説明

無線通信システム、リレー局装置、通信装置、無線通信方法

【課題】複数の通信装置間で同じリソースを用いてリレー局を介したデータ交換を行う場合に、少ない時間スロット数(2フェーズ)で効率良く伝送する。
【解決手段】複数のアンテナを備えた3以上の通信装置が、同じリソースを用い、複数のアンテナを備えたリレー局を介して、それぞれのデータ交換を行う無線通信システムであって、第一の時間フレームにおいて前記各通信装置が前記リレー局へ信号を送信し、前記第一の時間フレームにおいて送信された信号を受信した前記リレー局は、前記受信信号に基づく信号を前記第一の時間フレームとは異なる第二の時間フレームにおいて前記各通信装置へ送信することを特徴とする無線通信システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、リレー局装置、通信装置、無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの無線通信装置(基地局装置‐端末装置間または端末装置同士間等)がリレー局(中継局)を介してそれぞれのデータ(信号)を交換する双方向通信(Two−way Relay, Bi−directional Relayなどとも呼ばれる)方式は、リレー局を備えたシステムにおける伝送効率の低下を改善する方式として、盛んに検討が行われている。また、双方向通信方式の応用として、3つ以上の無線通信装置が1つのリレー局を介して、それぞれのデータを交換するMulti−way Relay方式も提案されている(下記非特許文献1参照)。
【0003】
非特許文献1では、データを交換する複数の通信装置が、それぞれ1本のアンテナを有し、リレー局装置が、データ交換を行う複数の通信装置の数分だけのアンテナを有する場合において、データを交換する通信装置数だけの時間スロット(フェーズ)で、全ての通信装置間のデータ交換を行う方法が提案されている。ここで、3つの通信装置がそれぞれ保持するデータを、リレー局を介して他の2つの通信装置に通知する場合の例を図1に示す。非特許文献1に記載の方法では、データを交換する通信装置数がNである場合に、全ての通信装置間でデータ交換するために必要となる時間スロット数はNであり、したがって図1に示す場合には、データ交換に要する時間スロット数は3となる。図1では、この3つの時間スロットをそれぞれt=1,2,3で表わしている。但し、図1では、データを交換する3つの通信装置はそれぞれ1本のアンテナを有し、リレー局は3本のアンテナを有するものとしている。
【0004】
図1に示すように、ここでは第1から第3までの通信装置101〜103が同じリソースを用い、リレー局100を介して、それぞれが保持するデータを交換するものとし、第1の通信装置101が保持するデータを変調した信号をS101、第2の通信装置102が保持するデータを変調した信号をS102、第3の通信装置103が保持するデータを変調した信号をS103とする。この場合には、第1の通信装置101の希望信号はS102とS103、第2の通信装置102の希望信号はS103とS101、第3の通信装置103の希望信号はS101とS102となる。このような構成において、非特許文献1に記載の方法では、まず3つの通信装置101〜103までがそれぞれの保持するデータ(信号)をリレー局100に送信し、リレー局100においては、各通信装置101〜103から送信された信号(S101、S102、S103)が混在した信号が受信される(t=1)。
【0005】
このように、複数の通信装置が1つの宛先装置(ここではリレー局100)にそれぞれの信号を送信する時間スロット(フェーズ)はマルチアクセスフェーズと呼ばれる。このように3つの信号(S101、S102、S103)が混在した信号に対して、リレー局100は3つのアンテナを有しているため、受信後にそれぞれの信号を分離することができる。
【0006】
マルチアクセスフェーズで受信した信号をそれぞれ分離したリレー局100は、次に、各通信装置101から103までへ、それぞれの希望信号を送信する。まず、t=2では、通信装置101宛にS102を、通信装置102宛にS103を、通信装置103宛にS101をそれぞれ送信する。このように、1つの送信源(この場合はリレー局100)が複数の宛先装置(第1から第3までの通信装置101〜103)に信号を送信する時間スロット(フェーズ)は、ブロードキャストフェーズと呼ばれる。
【0007】
この時、リレー局100では、各通信装置に干渉を与えないような送信ウェイトを送信信号に乗算して伝送を行う。非特許文献1では、この送信ウェイトの例として、ZF(Zero Forcing)やMMSE(Minimum Mean Square Error)と呼ばれる基準で求められた送信ウェイトを用いるものとしている。このような処理を行って伝送することにより、通信装置101はS102を、通信装置102はS103を、通信装置103はS101をそれぞれ干渉なく受信することができる。
【0008】
また、t=3もブロードキャストフェーズであり、リレー局100は、通信装置101宛にS103を、通信装置102宛にS101を、通信装置103宛にS102をそれぞれ送信する。この時にも、t=2の際と同様に、リレー局100では、各通信装置101から103に干渉を与えないような送信ウェイトを乗算して伝送を行う。このような処理を行って伝送することにより、通信装置101はS103を、通信装置102はS101を、通信装置103はS102をそれぞれ干渉なく受信することができる。
【0009】
以上の構成により、3つの通信装置がそれぞれ保持するデータを、リレー局を介して3つの時間スロットで交換することができ、各通信装置がリレー局を介してそれぞれ個別にデータを交換する場合に比べ、伝送効率を大幅に改善することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】A. Amah, A. Klein, “Non-Regenerative Multi-Way Relaying with Linear Beamforming,” PIMRC 2009, Sep. 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
非特許文献1に記載のMulti−way Relay方式では、データを交換する通信装置数と同じだけの時間スロット数が必要であるが、更に伝送効率を高めるためには、より少ない時間スロット数でデータ交換を行う必要がある。
【0012】
また、非特許文献1では、リレー局が有するアンテナ数が通信装置数と同じという前提であり、リレー局のアンテナ数が少ない場合には、効率良く伝送することができないという問題がある。
【0013】
本発明は、複数の通信装置間で同じリソースを用いてリレー局を介したデータ交換を行う場合に、少ない時間スロット数(2フェーズ)で効率良く伝送する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、複数の通信装置間で同じリソースを用いてリレー局を介したデータ交換を行う場合に、第1フェーズにおいて各通信装置がリレー局に信号を伝送し、リレー局は、第1フェーズで受信した信号を、第2フェーズで各通信装置に伝送することを特徴とする。これにより、各通信装置は、受信した信号から自己干渉を減算することにより、希望信号を抽出することができる。
