説明

無線装置

【課題】導波管入出力を有するアンテナを筐体に簡易に取り付ける。
【解決手段】アンテナ20が円柱形の接続部24を備え、筐体10が、接続部24の形状に合わせた円柱形の凹部を有する支持部13を備えるとともに、円柱形の接続部24の中心軸に沿って円形導波管242を形成し、円柱形凹部の底面の中心において筐体10内部に配置した円形−方形導波管変換部12の円形開口部を露出させる。これにより、接続部24を支持部13の凹部にはめ込むだけで簡易にアンテナ20を筐体10に取り付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナを筐体に接続する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルTV放送の普及に伴い、TV局の番組制作現場では非圧縮のハイビジョン信号の伝送が可能な無線システムに対する要望が高まっている。発明者らは大容量の無線回線に対する要望にこたえるべく、ミリ波を使用した大容量無線技術の開発を行ってきた。
【0003】
TV局の中継番組においては、現場に到着してから中継が可能になるまでの時間を可能な限り短くしたいという要望がある。ところが、従来のミリ波無線機では、無線信号を発生するヘッド部にアンテナを取り付け、さらに、ヘッド部筐体を開けてアンテナにモジュールを取り付ける必要があり、簡易にミリ波無線機を組み立てることができなかった。これは、ミリ波信号を伝送する導波管のサイズが2mm×1mmと非常に小さいため、信号伝送部の接続に厳しい精度が要求されるからである。
【0004】
そこで、図5に示すように、ヘッド部とアンテナの接続にバイヨネット機構を導入し、従来よりも簡便にアンテナを取り付けることを可能とした(非特許文献1参照)。
【0005】
図5に示すアンテナ接続部はヘッド部とアンテナに分けられ、ヘッド部の接続部100およびアンテナの接続部200それぞれに、方形導波管101,201が形成されている。方形導波管101,201を正確に接続するために、ヘッド部の接続部100に位置合わせ用穴102、アンテナの接続部200に位置合わせ用ピン202を配置している。位置合わせ用穴102に位置合わせ用ピン202を差し込むことで方形導波管101,201が接続される。方形導波管101,201を接続した後、羽根203を回して接続部100,200を固定する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】枚田明彦、外7名、「120GHz帯無線によるTV放送用映像素材伝送トライアル」、NTT技術ジャーナル、2008年12月、第20巻、第12号、p.21-24
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図5に示すアンテナの接続方式では、微細な方形導波管101,201の位置合わせを行うために、精密な加工精度がもとめられるという問題があった。また、位置合わせ用ピン202を位置合わせ用穴102に入れるためには、角度や位置を精度よく合わせる必要があり、アンテナの取り付けに時間がかかるという問題があった。さらに、方形導波管101,201同士を接合した場合、ピンと穴の遊びの関係上、方形導波管101,201の傾きにずれが生じる可能性があるという問題があった。方形導波管101,201の傾きにずれが生じると、伝送特性が大幅に劣化してしまう。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、導波管入出力を有するアンテナを筐体に簡易に取り付けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る無線装置は、アンテナを筐体に取り付けて使用する無線装置であって、アンテナは、円柱形の中心軸に沿って円形導波管を形成した接続手段を有し、筐体は、方形導波管を入出力とする信号モジュールと、一端に方形開口部を有し、他端に円形開口部を有する導波管を備え、信号モジュールの入出力に方形開口部を接続した円形−方形導波管変換手段と、接続手段の形状に合わせた円柱形の凹部を備え、当該凹部の底面の中心に円形開口部を露出させた支持手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
上記無線装置において、接続手段の側面及び凹部の内周をねじ切り加工したことを特徴とする。
【0011】
上記無線装置において、接続手段に形成した円形導波管と凹部の底面に露出した円形開口部とを押圧接合する弾性体を有することを特徴とする。
【0012】
上記無線装置において、弾性体は、アンテナと筐体に取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、導波管入出力を有するアンテナを筐体に簡易に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施の形態における無線装置のアンテナ接続部の構成を示す側面図である。
