無線周波数の8の字形状のバラン
対称な8の字形状のバラン(平衡−不平衡変換器)は、第1および第2の目(A,B)を備え、各目は、巻線を形成する導電トラックを備える。目(A,B)は、動作中、電流が第1の目では第1の方向に、且つ、第2の目では第2の方向に流れる、第1の端子(22)から第2の端子(21)への第1の導電経路を形成している等しい数の一次巻線(11)を備える。また、目(A,B)は、さらに、動作中、電流が第1の目では第1の方向に、且つ、第2の目では第2の方向に流れる、第3の端子(16)から第4の端子(19)への第2の導電経路を形成している等しい数の二次巻線(10)を備える。一次および二次巻線の幾何学的および電気的中間点(13)は、全て重ねられ、且つ、さらに同一面に置かれている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平衡−不平衡(バラン(BALUN))部品に関する。バランの様な集積部品は、無線周波数の回路で絶対的に必要ではないにせよ、現実の要求になっている。
【0002】
バラン(平衡−不平衡(BALanced-to-UNbalanced))部品は、無線周波数の回路で頻繁に用いられて、インピーダンス変換、及び、差動信号からシングルエンド信号への変換又は逆も同様を主に確実にする。図1及び2は、例えば、それぞれ、受信機および送信機の経路を経由したバランを用いたブロックダイアグラムを示す。
【背景技術】
【0003】
バランは、平衡線(逆方向の等しい電流を有する2つの導電体を有する、ツイストペアケーブルのようなもの)を、不平衡線(1つのみの導電体とグランドを有する、同軸ケーブルのようなもの)に接続するデバイスである。バランは、変圧器(トランス)の一種である。それは、不平衡信号を平衡信号に、又は逆も同様に、変換するのに用いられる。バランは、伝送線路を絶縁し、そして、平衡出力を提供する。バランの典型的な使用は、テレビアンテナである。その用語は、平衡(balanced)と不平衡(unbalanced)を組み合わせることに由来する。
【0004】
バランでは、一方の端子の組は平衡にされていて、即ち、電流は等しい大きさで逆の位相である。他方の端子の組は、不平衡にされていて、片側は電気的グランドに接続され、且つ、他方は信号を伝える。バラン変圧器は、無線または有線通信システムの様々な部分の間で用いられ得る。
【0005】
図1において、バランは低雑音増幅器(LNA)の後に用いられて、ミキサーの入力にて、シングルエンドの受信信号を差動に変換する。
【0006】
図2において、バランは最終増幅段の後に用いられて、出力マッチング回路を介してアンテナに接続される前に、出力差動信号をシングルエンドに変換する。
【0007】
受信機の場合、いくつかの問題が起こる。ミキサーの前に且つほとんど受信機チェーンの最初に、自然に置かれたバランは、結合した磁界及び干渉に高い感度レベルを示し、このことは、全体の受信機の性能に著しく影響を及ぼし得る。放射された磁界及び干渉に対して低い感度のバランの必要性が極めて重要になっている。
【0008】
さらに、ミキサーに示される出力の差動インピーダンスは、ミキサーの遇数次高調波除去に影響を及ぼすであろうと共に遇数次高調波歪みを生成し得るミスマッチ(不一致)を避けなければならない。
【0009】
また、高い挿入損失は入力ノイズフィギュア(noise Figure)に直接的に影響を及ぼし得るため、バランの挿入損失に注意が払われなければならない。
【0010】
送信機の場合、いくつかの問題が起こる。高パワーの信号を伝えるバランは、従って、非常に高いノイズの放射源になる。低磁界放射構造の必要性が存在する。
【0011】
さらに、コモンモード信号とノイズがシングルエンド出力に変換され得ることは、避けられるべきである。
【0012】
また、電力を節約するために低挿入損失が必要とされる。
【0013】
従って、このような部品は、通信デバイスに一般に用いられ、インピーダンス変換、及び、シングルエンド−差動変換又は逆も同様、を達成する。しかし、多数の従来技術の部品は、低磁界放射および結合した干渉への低感度を確保しない。さらに、コンパクトな空間面積のバランを実現するのに相互結合が役立つ部品は提供されない。提案された構造は、上述されたものの様に、多数の他の欠点および問題を正さない。典型的に、従来技術のバランは、さらに、挿入損失特性を著しく増加して、且つ、コモンモードの注入されたノイズを被る。
【0014】
さらに、バランが低磁界放射および結合した干渉への低感度を有することは重要である。
【0015】
US5,477,204は、図3に示されるバランを表している。この開示は、最も近い従来技術と見なされる。
【0016】
実際、上記開示(図3A及び3B)におけるレイアウトと電気回路図を一致させるために、107の接続は、破線の長方形が追加された下側に移されなければならず、そのようにして、図3Bが示すように、それが104に直列に接続される。実際、それが図3Aに描かれるように、107は、104の代わりに、112に直列に接続されていて、且つ、112は、バランのシングルエンド入力であり、そのことは意味をなすように思えない。
【0017】
この構造の主な問題は、一次および二次ループ間の結合および磁気伝達にある。一次(116−120)および二次(118−122)を成すワイヤの長さは、その特許が言及しているように、十分に等しい。しかし、その構造に起因して、左側で、一次(白で経路が示されている)は、二次(破線で経路が示されている)より長く且つ多くの巻線を有していて、且つ、右側で、短く且つ少ない巻線を有している。このことは、以下の欠点をもたらす。
【0018】
さらに、一次および二次の実際の幾何学的な中間点は、互いに近くに位置されていない。実際は、このことは、一次から二次ループへの伝達をもたらす。
【0019】
一次は二次より左側で多くの巻線を有し、且つ、右側で少ないので、結論は、二次において誘導により生成された電流が右のループ(i2)より左のループ(i1)で大きいであろう(図3C参照)ということである。このことは、重大な欠点である。
【0020】
さらに、出力電流(104,110)及び出力インピーダンスは、もはや十分に差動ではなく、そして、ミスマッチが生成される。
【0021】
次の欠点は、誘導電流(i1−i2)の一部がグランドビア107に流れ、そして、この電流は無駄な電力と見なされるため、それは挿入損失を悪化させるであろう、ということである。
【0022】
交差結合係数(crossed coupling coefficients)は、これらの結論を何も変化させない、ということに留意されたい。というのも、それらは等しい寄与を加え得るためである。従って、上述の不利な点は、存在したままである。
【0023】
ここで、もし我々がこのバランを差動−シングルエンド変換器として考えると、我々は同じ不利な点、即ち、入力インピーダンスは十分に差動ではない、107を通る電流の伝導による劣化した挿入損失がある、を見出すであろう。
【0024】
さらに、この場合、他の欠点が言及され得る。それは、平衡側の入力(104,110)に注入された任意のコモンモードノイズ又は信号の、悪い除去率である。それは、一次及び二次ループ間の結合に起因した、不平衡側(112,114)での望ましくない出力電流をもたらすであろう。
【0025】
従って、US5,477,204に開示されたバランは、未だ多数の不利な点を有している。いくつかの他のバランは、従来技術から知られている。
【0026】
US6683510 A1(D1)は、電気的に絶縁性または半絶縁性の、平面構造を定義する基板上に形成された、2組の平面の交互配置されたスパイラルコイルを用いた結合伝送線路バラン構造を開示している。各組の1つのコイルは直列に接続されて、バランの入力伝送線路を定義し、その伝送線路の一端は開回路である。バランは、MMICデバイスにとって興味がある周波数において、超広帯域幅特性を提供し、MMICデバイスの製造に用いられる同じ技術を用いて製造され、且つ、それ自体をMMICデバイス内に適用するのに役立つ物理的な大きさである。バランは、その中心線について対称である。第1及び第2のループは、右及び左側において、同じ長さ及び数の巻線を有する。
【0027】
しかし、US6683510 A1は、バランは8の字形状であると共に幾何学的および電気的中間点が重ねられ且つ同一面にあることを、記述していない。これらの特長は知られていない。
【0028】
US7199682 B1(D2)は、電気的に直列な2つの一次巻線で形成された第1の導電線を有し、そして、その長さはトランスの中心動作周波数の関数であり、電気的に直列な2つの二次巻線で形成されて、2つずつ一次巻線と結合した、第2の導電線を有し、その長さは上記中心周波数の関数である、モード・スイッチングトランスを開示している。導電線は、トランスの求められるインピーダンス比に応じて選択される異なる幅を示す。
【0029】
US2006097820 A1(D3)は、層数を増加させること及びその機能を低下させること無く容易にプリント回路基板に組み込まれ得る、プリント回路基板内蔵型の平面バランを開示している。平衡信号伝送線路1と不平衡信号伝送線路2は、側面が互いに対向して、同一面に形成されている。誘電体層3は、これらの伝送線路間、及び、伝送線路と、線路1及び線路2に実質的に平行に配置されると共に所定の距離の間隔を空けられたグランド電位層4と、の間に備えられている。
【0030】
