説明

無線基地局試験システム

【課題】 無線基地局装置を介した通信におけるデータの伝送遅延を上り/下りで測定することができる無線基地局試験システムを提供すること。
【解決手段】 無線端末装置をエミュレートする擬似無線端末装置2と、無線基地局装置1を介した通信を制御する無線ネットワーク制御装置をエミュレートする擬似無線ネットワーク制御装置3とを備え、擬似無線端末装置2は、無線基地局装置1を介して擬似無線ネットワーク制御装置3に送信されるデータの通信に使用されるプロトコルのうち、無線通信および有線通信に共通の最も下位のプロトコルレイヤでデータに時刻情報を付与する時刻情報付与部を有し、擬似無線ネットワーク制御装置3は、擬似無線端末装置2によって送信されたデータから時刻情報を抽出する時刻情報抽出部と、時刻情報に基づいて擬似無線端末装置2から擬似無線ネットワーク制御装置3までに生じるデータの伝送遅延を測定する伝送遅延測定部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話などの無線端末装置による無線通信の基地局に設置される無線基地局装置を試験する無線基地局試験システムに関し、詳しくは、無線基地局装置を介した通信において無線端末と無線ネットワーク制御装置との間で生じるデータの伝送遅延を測定する無線基地局試験システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、伝送遅延を測定するものとしては、例えば、連続的に所定のタイミングでタイムスタンプを発生し、発生したタイムスタンプをそれぞれ複数のATMセルに付与して、タイムスタンプを付与した複数のATMセルを被測定系に送信し、被測定系から帰還したATMセルを受信し、受信したATMセルからタイムスタンプを検出し、検出したタイムスタンプと、ATMセルが受信された時点におけるタイムスタンプとから、ATMセルの転送遅延時間を求めるATMセル転送遅延測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−271119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のATMセル転送遅延測定装置においては、無線端末装置と無線通信し、無線ネットワーク制御装置と有線通信する無線基地局装置を介した通信におけるデータの伝送遅延を測定する場合には、無線端末装置から無線ネットワーク制御装置までに生じるデータの伝送遅延、および無線ネットワーク制御装置から無線端末装置までに生じるデータの伝送遅延を測定することができないといった課題があった。
【0004】
本発明は、従来の課題を解決するためになされたもので、無線基地局装置を介した通信におけるデータの伝送遅延を測定する場合に、無線端末装置から無線ネットワーク制御装置までに生じるデータの伝送遅延、および無線ネットワーク制御装置から無線端末装置までに生じるデータの伝送遅延を測定することができる無線基地局試験システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の無線基地局試験システムは、無線基地局装置(1)と無線通信することによって前記無線基地局装置を介した通信を行う無線端末装置をエミュレートする擬似無線端末装置(2)と、前記無線基地局装置と有線通信することによって前記無線基地局装置を介した通信を制御する無線ネットワーク制御装置をエミュレートする擬似無線ネットワーク制御装置(3)とを備え、前記擬似無線端末装置は、前記無線基地局装置を介して前記擬似無線ネットワーク制御装置に送信されるデータの通信に使用されるプロトコルのうち、前記無線通信および前記有線通信に共通の最も下位のプロトコルレイヤでデータに時刻情報を付与する時刻情報付与部(14)を有し、前記擬似無線ネットワーク制御装置は、前記擬似無線端末装置によって送信されたデータから時刻情報を抽出する時刻情報抽出部(25)と、前記時刻情報抽出によって抽出された時刻情報に基づいて前記擬似無線端末装置から前記擬似無線ネットワーク制御装置までに生じるデータの伝送遅延を測定する伝送遅延測定部(26)とを有する。
【0006】
この構成により、時刻情報を無線通信および有線通信に共通の最も下位のプロトコルレイヤでデータに付与するため、無線基地局装置を介した通信におけるデータの伝送遅延を測定する場合に、無線端末装置から無線ネットワーク制御装置までに生じるデータの伝送遅延を測定することができる。
【0007】