【図2】第1の実施の形態における別の無線装置のアンテナ接続部の構成を示す側面図である。
【図3】第1の実施の形態におけるさらに別の無線装置のアンテナ接続部の構成を示す側面図である。
【図4】第2の実施の形態における無線装置のアンテナ接続部の構成を示す側面図である。
【図5】従来の無線装置のアンテナ接続部の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0016】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態における無線装置のアンテナ接続部の構成を示す側面図である。なお、同図では、無線装置の筐体10とアンテナ20を分離し、筐体10とアンテナ20の一部を断面で示している。
【0017】
アンテナ20は、主反射鏡21、副反射鏡22、および1次放射器23を備えたカセグレンアンテナであり、アンテナ20を筐体10に取り付けるための接続部24を備える。接続部24は円柱形であり、側面に雄ねじ部241を有し、接続部24の中心軸に沿って一方の円形面から他方の円形面へ通ずる円形導波管242を有する。円形導波管242の一端は1次放射器23に接続される。他端は接続部24の円形面から露出し、アンテナ20が筐体10に取り付けられたときに筐体10の導波管に接続される。
【0018】
筐体10は、内部にミリ波モジュール11と円形−方形導波管変換部12を備え、外部(表面)に支持部13を備える。ミリ波モジュール11は、無線信号を入出力する方形導波管ポート111を備える。円形−方形導波管変換部12は、一端に方形開口部を有し、他端に円形開口部を有する導波管を備える。方形開口部はミリ波モジュール11の方形導波管ポート111に接続され、円形開口部は筐体10外部(表面)へ露出するように配置される。支持部13は、アンテナ20の接続部24を挿入するための円柱形の凹部を有し、凹部の内周には雌ねじ部131が形成される。凹部の円形底面の中心には、筐体10から露出した円形−方形導波管変換部12の円形開口部が配置される。より具体的には、円形開口部は、円形開口部の中心が円柱形の凹部の中心軸に重なるように配置される。
【0019】
図1に示す無線装置は、アンテナ20の接続部24を筐体10の支持部13へねじ込んでアンテナ20を筐体10に取り付ける。これにより、円形−方形導波管変換部12の円形開口部と接続部24の円形導波管242が接続される。
【0020】
通常、ミリ波モジュール11の入出力は方形導波管であるため、アンテナの入出力もそれにあわせて方形導波管となるが、カセグレンアンテナやパラボラアンテナの1次放射器は円形フィードホーンであるため、アンテナ内で円形−方形導波管変換が用いられる。本実施の形態では、筐体10内に円形−方形導波管変換部12を備えることで、筐体10とアンテナ20の接続部分を円形導波管とした。一般に、円形部品の中心に方形の加工をするよりも、円形部品の中心に対し、中心を揃えて円形の穴を開ける加工をするほうが、円形の穴の位置精度が良い。したがって、円柱形の接続部24の中心軸に正確に円形導波管242を設け、支持部13の円柱形の凹部の円形底面の中心に合わせて円形−方形導波管変換部12の円形開口部の中心を配置することで、円形開口部の中心と円形導波管242の中心がずれる問題は回避可能である。また、筐体10とアンテナ20の導波管の接合面が円形であるので、アンテナ20をねじ込む回転方向のずれも問題ない。
【0021】
図2は、第1の実施の形態における別の無線装置のアンテナ接続部の構成を示す側面図である。
【0022】
図2に示す無線装置は、図1に示したものに対して、ミリ波モジュール11と円形−方形導波管変換部12をアンテナ20側に引っ張るバネ14を備える点で異なっている。ミリ波モジュール11と円形−方形導波管変換部12は、筐体10に固定されずアンテナ20方向に可動である。バネ14などの弾性体によりミリ波モジュール11と円形−方形導波管変換部12をアンテナ20側に引っ張ることにより、円形−方形導波管変換部12の円形開口部と接続部24の円形導波管242の接合面を押圧接合し、ぴったり合わせることができる。
【0023】
なお、図上でミリ波モジュール11の左側からミリ波モジュール11と円形−方形導波管変換部12をアンテナ20側に押す構成にしてもよい。
【0024】
図3は、第1の実施の形態におけるさらに別の無線装置のアンテナ接続部の構成を示す側面図である。
【0025】
図3に示すアンテナ20の本体は入出力が方形導波管である。一般に、ミリ波モジュール11の入出力は方形導波管であるので、アンテナの入出力も方形導波管であることが多い。そこで、同図に示す無線装置では、アンテナ20の本体と接続部24との間に円形−方形導波管変換部25を配置した。これにより、図1、図2で示した無線装置と同様に、筐体10とアンテナ20の導波管の接合面が円形となるので、筐体10にアンテナ20を精度良く取り付けることが可能となる。ただし、アンテナ20を筐体10取り付けたときに、アンテナ20の本体の方形導波管が所望の向きに配置されるように設計する必要がある。