【0015】
本発明の一観点によれば、複数のアンテナを備えた3以上の通信装置が、同じリソースを用い、複数のアンテナを備えたリレー局を介して、それぞれのデータ交換を行う無線通信システムであって、第一の時間フレームにおいて前記各通信装置が前記リレー局へ信号を送信し、前記第一の時間フレームにおいて送信された信号を受信した前記リレー局は、前記受信信号に基づく信号を前記第一の時間フレームとは異なる第二の時間フレームにおいて前記各通信装置へ送信することを特徴とする無線通信システムが提供される。
【0016】
前記データ交換を行う前記各通信装置がそれぞれ送信する信号は、自身以外の全ての通信装置にとって共通の希望信号であることが好ましい。
【0017】
また、前記リレー局が有するアンテナ数は、前記データ交換を行う通信装置数よりも少ないことが好ましい。
【0018】
前記リレー局は、セルを制御する基地局装置であっても良い。また、前記リレー局は、複数の無線LAN端末の通信を制御するアクセスポイントであっても良い。
【0019】
また、本発明は、複数のアンテナを備えた3以上の通信装置が、同じリソースを用い、複数のアンテナを備えたリレー局を介して、それぞれのデータ交換を行う無線通信システムにおけるリレー局であって、第一の時間フレームにおいて前記各通信装置が前記リレー局へ送信した信号を受信し、前記受信信号に基づく信号を前記第一の時間フレームとは異なる第二の時間フレームにおいて前記各通信装置へ送信することを特徴とするリレー局である。
【0020】
また、本発明は、複数のアンテナを備えた3以上の通信装置が、同じリソースを用い、複数のアンテナを備えたリレー局を介して、それぞれのデータ交換を行う無線通信システムにおける通信装置であって、第一の時間フレームにおいてそれぞれの通信装置が前記リレー局へ信号を送信し、前記第一の時間フレームにおいて送信された信号を受信した前記リレー局からの、前記受信信号に基づき、前記第一の時間フレームとは異なる第二の時間フレームにおいて各通信装置への送信された信号を受信することを特徴とする通信装置である。
【0021】
本発明の他の観点によれば、複数のアンテナを備えた3以上の通信装置が、同じリソースを用い、複数のアンテナを備えたリレー局を介して、それぞれのデータ交換を行う無線通信システムにおける通信方法であって、第一の時間フレームにおいて前記各通信装置が前記リレー局へ信号を送信するステップと、前記第一の時間フレームにおいて送信された信号を受信した前記リレー局が、前記受信信号に基づく信号を前記第一の時間フレームとは異なる第二の時間フレームにおいて前記各通信装置へ送信するステップとを有することを特徴とする無線通信方法が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明を用いることにより、複数の通信装置間で同じリソースを用いてリレー局を介したデータ交換を行う場合に、少ない時間スロット数(2フェーズ)で効率良く伝送することができる。また、リレー局のアンテナ数が少ない場合にも、2フェーズでの伝送を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】データを交換する3つの通信装置はそれぞれ1本のアンテナを有し、リレー局は3本のアンテナを有するシステム構成例を示す図である。
【図2】本発明による第1の実施形態による通信システムの構成例を示す図である。
【図3】図2のリレー局の一構成例を示す機能ブロック図である。
【図4】図2の通信装置の一構成例を示す機能ブロック図である。
【図5】本発明による第2の実施形態による通信システムの構成例を示す図である。
【図6】図5のリレー局の一構成例を示す機能ブロック図である。
【図7】図5の通信装置の一構成例を示す機能ブロック図である
【図8】本発明の第3の実施の形態によるセルラシステムへの適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施の形態による通信技術について、図面を参照しながら説明を行う。
【0025】
(第1の実施形態)
図2は、本発明による第1の実施形態における、複数のアンテナを有するリレー局10を介して、複数のアンテナを有する複数の通信装置(図1では第1から第3までの通信装置11〜13の3つの通信装置で例示している。)がそれぞれ保持するデータを2フェーズ(t=1,2)で全て交換する方法について示す図である。但し、各通信装置11〜13までは、同じリソースを用いるものとする。また、ここでは、各通信装置11〜13までが有するアンテナ数を2とし、リレー局10が有するアンテナ数を3としている。このようなシステムにおいて、第1の通信装置11が保持するデータを変調した信号をS11、第2の通信装置12が保持するデータを変調した信号をS12、第3の通信装置13が保持するデータを変調した信号をS13とする。この場合には、第1の通信装置11の希望信号はS12とS13、第2の通信装置12の希望信号はS13とS11、第3の通信装置13の希望信号はS11とS12となる。つまり、各通信装置11〜13までは、自身が保持するデータを複数の宛先に送信し、宛先となる複数の通信装置は、送信源となる通信装置から送信された同じデータを受信することとなる。
【0026】
このようなシステムにおいて、まず第1フェーズ(t=1)では、各通信装置11〜13までが、自身が有するデータを変調した信号をリレー局10へ送信する。つまり、このフェーズは先に述べたマルチアクセスフェーズである。ここで、第1の通信装置11とリレー局10との間の伝搬路をH、第2の通信装置12とリレー局10との間の伝搬路をH、第3の通信装置13とリレー局10との間の伝搬路をHとすると、第1フェーズのリレー局10における受信データ信号yは次式で表わされる。但し、ここでは、各通信装置11〜13までは、それぞれ1つのアンテナ(アンテナ1)からのみデータ信号を送信するものとし、各伝搬路はそれぞれH=[h1−(1−1)2−(1−1)3−(1−1)、H=[h1−(2−1)2−(2−1)3−(2−1)、H=[h1−(3−1)2−(3−1)3−(3−1)と表わされるものとする。ここで、例えば、h2−(3−1)は、第3の通信装置13のアンテナ1とリレー局10のアンテナ2の間の伝搬路を表わしている。また、リレー局10における雑音成分をnとする。
【0027】
【数1】

【0028】
この式(1)は次のように書くこともできる。
【数2】

【0029】
したがって、リレー局10において式(3)で表わされる受信ウェイトWR(RX)を乗算することにより、各通信装置から送信された信号をそれぞれ分離することができる。
【0030】
【数3】

【0031】
この式(3)は、ZF(Zero Forcing)基準による受信ウェイトであるが、これとは別に、雑音の分散も考慮して、MMSE(Minimum Mean Square Error)基準等による受信ウェイトを用いて信号を分離してもよい。但し、各通信装置とリレー局10との間の伝搬路は予め把握できているものとする。または、各通信装置からは、データ信号だけでなく、伝搬路推定用のパイロット信号も送信されているものとし、リレー局10では、これらのパイロット信号を用いて各通信装置との間の伝搬路を推定することができるものとする。この時に、各通信装置から送信されるパイロット信号がリレー局10において干渉し合わないように、時間的にずらして送信する等が必要となる。
