説明

無線帯域内シグナリングシステムにおけるデータ送信のための高効率誤り訂正方式

一例を挙げると、移動局装置は遠隔サーバに送信するペイロードを分割し、冗長データを各ペイロードセグメントに提供する。遠隔サーバは、冗長データを利用して、受信したペイロードをセグメント単位で検査し、誤りに係るセグメントを特定する。そして、前記サーバは、移動局装置とのデータ交換を1回以上行うことにより、特定されたセグメントに対する誤り訂正ビットを要求する。その後、サーバは受信した誤り訂正ビットを利用して誤り訂正を行うことができ、必要であれば、ペイロードの再送信を要求することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
著作権の通知
著作権:2010 Airbiquity Inc.本明細書の開示の一部は、著作権保護を受ける題材を含む。本著作権所有者は、米国特許商標局の特許ファイルまたは記録と同一である限りにおいて、何人による本明細書または開示の複製にも異議はないが、それ以外の場合には著作権の全権利を留保する。米国特許法施行規則第1.71条d項(37CFR §1.71(d))。
【背景技術】
【0002】
無線通信カバレッジは、世界の大部分、特に先進国ではほぼユビキタスとなった。幾つかの途上国でも同様であり、従来の銅線通信インフラのない地域全体が、そのような従来技術を飛び越して、その代替として無線を配備している。現代の無線ネットワークはさまざまな音声・データサービスを提供する。そういったサービスの技術的詳細は、例えば3GPP標準化グループのウェブサイト(www.3gpp.org.)等、さまざまな場所で得られる。
【0003】
ところが、場合によっては無線データサービスが遅く、カバレッジもまばらであることがある。「SMS」(ショートメッセージサービス:short message service)はその一例である。対照的に、無線「音声」サービスは一般的に質が高い傾向にあり、人が移動を行うほとんどありとあらゆる場所で利用可能である。従って、例えば、警察、消防、救急といった緊急サービスの要請等、緊急サービスの実施の際に信頼性が高く、広いカバレッジが重要となる場合には、音声サービスは最善の選択肢となる。人が移動している場合、特に自動車で移動している場合、緊急サービスに接続する有効な無線通信は必須である。
【0004】
ここで、「帯域内」通信とは音声チャンネルでの通信を指し、データチャンネル、制御チャンネル、又は他の非音声無線サービスと区別される。重要なことに、音声チャンネルは実際の人の音声トラフィックを効率的に送信するために最適化されているものの、実際は比較的少量の「データ」を送信するのに使用することも可能である(例えば、メガビットではなく、数千ビット)。音声チャンネルは特別な性能特性によって特徴づけられる。例えば、送受信される必要があるのは、通常の人間の音声に基づいた、比較的狭い範囲の可聴周波数のみである。実際、高度な圧縮・符号化技術によって、人間の音声をデジタル無線ネットワーク上で非常に効率的に送受信することが可能であることが知られている。しかし、ソフトウェアやDSPチップ等で通常実現される、このような音声符号器(ボコーダ)は非音声音をうまく送信できない。それどころか、ボコーダは非音声信号を除去するように精細に設計されている。
【0005】
図1は無線音声通話、すなわち、無線情報通信ネットワーク上での電話通話の一般的な音声の経路を示す簡略ブロック図である。マイクロフォンからのアナログ音声信号はADコンバータによってデジタル化され、ボコーダ符号化アルゴリズムに送られる(毎秒8000サンプル)。エンコーダは圧縮データのパケットを生成し(通常、20msフレーム音声当たり1パケット)、このデータストリームを無線送受信機に送る。一方で、無線受信機はパケットを復号アルゴリズムに送り、復号アルゴリズムは元の音声信号をPCMストリームとして(不完全に)再構築する。このPCMストリームは最終的にアナログ電圧に変換し直された後、スピーカーに印加される。
【0006】
この種のシステムを利用すれば、周波数、タイミングを綿密に選択し、さらに、情報を人間の音声データに「見せかけ」てその情報をボコーダに送信するよう「仕向ける」特殊な技術を使用することで、ある程度の量のデータ(ここで意味しているのはユーザデータであり、ボコーダ音声データではない)を「帯域内」で送信することが可能である。無線システムの音声チャンネルを利用したこの種のデータ通信は、「帯域内シグナリング」と呼ばれることがある。これはハードウェア的に実現することも可能であるし、「帯域内シグナリングモデム」と呼ばれるソフトウェアで実現することも可能である。「帯域内シグナリングモデム」は、従来の「固定電話」情報通信でよく知られている、旧来の「モデム」(変調復調器)用語に由来する。
