説明

無線監視システム

【課題】無線監視システムにおいて、安価な構成で、モニタ装置と複数のカメラ装置との間で高感度かつ高速な通信を行う。
【解決手段】通信待受モードにおいては、狭帯域フィルタ35aを用いると共に、フェーズドアレイアンテナ30の指向方向を時間の経過に応じて変更しながらカメラ装置2から通信許可要求信号が送信されるのを待ち受ける。いずれかのカメラ装置2から送信された通信許可要求信号を受信したとき、広帯域フィルタ35bに切り替えると共に、フェーズドアレイアンテナ30の指向方向を固定して、高速通信を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互に無線通信可能なカメラ装置とモニタ装置を用いた無線監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から戸建や集合住宅等の住宅内、又は事業所等の非住宅内で侵入者や不審者等を監視する監視システムにおいては、カメラ装置の設置の便宜を図るために、カメラ装置とモニタ装置の相互間において無線通信により画像データ等を送受信する無線監視システムが使用されている。例えば、特許文献1には、カメラ装置の周辺に無線センサを配置し、相互に無線通信することにより、親機であるモニタ装置と無線センサとの通信を廃して、モニタ装置の負荷を軽減する無線監視システムが示されている。
【0003】
カメラ装置とモニタ装置との間の通信においては、長距離通信を可能とするために、通常、スペクトラム拡散やOFDM(直交波周波数分割多重)などの複雑な変復調方式を用いたり、誤り訂正符号などを追加したりしていた。
【特許文献1】特開2004−128659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらスペクトラム拡散やOFDMなどの変復調方式はシステム構成が複雑になりコストが増大してしまうという課題があり、また誤り訂正符号は使用可能な周波数帯域が限られている無線伝送において伝送速度の上限を高くできないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、簡素でかつ安価な構成でありながらも、カメラ装置とモニタ装置との間で高感度かつ高速な通信を行うことができる無線監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、画像を撮像する撮像手段と、この撮像手段が撮像した画像のデータを無線により送信する送信手段とを有し、特定の場所に設置される複数のカメラ装置と、前記カメラ装置の送信手段から送信された無線信号を受信するための複数のアンテナ及び該アンテナの指向性を変更するための位相変更手段を有するフェーズドアレイアンテナと、このフェーズドアレイアンテナによって受信された無線信号を復調する信号復調手段と、この信号復調手段によって復調された信号にフィルタをかけるフィルタ手段と、このフィルタ手段を通過した信号に基づいて画像を表示する表示手段と、前記位相変更手段、信号復調手段、フィルタ手段及び表示手段を制御する制御手段とを有するモニタ装置とを備えた無線監視システムにおいて、前記制御手段は、通常の通信待受モードにおいて、前記位相変更手段を制御して、前記フェーズドアレイアンテナの指向方向を時間の経過に応じて変更しながらカメラ装置から通信許可要求信号が送信されるのを待ち受け、いずれかのカメラ装置から送信された通信許可要求信号を受信したとき、通信実行モードに移行して前記フェーズドアレイアンテナの指向方向を固定するように前記位相変更手段を制御して、画像データを受信することを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の無線監視システムにおいて、前記フィルタ手段は、第1帯域の信号を通過させる第1帯域フィルタと、前記第1帯域よりも広い第2帯域の信号を通過させる第2帯域フィルタとを有し、いずれかのフィルタを択一的に選択可能であり、前記制御手段は、通常の通信待受モードにおいて、前記フィルタ手段に第1帯域フィルタを選択させ、通信実行モードに移行した後は、前記フィルタ手段に第2帯域フィルタを選択させることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の無線監視システムにおいて、前記制御手段は、通信実行モードにおいて、カメラ装置から画像データの送信が完了した後、通