【0032】
例えば、第1の通信装置11がパイロット信号を送信するタイミングでは他の通信装置(第2、第3の通信装置12、13)は送信を行わず、第2の通信装置12がパイロット信号を送信するタイミングでは他の通信装置(第3、第1の通信装置13、11)は送信を行わず、第3の通信装置13がパイロット信号を送信するタイミングでは他の通信装置(第1、第2の通信装置11、12)は送信を行わないというような制御を行うこととなる。
【0033】
また、マルチキャリア伝送システムを対象とする場合には、各通信装置11〜13までがそれぞれ異なるサブキャリアでパイロット信号を送信することにより、パイロット信号が互いに干渉し合わないようにしてもよい。さらに、各通信装置11〜13までにおいて異なる拡散符号を用いてパイロット信号を拡散して送信し、リレー局10においてそれぞれの拡散符号を用いて逆拡散することにより、各通信装置11〜13から送信されたパイロット信号を分離し、それぞれの伝搬路を推定することもできる。
【0034】
上記の式(3)の受信ウェイトを受信信号yに乗算することにより、各通信装置11〜13から送信された信号をそれぞれ分離することができる。受信信号には雑音が含まれるため、各通信装置11〜13から送信された信号そのものが得られるわけではなく、ここでは、受信ウェイト乗算後の結果をS=[S111213とする。
【0035】
次に、リレー局10は、このように分離された全ての信号を3つの通信装置11〜13宛に送信する。つまり、第2フェーズはブロードキャストフェーズである。但し、Sのうち、各通信装置11〜13が希望する信号のみを受信できるように、リレー局10において送信ウェイトを乗算して送信する。この送信ウェイトは、以下のように求めることができる。但し、各通信装置11〜13とリレー局10との間の伝搬路は事前に把握できているものとする。
【0036】
まず、リレー局10と各通信装置11〜13との間の伝搬路は、各通信装置11〜13とリレー局10との間の伝搬路の複素共役転置行列となり、例えば、リレー局10と第1の通信装置11の間の伝搬路を次式に示す。但し、リレー局10では3つのアンテナから信号が送信され、第1の通信装置11では2つのアンテナで信号を受信するものとする。
【0037】
【数4】

【0038】
リレー局10では、この伝搬路に特異値分解(SVD:Singular Value Decomposition)を施す。この演算は次のように表わすことができる。ここで、Uは2行2列のユニタリ行列、Dは対角成分が正の実数である2行3列の行列、Vは3行3列のユニタリ行列である。
【0039】
【数5】

【0040】
このように得られるVの3列目のベクトル(V1(3))を右からHに乗算すると、その結果はゼロベクトルとなる。これは、V1(3)を送信信号に乗算してリレー局10から送信した場合、第1の通信装置11には信号が届かないことを意味する。つまり、第1の通信装置11の希望信号でない信号にV1(3)を乗算して送信することにより、その他の通信装置に信号を送信しつつ、第1の通信装置11への干渉を回避することができる。リレー局10と第2の通信装置12の間の伝搬路行列、リレー局10と第3の通信装置13の間の伝搬路行列についても、式(5)と同様の演算を施し、それらの通信装置に信号が届かないように制御できるベクトルをそれぞれ算出する。第2の通信装置12に対するこのようなベクトルをV2(3)、第2の通信装置12に対するこのようなベクトルをV3(3)とすると、リレー局10が送信時に用いる送信ウェイトWR(TX)は、WR(TX)=[V1(3)2(3)3(3)]となる。この送信ウェイトWR(TX)をS=[S111213に乗算して送信することにより、第1の通信装置11ではS12とS13のみが受信されるように制御することができる。
【0041】
また、同様に、第2の通信装置12ではS13とS11のみが、第3の通信装置13ではS11とS12のみが受信されるように制御することができる。また、リレー局10において受信信号を分離し、再送信する際には、上記のような送信ウェイトを乗算するだけでなく、それらの信号を増幅してから送信する構成としてもよい。
【0042】
このような送信ウェイトを乗算されて送信された信号が、第1の通信装置11で受信される場合の受信信号y11は次式で表わされる。但し、第1の通信装置11における雑音成分をn11とする。
【0043】
【数6】

【0044】
ここで、先に述べたように、H1(3)はゼロベクトルとなるため、式(6)は次のように変形できる。
【0045】
【数7】

【0046】
つまり、第1の通信装置11では、[S1213が等価的な伝搬路[H2(3)3(3)]を経由した信号が受信されることとなる。したがって、S12とS13が混在した受信信号y11からそれぞれを分離するためには、等価伝搬路[H2(3)3(3)]の逆行列を受信ウェイトW11(RX)として受信信号y11に乗算すればよい。この場合の第1の通信装置11における受信ウェイトはZF基準によるウェイトとなるが、これとは別に、MMSE基準等による受信ウェイトを用いて信号を分離してもよい。但し、このような受信ウェイトを算出するためには、リレー局10において、伝搬路推定用のパイロット信号を新たに付加して、データ信号と共に送信する必要がある。さらに、このパイロット信号は、データ信号に乗算したものと同一の送信ウェイトを乗算して送信しなければならない。また、リレー局10から送信されたパイロット信号が互いに干渉し合わないように、時間、サブキャリア、拡散符号等の異なる無線リソースを用いて各アンテナから送信する必要もある。
【0047】
第2、第3の通信装置12、13においても、第1の通信装置11と同様の処理を行うことにより、それぞれの希望する2つずつの信号を受信し、分離して得ることができる。以上のような構成とすることにより、複数の通信装置がそれぞれ保持するデータを、リレー局を介して、2つの時間スロットで交換することができる。これにより、Multi−way Relay方式の伝送効率を大幅に向上することが可能となる。
【0048】
ここで、以上のような伝送を実現するリレー局10の装置構成例を図3に示す。図3に示すように、本実施形態におけるリレー局10は、受信アンテナ部20−1〜3、30−1〜3、第1〜第3までの受信アンテナ側の無線部21−1〜3、第1〜第3までの送信アンテナ側の無線部29−1〜3、第1〜第3までのA/D変換部22−1〜3、伝搬路推定部23、ウェイト算出部24、受信ウェイト乗算部25、送信ウェイト乗算部26、パイロット信号生成部27、第1〜第3までのD/A変換部28−1〜3から構成される。但し、図3では、説明を簡単にするために、合計で6つのアンテナが記載されているが、送信と受信とが同時に行われることはないため、実際には、アンテナ部20−1〜3と30−1〜3は共用することができる。したがって、リレー局10におけるアンテナ数は3でもよい。