また、本発明の無線基地局試験システムは、前記擬似無線端末装置および前記擬似無線ネットワーク制御装置を管理する管理装置(4)を備え、前記管理装置は、前記時刻情報が付与されるデータの通信用に割り当てる専用のチャンネルを指定し、前記擬似無線端末装置は、前記時刻情報付与部によって時刻情報が付与されたデータの通信用に前記管理装置によって指定されたチャンネルを割り当てるチャンネル割当部(12)を有し、前記時刻情報抽出部は、前記管理装置によって指定されたチャンネルに割り当てられた通信のデータから前記時刻情報を抽出するようにしてもよい。
【0008】
この構成により、時刻情報が付与されるデータの通信用に専用のチャンネルを割り当てることによって、時刻情報が付与されたデータの送受信が他のデータの送受信に影響されることを防止でき、データの伝送遅延の測定精度を向上させることができる。
【0009】
また、本発明の無線基地局試験システムは、無線基地局装置(1)と無線通信することによって前記無線基地局装置を介した通信を行う無線端末装置をエミュレートする擬似無線端末装置(2)と、前記無線基地局装置と有線通信することによって前記無線基地局装置を介した通信を制御する無線ネットワーク制御装置をエミュレートする擬似無線ネットワーク制御装置(3)とを備え、前記擬似無線ネットワーク制御装置は、前記無線基地局装置を介して前記擬似無線端末装置に送信されるデータの通信に使用されるプロトコルのうち、前記無線通信および前記有線通信に共通の最も下位のプロトコルレイヤでデータに時刻情報を付与する時刻情報付与部(24)を有し、前記擬似無線端末装置は、前記擬似無線ネットワーク制御装置によって送信されたデータから時刻情報を抽出する時刻情報抽出部(15)と、前記時刻情報抽出部によって抽出された時刻情報に基づいて前記擬似無線ネットワーク制御装置から前記擬似無線端末装置までに生じるデータの伝送遅延を測定する伝送遅延測定部(16)とを有する。
【0010】
この構成により、時刻情報を無線通信および有線通信に共通の最も下位のプロトコルレイヤでデータに付与するため、無線基地局装置を介した通信におけるデータの伝送遅延を測定する場合に、無線ネットワーク制御装置から無線端末装置までに生じるデータの伝送遅延を測定することができる。
【0011】
また、本発明の無線基地局試験システムは、前記擬似無線端末装置および前記擬似無線ネットワーク制御装置を管理する管理装置(4)を備え、前記管理装置は、前記時刻情報が付与されるデータの通信用に割り当てる専用のチャンネルを指定し、前記擬似無線ネットワーク制御装置は、前記時刻情報付与部によって時刻情報が付与されたデータの通信用に前記管理装置によって指定されたチャンネルを割り当てるチャンネル割当部(22)を有し、前記時刻情報抽出部は、前記管理装置によって指定されたチャンネルに割り当てられた通信のデータから前記時刻情報を抽出するようにしてもよい。
【0012】
この構成により、時刻情報が付与されるデータの通信用に専用のチャンネルを割り当てることによって、時刻情報が付与されたデータの送受信が他のデータの送受信に影響されることを防止でき、データの伝送遅延の測定精度を向上させることができる。
【0013】
また、本発明の無線基地局試験方法は、無線基地局装置(1)と無線通信することによって前記無線基地局装置を介した通信を行う無線端末装置をエミュレートする擬似無線端末装置(2)と、前記無線基地局装置と有線通信することによって前記無線基地局装置を介した通信を制御する無線ネットワーク制御装置をエミュレートする擬似無線ネットワーク制御装置(3)とを備えた無線基地局試験システムを以って前記無線基地局装置を試験する無線基地局試験方法において、前記擬似無線端末装置において、前記無線基地局装置を介して前記擬似無線ネットワーク制御装置に送信されるデータの通信に使用されるプロトコルのうち、前記無線通信および前記有線通信に共通の最も下位のプロトコルレイヤでデータに時刻情報を付与し、前記擬似無線ネットワーク制御装置において、前記擬似無線端末装置によって送信されたデータから時刻情報を抽出し、抽出した時刻情報に基づいて前記擬似無線端末装置から前記擬似無線ネットワーク制御装置までに生じるデータの伝送遅延を測定する。
【0014】
この方法により、時刻情報を無線通信および有線通信に共通の最も下位のプロトコルレイヤでデータに付与するため、無線基地局装置を介した通信におけるデータの伝送遅延を測定する場合に、無線端末装置から無線ネットワーク制御装置までに生じるデータの伝送遅延を測定することができる。
【0015】