US6653910 B1(D4)は、基板を備え、その基板はその上に形成された第1、第2、第3および第4の伝送線路を有する、一体的に集積可能なスパイラルバランを開示している。第1の伝送線路は、入力信号を受け取るように結合された第1の端部と、第2の端部とを有している。第1の伝送線路は、それの第1の端部からそれの第2の端部へ第1の方向に巻く螺旋を形成している。第2の伝送線路は、第1の端部と、第1の伝送線路の第2の端部に電気的に結合された第2の端部と、を有している。第2の伝送線路は、それの第1の端部からそれの第2の端部へ第2の方向に巻く第2の螺旋を形成している。第3の伝送線路は、第1の出力を提供する第1の端部と、第1の電位に結合する第2の端部と、を有している。第3の伝送線路は、第1の螺旋を交互配置すると共に、それの第1の端部からそれの第2の端部へ第2の方向に巻く、第3の螺旋を形成している。第4の伝送線路は、第2の出力を提供する第1の端部と、第2の電位に結合する第2の端部と、を有している。第4の伝送線路は、第2の伝送線路を交互配置すると共に、それの第1の端部からそれの第2の端部へ第1の方向に巻く、第4の螺旋を形成している。
【0031】
EP1424770 B1(D5)は、局部発振器のリークを緩和する広帯域ミキサーを開示している。LO信号は、180度互いに位相がずれた第1の中間LO信号と第2の中間LO信号とを提供する180度スプリッターに提供される。両方の第1及び第2の中間LO信号は180度位相がずれているので、180度位相がずれたLOトーンの同相の組み合わせが互いに相殺し、且つ、強いLO/RF除去を提供することにより、基本波のLOリークは、RFポートにて緩和される。RF又はマイクロ波入力信号は、パワースプリッターに提供され、第1の中間RF信号と、第2の中間RF信号とを提供する。第1の中間LO信号は第1の中間RF信号と混合され、且つ、第2の中間LO信号は第2の中間RF信号と混合されて、ミキサーの出力にて中間周波数信号を提供する。
【0032】
US5818308 A1(D6)は、互いに線路長が等しくされた複数の結合線路を有して、出力信号間の位相差を求められた範囲内に設定する、結合線路要素を開示している。結合線路は、巻かれて螺旋部を形成する。延長部は、螺旋部の内部の巻線を形成している1つ以上の結合線路の端部に連続的に形成される。この結合線路の線路長は、その結果、螺旋部の最外部の巻線を形成している結合線路のそれに等しくされている。また、結合線路は、逆方向に巻かれた2つの螺旋部に形成され得る。
【0033】
US2006087383 A1(D7)は、1組の金属コイル構造と、バランの動作周波数に応じて選択された厚さを有する、間に入っている誘電体層と、を含むバランを開示している。誘電体層の厚さは、バランを調整すると共に、その動作周波数におけるその自己インダクタンスを改善するのに用いられ得る。さらに、1組の金属コイル構造を有する、非対称に形成されたバランは、その出力信号における振幅誤差を最小化するように選択される。本教示によるバランは、その出力端子の配置における非対称性も含み得る。バランの出力端子の配置は、その出力信号における位相誤差を最小化するように調整され得る。
【0034】
要約すれば、D2−D5は、対称のバランを開示している。D6は、側面は対称であることを言及しているが、図面はループの長さに関して非対称を示している。D7は非対称のバランを開示している。
【0035】
さらに、D1、D3−D5、及び、D7は、いわゆる“非8の字(anti-8)”構造を開示して、そして更に、D5は図5及び6で、バランよりむしろコンバイナー/スプリッターの設計を提案している。
【0036】
非8の字形状の構造は、右及び左のループで、同じ方向に流れる電流を有している。このことは、加算され得る、同じ方向の外部の非近接磁界を生成し、且つ、従って、このようなデバイスの放射および結合特性を増加させる。各ループの内側で内部場が逆方向であるので、相互結合も減少するであろう。従って、“非8の字形状”の構造は、主に結合およびインダクタンス値に関して、全体的に劣った性能を示す。
【0037】
US6,097,273及びUS6,396,362も、非8の字形状の構造の原理に基づいたバランを開示している。電流は、内部場を増加して外部のものを削減する代わりに、得られる磁界が巻線の内側では互いに減少すると共に外部場では増加する傾向があるように、流れ、且つ、そのことは、挿入損失のレベル及び磁気伝達効率に関する直接の悪化した結果を有する。
【0038】
上記開示が有する問題は、低磁界放射および結合した干渉への低感度を有するバランは提供されないことである。
【0039】
従って、従来技術のバランは、上記問題または欠点の1つ以上がある。従って、さらに最適化されたバランを提供することにより、上記問題の1つ以上を解決し、且つ/又は、欠点の1つ以上を克服する必要性が、まだある。
【0040】
従って、本発明は、挿入損失のような上述の問題の1つ以上を解決することを目的とする。
【発明の概要】
【0041】
本発明は、他のものとの間で低磁界放射および結合した干渉への低感度を確保する、コンパクトな空き領域にバランを実現することに役立つ相互結合を有する、新規の対称な8の字形状のバラン(symmetrical eight-shaped balun)と共に、そのバランを備える装置を提示する。さらに、提案した構造は、上述したような従来技術の多数の欠点および問題を修正する。それは、高度に対称の磁気伝達および平衡側の高度に差動のインピーダンスを特徴付ける。それは、挿入損失特性を大幅に最小化して、且つ、コモンモードの注入されたノイズへの高い耐性を確保する。
【0042】
本発明によるバラン構造は、これら及び上述の問題の全て又は大部分を、次の段落に詳細に示されるように、克服および修正できる。
【0043】
本8の字形状の構造において、電流は右と左のループに関して反対方向に流れる。このことは、互いにキャンセルする逆方向の外部の非近接の磁界(external magnetic far-fields)を生成することであり、その上、内部の磁界は同一方向にあるので、ループ間の相互インダクタンスを増加させる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】LNAとミキサーとの間のバランの使用を示している受信機の経路。
【図2】最終増幅段と出力マッチングネットワークとの間に配置されたバランを有する送信機の経路。
【図3A】従来技術のバラン(US5477204から)。
【図3B】従来技術(図3A)に関連する電気回路図。
【図3C】図示された一次及び二次電流を含む、図3Aに関連する電気回路図。
【図4A】提案された発明のバランの図。
【図4B】図4Aに示されたバランに関連する等価電気回路図。誘導差動電流は、両方の出力分岐(16,19)にて同一であることに留意されたい。
【図5A】不平衡のバランの側で増加した巻線数を有して、インピーダンス変換比を変更する例。
【図5B】不平衡のバランの側で増加した巻線数を有して、インピーダンス変換比を変更する例。
【図6A】平衡端子と同一または反対側に、不平衡端子を接続することの柔軟性を示す例(結合した又は交差した配置)。
【図6B】直交する側に不平衡端子を接続することの柔軟性を示す例。
【図6C】斜め方向側に不平衡端子を接続することの柔軟性を示す例。
【図7】接続部とバランの巻線との間の削減された寄生容量を有する、同一のデバイスの側における不平衡端子の接続部の他の例。
【発明を実施するための形態】
【0045】
第1の態様において、本発明は、対称な8の字形状のバラン(平衡−不平衡)部品であって、第1および第2の目を備え、各目は、巻線を形成する導電トラックを備え、前記目は等しい数の一次巻線を備え、その一次巻線において、動作中、電流が第1の目では第1の方向に、且つ、第2の目では第2の方向に流れ、その一次巻線は第1の端子から第2の端子への第1の導電経路を形成していて、前記目は、さらに、等しい数の二次巻線を備え、その二次巻線において、動作中、電流が第1の目では第1の方向に、且つ、第2の目では第2の方向に流れ、その二次巻線は第3の端子から第4の端子への第2の導電経路を形成していて、一次および二次巻線の幾何学的および電気的中間点は、全て重ねられ、且つ、さらに前記バランにおける同一面に置かれている、対称な8の字形状のバランに関する。
【0046】
本バランは8の字形状を有しており、その8の字形状は実質的に対称である。8の字形状は、第1および第2の目(アイ(eye))を備え、各目は、1以上の巻線を形成している導電トラックを備える。導電トラックは、好ましくは、銅、アルミニウム、タングステン又はそれらの組み合わせのような金属から形成されている。トラックは、1−50μm、例えば10μmの幅を有し得、そして、1−30μm、例えば10μmの厚さを有し得る。本図面は、同様の相対的な寸法を有するが上述したμmの範囲と対照的にmmの範囲であるPCBの領域にも適用可能である、一般のバランを表すことに留意されたい。従って、本バランは、非常に広い寸法の範囲に適用可能である。
【0047】
巻線内で、バランが動作中である時に電流は流れ得る。一次及び二次巻線は、その中の電流を識別する目的でも区別される。目の中で、電流は一次巻線内を第1の方向に、例えば時計回りに流れる一方で、それは二次巻線内を第2の方向に、例えば反時計回りに流れ、又は逆も同様である。さらに、第1の目の一次巻線の電流は、第2の目の一次巻線の電流とは異なる方向に流れ、例えば、それぞれ時計回りおよび反時計回り、又は逆も同様である。結果として、第1の目の一次巻線の電流は、第2の目の二次巻線の電流と同じ向きに流れ、且つ、第2の目の一次巻線と第1の目の二次巻線に関しても同じであり、例えば、時計回りおよび反時計回り、又は逆も同様である。