【0007】
いくつかの登録済特許において、無線情報通信ネットワークの音声チャンネルを介してデジタルデータの通信を行う帯域内シグナリング技術が公開されている。一例を挙げると、入力部がデジタルデータを受信し、エンコーダはデジタルデータを変換して、人の音声周波数特性を合成した可聴トーンにする。また、デジタルデータは符号化されており、情報通信ネットワークの音声符号化回路が、デジタルデータに相当する合成可聴トーンを破損してしまうのを防ぐ。そして、出力部が合成可聴トーンをデジタル無線情報通信ネットワークの音声チャンネルに出力する。「トーン」を搬送するデータが同時音声とともに送信される場合もある。トーンは短く比較的目立たないようにすることができる。「ブランク・アンド・バースト」と呼ばれることもある、他の実施態様においては、データが音声チャンネルを介して送信される間、音声が遮断される。さらに他の実施態様においては、可聴周波数スペクトラムの一部が音声に使用され、その他の部分はデータ用に確保される。これは受信側での復号に役立つ。
【0008】
今日、多くの車両は無線ネットワークを介した何らかの通信能力を有している。これらの車両システムをテレマティクス・クライアントシステムと呼ぶ。図2は車載システム(IVS)の実例を示す簡易ブロック図である。同図は一般的なテレマティクス・クライアントシステムのうち関連する部分の一例を示す。このクライアントシステムは、自動車環境で動作するよう設計された、組込式ハードウェア及びソフトウェアからなる。
【0009】
図2において、テレマティクスソフトウェアは「カスタマーアプリケーション」を含み、これは実質的にどのようなアプリケーションでもよいが、特に、無線ネットワークを介してデータ転送を採用するアプリケケーションである。例えば、カスタマーアプリケーションはナビゲーションやエンターテイメントに係わるものでもよい。動作中、カスタマーアプリケーションはデータ(好適にはデータパケット)を帯域内シグナリングモデムに送る。帯域内モデムはそのデータを(適宜、パケットヘッダー及び他のオーバーヘッドとともに)可聴周波数トーンに変換する。可聴「データトーン」は音声コンテンツと同様に符号化され、離れた受信機に送信される。
【0010】
他の通信システム同様、帯域内シグナリングの過程では誤りが発生する可能性がある。帯域内シグナリングの場合、誤りの検出と訂正は転送帯域幅が非常に狭いため困難である。一般的に、転送されるデータ量(ペイロードサイズ)は小さく、数十ビット又は数百ビットの範囲である。従って、誤り検出及び/又は訂正のために大きなオーバーヘッドを付加することは、もともと狭帯域の環境では困難である。帯域内シグナリングデータ通信システムの使用に供する高効率な順方向誤り訂正方法が依然望まれるところである。
【発明の概要】
【0011】
本発明のいくつかの態様を基本的に理解するために、発明の概要を以下に述べる。この概要は発明の主要・重要要素の特定を意図するものではなく、発明の範囲の明確化を意図するものでもない。この概要の唯一の目的は、後述する詳細な説明の前置きとして、発明の概念を単純化した形でいくつか提示することである。
【0012】
一例を挙げると、移動局装置は遠隔サーバに送信するためペイロードを分割し、各ペイロードセグメントに対して冗長データを付与する。遠隔サーバは冗長データを利用し、受信したペイロードをセグメント単位で検査して誤りに係るセグメントを特定する。そして、サーバは、移動局装置とデータ交換を1回以上行うことにより、特定されたセグメントに対する誤り訂正ビットを要求する。その後、サーバは受信した誤り訂正ビットを利用して誤り訂正を行い、必要であれば、ペイロードの再送信を要求することができる。本発明の更なる態様及び利点は添付図面を参照することによりなされる、以下の好適な実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】無線音声通話の一般的な通話路を示す簡略ブロック図である。
【図2】車載システム(IVS)の実例を示す簡易ブロック図である。
【図3】帯域内シグナリング交換に高効率誤り訂正方式を使用したシステムの一例である。
【図4】図3に示す移動局装置の動作を説明するフローチャートである。
【図5】図3に示すサーバの動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図3は、帯域内シグナリングデータ交換に高効率誤り訂正方式を利用したシステムの一例を示す。
【0015】
