説明

無線装置

【課題】 1つのMACの制御で、下位からメンテナンス情報のパケットと自装置内におけるメンテナンス情報のパケットとの衝突を防止し、パケットロスをなくす無線装置を提供する。
【解決手段】 CPU12がMACを一つ備え、メンテナンス情報のパケットを下位から上位に送信する無線装置であって、監視/バッファ17に下位からのパケットが入力されると、CPU12に自装置のパケット送信を停止させ、CPU12が自装置のパケットを物理層15に出力中に監視/バッファ17が下位からパケットを入力すると、物理層15からのパケット送信を停止して下位のパケットを上位に送信し、物理層15からのパケットが上位に送信中であれば、監視/バッファ17は下位からのパケットをバッファリングして、物理層15からのパケット送信完了後にバッファリングしたパケットを上位に送信する無線装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局に縦列接続する無線装置に係り、特に、1つのMAC(Media Access Controller)の制御で、下位からメンテナンス情報のパケットと自装置内におけるメンテナンス情報のパケットとの衝突を防止し、パケットロスをなくすことができる無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
ディジタル移動体通信では、エリア全域をカバーするために、高出力の送信増幅器が用いられる。高出力の送信増幅器は、送信増幅器が基地局と同一の架に設置するのが主流であった。
しかし、送信増幅器がアンテナに接続される場合、同軸ケーブルにて接続されるが、装置の保守上、アンテナと送信増幅器間は、50m〜200mも離される場合があり、その間での劣化が問題となっていた。
また、別の問題として、増幅器(PA)は、基地局の一部として取り扱われることが常識であり、その為、基地局は各地へ分散し、保守上、運用コスト上問題であった。
【0003】
上述の問題を解決するために、ROF(Radio On Fiber)、RRH(Remote Radio Head)なる概念が生み出された。これは、基地局から、アンテナに近い無線部を切り離し、両者を光ファイバで接続する構成である。
【0004】
また、高速ディジタル伝送装置が生み出された。これは基地局と中継機と子機を光ファイバ若しくは同軸ケーブルにて接続することで、基地局が出力する信号をそのまま遠方の不感地帯へ伝送し、サービスエリアの拡大を図るものである。
基地局と中継機は遠距離伝送ができるよう光ファイバを用いるのが一般的である。
光ファイバは、既存の設備を利用する場合は低価格で使用が可能で、運用コストが低減可能であること、各地へ分散するのは、大規模な基地局では無く、比較的軽微な、部分だけであると言うことから、保守上も好ましい形態となっている。
【0005】
[従来のディジタル信号伝送装置の接続形態:図6]
従来のディジタル信号伝送装置の接続形態を図6に示す。図6は、従来のディジタル信号伝送装置の接続形態を示す概略図である。
図6に示すように、基地局101に、送受信増幅器(TRX−AMP)102,103が縦列に接続したチェイントポロジー(Chain topology)となっている。
【0006】
図6において、下位装置へのディジタル伝送を行うポートをMaster Portとし、下位装置のSlave Portと接続する。下位装置は、Slave Portの信号により、上位装置との信号の同期確立及び通信を行う。
【0007】
基地局101で、AMP(増幅器)が実装されるところにディジタルI/F(Interface)を実装し、電気信号を光信号に変換するか、若しくはそのままディジタル信号のI/Fを具備するようにしてもよい。
【0008】
また、送受信増幅器に送信(TX)と受信(RX)の機能をAMP側に持たせている。
I/Fは、AMP側を制御するための制御信号を伝送しなければならないので、ディジタル伝送するのが一般的である。よって送受信データもディジタル化しやすいよう、AMPにTXとRXの機能を加え送受信増幅器(TRX−AMP)にするのが一般的である。
【0009】
光ファイバ若しくは電気線は、光に変換された信号若しくはディジタル信号を伝送する。最近の標準規格としては、CPRI(Common Public Radio Interface)、OBSAI(Open Base Station Architecture Initiative)がある。