【0049】
このリレー局10では、まず、マルチアクセスフェーズにおいて第1〜第3までの各通信装置11〜13から送信された信号をアンテナ部20−1〜3でそれぞれ受信する。アンテナ部20−1〜3で受信された信号は、次に、第1〜第3までの無線部21−1〜3において無線周波数からA/D変換可能な周波数へと周波数変換され、第1〜第3までのA/D変換部22−1〜3へ入力される。第1〜第3までのA/D変換部22−1〜3では、受信したアナログ信号をディジタル信号に変換する処理が行われ、ディジタル信号に変換された伝搬路推定用のパイロット信号は伝搬路推定部23へ、データ信号は受信ウェイト乗算部25へそれぞれ入力される。
【0050】
伝搬路推定部23では、受信パイロット信号を基にした伝搬路の推定が行われる。この伝搬路の推定は、データ信号の伝送に先だって予め行っておいてもよく、また、第1〜第3までの各通信装置の各アンテナからパイロット信号が送信される場合には、それを基に各通信装置の全てのアンテナとリレー局10との間の伝搬路を推定することができる。ここでは、全ての通信装置の全てのアンテナとの間の伝搬路を推定できるものとする。
【0051】
このように推定された伝搬路は、ウェイト算出部24に入力され、ウェイトの算出に用いられる。ウェイト算出部24では、上述の受信ウェイトWR(RX)や送信ウェイトWR(TX)が算出され、それぞれ受信ウェイト乗算部25に入力される。受信ウェイト乗算部25では、ウェイト算出部24から入力された受信ウェイトを受信データ信号に乗算する処理が行われ、データ信号が分離されることとなる。そして分離されたデータ信号は送信ウェイト乗算部26へ入力され、ウェイト算出部24から入力された送信ウェイトとの乗算が行われる。この送信ウェイト乗算部26には、パイロット信号生成部27において生成された伝搬路推定用のパイロット信号も入力され、データ信号と同じく、送信ウェイトとの乗算が行われる。但し、先に述べたように、リレー局10から送信されたパイロット信号が互いに干渉し合わないように、時間、周波数(サブキャリア)、符号等のいずれかの無線リソースが異なるよう送信する必要がある。
【0052】
送信ウェイト乗算部26において送信ウェイトWR(TX)を乗算されたパイロット信号とデータ信号は、第1〜第3までのD/A変換部28−1〜3に入力され、ディジタル信号からアナログ信号へ変換される。そして、それらの信号は、第1〜第3までの送信アンテナ側無線部29−1〜3において無線送信可能な周波数へ周波数変換され、ブロードキャストフェーズとしてアンテナ部30−1〜3からそれぞれ送信されることとなる。ここで、先に述べたように、再送信する信号に対する増幅が行われる場合には、第1〜第3までの送信アンテナ側無線部29−1〜3でそれぞれ行われることとなる。
【0053】
このようなリレー局10の構成とすることにより、マルチアクセスフェーズにおいて第1〜第3までの各通信装置から送信された信号を受信し、それぞれのデータ信号に分離した後、送信ウェイトを乗算して、ブロードキャストフェーズにおいて再送信することができる。但し、ここでは、データ信号に対して受信ウェイトと送信ウェイトを別々に乗算するものとしているが、まとめて1つのウェイトとして乗算する構成としてもよい。
【0054】
また、本実施形態における通信装置の構成を図4に示す。ここで、本実施形態における3つの通信装置(第1から第3までの通信装置11〜13)は全て同じ構成である例について説明する。図4に示すように、本実施形態における通信装置は、アンテナ部40−1〜2(受信側)、52−1〜2(送信側)、第1及び第1の受信アンテナ側無線部41−1〜2、第1及び第2の送信アンテナ側無線部51−1〜2、第1及び第2のA/D変換部42−1〜2、伝搬路推定部43、ウェイト算出部44、受信ウェイト乗算部45、復調部46、上位層47、変調部48、パイロット信号生成部49、第1及び第2のD/A変換部50−1〜2から構成される。以下では、リレー局10における機能と同じ機能のブロックについては説明を省略する。
【0055】
この通信装置では、まず、マルチアクセスフェーズにおいてリレー局10にデータ送信が行われる。この時、送信データが上位層47から変調部48へ入力され、変調部48において送信データが変調され、変調されたデータ信号に伝搬路推定用のパイロット信号が付加され、これらの信号がアンテナ部から送信されることとなる。図4では、2つのアンテナ(第1及び第1の送信アンテナ側アンテナ部52−1〜2)から送信されるような記載となっているが、先に述べたように、片方のアンテナからのみデータ信号を送信する構成としてもよい。
【0056】
また、ブロードキャストフェーズでは、リレー局10から送信された信号をアンテナ部40−1〜2で受信し、第1及び第2の無線部41−1〜2、第1及び第2のA/D変換部42−1〜2を経由してディジタル信号に変換された信号のうち、伝搬路推定用のパイロット信号を伝搬路推定部43へ、データ信号を受信ウェイト乗算部45へ入力する。伝搬路推定部43では、パイロット信号を基に伝搬路の推定が行われ、推定結果はウェイト算出部44へ入力される。ウェイト算出部44では、受信ウェイトW1n(RX)(n=1〜3)が算出され、その後、受信ウェイト乗算部45において、受信データ信号と受信ウェイトの乗算が行われる。この乗算により、リレー局10から送信された希望信号をそれぞれ分離することができ、復調部46において各信号を復調することができる。そして、復調部46で復調されたデータは上位層47へ送られることとなる。
【0057】
このような構成とすることにより、マルチアクセスフェーズではリレー局10へ信号を送信し、ブロードキャストフェーズでは、リレー局10から送信された信号を受信し、希望信号を分離して復調することができる。
【0058】
以上のようなリレー局、通信装置の構成とすることにより、複数の通信装置がそれぞれ保持するデータを、リレー局を介して、2つの時間スロットで交換することができ、Multi−way Relay方式の伝送効率を大幅に向上することが可能となる。
【0059】
ここで、本実施形態では、リレー局10を介してデータを交換する通信装置数が3の場合を例として説明したが、これに限らず、3以上の通信装置間でデータ交換を行ってもよい。但し、この場合には、通信装置と同じ数のアンテナをリレー局10が有し、各通信装置は、データ交換を行う全通信装置数−1のアンテナを有する必要がある。
【0060】
また、本実施形態におけるリレー局10では、受信したデータ信号を復調せずに、送信ウェイトを乗算して再送信する構成としていたが、一旦復調を行い、再度変調した信号に送信ウェイトを乗算して送信する構成としてもよい。
【0061】
さらに、マルチアクセスフェーズにおいて各通信装置がデータ送信する際に、送信データ信号に送信ウェイトを乗算する構成としてもよい。この場合には、例えば、通信装置とリレー局10の間の伝搬路を基に送信ビームを形成するようなユニタリベクトルを送信ウェイトとして、1つのデータ信号に乗算して、複数のアンテナ部から送信するといった構成とすることができる。
【0062】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施の形態による通信技術について図面を参照しながら説明を行う。