システム100は、サーバ2との音声帯域接続において高効率誤り訂正方式を行う移動局装置1を含む。ソフトウェア8Bは、ペイロード中のどこで追加誤り訂正ビットが必要となる可能性があるかを、ペイロードセグメントに付加した誤り訂正ビット13、15を用いてセグメント単位で特定する。そして、ソフトウェア8Bはソフトウェア8Aに、特定されたセグメントに対する追加誤り訂正オーバーヘッド18の後続送信を音声帯域接続を介して行うよう要求する(17)。このような後続送信は「再送信」を行う前に行われる。ここで、「再送信」とは、一般に誤り訂正ビットが対応するペイロードデータの再送信のことである。
【0016】
この誤り訂正方式を使用することにより、管理者又は設計者は、誤り訂正オーバーヘッドの初期設定を行う際に、移動局装置1とサーバ2間における通信の最終的な信頼性を損なうことなく、IBSモデム5間の基底ネットワークに関して積極的な仮定を立てることが可能となる。これは、特に帯域内シグナリングと併用される場合に有効であり、このような場合、帯域内シグナリングをほぼユビキタスにサポートする基底無線ネットワークでは、異なる方法で信号を処理する多種多様のボコーダ(及び他の信号処理部品)が使用されている。
【0017】
この誤り訂正方式が帯域内シグナリングと併用された場合に有効である理由をさらによく理解するために、帯域内シグナリング環境におけるペイロードの初期送信時の誤り訂正オーバーヘッドの初期設定量を管理者又は設計者が設定する際に発生する、従来の設計上のトレードオフを考えてみる。管理者又は設計者は、IBSモデム5間で動作している可能性のあるボコーダの全ての組み合わせを事前に把握してはいないので、大抵の状況において信頼性を確保できるよう、例えば、高誤り訂正オーバーヘッドにする等、慎重なデフォルト設定を行う可能性がある。しかし、高誤り訂正オーバーヘッドを初期値とすることにより、この高オーバーヘッドが、音声帯域内の比較的狭い利用可能帯域幅の大部分を消費してしまい、通話の遅延を招くというトレードオフが発生し、これは多くの状況において不必要である可能性がある。結果的に、管理者又は設計者が選ぶ誤り訂正の初期値は、信頼性と、待ち時間と、利用可能帯域幅との間における望ましくない妥協の産物となってしまう。
【0018】
例えば、ペイロードを再送信するといったような再送信方式は、このような問題をある程度解決する。しかし、過度に依存すると、このような方式は音声帯域内で利用可能な比較的狭い帯域幅の大部分を(ペイロードを常に再送信することによって)使用してしまう。他の現存する再送信方式では、比較的狭い音声帯域の帯域幅を過剰に使用する可能性がある。
【0019】
対照的に、システム100における誤り訂正方式を使用すると、管理者又は設計者は、初期設定で比較的低い誤り訂正オーバーヘッドを利用することが可能となり、また同時に、大抵の状況において信頼性を維持することもできる。これは、ソフトウェア8Aがパケット(すなわち、ヘッダー11、冗長データ13、15、16及び冗長データが対応するペイロードデータ12、14を含むパケット)のペイロードを分割するよう構成されており、ソフトウェア8Bは、受信・復調ビットをセグメント単位で訂正するように追加誤り訂正を要求するような構成となっているためである。ある特定の状況において、この最初に送信されるオーバーヘッドが不十分である場合、後続送信を使用することによって追加誤り訂正ビットを特別に要求することが可能である。
【0020】
例えば、誤り訂正ビットに対応するペイロードデータを再送信する場合と比較して、これらの後続送信は、使用する帯域幅が比較的小さくてすむ。もちろん、これらの後続送信が大きい場合でも、このような誤り訂正方式は、ペイロードデータを再送信する場合と比較して、伝送エラーを解消する目的において、一般的にはビット毎の帯域幅の使用効率が高い。詳細は後述するが、付加された誤り検出ビット16に従ってパケット全体を分析した結果、ソフトウェア8A、8B間のデータ交換後に残存するエラーが検出された場合、ペイロードデータ12、14の再送信を行うことができる。いずれにせよ、追加誤り訂正ビット18の送信後、システム100が再送信を使用するとしても、要求/応答17、18が行われるおかげで、誤り訂正ビットを同じ初期量利用する従来のシステムと比較して、そのような再送信が必要となる回数は、システム100においては少なくなるであろうことは明らかである。
【0021】
上記のサーバ2は、移動局装置1の情報通信ネットワークと通信する際に、インターネット・プロトコル(IP)ネットワーク上で動作する。また、サーバ2は、移動局装置1の情報通信ネットワークと通信する際に、どのようなネットワーク上でも動作することが可能である。移動局装置は車載システム(IVS)の一部でもよいし、無線情報通信ネットワークと通信可能であれば、他のどのような種類の移動局装置でもよい。
【0022】
上記原理が帯域内シグナリングシステム以外の他の環境においても利用可能であることは明らかである。例えば、上記原理は、帯域幅が制限されているような環境においては特に有効である。
