説明

無線送信機、周波数特性補正方法、温度特性補正方法

【課題】送信回路のアンテナ端におけるアンテナ入力電力の一部を検波して検波電圧を出力する検波回路が働かない送信電力のときの送信回路の周波数特性補正値を容易に得ることができる無線送信機及び該無線送信機の送信回路の周波数特性補正方法を得る。
【解決手段】検波回路16を動作させた状態での補正値から送信回路30の周波数特性補正値を算出し、検波回路16が動作しない低送信電力時に、前記補正値に基づくアナログ電圧とゲイン制御部19から出力される固定値のアナログ電圧を加算して送信回路30の可変ゲイン増幅器10に出力するようにした。これにより、検波回路16が働かない送信電力のときの送信回路30の周波数特性補正値を容易に得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信回路を構成する複数の部品の特性変化による送信電力の変動を抑える目的で、アンテナ入力電力を送信電力制御側にフィードバックするフィードバック回路を備えた無線送信機、周波数特性補正方法、温度特性補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの無線通信機器に用いられる無線送信機では、上述したフィードバック回路が採用される場合が多い。フィードバック回路は、無線送信機のアンテナ入力端での送信電力(即ち、アンテナ入力電力)を取得するための検波回路を有している。この検波回路より得られる検波電圧は送信電力に比例するので、フィードバック回路は検波電圧が得られる送信電力範囲でのみ動作し、それ以下のときは動作しない。
【0003】
上述した検波回路を有する無線送信機として、特許文献1〜3に記載されたものが知られている。特許文献1には、送信電力レベル制御手段を有し、送信電力増幅器に流入する電流値情報と送信電力レベル情報とをメモリに記憶しておき、再調整時に送信電力増幅器の電流と送信電力とを、メモリ内容と比較して、調整の良否を判断するようにした技術が記載されている。特許文献2には、検波回路の出力レベルに応じた補正値を記憶回路から読み出して、それをアナログ変換した後、パワーアンプの前段のAGCアンプに出力して同アンプのゲインを制御するようにした技術が記載されている。また、特許文献2には、周囲温度を検出してAGCアンプのゲインを制御する点も記載されている。特許文献3には、検波回路の検波特性のばらつきを考慮して、データ変換用のテーブルT1,T2,T3を用意し、最適のテーブル番号をデータDで指定する。送信電力セットデータを、検波器の周波数特性を補償するようにテーブルT4を用いて補正し、温度特性を補償するようにテーブルT5を用いて補正し、補正した送信電力セットデータと出力電力データとが一致するように、RF増幅器の前段側に設けた可変減衰器の減衰量をあらかじめ制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−245058号公報
【特許文献2】特開2006−270276号公報
【特許文献3】特開平5−003440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
送信回路(フィードバック回路は除く)のアンテナ端におけるアンテナ入力電力は、送信回路を構成する複数の部品の周波数特性により、使用するチャンネル(周波数)ごとに変化する。この周波数特性は、検波回路が動作するときにその周波数特性に依存する。通常、送信電力はチャンネルごとに一定である必要があるため、検波回路が動作するときと、しないときとで、チャンネルごとの送信電力の偏差の補正を実施する必要がある。特に、チャンネル数が多い場合や、マルチバンドの無線通信機となると、その補正の数が膨大となるため、外部測定器を用いた送信回路の補正値の調整に多大な時間を費やすことになる。
【0006】