常の通信待受モードに戻ることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の無線監視システムにおいて、前記制御部は、各カメラ装置が設置されている方向を記憶し、通信実行モードにおいて、通信を行うカメラ装置の方向に合わせて前記フェーズドアレイアンテナの指向方向を固定するように前記位相変更手段を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、制御手段は、通常の通信待受モードにおいて、フェーズドアレイアンテナの指向方向を時間の経過に応じて変更するように位相変更手段を制御する。これにより、通信エリア内の全方位においてカメラ装置からの通信を待ち受けることができる。フェーズドアレイアンテナが一定の周期で常にいずれかの特定の方向に向けられることとなるので、無指向状態でカメラ装置と通信する場合と比較して、その特定の方向の受信感度を高めることができる。そのため、複雑なシステム構成を必要とする変復調方式を用いることなく、カメラ装置との間における通信可能距離を大きくすることができ、通信エリアを拡張することができる。また、カメラ装置から送信される電波の強度を抑制してもモニタ装置との間で良好な通信を継続できるので、通常の通信待受モードにおけるカメラ装置の消費電力を低減することが可能となる。
【0011】
請求項2の発明によれば、通常の通信待受モードにおいて、制御手段がフィルタ手段に第1帯域フィルタを選択させるので、信号復調手段によって復調された信号に混入しているノイズを効果的に除去することができ、受信感度をさらに高めることが可能となる。これによりカメラ装置から送信される電波の強度を更に抑制でき、通常の通信待受モードにおけるカメラ装置の消費電力のさらなる低減を図ることができる。一方、いずれかのカメラ装置から送信された通信許可要求信号を受信して通信実行モードに移行すると、制御手段が第2帯域フィルタを選択するようにフィルタ手段を制御するので、カメラ装置との間で広帯域の電波を用いて高速な通信を行えるようになる。また、回転しているモニタ装置のフェーズドアレイアンテナの指向性がずれていてもカメラ装置からの通信許可要求信号を受信しやすくなるため、カメラ装置のより早い検知が可能となる。
【0012】
請求項3の発明によれば、通信実行モードにおいて、カメラ装置から画像データの送信が完了した後、通常の通信待受モードに戻るので、カメラ装置の消費電力を低減して、システムのランニングコストの低減を図ることが可能となる。また、別のカメラ装置との通信を待ち受けることができるようになる。
【0013】
請求項4の発明によれば、制御手段は、各カメラ装置が設置されている方向を記憶し、通信実行モードにおいて、通信を行うカメラ装置の方向に合わせてフェーズドアレイアンテナの指向性を固定するので、フェーズドアレイアンテナの指向性をカメラ装置の方向に正確に合わせることができ、受信電波の強度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一実施形態による無線監視システムについて図面を参照して説明する。図1は住居等の設備として備え付けられる無線監視システムを示している。無線監視システム1は、複数のカメラ装置2と、各カメラ装置2によって撮像された画像を表示するモニタ装置3等によって構成されている。各カメラ装置2とモニタ装置3とは、同一の周波数チャンネルを用いて無線によって相互に通信可能である。
【0015】
カメラ装置2は、画像を撮像して電子データとして出力するCCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子(撮像手段)21と、撮像素子21が撮像した画像の電子データを無線により送受信する送受信部(送信手段)22等を有している。カメラ装置2は、例えば住居等の要所に設置される。
【0016】