【0063】
第1の実施形態では、データ交換を行う通信装置数(=全データ信号数)分のアンテナをリレー局10が有する場合について記載したが、本実施形態では、リレー局が有するアンテナ数が通信装置数より少ない場合について説明する。
【0064】
このような場合の概要を図5に示す。図5に示すように、本実施の形態では、リレー局60、第1から第3までの通信装置61〜63では、それぞれ2本ずつのアンテナを有するものとする。このように、リレー局60が有するアンテナ数が、通信装置数未満である場合にも2つの時間スロット(フェーズ)で、各通信装置がデータ交換を行う方法について説明する。但し、第1の実施形態と同様、第1フェーズ(t=1)はマルチアクセスフェーズであり、第2フェーズ(t=2)はブロードキャストフェーズである。また、第1から第3までの各通信装置から送信される信号数、第1から第3までの各通信装置の希望信号数は第1の実施形態と同じものとする。
【0065】
まず、マルチアクセスフェーズでは、第1の実施形態と同様に、第1から第3までの各通信装置からリレー局60へデータ送信が行われる。この時、第1から第3までの各通信装置では、それぞれ片方のアンテナからデータ信号を送信する構成としてもよいし、任意の送信ウェイトをデータ信号に乗算し、送信ウェイト乗算後の信号を2本のアンテナから送信する構成としてもよい。また、データ信号と共に伝搬路推定用のパイロット信号も送信され、受信側での伝搬路推定に用いられる。
【0066】
但し、第1の実施形態においても述べたように、パイロット信号の送信に際しては、第1から第3までの各通信装置から送信されるパイロット信号がリレー局60において干渉し合わないように、時間、周波数(サブキャリア)、符号等のいずれかの無線リソースが異なるよう送信する必要がある。例えば、異なる時間リソースによりパイロット信号を送信する場合には、第1の通信装置61がパイロット信号を送信するタイミングでは他の通信装置(第2及び第3の通信装置62、63)は送信を行わず、第2の通信装置62がパイロット信号を送信するタイミングでは他の通信装置(第3及び第1の通信装置63、61)は送信を行わず、第3の通信装置63がパイロット信号を送信するタイミングでは他の通信装置(第1及び第2の通信装置61、62)は送信を行わないというような制御を行うこととなる。
【0067】
このように各通信装置から送信されたデータ信号及びパイロット信号を、リレー局60では2本のアンテナで受信することとなる。この時の受信信号yは次式で表わされる。
【0068】
【数8】

【0069】
但し、ここでは、第1から第3までの各通信装置はそれぞれ送信ウェイトをデータ信号に乗算して送信を行うものとしており、v(=[v1112)、v(=[v2122)、v(=[v3132)は第1から第3までの通信装置61〜63の送信ウェイトをそれぞれ表わしている。また、各伝搬路(H、H、H)はそれぞれ次の2行2列の行列で表わされる。但し、例えば、h2−(3−1)は、通信装置63のアンテナ1とリレー局60のアンテナ2の間の伝搬路を表わしている。
【0070】
【数9】

【0071】
また、式(8)は次のように書くことができる。
【数10】

【0072】
第1の実施形態では、各通信装置から送信される信号と同じ数のアンテナをリレー局が有していたため、リレー局において各信号を分離することができたが、式(10)からもわかるように、本実施の形態では、2本の受信アンテナで3つのデータ信号を受信するため、受信信号を分離することができない。そこで、本実施形態におけるリレー局60では、マルチアクセスフェーズにおいて各通信装置から受信したデータ信号を、ブロードキャストフェーズにおいてそのまま再送信する。
【0073】
ここで、パイロット信号についても、受信した信号をそのまま再送信するものとする。この場合には、先に述べたように、第1から第3までの各通信装置は、パイロット信号同士が干渉し合わないように異なる無線リソースでパイロット信号の送信を行っていることから、リレー局60から再送信されるパイロット信号も同様となる。つまり、第1の通信装置61から送信されたパイロット信号と、第2の通信装置62から送信されたパイロット信号と、第3の通信装置63から送信されたパイロット信号がそれぞれ異なる無線リソースで再送信される。但し、データ信号、パイロット信号共に増幅してから再送信する構成としてもよい。
【0074】
先に述べたように、ブロードキャストフェーズでは、マルチアクセスフェーズで受信した信号をそのまま再送信するため、例えば第1の通信装置61における受信信号は次式で表わされる。
【0075】
【数11】

【0076】
また、第2の通信装置62における受信信号は、式(10)で表わされる信号が伝搬路Hを経由した信号で、第3の通信装置63における受信信号は、式(10)で表わされる信号が伝搬路Hを経由した信号であり、いずれも式(11)と同様の形式で表わすことができる。
【0077】
これらの式(10)、(11)からわかるように、第1から第3までの各通信装置は2本のアンテナで3つのデータ信号を受信しているため、受信信号を分離することができず、希望信号を得ることができない。しかし、3つのデータ信号のうち、1つのデータ信号は自身がマルチアクセスフェーズにおいて送信した信号であり、どのような信号であるかを把握できているため、自身が送信した信号(ブロードキャストフェーズでは自己干渉となる信号)を受信信号から減算することにより、2つの希望データ信号を抽出することができる。但し、データ信号が受ける等価的な伝搬路変動H(n=1〜3)は、パイロット信号を基に推定できるものとしている。このような処理はSelf Interference Cancellationと呼ばれることもあり、次式で表わされる。ここでは、通信装置61における減算処理を対象としているが、他の通信装置についても同様の処理を行うことができる。
【0078】
【数12】

【0079】
このように、自身が送信したデータ信号を減算することにより、希望信号のみを抽出することができる。したがって、2本のアンテナで2つのデータ信号を受信していることとなり、等価的な伝搬路変動も把握できているため、それらのデータ信号を分離することができる。そして、分離した2つのデータ信号を復調し、第2の通信装置62及び第3の通信装置63から送信されたデータを得ることができる。
【0080】
以上のような処理を行うことにより、リレー局が有するアンテナ数が通信装置数より少ない場合においても、複数の通信装置がそれぞれ保持するデータを、リレー局を介して、2つの時間スロットで交換することができる。これにより、Multi−way Relay方式の伝送効率を大幅に向上することが可能となる。
【0081】
ここで、本実施形態におけるリレー局60の構成を図6に示す。図6に示すように、本実施形態におけるリレー局60は、受信アンテナ部70−1〜2、送信アンテナ75−1〜2、第1及び第2の受信アンテナ側無線部71−1〜2、第1及び第2の送信アンテナ側無線部74−1〜2、第1及び第2のA/D変換部72−1〜2、第1及び第2のD/A変換部73−1〜2から構成される。但し、図3では、説明を簡単にするために、合計で4つのアンテナが記載されているが、送信と受信が同時に行われることはないため、実際には、受信アンテナ部70−1〜2と送信75−1〜2は共用できる。したがって、リレー局60におけるアンテナ数は2でよい。