また、TRX−AMPはアンテナを備えており、基地局からディジタルI/Fで送られてきた送信データを増幅してアンテナから出力すると共に、受信データを増幅してディジタルI/F経由で基地局に送出する。
【0010】
尚、図6では、TRX−AMPには、Slave portとMaster portがあり、それぞれ上位と下位とを接続している。
近年、基地局とTRX−AMPの距離が離れて位置するため、ディジタルI/Fは光ファイバを用いることが一般的となっている。
【0011】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2010−219847号公報「無線通信装置」(株式会社日立国際電気)[特許文献1]、特開2000−134217号公報「衝突防止方式」(株式会社日立製作所)[特許文献2]がある。
【0012】
特許文献1には、回線品質監視部が、スレーブポートで受信した無線信号中に復号異常を検出すると、無線信号出力を迅速に停止させ、当該装置及び下位装置の無線部の破壊を防止することが示されている。
【0013】
特許文献2には、2つ以上のノードが同時にネットワークにデータ送信を行うと、衝突が発生するため、各ノードがデータ送信後にデータの衝突が発生していないかを監視し、衝突発生時は一定時間待ち合わせた後に、再送することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2010−219847号公報
【特許文献2】特開2000−134217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、従来の無線装置では、自装置のデータと下位装置からのデータを上位装置に送信する必要があり、特にメンテナンス情報に関するパケットの衝突を簡易な構成で回避し、パケットロスを容易になくすことが難しいという問題点があった。
【0016】
尚、特許文献1では、復号異常による無線部の破壊を防止するものであり、特許文献2では、発生した衝突に対してデータを再送して対処するというものであり、衝突そのものを簡易な構成で回避するものではない。
【0017】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、1つのMACの制御で、下位からメンテナンス情報のパケットと自装置内におけるメンテナンス情報のパケットとの衝突を防止し、パケットロスをなくすことができる無線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、ネットワークのメディアアクセス制御機能を一つ備える制御部を有し、メンテナンス情報のパケットを下位装置から上位装置に送信する無線装置であって、バッファを有し、下位装置からのパケット入力を監視し、下位装置からのパケット入力を検出すると、通信状況を報告すると共に、自装置のパケットを送信中である場合に下位装置からのパケットをバッファに記憶する監視/バッファと、制御部から出力されたパケットを上位装置に送信する物理層と、通信状況を入力すると、キャリアセンス信号を制御部に出力し、キャリアセンス信号を出力した際に制御部から物理層にパケットが出力されている場合にはコリジョン信号も出力する状態報告/再送要求部と、監視/バッファから出力される下位装置のパケットと物理層から出力される自装置のパケットのいずれかを選択して上位装置に送信するセレクタとを備え、制御部は、キャリアセンス信号の入力により自装置のパケットを物理層に出力するのを停止し、コリジョン信号の入力により物理層に出力した自装置のパケットを、時間をおいて物理層に再送し、セレクタは、物理層からのパケットが入力された場合には、当該パケットを選択するものの、監視/バッファから入力されるパケットを優先して選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、監視/バッファがバッファを有し、下位装置からのパケット入力を監視し、下位装置からのパケット入力を検出すると、通信状況を報告すると共に、自装置のパケットを送信中である場合に下位装置からのパケットをバッファに記憶し、物理層が制御部から出力されたパケットを上位装置に送信し、状態報告/再送要求部が通信状況を入力すると、キャリアセンス信号を制御部に出力し、キャリアセンス信号を出力した際に制御部から物理層にパケットが出力されている場合にはコリジョン信号も出力し、セレクタが監視/バッファから出力される下位装置のパケットと物理層から出力される自装置のパケットのいずれかを選択して上位装置に送信し、制御部が、キャリアセンス信号の入力により自装置のパケットを物理層に出力するのを停止し、コリジョン信号の入力により物理層に出力した自装置のパケットを、時間をおいて物理層に再送し、セレクタが、物理層からのパケットが入力された場合には、当該パケットを選択するものの、監視/バッファから入力されるパケットを優先して選択する無線装置としているので、1つのメディアアクセス制御機能(MAC)で、下位からメンテナンス情報のパケットと自装置内におけるメンテナンス情報のパケットとの衝突を防止し、パケットロスをなくすことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】光伝送装置の概略図である。