【0048】
幾何学的な中間点(13)は仮想点であり、それは8の字形状のバランの中心を示し、地理的中心または同等の質量と見なす質量中心に相当する。実際、それは、バランの主平面に垂直な2つ折の対称軸を備え、その主平面にトラックが位置されている。さらに、電気的な中間点(13)は、幾何学的な中間点に一致する。電気的な中間点は、2つ折の対称軸も備える。実質的に対称なバランを形成しているトラックの特有な配置の結果、1つの端子から他の端子への電気的経路の長さは、電気的な中間点によって2つの等しい長さに分割されている。同じことは、幾何学的な中間点に適用できる。
【0049】
目の形状は、実質的に円形、長方形、例えば正方形、六角形、八角形、または、多角形であり得るが、好ましくは実質的に円形、例えば円形である。円形の目は、上述した態様の何れかで、最良の性能を提供する。
【0050】
さらに、8の字形状は、好ましくは、長さ(図4aにおける左から右)が8の字形状の幅(図4aにおける下部から上部)の0.8−3.0倍であり、好ましくは幅の1.2−2.5倍、例えば約2倍である。このような8の字形状は、実質的に円形の目を提供し、例えば、最良の磁気的性能を提供する。
【0051】
好ましい実施形態では、本バランは一次および二次巻線を有しており、それは、一次の左および右、並びに、二次の左および右をそれぞれ対比して(上述したことを参照されたい)、それらは実質的に等しい電気抵抗および実質的に等価な容量性の寄生成分を有している。電気抵抗は、用いられる物質、例えば導電トラックのそれ、例えば用いられる金属のそれ、トラックの幅および厚さの特性である。従って、用いられる物質のこれらの特性、または、これらの特性の組み合わせ効果、しかし、好ましくは全ての個々の特性、例えばトラックの長さ、厚さなどは、結果として、実質的に等しい。本発明は、互いに5%以内の、好ましくは2%以内の、さらに好ましくは1%以内の、なお一層好ましくは0.5%以内の、例えば0.1%以内の、好ましくは、可能な限り互いに等しい、それぞれの電気抵抗を有することを意図している。互いに5%以内の、好ましくは2%以内の、さらに好ましくは1%以内の、なお一層好ましくは0.5%以内の、例えば0.1%以内の、好ましくは、可能な限り互いに等しい、容量性の寄生成分を有することも意図している。このことは、バランが十分に対称である本レイアウトで実現される。このことは対称性を保ち、そして、結果として、例えば次の利点、即ち、電気的および幾何学的な中間点の重ね合わせ、並びに、シングルエンド−差動変換又は逆も同様、挿入損失およびコモンモードノイズへの耐性の改善の、例えば集合を確かにする。
【0052】
好ましい実施形態では、本バランは、バランの左および右巻線に関して、等しい値を有する一次および二次巻線間の磁気結合を有している。従って、一次の左及び右と、二次の左及び右と、の間の磁気結合は、それぞれ、互いの5%以内であり、好ましくは2%以内であり、さらに好ましくは1%以内であり、なお一層好ましくは0.5%以内、例えば0.1%以内であり、好ましくは、可能な限り互いに等しい。このことは、上述したように、レイアウトを最適化することにより実現される。このことは、例えば、対称性を保つことであり、そして、結果として上述した利点の集合を確かにする。さらに、それは、外側の磁気結合を削減することの効率を高めることを助ける。
【0053】
好ましい実施形態では、本バランは、バランの本体を描くのに用いられるトップ金属層とは別の金属層(15,18)を用いて外部端子(16,19)に接続されている平衡内部端子(17,20)を有し、その金属層は、バランの全てのレイアウトを横切り、それにより実質的に等しい容量性負荷を、それぞれ一次および二次巻線に、且つ、それぞれ左及び右の巻線に提供する。このことは、対称性を保つことであり、そして、結果として、例えば上述した利点の集合を確かにする。
【0054】
好ましい実施形態では、本バランは、平衡内部端子(17,20)にバランのレイアウトの中間軸レベルにて接続されている、別の金属層(15,18)との接続部を有し、それにより左及び右の巻線への等しい抵抗性の経路を示す。このことは、対称性を保つことであり、そして、結果として、例えば上述した利点の集合を確かにする。
【0055】
好ましい実施形態では、本バランは、下方の金属層(14)をさらに備え、平衡バランの中間点(13)は、全てのレイアウトを横切って、外側へ向かって下方の金属層(14)に接続されていて、それにより等しい容量性負荷を、それぞれ、一次および二次巻線に、且つ、左及び右の巻線に示す。このことは、対称性を保つことであり、そして、結果として、例えば上述した利点の集合を確かにする。
【0056】
追加的な態様では、本発明は、本発明の対称な8の字形状のバランを備える、無線モデム、放送受信機、放送送信機、シングルエンド信号を差動に若しくは逆も同様に変換する装置、インピーダンス変換器、又は、それらの組み合わせに関する。バランは、このような装置の個別部品であり得、または、ICの一部を形成し得、そのICは本発明の追加的な態様であり、そのICは装置に組み込まれ得る。
【0057】
さらに追加的な態様では、本発明は、本発明の対称な8の字形状のバランを備える、WiMax/Wibro、TvoM、GSM、EDGE、UMTS、CDMA、Bluetooth、無線LAN、若しくは、テレビ受信機、FM放送受信機のような受信機、のようなモバイル又はポータブルスペース用のような装置、特にRF装置、ダイポールアンテナ、及び、平行線伝送線路に関する。バランは、このような装置の個別部品であり得、または、ICの一部を形成し得、そのICは本発明の追加的な態様であり、そのICは装置に組み込まれ得る。
【0058】
さらに追加的な態様では、本発明は、本発明の対称な8の字形状のバランを備える、通信装置、又は、差動変換用シングルエンド装置若しくは逆も同様な装置に関する。
【0059】
本発明は、シングルエンド信号を差動に若しくは逆も同様に変換する装置、または、インピーダンス変換器若しくはマッチングネットワークの一部のようなバランまたはトランスを用いている、全ての無線モデム、並びに、放送受信機及び送信機に適用可能である。
【0060】
従って、本発明は、モバイルおよびポータブルスペースにおける半導体産業により開発される装置、例えば、TV FE、モバイル/ポータブル/地上波/衛星/ケーブル/モデム ケーブル受信機、Bluetooth、無線LAN等のような接続装置、WiMax/WibroのようなRF製品、TvoMのような個人用製品、GSM、EDGE、UMTS、CDMA等のようなセルラー製品に、特に適用可能である。
【0061】
本バランは、例えば、半導体産業で用いられているもの又は他の同様なプロセスのような、現在または将来利用可能な任意の標準的なプロセスを用いて製造され得る。当業者は、様々なプロセスの選択を理解し、且つ、様々なプロセスにより提供される、これらのプロセスに特有な可能性をさらに理解するであろう。
【0062】
本発明は、本発明の範囲を制限することを意図していない次の図及び例により、さらに説明される。当業者は、様々な実施形態が組み合わせられ得ることを理解するであろう。
【0063】
(図面の詳細な説明)
図1、LNAとミキサーとの間のバランの使用を示している受信機の経路。これは、通信目的のアンテナおよび入力マッチングネットワークをさらに備える、従来技術の構成の一般的な配置である。
【0064】
図2、最終増幅段と出力マッチングネットワークとの間に配置されたバランを有する送信機の経路。これは、通信目的のアンテナおよび電力利得増幅器をさらに備える、従来技術の構成の一般的な配置である。
【0065】
図3A、従来技術(US5477204)。示されているバランは、明らかに対称ではなく、そして、従って十分に平衡ではない。さらに、一次巻線の導電トラックは、相互に平衡ではなく、二次巻線も平衡ではない。
【0066】
図3B、従来技術(図3A)に関連する電気回路図。
【0067】
図3C、図示された一次及び二次電流を含む、図3Aに関連する電気回路図。図3A−3Cは、より詳細に以上のことが表現されている。
【0068】
図4A、提案された発明のバランの図。参照符号は、以上に詳細に説明されている。
【0069】
図4B、図4Aに示されたバランに関連する等価電気回路図。誘導差動電流は、両方の出力分岐(16,19)にて同一であることに留意されたい。より詳細には、図4は、一次および二次ループを有するバランを表している。これらのループは、8の字形状の構造を有していて、それにより外側の磁界放射を減らし、且つ、内側の相互結合を増加する。このようなバランは、8の字形状の構造により、放射された磁界または他の発生源(ソース)に起因した干渉に対して影響を受けない。
【0070】
バランは、左側と右側の間で等しい一次巻線を有し、これは従来技術に対して有利である。
【0071】
バランは、左側と右側の間で等しい二次巻線を有し、これは従来技術に対して有利である。
【0072】
一次および二次ループ(loops)の幾何学的および電気的中間点(13)は、重ねられ、且つ、バランのレイアウトにおける同一レベルに置かれていて、これは従来技術に対して有利である。
【0073】
一次および二次ループは、バランの左及び右側に関して、等しい電気抵抗と、容量性の等価な寄生成分と、を有していて、これは従来技術に対して有利である。
【0074】
一次および二次ループ間の磁気結合は、バランの左及び右のループに関して、等しい値を有していて、これは従来技術に対して有利である。
【0075】
バランの平衡内部端子(17,20)は、外部端子(16,19)に、全てのレイアウトを横切る別の金属層(15,18)で接続されて、それにより等しい容量性負荷を、一次/二次、左及び右のループに示す。
【0076】
別の金属層(15,18)との接続部は、平衡内部端子(17,20)にバランのレイアウトの中間軸レベルにて接続されていて、それにより左及び右のループへの等しい抵抗性の経路を示す。
【0077】
平衡バランの中間点(13)は、全てのレイアウトを横切って、外側へ向かって下方の金属層(14)に接続されていて、それにより等しい容量性負荷を、一次/二次、左及び右のループに示す。
【0078】
バランは、シングルエンド−差動変換器又は逆も同様として用いられる、高度な差動の平衡インピーダンスを示し、これは従来技術に対して有利である。
【0079】
バランは、シングルエンド−差動変換器又は逆も同様として用いられる、低挿入損失を特徴付け、これは従来技術に対して有利である。
【0080】
バランが差動−シングルエンド変換器として用いられる場合、それは、高いコモンモード除去を特徴付け、これは従来技術に対して有利である。
【0081】
図5A、5B、不平衡のバランの側で増加した巻線数を有して、インピーダンス変換比を変更する例。従って、本バランは、目毎に1つの巻線、2つの巻線、3つの巻線等、および、可変の他の特性を有し得、それにより、可変のインピーダンス変換比を達成する。このような選択肢(オプション)は、通常、従来技術のバランには備えられていない。
【0082】
図6A、6Bおよび6C、図6A:平衡端子と同一または反対側に、不平衡端子を接続することの柔軟性を示す例(結合した又は交差した配置)、図6B:直交する側に、不平衡端子を接続することの柔軟性を示す例、図6C:斜め方向側に、不平衡端子を接続することの柔軟性を示す例。この柔軟性は、不平衡端子側またはグランドに接続されるべき端子の、バランの外部接続による容量性、抵抗性および誘導性の寄生を最小化することに役立つ。それは、また、バランの方向と配置を緩和することを可能にして、それによりさらに外側の磁気結合を最小化する。
【0083】
図7、接続部とバランの巻線との間の削減された寄生容量を有する、同一のデバイスの側における不平衡端子の接続部の他の例。端子の接続部と、バランのコアの内部巻線との間の重ね合わされた領域は、この例において、前の例と比較して少なくされている。このことは、全体的な容量性の寄生と、それによる電気的な損失と、を削減することに役立つ。
【0084】
従って、図5−7は、図4に詳述された本バランの更なる例を示す。これらの図に関する更なる所見は、以下に示される。
【0085】
本バランは、組み合わされた(interlaced)一次および二次ループで作られていて、それにより最大の磁束伝達および最小の挿入損失を達成する。明瞭化のために、図(4A,5Aおよび5B)において、バランの平衡ループ(10)はクリアな線(ワイヤ)で描かれていると共に、不平衡ループ(11)は点(ドット)付の線(ワイヤ)で描かれている。しかし、それらは、好ましくは両者共に同一の金属層に対応する。破線の線(ワイヤ)は、別の接続金属層(14,15および18)に対応する。
【0086】
シングル−差動変換器としてのバランの使用により、一次ループは好ましくは不平衡ループ(11)に対応し且つ二次ループは好ましくは平衡ループ(10)に対応し、又は、差動−シングル変換器としてのバランの使用により、一次ループは平衡ループ(10)に対応し且つ二次ループは不平衡ループ(11)に対応する。
【0087】
バランは、好ましくは、左側と右側の間で、等しい一次巻線を有するように作られている。バランは、好ましくは、左側と右側の間で、等しい二次巻線を有するように作られている。バランは、好ましくは、一次および二次ループの幾何学的および電気的中間点(13)が、重ねられ、且つ、同一レベルに置かれるように、作られている。バランの一次および二次ループは、好ましくは、左および右側に関して、実質的に等しい抵抗性および容量性成分を有している。また、一次および二次ループ間の磁気結合は、左および右ループに関して、実質的に等しい値を有している。
【0088】
バランの平衡内部端子(17,20)は、好ましくは、外部端子(16,19)に、全てのレイアウトを横切る別の金属層(15,18)を用いて接続されて、それにより実質的に等しい容量性負荷を、一次/二次、左及び右のループに提供する。また、これらの別の金属層(15,18)との接続部は、平衡内部端子(17,20)にバランのレイアウトの中間軸レベルにて接続されていて、それにより左及び右のループへの等しい抵抗性の経路を示す。
【0089】
バランは、8の字形状の構造に関して設計されている。図4Aに示すように、電流は、それぞれ一次および二次ループを通って、左および右の巻線において逆方向を有していて、それにより実質的に外部の磁界放射を削減すると共に内部の相互結合を増加する。このことは、また、放射された磁界または他の発生源に起因した干渉に対するバランの耐性を増加させる。
【0090】
本発明に開示された技術の適用は、必要に応じた任意のインピーダンス変換比を実現することに拡張され得る。それは、主に、一次または二次ループにおいて、巻線の数を増加または減少することから成るであろう。2つの例(図5A及び5B)は、不平衡の巻線(それは一次または二次ループであり得、バランの用途(4)に依存する)は、前述された、実質的に同じレイアウト技術、特長及び利点に関して、インピーダンス変換比が要求されたレベルに適合するように変更されるという、この事実を説明するために与えられる。
【0091】
図6A,6B,6C及び7は、前述された、実質的に同じレイアウト技術、特長及び利点に関して、任意の側(平衡端子と同一または逆、結合した又は交差した配置、直交または対角の側)の不平衡端子を接続することの柔軟性の例を提供する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、平衡−不平衡(バラン(BALUN))部品に関する。バランの様な集積部品は、無線周波数の回路で絶対的に必要ではないにせよ、現実の要求になっている。
【0002】
バラン(平衡−不平衡(BALanced-to-UNbalanced))部品は、無線周波数の回路で頻繁に用いられて、インピーダンス変換、及び、差動信号からシングルエンド信号への変換又は逆も同様を主に確実にする。図1及び2は、例えば、それぞれ、受信機および送信機の経路を経由したバランを用いたブロックダイアグラムを示す。
【背景技術】
【0003】
バランは、平衡線(逆方向の等しい電流を有する2つの導電体を有する、ツイストペアケーブルのようなもの)を、不平衡線(1つのみの導電体とグランドを有する、同軸ケーブルのようなもの)に接続するデバイスである。バランは、変圧器(トランス)の一種である。それは、不平衡信号を平衡信号に、又は逆も同様に、変換するのに用いられる。バランは、伝送線路を絶縁し、そして、平衡出力を提供する。バランの典型的な使用は、テレビアンテナである。その用語は、平衡(balanced)と不平衡(unbalanced)を組み合わせることに由来する。
【0004】
バランでは、一方の端子の組は平衡にされていて、即ち、電流は等しい大きさで逆の位相である。他方の端子の組は、不平衡にされていて、片側は電気的グランドに接続され、且つ、他方は信号を伝える。バラン変圧器は、無線または有線通信システムの様々な部分の間で用いられ得る。
【0005】
図1において、バランは低雑音増幅器(LNA)の後に用いられて、ミキサーの入力にて、シングルエンドの受信信号を差動に変換する。
【0006】
図2において、バランは最終増幅段の後に用いられて、出力マッチング回路を介してアンテナに接続される前に、出力差動信号をシングルエンドに変換する。
【0007】
受信機の場合、いくつかの問題が起こる。ミキサーの前に且つほとんど受信機チェーンの最初に、自然に置かれたバランは、結合した磁界及び干渉に高い感度レベルを示し、このことは、全体の受信機の性能に著しく影響を及ぼし得る。放射された磁界及び干渉に対して低い感度のバランの必要性が極めて重要になっている。
【0008】
さらに、ミキサーに示される出力の差動インピーダンスは、ミキサーの遇数次高調波除去に影響を及ぼすであろうと共に遇数次高調波歪みを生成し得るミスマッチ(不一致)を避けなければならない。
【0009】
また、高い挿入損失は入力ノイズフィギュア(noise Figure)に直接的に影響を及ぼし得るため、バランの挿入損失に注意が払われなければならない。
【0010】
送信機の場合、いくつかの問題が起こる。高パワーの信号を伝えるバランは、従って、非常に高いノイズの放射源になる。低磁界放射構造の必要性が存在する。
【0011】
さらに、コモンモード信号とノイズがシングルエンド出力に変換され得ることは、避けられるべきである。
【0012】
また、電力を節約するために低挿入損失が必要とされる。
【0013】
従って、このような部品は、通信デバイスに一般に用いられ、インピーダンス変換、及び、シングルエンド−差動変換又は逆も同様、を達成する。しかし、多数の従来技術の部品は、低磁界放射および結合した干渉への低感度を確保しない。さらに、コンパクトな空間面積のバランを実現するのに相互結合が役立つ部品は提供されない。提案された構造は、上述されたものの様に、多数の他の欠点および問題を正さない。典型的に、従来技術のバランは、さらに、挿入損失特性を著しく増加して、且つ、コモンモードの注入されたノイズを被る。
【0014】