モニタ装置3は、フェーズドアレイアンテナ(位相配列アンテナ)30、送受信切替スイッチ33、受信部34、フィルタ部35、送信部36、ベースバンド処理部37、表示部38、制御部(制御手段)39等によって構成されている。フェーズドアレイアンテナ30は、例えば、平面上に配列された複数のアンテナ31a、31b、31c、31d...及びそれらに対応する位相変換器32a、32b、32c、32d...等を有し、各アンテナ31a、31b、31c、31d...の放射する電波の位相を変換(移相)することによってその指向性を変更し、各カメラ装置2の送受信部22との間で無線信号を送受信する。各アンテナ31a、31b、31c、31d...の放射する電波の位相は、位相変換部32によって変換される。送受信切替スイッチ33は、制御部39から出力された制御信号に応じてモニタ装置3の送受信動作を切り替える。受信部34は、フェーズドアレイアンテナ30を介して電波を受信するチューナ34aと、チューナ34aによって受信された信号を復調する受信復調部(信号復調手段)34b等を有している。なお、フェーズドアレイアンテナ30を構成するアンテナ31a、31b、31c、31d...及び位相変換器32a、32b、32c、32d...は、適宜増減可能である。基本原理として、アンテナ31a、31b、31c、31d...の本数を増やすことによりフェーズドアレイアンテナ30の指向性が高まる傾向にあるため、高い指向性が必要な場合はアンテナ31a、31b、31c、31d...の本数を増やせばよい。
【0017】
フィルタ部35は、受信復調部34bによって復調された受信ベースバンド信号の不要成分にフィルタをかけ、受信感度を高める。フィルタ部35は、比較的狭い第1帯域の受信ベースバンド信号を通過させる狭帯域フィルタ(第1帯域フィルタ)35aと、第1帯域よりも広い第2帯域の受信ベースバンド信号を通過させる広帯域フィルタ(第2帯域フィルタ)35bとを有し、制御部39から出力された制御信号に応じていずれかのフィルタを択一的に選択可能に構成されている。すなわち、狭帯域フィルタ35a及び広帯域フィルタ35bは、フィルタ部35に設けられているフィルタ切り替えスイッチ(図示せず)にて選択される。送信部36は、送受信切替スイッチ33、位相変換部32及びフェーズドアレイアンテナ30を介してカメラ装置2に信号を送信する。ベースバンド処理部37は、送受信するベースバンド信号を処理する。表示部38は、ベースバンド処理部37によって処理された信号に基づいて画像を表示する。より具体的には、いずれかのカメラ装置2によって撮像された画像が表示部38に表示される。制御部39は、モニタ装置3の上記各部の制御を司る。制御部39は、各カメラ装置2が設置されている方向を記憶しており、その方向に合わせてフェーズドアレイアンテナ30の指向性を制御する。
【0018】
図2はフェーズドアレイアンテナ30を構成するアンテナ31a、31b、31c、31dの配置を、図3は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性をそれぞれ示している。本実施形態においては、アンテナ31a、31b、31c、31dとして4本の半波長ダイポールアンテナを適用している。アンテナ31a、31b、31c、31dは、通信に用いる電波の波長をλとすると、図2(b)に示すように平面視で一辺がλ/4の正方形の頂点に、正方形の平面に垂直に配置されている。上述のごとくアンテナ31a、31b、31c、31dを配置し、位相変換器32a、32b、32c、32d...によって移相を行うことにより、X−Y平面上のアンテナ指向性を制御することができる。
【0019】
図2(b)中、A方向にフェーズドアレイアンテナ30の指向性を合わせたときのフェーズドアレイアンテナ30の指向性パターンを図3(a)に、D方向にフェーズドアレイアンテナ30の指向性を合わせたときのフェーズドアレイアンテナ30の指向性パターンを図3(b)にそれぞれ示している。フェーズドアレイアンテナ30の指向性を合わせた方向の利得が最も高くなり、その周辺領域の利得も高められている。
【0020】
図4は、各カメラ装置2とモニタ装置3との通信状態とフェーズドアレイアンテナ30の指向性を示している。モニタ装置3は、通常の通信待受モードと高速通信モードで動作する。通常の通信待受モードとは、いずれかのカメラ装置2からの通信開始を待ち受けているモードである。高速通信モードとは、通信を開始したカメラ装置2との間で画像データ等を高速に通信するモードである。
【0021】
通常の通信待受モードにおいては、図4(a)に示すように、制御部39は、いずれのカメラ装置2とも通信可能なように、位相変換器32a、32b、32c、32d...を制御してフェーズドアレイアンテナ30を指向方向を時間の経過に応じて変更する。同図では、時間Tが0、t1,t2,t3と経過することに応じてフェーズドアレイアンテナ30を指向方向を時計回りに45゜ずつ変更する例を示している。制御部39がさらに細かく位相変換器32a、32b、32c、32d...を制御することにより、フェーズドアレイアンテナ30を指向方向を時計回り、もしくは反時計回りに連続的に、例えば1゜ずつ変更するようにしてもよい。この場合にあっては、フェーズドアレイアンテナ30の指向性がフェーズドアレイアンテナ30を中心として時計回りに回転することとなる。