【図2】CPRIフォーマット例を示す図である。
【図3】C−Planeマップを示す図である。
【図4】無線装置の縦列接続を示す図である。
【図5】監視/バッファの処理のフローチャートである。
【図6】従来のディジタル信号伝送装置の接続形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る無線装置は、ネットワークのメディアアクセス制御(MAC)機能を一つ備える制御部を有し、メンテナンス情報のパケットを下位装置から上位装置に送信する装置であって、監視/バッファに下位装置からのパケットが入力されると、制御部に自装置のパケット送信を停止させ、制御部が自装置のパケットを物理層に出力中に監視/バッファが下位装置からパケットを入力すると、物理層からのパケット送信を停止して下位装置のパケットを上位装置に送信し、物理層からのパケットが上位装置に送信中であれば、監視/バッファは下位装置からのパケットをバッファリングして、物理層からのパケット送信完了後にバッファリングしたパケットを上位装置に送信するものであり、1つのMACの制御で、下位装置からメンテナンス情報のパケットと自装置内におけるメンテナンス情報のパケットとの衝突を防止し、パケットロスをなくすことができるものである。
【0022】
[光伝送装置:図1]
本発明の実施の形態に係る無線装置が用いられる光伝送装置について図1を参照しながら説明する。図1は、光伝送装置の概略図である。
本発明の実施の形態に係る光伝送装置は、図1に示すように、既設基地局(BTS:Base Transceiver Station)1と、基地局インタフェース(BTS−I/F)2とが同軸ケーブルで接続され、BTS−I/F2に光ファイバ3を介して中継機4に接続している。
更に、中継機4には移動端末に無線接続する子機5A,5B,5Cが光ファイバで接続している。
【0023】
[光伝送装置の各部]
光伝送装置の各部を説明する。
BTS−I/F2は、BTS1の光インタフェース装置で、BTS1が出力する無線信号用の電気信号を同軸接続して電気信号である無線信号用のディジタル信号を光信号に変換し、光ファイバ3にて遠方の中継機4に伝送する。
また、BTS−I/F2は、中継機4から送られてくる子機5から受け取った無線信号用のディジタル信号を光信号で受け取り、その光信号を電気に変換して基地局に出力する。
【0024】
中継機4は、光ファイバ3を介して送られてきた無線信号用のディジタル信号を電気信号に変換し、その信号を子機5に分配し出力する。
また、子機5から送られてきた無線信号用のディジタル信号を多重し、光信号に変換して光ファイバ3を経由してBTS−I/F2に出力する。
【0025】
子機5A,5B,5Cは、中継機4から送られてきた無線信号用のディジタル信号を増幅し移動端末に対して送信し、また、移動端末が送信した信号を受信増幅し、中継機4に向けて送信する。つまり、子機は、TRX−AMPの機能を備えている。
このように、光伝送装置とは、不感地帯であるビル9等に長距離伝送を行い、サービスエリアの拡大を図るシステムである。
【0026】
[ディジタル信号伝送装置の通信方法:図2]
ディジタル信号伝送装置における制御及びメンテナンス情報の通信方法として、ディジタル伝送I/FであるCPRI(Common Public Radio Interface)のフォーマットを例をとして図2に示す。図2は、CPRIフォーマット例を示す図である。
CPRIでは、図2に示すように、制御情報としてのC−Plane(Control-Plane)と無線データのU−Plane(User-Plane)から形成される。
【0027】
この内、制御及びメンテナンスの情報は、C−Plane上に割り当てられている、Slow C&M領域を用いてHDLC(High Level Data Link Control)通信を行うケースと、Fast C&M領域を用いてEthernet(登録商標)通信を行うケースがある。
