説明

無線通信システム、その通信方法、基地局および移動局

【課題】無線通信システムにおけるセル間干渉を低減する無線通信システムを提供する。
【解決手段】第1の基地局、第2の基地局及び移動局を含む無線通信システムにおいて、 第1の基地局は該第1の基地局におけるランダムアクセスチャネル(RACH)のリソース配置に関する情報を第2の基地局に送信し、第2の基地局は、第1の基地局におけるRACHのリソース配置とは異なるリソース配置で上り通信用のリソースを決定し、移動局は上り通信用のリソースにより第2の基地局と通信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の無線ゾーン(以下、セルという。)を有する無線通信システムに係り、特にその通信方法、基地局、移動局に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信システムにおいて、基地局と移動局との間でデータ通信を行うためには、それらの間で予め同期を確立する必要がある。特に移動局からの初期アクセスは同期しているとは限らないのであるから、基地局は移動局の上り同期をとるための何らかの手順を必要とする。
【0003】
3GPP(3rd Generation Partnership Project)で標準化が進められているLTE(Long Term Evolution)では、上り同期および上りデータ送信を行うために、ランダムアクセスチャネル(RACH:Random Access Channel)と上りリンク共有チャネル(UL−SCH:Uplink-Shared Channel)とを用意している。RACHは、上り同期を確立するための制御信号を送信したり、更に上りデータ送信用のリソースを要求したりするためのチャネルである。大きな遅延無く上り同期を確立するためにはRACH送信の衝突確率はできるだけ小さく抑えることが望ましい(非特許文献1)。他方、UL−SCHはデータおよびレイヤ2/レイヤ3の制御パケットを送信するためのチャネルである。特にUL−SCHの送信電力は伝送速度に応じて大きくなるので、他の信号への干渉を考慮する必要がある。
【0004】
図1(A)はLTEによる移動体通信システムの一般的な構成を模式的に示す図であり、図1(B)は周波数分割および時間分割に基づく無線リソースを模式的に示すリソース構成図である。ここでは、図1(A)に示すように、基地局eNB1のセルA内に位置する移動局UE(User Equipment)1がUL−SCHにより基地局eNB1へデータを送信し、基地局eNB2のセルB内に位置する移動局UE2がRACHにより基地局eNB2へ制御信号を送信しているものとする。
【0005】
WCDMA(Wideband Code Division Multiple Access)ではRACHとEDCH (Enhanced Dedicated Channel)とが異なる拡散およびスクランブルコードによって多重化され同一の周波数リソースを共有している。これに対してLTEでは、図1(B)に示すような周波数分割および時間分割された複数のリソースがRACHおよびUL−SCHにより排他的に共有される。具体的には、LTEの上りリンクでは、システム帯域幅10MHzが1msecの時間間隔で時間分割され、さらに1.25MHz幅で周波数分割されたリソース構成を有する。図1(B)では、横軸のt1,t2,・・・がそれぞれ1msecの時間リソースに対応し、縦軸のFB#1、FB#2・・・がそれぞれ1.25MHz幅の周波数リソースに対応する。以下、図1(B)に示すような1つの時間リソースと1つの周波数リソースで特定される1つの矩形のブロックを単に「リソース」という。
【0006】
このようなシステムのリソースをRACHおよびUL−SCHにどのように割り当てるかは各基地局eNBによって決められる。通常、RACHリソースは、図1(B)に示すように、移動局UEが大きな遅延無く基地局にアクセスできるように周期的に割り当てられる。同時に複数のRACHリソースを割り当てて十分なRACHアクセス容量を確保することも可能である。基地局eNBは、通常、このようなRACHがどのリソースに割り当てられているかを示す情報をブロードキャストしている。したがって、当該セル内の全ての移動局UEは、ブロードキャストされた情報に従って、必要な時にいつでもRACHリソースにアクセスすることが可能となる。1つのセル内でRACHリソースとUL−SCHリソースとが図1(B)に示す周波数分割および時間分割に従って割り当てられる限り、RACHとUL−SCHとが直接干渉することはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2002−526970号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】3GPP TS36.300 V.1.0.0(2007/3/19)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、隣接セル間でリソース割当を行う制御主体が異なる場合には、一方のセルのRACH送信と他方のセルのUL−SCH送信とが干渉する場合が生じうる。上述したように、各基地局eNBは、それぞれの責任において、自局が制御するセルの上りリソースをRACHおよびUL−SCHに割り当てているので、あるセルの高速上りデータ送信が隣接セルのRACH送信に干渉する場合がある。たとえば呼設定手順を開始する場合、RACH送信による上り同期の確立が必要であることを考慮すれば、このRACH干渉の回避は特に重要である。あるセルのデータ送信が隣接セルのRACH送信へ干渉すると、隣接セルにおいて呼設定が遅延してしまうからである。呼設定の場合に限らず、RACH送信が他の処理の開始前に必要とされる場合でも、高速上りデータ送信による強い上り干渉によって当該処理が遅延するという同様の影響が生じる。
【0010】
図2(A)および(B)はセル間干渉の一例を示す模式図である。ここでは、図2(A)に示すように、ある周波数リソースに対してセルAとセルBとがそれぞれ独自にRACHリソースおよびUL−SCHリソースを割り当てているものとする。これらセルAおよびセルBが互いに影響しない程度に離れている場合には干渉は問題にならない。しかし、図1(A)に示すようにセルAとセルBとが隣接し、セルAにある移動局UE1のデータ送信の周波数帯域およびタイミングと、セルBにある移動局UE2のRACH送信の周波数帯域およびタイミングとが重なる場合には、図2(B)に示すような干渉が発生する確率が大きくなる。
【0011】