また、本発明の無線基地局試験方法は、無線基地局装置(1)と無線通信することによって前記無線基地局装置を介した通信を行う無線端末装置をエミュレートする擬似無線端末装置(2)と、前記無線基地局装置と有線通信することによって前記無線基地局装置を介した通信を制御する無線ネットワーク制御装置をエミュレートする擬似無線ネットワーク制御装置(3)とを備えた無線基地局試験システムを以って前記無線基地局装置を試験する無線基地局試験方法において、前記擬似無線ネットワーク制御装置において、前記無線基地局装置を介して前記擬似無線端末装置に送信されるデータの通信に使用されるプロトコルのうち、前記無線通信および前記有線通信に共通の最も下位のプロトコルレイヤでデータに時刻情報を付与し、前記擬似無線端末装置において、前記擬似無線ネットワーク制御装置によって送信されたデータから時刻情報を抽出し、抽出した時刻情報に基づいて前記擬似無線ネットワーク制御装置から前記擬似無線端末装置までに生じるデータの伝送遅延を測定する。
【0016】
この方法により、時刻情報を無線通信および有線通信に共通の最も下位のプロトコルレイヤでデータに付与するため、無線基地局装置を介した通信におけるデータの伝送遅延を測定する場合に、無線ネットワーク制御装置から無線端末装置までに生じるデータの伝送遅延を測定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の無線基地局試験システムは、無線基地局装置を介した通信におけるデータの伝送遅延を測定する場合に、無線端末装置から無線ネットワーク制御装置までに生じるデータの伝送遅延、および無線ネットワーク制御装置から無線端末装置までに生じるデータの伝送遅延を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施の形態に係る無線基地局試験システムのブロック図である。
【0020】
無線基地局試験システムは、基地局(Base Transceiver Station、「BTS」ともいう。)に設置される無線基地局装置1と無線通信することによって無線基地局装置1を介した通信を行う無線端末装置(User Equipment、「UE」ともいう。)をエミュレートする擬似無線端末装置2と、無線基地局装置1と有線通信することによって無線基地局装置1を介した通信を制御する無線ネットワーク制御装置(Radio Network Controller、「RNC」ともいう。)をエミュレートする擬似無線ネットワーク制御装置3と、擬似無線端末装置2および擬似無線ネットワーク制御装置3を管理する管理装置4とを備え、無線基地局装置1を被測定装置として擬似無線端末装置2と擬似無線ネットワーク制御装置3との間で生じるデータの伝送遅延を測定するようになっている。
【0021】
管理装置4は、パーソナルコンピュータ装置等によって構成されており、擬似無線端末装置2および擬似無線ネットワーク制御装置3とイーサーネット(登録商標)等の通信路5によって接続されている。
【0022】
例えば、管理装置4は、オペレータの入力操作に応じて、擬似無線端末装置2と擬似無線ネットワーク制御装置3との間で生じるデータの伝送遅延の測定の開始を指示したり、送受信されるデータの通信用に割り当てるチャンネルを指定したりするようになっている。
【0023】
図2は、擬似無線端末装置2のブロック図である。
【0024】
擬似無線端末装置2は、無線基地局装置1と無線通信する無線通信部10と、無線通信部10を介して送信するデータを生成する送信データ生成部11と、送信データ生成部11によって生成されたデータの通信用にチャンネルを割り当てるチャンネル割当部12と、現在時刻を表す時刻情報を生成する時刻情報生成部13と、データに時刻情報を付与する時刻情報付与部14と、擬似無線ネットワーク制御装置3によって送信され、無線通信部10によって受信されたデータから時刻情報を抽出する時刻情報抽出部15と、時刻情報抽出部15によって抽出された時刻情報に基づいて擬似無線ネットワーク制御装置3から擬似無線端末装置2までに生じるデータの伝送遅延を測定する伝送遅延測定部16と、管理装置4からの指示等に基づいて擬似無線端末装置2を構成する各部を制御する制御部17とを備えている。
【0025】
無線通信部10は、無線通信インターフェイスモジュール等によって構成され、無線基地局装置1と無線通信することによって擬似無線ネットワーク制御装置3にデータを送信したり、擬似無線ネットワーク制御装置3からデータを受信したりするようになっている。
【0026】
ここで、無線通信部10によって送受信されるデータの通信に用いられるプロトコル構成について、図3を用いて説明する。図3は、擬似無線端末装置2と擬似無線ネットワーク制御装置3との間で無線基地局装置1を介して送受信されるデータの通信のプロトコルスタックの例を示す図である。
