無線通信システム、基地局、中継装置、および無線通信方法
【課題】中継装置に無線接続する移動局の通信状況に応じて、中継装置と基地局との間の無線回線容量を増加させる。
【解決手段】基地局12は、1以上の移動局のそれぞれと無線接続する中継装置と無線接続し、中継装置を介してそれら移動局と通信を行う。基地局12は、中継装置と基地局12との間の無線回線容量を増加させるよう中継装置から要求された場合に、その中継装置と同じタイミングで基地局12と無線通信を行う移動局のいずれかを制限対象として選定する制限対象選定部34と、制限対象として選定された移動局と基地局12との間の無線回線容量を減少させるとともに、その減少させた無線回線容量に応じた容量だけ中継装置と基地局12との間の無線回線容量を増加させる送信電力制御部36と、を含む。
【解決手段】基地局12は、1以上の移動局のそれぞれと無線接続する中継装置と無線接続し、中継装置を介してそれら移動局と通信を行う。基地局12は、中継装置と基地局12との間の無線回線容量を増加させるよう中継装置から要求された場合に、その中継装置と同じタイミングで基地局12と無線通信を行う移動局のいずれかを制限対象として選定する制限対象選定部34と、制限対象として選定された移動局と基地局12との間の無線回線容量を減少させるとともに、その減少させた無線回線容量に応じた容量だけ中継装置と基地局12との間の無線回線容量を増加させる送信電力制御部36と、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、基地局、中継装置、および無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋内や地下街など基地局からの電波が直接届きにくい場所には、基地局と移動局との間の通信を中継する中継装置(リピータ)が設置されることがある。これにより、移動局は中継装置を介して基地局に接続することが可能となり、基地局のサービスエリアが拡張される。
【0003】
ただし、複数の移動局が中継装置に無線接続すると、中継装置と基地局との間の無線回線容量がボトルネックとなり、それら移動局と基地局との間で送受されるデータの伝送効率が低下しやすくなる。このため、中継装置に無線接続する移動局の通信状況に応じて、中継装置と基地局との間の無線回線容量を増加させる技術が望まれている。
【0004】
この点、引用文献1には、接続先の基地局との通信チャネルの品質が劣化した場合に、ハンドオーバにより接続先の基地局を切り替える中継装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−61174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、引用文献1に記載された中継装置では、ハンドオーバを行うために周辺に2以上の基地局が存在することが必要となる上、ハンドオーバによるデータ伝送効率の低下が新たに問題となる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、中継装置に無線接続する移動局の通信状況に応じて、中継装置と基地局との間の無線回線容量を増加させることができる無線通信システム、基地局、中継装置、および無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る無線通信システムは、基地局と、前記基地局および1以上の移動局のそれぞれと無線接続し、前記基地局と前記1以上の移動局との間の通信を中継する中継装置と、を含む無線通信システムであって、前記中継装置は、前記1以上の移動局の通信状況に基づいて、当該中継装置と前記基地局との間の無線回線容量を増加させるよう要求する容量増加要求を前記基地局に送信する要求手段を含み、前記基地局は、前記中継装置からの前記容量増加要求に応じて、前記中継装置と同じタイミングで当該基地局と無線通信を行う移動局のいずれかを制限対象として選定する選定手段と、前記制限対象として選定された移動局と当該基地局との間の無線回線容量を減少させるとともに、該減少させた無線回線容量に応じた容量だけ前記中継装置と当該基地局との間の無線回線容量を増加させる回線容量制御手段と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明では、基地局が、中継装置からの容量増加要求に応じて、中継装置と同じタイミングで自局と無線通信を行う移動局のいずれかとの間の無線回線容量を減少させることにより、中継装置との間の無線回線容量の増分を優先的に確保する。このため、中継装置に無線接続する移動局の通信状況に応じて、中継装置と基地局との間の無線回線容量を増加させることができる。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記要求手段は、前記中継装置と前記1以上の移動局との間の無線回線容量と、前記中継装置と前記基地局との間の無線回線容量と、の比較結果に基づいて、前記容量増加要求を前記基地局に送信してもよい。