たとえば、図2(B)において、セルAの移動局UE1がある時点でデータ送信を行おうとした場合、まず基地局eNB1のブロードキャスト信号によって指定されているRACHリソースを用いてRACH送信を行い、基地局eNB1からの応答により許可(GRANT)されたUL−SCHリソースを用いて上りデータ送信を開始する。そのとき、セルBの移動局UE2が同様にデータ送信するためにセルAのUL−SCHと重なるリソースでRACH送信を開始したとすると、基地局eNB2は、セルAの移動局UE1からのUL−SCH送信との干渉により、移動局UE2からのRACH送信を検知することができなくなる。基地局eNB2からの応答がないと、移動局UE2は送信電力をより大きくしてRACH送信を繰り返し、基地局eNB2からの応答(GRANT)を受信してからUL−SCH送信を開始する。このようにUL−SCH送信との衝突によって移動局UE2の通信開始は大きく遅延する可能性が高くなる。
【0012】
このような干渉を回避するには、たとえば特許文献1に開示されているように、干渉が最も小さくなるリソースをサーチし、その最小干渉リソースをRACH送信に割り当てる方法が考えられる。しかしながら、これではRACHリソースを周期的に割り当てることができなくなり、移動局UEの基地局へのアクセスが安定せず、大きく遅延する可能性が高くなる。さらに、干渉が小さいリソースにデータ送信が割り当てられるのが一般的であるから、最小干渉リソースにRACH送信を割り当てることは逆に干渉が大きくなり衝突が発生しやすくなる。
【0013】
このような課題はLTEに限られるものではなく、周波数分割および時間分割されたリソース構成のアクセス方式(FTDMA)を用いる無線通信システム一般で生じうる。
【0014】
本発明の目的は、上記課題を解決しようとするものであり、セル間干渉を低減する無線通信システム、その通信方法、基地局および移動局を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は通信開始遅延を短縮する無線通信システム、その通信方法、基地局および移動局を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明による無線通信システムは、 第1の基地局、第2の基地局及び移動局を含む無線通信システムであって、前記第1の基地局は、該第1の基地局におけるランダムアクセスチャネル(RACH)のリソース配置に関する情報を前記第2の基地局に送信し、前記第2の基地局は、前記第1の基地局におけるRACHのリソース配置とは異なるリソース配置で上り通信用のリソースを決定し、前記移動局は、前記上り通信用のリソースにより前記第2の基地局と通信する、ことを特徴とする。
【0017】
本発明による通信方法は、第1の基地局、第2の基地局及び移動局を含む無線通信システムの通信方法であって、前記第1の基地局が、該第1の基地局におけるランダムアクセスチャネル(RACH)のリソース配置に関する情報を前記第2の基地局に送信し、前記第2の基地局が、前記第1の基地局におけるRACHのリソース配置とは異なるリソース配置で上り通信用のリソースを決定し、前記移動局が、前記上り通信用のリソースにより前記第2の基地局と通信する、ことを特徴とする。
【0018】
本発明による基地局は、移動局を含む無線通信システムにおける基地局であって、他の基地局におけるランダムアクセスチャネル(RACH)のリソース配置に関する情報を受信する受信部と、前記他の基地局におけるRACHのリソース配置とは異なるリソース配置で上り通信用のリソースを決定するリソース決定部と、前記上り通信用のリソースにより前記移動局と通信する通信部と、を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明による移動局は、第1の基地局と第2の基地局とを含む無線通信システムにおける移動局であって、第1の基地局におけるランダムアクセスチャネル(RACH)のリソース配置とは異なるリソース配置になるように前記第2の基地局が決定した上り通信用のリソースに関する情報を受信する手段と、前記上り通信用のリソースにより前記第2の基地局と通信する手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、隣接セルが使用する制御用リソースに対応する自局のリソースの所定範囲内に緩衝領域リソースを設定することにより、セル間干渉を低減することができ、通信開始遅延を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(A)はLTEによる移動体通信システムの一般的な構成を模式的に示す図であり、(B)は周波数分割および時間分割に基づく無線リソースを模式的に示すリソース構成図である。
【図2】(A)および(B)はセル間干渉の一例を示す模式図である。
【図3】(A)、(B)および(C)は、それぞれ本発明の第1実施形態、第2実施形態および第3実施形態によるリソース割当制御方法を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1実施形態によるリソース割当制御方法を適用したRACHリソースおよびUL−SCHリソースの割当例を示すリソース構成図である。
【図5】本発明の第2実施形態によるリソース割当制御方法を適用したRACHリソースおよびUL−SCHリソースの割当例を示すリソース構成図である。
【図6】複数の隣接セルが存在する場合のセル構成の一例を示す図である。
【図7】(A)は本発明の第3実施形態によるリソース割当制御方法を説明するための緩衝領域リソース候補と持続的干渉回避パターンとを模式的に示すリソース構成図であり、(B)は本実施形態によるリソース割当制御方法を適用した緩衝領域リソースの割当例を示すリソース構成図である。
【図8】本発明によるリソース割当制御装置を実装した無線通信装置を含む無線通信システムの概略的構成を示すブロック図である。
【図9】本発明によるリソース割当制御装置を実装する無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【図10】図8に示す移動局の構成を示すブロック図である。
【図11】図8〜図10に示す無線通信システムにおけるリソース再配置動作を示すシーケンス図である。
【図12】本発明の第1実施例によるリソース割当制御方法を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第2実施例によるリソース割当制御方法を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第3実施例によるリソース割当制御装置を実装する無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【図15】本発明の第3実施例によるリソース割当制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.実施例の概略
