の無線中継システムにおける送受信装置の構成を示す図である。
【図17】従来の無線中継システムにおけるAF方式の中継装置の構成を示す図である。
【図18】従来の無線中継システムにおけるDF/AFハイブリッド方式の中継装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明では、図14における中継ノードRにおいて、ノードAとノードR、ノードBとノードRの双方の伝搬路利得と、ノードA、Bにおいて付加される雑音電力を考慮することにより、最終的にノードAとBにおける所望変調シンボルのSNRが均等になるように、中継ノードRで各変調シンボルに与える送信電力を適応的に制御する。すなわち、2ホップ目の伝搬路利得が小さい方の変調パケットに中継ノードRが与える送信電力を大きくする。中継ノードRのトータルの送信電力が増幅器の性能等により制限されている場合は、2ホップ目の伝搬路利得が小さい方の変調パケットの送信電力を大きくする一方、2ホップ目の伝搬路利得が大きい方の変調パケットの送信電力を小さくする。これにより、伝送品質の不均衡を抑制することが可能になり、従来法に比べてトータルスループット特性の向上が実現可能となる。
【0030】
以下、実施形態について詳述する。
(第1実施形態):DF方式による変調シンボル重畳一括中継伝送の場合
図1は、本発明の第1実施形態による無線中継システムの中継ノードRに設けられる中継装置100の構成を示すブロック図である。この図に示すように、中継装置100は、無線部101、信号検出回路102、チャネル推定回路103、復調回路104、変調回路105、重畳回路106、伝播路利得推定回路111、電力配分算出回路112、電力制御回路113を備えている。この構成において、無線部101、信号検出回路102、チャネル推定回路103、復調回路104、変調回路105、重畳回路106はそれぞれ前述した図15の各構成要素11〜16と同様に構成されており、従って説明は省略する。
【0031】
図において、伝播路利得制御回路111は、各伝播路の利得を推定し、電力配分算出回路112へ出力する。電力配分算出回路112は、伝播路利得推定回路111から出力された伝播路利得から重畳させる各変調シンボルに割り当てるべき電力を算出し、電力制御回路113へ出力する。電力制御回路113は、電力配分算出回路112から入力された配分電力値に基づいて変調回路105から出力される変調シンボルを制御し、重畳回路106へ出力する。重畳回路106は、電力制御回路113から出力される変調シンボルを記憶しておき、最終的に全てを足し合わせて合成し、一括送信する。
【0032】
図2は本発明の第1実施形態による無線中継システムの送受信ノードA、Bに設けられる送受信装置200の構成を示すブロック図である。この図に示すように、送受信装置200は、無線部201、信号検出回路202、所望波抽出回路203、復調回路204、出力切替回路205、チャネル推定回路206、信号記憶回路207、変調回路208、出力切替回路209、中継送信電力推定回路211、電力制御回路212を備えている。この構成において、無線部201、信号検出回路202、所望波抽出回路203、復調回路204、出力切替回路205、チャネル推定回路206、信号記憶回路207、変調回路208、出力切替回路209はそれぞれ前述した図16の各構成要素21〜29と同様に構成されており、従って説明は省略する。
【0033】
図において、中継送信電力推定回路211は、中継ノードRにおいて使用された送信電力係数を推定し、推定結果を電力制御回路212へ出力する。電力制御回路212は、中継送信電力推定回路211から出力される送信電力係数に基づいて自送信変調シンボルのレプリカの電力制御を行い、所望波抽出回路203へ出力する。所望波抽出回路203は、電力制御回路212から出力される自送信変調シンボルのレプリカを使って、重畳変調シンボルから自分の送信成分すなわち干渉成分を除去する。
【0034】
次に、上述した第1実施形態を、Alice & Bobトポロジ(図14)に適用した場合について、図3、図4に示すフローチャートを参照して詳述する。
図14における時刻T1において、中継ノードRの無線部101が送受信ノードAから送信されたRF信号Aを受信し、DC(ダウンコンバート)を行う(図3のステップSa1)。また、時刻T2において、中継ノードRの無線部101はノードBから送信されたRF信号Bを受信し、DCを行う(ステップSa2)。また、ノードRの伝播路利得推定回路111はノードAからノードRへの伝搬路利得GAを推定すると共に、ノードBからノードRへの伝搬路利得GBを推定する(ステップSa3)。伝搬路利得の推定は既知のプリアンブルをノードAとBにおいて変調シンボルに付加することにより行われる。受信されたRF信号Aは信号検出回路102において検出され、復調回路104において復調される(ステップSa4)。同様に、受信したRF信号Bは信号検出回路102において検出され、復調回路104において復調される(ステップSa5)。
【0035】
電力配分算出回路112は、伝播路利得推定回路111から出力される伝播路利得GA、GBを下記の式(1)、式(2)に適用して送信電力配分係数α、βを求め、電力制御回路113へ出力する(ステップSa6)。
【0036】
【数1】
なお、伝搬路利得は時刻T1、T2、T3において変動がないものとする。また、中継ノードにおける総送信電力を正規化することから式(1)、式(2)が得られる。
上記復調回路104において復調された変調シンボルAは変調回路105において再変調され(ステップSa7)、電力制御回路113においてαの平方根が乗算されることによって送信電力制御が行われ(ステップSa8)、重畳回路106内のメモリに記憶される(ステップSa9)。同様に、復調回路104において復調された変調シンボルBは変調回路105において再変調され(ステップSa10)、電力制御回路113においてβの平方根が乗算されることによって送信電力制御が行われ(ステップSa11)、重畳回路106内のメモリに記憶される(ステップSa12)。重畳回路106は、メモリ内に記憶された変調シンボルA、B同士を加算することにより重畳し、無線部101へ出力する(ステップSa13)。
【0037】
無線部101は、時刻T3において重畳変調シンボルに共通プリアンブルを付加したものをアップコンバート(UC)し、重畳RF信号をノードAとノードBに同報通信する(ステップSa13)。送信電力配分係数αもしくはβはプリアンブルの中に格納され、データと同時にノードAとBに対し同報通信される。αとβはβ=1−αの関係が成り立つため、格納する電力係数はどちらかでよい。
【0038】