なお、検波電圧が得られる送信電力範囲内でのみフィードバック回路を動作させる構成を採る無線送信機では、送信回路の周波数特性を調整していても送信電力範囲以下のときは検波電圧が得られないことから、検波回路の周波数特性を算出することができない。また同様に、送信回路の温度特性が調整されていても、送信電力範囲以下のときは検波回路の温度特性を算出することができない。上述した特許文献1〜3のうち特許文献1,2には、記憶している周波数特性補正値から送信回路の周波数特性補正値を得る点が記載されており、また特許文献3には、送信回路の周波数特性が調整されている場合に、検波電圧から検波回路の周波数特性を得る点が記載されているが、特許文献1〜3のいずれにおいても、検波電圧が得られる送信電力範囲内でのみフィードバック回路を動作させる構成は採っていないため、送信電力範囲以下のときは検波回路の周波数特性を算出することができない。
【0007】
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであり、送信回路のアンテナ端におけるアンテナ入力電力の一部を検波して検波電圧を出力する検波回路が働かない送信電力のときの送信回路の周波数特性補正値を容易に得ることができる無線送信機、周波数特性補正方法、温度特性補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の無線送信機は、外部より入力されるアナログ電圧により利得が変化する可変ゲイン増幅器を有する送信回路と、前記送信回路のアンテナ端におけるアンテナ入力電力の一部を検波して検波電圧を出力する検波回路と、所望の送信電力に調整されたときのリファレンス電圧を出力するリファレンス電圧出力部と、前記検波回路から出力される検波電圧と前記リファレンス電圧出力部から出力されるリファレンス電圧とを比較し、差分を抽出するコンパレータと、前記コンパレータの出力に応じて前記可変ゲイン増幅器の利得を制御するゲイン制御部と、前記検波回路が動作しない低送信電力時に、前記コンパレータの出力を基に前記送信回路の周波数特性を補正する補正値を算出する周波数特性補正値算出部と、前記周波数特性補正値算出部で算出された前記補正値を記憶する送信回路周波数特性記憶部と、前記検波回路が動作しない低送信電力時に、前記送信回路周波数特性記憶部に記憶された補正値に基づくアナログ電圧と前記ゲイン制御部から出力される固定値のアナログ電圧を加算して前記可変ゲイン増幅器に出力する加算器と、を備えた。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、検波回路を動作させた状態での補正値から送信回路の周波数特性補正値を算出し、検波回路が動作しない低送信電力時に、前記補正値に基づくアナログ電圧とゲイン制御部から出力される固定値のアナログ電圧を加算して可変ゲイン増幅器に出力するようにしたので、検波回路が働かない送信電力のときの送信回路の周波数特性補正値を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係る無線送信機の概略構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態2に係る無線送信機の概略構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る無線送信機の概略構成を示すブロック図である。同図において、本実施の形態の無線送信機1は、可変ゲイン増幅器10、フィルタ11、固定ゲイン増幅器12、フィルタ13、方向性結合器14、アンテナ15、検波回路16、リファレンス電圧出力部17、コンパレータ18、ゲイン制御部19、周波数特性補正値算出部20、送信回路周波数特性記憶部21及び加算器22を備える。可変ゲイン増幅器10、フィルタ11、固定ゲイン増幅器12、フィルタ13及びアンテナ15は、送信回路30を構成する。また、方向性結合器14、検波回路16、リファレンス電圧出力部17、コンパレータ18及びゲイン制御部19は、フィードバック回路40を構成する。また、周波数特性補正値算出部20、送信回路周波数特性記憶部21及び加算器22は、周波数特性補正回路50を構成する。なお、ゲインは利得のことである。
【0012】