【0026】
以上説明したように、本実施の形態によれば、アンテナ20が円柱形の接続部24を備え、筐体10が、接続部24の形状に合わせた円柱形の凹部を有する支持部13を備えるとともに、円柱形の接続部24の中心軸に沿って円形導波管242を形成し、円柱形の凹部の底面の中心において筐体10内部に配置し、ミリ波モジュール11に接続した円形−方形導波管変換部12の円形開口部を露出させることにより、接続部24を支持部13の凹部にはめ込むだけで簡易にアンテナ20を筐体10に取り付けることができる。また、接続部24、支持部13をねじ切り加工して雄ねじ部241、雌ねじ部131を形成することで、筐体10にアンテナ20をしっかりと固定されることができる。
【0027】
なお、図2に示したようにミリ波モジュール11と円形−方形導波管変換部12を筐体10に固定せず可動とし、円形−方形導波管変換部12の円形開口部と接続部の円形導波管242を押圧接合するバネ14を備えることで、円形−方形導波管変換部12の円形開口部と接続部24の円形導波管242の接合面をぴったり合わせてもよい。
【0028】
[第2の実施の形態]
図4は、第2の実施の形態における無線装置のアンテナ接続部の構成を示す側面図である。
【0029】
第2の実施の形態における無線装置のアンテナ接続部は、第1の実施の形態と同様に、筐体10内部にミリ波モジュール11と円形−方形導波管変換部12を備え、筐体10外部に支持部31を備える。支持部31は、円柱形の凹部を有する。筐体10から露出した円形−方形導波管変換部12の円形開口部は、凹部の円形底面の中心に配置される。つまり、凹部の底面において円形開口部が露出する。アンテナ20は、支持部31の中空部に挿入する接続部41を備える。接続部41は、中心軸に円形導波管411を備える。
【0030】
第2の実施の形態では、支持部31、接続部41に雌ねじ部、雄ねじ部を形成せず、筐体10の外部にバネ32を備える。バネ32などの弾性体によりアンテナ20を筐体10側に引き寄せて接続部41と支持部31を固定し、円形−方形導波管変換部12の円形開口部と円形導波管411を押圧接合し、ぴったりと合わせる。なお、接続部41と支持部31をバイヨネット機構などの留め具により固定し、図2で示したように、筐体10内部にバネなどの弾性体を備え、ミリ波モジュール11と円形−方形導波管変換部12をアンテナ20側に引っ張って、円形開口部と円形導波管411をぴったりと合わせてもよい。
【0031】
以上説明したように、本実施の形態によれば、アンテナ20に円柱形の接続部41を備え、筐体10に円柱形の凹部を有する支持部31を備えるとともに、筐体10とアンテナ20をバネ32により引き寄せて固定することにより、接続部41を支持部31の凹部にはめ込むだけで簡易にアンテナ20を筐体10に取り付けることができる。
【符号の説明】
【0032】
10…筐体
11…ミリ波モジュール
111…方形導波管ポート
12…円形−方形導波管変換部
13…支持部
131…雌ねじ部
14…バネ
20…アンテナ
21…主反射鏡
22…副反射鏡
23…一次放射器
24…接続部
241…雄ねじ部
242…円形導波管
25…円形−方形導波管変換部
31…支持部
32…バネ
41…接続部
411…円形導波管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナを筐体に取り付けて使用する無線装置であって、
前記アンテナは、
円柱形の中心軸に沿って円形導波管を形成した接続手段を有し、
前記筐体は、
方形導波管を入出力とする信号モジュールと、
一端に方形開口部を有し、他端に円形開口部を有する導波管を備え、前記信号モジュールの入出力に前記方形開口部を接続した円形−方形導波管変換手段と、
前記接続手段の形状に合わせた円柱形の凹部を備え、当該凹部の底面の中心に前記円形開口部を露出させた支持手段と、を有すること
を特徴とする無線装置。
【請求項2】
前記接続手段の側面及び前記凹部の内周をねじ切り加工したことを特徴とする請求項1記載の無線装置。
【請求項3】
前記接続手段に形成した円形導波管と前記凹部の底面に露出した円形開口部とを押圧接合する弾性体を有することを特徴とする請求項1又は2記載の無線装置。
【請求項4】
前記弾性体は、前記アンテナと前記筐体に取り付けられることを特徴とする請求項3記載の無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−151450(P2011−151450A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8866(P2010−8866)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、総務省、「電波資源拡大のための研究開発」のうち、「ミリ波帯高精細映像伝送技術の研究開発」に係る委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】