次に、ノードAの無線部202(図2)は受信した重畳RF信号(RF信号C)をダウンコンバートし(図4のステップSb1)、中継送信電力推定回路211がダウンコンバートされた信号のプリアンブルから送信電力配分係数を取出し(ステップSb2)、電力制御回路212へ出力する。電力制御回路212は、送信電力係数に基づいて自送信変調シンボルのレプリカの電力制御を行い、所望波抽出回路203へ出力する。所望波抽出回路203は、電力制御回路212から出力される自送信変調シンボルのレプリカを使って、重畳変調シンボルから自分の送信成分すなわち干渉成分を除去し(ステップSb3)、次いで復調回路204が所望の変調シンボルを復調する(ステップSb4)。これにより、所望の変調シンボルBを得ることができる。変調シンボルBは復調されパケットBを得る。ノードBも同様に、受信した重畳RF信号をダウンコンバートし、プリアンブルから取り出した電力配分係数と記憶していた自送信変調シンボルを使って、重畳変調シンボルから干渉成分を除去する。これにより、所望の変調シンボルAを得ることができる。変調シンボルAは復調されパケットAを得る。
なお、ノードRが記憶する信号は、再変調シンボルではなく、もちろんパケットでも可能である。また伝搬路利得はAGC(Automatic Gain Control)の利得を読み取って、その逆数を取ってもよい。
【0039】
(第2実施形態):AF方式による変調シンボル重畳一括中継伝送
図5は、本発明の第2実施形態による無線中継システムの中継ノードRに設けられる中継装置300の構成を示すブロック図である。この図に示すように、中継装置300は、無線部301、信号検出回路302、チャネル推定回路303、等価回路304、伝播路利得推定回路311、雑音電力推定回路307、電力配分算出回路308.電力制御回路313、重畳回路306を備えている。この構成において、無線部301、信号検出回路302、チャネル推定回路303、重畳回路106、伝播路利得推定回路311、電力制御回路313はそれぞれ、図1における各構成要素101、102、103、106、111、113と同様に構成されており、従って説明は省略する。
【0040】
等価回路304は、信号検出回路302から出力される信号の等価処理を行い、電力制御回路313へ出力する。雑音電力推定回路307は、受信変調シンボル毎の雑音電力を推定する。電力配分算出回路308は、伝播路利得推定回路311から出力される伝播路利得と雑音電力推定回路307から出力される雑音電力から、重畳させる各シンボルに割り当てるべき電力を算出し、電力制御回路313へ出力する。
【0041】
次に、第2実施形態の動作を図5、図14および図6に示すフローチャートを参照して説明する。
図14の時刻T1において、中継ノードRの無線部301(図5)がノードAから送信されたRF信号Aを受信し、受信したRF信号Aをダウンコンバートする(ステップSc1)。また、時刻T2において、無線部301がノードBから送信されたRF信号Bを受信し、受信したRF信号Bをダウンコンバートする(ステップSc2)。また、伝播路利得推定回路311はノードAおよびノードBからノードRへの伝搬路利得GA、GBを推定する(ステップSc3)。伝搬路利得の推定は、既知のプリアンブルをノードAとBにおいて変調シンボルに付加することにより測定可能である。次に、雑音電力推定回路307が雑音電力σ2を推定する。雑音電力も伝播路利得と同様に、既知のプリアンブルを用いることにより推定可能である。雑音電力の推定は、ノードAから中継ノードRへの通信時において,またはノードBから中継ノードRへの通信時において推定する.もしくはノードAからの通信時と、ノードBからの通信時の測定結果の両方を用いてその推定精度を向上させることも可能である(ステップSc4)。電力配分算出回路308は、伝播路利得GA、GBと雑音電力σ2から電力配分係数α、βを算出し、電力制御回路313へ出力する(ステップSc5)。なお、算出の過程については後に説明する。
【0042】
前述した無線部301で受信され、信号検出回路302において検出された変調シンボルAは、等価回路304において等化処理によってフェージングの影響を除去した変調シンボルAとされ、電力制御回路313へ出力される(ステップSc6)。電力制御回路313はこの変調シンボルAに係数αの平方根を乗算することによって電力制御を行い(ステップSc7)、重畳回路306へ出力する。重畳回路306はこの変調シンボルを内部のメモリに記憶する(ステップSc8)。
【0043】
同様に、無線部301で受信され、信号検出回路302において検出された変調シンボルBは、等価回路304において等化処理によってフェージングの影響を除去した変調シンボルBとされ、電力制御回路313へ出力される(ステップSc9)。電力制御回路313はこの変調シンボルに係数βの平方根を乗算することによって電力制御を行い(ステップSc10)、重畳回路306へ出力する。重畳回路306はこの変調シンボルを内部のメモリに記憶する。
重畳回路306は、メモリ内の変調シンボル同士を加算することにより重畳し、無線部301へ出力する(ステップSc11)。無線部301は、電力時刻T3(図14)において重畳変調シンボルに共通プリアンブルを付加したものをアップコンバートし、重畳RF信号をノードAとノードBに同報通信する(ステップSc12)。係数αとβはプリアンブルに格納され、データと同時にノードAとBに対し同報通信される。
【0044】
ノードAおよびノードBの構成は前述した第1実施形態のものと同じであり(図2参照)、第1実施形態と同様の過程で変調シンボルが復調される。すなわち、ノードAは受信した重畳RF信号をダウンコンバートし、プリアンブルから取り出した電力配分係数と記憶していた自送信変調シンボルを使って、重畳変調シンボルから自分の送信成分すなわち干渉成分を除去する。これにより、所望の変調シンボルBを得ることができる。変調シンボルBは復調されパケットBを得る。ノードBも同様に、受信した重畳RF信号をダウンコンバートし、プリアンブルから取り出した電力配分係数と記憶していた自送信変調シンボルを使って、重畳変調シンボルから干渉成分を除去する。これにより、所望の変調シンボルAを得ることができる。変調シンボルAは復調されパケットAを得る。
【0045】
次に、電力配分係数α、βの算出過程を説明する。
伝搬路利得は時刻T1、T2、T3において変動がなく、全てのノードにおいて付加される雑音電力は等しいと仮定する。また、中継ノードの送信電力は1に正規化する。
変調シンボルAに与えられる電力と変調シンボルBに与えられる電力の比を
【0046】
【数2】
とすると、連立方程式
【0047】
【数3】
を解くことにより、
【0048】
【数4】