さらに、バランが低磁界放射および結合した干渉への低感度を有することは重要である。
【0015】
US5,477,204は、図3に示されるバランを表している。この開示は、最も近い従来技術と見なされる。
【0016】
実際、上記開示(図3A及び3B)におけるレイアウトと電気回路図を一致させるために、107の接続は、破線の長方形が追加された下側に移されなければならず、そのようにして、図3Bが示すように、それが104に直列に接続される。実際、それが図3Aに描かれるように、107は、104の代わりに、112に直列に接続されていて、且つ、112は、バランのシングルエンド入力であり、そのことは意味をなすように思えない。
【0017】
この構造の主な問題は、一次および二次ループ間の結合および磁気伝達にある。一次(116−120)および二次(118−122)を成すワイヤの長さは、その特許が言及しているように、十分に等しい。しかし、その構造に起因して、左側で、一次(白で経路が示されている)は、二次(破線で経路が示されている)より長く且つ多くの巻線を有していて、且つ、右側で、短く且つ少ない巻線を有している。このことは、以下の欠点をもたらす。
【0018】
さらに、一次および二次の実際の幾何学的な中間点は、互いに近くに位置されていない。実際は、このことは、一次から二次ループへの伝達をもたらす。
【0019】
一次は二次より左側で多くの巻線を有し、且つ、右側で少ないので、結論は、二次において誘導により生成された電流が右のループ(i2)より左のループ(i1)で大きいであろう(図3C参照)ということである。このことは、重大な欠点である。
【0020】
さらに、出力電流(104,110)及び出力インピーダンスは、もはや十分に差動ではなく、そして、ミスマッチが生成される。
【0021】
次の欠点は、誘導電流(i1−i2)の一部がグランドビア107に流れ、そして、この電流は無駄な電力と見なされるため、それは挿入損失を悪化させるであろう、ということである。
【0022】
交差結合係数(crossed coupling coefficients)は、これらの結論を何も変化させない、ということに留意されたい。というのも、それらは等しい寄与を加え得るためである。従って、上述の不利な点は、存在したままである。
【0023】
ここで、もし我々がこのバランを差動−シングルエンド変換器として考えると、我々は同じ不利な点、即ち、入力インピーダンスは十分に差動ではない、107を通る電流の伝導による劣化した挿入損失がある、を見出すであろう。
【0024】
さらに、この場合、他の欠点が言及され得る。それは、平衡側の入力(104,110)に注入された任意のコモンモードノイズ又は信号の、悪い除去率である。それは、一次及び二次ループ間の結合に起因した、不平衡側(112,114)での望ましくない出力電流をもたらすであろう。
【0025】
従って、US5,477,204に開示されたバランは、未だ多数の不利な点を有している。いくつかの他のバランは、従来技術から知られている。
【0026】
US6683510 A1(D1)は、電気的に絶縁性または半絶縁性の、平面構造を定義する基板上に形成された、2組の平面の交互配置されたスパイラルコイルを用いた結合伝送線路バラン構造を開示している。各組の1つのコイルは直列に接続されて、バランの入力伝送線路を定義し、その伝送線路の一端は開回路である。バランは、MMICデバイスにとって興味がある周波数において、超広帯域幅特性を提供し、MMICデバイスの製造に用いられる同じ技術を用いて製造され、且つ、それ自体をMMICデバイス内に適用するのに役立つ物理的な大きさである。バランは、その中心線について対称である。第1及び第2のループは、右及び左側において、同じ長さ及び数の巻線を有する。
【0027】
しかし、US6683510 A1は、バランは8の字形状であると共に幾何学的および電気的中間点が重ねられ且つ同一面にあることを、記述していない。これらの特長は知られていない。
【0028】
US7199682 B1(D2)は、電気的に直列な2つの一次巻線で形成された第1の導電線を有し、そして、その長さはトランスの中心動作周波数の関数であり、電気的に直列な2つの二次巻線で形成されて、2つずつ一次巻線と結合した、第2の導電線を有し、その長さは上記中心周波数の関数である、モード・スイッチングトランスを開示している。導電線は、トランスの求められるインピーダンス比に応じて選択される異なる幅を示す。
【0029】
US2006097820 A1(D3)は、層数を増加させること及びその機能を低下させること無く容易にプリント回路基板に組み込まれ得る、プリント回路基板内蔵型の平面バランを開示している。平衡信号伝送線路1と不平衡信号伝送線路2は、側面が互いに対向して、同一面に形成されている。誘電体層3は、これらの伝送線路間、及び、伝送線路と、線路1及び線路2に実質的に平行に配置されると共に所定の距離の間隔を空けられたグランド電位層4と、の間に備えられている。
【0030】
US6653910 B1(D4)は、基板を備え、その基板はその上に形成された第1、第2、第3および第4の伝送線路を有する、一体的に集積可能なスパイラルバランを開示している。第1の伝送線路は、入力信号を受け取るように結合された第1の端部と、第2の端部とを有している。第1の伝送線路は、それの第1の端部からそれの第2の端部へ第1の方向に巻く螺旋を形成している。第2の伝送線路は、第1の端部と、第1の伝送線路の第2の端部に電気的に結合された第2の端部と、を有している。第2の伝送線路は、それの第1の端部からそれの第2の端部へ第2の方向に巻く第2の螺旋を形成している。第3の伝送線路は、第1の出力を提供する第1の端部と、第1の電位に結合する第2の端部と、を有している。第3の伝送線路は、第1の螺旋を交互配置すると共に、それの第1の端部からそれの第2の端部へ第2の方向に巻く、第3の螺旋を形成している。第4の伝送線路は、第2の出力を提供する第1の端部と、第2の電位に結合する第2の端部と、を有している。第4の伝送線路は、第2の伝送線路を交互配置すると共に、それの第1の端部からそれの第2の端部へ第1の方向に巻く、第4の螺旋を形成している。
【0031】
EP1424770 B1(D5)は、局部発振器のリークを緩和する広帯域ミキサーを開示している。LO信号は、180度互いに位相がずれた第1の中間LO信号と第2の中間LO信号とを提供する180度スプリッターに提供される。両方の第1及び第2の中間LO信号は180度位相がずれているので、180度位相がずれたLOトーンの同相の組み合わせが互いに相殺し、且つ、強いLO/RF除去を提供することにより、基本波のLOリークは、RFポートにて緩和される。RF又はマイクロ波入力信号は、パワースプリッターに提供され、第1の中間RF信号と、第2の中間RF信号とを提供する。第1の中間LO信号は第1の中間RF信号と混合され、且つ、第2の中間LO信号は第2の中間RF信号と混合されて、ミキサーの出力にて中間周波数信号を提供する。
【0032】
US5818308 A1(D6)は、互いに線路長が等しくされた複数の結合線路を有して、出力信号間の位相差を求められた範囲内に設定する、結合線路要素を開示している。結合線路は、巻かれて螺旋部を形成する。延長部は、螺旋部の内部の巻線を形成している1つ以上の結合線路の端部に連続的に形成される。この結合線路の線路長は、その結果、螺旋部の最外部の巻線を形成している結合線路のそれに等しくされている。また、結合線路は、逆方向に巻かれた2つの螺旋部に形成され得る。
【0033】
US2006087383 A1(D7)は、1組の金属コイル構造と、バランの動作周波数に応じて選択された厚さを有する、間に入っている誘電体層と、を含むバランを開示している。誘電体層の厚さは、バランを調整すると共に、その動作周波数におけるその自己インダクタンスを改善するのに用いられ得る。さらに、1組の金属コイル構造を有する、非対称に形成されたバランは、その出力信号における振幅誤差を最小化するように選択される。本教示によるバランは、その出力端子の配置における非対称性も含み得る。バランの出力端子の配置は、その出力信号における位相誤差を最小化するように調整され得る。
【0034】
要約すれば、D2−D5は、対称のバランを開示している。D6は、側面は対称であることを言及しているが、図面はループの長さに関して非対称を示している。D7は非対称のバランを開示している。
【0035】
さらに、D1、D3−D5、及び、D7は、いわゆる“非8の字(anti-8)”構造を開示して、そして更に、D5は図5及び6で、バランよりむしろコンバイナー/スプリッターの設計を提案している。
【0036】
非8の字形状の構造は、右及び左のループで、同じ方向に流れる電流を有している。このことは、加算され得る、同じ方向の外部の非近接磁界を生成し、且つ、従って、このようなデバイスの放射および結合特性を増加させる。各ループの内側で内部場が逆方向であるので、相互結合も減少するであろう。従って、“非8の字形状”の構造は、主に結合およびインダクタンス値に関して、全体的に劣った性能を示す。
【0037】
US6,097,273及びUS6,396,362も、非8の字形状の構造の原理に基づいたバランを開示している。電流は、内部場を増加して外部のものを削減する代わりに、得られる磁界が巻線の内側では互いに減少すると共に外部場では増加する傾向があるように、流れ、且つ、そのことは、挿入損失のレベル及び磁気伝達効率に関する直接の悪化した結果を有する。
【0038】
上記開示が有する問題は、低磁界放射および結合した干渉への低感度を有するバランは提供されないことである。