図3(A)、(B)および(C)は、それぞれ本発明の第1実施例、第2実施例および第3実施態例によるリソース割当制御方法を示すフローチャートである。ここでは説明を簡略化するために、2つの無線通信装置がそれぞれ制御するセルは互いに干渉が生じうる隣接セルであり、各セルは図1(B)と同様に周波数分割および時間分割によるリソース構成を有するものとする。これらのセルのRACHリソースはそれぞれの無線通信装置により配置される。ただし、本発明は、LTEに限らず、周波数分割および時間分割されたリソース構成のアクセス方式(FTDMA)を用いる無線通信システムで適用可能である。
【0023】
図3(A)に示す本発明の第1実施例によれば、まず無線通信装置間で互いのRACHリソース情報を交換して隣接セル間のRACH使用状況を共有する(ステップS20)。各無線通信装置は、他の無線通信装置が使用するRACHリソースに対応する自局のリソースの所定リソース範囲を緩衝領域リソースとして設定する(ステップS21)。この所定リソース範囲(第1実施例では緩衝領域リソース)は、後述するように、無線通信装置間の周波数および同期ずれ等による変動を考慮して、周波数方向および/または時間方向に余裕を持ったリソース領域であることが望ましい。すなわち、所定リソース範囲は、他のセルのRACHリソースに対応する自セルのリソース、または当該リソースと当該リソースから所定範囲内のリソースとの範囲となる。そして、各無線通信装置は緩衝領域リソースを割り当てないようにUL−SCHスケジューリングを実行する(ステップS22)。緩衝領域リソースをUL−SCH送信に割り当てないことで、他の無線通信装置のRACH送信への干渉を回避することができる。
【0024】
図3(B)に示す本発明の第2実施例によれば、第1実施例と同様にステップS20およびS21によって緩衝領域リソースの設定が行われ、続いて他の無線通信装置へ与える干渉が小さいUL−SCH送信が存在するかどうか、すなわち干渉が許容範囲内となるUL−SCH送信を行う移動局UEが存在するか否かを判定する(ステップS30)。各無線通信装置は、干渉が小さいUL−SCH送信には緩衝領域リソースの割当を許可し、それ以外のUL−SCH送信には緩衝領域リソースを割り当てないようにUL−SCHスケジューリングを実行する(ステップS31)。このように一定条件を満たすUL−SCH送信に緩衝領域リソースを割り当て可能にすることで、セル間干渉を低減しつつリソースの効率的な利用を図ることができ、上り通信開始遅延を短縮することが可能となる。
【0025】
図3(C)に示す本発明の第3実施例によれば、まず、第1実施例と同様にステップS20によって隣接セル間のRACH使用状況を共有し、他の無線通信装置が使用するRACHリソースに対応する自局のリソースの所定リソース範囲を緩衝領域リソース候補として設定する(ステップS40)。続いて、緩衝領域リソース候補を非持続的に除外して緩衝領域リソースを設定する(ステップS41)。具体例は後述するが、非持続的な除外とは、緩衝領域リソース候補が連続して除外されるのではなく、任意のパターンでまばらに除外されることをいう。言い換えれば、隣接セルのRACH送信への干渉が連続しないように、自局セルの緩衝領域リソース候補を任意のパターンで除外する。そして、各無線通信装置は緩衝領域リソースの割当を抑制するようにUL−SCHスケジューリングを実行する(ステップS42)。割当の抑制は、ステップS22の割当禁止とステップS31の条件付き割当禁止のいずれかであることを示す。このように緩衝領域リソース候補を非持続的に除外し、除外されたリソースを割当可能にすることで、複数のセルが隣接する場合にセル間干渉を低減しつつリソースの効率的で公平な利用を図ることができ、上り通信開始遅延を短縮することが可能となる。
【0026】
具体的には、任意の隣接セルに対する緩衝領域リソース候補はそのRACHリソースに対応しているので、通常、時間方向に一定の周期で配列されている。従って、この配列されている緩衝領域リソース候補を時間方向にランダムパターン(あるいは所定のパターン)により間引くことで緩衝領域リソースを生成することができる。また、隣接セルに対する緩衝領域リソース候補が周波数方向にも存在している場合には、周波数方向にランダムパターン(あるいは所定のパターン)により間引くことで緩衝領域リソースを生成することができる。さらに、複数のセルが隣接している場合には、間引かれる緩衝領域リソース候補に対応するセルをランダムパターン(あるいは所定のパターン)により選択することで緩衝領域リソースを生成することも可能である。ランダムに選択することで公平性を確保することができるが、各セルのRACH干渉レベルを考慮して、対象となる隣接セルの選択確率を変化させてもよい。
【0027】
2.第1実施例
図4は本発明の第1実施例によるリソース割当制御方法を適用したRACHリソースおよびUL−SCHリソースの割当例を示すリソース構成図である。ここでは、セルAとセルBとが時間領域で完全には同期していない場合を仮定している。すなわち、セルAの時間リソースt1,t2・・・を基準とすれば、セルBの時間リソースt1,t2・・・は時間方向に若干進んでおり完全には一致していない。このために、一方のセルの1つの時間リソースが他方のセルでは2つの時間リソースにまたがっている。たとえばセルAの時間リソースt7は、セルBの時間リソースt6およびt7の両方に重なっている。
【0028】
もしセルAおよびセルBが同一の無線通信装置により制御されて完全に同期していれば、双方のセルの時間リソースの位置は時間的に一致するはずである。セルAおよびセルBが異なる無線通信装置によりそれぞれ制御されている場合には、何らかの同期手段あるいは周知の同期メカニズムを設ければよい。たとえば無線通信装置間で時間情報(送信フレームの番号など)を直接あるいは移動局を介して交換することで相互の内部クロックの同期をとることができる。あるいは、中央局の同期プロトコルに従って無線通信装置間の同期をとることもできるし、GPSを利用して高精度の同期をとることも可能である。ただし、一般的には、信号の伝搬遅延やクロック発生器のばらつき等の変動要因を考慮して、一方のセルにおける1つの時間リソースに対して、他方のセルにおける2個の連続した時間リソースあるいは必要であれば3個以上の連続した時間リソース(以下、これらを時間リソースの組という。)を緩衝領域リソースとして対応づけるのが望ましい。もし1個の時間リソースが更に時間分割可能であれば、より細かい粒度で緩衝領域リソースの組の時間幅を設定することもできる。
【0029】