となる。AFの変調シンボルに含まれている雑音電力を考慮し、中継ノードRにおける総送信電力が1となるように正規化係数を乗算することで、αとβはそれぞれ以下のように与えられる。
【0049】
【数5】
【0050】
(第3実施形態): AF/DFハイブリッドによる変調シンボル重畳一括中継伝送
図7は、本発明の第3実施形態による無線中継システムの中継ノードRに設けられる中継装置400の構成を示すブロック図である。この図に示すように、中継装置400は、無線部401、信号検出回路402、チャネル推定回路403、復調回路404、等価回路414、誤り検出回路415、変調回路405、入力切替回路416、伝播路利得推定回路411、雑音電力推定回路407、電力配分算出回路412.電力制御回路413、重畳回路406を備えている。この構成において、無線部401、信号検出回路402、チャネル推定回路403、復調回路404、変調回路405、電力制御回路413、重畳回路406はそれぞれ、図1における各構成要素101、102、103、104、105、113、106と同様に構成され、また、等価回路414、伝播路利得推定回路411、雑音電力推定回路407、電力配分回路412はそれぞれ、図5における各構成要素304、311、307、308と同様に構成されており、従って説明は省略する。
【0051】
誤り検出回路415は、復調回路404から出力されるパケットの誤り検出を行い、誤りがあったか否かの結果を電力配分算出回路412および入力切替回路416へ出力し、また、誤りがなかった場合に、復調回路404から受けたパケットを変調回路405へ出力する。変調回路405は、そのパケットを再変調し、入力切替回路416へ出力する。入力切替回路416は、誤り検出回路415において誤りが検出された場合は等価回路414の出力を電力制御回路413へ出力し、誤りが検出されなかった場合は変調回路405の出力を電力制御回路413へ出力する。
【0052】
次に、第3実施形態の動作を図8に示すフローチャートを参照して説明する。
ノードAとBは送信したいパケットに誤り判定機能を付加し、それを受信したノードRではそのパケットの誤り判定が可能であることを前提とする。
図14の時刻T1において中継ノードRの無線部401がノードAから送信されたRF信号Aを受信し、受信したRF信号Aをダウンコンバートする(ステップSd1)。また、時刻T2において無線部401がノードBから送信されたRF信号Bを受信し、受信したRF信号Bをダウンコンバートする(ステップSd2)。伝播路利得推定回路411は伝播路利得GA、GBを推定する(ステップSd3)。また、雑音電力推定回路407は変調シンボルA、Bの雑音電力を推定する(ステップSd4)。
【0053】
無線部401において受信された変調シンボルAは信号検出回路402において検出され、復調回路404において復調される(ステップSd5)。同様に、無線部401において受信された変調シンボルBは信号検出回路402において検出され、復調回路404において復調される(ステップSd6)。そして、復調回路404において復調されたパケットA、Bについて、誤り検出回路415においてCRC(Cyclic Redundancy Check)符号によって誤り検出が行われる(ステップSd7、Sd8)。そして、その結果が“正しい”であればパケットが変調回路405において再変調され、入力切替回路416へ出力される。
【0054】
また、パケットA、Bが共に“正しい”であった場合は、電力配分算出回路412において電力配分係数α、βが算出される(ステップe1)。なお、係数α、βの算出過程については後に説明する。また、パケットAが変調回路405において再変調され(ステップe2)、再変調シンボルAが入力切替回路416を介して電力制御回路413へ入力される。電力制御回路413は再変調シンボルAに係数αの平方根を乗算することによって送信電力制御を行い(ステップe3)、重畳回路406へ出力する。重畳回路406はその変調シンボルAを内部のメモリに記憶させる(ステップe4)。同様に、パケットBが変調回路405において再変調され(ステップe5)、再変調シンボルBが入力切替回路416を介して電力制御回路413へ入力される。電力制御回路413は再変調シンボルBに係数βの平方根を乗算することによって送信電力制御を行い(ステップe6)、重畳回路406へ出力する。重畳回路406はその変調シンボルBと内部のメモリに記憶されている再変調シンボルAを加算し、無線部401へ出力する(ステップSi1)。無線部401はそのシンボルに共通プリアンブルを付加してアップコンバートし、ノードA、Bへ同時に送信する(ステップSi2)。電力配分係数α、βはプリアンブルに格納され、データと共にノードA、Bに送信される。
【0055】
次に、ステップSd7、Sd8の判断結果が、パケットAが“正しい”、パケットBが“誤り”であった場合は、ステップf1において電力配分係数α、βが算出された後、パケットAについては上記ステップe2〜e4と同じ処理が行われる(ステップf2〜f4)。一方、パケットBについては使用されない。この場合、復調する前の等価回路414において等化処理され(ステップf5)、フェージングの影響を除去した変調シンボルBが入力切替回路416を介して電力制御回路413へ入力される。電力制御回路413は再変調シンボルBに係数βの平方根を乗算することによって送信電力制御を行い(ステップf6)、重畳回路406へ出力する。重畳回路406はその変調シンボルBと内部のメモリに記憶されている再変調シンボルAを加算し、無線部401へ出力する(ステップSi1)。無線部401はそのシンボルをアップコンバートし、ノードA、Bへ送信する(ステップSi2)。
【0056】
次に、ステップSd7、Sd8の判断の結果、パケットAが“誤り”、パケットBが“正しい”であった場合、ステップg1において電力配分係数α、βが算出された後、変調シンボルAについては等価回路414から出力される変調シンボルAが入力切替回路416を介して電力制御回路413へ入力され、係数αの平方根が乗算され、重畳回路406のメモリ内に記憶される(ステップg2〜g4)。一方、パケットBは誤り検出回路415から出力され、変調回路405において再変調され(ステップg5)、入力切替回路416を介して電力制御回路413へ入力される。電力制御回路413は再変調シンボルBに係数βの平方根を乗算することによって送信電力制御を行い(ステップg6)、重畳回路406へ出力する。重畳回路406はその変調シンボルBと内部のメモリに記憶されている変調シンボルAを加算し、無線部401へ出力する(ステップeSi1)。無線部401はそのシンボルをアップコンバートし、ノードA、Bへ送信する(ステップSi2)。
【0057】