【0027】
擬似無線端末装置2と無線基地局装置1との間の無線通信で用いられるプロトコルは、上位からIP(Internet Protocol)、PPP(Point-to-Point Protocol)、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)、RLC(Radio Link Control)、MAC/Mac−d(Medium Access ControlまたはMedium Access Control-dedicated transport channel)、Null/Mac−hs(未使用またはMedium Access Control-high speed downlink shared channel)、PHY(Physical layer)の各プロトコルレイヤによって構成されている。なお、RRC(Radio Resource Control)は、制御データ用の階層である。
【0028】
一方、擬似無線ネットワーク制御装置3と無線基地局装置1との間の有線通信で用いられるプロトコルは、上位からIP、PPP、PDCP、RLC、MAC/Mac−d、Iub Frame Protocol、AAL2(ATM Adaptation Layer 2)、ATM(Asynchronous Transfer Mode)、L1(Layer 1)の各プロトコルレイヤによって構成されている。
【0029】
すなわち、擬似無線端末装置2と擬似無線ネットワーク制御装置3との間において、上位からIP、PPP、PDCP、RLC、MAC/Mac−dの各プロトコルレイヤは、無線通信および有線通信で共通のプロトコルに準拠し、他の下位のプロトコルレイヤは、無線通信および有線通信のプロトコルにそれぞれ準拠する。
【0030】
このように無線基地局装置1は、無線通信および有線通信で共通のプロトコルに準拠したプロトコルレイヤを透過的に転送し、無線通信および有線通信のプロトコルにそれぞれ準拠する下位のプロトコルレイヤを相互にプロトコル変換して転送している。
【0031】
なお、擬似無線端末装置2と擬似無線ネットワーク制御装置3との間で無線基地局装置1を介して送受信されるデータの通信は、図3を用いて説明したプロトコルスタックの例に準拠するものとして以下説明する。
【0032】
図2に戻り、送信データ生成部11、チャンネル割当部12、時刻情報生成部13、時刻情報付与部14、時刻情報抽出部15、伝送遅延測定部16、および制御部17は、FPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)、またはCPU(Central Processing Unit)によってそれぞれ構成される。
【0033】
チャンネル割当部12は、送信データ生成部11によって生成された各データの通信用にチャンネルを割り当てるとともに、管理装置4によって指定された専用のチャンネルを時刻情報が付与されるデータの通信用に割り当てるようになっている。
【0034】
このように、時刻情報が付与されるデータの通信用に専用のチャンネルを割り当てることによって、時刻情報が付与されたデータの送受信が他のデータの送受信に影響されることを防止でき、データの伝送遅延の測定精度を向上させることができる。なお、本実施形態におけるチャンネルとは、MAC/Mac−dのプロトコルレイヤ(以下単に「Mac階層」という。)におけるチャンネルのことをいう。
【0035】
時刻情報生成部13は、擬似無線ネットワーク制御装置3と同期した時刻に基づいて時刻情報を生成するようになっている。例えば、時刻情報生成部13は、擬似無線ネットワーク制御装置3と共に接続された専用線から受信される時刻同期用信号に基づいて時刻を計るようにしてもよく、汎地球測位システム(Global Positioning System、「GPS」ともいう。)によって構成することによって時刻を計るようにしてもよい。
【0036】
時刻情報付与部14は、管理装置4によって指定されて専用に割り当てられたチャンネルにおいての通信に対して、無線通信および有線通信に共通の最も下位のプロトコルレイヤ、すなわちMAC階層でデータに時刻情報を付与するようになっている。
【0037】
なお、時刻情報付与部14がMac階層より下位のプロトコルレイヤで時刻情報を付与するようにした場合には、準拠するプロトコルの相違によって擬似無線ネットワーク制御装置3側で時刻情報を抽出することが困難になり、MAC階層より上位のプロトコルレイヤで時刻情報を付与するようにした場合には、プロトコル変換時のオーバーヘッドや再送などの伝送制御によって伝送遅延の測定が不正確になる。