このようなセルAとセルBとが隣接し、一方のUL−SCH送信が他方のRACH送信に干渉しうる位置関係にあるとする。また、セルAのRACH送信は、周波数リソースFB#3の時間リソースt2、t7、t12・・・に周期的に割り当てられ、セルBのRACHリソースは、周波数リソースFB#2で時間リソースt4、t9、t14・・・に周期的に割り当てられているものとする。それぞれのRACHリソース割当位置は、RACHリソース情報を交換することで知ることができるので、一方のセルは、他方のセルのRACHリソース割当位置にそれぞれ対応するリソースの組(ここでは2個の連続する時間リソース)を緩衝領域リソースとして設定することができる。
【0030】
図4において、各セルのリソース位置を(周波数リソース、時間リソース)というように時間−周波数座標で表示し、複数のリソースが割当られる場合は、「+」を用いて表示することとすれば、セルAのRACHリソース(FB#3、t2)に対しては、セルBに1組の緩衝領域リソース(FB#3、t1+t2)が設定される。逆に、セルBのRACHリソース(FB#2、t4)に対しては、セルAに1組の緩衝領域リソース(FB#2、t4+t5)が設定される。以下、同様に、一方のセルの各RACHリソースに対して、他方のセルに1組の緩衝領域リソースが設定される。
【0031】
なお、セルAおよびセルBの各々には基準周波数発振器が設けられ、周波数リソースFB#1、FB#2、FB#3・・・の周波数分割を可能にしているが、これらの周波数変動を考慮して周波数方向にも余裕を設けた緩衝領域リソースを設定することも望ましい。たとえば、セルBのRACHリソース(FB#2、t4)に対するセルAの緩衝領域リソース組(FB#2、t4+t5)を周波数方向に所定幅αだけ広げて、(FB#2±α、t4+t5)というように設定することもできる。所定幅αは周波数リソース幅以下に設定してもよい。
【0032】
セルAおよびセルBのそれぞれの無線通信装置は、こうして設定された緩衝領域リソースをUL−SCH送信に割り当てないようにUL−SCHのスケジューリングを実行する。UL−SCH送信は緩衝領域リソース以外のリソースに割り当てられるので、他方のセルのRACHリソースへの干渉を確実に回避することができる。
【0033】
3.第2実施例
図5は本発明の第2実施例によるリソース割当制御方法を適用したRACHリソースおよびUL−SCHリソースの割当例を示すリソース構成図である。ここでは説明の整合性を維持するために、図4のセルAと同じ周波数−時間位置にRACHリソースおよび緩衝領域リソースが配置されているものとする。
【0034】
第2実施例においても、上述したようにUL−SCH送信は緩衝領域リソースに原則的に割り当てられないが、UL−SCH送信が他のセルへ与える干渉レベルが許容範囲内である場合、または許容範囲内であると見なすような場合には、当該UL−SCH送信への緩衝領域リソースの割当を例外的に許可する。
【0035】
図5において、緩衝領域リソースは隣接セルBから通知されたRACHリソース位置に対応して設定されている。セルAの無線通信装置は、セルA内に音声パケット送信(VoIP)を要求している移動局UEがあれば、その音声パケット送信に対して時間リソース毎に周波数ホップするUL−SCHリソースを割り当てる。たとえば、音声パケット送信を周波数ダイバーシティ利得が最大となるように周波数リソース全体に渡ってランダムに割り当てることができる。
【0036】
音声パケット送信を割り当てる際、緩衝領域リソースが存在する時間リソース(ここでは、t4,t5、t9、t10・・・)では、その緩衝領域リソースに当該音声パケット送信を優先的に割り当てるのが望ましい。音声パケット送信では必要帯域が比較的狭く要求する送信パワーも低いので緩衝領域リソースに割り当てても他のセルに対して大きな干渉を生じないからである。これにより高速UL−SCH送信へ割り当てるべきリソースに余裕ができる。図5の例では、たとえば緩衝領域リソース(FB#2、t4)および(FB#2、t4)におけるそれぞれ異なる周波数帯域に低パワー要求の音声パケット送信が割り当てられている。ただし、複数の移動局UEの音声パケット送信を緩衝領域リソースに持続的に割り当てることは避けるべきであるから、1つの緩衝領域リソースに対する割当上限を予め決めておくことが望ましい。
【0037】
4.第3実施例
図6は複数の隣接セルが存在する場合のセル構成の一例を示す図であり、図7(A)は本発明の第3実施例によるリソース割当制御方法を説明するための緩衝領域リソース候補と持続的干渉回避パターンとを模式的に示すリソース構成図であり、図7(B)は本実施例によるリソース割当制御方法を適用した緩衝領域リソースの割当例を示すリソース構成図である。ここでは説明の整合性を維持するために、図4のセルAと同じ周波数−時間位置にRACHリソースが配置されているものとする。
【0038】
まず、図6に示すように、あるセルAの周囲に複数個のセルが存在し、ここでは隣接セルB,C,DおよびEとの間で干渉が発生しうるものとする。この状況で隣接セル間でRACHリソース情報が共有されることで、セルAでは、図7(A)に示すようにセルB、C、DおよびEにそれぞれ対応する緩衝領域リソースが設定される。このように隣接セルの個数が多い場合には、セルAの利用可能なリソースの大きな割合を緩衝領域リソースが占めることとなり、セルAの実効的な容量が減少してしまう。この例では、隣接セルB、C、DおよびEの各々が5リソース毎に1つのRACHリソースを割り当てているので、これらに対応する緩衝領域リソースの合計は利用可能な全リソースの40%に達する。上述した第2実施形態に従えば、このような緩衝領域リソースは低速度データ送信の移動局などに割り当てることができるが、隣接セルへの干渉が生じる高速データ送信の移動局には割り当てられない。このように各セルで実効的な容量が減少するのであるから、結果的にネットワーク全体の容量が減少することとなる。
【0039】
本実施例によれば、図7(A)に示すセルB、C、DおよびEにそれぞれ対応する緩衝領域リソース候補を非持続的に除外する(持続的な干渉を回避する)パターン(図中の"x"でマークされたパターン)を適用し、その持続的干渉回避パターンに従って各セルに対する緩衝領域リソースを、例えば図7(B)に示すように決定する。どのようなパターンを用いるかは、各セルの無線通信装置が自律的に決定することもできるし、他の無線通信装置との情報交換により決定されてもよい。
【0040】
持続的干渉回避パターンとしては、緩衝領域リソース候補をある確率で除外するランダムパターンが望ましい一例である。緩衝領域リソース候補から除外されたリソースには高速データ送信が割り当てられて干渉が生じる可能性が高くなるが、ランダムに除外されるのでRACH送信と部分的にのみ干渉するだけであり、持続的あるいは連続的な干渉を有効に回避することができる。またランダムパターンを用いることで、部分的な干渉の発生確率がセルB、C、DおよびEの間で公平になるという利点もある。
