説明

無線環境通知装置及び移動体端末

【課題】固定の移動経路上を移動する車両内で使用される移動体端末に対して、ハンドオーバ先の基地局として適している基地局を通知することができる無線環境通知装置を得ることを目的とする。
【解決手段】電波強度記録部11に記録されている電波強度の中から、現在の走行位置からT秒後の走行位置に至るまでの各基地局の最低電力Pmin_iを取得し、最低電力Pmin_iが基準電力レベルPrefより大きい基地局をハンドオーバ先の基地局候補として特定する基地局候補特定部15を設け、無線環境通知部16が基地局候補特定部15により特定されたハンドオーバ先の基地局候補を示す無線環境情報を移動体端末4に通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハンドオーバ先の基地局候補を移動体端末に通知する無線環境通知装置と、無線環境通知装置から通知された基地局候補の中から、ハンドオーバ先の基地局を選択する移動体端末とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
セルラ移動通信システムでは、通信中の移動体端末が、セル間を移動する際、接続先の基地局を切り替えるハンドオーバ制御を実施する。
即ち、通信中の移動体端末は、セル間を移動する際、周辺の複数の基地局から到来する電波を受信して、その電波の電力を測定する。
移動体端末は、複数の基地局から到来する電波の電力を測定すると、電波の電力が基準レベル以上であって、電波の電力が最も安定している基地局をハンドオーバ先の基地局として選択し、その基地局にハンドオーバを行う。
【0003】
なお、周辺の基地局から到来する電波の電力を基準にして、ハンドオーバ先の基地局を選択する場合、一般的には、移動体端末から距離的に最も近い基地局が選択される。
したがって、例えば、移動体端末が高速移動している場合や、移動体端末の移動速度がさほど速くなくてもセル半径が小さい場合には、ハンドオーバの頻度が高くなり、移動体端末の処理負荷が極めて大きくなる。
このように、移動体端末の処理負荷が大きくなると、伝送誤りの発生や消費電力の増加の原因となり、非常に好ましくない。
このような問題を解決するために、以下の特許文献1には、周辺の基地局の設置位置と、移動体端末の位置、移動方向及び移動速度とに基づいて、最適なハンドオーバ先の基地局を選択する技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−27519号公報(段落番号[0039]から[0044]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の移動体端末は以上のように構成されているので、周辺の基地局の設置位置と、自端末の位置、移動方向及び移動速度とに基づいて、ハンドオーバ先の基地局を選択する場合、自端末の進行方向の変更や移動速度の変化が発生したり、基地局と間に存在する遮蔽物などによるシャドウイングの影響を受けたりすると、最適なハンドオーバ先の基地局を選択することができず、通信品質が劣化することがあるなどの課題があった。
【0006】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、固定の移動経路上を移動する車両内で使用される移動体端末に対して、ハンドオーバ先の基地局として適している基地局を通知することができる無線環境通知装置を得ることを目的とする。
また、この発明は、固定の移動経路上を移動する車両内で使用される状況下では、複数の基地局から到来する電波の電力を測定することなく、最適なハンドオーバ先の基地局を選択することができる移動体端末を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る無線環境通知装置は、電波強度記録手段に記録されている電波強度の中から、位置速度検出手段により検出された現在の走行位置から走行位置算出手段により算出された所定時間後の走行位置に至るまでの各基地局の最小の電波強度を取得し、最小の電波強度が基準電波強度より高い基地局をハンドオーバ先の基地局候補として特定する基地局候補特定手段を設け、通知手段が基地局候補特定手段により特定されたハンドオーバ先の基地局候補を示す無線環境情報を移動体端末に通知するようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、電波強度記録手段に記録されている電波強度の中から、位置速度検出手段により検出された現在の走行位置から走行位置算出手段により算出された所定時間後の走行位置に至るまでの各基地局の最小の電波強度を取得し、最小の電波強度が基準電波強度より高い基地局をハンドオーバ先の基地局候補として特定する基地局候補特定手段を設け、通知手段が基地局候補特定手段により特定されたハンドオーバ先の基地局候補を示す無線環境情報を移動体端末に通知するように構成したので、固定の移動経路上を移動する車両内で使用される移動体端末に対して、ハンドオーバ先の基地局として適している基地局を通知することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるセルラ移動通信システムを示す構成図であり、図において、車両1は固定の移動経路を移動する電車や路線バスなどが該当する。