送信回路30において、可変ゲイン増幅器10は、設定されたゲインで入力信号を増幅して出力する。フィルタ11は、可変ゲイン増幅器10での増幅後の信号に含まれる不要波を除去する。固定ゲイン増幅器12は、フィルタ11を通過した信号を増幅し出力する。フィルタ13は、固定ゲイン増幅器12での増幅後の信号に含まれる不要波を除去する。
【0013】
フィードバック回路40において、方向性結合器14は、アンテナ15への入力電力の一部を取り出す。検波回路16は、方向性結合器14で取り出された入力電力を検波し、当該電力に比例した検波電圧を出力する。なお、検波回路16から出力される検波電圧はアナログ電圧である。リファレンス電圧出力部17は、送信電力レベルに応じて予め調整された送信電力に対応するリファレンス電圧を出力する。コンパレータ18は、検波回路16から出力された検波電圧とリファレンス電圧出力部17から出力されたリファレンス電圧とを比較し、その差分を抽出して出力する。コンパレータ18の出力(以後、”コンパレータ出力”と呼ぶ)は、チャンネルごとに異なる値となる。チャンネルごとのコンパレータ出力は、周波数特性補正回路50の周波数特性補正値算出部20に出力される。リファレンス電圧出力部17から出力されるリファレンス電圧は所望の送信電力で調整したときの電圧であり、検波回路16の周波数特性を補償するものである。すなわち、検波回路16の周波数特性を補償しなければ、送信回路30の可変ゲイン増幅器10にフィードバックされる信号が検波回路16の周波数特性の影響を受けてしまい、送信電力を目標値に設定できない。このために、リファレンス電圧を生成するようにしている。ゲイン制御部19は、コンパレータ出力があるときに、その出力に従って送信回路30の可変ゲイン増幅器10のゲインを制御するためのアナログ電圧を出力する。コンパレータ出力を送信回路30の可変ゲイン増幅器10にフィードバックすることで、送信電力の変動が補正される。
【0014】
ゲイン制御部19は、コンパレータ出力がないときに、予め設定された送信電力に対応するアナログ電圧を出力する。すなわち、送信電力が低く、検波回路16が動作しないときに、予め設定された送信電力に対応するアナログ電圧を出力する。ゲイン制御部19から出力されたアナログ電圧は、送信回路周波数特性記憶部21から出力されるアナログ電圧と加算器22で加算されて、可変ゲイン増幅器10に与えられる。このように、送信電力が低く、検波回路16が動作しないときは、ゲイン制御部19と送信回路周波数特性記憶部21とによってアンテナ入力電力が決定される。
【0015】
周波数特性補正値算出部20は、送信電力が低く、検波回路16が動作しないときの送信回路30における周波数特性の補正値を算出する。送信回路周波数特性記憶部21は、周波数特性補正値算出部20で算出された補正値を記憶する。送信回路周波数特性記憶部21は、送信電力が低く、検波回路16が動作しないときに、記憶している補正値をアナログ電圧に変換して出力する。送信回路周波数特性記憶部21は、初期時には補正値を記憶していないので、無線送信機1の工場出荷前に補正値を記憶させる処理が必要となる。ここで、送信回路30の周波数特性補正方法について説明する。
【0016】
今、送信回路周波数特性記憶部21に何もデータが記憶されていない状態で、ゲイン制御部19から固定値のアナログ電圧が出力されているとする。このとき、チャンネルf1,f2,f3の順で送信を行ったときのアンテナ入力電力が、p1,p2,p3で、検波電圧d1,d2,d3であったとする。ここで、f2を基準チャンネルとすると、アンテナ入力電力と検波電圧の周波数特性は、f1(p1−p2)、(d1−d2)、f3(p3−p2)、(d3−d2)となる。このとき、p1=p2=p3となるには、コンパレータ出力に対し、f1(d1−d2)、f3(d3−d2)の補正が必要である。そこで、送信電力を大きくして検波回路16を動作させて、f1に(d−d2)、f3に(d3−d2)の補正をかける。これにより、周波数特性補正値算出部20よりゲイン制御部19にフィードバックされる補正値が、送信回路周波数特性における補正値f1(p1−p2)、f3(p3−p2)となる。これらの補正値を送信回路周波数特性記憶部21に記憶させることで、送信回路30の周波数特性の補正値が得られる。
【0017】