CPRIフォーマットは、以下の1つのBasic Frame(=1Chip)上に1つのC−Planeが存在し、256個のBasic Frameで1Hyper Frame(66.6μsec)を形成する。
従って、1Hyper Frame中には、256個のC−Planeが存在し、ディジタル伝送の速度が1.2288Gbps時は、最大61.4Mbps(16bit×256/66.6μsec)の情報の転送ができる。また2.4576Gbps時は、最大で122.88Mbpsとなる。
【0028】
[C−Planeマップ:図3]
また、C−Planeのマップを図3に示す。図3は、C−Planeマップを示す図である。
図3に示すように、Ns=0,Xs=0がComma Byteであり、Ns=0,Xs=1,2,3に同期とタイミングが割り当てられる。Ns=1,Xs=0,1,2,3にSlow C&M Linkが割り当てられる。そして、Ns=20〜63,Xs=0,1,2,3にFast C&M Linkが割り当てられる。Pointer pはFast C&Mのポインタを示している。
【0029】
図6に示すようなChain Topology(縦列接続又はカスケード接続)は、ディジタルI/Fの性質上、メンテナンス情報通信を1対多で行うことが容易ではない。理由は、基地局装置から各無線装置への情報は、同じ信号が到達するため、ディジタルI/F上の通信に問題はないが、各無線装置から基地局装置への信号は、縦列接続される場合、1本のディジタルI/F上へ各装置の信号を多重しなければならず、容易に通信を確立させることができないからである。
【0030】
例として、ディジタルI/F上のメンテナンス情報の割り当てるC−Planeの位置を無線装置毎に分ける方法がある。しかし、接続される無線装置が多くなるほど、ディジタルI/F上の制御情報領域を圧迫し、また、各無線装置では、自装置の割り当てられたC−Plane部分を既知としなければならず、情報のやりとりが複雑になる。
【0031】
本発明の実施の形態では、メンテナンス情報の通信は、Fast C&M領域を使用し、Ethernet(登録商標)で、CSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection:搬送波感知多重アクセス/衝突検出)方式を用いる。
尚、無線装置がMACを2つ搭載するシステムでは、上位装置用の通信と下位装置用の通信と分けることができる。
【0032】
この場合、MACを搭載するCPU(Central Processing Unit)が上位装置と下位装置との間のパケットを仲介することで、パケットの衝突は発生せず、メンテナンス情報の通信を縦列接続した場合でも構成が可能になる。しかしながら、MACを2つ使用するため、装置のコストアップにつながり、また、仲介するCPUの処理が大きくなることが予想される。
【0033】
MACを2つ備えるCPUを用いた場合、図6の接続形態にて、TRX−AMP102とTRX−AMP103の接続を切ることなく、TRX−AMP102を装置再起動することができない。装置再起動は、必ずCPUのリセットが必要であり、CPUは、上位装置及び下位装置のパケットを仲介することができないため、基地局101とTRX−AMP103のメンテナンス情報通信ができなくなる。これは、図6の接続形態で考えられる、部分的な装置再起動への対応が困難になることを意味する。
【0034】
そこで、本実施の形態では、MACを1つ備える無線装置を用いたシステムを構成し、パケットのロスを0にすることである。また、上位装置から下位装置への通信は、共通の信号をグローバルに展開するため、MACは1つで容易に通信を確立できる。従って、本実施の形態では、下位装置から上位装置への通信を1つのMACで確立する技術について説明する。
【0035】
[無線装置:図4]
本発明の実施の形態に係る無線装置(本装置)について図4を参照しながら説明する。図4は、無線装置の縦列接続を示す図である。
本装置の縦列接続は、図4に示すように、上位の無線装置11と下位の無線装置21とを基本的に有している。図4では、説明を簡単にするために2つの無線装置を示しているが、実際は、複数台の無線装置が縦列接続するものである。
【0036】
[各部]
本装置の各部について具体的に説明する。
本装置11は、図4に示すように、CPU12と、MII(Media Independent Interface)13と、状態報告/再送要求部14と、物理層(PHY:PHYsical Layer)15と、セレクタ(SEL)16と、監視/バッファ17とを備えている。