【0039】
従って、従来技術のバランは、上記問題または欠点の1つ以上がある。従って、さらに最適化されたバランを提供することにより、上記問題の1つ以上を解決し、且つ/又は、欠点の1つ以上を克服する必要性が、まだある。
【0040】
従って、本発明は、挿入損失のような上述の問題の1つ以上を解決することを目的とする。
【発明の概要】
【0041】
本発明は、他のものとの間で低磁界放射および結合した干渉への低感度を確保する、コンパクトな空き領域にバランを実現することに役立つ相互結合を有する、新規の対称な8の字形状のバラン(symmetrical eight-shaped balun)と共に、そのバランを備える装置を提示する。さらに、提案した構造は、上述したような従来技術の多数の欠点および問題を修正する。それは、高度に対称の磁気伝達および平衡側の高度に差動のインピーダンスを特徴付ける。それは、挿入損失特性を大幅に最小化して、且つ、コモンモードの注入されたノイズへの高い耐性を確保する。
【0042】
本発明によるバラン構造は、これら及び上述の問題の全て又は大部分を、次の段落に詳細に示されるように、克服および修正できる。
【0043】
本8の字形状の構造において、電流は右と左のループに関して反対方向に流れる。このことは、互いにキャンセルする逆方向の外部の非近接の磁界(external magnetic far-fields)を生成することであり、その上、内部の磁界は同一方向にあるので、ループ間の相互インダクタンスを増加させる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】LNAとミキサーとの間のバランの使用を示している受信機の経路。
【図2】最終増幅段と出力マッチングネットワークとの間に配置されたバランを有する送信機の経路。
【図3A】従来技術のバラン(US5477204から)。
【図3B】従来技術(図3A)に関連する電気回路図。
【図3C】図示された一次及び二次電流を含む、図3Aに関連する電気回路図。
【図4A】提案された発明のバランの図。
【図4B】図4Aに示されたバランに関連する等価電気回路図。誘導差動電流は、両方の出力分岐(16,19)にて同一であることに留意されたい。
【図5A】不平衡のバランの側で増加した巻線数を有して、インピーダンス変換比を変更する例。
【図5B】不平衡のバランの側で増加した巻線数を有して、インピーダンス変換比を変更する例。
【図6A】平衡端子と同一または反対側に、不平衡端子を接続することの柔軟性を示す例(結合した又は交差した配置)。
【図6B】直交する側に不平衡端子を接続することの柔軟性を示す例。
【図6C】斜め方向側に不平衡端子を接続することの柔軟性を示す例。
【図7】接続部とバランの巻線との間の削減された寄生容量を有する、同一のデバイスの側における不平衡端子の接続部の他の例。
【発明を実施するための形態】
【0045】
第1の態様において、本発明は、対称な8の字形状のバラン(平衡−不平衡)部品であって、第1および第2の目を備え、各目は、巻線を形成する導電トラックを備え、前記目は等しい数の一次巻線を備え、その一次巻線において、動作中、電流が第1の目では第1の方向に、且つ、第2の目では第2の方向に流れ、その一次巻線は第1の端子から第2の端子への第1の導電経路を形成していて、前記目は、さらに、等しい数の二次巻線を備え、その二次巻線において、動作中、電流が第1の目では第1の方向に、且つ、第2の目では第2の方向に流れ、その二次巻線は第3の端子から第4の端子への第2の導電経路を形成していて、一次および二次巻線の幾何学的および電気的中間点は、全て重ねられ、且つ、さらに前記バランにおける同一面に置かれている、対称な8の字形状のバランに関する。
【0046】
本バランは8の字形状を有しており、その8の字形状は実質的に対称である。8の字形状は、第1および第2の目(アイ(eye))を備え、各目は、1以上の巻線を形成している導電トラックを備える。導電トラックは、好ましくは、銅、アルミニウム、タングステン又はそれらの組み合わせのような金属から形成されている。トラックは、1−50μm、例えば10μmの幅を有し得、そして、1−30μm、例えば10μmの厚さを有し得る。本図面は、同様の相対的な寸法を有するが上述したμmの範囲と対照的にmmの範囲であるPCBの領域にも適用可能である、一般のバランを表すことに留意されたい。従って、本バランは、非常に広い寸法の範囲に適用可能である。
【0047】
巻線内で、バランが動作中である時に電流は流れ得る。一次及び二次巻線は、その中の電流を識別する目的でも区別される。目の中で、電流は一次巻線内を第1の方向に、例えば時計回りに流れる一方で、それは二次巻線内を第2の方向に、例えば反時計回りに流れ、又は逆も同様である。さらに、第1の目の一次巻線の電流は、第2の目の一次巻線の電流とは異なる方向に流れ、例えば、それぞれ時計回りおよび反時計回り、又は逆も同様である。結果として、第1の目の一次巻線の電流は、第2の目の二次巻線の電流と同じ向きに流れ、且つ、第2の目の一次巻線と第1の目の二次巻線に関しても同じであり、例えば、時計回りおよび反時計回り、又は逆も同様である。
【0048】
幾何学的な中間点(13)は仮想点であり、それは8の字形状のバランの中心を示し、地理的中心または同等の質量と見なす質量中心に相当する。実際、それは、バランの主平面に垂直な2つ折の対称軸を備え、その主平面にトラックが位置されている。さらに、電気的な中間点(13)は、幾何学的な中間点に一致する。電気的な中間点は、2つ折の対称軸も備える。実質的に対称なバランを形成しているトラックの特有な配置の結果、1つの端子から他の端子への電気的経路の長さは、電気的な中間点によって2つの等しい長さに分割されている。同じことは、幾何学的な中間点に適用できる。
【0049】
目の形状は、実質的に円形、長方形、例えば正方形、六角形、八角形、または、多角形であり得るが、好ましくは実質的に円形、例えば円形である。円形の目は、上述した態様の何れかで、最良の性能を提供する。
【0050】
さらに、8の字形状は、好ましくは、長さ(図4aにおける左から右)が8の字形状の幅(図4aにおける下部から上部)の0.8−3.0倍であり、好ましくは幅の1.2−2.5倍、例えば約2倍である。このような8の字形状は、実質的に円形の目を提供し、例えば、最良の磁気的性能を提供する。
【0051】
好ましい実施形態では、本バランは一次および二次巻線を有しており、それは、一次の左および右、並びに、二次の左および右をそれぞれ対比して(上述したことを参照されたい)、それらは実質的に等しい電気抵抗および実質的に等価な容量性の寄生成分を有している。電気抵抗は、用いられる物質、例えば導電トラックのそれ、例えば用いられる金属のそれ、トラックの幅および厚さの特性である。従って、用いられる物質のこれらの特性、または、これらの特性の組み合わせ効果、しかし、好ましくは全ての個々の特性、例えばトラックの長さ、厚さなどは、結果として、実質的に等しい。本発明は、互いに5%以内の、好ましくは2%以内の、さらに好ましくは1%以内の、なお一層好ましくは0.5%以内の、例えば0.1%以内の、好ましくは、可能な限り互いに等しい、それぞれの電気抵抗を有することを意図している。互いに5%以内の、好ましくは2%以内の、さらに好ましくは1%以内の、なお一層好ましくは0.5%以内の、例えば0.1%以内の、好ましくは、可能な限り互いに等しい、容量性の寄生成分を有することも意図している。このことは、バランが十分に対称である本レイアウトで実現される。このことは対称性を保ち、そして、結果として、例えば次の利点、即ち、電気的および幾何学的な中間点の重ね合わせ、並びに、シングルエンド−差動変換又は逆も同様、挿入損失およびコモンモードノイズへの耐性の改善の、例えば集合を確かにする。
【0052】
好ましい実施形態では、本バランは、バランの左および右巻線に関して、等しい値を有する一次および二次巻線間の磁気結合を有している。従って、一次の左及び右と、二次の左及び右と、の間の磁気結合は、それぞれ、互いの5%以内であり、好ましくは2%以内であり、さらに好ましくは1%以内であり、なお一層好ましくは0.5%以内、例えば0.1%以内であり、好ましくは、可能な限り互いに等しい。このことは、上述したように、レイアウトを最適化することにより実現される。このことは、例えば、対称性を保つことであり、そして、結果として上述した利点の集合を確かにする。さらに、それは、外側の磁気結合を削減することの効率を高めることを助ける。
【0053】
好ましい実施形態では、本バランは、バランの本体を描くのに用いられるトップ金属層とは別の金属層(15,18)を用いて外部端子(16,19)に接続されている平衡内部端子(17,20)を有し、その金属層は、バランの全てのレイアウトを横切り、それにより実質的に等しい容量性負荷を、それぞれ一次および二次巻線に、且つ、それぞれ左及び右の巻線に提供する。このことは、対称性を保つことであり、そして、結果として、例えば上述した利点の集合を確かにする。
【0054】
好ましい実施形態では、本バランは、平衡内部端子(17,20)にバランのレイアウトの中間軸レベルにて接続されている、別の金属層(15,18)との接続部を有し、それにより左及び右の巻線への等しい抵抗性の経路を示す。このことは、対称性を保つことであり、そして、結果として、例えば上述した利点の集合を確かにする。
【0055】