送信回路30の周波数特性補正処理をステップで表すと、次のようになる。
(1)ゲイン制御部19から固定値のアナログ電圧を出力させている状態で、検波回路16が動作する送信電力で、チャンネルf1,f2,f3の順で送信を行い、各チャンネルf1,f2,f3に対応するアンテナ入力電力p1,p2,p3と検波電圧d1,d2,d3を求めるステップ
(2)チャンネルf2を基準チャンネルとした場合のアンテナ入力電力の周波数特性f1(p1−p2)、f3(d3−d2)及び検波電圧の周波数特性(d1−d2)、(d3−d2)を求めるステップ
(3)各チャンネルf1,f2,f3に対応するアンテナ入力電力の全てが等しくなるコンパレータ出力に対する補正値を求めるステップ
検波回路16が動作しない低送信電力時に、前記ステップで求められた補正値に基づくアナログ電圧とゲイン制御部19から出力される固定値のアナログ電圧を加算して可変ゲイン増幅器10に出力するステップ
(4)前記ステップで求められた補正値を記憶するステップ
【0018】
次に、本実施の形態の無線送信機1の動作について説明する。
送信回路30に入力信号Siが与えられると、その入力信号Siは可変ゲイン増幅器10と固定ゲイン増幅器12で増幅されるとともに、フィルタ11,13で不要成分が除去されてアンテナ15に入力され、アンテナ15から放射される。ここで、可変ゲイン増幅器10の入力信号が一定値であっても送信回路30の各部品の特性変化(温度による増幅器のゲイン変動等)によって、アンテナ入力電力が変動してしまうが、この変動はフィードバック回路40によって補正される。すなわち、フィードバック回路40の方向性結合器14でアンテナ入力電力の一部を検波回路16に分配する。分配したアンテナ入力電力の一部を検波回路16で検波し、当該電力に比例した検波電圧を出力し、この検波電圧を所望の送信電力で調整したときのリファレンス電圧と比較し、差分を抽出する。この差分を可変ゲイン増幅器10にフィードバックして、送信電力の変動を補正する。
【0019】
一方、送信電力が低く、検波回路16が動作しないときは、ゲイン制御部19から出力される固定値のアナログ電圧と、送信回路周波数特性記憶部21から出力される送信回路周波数特性における補正値に基づくアナログ電圧とが加算器22で加算されて可変ゲイン増幅器10に与えられる。これにより、送信電力が低く、検波回路16が動作しないときでも、送信回路30の周波数特性が補正されて、目標値の送信電力を送信することができる。
【0020】
このように本実施の形態の無線送信機1によれば、検波回路16を動作させた状態での周波数特性補正値から送信回路30の周波数特性補正値を算出し、検波回路16が動作しない低送信電力時に、周波数特性補正値に基づくアナログ電圧とゲイン制御部19から出力される固定値のアナログ電圧を加算して送信回路30の可変ゲイン増幅器10に出力するようにしたので、検波回路16が働かない送信電力のときの送信回路30の周波数特性補正値を容易に得ることができる。
【0021】
なお、本実施の形態の無線送信機1における送信回路30の周波数特性補正処理を記述したプログラムを、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD等)、光磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶媒体に格納して配布することも可能である。
【0022】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2の無線送信機について説明する。
図2は、本発明の実施の形態2に係る無線送信機の概略構成を示すブロック図である。なお、同図において前述した図1と共通する部分には同一の符号を付けてその説明を省略する。
【0023】