尚、無線装置21も同様の構成となっている。
【0037】
CPU12は、1つのMACを搭載した制御部である。
また、CPU12は、状態報告/再送要求部14からキャリアセンス(CRS)信号が入力されると、パケット送信待ち状態になる。
また、CPU12は、状態報告/再送要求部14からコリジョン(CD)信号が入力されると、特定の時間をおいてパケットの再送を行う。
MII13は、CPU12とPHY15との間のインタフェース(I/F)である。
【0038】
状態報告/再送要求部14は、PHY15の一部かつMII13の一部であり、監視/バッファ17から通信状況の報告(下位装置からのパケット到達の報告)を入力すると、リンクの使用状況を報告するキャリアセンス(CRS)信号をMAC(CPU12)へ送信する。
また、状態報告/再送要求部14は、CRS信号を送信した際に、CPU12からパケットがPHY15に出力された場合(但し、当該パケットは上位装置にはまだ送信されていない場合)は、通信パケットの衝突を示すコリジョン(CD)信号をMAC(CPU12)へ送信する。
PHY15は、ネットワークの物理的接続・伝送方式を管理する。
セレクタ(SEL)16は、自装置のパケットと下位装置からのパケットを切り替える。
【0039】
監視/バッファ17は、下位装置からのパケットを監視し、パケットが到達した際は、状態報告/再送要求部14へ通信状況の報告を行う。
また、監視/バッファ17は、自装置のタイミングに合わせるため、及び自装置のパケット送信中の衝突を回避するためのバッファを備える。
更に、監視/バッファ17は、SEL16から制御信号(PHY15からパケット送信されていることを示す信号)を入力し、PHY15からのパケットが送信されるために切り替えられていることを認識する。
【0040】
[パケット送信の衝突回避]
下位装置から上位装置へのパケットの送信について衝突を回避する場合を、3つのケースについて説明する。図4において、点線の矢印は、パケットの流れを示す。
【0041】
[ケース1]
ケース1は、装置21からパケットが送信中に装置11がパケットを送信しようとする場合である。
装置11では、監視/バッファ17にて装置21のパケットを送信中であることを状態報告/再送要求部14に通知し、MII13を通してCRS信号をCPU12に送信する。すると、CPU12は、パケット送信が待ち状態になる。
監視/バッファ17にて装置21のパケットの送信が完了した後に、状態報告/再送要求部14はCPU12へのCRS信号を停止し、装置11はパケットを送信可能状態となる。
【0042】
[ケース2]
ケース2は、装置11がパケットを送信しようとした際に、装置21からのパケットが到達した場合である。
装置11の監視/バッファ17は、状態報告/再送要求部14へパケットの到達を伝える。このとき、状態報告/再送要求部14は、CRS信号をCPU12へ送信するが、その前にCPU12からパケットがPHY15へ送信された場合、状態報告/再送要求部14は、パケットの衝突の場合と判断し、CD信号をCPU12へ送信する。
【0043】
CPU12は、CD信号をMII13にアクセス中に受信すると、送信中のパケットが衝突する場合と判断し、ランダム時間の間をおいたのち、パケットの再送を行う。装置21からきたパケットは、優先的に上位装置へ転送される。
【0044】
[ケース3]
ケース3は、装置11がパケットを送信中に、装置21からのパケットが到達した場合である。
装置11のパケットは、既にSEL16にて上位装置へ転送中であるため、装置21のパケットを切り替えることができない。切り替えてしまうと、装置11のパケットはロスしてしまうことになる。
【0045】
この場合は、監視/バッファ17は、SEL16からPHY15のパケットを送信中である旨の制御信号が入力され、装置21のパケットを一旦バッファに保持する。
装置11のパケットの転送が完了と共に、SEL16は、PHY15のパケット送信を完了した旨の制御信号を監視/バッファ17に出力し、スイッチを装置21のパケット転送に切り替え、監視/バッファ17は、バッファに保持されたパケットをSEL16に出力する。このようにして、装置21のパケット転送に切り替わった後は、ケース1へと移行する。
【0046】
[監視/バッファの処理:図5]
次に、監視/バッファの処理について図5を参照しながら説明する。図5は、監視/バッファの処理のフローチャートである。