【0082】
この図6に示すリレー局60は、先に述べたように、マルチアクセスフェーズにおいて各通信装置61〜63から送信された信号を受信アンテナ部70−1〜2において受信し、A/D変換、D/A変換を行って、そのままアンテナ部75−1〜2から再送信する構成となっている。但し、再送信する際に、データ信号及びパイロット信号を増幅してもよく、このような増幅は第1及び第2の送信アンテナ側無線部74−1〜2において行われる。また、ここではA/D変換、D/A変換を行う構成となっているが、マルチアクセスフェーズの時間内にアナログ信号を保持しておけるような構成であれば、必ずしもこれらの変換を行う必要はない。
【0083】
次に、本実施形態における通信装置の構成例を図7に示す。ここで、本実施形態における3つの通信装置(第1から第3までの通信装置61〜63)は全て同じ構成であるものとする。図7に示すように、本実施形態における通信装置は、第1及び第2の受信アンテナ部80−1〜2、第1及び第2の送信アンテナ部95−1〜2、第1及び第2の受信アンテナ側無線部81−1〜2、第1及び第2の送信アンテナ側無線部94−1〜2、第1及び第2のA/D変換部82−1〜2、伝搬路推定部83、自己干渉生成部84、ウェイト算出部85、減算部86、受信ウェイト乗算部87、復調部88、上位層89、変調部90、パイロット信号生成部91、送信ウェイト乗算部92、D/A変換部93−1〜2から構成される。
【0084】
この通信装置では、まず、マルチアクセスフェーズにおいてリレー局60にデータ送信が行われる。この時、上位層89から変調部90へ入力された送信データが、変調部90において変調され、変調されたデータ信号に伝搬路推定用のパイロット信号が付加される。そして、これらの信号に対して送信ウェイト(v、v、v)が乗算され、第1及び第2のD/A変換部93−1〜2、第1及び第2の送信アンテナ側無線部94−1〜2を経由して、アンテナ部から送信されることとなる。但し、送信ウェイトは任意のベクトルでよく、通信装置とリレー局60との間の伝搬路を基に算出されるベクトルを用いることもできる。また、変調部90において得られるデータ信号は、ブロードキャストフェーズにおいて受信された信号から、自己干渉として減算されることから、自己干渉生成部84にも入力される。
【0085】
一方、ブロードキャストフェーズでは、図7の通信装置は、リレー局60から送信された信号を第1及び第2の受信アンテナ部80−1〜2で受信し、第1及び第2の受信アンテナ側無線部81−1〜2、第1及び第2のA/D変換部82−1〜2を経由してディジタル信号に変換された信号のうち、伝搬路推定用のパイロット信号を伝搬路推定部83へ、データ信号を減算部86へ入力する。伝搬路推定部83では、パイロット信号を基に伝搬路の推定が行われ、推定結果は自己干渉生成部84とウェイト算出部85へ入力される。この推定結果はH(n=1〜3)であり、自己干渉生成部84では、マルチアクセスフェーズにおいて自身が送信した信号とH(n=1〜3)の乗算が行われる。この演算により、式(12)の上側の式の最終項が算出される。そして、減算部86において、式(12)に示すような、受信信号と自己干渉の減算が行われ、受信信号から希望信号のみが抽出される。
【0086】
このように、減算部86での減算処理により、自身が送信した信号が干渉として混在していた受信信号から、希望信号のみを抽出することができるが、減算部86から出力される信号は2つの希望信号が分離されていない信号であることから、次に、受信ウェイト乗算部で希望信号を分離する受信ウェイトを乗算する必要がある。このような受信ウェイトは、伝搬路推定部83において推定された伝搬路変動を基に、ウェイト算出部85において算出される。この受信ウェイトの算出方法としては、推定された行列H(n=1〜3)のうち、希望信号に関連する要素だけ抜き出した行列の逆行列を算出する方法等がある。また、2つの希望信号を分離できるその他の受信ウェイトを算出するようにしてもよい。
【0087】
そして、ウェイト算出部85で算出された受信ウェイトは、受信ウェイト乗算部87へ入力され、受信ウェイト乗算部87において、減算部86の出力信号と受信ウェイトの乗算が行われる。この乗算により、リレー局60から送信された希望信号をそれぞれ分離することができ、復調部88において各信号を復調することができる。そして、復調部88で復調されたデータは上位層89へ送られることとなる。
【0088】
このような構成とすることにより、マルチアクセスフェーズではリレー局60へ信号を送信し、ブロードキャストフェーズでは、リレー局60から送信された信号を受信し、自己干渉の減算と希望信号の分離を行い、分離された希望信号をそれぞれ復調することができる。
【0089】
以上のようなリレー局、通信装置の構成とすることにより、リレー局が有するアンテナ数が少ない場合であっても、複数の通信装置がそれぞれ保持するデータを、リレー局を介して、2つの時間スロットで交換することができ、Multi−way Relay方式の伝送効率を大幅に向上することが可能となる。
【0090】
ここで、本実施形態では、リレー局60を介してデータを交換する通信装置数が3の場合を例として説明したが、これに限らず、3以上の通信装置間でデータ交換を行ってもよい。但し、この場合には、通信装置数−1のアンテナをリレー局60と各通信装置が有する必要がある。
【0091】
(第3の実施形態)
これまでの実施形態では、複数の通信装置間でリレー局を介したデータ交換を行うMulti−way Relay方式を用いるシステムにおいて、少ない時間スロット数(2フェーズ)で効率良く伝送する方法について示してきたが、本実施形態では、Multi−way Relayの適用例について示す。
【0092】
まず、セルラシステムへの適用例を図8に示す。図8は、マクロ基地局100が制御するマクロセル内に、第1から第3までのピコ基地局101〜103が制御するピコセルと、第1から第3までのフェムト基地局104〜106が制御するフェムトセルが存在するシステムを表わしている。また、各フェムトセルはピコ基地局101が制御するピコセル内に存在している。一般に、これらのセルがカバーする領域の大きさは、フェムトセル<ピコセル<マクロセルの順であり、本実施形態においても、この関係を満たすものとする。
【0093】
このようなシステムでは、マクロセル−ピコセル、マクロセル−フェムトセル、ピコセル−フェムトセルの間でそれぞれ干渉が生じ、非常に複雑な干渉状況となる。また、図8の各フェムトセルは近接しており、フェムトセル間でも大きな干渉が生じてしまう。このような状況で良好な伝送特性を得るためには、できるだけセル間で干渉し合わないような制御を行う必要がある。一般に、このような制御は干渉コーディネーションと呼ばれている。
【0094】