【0041】
ただし、ランダムパターンであっても、除外されるリソースの割合、周期の分布および緩衝領域の幅の分布を設定して発生させることが可能であり、隣接セルのRACH干渉の状況に応じて適当なランダムパターンを選択することもできる。
【0042】
持続的干渉回避パターンはランダムではなく所定パターンであってもよい。次に、図7(A)における持続的干渉回避パターンを例として所定パターンについて説明する。
【0043】
1)パターンI:
セルB用の緩衝領域リソースに示すように、RACHリソース情報に基づく緩衝領域リソース候補の組を1つ置きに残す(あるいは削除する)。具体的には、当初の緩衝領域リソース候補の組は(FB#4、t3+t4),(FB#4、t8+t9)、(FB#4、t13+t14)・・・であるが、これらを1つ置きに除外する(あるいは残す)パターンに従って、図7(B)のリソース組(FB#4、t3+t4),(FB#4、t13+t14)・・・を最終的に緩衝領域リソースとして設定する。この例のパターンでは、緩衝領域の周期は10リソース、幅は2リソース、緩衝領域の残存率は1/2である。
【0044】
2)パターンII:
セルC用の緩衝領域リソースに示すように、RACHリソース情報に基づく緩衝領域リソース候補の組を2つ置きに残す(あるいは1つ置きに2つずつ除外する)。具体的には、当初の緩衝領域リソースの組は(FB#3、t5+t6),(FB#3、t10+t11)、(FB#3、t15+t16)・・・であるが、これらを2つ置きに残すパターンに従って、図7(B)のリソース組(FB#3、t5+t6),・・・を最終的に緩衝領域リソースとして設定する。この例のパターンでは、緩衝領域の周期は15リソース、幅は2リソース、緩衝領域の残存率は1/3である。
【0045】
3)パターンIII:
セルD用の緩衝領域リソースに示すように、RACHリソース情報に基づく緩衝領域リソース候補の組のうち前のリソースを残す(あるいは除外する)組と後のリソースを残す(あるいは削除する)組とを交互に切り替える。具体的には、当初の緩衝領域リソースの組は(FB#2、t4+t5),(FB#2、t9+t10)、(FB#2、t14+t15)・・・であるが、これらを1組毎に残すリソースの位置を前後で切り替えるパターンに従って、図7(B)のリソース(FB#2、t4),(FB#2、t10),(FB#2、t14),・・・を最終的に緩衝領域リソースとして設定する。この例のパターンでは、緩衝領域の周期は4あるいは6リソース、幅は1リソース、緩衝領域の残存率は1/2である。
【0046】
4)パターンIV:
セルE用の緩衝領域リソースに示すように、RACHリソース情報に基づく緩衝領域リソース候補の組のうち前のリソースを残す(あるいは除外する)組と後のリソースを残す(あるいは削除する)組とを2つ置きに交互に切り替え、それ以外の緩衝領域リソースを削除する。具体的には、当初の緩衝領域リソースの組は(FB#1、t1+t2),(FB#1、t6+t7)、(FB#1、t11+t12)・・・であるが、これらを3組毎に残すリソースの位置を前後で切り替え、それ以外を削除するパターンに従って、図7(B)のリソース(FB#1、t1),(FB#1、t17),・・・を最終的に緩衝領域リソースとして設定する。この例のパターンでは、緩衝領域の周期は14あるいは16リソース、幅は1リソース、緩衝領域の残存率は1/4である。
【0047】
上記所定パターンI−IVは一例であるが、周期、幅および残存率が異なっているので、それぞれ特徴的なパターンとして利用可能である。したがって、このような複数の特徴的なパターンから1つを選択して全ての隣接セルに対して適用してもよいし、図7で示す例のようにセル毎に異なるパターンを適用することも可能である。さらに、これら所定パターンI−IVをランダムに選択して各セルに適用することも可能である。
【0048】
また、持続的干渉回避パターンは図7に示すように時間領域だけに適用されるものではなく、周波数領域およびセル領域にも適用可能である。ランダムパターンを用いた場合、時間領域でのランダム化により、上述したように1つの隣接セルに対応する緩衝領域リソースが時間領域において連続干渉を回避するように設定される。また、1つの時間リソースに複数の緩衝領域リソースが存在するセルに対しては、周波数領域でのランダム化あるいは時間領域でのランダム化との組み合わせにより、1つの隣接セルに対応する緩衝領域リソースが周波数領域において持続的干渉を回避するように設定される。さらに、複数の隣接セルが存在する場合、そのセルを選択するかをランダムパターンで選択するセル領域でのランダム化により、各隣接セルに対応する緩衝領域リソースが持続的干渉を回避するように設定される。セル領域でのランダム化に、周波数領域でのランダム化および/または時間領域でのランダム化を組み合わせることも可能である。
【0049】
たとえばGSM(Global System for Mobile Communications)方式では時間領域および/またはセル領域でのランダム化を行うことができ、WCDMAやLTEではセル領域、周波数領域および時間領域でのランダム化を任意の組み合わせることができる。
【0050】
なお持続的干渉回避パターンでは干渉を完全に排除することはできないが、隣接セルの無線通信装置間の通信によって、各セルのRACHリソースの時間および周波数の配置を同じにすることで、干渉を改善することも可能である。この場合、RACHがUL−SCHを干渉することが回避でき、さらにRACHは送信確率が低いことからセル内での衝突、またはセル間での干渉が比較的起こりにくいからである。
【実施例】
【0051】
5.システム構成
図8は本発明を実装した無線通信装置を含む無線通信システムの概略的構成を示すブロック図である。ここでは無線通信装置10および11を含む複数の無線通信装置がネットワーク12により通信可能に接続されているものとする。また、無線通信装置10および11はそれぞれセルAおよびセルBを制御し、セルAおよびBは図4に示すリソース構成を有するものとする。各無線通信装置は、上述した第1から第3実施形態によるチャネル割当制御のいずれかを適用してUL−SCHスケジューリングを実行する。
【0052】
ネットワーク12で接続された複数の無線通信装置は1つの基地局eNBに含まれてもよいし、各無線通信装置がそれぞれ1つの基地局eNBであってもよい。いずれにしても複数の移動局UEがセルAあるいはセルB内でRACH送信あるいはUL−SCH送信を行う際の隣接セル間干渉が本実施例により低減される。以下、無線通信装置および移動局の構成および動作を説明する。
【0053】
5.1)無線通信装置