【0022】
図5(a)は、モニタ装置3からみた各カメラ装置2の方向を、図5(b)は、モニタ装置3の制御部39が各カメラ装置2に割り当てられているカメラIDと各カメラ装置2の方向を記憶するためのテーブルをそれぞれ示している。カメラ装置2A乃至2Dには、それぞれカメラID001〜100が割り当てられ、A方向〜H方向には、図5(a)に示すように、方向コードとして000〜111が割り当てられている。制御部39は、カメラ装置毎にカメラIDと方向コードとを対応づけて記憶し、その方向コードを読み込むことにより各カメラ装置2A乃至2Dが設置されている方向を特定し、通信を開始するカメラ装置2の方向にフェーズドアレイアンテナ30の指向性を合わせる。
【0023】
以下、カメラ装置2Aとモニタ装置3との間で通信を行う場合について説明する。カメラ装置2Aは、モニタ装置3との間で通信を行うにあたって通信許可要求信号を送信する。この通信許可要求信号は、フェーズドアレイアンテナ30の指向方向が1周回に亘って変更され元の方向に戻る時間より、長く送信される。カメラ装置2Aから通信許可要求信号が送信されると、時間T=t1のときフェーズドアレイアンテナ30の指向方向がモニタ装置3からみたカメラ装置2Aの設置方向と一致して、モニタ装置3は上記通信許可要求信号を受信することができる。通信許可要求信号を受信したモニタ装置3は、フェーズドアレイアンテナ30の指向方向を固定して、通信実行モードに移行する。これにより、フェーズドアレイアンテナ30の受信感度が高まり、カメラ装置2Aとの間で安定した通信状態が確保されることとなる。なお、フェーズドアレイアンテナ30の指向方向は、通信許可要求信号を受信したときの指向方向として固定してもよいし、図5(b)に示すテーブルに基づいて固定してもよい。
【0024】
図4(a)に示すように、通常の待受モードにおいて、制御部39は、狭帯域フィルタ35aを選択するようにフィルタ部35を制御し、受信ベースバンドフィルタを狭帯域としている。これは、カメラ装置2からの通信許可要求信号が低速であり、モニタ装置3のベースバンドフィルタの帯域が狭くなるほどノイズが除去されてSN比が大きくなり、感度が高まって通信エリアを拡大することができるからである。例えば、高速通信モードにおける伝送速度は16Mbpsであるのに対して、カメラ装置2からの通信許可要求信号の伝送速度を1.6Mbps程度とすると、狭帯域フィルタ35aを用いて通信することができる。この場合、10log10=10dBの感度向上が期待できる。このように、アンテナを無指向性とし、狭帯域フィルタ35aを用いる場合、広帯域フィルタ35bを用いる場合に比べて雑音量(ノイズ)が少なくなり、全方向に対して信号のSN比を向上させ通信距離を長距離化することができる。
【0025】
一方、高速通信モードにおいては、受信ベースバンドフィルタを広帯域化する必要があるが、それにより受信感度が劣化するという問題が生ずる。そこで、図4(b)に示すように、本実施形態においては、モニタ装置3が例えばカメラ装置2Aから送信された通信許可要求信号を受信すると、制御部39は、広帯域フィルタ35bを選択して受信ベースバンドフィルタを広帯域化することに加え、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を、通信を開始するカメラ装置2Aの方向に固定することにより、結果として感度を劣化させることなく高速通信を実現する。ここでいう「カメラ装置2Aの方向」とは、例えば、フェーズドアレイアンテナ30の指向性をその方向に向けたとき、受信強度(受信信号の電界強度)又はSN比が最大となる方向のことであり、カメラ装置2Aと通信を行うにあたって最適なフェーズドアレイアンテナ30の指向方向をいう(周辺の電波伝搬環境により、カメラ装置2Aが存在する方向と一致するとは限らない)。
【0026】