【0011】
この態様によれば、中継装置と移動局との間の無線回線容量と、中継装置と基地局との間の無線回線容量と、の間の不均衡が是正されるため、中継装置に無線接続する移動局と基地局との間で送受されるデータの伝送効率の低下を抑制することができる。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記選定手段は、前記中継装置と同じタイミングで前記基地局と無線通信を行う移動局のうち、前記基地局との間の無線回線容量が所定容量以上である移動局の少なくとも1つを前記制限対象として選定してもよい。
【0013】
この態様によれば、中継装置と同じタイミングで行われている基地局と移動局との無線通信の切断を防ぎつつ、基地局と中継装置との間の無線回線容量を増加させることができる。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記中継装置は、前記基地局から当該中継装置に送信される下り信号の受信品質を前記基地局に通知する手段をさらに含み、前記基地局は、前記中継装置から通知される前記下り信号の受信品質に基づいて、前記中継装置に送信される下り信号の変調方式を決定する変調方式決定手段をさらに含み、前記回線容量制御手段は、前記制限対象として選定された移動局に送信される下り信号の送信電力を減少させるとともに、該減少させた送信電力に応じた電力だけ前記中継装置に送信される下り信号の送信電力を増加させてもよい。
【0015】
この態様によれば、下り信号の送信電力配分を調整することによって、中継装置と基地局との間の無線回線容量を増加させることができる。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記回線容量制御手段は、前記制限対象として選定された移動局に対する無線チャネルの割り当てを減少させるとともに、該減少させた無線チャネルの割り当てに応じた量だけ前記中継装置に対する無線チャネルの割り当てを増加させてもよい。
【0017】
この態様によれば、無線チャネルの割り当て配分を調整することによって、中継装置と基地局との間の無線回線容量を増加させることができる。
【0018】
また、本発明に係る基地局は、1以上の移動局のそれぞれと無線接続する中継装置と無線接続し、前記中継装置を介して前記1以上の移動局と通信を行う基地局であって、前記中継装置と当該基地局との間の無線回線容量を増加させるよう前記中継装置から要求された場合に、前記中継装置と同じタイミングで当該基地局と無線通信を行う移動局のいずれかを制限対象として選定する選定手段と、前記制限対象として選定された移動局と当該基地局との間の無線回線容量を減少させるとともに、該減少させた無線回線容量に応じた容量だけ前記中継装置と当該基地局との間の無線回線容量を増加させる回線容量制御手段と、を含むことを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る中継装置は、基地局および1以上の移動局のそれぞれと無線接続し、前記基地局と前記1以上の移動局との間の通信を中継する中継装置であって、当該中継装置からの容量増加要求に応じて、当該中継装置と同じタイミングで前記基地局と無線通信を行う移動局のいずれかを制限対象として選定する選定手段と、前記制限対象として選定された移動局と前記基地局との間の無線回線容量を減少させるとともに、該減少させた無線回線容量に応じた容量だけ当該中継装置と前記基地局との間の無線回線容量を増加させる回線容量制御手段と、を含む前記基地局に対して、前記1以上の移動局の通信状況に基づいて、前記容量増加要求を送信する要求手段を含むことを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る無線通信方法は、基地局と、前記基地局および1以上の移動局のそれぞれと無線接続し、前記基地局と前記1以上の移動局との間の通信を中継する中継装置と、を含む無線通信システムにおける無線通信方法であって、前記中継装置が、前記1以上の移動局の通信状況に基づいて、当該中継装置と前記基地局との間の無線回線容量を増加させるよう要求する容量増加要求を前記基地局に送信するステップと、前記基地局が、前記中継装置からの前記容量増加要求に応じて、前記中継装置と同じタイミングで当該基地局と無線通信を行う移動局のいずれかを制限対象として選定するステップと、前記基地局が、前記制限対象として選定された移動局と当該基地局との間の無線回線容量を減少させるとともに、該減少させた無線回線容量に応じた容量だけ前記中継装置と当該基地局との間の無線回線容量を増加させるステップと、を含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る無線通信システムの構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係るTDDフレーム構成の一例を示す図である。
【図3A】基地局から送信される下り信号の送信電力(送信スペクトラム)の一例を示す図である。
【図3B】図3Aに示す送信電力で送信された下り信号の受信電力(受信スペクトラム)の一例を示す図である。
【図4A】中継装置からの高速モード要求に応じて基地局から送信される下り信号の送信電力の一例を示す図である。
【図4B】図4Aに示す送信電力で送信された下り信号の受信電力の一例を示す図である。
【図5】本実施形態に係る基地局の機能ブロック図である。
【図6】CNRと変調方式との対応関係を定義したテーブルの一例を示す図である。
【図7】本実施形態に係る基地局における無線回線容量の調整処理の一例を示す図である。
【図8】本実施形態に係る中継装置の機能ブロック図である。
【図9】本実施形態に係る中継装置における高速モード要求処理の一例を示す図である。
【図10】本実施形態に係る基地局におけるスロット(無線チャネル)の割り当て配分の調整処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る無線通信システム10の構成を示す図である。図1に示すように、無線通信システム10は、基地局12と、複数の移動局14と、基地局12のカバーエリア18−1内に設置された中継装置16と、を含んで構成される。
【0024】
基地局12は、OFDMA方式およびTDMA/TDD方式により、自局のカバーエリア18−1内に位置する移動局14(ここでは移動局14−1〜14−5)および中継装置16のそれぞれと無線通信を行う。なお、移動局14には、携帯電話機、通信カード、通信機能を内蔵した携帯情報端末などが該当する。
【0025】
中継装置16は、基地局12と無線接続するとともに、自装置のカバーエリア18−2内に位置する移動局14(ここでは移動局14−6,14−7)と無線接続する。そして、中継装置16は、基地局12に対しては移動局として動作し、移動局14に対しては基地局として動作することにより、基地局12とカバーエリア18−2内に位置する移動局14との間の通信を中継する。これにより、中継装置16のカバーエリア18−2内に位置する移動局14は、中継装置16を介して基地局12に接続することが可能となる。つまり、基地局12のサービスエリアがカバーエリア18−1とカバーエリア18−2とを合わせた範囲に拡張される。
【0026】
図2は、無線通信システム10におけるTDDフレーム構成の一例を示す図である(横軸:シンボル(時間)、縦軸:サブチャネル(周波数))。図2に示すように、無線通信システム10では、1つのTDDフレームに、基地局12が移動局14および/または中継装置16に無線信号を送信する下りサブフレームと、基地局12が移動局14および/または中継装置16から送信された無線信号を受信する上りサブフレームと、基地局12が送信から受信に切り替えるためのガード時間TTG(Transmit Transition Gap)と、基地局12が受信から送信に切り替えるためのガード時間RTG(Receive Transition Gap)と、が設けられている。
【0027】
基地局12が移動局14または中継装置16に割り当てる無線チャネルの最小単位は、「スロット」と呼ばれ、各スロットは、周波数方向に定められた複数のサブチャネルのいずれかと、時間方向に定められた複数のOFDMシンボルのいずれかと、に属する。なお、複数のサブチャネルは、それぞれ複数のサブキャリアから構成されている。