【0023】
図4は、図3に示す移動局装置の動作を説明するフローチャートである。
【0024】
図3及び図4を参照すると、ブロック401において、移動局装置1は非音声データを含むペイロードをフラグメントに分割する。一例を挙げると、ペイロードは200又は300バイトのデータを含み、このデータは、例えば、1セグメント当たり10又は12バイトといった、より小さなセグメントに分けられ、全体でおよそ20個のペイロードセグメントとなる。
【0025】
ブロック402において、移動局装置1は、例えば、巡回冗長検査(CRC)ビット等の誤り検出ビットを計算し、そのような誤り検出ビットをペイロードの終端に付加する。ブロック403において、移動局装置1は、例えば、順方向誤り訂正(FEC)ビット等の誤り訂正ビットを計算し、各セグメントに対応するこのような誤り訂正ビットをセグメントのそれぞれに付加する。当然、受信機がそれぞれの誤り訂正ビットを各セグメントに関連づけることのできるメカニズムがあれば、図3で図示され、図4に記述される誤り訂正ビットを必ずしも各セグメントに付加する必要はない。ブロック404において、移動局装置1はペイロードにヘッダーを付加し、パケットを構成する。当然、プロセス401〜404はいかなる順序で行うことも可能である。
【0026】
ブロック405において、移動局装置1は自局のIBSモデムを使用し、形成されたパケットを帯域内可聴信号に変調する。ブロック406において、移動局装置1は変調された信号を送信する。
【0027】
ブロック407において、移動局装置1は、1つ以上のペイロードセグメントに対応する追加誤り訂正ビットの要求を受け取ったか否かを判定する。移動局装置1がそのような要求を受け取った場合、移動局装置1は、ブロック408において、要求で特定されるセグメントに対する追加誤り訂正ビットを変調・送信する。このような送信に含まれるのは、追加誤り訂正ビット等の冗長データのみであり、ペイロード自体は含まれない。典型的には、これらの追加誤り訂正ビットはペイロード中の選択されたサブセット(初期送信における誤り訂正ビットの分析に基づきサーバにより選択される)にのみ対応することになる。
【0028】
サーバ2がセグメントを移動局装置1に知らせる際には(あるいは逆の場合も)、そのような通知は任意の方法を用いて行うことができる。例えば、最初にペイロードを分割した際に移動局装置1によって割り当てられた通し番号を使用してもよい。
【0029】
ブロック409において、移動局装置1は再送信が必要か否か判断する。これは、通常、いくつか又は全てのパケットを再送信する要求を受信したか否かの判断を含む(この要求はサーバによって生成されるものであり、詳細は図5を参照しながら説明する)。再送信がいくつかのパケットのみに必要な場合、前述したように、これらの部分は該当するセグメントを特定することによって指定が可能である。
【0030】
図5は、図3に示すサーバの動作を説明するフローチャートである。
【0031】
図3及び図5を参照すると、ブロック501において、サーバ2は可聴トーンを受信し、IBSモデムを利用して対応する誤り訂正ビットをそれぞれ備える複数のペイロードセグメントから構成されるデータに復調する。それらのペイロードセグメントは、ヘッダーとペイロードから構成される1つのパケットに相当し、このようなパケットは通常、誤り検出ビットも付加してある。
【0032】
ブロック502において、サーバ2は誤り訂正ビットをセグメント単位で分析する。この分析は、対応する誤り訂正ビットを利用してセグメントを調べ、ビット訂正が可能か否かの判断を含む。
【0033】
FECや他の誤り訂正方式において、ビット訂正は必ずしも全ての誤りが訂正されたことを意味するものではない。通常、ビット訂正の回数が多い程、ビット訂正後も未訂正の誤りがセグメントに含まれる可能性が大きくなる。従って、誤り訂正が閾値量に達したセグメントに対して追加誤り訂正ビットを要求してもよい(この閾値は、実施例によっては、任意の誤り訂正とすることができる)。この閾値は、誤り検出ビット(例えば、CRCビット)を利用した次の誤り検出が誤りを示すか否かによって、動作中に調整することができる。例えば、前の誤り検出の分析により、ペイロードセグメントの再送信があまりにも多く必要となった場合は、閾値を減少させる必要がある。閾値の設定は、セグメント当たりの訂正数、セグメント中の全ビット数に対する訂正ビットのパーセンテージ、隣接する訂正済ビットの位置やセグメントの終端部に対する位置を判断するスキーム等に従って行うことができる。
【0034】
菱形503において、閾値量より大きな誤り訂正が必要と特定されたセグメントがある場合は、ブロック504において、サーバ2は特定されたペイロードセグメントの追加誤り訂正を要求する。ブロック505において、サーバ2はIBSモデムを使用して、帯域内可聴信号を復調する。ブロック506において、サーバ2は追加誤り訂正ビットに従って特定されたペイロードセグメントを訂正する。