この干渉コーディネーションを効果的に行うためには、各セルの送信電力やリソース割り当て、受信レベル、伝搬路等に関する制御情報をセル間で共有し、それに応じた制御を行う必要がある。例えば、フェムトセル間の干渉コーディネーションを行う場合に、各フェムトセルにおける伝搬路変動に関する情報を共有できれば、その伝搬路変動に関する情報を基に、他のフェムトセルに信号が届かないようなビームフォーミングを各フェムト基地局において行うといった制御も可能となる。
【0095】
したがって、この場合には、複数のフェムト基地局間で互いの情報を交換する必要があるが、フェムト基地局はインターネット等の有線ネットワークに接続されているため、インターネットから通信事業者のネットワークを経由して他のフェムト基地局とデータを交換する方法は時間がかかってしまうという問題がある。このような場合には、フェムト基地局間でデータを交換している間にそれぞれの伝搬路が変動してしまい、有効な情報共有ができない。
【0096】
そこで、基地局間のデータ交換を無線伝送により行うこととし、その際にMulti−way Relayを適用する。例えば、第1から第3までのフェムト基地局104〜106で互いの情報(制御情報等)を交換する際に、有線ネットワーク経由で情報交換するのではなく、ピコ基地局101をリレー局として利用し、Multi−way Relayを行う。ここで、第1、第2の実施形態におけるMulti−way Relayを適用する場合には、3つのフェムト基地局が、それぞれの情報を2つの時間スロットで交換することが可能となる。つまり、マルチアクセスフェーズでは、各フェムト基地局からピコ基地局101にデータ伝送が行われ、ブロードキャストフェーズでは、ピコ基地局101から各フェムト基地局へ伝送が行われることとなる。このように基地局間(または基地局とリレー局間等)で無線伝送を行う制御は、Wireless Backhaulと呼ばれることもあり、本実施の形態は、Wireless BackhaulをMulti−way Relayにより実現する方法に関するものであるといえる。
【0097】
ここで、Multi−way Relayを用いた、各フェムト基地局による互いの情報交換は、予め決められたタイミングで定期的に行ってもよいし、通信事業者のネットワークから通知された情報等に基づいて不定期に行うようにしてもよい。不定期に行う場合には、例えば、通信事業者のネットワークから各フェムト基地局に対し、Multi−way Relayによる情報交換を実施するタイミングやその際に用いるリソース、どのような情報を交換するか、リレー局となる基地局(マクロ基地局であるかピコ基地局であるか)等に関する制御情報が通知され、それらの情報に従って各フェムト基地局はMulti−way Relayによる情報交換を行うこととなる。このようにMulti−way Relayを実施するための制御情報はリレー局となる基地局(マクロ基地局やピコ基地局等)にも通知される。
【0098】
また、Multi−way Relayによる情報交換を、マクロ基地局やピコ基地局からの指示情報に基づいて行うようにしてもよい。この場合には、例えば、マクロ基地局やピコ基地局が、自セル内に位置する複数のフェムト基地局に、Multi−way Relayによる情報交換を指示する情報を通知し、その指示情報を受け取った複数のフェムトセルが指示情報に従って、Multi−way Relayを行うといったこととなる。その指示情報には、Multi−way Relayを実施するタイミングやその際に用いるリソース、どのような情報を交換するか等に関する制御情報が通知される。また、この場合には、指示情報を通知した基地局がリレー局として動作する構成としてもよい。
【0099】
または、いずれかのフェムト基地局が、Multi−way Relayによる情報交換の開始を主導するようにしてもよい。これは、例えば、まず第1のフェムト基地局104が、他のフェムト基地局(第2、第3のフェムト基地局105、106)との情報交換を希望する旨を第1のピコ基地局101へ通知し、第1のピコ基地局101がリレー局として動作して、その旨を第2、第3のフェムト基地局105、106に通知する。第2、第3のフェムト基地局105、106も情報交換を希望する場合には、その旨を第1のピコ基地局101に返送する。その際に、複数のフェムト基地局が同時にピコ基地局への返送を行ってもよいし、ピコ基地局から通知された番号に従って、各フェムト基地局が順番に、Multi−way Relayによる情報交換を希望する旨の通知を行うようにしてもよい。このような情報を受けた第1のピコ基地局101は、それらのフェムト基地局間での情報交換を行うタイミングやリソースに関する情報を各フェムト基地局に通知する。そして、各フェムト基地局は、第1のピコ基地局101から通知された情報に従って(通知されたリソースを用いて)、Multi−way Relayによる情報交換を実施する。また、このようなMulti−way Relayを行う場合に、それぞれの基地局で送信電力の制御を行うようにしてもよい。この送信電力制御は、例えば、ピコ基地局で信号が受信される際の受信電力が同程度になるように行ってもよく、ピコ基地局が各フェムト基地局の送信電力を制御するようにしてもよい。
【0100】
このように、Multi−way Relayをセルラシステムの基地局間のデータ交換に適用することにより、フェムト基地局間のように有線ネットワーク経由での適応的な情報共有が難しい基地局同士においても、効率良くデータ交換を行うことが可能となり、有効な情報共有を実現することができる。
【0101】
本実施形態では、フェムト基地局間でのデータ交換を例として説明したが、これに限らず、ピコ基地局間のデータ交換を、マクロ基地局をリレー局として利用することにより行うようにしてもよい。また、マクロ基地局と複数のフェムト基地局の間でのデータ交換を、ピコ基地局をリレー局として利用して行ってもよい。また、本実施形態のように、セルラシステムにMulti−way Relayを適用する場合には、必ずしも2つの時間スロットでデータ交換を行う必要はなく、2つ以上の時間スロットを用いるようにしてもよい。
【0102】
(第4の実施形態)
第3の実施形態では、Multi−way Relayをセルラシステムの基地局間のデータ交換に適用する例を示したが、本実施形態では、別のシステムへの適用例について述べる。
【0103】
まず、無線LANシステムへの適用について述べる。無線LANシステムへ適用する場合、データ交換を行う無線LAN端末は図2に示す通信装置、無線LANシステムのアクセスポイント(AP)は図2のリレー局として動作することとなる。また、APがなく、アドホックモードで動作する場合には、いずれかの端末がリレー局として動作してもよい。
【0104】
無線LANシステムにおいてMulti−way Relayによるデータ交換を行う場合には、まず、いずれかの無線LAN端末が、他の複数の無線LAN端末とのデータ交換を希望する旨をAPへ通知し、APがリレー局として動作して、その旨を他の複数の無線LAN端末に通知する。他の複数の無線LAN端末も情報交換を希望する場合には、その旨をAPに返送する。その際に、複数の無線LAN端末が同時にAPへの返送を行ってもよいし、APから通知された番号に従って、各無線LAN端末が順番に、Multi−way Relayによる情報交換を希望する旨の通知を行うようにしてもよい。このような情報を受けたAPは、それらの無線LAN端末間での情報交換を行うタイミングやリソース、パケットサイズ等に関する情報を各無線LAN端末に通知する。そして、無線LAN端末は、APから通知された情報に従って(通知されたリソースを用いて)、Multi−way Relayによるデータ交換を実施する。