【0038】
時刻情報抽出部15は、擬似無線ネットワーク制御装置3によって無線基地局装置1を介して送信され、無線通信部10によって受信されたデータのうち、管理装置4によって指定されて専用に割り当てられたチャンネルにおいての通信のデータにMAC階層で付与された時刻情報を抽出するようになっている。
【0039】
伝送遅延測定部16は、時刻情報抽出部15によって抽出された時刻情報が表す時刻と、時刻情報生成部13によって生成された時刻情報が表す現在時刻との差分によって擬似無線ネットワーク制御装置3から擬似無線端末装置2までに生じるデータの伝送遅延を測定するようになっている。
【0040】
伝送遅延測定部16によって測定された伝送遅延を表す情報は、例えば、制御部17を介して管理装置4に送信され、管理装置4に設けられたディスプレイ装置等を介して表示される。
【0041】
ここで、管理装置4に設けられたディスプレイ装置に表示される伝送遅延の表示結果の例を図4に示す。図4は、予め定められた遅延時間のステップ毎に対応する伝送遅延が生じたフレーム数のヒストグラムを表しており、横軸は遅延時間を示し、縦軸は各遅延時間分の伝送遅延が生じたフレーム数を表している。なお、管理装置4において、横軸の開始時間および遅延時間のステップを変更できるようにしてもよい。
【0042】
図5は、擬似無線ネットワーク制御装置3のブロック図である。
【0043】
擬似無線ネットワーク制御装置3は、無線基地局装置1と有線通信する有線通信部20と、有線通信部20を介して送信するデータを生成する送信データ生成部21と、送信データ生成部21によって生成されたデータの通信用にチャンネルを割り当てるチャンネル割当部22と、現在時刻を表す時刻情報を生成する時刻情報生成部23と、データに時刻情報を付与する時刻情報付与部24と、擬似無線端末装置2によって送信され、有線通信部20によって受信されたデータから時刻情報を抽出する時刻情報抽出部25と、時刻情報抽出部25によって抽出された時刻情報に基づいて擬似無線端末装置2から擬似無線ネットワーク制御装置3までに生じるデータの伝送遅延を測定する伝送遅延測定部26と、管理装置4からの指示等に基づいて擬似無線ネットワーク制御装置3を構成する各部を制御する制御部27とを備えている。
【0044】
有線通信部20は、有線通信インターフェイスモジュール等によって構成され、無線基地局装置1と有線通信することによって擬似無線端末装置2にデータを送信したり、擬似無線端末装置2からデータを受信したりするようになっている。
【0045】
ここで、送信データ生成部21、チャンネル割当部22、時刻情報生成部23、時刻情報付与部24、時刻情報抽出部25、伝送遅延測定部26、および制御部27は、擬似無線端末装置2を構成する送信データ生成部11、チャンネル割当部12、時刻情報生成部13、時刻情報付与部14、時刻情報抽出部15、伝送遅延測定部16、および制御部17とそれぞれ同様に構成するため、詳細な説明を省略する。
【0046】
以上のように構成された無線基地局試験システムについて、図6を用いて、その動作を説明する。なお、以下に説明する無線基地局試験システムの動作は、管理装置4において擬似無線端末装置2から擬似無線ネットワーク制御装置3までに生じるデータの伝送遅延の測定開始が指示されたときにスタートする。
【0047】
まず、擬似無線端末装置2において、擬似無線ネットワーク制御装置3に送信されるデータの生成が送信データ生成部11によって開始され(S1)、生成されたデータの通信用にチャンネル割当部12によってチャンネルが割り当てられる。
【0048】
ここで、データの通信用に割り当てられたチャンネルが、管理装置4によって指定された専用のチャンネルの場合には(S2)、時刻情報生成部13によって生成された時刻情報が、時刻情報付与部14によってデータにMac階層で付与される(S4)。
【0049】
送信データ生成部11によって生成されたデータは、無線通信部10によって無線基地局装置1に無線送信され(S5)、無線基地局装置1において無線通信するためのプロトコルから有線通信するためのプロトコルに変換するプロトコル変換が行われ(S6)、擬似無線ネットワーク制御装置3に有線送信される(S7)。
【0050】