基地局2−1〜2−5は固定の移動経路の周辺に設置されており、それぞれ通信エリア3−1〜3−5を有している。
図1では、固定の移動経路の周辺に5台の基地局が設置されている例を示しているが、これは一例に過ぎず、6台以上の基地局が設置されていてもよい。
移動体端末4は車両1内で使用されている携帯電話機などの端末である。
無線環境通知装置5は車両1に搭載され、ハンドオーバ先の基地局として適している基地局を移動体端末4に通知する装置である。
【0010】
図2はこの発明の実施の形態1による無線環境通知装置5を示す構成図であり、図において、電波強度記録部11は固定の移動経路の周辺に設置されている基地局2−1〜2−5から到来する各移動地点における電波の強度を記録している記録媒体であり、また、電波強度記録部11は基地局2−1〜2−5を識別する識別情報(例えば、スクランブリングコード)などを記録している。なお、電波強度記録部11は電波強度記録手段を構成している。
現在位置検出部12は例えばGPS衛星から発信されるGPS信号を受信し、そのGPS信号を用いて、車両1の現在の走行位置を測位する処理を実施する。
走行速度検出部13は例えば車両1の速度計から速度情報を収集して、車両1の現在の走行速度を検出する処理を実施する。
なお、現在位置検出部12及び走行速度検出部13から位置速度検出手段が構成されている。
【0011】
走行位置算出部14は現在位置検出部12により測位された現在の走行位置と走行速度検出部13により検出された現在の走行速度からT秒後(所定時間後)の車両1の走行位置を算出する処理を実施する。なお、走行位置算出部14は走行位置算出手段を構成している。
基地局候補特定部15は電波強度記録部11に記録されている電波強度の中から、現在位置検出部12により検出された現在の走行位置から走行位置算出部14により算出されたT秒後の走行位置に至るまでの各基地局の最小の電波強度を取得し、最小の電波強度が基準電波強度より高い基地局をハンドオーバ先の基地局候補として特定する処理を実施する。なお、基地局候補特定部15は基地局候補特定手段を構成している。
【0012】
無線環境通知部16は基地局候補特定部15により特定されたハンドオーバ先の基地局候補を示す無線環境情報を移動体端末4に通知する処理を実施する。ただし、無線環境通知部16が車両1内の移動体端末4に通知する機能は、特に限定するものではないが、例えば、無線LANやBluetoothなどの近距離通信手段を用いればよい。
なお、無線環境通知部16は通知手段を構成している。
図4はこの発明の実施の形態1による無線環境通知装置5の基地局候補特定部15及び無線環境通知部16の処理内容を示すフローチャートである。
【0013】
図3はこの発明の実施の形態1による移動体端末4を示す構成図である。ただし、図3では、この発明に関する移動体端末4の主要部分のみを記載しており、例えば、携帯電話機の通話部やマンマシンインタフェースなどに関する部分は省略している。
図において、無線環境情報収集部21は無線環境通知装置5と通信を確立して、無線環境通知装置5からハンドオーバ先の基地局候補を示す無線環境情報を収集する処理を実施する。なお、無線環境情報収集部21は無線環境情報収集手段を構成している。
【0014】
基地局選択部22は無線環境情報収集部21により収集された無線環境情報が示すハンドオーバ先の基地局候補の中から、ハンドオーバ先の基地局を選択する処理を実施する。
なお、基地局選択部22は基地局選択手段を構成している。
接続先切替部23は基地局選択部22により選択された基地局に接続先を切り替えるハンドオーバを実施する。なお、接続先切替部23は接続先切替手段を構成している。
図5はこの発明の実施の形態1による移動体端末4の処理内容を示すフローチャートである。
【0015】
次に動作について説明する。
以下、無線環境通知装置5の処理内容は、図4を参照しながら説明するが、図4においては、固定の移動経路の周辺に設置されている基地局の台数がm台であるものとしている。図1の例では、m=5である。