図9は本発明によるリソース割当制御装置を実装する無線通信装置の構成を示すブロック図である。無線通信装置は複数の移動局と無線通信する物理層デバイスとしての無線送受信部101を有する。無線送受信部101は、RACHリソース制御部102が指定したRACHリソース情報をブロードキャストチャネルBCHによりブロードキャストし、これにより各移動局のRACH送信が可能となる。
【0054】
RACH関連情報測定部103は、複数の移動局からのRACHアクセス回数、アクセス遅延、あるいは受信電力などの少なくともいずれかを検出して当該セルにおけるRACH干渉レベルやRACHアクセス負荷状況を測定する。
【0055】
セル間リソース管理部104は、隣接セルの各無線通信装置からRACHリソース情報を受信し、RACHリソース制御部102により指定された自局RACHリソース情報を隣接セルの各無線通信装置へ送信する。受信した隣接セルのRACHリソース情報は緩衝領域リソース設定部105へ出力される。緩衝領域リソース設定部105は、必要に応じてRACH関連情報測定部103からRACH干渉情報を入力し、上述した実施形態で説明したように各隣接セルに対する緩衝領域リソースを決定してUL−SCHスケジューラ106へ出力する。
【0056】
第1実施例によれば、UL−SCHスケジューラ106は、自局セルの移動局からUL−SCH送信のスケジュール要求があると、自局セルのRACHリソースおよび緩衝領域リソースを除く利用可能なリソースを割り当ててスケジュール許可(GRANT)を当該移動局へ応答する。ただし、第2実施形態によれば、UL−SCHスケジューラ106は、移動局が要求したサービスの種類がVoIPのような低送信パワーサービスあるいは隣接セルに対して高パス損失であれば、そのUL−SCH送信に対して緩衝領域リソースを割り当てることができる。
【0057】
こうして割り当てられたUL−SCHリソースが移動局へ通知されると、当該移動局はそのUL−SCHリソースを用いてデータ送信あるいはL2/L3制御パケット送信を開始する。無線通信装置のL2処理部107およびL3処理部108は、受信した上りデータをそれぞれのレイヤプロトコルに従って処理する。
【0058】
なお、RACHリソース制御部102、RACH関連情報測定部103、セル間リソース管理部104、緩衝領域リソース設定部105およびUL−SCHスケジューラ106は、プログラム制御プロセッサあるいはコンピュータ上でプログラムを実行することにより同様の機能を実現することもできる。
【0059】
5.2)移動局
図10は図8に示す移動局の構成を示すブロック図である。移動局UEは、基地局eNBあるいは無線通信装置と無線通信する物理層デバイスとしての無線送受信部201を有する。無線送受信部201は、無線通信装置からブロードキャストされているRACHリソース情報を受信してRACH制御部202へ出力する。RACH制御部202は、受信したRACHリソース情報に従って、同期外れ時あるいは送信データ発生時に無線送受信部201によりRACH送信を実行する。RACH制御部202は、このRACH送信に対する応答を無線通信装置から受信することで上り同期を確立する。
【0060】
UL−SCH制御部203は、データ発生時にスケジュール要求を生成し無線送受信部201により送信する。スケジュール要求に対する応答として無線通信装置からスケジュール許可を受信すると、UL−SCH制御部203は送信フォーマットをL2処理部204へ出力し、L2処理部204は、L3処理部205から入力した送信データを割り当てられたUL−SCHリソースを用いて無線送受信部201を通して送信する。
【0061】
また、移動局にはパス損失測定部206が設けられてもよい。パス損失測定部206は隣接セルからの下りのパイロットの受信品質を測定することで隣接セルとのパス損失を推定することができる。この隣接セルへのパス損失の情報は制御部207の制御によって無線通信装置へレポートされ、上述した第2実施形態における緩衝領域リソース割当許可を判定するために使用される。なお、制御部207は、RACH制御部202およびUL−SCH制御部203を含む移動局全体の動作を制御する。
【0062】
6.動作
図11は、図8〜図10に示す無線通信システムにおけるリソース再配置動作を示すシーケンス図である。まずセルAの無線通信装置10のRACHリソース制御部102がRACHリソースの再配置を行うと(ステップS40)、セル間リソース管理部104は新たなRACHリソース情報を隣接セルBの無線通信装置11へ通知し(ステップS41)、さらに無線送受信部101によってセルAに位置する移動局UE1へ通知する(ステップS42)。
【0063】
隣接セルBの無線通信装置11のセル間リソース管理部104は、隣接セルAのRACHリソースが変更されたことを知ると、隣接セルAの新たなRACHリソース情報を緩衝領域リソース設定部105へ出力し、上述した各実施形態により緩衝領域リソースを決定する。そして、UL−SCHスケジューラ106は自局セルBのRACHリソースと隣接セルAに対する緩衝領域リソースとに基づいてUL−SCHリソースの再配置(スケジューリング)を行い(ステップS43)、自局セルBに位置してUL−SCH送信を行う移動局UE2へ通知する(ステップS44)。
【0064】
新たなRACHリソース情報を受信した移動局UE1はその新たなRACHリソースによってRACHアクセスを実行し(ステップS45)、新たなUL−SCHリソース情報を受信した移動局UE2はその新たなUL−SCHリソースでUL−SCH送信を実行する(ステップS46)。すでに述べたように、移動局UE2のUL−SCH送信は、移動局UE1のRACHリソースとは異なる周波数帯域あるいはタイミングであるか、あるいは、移動局UE1のRACH送信への干渉が許容しうる程度であるから、移動局UE1の上り同期確立に大きな遅延が発生する可能性は低くなる。
【0065】
なお、ここでは無線通信装置10から無線通信装置11へRACHリソース情報が通知された場合を示しているが、無線通信装置11から無線通信装置10へもRACHリソース情報が通知されており、この場合も基本的な動作は上述したとおりであるから説明は省略する。以下、1つの無線通信装置が1つの基地局eNBである場合を一例として本発明の実施例を説明する。
【0066】
7.第1実施例