監視/バッファ17は、下位装置からのメンテナンス情報のパケットが入力されたか否かを監視し(S1)、入力された場合(Yesの場合)、状態報告/再送要求部14に通信状態を報告する(S2)。
その後、監視/バッファ17は、下位装置からのパケットを、SEL16を介して上位装置へ送信する(S3)。
【0047】
判定処理S1で、下位装置からのメンテナンス情報のパケットが入力されなかった場合(Noの場合)、PHY15からのパケットをSEL16が選択出力中であるか否かを判定し(S4)、選択出力中でなければ(Noの場合)、判定処理S1に戻る。
PHY15からのパケットをSEL16が選択出力中であれば(Yesの場合)、下位装置からのパケットをバッファリングし(S5)、PHY15からのパケットを通信完了したか否かを判定する(S6)。
【0048】
PHY15からのパケットを通信完了したか否かは、SEL16からの制御信号により判定する。
判定処理S6でPHY15からのパケットの通信が完了していなければ(Noの場合)、処理S5に戻る。
また、判定処理S6でPHY15からのパケットの通信が完了していれば(Yesの場合)、バッファしたパケットを、SEL16を介して上位装置へ送信する(S7)。
このようにして監視/バッファ17での処理が行われる。
【0049】
[実施の形態の効果]
本装置によれば、各無線装置から基地局へのメンテナンス情報転送に関して、下位装置からの情報通信を優先にし、上位装置は、下位装置からの通信情報を監視して、CSMA/CD方式のCRS信号及びCD信号を使用することで、各無線装置のMACは1つで済み、また、メンテナンス情報通信のパケットをロスすることなく通信を確立することができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、1つのMACの制御で、下位からメンテナンス情報のパケットと自装置内におけるメンテナンス情報のパケットとの衝突を防止し、パケットロスをなくすことができる無線装置に好適である。
【符号の説明】
【0051】
1...基地局(BTS)、 2...基地局インタフェース(BTS−I/F)、 3...光ファイバ、 4...中継機、 5A,5B,5C...子機、 9...ビル、 11,21...無線装置、 12,22...CPU、 13,23...MII、 14,24...状態報告/再送要求部、 15,25...物理層(PHY)、 16,26...セレクタ(SEL)、 17,27...監視/バッファ、 101...基地局、 102,103...送受信増幅器(TRX−AMP)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークのメディアアクセス制御機能を一つ備える制御部を有し、メンテナンス情報のパケットを下位装置から上位装置に送信する無線装置であって、
バッファを有し、前記下位装置からのパケット入力を監視し、前記下位装置からのパケット入力を検出すると、通信状況を報告すると共に、自装置のパケットを送信中である場合に前記下位装置からのパケットを前記バッファに記憶する監視/バッファと、
前記制御部から出力されたパケットを前記上位装置に送信する物理層と、
前記通信状況を入力すると、キャリアセンス信号を前記制御部に出力し、前記キャリアセンス信号を出力した際に前記制御部から前記物理層にパケットが出力されている場合にはコリジョン信号も出力する状態報告/再送要求部と、
前記監視/バッファから出力される下位装置のパケットと前記物理層から出力される自装置のパケットのいずれかを選択して前記上位装置に送信するセレクタとを備え、
前記制御部は、前記キャリアセンス信号の入力により自装置のパケットを前記物理層に出力するのを停止し、前記コリジョン信号の入力により前記物理層に出力した自装置のパケットを、時間をおいて前記物理層に再送し、
前記セレクタは、前記物理層からの自装置のパケットが入力された場合には、当該パケットを選択するものの、前記監視/バッファから入力される下位装置のパケットを優先して選択することを特徴とする無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−138744(P2012−138744A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289398(P2010−289398)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】