好ましい実施形態では、本バランは、下方の金属層(14)をさらに備え、平衡バランの中間点(13)は、全てのレイアウトを横切って、外側へ向かって下方の金属層(14)に接続されていて、それにより等しい容量性負荷を、それぞれ、一次および二次巻線に、且つ、左及び右の巻線に示す。このことは、対称性を保つことであり、そして、結果として、例えば上述した利点の集合を確かにする。
【0056】
追加的な態様では、本発明は、本発明の対称な8の字形状のバランを備える、無線モデム、放送受信機、放送送信機、シングルエンド信号を差動に若しくは逆も同様に変換する装置、インピーダンス変換器、又は、それらの組み合わせに関する。バランは、このような装置の個別部品であり得、または、ICの一部を形成し得、そのICは本発明の追加的な態様であり、そのICは装置に組み込まれ得る。
【0057】
さらに追加的な態様では、本発明は、本発明の対称な8の字形状のバランを備える、WiMax/Wibro、TvoM、GSM、EDGE、UMTS、CDMA、Bluetooth、無線LAN、若しくは、テレビ受信機、FM放送受信機のような受信機、のようなモバイル又はポータブルスペース用のような装置、特にRF装置、ダイポールアンテナ、及び、平行線伝送線路に関する。バランは、このような装置の個別部品であり得、または、ICの一部を形成し得、そのICは本発明の追加的な態様であり、そのICは装置に組み込まれ得る。
【0058】
さらに追加的な態様では、本発明は、本発明の対称な8の字形状のバランを備える、通信装置、又は、差動変換用シングルエンド装置若しくは逆も同様な装置に関する。
【0059】
本発明は、シングルエンド信号を差動に若しくは逆も同様に変換する装置、または、インピーダンス変換器若しくはマッチングネットワークの一部のようなバランまたはトランスを用いている、全ての無線モデム、並びに、放送受信機及び送信機に適用可能である。
【0060】
従って、本発明は、モバイルおよびポータブルスペースにおける半導体産業により開発される装置、例えば、TV FE、モバイル/ポータブル/地上波/衛星/ケーブル/モデム ケーブル受信機、Bluetooth、無線LAN等のような接続装置、WiMax/WibroのようなRF製品、TvoMのような個人用製品、GSM、EDGE、UMTS、CDMA等のようなセルラー製品に、特に適用可能である。
【0061】
本バランは、例えば、半導体産業で用いられているもの又は他の同様なプロセスのような、現在または将来利用可能な任意の標準的なプロセスを用いて製造され得る。当業者は、様々なプロセスの選択を理解し、且つ、様々なプロセスにより提供される、これらのプロセスに特有な可能性をさらに理解するであろう。
【0062】
本発明は、本発明の範囲を制限することを意図していない次の図及び例により、さらに説明される。当業者は、様々な実施形態が組み合わせられ得ることを理解するであろう。
【0063】
(図面の詳細な説明)
図1、LNAとミキサーとの間のバランの使用を示している受信機の経路。これは、通信目的のアンテナおよび入力マッチングネットワークをさらに備える、従来技術の構成の一般的な配置である。
【0064】
図2、最終増幅段と出力マッチングネットワークとの間に配置されたバランを有する送信機の経路。これは、通信目的のアンテナおよび電力利得増幅器をさらに備える、従来技術の構成の一般的な配置である。
【0065】
図3A、従来技術(US5477204)。示されているバランは、明らかに対称ではなく、そして、従って十分に平衡ではない。さらに、一次巻線の導電トラックは、相互に平衡ではなく、二次巻線も平衡ではない。
【0066】
図3B、従来技術(図3A)に関連する電気回路図。
【0067】
図3C、図示された一次及び二次電流を含む、図3Aに関連する電気回路図。図3A−3Cは、より詳細に以上のことが表現されている。
【0068】
図4A、提案された発明のバランの図。参照符号は、以上に詳細に説明されている。
【0069】
図4B、図4Aに示されたバランに関連する等価電気回路図。誘導差動電流は、両方の出力分岐(16,19)にて同一であることに留意されたい。より詳細には、図4は、一次および二次ループを有するバランを表している。これらのループは、8の字形状の構造を有していて、それにより外側の磁界放射を減らし、且つ、内側の相互結合を増加する。このようなバランは、8の字形状の構造により、放射された磁界または他の発生源(ソース)に起因した干渉に対して影響を受けない。
【0070】
バランは、左側と右側の間で等しい一次巻線を有し、これは従来技術に対して有利である。
【0071】
バランは、左側と右側の間で等しい二次巻線を有し、これは従来技術に対して有利である。
【0072】
一次および二次ループ(loops)の幾何学的および電気的中間点(13)は、重ねられ、且つ、バランのレイアウトにおける同一レベルに置かれていて、これは従来技術に対して有利である。
【0073】
一次および二次ループは、バランの左及び右側に関して、等しい電気抵抗と、容量性の等価な寄生成分と、を有していて、これは従来技術に対して有利である。
【0074】
一次および二次ループ間の磁気結合は、バランの左及び右のループに関して、等しい値を有していて、これは従来技術に対して有利である。
【0075】
バランの平衡内部端子(17,20)は、外部端子(16,19)に、全てのレイアウトを横切る別の金属層(15,18)で接続されて、それにより等しい容量性負荷を、一次/二次、左及び右のループに示す。
【0076】
別の金属層(15,18)との接続部は、平衡内部端子(17,20)にバランのレイアウトの中間軸レベルにて接続されていて、それにより左及び右のループへの等しい抵抗性の経路を示す。
【0077】
平衡バランの中間点(13)は、全てのレイアウトを横切って、外側へ向かって下方の金属層(14)に接続されていて、それにより等しい容量性負荷を、一次/二次、左及び右のループに示す。
【0078】
バランは、シングルエンド−差動変換器又は逆も同様として用いられる、高度な差動の平衡インピーダンスを示し、これは従来技術に対して有利である。
【0079】
バランは、シングルエンド−差動変換器又は逆も同様として用いられる、低挿入損失を特徴付け、これは従来技術に対して有利である。
【0080】
バランが差動−シングルエンド変換器として用いられる場合、それは、高いコモンモード除去を特徴付け、これは従来技術に対して有利である。
【0081】
図5A、5B、不平衡のバランの側で増加した巻線数を有して、インピーダンス変換比を変更する例。従って、本バランは、目毎に1つの巻線、2つの巻線、3つの巻線等、および、可変の他の特性を有し得、それにより、可変のインピーダンス変換比を達成する。このような選択肢(オプション)は、通常、従来技術のバランには備えられていない。
【0082】
図6A、6Bおよび6C、図6A:平衡端子と同一または反対側に、不平衡端子を接続することの柔軟性を示す例(結合した又は交差した配置)、図6B:直交する側に、不平衡端子を接続することの柔軟性を示す例、図6C:斜め方向側に、不平衡端子を接続することの柔軟性を示す例。この柔軟性は、不平衡端子側またはグランドに接続されるべき端子の、バランの外部接続による容量性、抵抗性および誘導性の寄生を最小化することに役立つ。それは、また、バランの方向と配置を緩和することを可能にして、それによりさらに外側の磁気結合を最小化する。
【0083】
図7、接続部とバランの巻線との間の削減された寄生容量を有する、同一のデバイスの側における不平衡端子の接続部の他の例。端子の接続部と、バランのコアの内部巻線との間の重ね合わされた領域は、この例において、前の例と比較して少なくされている。このことは、全体的な容量性の寄生と、それによる電気的な損失と、を削減することに役立つ。
【0084】
従って、図5−7は、図4に詳述された本バランの更なる例を示す。これらの図に関する更なる所見は、以下に示される。
【0085】
本バランは、組み合わされた(interlaced)一次および二次ループで作られていて、それにより最大の磁束伝達および最小の挿入損失を達成する。明瞭化のために、図(4A,5Aおよび5B)において、バランの平衡ループ(10)はクリアな線(ワイヤ)で描かれていると共に、不平衡ループ(11)は点(ドット)付の線(ワイヤ)で描かれている。しかし、それらは、好ましくは両者共に同一の金属層に対応する。破線の線(ワイヤ)は、別の接続金属層(14,15および18)に対応する。
【0086】
シングル−差動変換器としてのバランの使用により、一次ループは好ましくは不平衡ループ(11)に対応し且つ二次ループは好ましくは平衡ループ(10)に対応し、又は、差動−シングル変換器としてのバランの使用により、一次ループは平衡ループ(10)に対応し且つ二次ループは不平衡ループ(11)に対応する。
【0087】
バランは、好ましくは、左側と右側の間で、等しい一次巻線を有するように作られている。バランは、好ましくは、左側と右側の間で、等しい二次巻線を有するように作られている。バランは、好ましくは、一次および二次ループの幾何学的および電気的中間点(13)が、重ねられ、且つ、同一レベルに置かれるように、作られている。バランの一次および二次ループは、好ましくは、左および右側に関して、実質的に等しい抵抗性および容量性成分を有している。また、一次および二次ループ間の磁気結合は、左および右ループに関して、実質的に等しい値を有している。
【0088】
バランの平衡内部端子(17,20)は、好ましくは、外部端子(16,19)に、全てのレイアウトを横切る別の金属層(15,18)を用いて接続されて、それにより実質的に等しい容量性負荷を、一次/二次、左及び右のループに提供する。また、これらの別の金属層(15,18)との接続部は、平衡内部端子(17,20)にバランのレイアウトの中間軸レベルにて接続されていて、それにより左及び右のループへの等しい抵抗性の経路を示す。