【0035】
なお、ブロック504〜506はブロック507に進む前に何回繰り返してもよい。例えば、サーバ2は、追加誤り訂正ビットを使用して、特定されたセグメントを再検査してもよい。この再検査に従って、サーバ2は、これらの特定されたセグメントのうち任意のセグメントに対して誤り訂正ビットをさらに要求することができる。一例を挙げると、そのような追加の誤り訂正ビットは、再検査時には、先の検査時と比較してより多くの誤りに係る任意のセグメントに対して要求される。これは、追加の誤り訂正ビットでさらに多くの訂正が可能となることを示す。このプロセスは、最も直前に受信した誤り訂正ビットが先に行われた誤り訂正に対して追加の誤りを発生しなくなるまで繰り返すことが可能である。
【0036】
ブロック507において、サーバ2は、初期送信に含まれている誤り検出ビットを利用して、ペイロード全体に対する誤り検出を行う。ブロック508において、サーバ2は再送信が必要か否かを判断する。なお、ペイロードデータの再送信をいかなる場合でも上述のデータ交換が完了するまで遅らせることで、帯域幅を維持することができる。これは、上述のデータ交換が完了した後にはこのような再送信が必要なくなるケースが頻繁にあるからである。
【0037】
ブロック508において、通常、サーバ2は、最初に送信された誤り訂正ビット及びそれ以降に送信された誤り訂正ビット(このような後続送信は、単一の後続送信又は一連の後続送信である)を利用して、全受信セグメントに対して誤り訂正を行う。最初に送信された誤り訂正ビット、及びそれ以降に送信された誤り訂正ビットを利用して誤り訂正を行った後、サーバ2は、初期送信に含まれる誤り検出ビットを利用してペイロード全体の誤り検出を行う。ペイロード全体の誤り検出で誤りが検出された場合、サーバ2は、ペイロードの一部又は全体の再送信要求を、移動局装置1に対して生成することができる。再送信が要求された場合は、サーバ2は「時間ダイバーシチ」を利用してもよい。時間ダイバーシチについては、同一譲受人による、2006年5月26日に出願された米国特許出願第11/442,705号に詳述され、これを参照することにより本願明細書に援用するものとする。
【0038】
図3〜5を参照して説明された例において、送信機側は送信前にペイロードを分割する。これにより、冗長データの要求をセグメント単位で行うことができる。場合によっては、パケット当たりのペイロードが小さく、上述の分割による効果が得られないこともある。このような場合には、送信機側は分割を行う必要はなく、受信機側はペイロード単位で冗長データの要求を送ることができる。或いは、分割アルゴリズムがこのような場合でも使用される場合、そのような小さなペイロードがセグメントサイズを超えないようにする。これにより、分割を行ってもペイロード当たり単一のセグメントとすることができる。また、その単一セグメントも識別子と関連付けられ、受信機側はこの識別子を利用して冗長データの要求をセグメント単位で行うことができる。
【0039】
図3〜5を参照して説明された例において、初期送信には、各セグメントに関連付けられた誤り訂正ビット、及びペイロード全体の誤り検出ビットが含まれる。他の例では、各セグメントに対応する誤り訂正ビットに加えて、又は各セグメントに対応する誤り訂正ビットの代わりに、各セグメントに関連付けられた別々の誤り検出ビットを使用してもよい。後続送信では誤り訂正ビットがセグメント単位で与えられる。
【0040】
「誤り訂正ビット」は、ペイロードの転送中に発生する誤りの訂正に使用可能なあらゆる種類の冗長データを指す。いくつか例を挙げると、FECやリードソロモン誤り訂正等がある。なお、各セグメントに関連付けられた誤り訂正ビットは、菱形503において、誤り訂正の閾値量に基づいて誤り検出機能を行う。「誤り検出ビット」は、ペイロードの転送中に発生する誤りの検出に使用されるあらゆる種類の冗長データを指す。誤り検出方式の種類の例をいくつか挙げると、パリティスキーム、チェックサムスキーム、巡回冗長検査等がある。冗長データのうち多くの種類は、誤り訂正及び誤り検出の両方に使用することができる。
【0041】
なお、上述の例いずれにおいても、誤り訂正ビットに対して、セグメント毎の一連の要求がなされる場合がある。例えば、第1の要求又は要求群は、セグメントのサブセットに対する誤り訂正ビットを取得するために使用することが可能である。要求された誤り訂正ビットを使用して誤りの特定を繰り返し行うことができ、必要であれば、追加誤り訂正ビットに対する第2の要求又は要求群を送ることができる。第2の要求又は要求群は、セグメントの同一のサブセットに対するものでもよいし、セグメントのより小さなサブセットに対するものでもよい。