【0016】
まず、無線環境通知装置5の基地局候補特定部15は、電波強度記録部11に記録されている全ての基地局2−1〜2−5を評価するに際して、下記の前処理を実施する。
即ち、基地局候補特定部15は、評価対象の基地局を特定する変数iを“0”に初期化し(ステップST1)、ハンドオーバ先の基地局候補を示す無線環境情報を初期化する(ステップST2)。
また、基地局候補特定部15は、無線環境情報に登録されている基地局数nを“0”に初期化する(ステップST3)。
【0017】
基地局候補特定部15は、変数iと基地局数m(図1の例では、m=5)を比較し(ステップST4)、変数iが基地局数m未満であれば、ステップST5の処理に移行する。
一方、変数iが基地局数m以上であれば、電波強度記録部11に記録されている全ての基地局2−1〜2−5の評価が完了しているものとして、ステップST16の処理に移行する。
なお、基地局候補特定部15は、ステップST4からST15の処理をT秒周期で繰り返し実施する。
【0018】
基地局候補特定部15は、変数iが基地局数m未満である場合、現在位置検出部12から車両1の現在の走行位置を取得する(ステップST5)。
即ち、現在位置検出部12は、例えば、GPS衛星から発信されるGPS信号を受信し、そのGPS信号を用いて、車両1の現在の走行位置を測位し、その走行位置を基地局候補特定部15に出力する。
【0019】
基地局候補特定部15は、現在位置検出部12から車両1の現在の走行位置を取得すると、電波強度記録部11に記録されている各移動地点における基地局2−1〜2−5の到来波電力(電波強度)の中から、現在の走行位置における基地局2−i(“i”は、上記の変数i)の到来波電力Pn_iを取得する(ステップST6)。
基地局候補特定部15は、現在の走行位置における基地局2−iの到来波電力Pn_iを取得すると、基地局2−iの到来波電力Pn_iと基準電波強度である基準電力レベルPref(移動体端末4が十分な品質で通信を維持することができる基地局の到来波電力のレベル)を比較する(ステップST7)。
【0020】
基地局候補特定部15は、基地局2−iの到来波電力Pn_iが基準電力レベルPrefより大きければ、ステップST8の処理に移行し、基地局2−iの到来波電力Pn_iが基準電力レベルPrefより大きくなければ、移動体端末4が基地局2−iをハンドオーバ先の基地局に選択すると、移動体端末4が現在の走行位置において、十分な品質で通信を維持することができないため、基地局2−iをハンドオーバ先の基地局候補に入れず、基地局2−iの評価を終了して、ステップST15の処理に移行する。
【0021】
基地局候補特定部15は、基地局2−iの到来波電力Pn_iが基準電力レベルよりPref大きい場合、走行位置算出部14からT秒後の車両1の走行位置を取得する(ステップST8)。
即ち、走行位置算出部14は、現在位置検出部12により測位された現在の走行位置と走行速度検出部13により検出された現在の走行速度から、T秒後の車両1の走行位置を算出し、T秒後の車両1の走行位置を基地局候補特定部15に出力する。
【0022】
基地局候補特定部15は、走行位置算出部14からT秒後の車両1の走行位置を取得すると、電波強度記録部11に記録されている各移動地点における基地局2−1〜2−5の到来波電力の中から、現在の走行位置からT秒後の走行位置に至るまでの基地局2−iの到来波電力の中で最小の電波強度である最低電力Pmin_iを取得する(ステップST9)。
基地局候補特定部15は、基地局2−iの最低電力Pmin_iを取得すると、基地局2−iの最低電力Pmin_iと基準電力レベルPrefを比較する(ステップST10)。
【0023】
基地局候補特定部15は、基地局2−iの最低電力Pmin_iが基準電力レベルPrefより大きければ、ステップST11の処理に移行し、基地局2−iの最低電力Pmin_iが基準電力レベルPrefより大きくなければ、移動体端末4が基地局2−iをハンドオーバ先の基地局に選択すると、移動体端末4が現在の走行位置からT秒後の走行位置に至るまでの間、十分な品質で通信を維持することができないため、基地局2−iをハンドオーバ先の基地局候補に入れず、基地局2−iの評価を終了して、ステップST15の処理に移行する。
【0024】
基地局候補特定部15は、基地局2−iの最低電力Pmin_iが基準電力レベルPrefより大きい場合、無線環境情報に登録済みの基地局数nが、登録可能な所定の基地局数より少なければ(ステップST11)、基地局2−iをハンドオーバ先の基地局候補として、無線環境情報に登録し(ステップST12)、登録済みの基地局数を示す変数nに“1”を加算する(ステップST13)。