図6は、無線監視システム1において、モニタ装置3の動作モードを通常の通信待受モードから通信実行モードに切り替えて通信を開始する手順を示している。モニタ装置3は、どこに設置されたカメラ装置2とも通信が可能なように、フェーズドアレイアンテナ30の指向方向を時間経過に応じて変更して、カメラ装置2からの通信を待ち受ける(#1)。いずれかのカメラ装置2に何らかのトリガ入力がなされ、それに応じてそのカメラ装置2から通信許可要求信号が送信されると(#2においてYES)、モニタ装置3がその通信許可要求信号を受信する(#3)。そうすると、モニタ装置3の制御部39は、フェーズドアレイアンテナ30の指向方向を固定して、カメラ装置2に通信許可信号を送信する(#4)。これにより、モニタ装置3は通信実行モードに移行する。カメラ装置2が、上記通信許可信号を受信すると(#5においてYES)、カメラ装置2からモニタ装置3に画像データの伝送を開始する(#6)。これにより、いずれかのカメラ装置2とモニタ装置3との間で1対1の通信がなされる。
【0027】
図7は、無線監視システム1において、モニタ装置3の動作モードを通常の通信待受モードからより高速で通信可能な高速通信モードに切り替えて通信を行う手順を示している。モニタ装置3は、まず、フィルタ部35に狭帯域フィルタ35aを選択させて、受信ベースバンド信号の不要成分にかけるフィルタを狭帯域化し、(#11)、フェーズドアレイアンテナ30の指向方向を時間経過に応じて変更して、カメラ装置2からの通信を待ち受ける(#12)。いずれかのカメラ装置2に何らかのトリガ入力がなされ、それに応じてそのカメラ装置2から通信許可要求信号が送信されると(#13においてYES)、モニタ装置3がその通信許可要求信号を受信する(#14)。そうすると、モニタ装置3の制御部39は、フィルタ部35に広帯域フィルタ35bを選択させて、受信ベースバンド信号の不要成分にかけるフィルタを広帯域化し、(#15)、フェーズドアレイアンテナ30の指向方向を固定して、カメラ装置2に通信許可信号を送信する(#16)。これにより、モニタ装置3は図6に示す通信実行モードよりも高速で通信が可能な高速通信モードに移行する。カメラ装置2が、上記通信許可信号を受信すると(#17においてYES)、カメラ装置2からモニタ装置3に画像データの伝送を開始する(#18)。これにより、いずれかのカメラ装置2とモニタ装置3との間で1対1の高速通信がなされる。カメラ装置2からモニタ装置3への画像データの伝送が終了すると(#19)、#11に戻り、モニタ装置3の動作モードが、再び通常の通信待受モードに移行する。
【0028】
図6に示した手順中#4の処理において固定するフェーズドアレイアンテナ30の指向方向は、通信許可要求信号を受信したときのフェーズドアレイアンテナ30の指向方向としてもよいし、図5(b)に示すテーブルに基づいて設定してもよい。図7に示した手順中#16の処理において固定するフェーズドアレイアンテナ30の指向方向についても、同様である。
【0029】
図8は、図5(b)に示したテーブルを作成する手順を示している。テーブルの作成は、例えば、いずれかのカメラ装置2が設置され、モニタ装置3及びカメラ装置2の電源がオンされたとき行うものとする。モニタ装置3及びカメラ装置2の電源がオンされると(#21)、モニタ装置3の制御部39は、カメラ装置2のカメラIDを登録する(#22)。例えば、図5(b)においては、4個のカメラ装置2のカメラID001〜100を登録しているが、8個のカメラ装置2のカメラID000〜111まで登録可能である。すべてのカメラ装置2のカメラIDの登録が完了すると(#23においてYES)、モニタ装置3の制御部39は、カメラ装置2のカメラ方向の設定を開始する(#24)。まず、モニタ装置3の制御部39は、カメラ装置2の方向を認識し(#25)、その方向コードを記憶することによりテーブルを作成する(#26)。本実施形態においては、フェーズドアレイアンテナ30の指向性をA〜Hの8方向に設定可能であり、カメラ装置2がA〜Hの8方向のうちどの方向に相当するかを認識し、カメラ装置2の方向を設定する。カメラ装置2の方向の設定は、システム管理者が手動にてテーブルを完成させることにより行うものとしてもよいが、制御部39が、自動的に行うようにしてもよい。すべてのカメラ装置2の方向を設定を完了するまで#25、#26の処理を繰り返し(#27においてNO)、完了すると(#27においてYES)、処理を終了する。
【0030】