【0042】
誤り訂正ビット量は、連続する要求・応答のやりとりが行われる毎に(セグメント単位で)増加させることができる。このような例では、システムが、帯域内モデムを介して送信されるオーバーヘッドビット数を徐々に増加させ、環境及びシステム特性が比較的誤りのない受信を可能とする場合はオーバーヘッドが最小限に抑えられる。一方で、必要であれば、オーバーヘッドビットは「増加」し、より厳しい(誤りが発生しやすい)環境のニーズに応える。このようにして、限られた帯域幅のより有効な使用が達成される。
【0043】
また、上述の例では、要求・応答のやりとりにおいて、パケット中の特定されたセグメントに対する冗長データのみが与えられる。その他の例では、要求・応答のやりとりにおいて、セグメント自体を要求冗長データと共に再送信することも可能であり、要求冗長データを利用した誤り訂正を、再送信されたセグメントに適用することが可能である。この例も、多くの状況で上述の例よりも大きな帯域幅を消費するものの、パケット通信全体を再送信する従来の再送信方式と比較すれば、帯域幅の使用の削減を実現することができることは明らかである。
【0044】
上述のどの例においても、連続する要求・応答のやりとりが使用される場合、要求・応答のやりとりは何回行ってもよい。サーバは誤りを訂正するのに必要なだけの要求を送ってもよいし、或いは、ある固定回数まで要求・応答のやりとりを行い、未訂正の誤りが残っていれば、ペイロードの再送信に戻ってもよい。或いは、サーバは予め定められた期間が終了するまで必要なだけ要求・応答のやりとりを行い、未訂正の誤りが残っていれば、ペイロードの再送信に戻ってもよい。
【0045】
本発明の基本原理を逸脱することなく上述の実施形態の詳細に様々な変更を施すことが可能であることは、当業者にとって明らかである。よって、本発明の範囲は以下の請求項によってのみ決定されるべきである。
【0046】
上述の装置のほとんどはハードウェア及びそれに関連するソフトウェアから構成される。例えば、一般的に、移動局装置又はサーバは1つ以上のプロセッサ、及びプロセッサ上で実行可能なソフトウェアを含み、前述した動作を行う。ここで「ソフトウェア」とは、一般的に理解される意味で使用されており、マシンやプロセッサで使用可能な、データ及びプログラムやルーチン(サブルーチン、オブジェクト、プラグイン等)を指す。周知のとおり、コンピュータプログラムは一般的に、マシン読み取り可能な、又はコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された命令からなる。本発明の実施形態では、例えば、デジタルメモリ等、マシン可読記憶媒体、又はコンピュータ可読記憶媒体に記憶された実行プログラム又は命令を含む。従来の意味の「コンピュータ」が特定の実施形態において必要となるわけではない。例えば、明細書中に記載された構成要素等の装置において、内蔵された、或いは別の形態の、さまざまなプロセッサを使用することが可能である。
【0047】
ソフトウェアを再度記憶するメモリは周知である。実施形態によっては、所定のプロセッサに関連付けられたメモリは、プロセッサと同じ物理デバイスに記憶されてもよく(「オンボード」メモリ)、例えば、RAM又はフラッシュメモリはICマイクロプロセッサ等の内部に設けられる。他の例を挙げると、メモリは、外付けディスクドライブ、ストレージアレイ、携帯型FLASHキーフォブ等の独立したデバイスである。このような場合、メモリとデジタルプロセッサが、例えば、I/Oポートやネットワークコネクション等で動作可能に接続された時、又は相互に通信状態となった時に、メモリはデジタルプロセッサと「関連付け」られたこととなり、プロセッサはメモリに記憶されたファイルを読み込むことができる。関連付けられたメモリは設計上「読み出し専用」メモリ(ROM)としてもよいし、又はパーミッションを「読み出し専用」としてもよいし、そうでなくてもよい。他の例としては、WORM、EPROM、EEPROM、FLASH等があり、これらに限定されるものではない。多くの場合、これらの技術はソリッドステート半導体デバイスにおいて実現される。その他のメモリとしては、従来の回転ディスクドライブ等の可動部品でもよい。このようなメモリは全て、「マシン可読」又は「コンピュータ可読」であり、明細書中に記載した機能を実施する実行命令を記憶するのに使用することができる。
【0048】