前述した実施の形態1の無線送信機1は、検波回路16が動作しない低送信電力時に、送信回路30の周波数特性を補正するための補正値を計算する周波数特性補正値算出部20と、この周波数特性補正値算出部20で算出された補正値を記憶する送信回路周波数特性記憶部21とを備えたものであったが、実施の形態2の無線送信機2は、送信回路30の温度特性を補正するための補正値を計算する温度特性補正値算出部25と、この温度特性補正値算出部25で算出された補正値を記憶する送信回路温度特性記憶部26とを備えたものである。温度特性補正値算出部25、送信回路温度特性記憶部26及び加算器22は、温度特性補正回路60を構成する。以下、実施の形態1の無線送信機1と異なる点についてのみ説明する。
【0024】
温度特性補正値算出部25は、送信電力が低く、検波回路16が動作しないときの送信回路30における温度特性の補正値を算出する。送信回路温度特性記憶部26は、温度特性補正値算出部25で算出された補正値を記憶する。コンパレータ出力は、温度ごとに異なる値となり、温度ごとのコンパレータ出力は、温度特性補正回路60の温度特性補正値算出部25に出力される。送信回路30の可変ゲイン増幅器10の利得は、ゲイン制御部19より出力されるアナログ電圧と、送信回路温度特性記憶部26から出力されるアナログ電圧とを加算したアナログ電圧により調整される。送信回路温度特性記憶部26は、初期時には補正値を記憶していないので、本実施の形態の無線送信機2の工場出荷前に、補正値を記憶させる処理が必要となる。ここで、送信回路30の温度特性補正方法について説明する。
【0025】
今、送信回路温度特性記憶部26に何もデータが記憶されていない状態で、ゲイン制御部19から固定値のアナログ電圧が出力されているとする。このとき、機器の周囲温度を、t1,t2,t3の順で変化させたときのアンテナ入力電力が、p1,p2,p3で、検波電圧d1,d2,d3であったとする。ここで、t2を基準温度とすると、アンテナ入力電力と検波電圧の温度度特性は、t1(p1−p2)、(d1−d2)、t3(p3−p2)、(d3−d2)となる。このとき、p1=p2=p3となるには、コンパレータ出力に対し、t1(d1−d2)、t3(d3−d2)の補正が必要である。そこで、送信電力を大きくして検波回路16を動作させて、t1に(d−d2)、t3に(d3−d2)の補正をかける。これにより、温度特性補正値算出部25よりゲイン制御部19にフィードバックされる補正値が、送信回路温度特性における補正値t1(p1−p2)、t3(p3−p2)となる。これらの補正値を送信回路温度特性記憶部26に記憶させることで、送信回路30の温度特性の補正値が得られる。
【0026】
送信回路30の温度特性補正処理をステップで表すと、次のようになる。
(1)ゲイン制御部19から固定値のアナログ電圧を出力させている状態で、検波回路16が動作する送信電力で、機器の周囲温度を、t1,t2,t3の順で変化させ、各周囲温度t1,t2,t3に対応するアンテナ入力電力p1,p2,p3と検波電圧d1,d2,d3を求めるステップ
(2)周囲温度t2を基準温度とした場合のアンテナ入力電力の温度数特性t1(p1−p2)、t3(d3−d2)及び検波電圧の温度特性(d1−d2)、(d3−d2)を求めるステップ
(3)各周囲温度t1,t2,t3に対応するアンテナ入力電力の全てが等しくなるコンパレータ出力に対する補正値を求めるステップ
検波回路16が動作しない低送信電力時に、前記ステップで求められた補正値に基づくアナログ電圧とゲイン制御部19から出力される固定値のアナログ電圧を加算して可変ゲイン増幅器10に出力するステップ
(4)前記ステップで求められた補正値を記憶するステップ
【0027】
次に、本実施の形態の無線送信機2の動作について説明する。
送信回路30に入力信号Siが与えられると、その入力信号Siは可変ゲイン増幅器10と固定ゲイン増幅器12で増幅されるとともに、フィルタ11,13で不要成分が除去されてアンテナ15に入力され、アンテナ15から放射される。ここで、可変ゲイン増幅器10の入力信号が一定値であっても送信回路30の各部品の特性変化(温度による増幅器のゲイン変動等)によってアンテナ入力電力が変動してしまうが、この変動はフィードバック回路40によって補正される。すなわち、フィードバック回路40の方向性結合器14でアンテナ入力電力の一部を検波回路16に分配する。分配したアンテナ入力電力の一部を検波回路16で検波し、当該電力に比例した検波電圧を出力し、この検波電圧を所望の送信電力で調整したときのリファレンス電圧と比較し、差分を抽出する。この差分を可変ゲイン増幅器10にフィードバックして、送信電力の変動を補正する。