以上の手順により、図5(b)に示したテーブルが作成され、制御部39は、このテーブルを参照することにより、#24において通信を開始するカメラ装置2の方向を特定することができる。例えば、モニタ装置3が#20において受信した通信許可要求信号に含まれるカメラIDが001である場合、制御部39は、それに対応する方向コード001からカメラ装置2がB方向に設置されていると判断し、位相変換器32a、32b、32c、32d...を制御してフェーズドアレイアンテナ30の指向性をB方向に設定する。図5(b)に示したテーブルを用いることにより、制御部39として1つのマイクロコンピュータでフェーズドアレイアンテナ30の指向性を制御できるようになるため、同等の機能をハードウェアで実現する場合と比べて、システムの管理が容易となり、低コスト化が図れる。ここでは、接続可能なカメラ台数と設置方向をそれぞれ8台、8方向としているが、ターゲットとなるシステムに応じて適宜増減が可能である。
【0031】
本実施形態によれば、制御部39が、複数のカメラ装置2が設置されている方向を、各カメラ装置2に割り当てられているカメラIDと各カメラ装置の方向が関連づけられたテーブルによって記憶しているので、システムの管理が容易なものとなり、運営コストの低減を図ることが可能となる。
【0032】
以下、図8に示す#25において、モニタ装置3の制御部39が、カメラ装置2の方向を認識する手順について説明する。既に述べたように、図2に示すようにアンテナ31a、31b、31c、31dを配置し、位相変換器32a、32b、32c、32d...によって移相を行うことにより、X-Y平面上のアンテナ指向性を制御することができる。
【0033】
図9は、アンテナ指向性と移相量の関係を示している。ここでは無指向性を得る場合と、Z軸の周りに45゜刻みで8方向の指向性を得る場合の合計9通りについて対応する移相量を示したが、移相量を適宜調整することにより、さらに細かく指向性を制御することも可能である。無線監視システム1は、大別して学習モードと通信モードの2つの動作モードをもつ。学習モードは、モニタ装置3が各カメラ装置2に対して最適なアンテナ指向性を割り当てるためのモードであり、主として無線監視システム1の設置後、通信モードに入る前に実施する。通信モードは、モニタ装置3と各カメラ装置2との間で通信を行うためのモードであり、上記通信実行モード、高速通信モード及び通信待受モードを含む。
【0034】
学習モードにおいて、モニタ装置3は、位相変換器32a(移相器PS1)、32b(移相器PS2)、32c(移相器PS3)、32d(移相器PS4)の移相量をすべて0に設定し、アンテナ指向性を無指向にする。ここでカメラ装置2Aから、カメラ装置2AのID情報を含むテスト信号を連続的に送信させる。モニタ装置3はカメラ装置2Aからのテスト信号を受信すると、まず移相器PS1〜PS4の移相量をそれぞれ90°、90°、0°、0°に設定する。このように移相量を設定すると、アンテナの指向性は図9に示したようにA方向に設定され、このときの受信信号強度をベースバンド処理部37内の記憶部に記憶させる。次に移相器PS1〜PS4の移相量をそれぞれ64°、0°、−64°、0°に設定する。このように移相量を設定すると、アンテナの指向性はB方向に設定され、このときの受信信号強度をベースバンド処理部37内の記憶部に記憶させる。以下同様に、8通りのアンテナ指向性に対して、それぞれの場合における受信信号強度を求める。その結果、最も受信信号の強度が強くなったアンテナの指向性の方向にカメラ装置2Aが存在すると判断し、図5におけるテーブルに記憶する。カメラ装置2B〜2Dに関しても同様に、方向を認識してテーブルに記憶する。移相器PS1〜PS4の移相量を適宜設定することにより、アンテナ指向性を1゜ずつ変更し、その受信強度に基づいてカメラ装置2Aの方向を認識するものとしてもよい。
【0035】
図10は、モニタ装置3の制御部39が、カメラ装置2の方向を認識する手順を示している。このフローチャートでは、A方向から時計回りにH方向まで順次アンテナの指向性を45゜ずつ変更して、受信強度を測定する例を示している。モニタ装置3の制御部39は、まず、フェーズドアレイアンテナ30の指向性をA方向に合わせて(#31)、カメラ装置2から送信された信号を受信し、その受信強度を測定し(#32)、その値を記憶する(#33)。そして、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を時計回りに45゜変更して(#34においてNO、#37)、#32に戻る。こうして#32、#33、#34及び#37の処理を繰り返して、すべての方向の受信強度を記憶すると(#34においてYES)、A〜H方向の受信強度を比較し(#35)、最も受信強度が大きい方向をカメラ装置2の方向として設定し(#36)、処理を終了する。