次に、ステップSd7、Sd8の判断の結果、パケットAが“誤り”、パケットBも“誤り”であった場合、ステップh1において電力配分係数α、βが算出された後、変調シンボルA、Bの双方について、等価回路414から出力される変調シンボルA、Bが入力切替回路416を介して電力制御回路413へ入力され、係数α、βの平方根が乗算され、重畳回路406のメモリ内に記憶される(ステップh2〜h6)。重畳回路406は変調シンボルA、Bを加算し、無線部401へ出力する(ステップeSi1)。無線部401はそのシンボルをアップコンバートし、ノードA、Bへ送信する(ステップSi2)。
【0058】
次に、電力配分係数α、βの算出過程を説明する。
伝搬路利得は時刻T1、T2、T3において変動がなく、全てのノードにおいて付加される雑音電力は等しいと仮定する。また、中継ノードの送信電力は1に正規化する。
ノードRにおける誤り判定結果が
(1)A:正しい B:正しい の場合
第1実施形態より
【0059】
【数6】
(2)A:正しい B:誤り の場合
【0060】
【数7】
を解くことにより、
【0061】
【数8】
を得る.中継送信電力正規化のための係数を乗算し、
【0062】
【数9】
(3)A:誤り B:正しい の場合
【0063】
【数10】
を解くことにより、
【0064】
【数11】
を得る.中継送信電力の正規化のための係数を乗算し、
【0065】
【数12】
(4)A:誤り B:誤り の場合
第2実施形態より
【0066】
【数13】
とすると、
【0067】
【数14】
と与えられる。
【0068】
(第4実施形態):AF/DFハイブリッドによる変調シンボル重畳一括中継伝送およびオーバーリーチ信号とのダイバーシチ合成
この第4実施形態による無線中継システムは、上述した第3実施形態によるシステムに、ノードAからB、ノードBからAへオーバーリーチする信号(適時聴取した直接信号)を利用した、中継信号とのダイバーシチ合成を行う構成を加えたものである。
【0069】
すなわち、この実施形態によるシステムにおける中継ノードRは図7に示す中継装置400備えており、一方、ノードA、Bは各々図9に示す送受信装置500を備えている。
送受信装置500は、無線部501、信号検出回路502、所望波抽出回路503、復調回路504、出力切替回路505、チャネル推定回路506、信号記憶回路507、変調回路508、出力切替回路509、中継送信電力推定回路511、電力制御回路512、出力切替回路515、中継状況判定回路516、合成回路517を備えている。この構成において、無線部501、信号検出回路502、所望波抽出回路503、復調回路504、出力切替回路505、チャネル推定回路506、信号記憶回路507、変調回路508、出力切替回路509、中継送信電力推定回路511、電力制御回路512はそれぞれ前述した図2の各構成要素201〜209、211、212と同様に構成されており、従って説明を省略する。
【0070】
出力切替回路515は、信号検出回路502から入力された変調シンボルの出力先を、信号条件により切り替える。例えば、適時聴取した直接信号か、または中継ノードRから受信した中継信号かに応じて切り替える。適時聴取した直接信号の場合は合成回路517に出力し、中継信号の場合は所望波抽出回路503に向けて出力する。
【0071】
合成回路517は、適時聴取した直接信号が所望信号である場合には、所望波抽出回路503から出力される所望信号と、適時聴取した直接信号とを、重み係数を用いて最大比合成する。この重み係数は中継状況判定回路516から出力される中継信号の正誤条件である中継状況の情報と、チャネル推定回路506から出力される伝搬路係数の情報とを基に決定される。この最大比合成に用いる重みは、中継状況により切り替えられるが、DF方式を用いた場合は、その信号に対する中継ノードRにおける雑音電力を考慮する必要がない。しかし中継信号にAF方式を用いた信号が多重されている場合は、その雑音電力を考慮した最大比合成に用いる重みを使用する(この重み係数の決定方法の詳細については後述する。)。一方、合成回路517は、適時聴取した直接信号が所望信号以外である場合には、適時聴取した直接信号を、復調回路504に出力する。
【0072】
中継状況判定回路516は、中継ノードRから受信した中継信号の中継状況、すなわち、中継信号の誤り検出結果に応じて選択された方式(DF方式またはAF方式)を判定し、判定結果を合成回路517に出力する。
次に、この第4実施形態による無線中継システムにおいて、中継ノードRの動作は前述した通り(図8の説明参照)であるので、以下、ノードA、Bの送受信装置500の動作を説明する。
【0073】
ノードAとノードBは、受信した中継信号から、タイムスロットT1とT2においてそれぞれ送信した自送信信号パケットA、パケットBを減算し、ノードAにおいてはパケットBの変調シンボルを、ノードBにおいてはパケットAの変調シンボルを取得する。
【0074】
その後、ノードBはタイムスロットT1において適時聴取したパケットAの変調シンボルとタイムスロットT3において受信し抽出したパケットAの変調シンボルを最大比合成する。
【0075】
その際、中継されてきたシンボルに対する重み係数w2は、中継ノードRにおける中継状況、すなわち中継信号の正誤判定状況によって使い分ける。各無線ノードにおいて付加される雑音の電力が同一で、かつAGCが理想的に動作しているものとし、ノードAからノードBへの伝搬路におけるフェージングの変動を表す係数をHAB’とする.この時,伝搬路利得,中継局における電力制御係数及びフェージング係数を考慮した実効的な伝搬路係数は,それぞれHAB=(GAB)−1/2HAB’,HAR=(GA)−1/2HAR’,HBR=(α/βGB)−1/2HBR’,HRB=(αGB)−1/2HRB’と与えられる.ここでGABは無線ノードAからBへの伝搬路利得である.これらより,重み係数w2は以下のように表わされる。
【0076】
パケットAもパケットBも正しく復調できた場合は、重み係数w2は、
w2=HRB*、とする。ここで、HRB*は、HRBの複素共役行列を示す。
【0077】
パケットAは正しく、パケットBは誤って復調した場合は、重み係数w2は、
w2=|HBR|2・HRB*/(|HBR|2+|HRB|2)、とする。
【0078】
パケットAは誤り、パケットBは正しく復調した場合は、重み係数w2は、
w2=|HAR|2・HRB*/(|HAR|2+|HRB|2)、とする。
【0079】
パケットAもパケットBも誤って復調した場合は、重み係数w2は、
w2=|HAR|2・|HBR|2・HRB*/(|HAR|2|HBR|2+|HBR|2|HRB|2+|HRB|2|HAR|2)、とする。
【0080】
適時聴取したシンボルに対する重み係数w1は中継ノードRの正誤状況に依らず、常に