【0028】
一方、送信電力が低く、検波回路16が動作しないときは、ゲイン制御部19から出力される固定値のアナログ電圧と、送信回路温度特性記憶部26から出力される送信回路温度特性における補正値に基づくアナログ電圧とが加算器22で加算されて可変ゲイン増幅器10に与えられる。これにより、送信電力が低く、検波回路16が動作しないときでも、送信回路30の温度特性が補正されて、目標値の送信電力を送信することができる。
【0029】
このように本実施の形態の無線送信機2によれば、検波回路16を動作させた状態での温度特性補正値から送信回路30の温度特性補正値を算出し、検波回路16が動作しない低送信電力時に、温度特性補正値に基づくアナログ電圧とゲイン制御部19から出力される固定値のアナログ電圧を加算して送信回路30の可変ゲイン増幅器10に出力するようにしたので、検波回路16が働かない送信電力のときの送信回路30の温度特性補正値を容易に得ることができる。
【0030】
なお、本実施の形態の無線送信機2は、実施の形態1の無線送信機1の周波数特性補正値算出部20及び送信回路周波数特性記憶部21を備えていないが、同様ものを備えることも勿論可能である。
【0031】
また、本実施の形態の無線送信機2における送信回路30の温度特性補正処理を記述したプログラムを、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD等)、光磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶媒体に格納して配布することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、携帯電話などの無線通信機器に用いられる無線送信機への適用が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1,2 無線送信機
10 可変ゲイン増幅器
11、13 フィルタ
12 固定ゲイン増幅器
14 方向性結合器
15 アンテナ
16 検波回路
17 リファレンス電圧出力部
18 コンパレータ
19 ゲイン制御部
20 周波数特性補正値算出部
21 送信回路周波数特性記憶部
22 加算器
25 温度特性補正値算出部
26 送信回路温度特性記憶部
30 送信回路
40 フィードバック回路
50 周波数特性補正回路
60 温度特性補正回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部より入力されるアナログ電圧により利得が変化する可変ゲイン増幅器を有する送信回路と、
前記送信回路のアンテナ端におけるアンテナ入力電力の一部を検波して検波電圧を出力する検波回路と、
所望の送信電力に調整されたときのリファレンス電圧を出力するリファレンス電圧出力部と、
前記検波回路から出力される検波電圧と前記リファレンス電圧出力部から出力されるリファレンス電圧とを比較し、差分を抽出するコンパレータと、
前記コンパレータの出力に応じて前記可変ゲイン増幅器の利得を制御するゲイン制御部と、
前記検波回路が動作しない低送信電力時に、前記コンパレータの出力を基に前記送信回路の周波数特性を補正する補正値を算出する周波数特性補正値算出部と、
前記周波数特性補正値算出部で算出された前記補正値を記憶する送信回路周波数特性記憶部と、
前記検波回路が動作しない低送信電力時に、前記送信回路周波数特性記憶部に記憶された補正値に基づくアナログ電圧と前記ゲイン制御部から出力される固定値のアナログ電圧を加算して前記可変ゲイン増幅器に出力する加算器と、
を備えた無線送信機。
【請求項2】
外部より入力されるアナログ電圧により利得が変化する可変ゲイン増幅器を有する送信回路と、前記送信回路のアンテナ端におけるアンテナ入力電力の一部を検波して検波電圧を出力する検波回路と、所望の送信電力に調整されたときのリファレンス電圧を出力するリファレンス電圧出力部と、前記検波回路から出力される検波電圧と前記リファレンス電圧出力部から出力されるリファレンス電圧とを比較し、差分を抽出するコンパレータと、前記コンパレータの出力に応じて前記可変ゲイン増幅器の利得を制御するゲイン制御部と、を備えた無線送信機の送信回路の周波数特性補正方法において、