【0036】
上記手順によれば、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を変更しながら受信した無線信号の受信強度を検知し、該受信強度が最大となる方向を該カメラ装置2が設置されている方向として制御部39が記憶するので、カメラ装置2の方向が自動的に制御部39に記憶される。これにより、システムの管理がより一層容易なものとなり、低コスト化を図ることが可能となる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の無線監視システムによれば、制御部39は、通常の通信待受モードにおいて、フェーズドアレイアンテナ30の指向方向を時間の経過に応じて変更するように移相変換器32a、32b、32c、32d...を制御する。これにより、通信エリア内の全方位においてカメラ装置2からの通信を待ち受けることができる。フェーズドアレイアンテナ30が一定の周期で常にいずれかの特定の方向に向けられることとなるので、無指向状態でカメラ装置2と通信する場合と比較して、その特定の方向の受信感度を高めることができる。よって、複雑なシステム構成を必要とする変復調方式を用いることなく、カメラ装置との間における通信可能距離を大きくすることができ、通信エリアを拡張することができる。また、カメラ装置2から送信される電波の強度を抑制してもモニタ装置3との間で良好な通信を継続できるので、通常の通信待受モードにおけるカメラ装置2の消費電力を低減することが可能となる。
【0038】
また、通常の通信待受モードにおいて、制御部39がフィルタ部35に狭帯域フィルタ35aを選択させるので、受信復調部34bによって復調された信号に混入しているノイズを効果的に除去することができ、受信感度をさらに高めることが可能となる。これにより、通常の通信待受モードにおけるカメラ装置2の消費電力のさらなる低減を図ることができる。一方、いずれかのカメラ装置2から送信された通信許可要求信号を受信して通信実行モードに移行すると、制御部39が広帯域フィルタ35bを選択するようにフィルタ部35を制御するので、カメラ装置2との間で広帯域の電波を用いて高速な通信を行えるようになる。また、回転しているモニタ装置3のフェーズドアレイアンテナ30の指向性がずれていてもカメラ装置2からの通信許可要求信号を受信しやすくなるため、カメラ装置2のより早い検知が可能となる。
【0039】
また、通信実行モードにおいて、カメラ装置2から画像データの送信が完了した後、通常の通信待受モードに戻るので、カメラ装置2の消費電力を低減して、システムのランニングコストの低減を図ることが可能となる。また、別のカメラ装置2との通信を待ち受けることができるようになる。また、制御部39は、各カメラ装置2が設置されている方向を記憶し、通信実行モードにおいて、通信を行うカメラ装置2の方向に合わせてフェーズドアレイアンテナ30の指向性を固定するので、フェーズドアレイアンテナ30の指向性をカメラ装置の方向に正確に合わせることができ、受信電波の強度を高めることができる。
【0040】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られることなく、少なくともフェーズドアレイアンテナ30の指向方向を時間の経過に応じて変更しながらカメラ装置2から通信許可要求信号が送信されるのを待ち受け、いずれかのカメラ装置2から送信された通信許可要求信号を受信したとき、フェーズドアレイアンテナ30の指向方向をカメラ装置2の方向に固定して通信を行うように構成されていればよい。また、本発明は種々の変形が可能であり、例えば、フェーズドアレイアンテナ30を構成するアンテナは、4本に限られることなく、何本であってもよい。また、カメラ装置2の個数及び配置は、図4に示した例に限られることなく、監視領域に応じて適宜設定することができる。また、上記各実施形態におけるカメラ装置とモニタ装置を適宜組み合わせて無線通信システムを構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態1による無線監視システムの構成を示すブロック図。