【0089】
バランは、8の字形状の構造に関して設計されている。図4Aに示すように、電流は、それぞれ一次および二次ループを通って、左および右の巻線において逆方向を有していて、それにより実質的に外部の磁界放射を削減すると共に内部の相互結合を増加する。このことは、また、放射された磁界または他の発生源に起因した干渉に対するバランの耐性を増加させる。
【0090】
本発明に開示された技術の適用は、必要に応じた任意のインピーダンス変換比を実現することに拡張され得る。それは、主に、一次または二次ループにおいて、巻線の数を増加または減少することから成るであろう。2つの例(図5A及び5B)は、不平衡の巻線(それは一次または二次ループであり得、バランの用途(4)に依存する)は、前述された、実質的に同じレイアウト技術、特長及び利点に関して、インピーダンス変換比が要求されたレベルに適合するように変更されるという、この事実を説明するために与えられる。
【0091】
図6A,6B,6C及び7は、前述された、実質的に同じレイアウト技術、特長及び利点に関して、任意の側(平衡端子と同一または逆、結合した又は交差した配置、直交または対角の側)の不平衡端子を接続することの柔軟性の例を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対称な8の字形状のバラン(平衡−不平衡)部品であって、
第1および第2の目(A,B)を備え、各目は、巻線を形成する導電トラック(10,11)を備え、前記目(A,B)は等しい数の一次巻線(11)を備え、その一次巻線において、動作中、電流が第1の目では第1の方向に、且つ、第2の目では第2の方向に流れ、その一次巻線は第1の端子(22)から第2の端子(21)への第1の導電経路を形成していて、前記目(A,B)は、さらに、等しい数の二次巻線(10)を備え、その二次巻線において、動作中、電流が第1の目では第1の方向に、且つ、第2の目では第2の方向に流れ、その二次巻線は第3の端子(16)から第4の端子(19)への第2の導電経路を形成していて、一次および二次巻線の幾何学的および電気的中間点(13)は、全て重ねられ、且つ、さらに前記バランにおける同一面に置かれている、対称な8の字形状のバラン。
【請求項2】
一次および二次巻線は、実質的に等しい電気抵抗と、実質的に等価な容量性寄生成分と、を有している、請求項1に記載の対称な8の字形状のバラン。
【請求項3】
一次および二次巻線間の磁気結合は、前記バランの左及び右の巻線(A,B)に関して等しい値を有している、請求項1または2に記載の対称な8の字形状のバラン。
【請求項4】
金属層(15,18)の平衡内部端子(17,20)をさらに備え、その端子は、外部端子(16,19)に、前記バランの本体を描くのに用いられるトップ金属層とは別の金属層(15,18)を用いて接続されて、その金属層(15,18)は前記バランの全てのレイアウトを横切り、それにより実質的に等しい容量性負荷を、それぞれ一次および二次巻線(10,11)に、且つ、それぞれ左及び右の巻線(A,B)に示す、請求項1から3の何れかに記載の対称な8の字形状のバラン。
【請求項5】
別の金属層(15,18)との接続部は、前記平衡内部端子(17,20)に前記バランのレイアウトの中間軸レベルにて接続されていて、それにより左及び右の巻線への等しい抵抗性の経路を示す、請求項1から4の何れかに記載の対称な8の字形状のバラン。
【請求項6】
下方の金属層(14)をさらに備え、前記平衡バランの中間点(13)は、全てのレイアウトを横切って、外側へ向かって下方の金属層(14)に接続されていて、それにより等しい容量性負荷を、それぞれ、一次および二次巻線に、且つ、左及び右の巻線に示す、請求項1から5の何れかに記載の対称な8の字形状のバラン。
【請求項7】
請求項1から6の何れかに記載の対称な8の字形状のバランを備える、無線モデム、放送受信機、放送送信機、シングルエンド信号を差動に若しくは逆も同様に変換する装置、インピーダンス変換器、又は、これらの組み合わせ。
【請求項8】
請求項1から6の何れかに記載の対称な8の字形状のバランを備える、WiMax/Wibro、TvoM、GSM、EDGE、UMTS、CDMA、Bluetooth、無線LAN、若しくは、テレビ受信機、FM放送受信機のような受信機、のようなモバイル又はポータブルスペース用のような装置、特にRF装置、ダイポールアンテナ、及び、平行線伝送線路。
【請求項9】
請求項1から6の何れかに記載の対称な8の字形状のバランを備える、通信装置、又は、差動変換用シングルエンド装置若しくは逆も同様な装置。
【請求項1】
対称な8の字形状のバラン(平衡−不平衡)部品であって、
第1および第2の目(A,B)を備え、各目は、巻線を形成する導電トラック(10,11)を備え、前記目(A,B)は等しい数の一次巻線(11)を備え、その一次巻線において、動作中、電流が第1の目では第1の方向に、且つ、第2の目では第2の方向に流れ、その一次巻線は第1の端子(22)から第2の端子(21)への第1の導電経路を形成していて、前記目(A,B)は、さらに、等しい数の二次巻線(10)を備え、その二次巻線において、動作中、電流が第1の目では第1の方向に、且つ、第2の目では第2の方向に流れ、その二次巻線は第3の端子(16)から第4の端子(19)への第2の導電経路を形成していて、一次および二次巻線の幾何学的および電気的中間点(13)は、全て重ねられ、且つ、さらに前記バランにおける同一面に置かれている、対称な8の字形状のバラン。
【請求項2】
一次および二次巻線は、実質的に等しい電気抵抗と、実質的に等価な容量性寄生成分と、を有している、請求項1に記載の対称な8の字形状のバラン。
【請求項3】
一次および二次巻線間の磁気結合は、前記バランの左及び右の巻線(A,B)に関して等しい値を有している、請求項1または2に記載の対称な8の字形状のバラン。
【請求項4】
金属層(15,18)の平衡内部端子(17,20)をさらに備え、その端子は、外部端子(16,19)に、前記バランの本体を描くのに用いられるトップ金属層とは別の金属層(15,18)を用いて接続されて、その金属層(15,18)は前記バランの全てのレイアウトを横切り、それにより実質的に等しい容量性負荷を、それぞれ一次および二次巻線(10,11)に、且つ、それぞれ左及び右の巻線(A,B)に示す、請求項1から3の何れかに記載の対称な8の字形状のバラン。
【請求項5】
別の金属層(15,18)との接続部は、前記平衡内部端子(17,20)に前記バランのレイアウトの中間軸レベルにて接続されていて、それにより左及び右の巻線への等しい抵抗性の経路を示す、請求項1から4の何れかに記載の対称な8の字形状のバラン。
【請求項6】
下方の金属層(14)をさらに備え、前記平衡バランの中間点(13)は、全てのレイアウトを横切って、外側へ向かって下方の金属層(14)に接続されていて、それにより等しい容量性負荷を、それぞれ、一次および二次巻線に、且つ、左及び右の巻線に示す、請求項1から5の何れかに記載の対称な8の字形状のバラン。
【請求項7】
請求項1から6の何れかに記載の対称な8の字形状のバランを備える、無線モデム、放送受信機、放送送信機、シングルエンド信号を差動に若しくは逆も同様に変換する装置、インピーダンス変換器、又は、これらの組み合わせ。
【請求項8】
請求項1から6の何れかに記載の対称な8の字形状のバランを備える、WiMax/Wibro、TvoM、GSM、EDGE、UMTS、CDMA、Bluetooth、無線LAN、若しくは、テレビ受信機、FM放送受信機のような受信機、のようなモバイル又はポータブルスペース用のような装置、特にRF装置、ダイポールアンテナ、及び、平行線伝送線路。
【請求項9】
請求項1から6の何れかに記載の対称な8の字形状のバランを備える、通信装置、又は、差動変換用シングルエンド装置若しくは逆も同様な装置。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図7】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図7】
【公表番号】特表2011−523509(P2011−523509A)
【公表日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510981(P2011−510981)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056355
【国際公開番号】WO2009/144211
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
2.Bluetooth
【出願人】(510000633)エスティー‐エリクソン、ソシエテ、アノニム (59)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056355
【国際公開番号】WO2009/144211
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
2.Bluetooth
【出願人】(510000633)エスティー‐エリクソン、ソシエテ、アノニム (59)
【Fターム(参考)】
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