【0028】
このうち、上りサブフレームのスロットは、上りデータ伝送用として移動局14または中継装置16に割り当てられるデータ・バースト(ここでは上りバースト#1〜6)、レンジングサブチャネルなどとして用いられる。
【0029】
一方、下りサブフレームのスロットは、下りデータ伝送用として移動局14または中継装置16に割り当てられるデータ・バースト(ここでは下りバースト#1〜6)、プリアンブル、FCH(Frame Control Header:フレーム制御ヘッダ)、下りサブフレームにおけるスロット割り当てを示すDL−MAP(Downlink Map)、上りサブフレームにおけるスロット割り当てを示すUL−MAP(Uplink Map)などとして用いられる。基地局12は、DL−MAPおよびUL−MAPによって、スロットの割り当てを1フレームごとに変更することができる。
【0030】
なお、基地局として動作する中継装置16とその中継装置16に無線接続する移動局14との間でも、図2に示すTDDフレーム構成と同様のTDDフレーム構成が用いられる。
【0031】
以下では、図2に示すように、上りバースト#1および下りバースト#1が移動局14−1に、上りバースト#2および下りバースト#2が中継装置16に、それぞれ割り当てられており、移動局14−1が中継装置16と同じタイミングで基地局12と無線通信を行っているものとする。
【0032】
図3Aは、下りバースト#1,#2を介して、基地局12から移動局14および中継装置16にそれぞれ送信される下り信号の送信電力(送信スペクトラム)の一例を示す図である。図3Aに示す例では、全サブキャリアで送信電力が一定であり(バースト平均電力がPa[dBm])、移動局14−1に送信される下り信号の送信電力と中継装置16に送信される下り信号の送信電力とは等しい。
【0033】
図3Bは、図3Aに示す送信電力で送信された下り信号の移動局14および中継装置16における受信電力(受信スペクトラム)の一例を示す図である。中継装置16は移動局14−1よりも基地局12から離れた場所に設置されているため(図1参照)、基地局12から送信された下り信号の中継装置16における受信電力は、移動局14−1におけるそれよりも低い。また、中継装置16における下り信号のCNR(Carrier to Noise Ratio:搬送波対雑音電力比、受信品質の指標の1つ)も、移動局14−1におけるそれより低い。
【0034】
下り信号のCNRが低下すると、下り信号に伝送効率の低い変調方式を適用せざるを得なくなり、下り回線容量が低下する。このため、複数の移動局14が中継装置16に無線接続すると、中継装置16と基地局12との間の下り回線容量がボトルネックとなって、基地局12からそれら移動局14に送信されるデータの伝送効率が低下しやすくなる。
【0035】
そこで無線通信システム10では、このような場合に、基地局12が、中継装置16からの要求(高速モード要求)に応じて、中継装置16と同じタイミングで自局と無線通信を行う移動局14のいずれか(ここでは移動局14−1)との間の下り回線容量を減少させることにより、中継装置16との間の下り回線容量の増分を優先的に確保する。
【0036】
たとえば、中継装置16と移動局14−6,14−7との間の下り回線容量が中継装置16と基地局12との間の下り回線容量を大きく上回った場合、基地局12は、中継装置16からの高速モード要求に応じて、図4Aに示すように、中継装置16と同じタイミングで自局と無線通信を行う移動局14−1に送信する下り信号の送信電力を低下させるとともに、その減少させた送信電力に応じた電力だけ中継装置16に送信する下り信号の送信電力を増加させる(バースト平均電力はPa[dBm]に維持される)。
【0037】
これにより、図4Bに示すように、基地局12から送信された下り信号の中継装置16における受信電力が上昇し、中継装置16における下り信号のCNRも増大する。
【0038】
このように、無線通信システム10では、中継装置16と無線接続する1以上の移動局14の通信状況に応じて、中継装置16とそれら移動局14との間の下り回線容量と、中継装置16と基地局12との間の下り回線容量と、の間の不均衡が是正されるため、中継装置16を介して基地局12からそれら移動局14に送信されるデータの伝送効率の低下を抑制することができる。
【0039】