擬似無線ネットワーク制御装置3において、管理装置4によって指定された専用のチャンネルが有線通信部20によって受信されたデータの通信が割り当てられたチャンネルの場合には(S8)、Mac階層で時刻情報抽出部25によってデータから時刻情報が抽出され(S9)、抽出された時刻情報と時刻情報生成部23によって生成された現在時刻を表す時刻情報とに基づいて擬似無線端末装置2から擬似無線ネットワーク制御装置3までに生じるデータの伝送遅延が伝送遅延測定部26によって測定される(S10)。
【0051】
伝送遅延測定部26による測定結果は、例えば、制御部17を介して管理装置4に送信され、管理装置4に設けられたディスプレイ装置等を介して表示される(S11)。ここで、管理装置4によって伝送遅延の測定終了が指示されている場合には(S12)、無線基地局試験システムの動作は終了し、管理装置4によって伝送遅延の測定終了が指示されていない場合には(S12)、無線基地局試験システムの動作はステップS1に戻る。
【0052】
以上では、擬似無線端末装置2から擬似無線ネットワーク制御装置3までに生じるデータの伝送遅延を測定する動作について説明したが、擬似無線ネットワーク制御装置3から擬似無線端末装置2までに生じるデータの伝送遅延を測定する動作については、擬似無線端末装置2から擬似無線ネットワーク制御装置3までに生じるデータの伝送遅延を測定する動作の説明に基づいて容易に実施できるため説明を省略する。
【0053】
以上説明したように、本発明の一実施の形態に係る無線基地局試験システムによれば、時刻情報を無線通信および有線通信に共通の最も下位のプロトコルレイヤでデータに付与するため、無線基地局装置1を介した通信におけるデータの伝送遅延を測定する場合に、無線端末装置から無線ネットワーク制御装置までに生じるデータの伝送遅延、および無線ネットワーク制御装置から無線端末装置までに生じるデータの伝送遅延を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施の形態に係る無線基地局試験システムの構成を示すブロック図
【図2】本発明の一実施の形態に係る擬似無線端末装置の構成を示すブロック図
【図3】本発明の一実施の形態に係る擬似無線端末装置と擬似無線ネットワーク制御装置との間で無線基地局装置を介して送受信されるデータの通信に用いられるプロトコルスタックの例を示す図
【図4】本発明の一実施の形態に係る管理装置に設けられたディスプレイ装置に表示される伝送遅延の表示結果の例を示す図
【図5】本発明の一実施の形態に係る擬似無線ネットワーク制御装置の構成を示すブロック図
【図6】本発明の一実施の形態に係る無線基地局試験システムの動作を示すフローチャート
【符号の説明】
【0055】
1 無線基地局装置
2 擬似無線端末装置
3 擬似無線ネットワーク制御装置
4 管理装置
5 通信路
10 無線通信部
11、21 送信データ生成部
12、22 チャンネル割当部
13、23 時刻情報生成部
14、24 時刻情報付与部
15、25 時刻情報抽出部
16、26 伝送遅延測定部
17、27 制御部
20 有線通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線基地局装置(1)と無線通信することによって前記無線基地局装置を介した通信を行う無線端末装置をエミュレートする擬似無線端末装置(2)と、
前記無線基地局装置と有線通信することによって前記無線基地局装置を介した通信を制御する無線ネットワーク制御装置をエミュレートする擬似無線ネットワーク制御装置(3)とを備え、
前記擬似無線端末装置は、前記無線基地局装置を介して前記擬似無線ネットワーク制御装置に送信されるデータの通信に使用されるプロトコルのうち、前記無線通信および前記有線通信に共通の最も下位のプロトコルレイヤでデータに時刻情報を付与する時刻情報付与部(14)を有し、
前記擬似無線ネットワーク制御装置は、前記擬似無線端末装置によって送信されたデータから時刻情報を抽出する時刻情報抽出部(25)と、
前記時刻情報抽出によって抽出された時刻情報に基づいて前記擬似無線端末装置から前記擬似無線ネットワーク制御装置までに生じるデータの伝送遅延を測定する伝送遅延測定部(26)とを有することを特徴とする無線基地局試験システム。
【請求項2】
前記擬似無線端末装置および前記擬似無線ネットワーク制御装置を管理する管理装置(4)を備え、
前記管理装置は、前記時刻情報が付与されるデータの通信用に割り当てる専用のチャンネルを指定し、
前記擬似無線端末装置は、前記時刻情報付与部によって時刻情報が付与されたデータの通信用に前記管理装置によって指定されたチャンネルを割り当てるチャンネル割当部(12)を有し、