【図2】(a)は、同システムに適用されるフェーズドアレイアンテナを構成するアンテナの配置例を示す斜視図、(b)は、同平面図。
【図3】フェーズドアレイアンテナの指向性を示す図
【図4】各カメラ装置とモニタ装置との通信状態とフェーズドアレイアンテナの指向性を示す図。
【図5】(a)は、実施形態2の無線監視システムにおいて、モニタ装置からみた各カメラ装置の方向を、(b)は、モニタ装置の制御部が各カメラ装置に割り当てられているカメラIDと方向を記憶するためのテーブルを示す図。
【図6】モニタ装置3の動作モードを通常の通信待受モードから通信実行モードに切り替えて通信を開始する手順を示すフローチャート。
【図7】モニタ装置の動作モードを通常の通信待受モードからより高速で通信可能な高速通信モードに切り替えて通信を行う手順を示すフローチャート。
【図8】図5(b)に示したテーブルを作成する手順を示すフローチャート。
【図9】フェーズドアレイアンテナの指向性と移相量の関係を示す図。
【図10】モニタ装置の制御部が、カメラ装置の方向を認識する手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0042】
1 無線監視システム
2 カメラ装置
3 モニタ装置
30 フェーズドアレイアンテナ(位相配列アンテナ)
33 送受信切替スイッチ
34b 受信復調部(信号復調手段)
35 フィルタ部
35a 狭帯域フィルタ(第1帯域フィルタ)
35b 広帯域フィルタ(第2帯域フィルタ)
38 表示部
39 制御部(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を撮像する撮像手段と、この撮像手段が撮像した画像のデータを無線により送信する送信手段とを有し、特定の場所に設置される複数のカメラ装置と、
前記カメラ装置の送信手段から送信された無線信号を受信するための複数のアンテナ及び該アンテナの指向性を変更するための位相変更手段を有するフェーズドアレイアンテナと、このフェーズドアレイアンテナによって受信された無線信号を復調する信号復調手段と、この信号復調手段によって復調された信号にフィルタをかけるフィルタ手段と、このフィルタ手段を通過した信号に基づいて画像を表示する表示手段と、前記位相変更手段、信号復調手段、フィルタ手段及び表示手段を制御する制御手段とを有するモニタ装置とを備えた無線監視システムにおいて、
前記制御手段は、
通常の通信待受モードにおいて、前記位相変更手段を制御して、前記フェーズドアレイアンテナの指向方向を時間の経過に応じて変更しながらカメラ装置から通信許可要求信号が送信されるのを待ち受け、
いずれかのカメラ装置から送信された通信許可要求信号を受信したとき、通信実行モードに移行して前記フェーズドアレイアンテナの指向方向を固定するように前記位相変更手段を制御して、画像データを受信することを特徴とする無線監視システム。
【請求項2】
前記フィルタ手段は、第1帯域の信号を通過させる第1帯域フィルタと、前記第1帯域よりも広い第2帯域の信号を通過させる第2帯域フィルタとを有し、いずれかのフィルタを択一的に選択可能であり、
前記制御手段は、
通常の通信待受モードにおいて、前記フィルタ手段に第1帯域フィルタを選択させ、
通信実行モードに移行した後は、前記フィルタ手段に第2帯域フィルタを選択させることを特徴とする請求項1に記載の無線監視システム。
【請求項3】
前記制御手段は、
通信実行モードにおいて、カメラ装置から画像データの送信が完了した後、通常の通信待受モードに戻ることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無線監視システム。
【請求項4】
前記制御部は、各カメラ装置が設置されている方向を記憶し、通信実行モードにおいて、通信を行うカメラ装置の方向に合わせて前記フェーズドアレイアンテナの指向方向を固定するように前記位相変更手段を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の無線監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−34796(P2010−34796A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193986(P2008−193986)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】