以下では、上記処理を実現するために基地局12および中継装置16が備える構成を具体的に説明する。
【0040】
[基地局12の構成]
図5は、基地局12の機能ブロック図である。図5に示すように、基地局12は、アンテナ20、受信部22、復調部24、制御部26(メッセージ解析部28、チャネル割当部30、変調方式決定部32、制限対象選定部34、送信電力制御部36、メッセージ生成部38)、記憶部40、変調部42、および送信部44を含んで構成される。
【0041】
アンテナ20は、移動局14および/または中継装置16から送信される無線信号を受信し、受信された無線信号を受信部22に出力する。また、アンテナ20は、送信部44から供給される無線信号を移動局14および/または中継装置16に対して送信する。なお、無線信号の受信および送信は、図2に示す上りサブフレームおよび下りサブフレームにそれぞれ対応するよう、時分割で切り替えられる。
【0042】
受信部22は、低雑音増幅器、周波数変換器、帯域通過フィルタ、およびA/D変換器を含んで構成される。受信部22は、アンテナ20から入力される無線信号を、低雑音増幅器で増幅した後、中間周波数信号にダウンコンバートし、さらにデジタル信号に変換してから、復調部24に出力する。
【0043】
復調部24は、FFT(Fast Fourier Transform)部、直並列変換器、並直列変換器、および誤り検出部を含んで構成される。復調部24は、受信部22から入力されるデジタル信号に、直並列変換、GI(Guard Interval)の除去、1次復調(高速フーリエ変換)、並直列変換、時分割分離処理、2次復調(シンボルデマッピング)、復号、誤り検出などを施し、得られた受信データを制御部26に出力する。
【0044】
制御部26は、たとえばCPUおよびCPUの動作を制御するプログラムで構成され、基地局12の各部を制御する。特に、制御部26は、メッセージ解析部28、チャネル割当部30、変調方式決定部32、制限対象選定部34、送信電力制御部36、およびメッセージ生成部38を機能的に含み、基地局12が送信する下り信号の変調方式および送信電力の制御などを行う。
【0045】
記憶部40は、たとえば半導体メモリ素子で構成され、基地局12の動作に必要となるプログラム、データ、図6に示すテーブルなどを記憶する。なお、図6は、CNRと変調方式との対応関係を定義したテーブルの一例を示す図である。
【0046】
ここで、制御部26の機能的構成をより詳細に説明する。
【0047】
メッセージ解析部28は、図2に例示する上りサブフレームの構成に基づいて、復調部24から入力される受信データに含まれる移動局14および/または中継装置16からの各種メッセージを識別し、そのメッセージの内容を解析する。たとえば、メッセージ解析部28は、移動局14および/または中継装置16からの接続要求メッセージを識別し、その接続要求メッセージからその送信元が移動局14および中継装置16のいずれであるかを区別するための端末IDを取得する。また、メッセージ解析部28は、中継装置16からの高速モード要求を含むメッセージを識別する。この高速モード要求は、中継装置16と基地局12との間の無線回線容量を増加させるよう要求する容量増加要求である。また、メッセージ解析部28は、復調部24から入力される受信データの中から、移動局14および/または中継装置16で検出された下り信号(下りバーストを介して基地局12から移動局14および/または中継装置16に送信される無線信号)のCNRを取得する。
【0048】
チャネル割当部30は、移動局14および/または中継装置16に対して、スロット(無線チャネル)を割り当てる。すなわち、チャネル割当部30は、下りサブフレームに含まれるスロットの少なくとも1つを下りバーストとして、上りサブフレームに含まれるスロットの少なくとも1つを上りバーストとして、移動局14および/または中継装置16に割り当てる。このとき、チャネル割当部30は、移動局14および/または中継装置16が送受するデータの量や通信種別に応じた優先度などに基づいて、それらに割り当てる下りバーストおよび上りバーストを決定してもよい。
【0049】
変調方式決定部32は、移動局14および/または中継装置16から通知される下り信号(下りバーストを介して基地局12から移動局14および/または中継装置16に送信される無線信号)のCNRに基づいて、次フレーム(またはそれ以降)における下りバーストの変調方式を決定する。また、変調方式決定部32は、上り信号(上りバーストを介して移動局14および/または中継装置16から基地局12に送信される無線信号)のCNRに基づいて、次フレーム(またはそれ以降)における上りバーストの変調方式を決定する。