【0025】
一方、無線環境情報に登録済みの基地局数nが、登録可能な所定の基地局数に到達している場合(ステップST11)、基地局2−iの到来波電力Pn_i及び最低電力Pmin_iと、既に登録されている基地局の到来波電力Pn及び最低電力Pminとを比較して、例えば、基地局2−iの到来波電力Pn_i及び最低電力Pmin_iが既に登録されている基地局の到来波電力Pn及び最低電力Pminより大きければ、無線環境情報から既に登録されている基地局を削除し、基地局2−iをハンドオーバ先の基地局候補として、無線環境情報に登録する(ステップST14)。
【0026】
基地局候補特定部15は、基地局2−iの評価が完了すると、次の基地局を評価するため、変数iに“1”を加算し(ステップST15)、ステップST4の処理に戻る。
無線環境通知部16は、基地局候補特定部15が電波強度記録部11に記録されている全ての基地局2−1〜2−5の評価が完了すると(ステップST4)、例えば、無線LANやBluetoothなどの近距離通信手段を用いて、ハンドオーバ先の基地局候補を示す無線環境情報を移動体端末4に通知する(ステップST16)。
【0027】
次に、図5を参照しながら、移動体端末4がハンドオーバを実施する際の基地局の選択処理を説明する。
移動体端末4の無線環境情報収集部21は、無線環境通知装置5と通信を確立し、通信の確立に成功すれば(ステップST21)、無線環境通知装置5からハンドオーバ先の基地局候補を示す無線環境情報を収集する。
【0028】
基地局選択部22は、無線環境情報収集部21が無線環境情報の収集に成功し、その無線環境情報にハンドオーバ先の基地局候補が少なくとも1以上含まれていれば(ステップST22)、そのハンドオーバ先の基地局候補の中から、ハンドオーバ先の基地局を1つ選択する(ステップST23)。
基地局選択部22は、無線環境情報収集部21が無線環境情報の収集に失敗した場合、あるいは、その無線環境情報にハンドオーバ先の基地局候補が1つも含まれていない場合(ステップST22)、従来の移動体端末と同様にして、ハンドオーバ先の基地局を選択する(ステップST24)。
【0029】
例えば、基地局2−1〜2−5から到来する電波の電力を測定し、電波の電力が基準レベル以上であって、電波の電力が最も安定している基地局をハンドオーバ先の基地局として選択する。
あるいは、上記の特許文献1と同様に、基地局2−1〜2−5の設置位置と、移動体端末4の現在の走行位置、移動方向及び移動速度とに基づいて、ハンドオーバ先の基地局を選択する。
【0030】
接続先切替部23は、基地局選択部22がハンドオーバ先の基地局を選択すると、その基地局に接続先を切り替えるハンドオーバを実施する。
【0031】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、電波強度記録部11に記録されている電波強度の中から、現在位置検出部12により検出された現在の走行位置から走行位置算出部14により算出されたT秒後の走行位置に至るまでの各基地局の最低電力Pmin_iを取得し、最低電力Pmin_iが基準電力レベルPrefより大きい基地局をハンドオーバ先の基地局候補として特定する基地局候補特定部15を設け、無線環境通知部16が基地局候補特定部15により特定されたハンドオーバ先の基地局候補を示す無線環境情報を移動体端末4に通知するように構成したので、固定の移動経路上を移動する車両1内で使用される移動体端末4に対して、ハンドオーバ先の基地局として適している基地局を通知することができる効果を奏する。
【0032】
また、この実施の形態1によれば、無線環境情報収集部21により収集された無線環境情報が示すハンドオーバ先の基地局候補の中から、ハンドオーバ先の基地局を選択する基地局選択部22を設け、接続先切替部23が基地局選択部22により選択された基地局に接続先を切り替えるハンドオーバを実施するように構成したので、固定の移動経路上を移動する車両1内で使用される状況下では、基地局2−1〜2−5から到来する電波の電力を測定することなく、最適なハンドオーバ先の基地局を選択することができる効果を奏する。
【0033】
また、この実施の形態1によれば、無線環境情報収集部21が無線環境情報の収集に失敗した場合、あるいは、その無線環境情報にハンドオーバ先の基地局候補が1つも含まれてない場合、従来の移動体端末と同様にして、ハンドオーバ先の基地局を選択するように構成したので、無線環境通知装置5からハンドオーバ先の基地局候補が得られない状況が発生しても、ハンドオーバ先の基地局を選択することができる効果を奏する。
【0034】
実施の形態2.