前記ゲイン制御部から固定値のアナログ電圧を出力させている状態で、前記検波回路が動作する送信電力で、複数のチャンネルで順番に送信を行って、各チャンネルに対応するアンテナ入力電力及び検波電圧を取得するステップと、
前記複数のチャンネルのうちの1つを基準チャンネルに定め、該基準チャンネルに対するアンテナ入力電力及び検波電圧それぞれの周波数特性を求めるステップと、
各チャンネルに対応するアンテナ入力電力の全てが等しくなる前記コンパレータの出力に対する補正値を求めるステップと、
前記検波回路が動作しない低送信電力時に、前記ステップで求められた前記補正値に基づくアナログ電圧と前記ゲイン制御部から出力される固定値のアナログ電圧を加算して前記可変ゲイン増幅器に出力するステップと、
を備えた無線送信機の送信回路の周波数特性補正方法。
【請求項3】
前記ステップで求められた前記補正値を記憶するステップを備えた請求項2に記載の無線送信機の送信回路の周波数特性補正方法。
【請求項4】
外部より入力されるアナログ電圧により利得が変化する可変ゲイン増幅器を有する送信回路と、
前記送信回路のアンテナ端におけるアンテナ入力電力の一部を検波して検波電圧を出力する検波回路と、
所望の送信電力に調整されたときのリファレンス電圧を出力するリファレンス電圧出力部と、
前記検波回路から出力される検波電圧と前記リファレンス電圧出力部から出力されるリファレンス電圧とを比較し、差分を抽出するコンパレータと、
前記コンパレータの出力に応じて前記可変ゲイン増幅器の利得を制御するゲイン制御部と、
前記検波回路が動作しない低送信電力時に、前記コンパレータの出力を基に前記送信回路の温度特性を補正する補正値を算出する温度特性補正値算出部と、
前記温度特性補正値算出部で算出された前記補正値を記憶する送信回路温度特性記憶部と、
前記検波回路が動作しない低送信電力時に、前記送信回路温度特性記憶部に記憶された補正値に基づくアナログ電圧と前記ゲイン制御部から出力される固定値のアナログ電圧を加算して前記可変ゲイン増幅器に出力する加算器と、
を備えた無線送信機。
【請求項5】
外部より入力されるアナログ電圧により利得が変化する可変ゲイン増幅器を有する送信回路と、前記送信回路のアンテナ端におけるアンテナ入力電力の一部を検波して検波電圧を出力する検波回路と、所望の送信電力に調整されたときのリファレンス電圧を出力するリファレンス電圧出力部と、前記検波回路から出力される検波電圧と前記リファレンス電圧出力部から出力されるリファレンス電圧とを比較し、差分を抽出するコンパレータと、前記コンパレータの出力に応じて前記可変ゲイン増幅器の利得を制御するゲイン制御部と、を備えた無線送信機の温度特性補正方法において、
前記ゲイン制御部から固定値のアナログ電圧を出力させている状態で、前記検波回路が動作する送信電力で、機器の周囲温度を複数の温度に順次変化させて、各温度に対応するアンテナ入力電力及び検波電圧を取得するステップと、
前記複数の温度のうち1つを基準温度に定め、該基準温度に対するアンテナ入力電力及び検波電圧それぞれの温度特性を求めるステップと、
各温度に対応するアンテナ入力電力の全てが等しくなる前記コンパレータの出力に対する補正値を求めるステップと、
前記検波回路が動作しない低送信電力時に、前記ステップで求められた前記補正値に基づくアナログ電圧と前記ゲイン制御部から出力される固定値のアナログ電圧を加算して前記可変ゲイン増幅器に出力するステップと、
を備えた無線送信機の温度特性補正方法。
【請求項6】
前記ステップで求められた前記補正値を記憶するステップを備えた請求項5に記載の無線送信機の温度特性補正方法。

【図1】
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【図2】
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