図12は本発明の第1実施例によるリソース割当制御方法を示すフローチャートである。隣接するセルの各々を制御する基地局eNBは、RACHリソース制御部102によりRACHスケジューリング情報および現在占有されているRACHリソースを他方の基地局eNBへレポートすることにより、セル間のRACHリソース情報を共有する(ステップS301)。続いて、各基地局eNBの緩衝領域リソース設定部105は、RACH関連情報測定部103からのRACH干渉レベルが所定しきい値より大きいか否かを判断する(ステップS302)。RACH干渉が大きければ(ステップS302のYES)、緩衝領域リソース設定部105は隣接セルのRACHリソース情報から当該隣接セルに対する緩衝領域リソースを設定する(ステップS303)。UL−SCHスケジューラ106は、緩衝領域リソースをUL−SCH送信に割り当てないように、すなわち自局のRACHリソースおよび緩衝領域リソース以外のリソースにUL−SCH送信を割り当てるようにスケジューリングを行う(ステップS304)。RACH干渉が小さければ(ステップS302のNO)、緩衝領域リソースを設定することなく、自局のRACHリソース以外のリソースにUL−SCH送信を割り当てるようにスケジューリングを行う(ステップS304)。
【0067】
8.第2実施例
本発明の第2実施例によれば、基地局eNBは次のように動作する。
・基地局eNBは、現在使用されているRACHスケジューリング情報を隣接セルへレポートする。
・基地局eNBは、隣接セルのRACHリソースおよびその近傍のリソースを上り緩衝領域リソースとして保持する。この上り緩衝領域リソースは、VoIP移動局UEあるいは、セルの中央に位置することで隣接セルへのパス損失が大きい移動局UEによって使用可能である。
【0068】
より具体的には、RACHおよびUL−SCHのセル間割当制御は次のように実行される。
【0069】
図13は本発明の第2実施例によるリソース割当制御方法を示すフローチャートである。隣接するセルの各々を制御する基地局eNBは、RACHリソース制御部102によりRACHスケジューリング情報および現在占有されているRACHリソースを他方の基地局eNBへレポートすることにより、セル間のRACHリソース情報を共有する(ステップS401)。続いて、各基地局eNBの緩衝領域リソース設定部105は、RACH関連情報測定部103からのRACH干渉レベルが所定しきい値より大きいか否かを判断する(ステップS402)。RACH干渉が大きければ(ステップS402のYES)、緩衝領域リソース設定部105は隣接セルのRACHリソース情報から緩衝領域リソースを設定しUL−SCHスケジューラ106へ出力する(ステップS403)。
【0070】
続いて、UL−SCHスケジューラ106は、スケジュール要求から低い送信パワーを要求する移動局UE(ここではVoIPパケット送信を行う移動局とする。)であるか否かを判断し(ステップS404)、VoIP移動局UEであれば(ステップS404のYES)、そのVoIPパケット送信に対して時間リソース毎に周波数ホップするUL−SCHリソースを割り当てるが、緩衝領域リソースが存在する時間リソースでは、所定の割当上限内で当該緩衝領域リソースの優先的割当を許可する(ステップS405)。望ましくは、VoIPパケット送信を周波数ダイバーシティ利得が最大となるように周波数リソース全体に渡ってランダムに割り当てる。VoIP移動局UEあるいはセルの中央に位置することで隣接セルへのパス損失が大きい移動局UEでない場合には(ステップS404のNO)、ステップS405をスキップする。
【0071】
続いて、UL−SCHスケジューラ106は、移動局UEからレポートされた隣接セルへのパス損失の情報から当該移動局UEが隣接セルへのパス損失が大きいか否かを判断する(ステップS406)。なお、隣接セルへのパス損失が大きいか否かだけでなく、現在のセルでのパス損失と隣接セルへのパス損失との比が大きいか否かで判断するとしても良い。隣接セルへのパス損失が大きい移動局UEであれば(ステップS406のYES)、隣接セルへの干渉が小さいので、UL−SCHスケジューラ106は当該移動局UEの送信に対する緩衝領域リソースの割当を許可する(ステップS407)。隣接セルへのパス損失が小さい場合には(ステップS406のNO)、ステップS407をスキップする。
【0072】
こうしてUL−SCHスケジューラ106は、ステップS405あるいはS407で割当許可されたUL−SCH送信以外には緩衝領域リソースを割り当てないようにUL−SCHスケジューリングを行う(ステップS408)。なお、RACH干渉が小さい場合には(ステップS402のNO)、ステップS403〜S407を実行しないで、UL−SCHスケジューラ106は通常のUL−SCHスケジューリングを実行する。
【0073】
上述したリソース割当制御の一例を次に示す。まず、基地局eNBは、隣接セルと共に、時間および周波数領域におけるRACHリソースの配置を互いに共有する。隣接セルのRACHリソースに対応する緩衝領域リソースへの割当は次のように行われる。
【0074】
・基地局eNBは、たとえば当該セルの中央に位置することで隣接セルへのパス損失が大きい移動局UEに割り当てる(ただし、移動局UEには、隣接セルへのパス損失を現在の主セルにレポートする機能が必要である)。これはステップS404のNO、ステップS406のYESおよびステップS407、ステップS408という処理フローに対応する。
・あるいは、基地局eNBは、送信パワー要求が低い移動局UE(たとえば、VoIPを行う移動局など)に割り当てる。これはステップS404のYES、ステップS406のNO、ステップS408という処理フローに対応する。
・あるいは、基地局eNBは、当該リソース領域を使用しないままにしておく。これはステップS404のNO、ステップS406のNO、ステップS408という処理フローに対応する。
・あるいは、基地局eNBは、干渉が大きいことを示すパワー制御信号のような過負荷インジケータが受信されないときには、高速データ送信の移動局UEを割り当てる。これはステップS402のNO、ステップS408という処理フローに対応する。
【0075】
9.第3実施例
本発明の第3実施例によれば、他のセルのRACHリソース情報と当該他のセルへの持続的な干渉を回避するパターンとに基づいて当該他のセルに対する緩衝領域リソースを決定する。
【0076】
図14は本発明の第3実施例によるリソース割当制御装置を実装する無線通信装置の構成を示すブロック図である。なお、図9に示す構成と同一機能のブロックには同一参照番号を付している。図14に示す構成が図9と異なる箇所は、緩衝領域リソース候補設定部105と間引き制御部109とを設けたところであるが、緩衝領域リソース候補設定部105は図9の緩衝領域リソース候補設定部105と同一機能であるから同一参照番号を付している。すなわち、緩衝領域リソース候補は隣接セルのRACHリソースに対応した緩衝領域リソースに等しい。
【0077】
間引き制御部109は、緩衝領域リソース候補を非持続的に除外する持続的干渉回避パターンおよび必要に応じてRACH干渉情報を用いて、緩衝領域リソース候補設定部105で設定された緩衝領域リソース候補を非持続的に除外する。こうして緩衝領域リソース候補を間引きすることで緩衝領域リソースを生成し、UL−SCHスケジューラ106へ出力する。なお、持続的緩衝回避パターンは、設定ファイルとして無線通信装置に設定されているものでも良く、また、いずれかのネットワークを通じて取得され記憶されるものであっても良い。