w1=HAB*、である。
【0081】
そして、最大比合成により所望シンボルのSNR(Signal to Noise Ratio)を改善した後に復調を行う。
【0082】
ノードAにおいては、パケットBに対して上記で説明した最大比合成を行い、パケットBのSNRを改善する。伝搬路係数をそれぞれHBA=(GAB)−1/2HBA’,HAR=(β/αGA)−1/2HAR’,HBR=(GB)−1/2HBR’,HRA=(βGA)−1/2HRA’とすると,その際の重み係数w2は以下のようになる。
【0083】
パケットAもパケットBも正しく復調できた場合は、重み係数w2は、
w2=HRA*、とする。
【0084】
パケットAは正しく、パケットBは誤って復調した場合は、重み係数w2は、
w2=|HBR|2・HRA*/(|HBR|2+|HRB|2)、とする。
【0085】
パケットAは誤り、パケットBは正しく復調した場合は、重み係数w2は、
w2=|HAR|2・HRA*/(|HAR|2+|HRB|2)、とする。
【0086】
パケットAもパケットBも誤って復調した場合は、重み係数w2は、
w2=|HAR|2・|HBR|2・HRA*/(|HAR|2|HBR|2+|HBR|2|HRA|2+|HRA|2|HAR|2)、とする。
【0087】
適時聴取したシンボルに対する重み係数w1は中継ノードRの正誤状況に依らず、常に
w1=HBA*、である。
【0088】
このように中継ノードRの正誤判定状況により中継方法及び宛先局の合成に用いる重みを変えることにより、常に最大比合成によるダイバーシチ効果を実現することができる。
図10は、上述した送受信装置500の動作を説明するためのフローチャートである。以下、このフローチャートに沿って送受信装置500の動作を説明する。
ノードA(またはノードB)の無線部501が、生起ノードからの信号をノードRが受信するのと同じタイミングで、宛先局までオーバーリーチする信号を直接受信により適時聴取する(ステップSj1)。合成回路517が、この適時聴取した受信シンボルを記憶する(ステップSj2)。さらに、無線部501が、ノードRから中継信号として送信される一括送信信号を受信する(ステップSj3)。
【0089】
この中継信号は、複数の生起局(例えば、ノードAとノードB)から中継ノードRが受信した信号がアナログ多重化されたものであるため、送受信装置内の所望波抽出回路503では、事前に取得しておいた所望信号以外の信号のレプリカ、すなわち、自局が送信した信号のレプリカを中継信号から減算することにより、所望波の変調シンボルを抽出する(ステップSj4)。なお、所望信号以外の信号は、生起局が最初に中継局に対して送信する際に適時聴取により取得するか、自分の送信信号を記憶しておくことで取得する。もしくはその両方を使い取得する。
【0090】
そして、中継状況判定回路516が、ノードRにおける中継状況を判定する(ステップSj5)。この中継状況は、パケットがDF方式により復調されたか、または、パケットがAF方式により等化処理されたかの情報であり、ノードRから送信されるプリアンブル信号に含まれる。また、合成回路517において、中継状況の判定結果を基に、伝搬路係数から合成重みを算出する(ステップSj6)。
【0091】
送受信局(ノードAおよびノードB)では、合成回路517が、ノードRから中継されてきた所望信号の変調シンボルと、オーバーリーチした所望信号の変調シンボルとを最大比合成する(ステップSj7)。最大比合成に用いる重みは、前述した中継状況により切り替える。そして、復調回路504が、合成された変調シンボルを復調する(ステップSj8)。
【0092】
このように、本実施形態の送受信装置500においては、中継信号から抽出した所望信号と、オーバーリーチした所望信号を最大比合成するので、中継ノードRで受信した信号に誤りがある場合においても、オーバーリーチ信号を利用したダイバーシチ効果を実現することが可能となり、伝送品質の改善が達成できる。
なお、上記第4実施形態は、第3実施形態にオーバーリーチ信号の処理を加えたものであるが、前述した第1、第2実施形態にそれぞれオーバーリーチ信号の処理を加えてもよいことは勿論である。
以上のように、変調シンボル重畳による一括中継伝送を用いた双方向マルチホップ通信において本発明を適用することで、送信ノードから中継ノードに送信されてくる双方向の信号の受信SNRに不均衡が生じた場合においても、中継ノードにおいて重畳させる変調シンボルの送信電力を適応的に制御することにより、中継した先での最終的な所望信号のSNRが等しくすることが可能になる。これにより、システムスループットの向上が期待できる。
【0093】
第4実施形態について、計算機シミュレーションにより評価する。各リンクの物理層にはIEEE802.11a規格を用いた。シミュレーション条件を図11に示す。各伝搬路環境は独立のレイリーフェージングのモデルとし、距離の3.5乗に比例して減衰するものとする。各ノードにおいて付加される白色雑音の電力は一定で同一であるとする。各ノードの送信電力は一定で同一であるものとする。伝搬減衰定数αはα=3.5とした。この時の中継ノードの位置によるパケット誤り率を図12に示す。
【0094】
この図において、従来法とはDF/AFハイブリッド方式のことをいう。また、Packetα、Packetβとは、それぞれノードAから中継ノードRを介してノードBへ」送信したいパケットと、逆に、ノードBから中継ノードRを介してノードAへ送信したいパケットである。パラメータは同じであるが通るリンクの順番が異なる。Packetαは、A→R→Bの順に伝送されるが、Packetβは、B→R→Aの順に伝送される。図12においては、中継ノードの位置dによりPacketα、Packetβの特性が変わってくるため、それを示すために分けて示している。
【0095】
また、図12において、横軸dはノードRの位置を示している。各ノードの送信電力は中継ノードRがd=1の位置(ノードAとノードBの中間点)にある時に中継ノードにおける受信Eb/N0がEb/N0=24dBとなるように規定している。ノードAからノードB及びノードBからノードAへのオーバーリーチ信号の伝搬距離は、中継ノードRが中間点にある時の各ノードからノードRへそれぞれ伝播される信号の伝搬距離に比べて2倍になる。そのため、ノードAからノードB及びノードBからノードAへの伝搬路利得GAB、GBAは、ノードRが中間点に配置された時のノードAからノードR及びノードBからノードRへの伝搬路利得と比べて2の3.5乗分の1となる。すなわち、オーバーリーチ信号のノードA、Bにおける受信Eb/N0は、Eb/N0=13.5dBとなる。中継ノードRの位置を固定の送受信局の間で動かして評価することで、2つの伝搬路の不均衡を表現し、その時のPER(Packet Error Rate)を評価している。本発明により、従来法に比べてパケットAとBの誤り率の差が、中間点以外のd=0.2〜1.8の間で縮まっていることがわかる。伝送品質の不均衡が改善していることを意味する。従来法ではPacketαとPacketβの特性差が大きいのに対し、提案法では、その特性差が小さくなっている。