図6はこの発明の実施の形態2による無線環境通知装置5を示す構成図であり、図において、図2と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
無線環境測定部17は例えば受信アンテナや受信機などを実装しており、車両1が移動経路上を移動しているとき、基地局2−iから到来する各移動地点における到来波電力Pn_iを測定して、電波強度記録部11に記録されている到来波電力Pn_iを更新する処理を実施する。なお、無線環境測定部17は電波強度更新手段を構成している。
図7はこの発明の実施の形態2による無線環境通知装置の無線環境測定部17の処理内容を示すフローチャートである。
【0035】
上記実施の形態1では、基地局2−iから到来する各移動地点における到来波電力Pn_iが電波強度記録部11に記録されているものについて示したが、無線環境測定部17が各移動地点における到来波電力Pn_iを測定して、電波強度記録部11に記録されている到来波電力Pn_iを更新するようにしてもよい。
以下、無線環境測定部17の処理内容を具体的に説明する。なお、無線環境測定部17が追加されている点以外は、上記実施の形態1と同様である。
【0036】
まず、無線環境測定部17は、電力更新済みの基地局数を示す変数iを“0”に初期化する(ステップST31)。
次に、無線環境測定部17は、電力更新済みの基地局数iと、予め電波強度記録部11に到来波電力Pn_iが記録されている基地局の数m(図1の例では、m=5)とを比較し(ステップST32)、電力更新済みの基地局数iが基地局数m未満であれば、ステップST32の処理に移行する。
一方、電力更新済みの基地局数iが基地局数m以上であれば、電波強度記録部11に記録されている全ての基地局2−iの到来波電力Pn_iの更新が完了しているものとして、ステップST39の処理に移行する。
【0037】
無線環境測定部17は、電力更新済みの基地局数iが基地局数m未満である場合、現在位置検出部12から車両1の現在の走行位置を取得する(ステップST33)。
即ち、現在位置検出部12は、例えば、GPS衛星から発信されるGPS信号を受信し、そのGPS信号を用いて、車両1の現在の走行位置を測位し、その走行位置を無線環境測定部17に出力する。
【0038】
無線環境測定部17は、現在位置検出部12から車両1の現在の走行位置を取得すると、電波強度記録部11に記録されている各移動地点における基地局2−1〜2−5の到来波電力の中から、現在の走行位置における基地局2−iの到来波電力Pn_iを取得する(ステップST34)。
また、無線環境測定部17は、現在の走行位置における基地局2−iの到来波電力Pn_iを実際に測定する(ステップST35)。
【0039】
ただし、無線環境測定部17は、基地局2−iの到来波電力Pm_iの測定結果には、一般的に測定ばらつきが含まれているので、測定ばらつきを抑制するために、例えば、忘却係数付きのIIRフィルタなど用いて、今回の測定結果である到来波電力Pm_iと、過去の測定結果である到来波電力Pn_i(電波強度記録部11に記録されている到来波電力Pn_i)との平均化処理を行う(ステップST36)。
無線環境測定部17は、到来波電力Pm_iと到来波電力Pn_iの平均化処理結果を現在の走行位置における基地局2−iの到来波電力Pn_iとして、電波強度記録部11に記録されている到来波電力Pn_iに上書きする(ステップST37)。
無線環境測定部17は、基地局2−iの到来波電力Pn_iの更新を完了すると、次の基地局の到来波電力を更新するため、変数iに“1”を加算して(ステップST38)、ステップST32の処理に戻る。
【0040】
無線環境測定部17は、電波強度記録部11に記録されている全ての基地局2−iの到来波電力Pn_iの更新が完了して、電力更新済みの基地局数iが基地局数mに到達すると(ステップST32)、現在位置検出部12から車両1の現在の走行位置を取得する(ステップST39)。
即ち、現在位置検出部12は、例えば、GPS衛星から発信されるGPS信号を受信し、そのGPS信号を用いて、車両1の現在の走行位置を測位し、その走行位置を無線環境測定部17に出力する。
【0041】
無線環境測定部17は、現在位置検出部12から車両1の現在の走行位置を取得すると、電波強度記録部11に登録されていない基地局(未知基地局)から到来する電波を検波するとともに、未知基地局の識別情報を検出する(ステップST40)。
無線環境測定部17は、未知基地局から到来する電波を検波することができた場合、未知基地局の到来波電力を新規検出基地局の到来波電力として測定する(ステップST41)。
無線環境測定部17は、新規検出基地局の到来波電力を測定すると、その基地局の識別情報と一緒に当該到来波電力を電波強度記録部11に登録する(ステップST42)。
【0042】