【0105】
このような手順により、無線LANシステムにおいてもMulti−way Relayによるデータ交換を行うことが可能となり、複数の端末間のデータ交換を効率良く実現できる。このように、各端末が有するデータをできるだけ短い時間で効率良く交換することが必要となるアプリケーションとしては、例えば、無線LANを介して複数のプレイヤーが同時に参加するゲームが挙げられる。この場合、複数のプレイヤーがそれぞれ操作するゲーム機が端末となり、設置されたリレー局(AP)を介して、それぞれの操作結果を互いに通知し合うこととなる。特に、リアルタイム性が要求される内容のゲームを、3名以上のプレイヤーで行う場合には、Multi−way Relayによるデータ交換が非常に有効であると考えられる。
【0106】
また、無線LANシステムの他に、交通システム等にもMulti−way Relayによるデータ交換を適用することができる。これは、例えば、交差点にリレー局を設置しておき、交差点で停車中または走行中の複数の自動車間で様々なデータを交換するといった状況が考えられる。この場合には、交差点に設置されたリレー局がビーコンなどを送信し、複数の自動車に設置された通信装置がそのビーコンを受信して同期し、同期後に自身の有するデータを送信するといった手順により、Multi−way Relayによるデータ交換を開始することができる。
【0107】
混雑状況に関する情報や事故情報等、様々な方角から来る自動車から様々な情報をリアルタイムで取得して活用することにより、高度な道路交通システムを実現することができる。交通量の多い地点では、情報交換を行う対象となる自動車も多数となることから、Multi−way Relayによるデータ交換の適用が重要となる。
【0108】
上記の実施の形態において、添付図面に図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0109】
また、本実施の形態で説明した機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。尚、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0110】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
【0111】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また前記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、通信装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0113】
10…リレー局、11〜13…通信装置、20…アンテナ、21…無線部、22…A/D変換部、23…伝搬路推定部、24…ウェイト算出部、25…受信ウェイト乗算部、26…送信ウェイト乗算部、27…パイロット信号生成部、28…D/A変換部、29…無線部、30…アンテナ、40…アンテナ、41…無線部、42…A/D変換部、43…伝搬路推定部、44…ウェイト算出部、45…受信ウェイト乗算部、46…復調部、47…上位層、48…変調部、49…パイロット信号生成部、50…D/A変換部、51…無線部、52…アンテナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナを備えた3以上の通信装置が、同じリソースを用い、
複数のアンテナを備えたリレー局を介して、それぞれのデータ交換を行う無線通信システムであって、
第一の時間フレームにおいて前記各通信装置が前記リレー局へ信号を送信し、
前記第一の時間フレームにおいて送信された信号を受信した前記リレー局は、前記受信信号に基づく信号を前記第一の時間フレームとは異なる第二の時間フレームにおいて前記各通信装置へ送信することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記データ交換を行う前記各通信装置がそれぞれ送信する信号は、
自身以外の全ての通信装置にとって共通の希望信号であることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記リレー局が有するアンテナ数は、
前記データ交換を行う通信装置数よりも少ないことを特徴とする請求項1または2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記リレー局は、セルを制御する基地局装置であることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記リレー局は、複数の無線LAN端末の通信を制御するアクセスポイントであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項6】
複数のアンテナを備えた3以上の通信装置が、同じリソースを用い、
複数のアンテナを備えたリレー局を介して、それぞれのデータ交換を行う無線通信システムにおけるリレー局であって、
第一の時間フレームにおいて前記各通信装置が送信した信号を受信し、
前記受信信号に基づく信号を前記第一の時間フレームとは異なる第二の時間フレームにおいて前記各通信装置へ送信することを特徴とするリレー局。
【請求項7】
複数のアンテナを備えた3以上の通信装置が、同じリソースを用い、
複数のアンテナを備えたリレー局を介して、それぞれのデータ交換を行う無線通信システムにおける通信装置であって、
第一の時間フレームにおいてそれぞれの通信装置が前記リレー局へ信号を送信し、
前記第一の時間フレームにおいて送信された信号を受信した前記リレー局からの、前記受信信号に基づき、前記第一の時間フレームとは異なる第二の時間フレームにおいて各通信装置への送信された信号を受信することを特徴とする通信装置。
【請求項8】
複数のアンテナを備えた3以上の通信装置が、同じリソースを用い、
複数のアンテナを備えたリレー局を介して、それぞれのデータ交換を行う無線通信システムにおける通信方法であって、
第一の時間フレームにおいて前記各通信装置が前記リレー局へ信号を送信するステップと、
前記第一の時間フレームにおいて送信された信号を受信した前記リレー局が、前記受信信号に基づく信号を前記第一の時間フレームとは異なる第二の時間フレームにおいて前記各通信装置へ送信するステップと
を有することを特徴とする無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−31095(P2013−31095A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167088(P2011−167088)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】