前記時刻情報抽出部は、前記管理装置によって指定されたチャンネルに割り当てられた通信のデータから前記時刻情報を抽出するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の無線基地局試験システム。
【請求項3】
無線基地局装置(1)と無線通信することによって前記無線基地局装置を介した通信を行う無線端末装置をエミュレートする擬似無線端末装置(2)と、
前記無線基地局装置と有線通信することによって前記無線基地局装置を介した通信を制御する無線ネットワーク制御装置をエミュレートする擬似無線ネットワーク制御装置(3)とを備え、
前記擬似無線ネットワーク制御装置は、前記無線基地局装置を介して前記擬似無線端末装置に送信されるデータの通信に使用されるプロトコルのうち、前記無線通信および前記有線通信に共通の最も下位のプロトコルレイヤでデータに時刻情報を付与する時刻情報付与部(24)を有し、
前記擬似無線端末装置は、前記擬似無線ネットワーク制御装置によって送信されたデータから時刻情報を抽出する時刻情報抽出部(15)と、
前記時刻情報抽出部によって抽出された時刻情報に基づいて前記擬似無線ネットワーク制御装置から前記擬似無線端末装置までに生じるデータの伝送遅延を測定する伝送遅延測定部(16)とを有することを特徴とする無線基地局試験システム。
【請求項4】
前記擬似無線端末装置および前記擬似無線ネットワーク制御装置を管理する管理装置(4)を備え、
前記管理装置は、前記時刻情報が付与されるデータの通信用に割り当てる専用のチャンネルを指定し、
前記擬似無線ネットワーク制御装置は、前記時刻情報付与部によって時刻情報が付与されたデータの通信用に前記管理装置によって指定されたチャンネルを割り当てるチャンネル割当部(22)を有し、
前記時刻情報抽出部は、前記管理装置によって指定されたチャンネルに割り当てられた通信のデータから前記時刻情報を抽出するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の無線基地局試験システム。
【請求項5】
無線基地局装置(1)と無線通信することによって前記無線基地局装置を介した通信を行う無線端末装置をエミュレートする擬似無線端末装置(2)と、
前記無線基地局装置と有線通信することによって前記無線基地局装置を介した通信を制御する無線ネットワーク制御装置をエミュレートする擬似無線ネットワーク制御装置(3)とを備えた無線基地局試験システムを以って前記無線基地局装置を試験する無線基地局試験方法において、
前記擬似無線端末装置において、前記無線基地局装置を介して前記擬似無線ネットワーク制御装置に送信されるデータの通信に使用されるプロトコルのうち、前記無線通信および前記有線通信に共通の最も下位のプロトコルレイヤでデータに時刻情報を付与し、
前記擬似無線ネットワーク制御装置において、前記擬似無線端末装置によって送信されたデータから時刻情報を抽出し、抽出した時刻情報に基づいて前記擬似無線端末装置から前記擬似無線ネットワーク制御装置までに生じるデータの伝送遅延を測定することを特徴とする無線基地局試験方法。
【請求項6】
無線基地局装置(1)と無線通信することによって前記無線基地局装置を介した通信を行う無線端末装置をエミュレートする擬似無線端末装置(2)と、
前記無線基地局装置と有線通信することによって前記無線基地局装置を介した通信を制御する無線ネットワーク制御装置をエミュレートする擬似無線ネットワーク制御装置(3)とを備えた無線基地局試験システムを以って前記無線基地局装置を試験する無線基地局試験方法において、
前記擬似無線ネットワーク制御装置において、前記無線基地局装置を介して前記擬似無線端末装置に送信されるデータの通信に使用されるプロトコルのうち、前記無線通信および前記有線通信に共通の最も下位のプロトコルレイヤでデータに時刻情報を付与し、
前記擬似無線端末装置において、前記擬似無線ネットワーク制御装置によって送信されたデータから時刻情報を抽出し、抽出した時刻情報に基づいて前記擬似無線ネットワーク制御装置から前記擬似無線端末装置までに生じるデータの伝送遅延を測定することを特徴とする無線基地局試験方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−54779(P2006−54779A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−236403(P2004−236403)
【出願日】平成16年8月16日(2004.8.16)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】