【0096】
また、この時のシステムスループットを図13に示す。システムスループットとは、PacketαとPacketβによりどれだけの情報が単位時間当たりシステム上をながれたかを示しているので、PacketαとPacketβを加算したものとなっている。そのため、αとβを分けていない。図12と同様に、中間点以外のd=0.2〜1.8の間でシステムスループットが改善していることがわかる。
【0097】
なお、図1、図2、図5、図7、図9における各部の処理(アナログ処理を除く)を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の機能を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
【0098】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0099】
101、301、401…無線部
102、302、402…信号検出回路
103、303、403…チャンネル推定回路
104、404…復調回路
105、405…変調回路
106、306、406…重畳回路
111、311、411…伝播路利得推定回路
112、308、412…電力配分算出回路
113、313、413…電力制御回路
201、501…無線部
202、502…信号検出回路
203、503…所望波抽出回路
204、504…復調回路
205、505…出力切替回路
206、506…チャンネル推定回路
207、507…信号記憶回路
208、508…変調回路
209、509…出力切替回路
211、511…中継送信電力推定回路
212、512…電力制御回路
304、414…等価回路
307、407…雑音電力推定回路
415…誤り検出回路
416…入力切替回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送受信局と中継局から構成され、前記中継局が前記各送受信局から受けた信号に一定の処理をした後多重化し、前記各送受信局へ一括送信する無線中継システムにおいて、
前記中継局は、
前記各送受信局と自中継局との間の伝送路の各伝送路利得を各々推定し、
前記各伝送路利得から、前記各伝送路の不均衡を抑制する電力配分係数を決定し、
前記電力配分係数に基づいて各送受信局へ送信する信号を制御した後、多重化し、
前記送受信局は、
所望信号以外の信号を予め取得し、前記中継局から受信した信号から前記予め取得した信号を減算することにより所望信号を得ることを特徴とする無線中継システム。
【請求項2】
複数の送受信局と中継局から構成され、前記中継局が、前記送受信局から受信した信号に一定の処理をした後、多重化して前記各送受信局へ一括送信し、前記送受信局が、所望信号以外の信号を予め取得し、前記中継局から受信した信号から前記予め取得した信号を減算することで所望信号を得る無線中継システムにおいて、
前記中継局は、
前記送受信局から受信した信号から前記各送受信局と自中継局間の伝送路の各伝送路利得を推定する伝送路利得推定手段と、
前記各伝送路利得から、前記各伝送路の不均衡を抑制する電力配分係数を決定する電力配分算出手段と、
送信する信号を前記電力配分係数に基づいて制御する電力制御手段と、
前記電力配分係数に基づく制御が行われた信号を加算して多重化する重畳手段と、
前記多重化した信号を前記送受信局へ一括送信する無線部と、
を備えることを特徴とする無線中継システム。
【請求項3】
前記中継局は、
前記送受信局から受信した信号から抽出された変調シンボルを伝送路状態に応じて復調する復調手段と、
前記復調された信号を再変調し、前記電力制御手段へ出力する変調手段と、
を具備することを特徴とする請求項2に記載の無線中継システム。
【請求項4】
前記中継局は、
前記送受信局から受信した信号から抽出された変調シンボルを伝送路状態に応じて等価処理し、前記電力制御手段へ出力する等価手段と、
前記受信信号毎の雑音電力を推定する雑音電力推定手段とを具備し、
前記電力配分算出手段は、前記伝送路利得および前記雑音電力に基づいて電力配分係数を決定することを特徴とする請求項2に記載の無線中継システム。
【請求項5】
前記中継局は、
前記送受信局から受信した信号から抽出された前記変調シンボルを伝送路状態に応じて復調する復調手段と、
前記復調回路で復調された信号の誤り検出を行う誤り検出手段と、
前記復調された信号を再変調する変調手段と、
前記送受信局から受信した信号から抽出された前記変調シンボルを伝送路状態に応じて等価処理する等価手段と、
前記誤り検出状態に応じて前記変調手段からの信号と前記等価回手段からの信号とを切り換えて前記電力制御手段へ出力する入力切替手段と、
前記送受信局から受信した信号毎の雑音電力を推定する雑音電力推定手段とを具備し、
前記電力配分算出手段は、前記伝送路利得および前記雑音電力に基づいて電力配分係数を決定することを特徴とする請求項2に記載の無線中継システム。
【請求項6】
前記中継局は、
前記復調手段、復調処理に加えて誤り訂正復号処理を行い、
前記変調手段が、変調処理に加えて誤り訂正符号化処理を行う
ことを特徴とする請求項3または請求項5に記載の無線中継システム。
【請求項7】
前記送受信局は、
前記中継局から送信された多重化信号を受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信された信号から前記電力配分係数を推定する送信電力推定手段と、
前記受信手段によって受信された多重化信号から、前記送信電力推定手段の出力および予め取得した所望信号に基づいて所望信号以外の信号を除き、前記所望信号を抽出する所望波抽出手段と、
前記所望波抽出手段によって抽出された信号を復調する復調手段と、
を具備することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかの項に記載の無線中継システム。
【請求項8】
前記送受信局は、
前記所望信号を送信する送受信局から直接受信した直接信号と、前記中継局から受信した信号から前記予め取得した信号を減算することで得た所望信号とを最大比合成する合成手段と、
前記合成手段の出力を復調する復調手段と、
を具備することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかの項に記載の無線中継システム。