以上で明らかなように、この実施の形態2によれば、車両1が移動経路上を移動しているとき、無線環境測定部17が基地局2−iから到来する各移動地点における到来波電力Pn_iを測定して、電波強度記録部11に記録されている到来波電力Pn_iを更新するように構成したので、例えば、車両1の移動経路付近の建造物等の変化や、新規基地局の追加などにより無線環境が変化しても、自動的に対応することが可能になり、上記実施の形態1よりも、更に的確なハンドオーバ先の基地局候補を移動体端末4に通知することができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の実施の形態1によるセルラ移動通信システムを示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による無線環境通知装置を示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1による移動体端末を示す構成図である。
【図4】この発明の実施の形態1による無線環境通知装置の基地局候補特定部15及び無線環境通知部16の処理内容を示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態1による移動体端末の処理内容を示すフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態2による無線環境通知装置を示す構成図である。
【図7】この発明の実施の形態2による無線環境通知装置の無線環境測定部17の処理内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
1 車両、2−1,2−2,2−3,2−4,2−5 基地局、3−1,3−2,3−3,3−4,3−5 通信エリア、4 移動体端末、5 無線環境通知装置、11 電波強度記録部(電波強度記録手段)、12 現在位置検出部(位置速度検出手段)、13 走行速度検出部(位置速度検出手段)、14 走行位置算出部(走行位置算出手段)、15 基地局候補特定部(基地局候補特定手段)、16 無線環境通知部(通知手段)、17 無線環境測定部(電波強度更新手段)、21 無線環境情報収集部(無線環境情報収集手段)、22 基地局選択部(基地局選択手段)、23 接続先切替部(接続先切替手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定の移動経路の周辺に設置されている複数の基地局から到来する各移動地点における電波の強度を記録している電波強度記録手段と、上記移動経路上を移動する車両の現在の走行位置及び走行速度を検出する位置速度検出手段と、上記位置速度検出手段により検出された現在の走行位置及び走行速度から所定時間後の走行位置を算出する走行位置算出手段と、上記電波強度記録手段に記録されている電波強度の中から、上記位置速度検出手段により検出された現在の走行位置から上記走行位置算出手段により算出された所定時間後の走行位置に至るまでの各基地局の最小の電波強度を取得し、最小の電波強度が基準電波強度より高い基地局をハンドオーバ先の基地局候補として特定する基地局候補特定手段と、上記基地局候補特定手段により特定されたハンドオーバ先の基地局候補を示す無線環境情報を移動体端末に通知する通知手段とを備えた無線環境通知装置。
【請求項2】
車両が移動経路上を移動しているとき、複数の基地局から到来する電波の強度を測定して、電波強度記録手段に記録されている電波の強度を更新する電波強度更新手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の無線環境通知装置。
【請求項3】
無線環境通知装置と通信を確立して、上記無線環境通知装置からハンドオーバ先の基地局候補を示す無線環境情報を収集する無線環境情報収集手段と、上記無線環境情報収集手段により収集された無線環境情報が示すハンドオーバ先の基地局候補の中から、ハンドオーバ先の基地局を選択する基地局選択手段と、上記基地局選択手段により選択された基地局に接続先を切り替えるハンドオーバを実施する接続先切替手段とを備えた移動体端末。
【請求項4】
基地局選択手段は、無線環境情報収集手段により無線環境情報が収集されていない場合、複数の基地局から到来する電波の強度を測定し、電波の強度が基準電波強度より高い基地局をハンドオーバ先の基地局として選択することを特徴とする請求項3記載の移動体端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−294745(P2008−294745A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138060(P2007−138060)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】