「ソフトウェアプロダクト」は一連の実行命令がマシン可読形態で記憶されたメモリデバイスのことであり、適切なマシン又はプロセッサが、ソフトウェアプロダクトへの適切なアクセスによって、命令を実行することによってその命令で実現されるプロセスを実施する。ソフトウェアプロダクトはソフトウェアを頒布するのに使用されることもある。これまで概要を説明したものを含め、それらに限定されることなく、あらゆる型のマシン可読メモリがソフトウェアプロダクトを構成するのに使用可能である。従って、電子送信(「ダウンロード」)によってソフトウェアを頒布することが可能であることも公知であり、このような場合、一般的に、送信の送信側若しくは受信側、又はその両方に、対応するソフトウェアプロダクトが存在することになる。
【0049】
本発明の原理を好適な実施形態において説明・例示してきたが、このような原理を逸脱することなく、本発明の構成や詳細に変更を加えることができることは明らかである。以下の請求項の要旨及び範囲を超えない範囲でなされるあらゆる修正及び変更が特許請求の範囲となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
命令を符号化したプロセッサ可読媒体であって、命令を実行することにより、
可聴トーンを受信してヘッダー及びペイロードを含むパケットに復調し、前記ペイロードは、対応する誤り訂正ビットをそれぞれ含む複数のセグメントからなり、
対応する誤り訂正ビットを利用して、前記セグメントに対してビット訂正を行い、前記ビット訂正に従って誤りに係るセグメントを特定し、
前記特定されたセグメントに対する追加誤り訂正ビットの要求を生成及び送信し、
続いて受信される可聴トーンを受信し、前記要求した追加誤り訂正ビットに復調し、
続いて受信した前記誤り訂正ビットを利用して前記パケットのペイロードを訂正することを特徴とする、プロセッサ可読媒体。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセッサ可読媒体であって、命令を実行することにより、
対応する追加誤り訂正ビットをそれぞれ利用して、前記特定されたセグメントに対してビット訂正を行い、関連誤りの増加がみられるセグメントを特定し、
関連誤りの増加がみられる前記特定されたセグメントに対する更なる誤り訂正ビットの要求を生成及び送信することを特徴とする、プロセッサ可読媒体。
【請求項3】
請求項2に記載のプロセッサ可読媒体であって、命令を実行することにより、
今回の訂正が前の訂正に対する新たな誤りを発生しなくなるまで、最も直前に受信した誤り訂正ビットを利用したセグメント訂正と、それに対応する前記生成及び送信を繰り返し、
パケットとともに受信した誤り検出ビットを利用して、前記繰り返しの結果を検査して未訂正の誤りが残っているか否かを判断することを特徴とする、プロセッサ可読媒体。
【請求項4】
請求項1に記載のプロセッサ可読媒体であって、命令を実行することにより、
誤りが発見された場合、追加誤り訂正ビットの一連の要求に対する応答を受信するまで、誤り訂正ビットが対応するコンテンツの再送信の要求を遅らせることを特徴とする、プロセッサ可読媒体。
【請求項5】
請求項4に記載のプロセッサ可読媒体であって、受信する前記一連の応答によって提供される、ある特定のセグメント1つに対する誤り訂正情報が徐々に増加することを特徴とする、プロセッサ可読媒体。
【請求項6】
請求項1に記載のプロセッサ可読媒体であって、誤り訂正ビットは順方向誤り訂正(FEC)情報からなることを特徴とする、プロセッサ可読媒体。
【請求項7】
請求項6に記載のプロセッサ可読媒体であって、命令を実行することにより、
前記受信され復調されたパケットに付属された誤り検出ビットを利用して、前記訂正されたペイロードを検査し未訂正の誤りが残っているか否か判断し、
誤り検出ビットを利用した前記検査により未訂正の誤りが残っていることが示される場合、ペイロードの再送信を要求することを特徴とする、プロセッサ可読媒体。
【請求項8】
請求項7に記載のプロセッサ可読媒体であって、誤り検出ビットは巡回冗長検査(CRC)情報からなることを特徴とする、プロセッサ可読媒体。
【請求項9】
命令を符号化したプロセッサ可読媒体であって、命令を実行することにより、
分割されたパケットペイロードの各セグメントに対応する冗長データを生成し、
帯域内シグナリング(IBS)モデムを使用して、セグメントデータ及び生成された前記冗長データを含むパケットを変調し、その結果生じる信号を無線情報通信ネットワークの音声帯域を介して送信し、
特定されたセグメントの誤り訂正ビットを要求する応答を受信し、
前記要求で特定されるセグメントに対する誤り訂正ビットを変調し、その結果生じる信号を前記無線情報通信ネットワークの音声帯域を介して送信することを特徴とする、プロセッサ可読媒体。
【請求項10】
命令を符号化した、請求項9に記載のプロセッサ可読媒体であって、命令を実行することにより、
前記誤り訂正ビットの変調の結果生じた前記信号を送信した後、次に特定されるセグメントの追加誤り訂正ビットを要求する別の応答を受信し、