【請求項9】
複数の送受信局と中継局から構成され、前記中継局が前記各送受信局から受けた信号に一定の処理をした後多重化し、前記各送受信局へ一括送信する無線中継システムにおいて、
前記中継局が、
前記各送受信局と自中継局との間の各伝送路の伝送路利得を各々推定する伝送路利得推定処理と、
前記各伝送路利得から、前記各伝送路の不均衡を抑制する電力配分係数を決定する電力配分係数決定処理と、
前記電力配分係数に基づいて各送受信局へ送信する信号を制御する電力制御処理と、
前記電力制御が行われた信号を多重化する多重化処理とを有し、
前記送受信局が、
所望信号以外の信号を予め取得し、前記中継局から受信した信号から前記予め取得した信号を減算することにより所望信号を得る所望信号抽出処理を有することを特徴とする無線中継方法
【請求項10】
前記中継局が、
前記送受信局から受信した信号から抽出された前記変調シンボルを伝送路状態に応じて復調し、前記復調された信号を再変調し、
前記電力制御処理において前記再変調された信号を前記電力配分係数に基づいて制御することを特徴とする請求項9に記載の無線中継方法。
【請求項11】
前記中継局が、
前記送受信局から受信した信号毎の雑音電力を推定し、
前記電力配分算出処理において、前記伝送路利得および前記雑音電力に基づいて電力配分係数を決定し、
前記送受信局から受信した信号から抽出された前記変調シンボルを伝送路状態に応じて等価処理し、
前記電力制御処理において前記等価処理された信号を前記電力配分係数に基づいて制御することを特徴とする請求項9に記載の無線中継方法。
【請求項12】
前記中継局は、
前記送受信局から受信した信号毎の雑音電力を推定し、
前記電力配分算出処理において、前記伝送路利得および前記雑音電力に基づいて電力配分係数を決定し、
前記送受信局から受信した信号から抽出された前記変調シンボルを伝送路状態に応じて復調し、
前記復調された信号を再変調し、
前記送受信局から受信した信号から抽出された前記変調シンボルを伝送路状態に応じて等価処理し、
前記復調された信号の誤り検出を行い、
前記誤り検出の結果に応じて前記再変調された信号と前記等価処理された信号を切り替え、
前記電力制御処理において前記切り替えによって得られた信号を前記電力配分係数に基づいて制御することを特徴とする請求項9に記載の無線中継方法。
【請求項13】
前記中継局が、
前記復調処理において復調処理と共に誤り訂正復号処理を行い、前記変調処理において変調処理と共に誤り訂正符号化処理を行うことを特徴とする請求項10または請求項12に記載の無線中継方法。
【請求項14】
前記送受信局が、
前記中継局から送信された多重化信号を受信する受信処理と、
前記受信処理によって受信された信号から前記電力配分係数を推定する送信電力推定処理と、
前記受信処理によって受信された多重化信号から、前記電力配分係数および予め取得した所望信号に基づいて所望信号以外の信号を除き、前記所望信号を抽出する所望波抽出処理と、
前記所望波抽出処理によって抽出された信号を復調する復調処理と、
を有することを特徴とする請求項9から請求項13のいずれかの項に記載の無線中継方法。
【請求項15】
前記送受信局は、
前記所望信号を送信する送受信局から直接受信した直接信号と、前記中継局から受信した信号から前記予め取得した信号を減算することで得た所望信号とを最大比合成する合成処理と、
前記合成処理が行われた信号を復調する復調処理と、
を有することを特徴とする請求項9から請求項14のいずれかの項に記載の無線中継方法。
【請求項16】
複数の送受信局と無線通信による中継を行う中継局であって、
前記各送受信局と自中継局との間の各伝送路の伝送路利得を各々推定し、
前記各伝送路利得から、前記各伝送路の不均衡を抑制する電力配分係数を決定し、
前記電力配分係数に基づいて各送受信局へ送信する信号を制御した後、多重化し、該多重化した信号を前記各送受信局へ一括送信することを特徴とする中継局。
【請求項1】
複数の送受信局と中継局から構成され、前記中継局が前記各送受信局から受けた信号に一定の処理をした後多重化し、前記各送受信局へ一括送信する無線中継システムにおいて、
前記中継局は、
前記各送受信局と自中継局との間の伝送路の各伝送路利得を各々推定し、
前記各伝送路利得から、前記各伝送路の不均衡を抑制する電力配分係数を決定し、
前記電力配分係数に基づいて各送受信局へ送信する信号を制御した後、多重化し、
前記送受信局は、
所望信号以外の信号を予め取得し、前記中継局から受信した信号から前記予め取得した信号を減算することにより所望信号を得ることを特徴とする無線中継システム。
【請求項2】
複数の送受信局と中継局から構成され、前記中継局が、前記送受信局から受信した信号に一定の処理をした後、多重化して前記各送受信局へ一括送信し、前記送受信局が、所望信号以外の信号を予め取得し、前記中継局から受信した信号から前記予め取得した信号を減算することで所望信号を得る無線中継システムにおいて、
前記中継局は、
前記送受信局から受信した信号から前記各送受信局と自中継局間の伝送路の各伝送路利得を推定する伝送路利得推定手段と、
前記各伝送路利得から、前記各伝送路の不均衡を抑制する電力配分係数を決定する電力配分算出手段と、
送信する信号を前記電力配分係数に基づいて制御する電力制御手段と、
前記電力配分係数に基づく制御が行われた信号を加算して多重化する重畳手段と、
前記多重化した信号を前記送受信局へ一括送信する無線部と、
を備えることを特徴とする無線中継システム。
【請求項3】
前記中継局は、
前記送受信局から受信した信号から抽出された変調シンボルを伝送路状態に応じて復調する復調手段と、
前記復調された信号を再変調し、前記電力制御手段へ出力する変調手段と、
を具備することを特徴とする請求項2に記載の無線中継システム。
【請求項4】
前記中継局は、
前記送受信局から受信した信号から抽出された変調シンボルを伝送路状態に応じて等価処理し、前記電力制御手段へ出力する等価手段と、
前記受信信号毎の雑音電力を推定する雑音電力推定手段とを具備し、
前記電力配分算出手段は、前記伝送路利得および前記雑音電力に基づいて電力配分係数を決定することを特徴とする請求項2に記載の無線中継システム。
【請求項5】
前記中継局は、
前記送受信局から受信した信号から抽出された前記変調シンボルを伝送路状態に応じて復調する復調手段と、
前記復調回路で復調された信号の誤り検出を行う誤り検出手段と、
前記復調された信号を再変調する変調手段と、
前記送受信局から受信した信号から抽出された前記変調シンボルを伝送路状態に応じて等価処理する等価手段と、
前記誤り検出状態に応じて前記変調手段からの信号と前記等価回手段からの信号とを切り換えて前記電力制御手段へ出力する入力切替手段と、