【0078】
図15は本発明の第3実施例によるリソース割当制御方法を示すフローチャートである。隣接するセルの各々を制御する基地局eNBは、RACHリソース制御部102によりRACHスケジューリング情報および現在占有されているRACHリソースを他方の基地局eNBへレポートすることにより、セル間のRACHリソース情報を共有する(ステップS501)。続いて、各基地局eNBの緩衝領域リソース設定部105は、RACH関連情報測定部103からのRACH干渉レベルが所定しきい値より大きいか否かを判断する(ステップS502)。RACH干渉が大きければ(ステップS502のYES)、緩衝領域リソース候補設定部105は隣接セルのRACHリソース情報から緩衝領域リソース候補を設定して間引き制御部109へ出力する(ステップS503)。
【0079】
間引き制御部109は、時間領域、周波数領域および/またはセル領域において、緩衝領域リソース候補を持続的干渉回避パターンに従って除外し、各隣接セルに対する緩衝領域リソースを決定する(ステップS504)。設定された緩衝領域リソースはUL−SCHスケジューラ106へ出力される。どのようなパターンを用いるかは、各セルの基地局eNBが自律的に決定することもできるし、他の基地局eNBとの情報交換により決定されてもよい。すでに述べたように持続的干渉回避パターンとしてはランダムパターンが望ましい一例である。
【0080】
UL−SCHスケジューラ106は、緩衝領域リソースをUL−SCH送信に割り当てないように、すなわち自局のRACHリソースおよび緩衝領域リソース以外のリソースにUL−SCH送信を割り当てるようにスケジューリングを行う(ステップS505)。RACH干渉が小さければ(ステップS502のNO)、緩衝領域リソースを設定することなく、自局のRACHリソース以外のリソースにUL−SCH送信を割り当てるようにスケジューリングを行う(ステップS505)。
【0081】
上述したリソース割当制御の持続的干渉回避パターンとしてランダムパターンを用いた一例を次に示す。まず、基地局eNBは、隣接セルと共に、時間および周波数領域におけるRACHリソースの配置を互いに共有する。隣接セルのRACHリソースに対応する緩衝領域リソースへの割当は次のように行われる。
・時間領域におけるランダムパターンに従って他のセルへの持続的な干渉を回避する;
・周波数領域におけるランダムパターンに従って他のセルへの持続的な干渉を回避する;
・セル領域におけるランダムパターンに従って他のセルへの持続的な干渉を回避する;
・時間領域、周波数領域およびセル領域の任意の組み合わせにおけるランダムパターンに従って他のセルへの持続的な干渉を回避する。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明はセル間干渉が生じうる無線通信システム、特に周波数分割および時間分割されたリソース構成のアクセス方式(FTDMA)を用いる移動体通信システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0083】
10、11 無線通信装置
12 ネットワーク
101 無線送受信部
102 RACHリソース制御部
103 RACH関連情報測定部
104 セル間リソース管理部
105 緩衝領域リソース設定部
106 UL−SCHスケジューラ
107 L2処理部
108 L3処理部
109 間引き制御部
201 無線送受信部
202 RACH制御部
203 UL−SCH制御部
204 L2処理部
205 L3処理部
206 パス損失測定部
RACH ランダムアクセスチャネル
UL−SCH 上りリンク共有チャネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基地局、第2の基地局及び移動局を含む無線通信システムであって、
前記第1の基地局は、該第1の基地局におけるランダムアクセスチャネル(RACH)のリソース配置に関する情報を前記第2の基地局に送信し、
前記第2の基地局は、前記第1の基地局におけるRACHのリソース配置とは異なるリソース配置で上り通信用のリソースを決定し、
前記移動局は、前記上り通信用のリソースにより前記第2の基地局と通信する、
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
第1の基地局、第2の基地局及び移動局を含む無線通信システムの通信方法であって、
前記第1の基地局が、該第1の基地局におけるランダムアクセスチャネル(RACH)のリソース配置に関する情報を前記第2の基地局に送信し、
前記第2の基地局が、前記第1の基地局におけるRACHのリソース配置とは異なるリソース配置で上り通信用のリソースを決定し、
前記移動局が、前記上り通信用のリソースにより前記第2の基地局と通信する、
ことを特徴とする通信方法。
【請求項3】
移動局を含む無線通信システムにおける基地局であって、
他の基地局におけるランダムアクセスチャネル(RACH)のリソース配置に関する情報を受信する受信部と、
前記他の基地局におけるRACHのリソース配置とは異なるリソース配置で上り通信用のリソースを決定するリソース決定部と、
前記上り通信用のリソースにより前記移動局と通信する通信部と、
を備えることを特徴とする基地局。
【請求項4】
第1の基地局と第2の基地局とを含む無線通信システムにおける移動局であって、
第1の基地局におけるランダムアクセスチャネル(RACH)のリソース配置とは異なるリソース配置になるように前記第2の基地局が決定した上り通信用のリソースに関する情報を受信する手段と、
前記上り通信用のリソースにより前記第2の基地局と通信する手段と、
を備えることを特徴とする移動局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−9424(P2013−9424A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−201100(P2012−201100)
【出願日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【分割の表示】特願2007−120377(P2007−120377)の分割
【原出願日】平成19年4月28日(2007.4.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WCDMA
2.GSM
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】