次に特定される前記セグメントの追加誤り訂正ビットを変調し、その結果生じる信号を前記無線情報通信ネットワークの音声帯域を介して送信することを特徴とする、プロセッサ可読媒体。
【請求項11】
請求項10に記載のプロセッサ可読媒体であって、前記セグメントに対応する前記追加誤り訂正ビットは、前記セグメントに対応する誤り訂正ビットよりも多くの情報よりなることを特徴とする、プロセッサ可読媒体。
【請求項12】
命令を符号化した、請求項10に記載のプロセッサ可読媒体であって、命令を実行することにより、
パケットのセグメント全てに対して参照識別子を生成し、前記生成した参照識別子をそれに係るセグメントとともにマッピングした情報を、前記パケットとともに送信することを特徴とする、プロセッサ可読媒体。
【請求項13】
請求項12に記載のプロセッサ可読媒体であって、前記要求は参照識別子を利用してセグメントの部分を特定することを特徴とする、プロセッサ可読媒体。
【請求項14】
可聴トーンを受信しヘッダー及びペイロードを含むパケットに復調するステップであり、前記ペイロードはデータ及びそれに対応する冗長データからなるステップと、
対応する前記冗長データを利用して前記ペイロードデータを検査し、前記ペイロードデータの一部を誤りに係ると特定するステップと、
特定された前記一部に対する誤り訂正ビットの要求を生成及び送信するステップと、
次に受信される可聴トーンを受信して前記要求された誤り訂正ビットに復調するステップと、
受信した前記誤り訂正ビットを利用して前記ペイロードデータを訂正するするステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記ペイロードデータのサブセットに対してのみ前記誤り訂正ビットの要求を生成及び送信するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法であって、
前記パケットに含まれる誤り検出ビットを利用して、前記訂正されたペイロード中の誤りを検出するステップと、
誤りが検出された場合、パケットの再送信を要求するステップと、をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項14に記載の方法であって、前記冗長データは順方向誤り訂正(FEC)情報又は巡回冗長検査(CRC)情報を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
パケットペイロードに対応する冗長データを生成するステップと、
帯域内シグナリング(IBS)モデムを使用して前記ペイロードデータ及び前記冗長データを含むパケットを変調し、その結果生じる信号を無線情報通信ネットワークの音声帯域を介して送信するステップと、
前記ペイロードデータの特定された部分に対する誤り訂正ビットを要求する応答を受信するステップと、
前記ペイロードデータの前記特定された部分に対する前記誤り訂正ビットを変調し、その結果生じる信号を前記無線情報通信ネットワークの音声帯域を介して送信するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記冗長データは誤り訂正情報又は誤り検出情報を含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法であって、前記ペイロードデータのある特定の一部に対して順方向誤り訂正(FEC)ビットを提供する一連の送信を行うステップであって、送信毎に該送信に含まれる、前記特定のペイロードデータに対するFECビットの数が増加するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項18に記載の方法であって、最初に送信される信号はペイロードデータ及び冗長データの両方を表し、次に送信される信号は冗長データのみを表し、
前記方法は、誤り訂正ビットを提供した後、ペイロードデータを示す信号を送信するステップをさらに含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−501455(P2013−501455A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523627(P2012−523627)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/041967
【国際公開番号】WO2011/016959
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(309032522)エアビクティ インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】