前記送受信局から受信した信号毎の雑音電力を推定する雑音電力推定手段とを具備し、
前記電力配分算出手段は、前記伝送路利得および前記雑音電力に基づいて電力配分係数を決定することを特徴とする請求項2に記載の無線中継システム。
【請求項6】
前記中継局は、
前記復調手段、復調処理に加えて誤り訂正復号処理を行い、
前記変調手段が、変調処理に加えて誤り訂正符号化処理を行う
ことを特徴とする請求項3または請求項5に記載の無線中継システム。
【請求項7】
前記送受信局は、
前記中継局から送信された多重化信号を受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信された信号から前記電力配分係数を推定する送信電力推定手段と、
前記受信手段によって受信された多重化信号から、前記送信電力推定手段の出力および予め取得した所望信号に基づいて所望信号以外の信号を除き、前記所望信号を抽出する所望波抽出手段と、
前記所望波抽出手段によって抽出された信号を復調する復調手段と、
を具備することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかの項に記載の無線中継システム。
【請求項8】
前記送受信局は、
前記所望信号を送信する送受信局から直接受信した直接信号と、前記中継局から受信した信号から前記予め取得した信号を減算することで得た所望信号とを最大比合成する合成手段と、
前記合成手段の出力を復調する復調手段と、
を具備することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかの項に記載の無線中継システム。
【請求項9】
複数の送受信局と中継局から構成され、前記中継局が前記各送受信局から受けた信号に一定の処理をした後多重化し、前記各送受信局へ一括送信する無線中継システムにおいて、
前記中継局が、
前記各送受信局と自中継局との間の各伝送路の伝送路利得を各々推定する伝送路利得推定処理と、
前記各伝送路利得から、前記各伝送路の不均衡を抑制する電力配分係数を決定する電力配分係数決定処理と、
前記電力配分係数に基づいて各送受信局へ送信する信号を制御する電力制御処理と、
前記電力制御が行われた信号を多重化する多重化処理とを有し、
前記送受信局が、
所望信号以外の信号を予め取得し、前記中継局から受信した信号から前記予め取得した信号を減算することにより所望信号を得る所望信号抽出処理を有することを特徴とする無線中継方法
【請求項10】
前記中継局が、
前記送受信局から受信した信号から抽出された前記変調シンボルを伝送路状態に応じて復調し、前記復調された信号を再変調し、
前記電力制御処理において前記再変調された信号を前記電力配分係数に基づいて制御することを特徴とする請求項9に記載の無線中継方法。
【請求項11】
前記中継局が、
前記送受信局から受信した信号毎の雑音電力を推定し、
前記電力配分算出処理において、前記伝送路利得および前記雑音電力に基づいて電力配分係数を決定し、
前記送受信局から受信した信号から抽出された前記変調シンボルを伝送路状態に応じて等価処理し、
前記電力制御処理において前記等価処理された信号を前記電力配分係数に基づいて制御することを特徴とする請求項9に記載の無線中継方法。
【請求項12】
前記中継局は、
前記送受信局から受信した信号毎の雑音電力を推定し、
前記電力配分算出処理において、前記伝送路利得および前記雑音電力に基づいて電力配分係数を決定し、
前記送受信局から受信した信号から抽出された前記変調シンボルを伝送路状態に応じて復調し、
前記復調された信号を再変調し、
前記送受信局から受信した信号から抽出された前記変調シンボルを伝送路状態に応じて等価処理し、
前記復調された信号の誤り検出を行い、
前記誤り検出の結果に応じて前記再変調された信号と前記等価処理された信号を切り替え、
前記電力制御処理において前記切り替えによって得られた信号を前記電力配分係数に基づいて制御することを特徴とする請求項9に記載の無線中継方法。
【請求項13】
前記中継局が、
前記復調処理において復調処理と共に誤り訂正復号処理を行い、前記変調処理において変調処理と共に誤り訂正符号化処理を行うことを特徴とする請求項10または請求項12に記載の無線中継方法。
【請求項14】
前記送受信局が、
前記中継局から送信された多重化信号を受信する受信処理と、
前記受信処理によって受信された信号から前記電力配分係数を推定する送信電力推定処理と、
前記受信処理によって受信された多重化信号から、前記電力配分係数および予め取得した所望信号に基づいて所望信号以外の信号を除き、前記所望信号を抽出する所望波抽出処理と、
前記所望波抽出処理によって抽出された信号を復調する復調処理と、
を有することを特徴とする請求項9から請求項13のいずれかの項に記載の無線中継方法。
【請求項15】
前記送受信局は、
前記所望信号を送信する送受信局から直接受信した直接信号と、前記中継局から受信した信号から前記予め取得した信号を減算することで得た所望信号とを最大比合成する合成処理と、
前記合成処理が行われた信号を復調する復調処理と、
を有することを特徴とする請求項9から請求項14のいずれかの項に記載の無線中継方法。
【請求項16】
複数の送受信局と無線通信による中継を行う中継局であって、
前記各送受信局と自中継局との間の各伝送路の伝送路利得を各々推定し、
前記各伝送路利得から、前記各伝送路の不均衡を抑制する電力配分係数を決定し、
前記電力配分係数に基づいて各送受信局へ送信する信号を制御した後、多重化し、該多重化した信号を前記各送受信局へ一括送信することを特徴とする中継局。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−200017(P2010−200017A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42944(P2009−42944)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年10月15日 社団法人電子情報通信学会発行の「電子情報通信学会技術研究報告(信学技報Vol.108 No.249)」に発表
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年10月15日 社団法人電子情報通信学会発行の「電子情報通信学会技術研究報告(信学技報Vol.108 No.249)」に発表
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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