【0050】
この変調方式の決定には、たとえば、記憶部40に記憶されている、CNRと変調方式との対応関係(高いCNRには伝送効率の高い変調方式が対応し、低いCNRには伝送効率の低い変調方式が対応している)を定義したテーブル(図6参照)が用いられる。なお、CNRの代わりに、RSSI(Received Signal Strength Indication:受信信号強度)、SINR(Signal to Interference and Noise Ratio:信号対干渉および雑音電力比)、FER(Frame Error Rate:フレーム誤り率)などの他の受信品質を用いてもよい。これらの受信品質は、復調部24での1次復調(高速フーリエ変換)により得られる複素シンボル列、復調部24での誤り検出の結果、移動局14および/または中継装置16からフィードバックされる情報などから取得することができる。
【0051】
制限対象選定部34は、中継装置16からの高速モード要求に応じて、中継装置16と同じタイミングで基地局12と無線通信を行う移動局14のいずれかを制限対象として選定する。ここで、制限対象選定部34は、中継装置16と同じタイミングで基地局12と無線通信を行う移動局14のうち、基地局12との間の無線回線容量が所定容量以上である移動局14を制限対象として選定してもよい。
【0052】
たとえば、制限対象選定部34は、中継装置16と同じタイミングで基地局12と無線通信を行う移動局14のうち、基地局12に割り当てられた下りバーストの変調方式が変調効率最下位の変調方式(図6に示す例ではQPSK)ではないものを制限対象として選定してもよい。なお、制限対象の候補が複数ある場合、制限対象選定部34は、より伝送効率の高い変調方式の下りバーストが割り当てられた移動局14を制限対象として選定することが好ましい。
【0053】
送信電力制御部36は、制限対象選定部34により制限対象として選定された移動局14と基地局12との間の無線回線容量を減少させるとともに、その減少させた無線回線容量に応じた容量だけ中継装置16と基地局12との間の無線回線容量を増加させる。具体的には、送信電力制御部36は、中継装置16からの高速モード要求に応じて、制限対象として選定された移動局14に送信される下り信号の送信電力を減少させるとともに、その減少させた送信電力に応じた電力だけ中継装置16に送信される下り信号の送信電力を増加させるよう、送信部44を制御する。
【0054】
なお、調整の前後でバースト平均電力が一定となるよう下り信号の送信電力を増減させれば、送信部44における信号の線形性が維持されやすくなる。また、下り信号の送信電力の減少量および増加量は、予め定められた固定値であってもよいし、基地局12と移動局14および/または中継装置16との間で送受されるデータの量に応じた可変値であってもよい。
【0055】
メッセージ生成部38は、移動局14および/または中継装置16宛ての制御メッセージや送信データを生成し、それらが図2に例示する下りサブフレームの構成に基づいて送信されるよう変調部42に出力する。たとえば、メッセージ生成部38は、チャネル割当部30で決定された下りバーストを示すDL−MAP、チャネル割当部30で決定された上りバーストを示すUL−MAP、変調方式決定部32で決定された下りバーストの変調方式、変調方式決定部32で決定された上りバーストの変調方式などを含む制御メッセージを生成し、変調部42に出力する。
【0056】
変調部42は、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)部、直並列変換器、並直列変換器、および符号化回路を含んで構成される。変調部42は、制御部26から入力される移動局14および/または中継装置16宛ての制御メッセージや送信データに、誤り検出符号の付加、符号化、1次変調(シンボルマッピング)、時分割多重処理、直並列変換、2次変調(逆高速フーリエ変換)、GIの付加、並直列変換などを施し、得られたデジタル信号を送信部44に出力する。
【0057】
送信部44は、電力増幅器、周波数変換器、帯域通過フィルタ、およびD/A変換器を含んで構成される。送信部44は、変調部42から入力されるデジタル信号を、アナログ信号に変換した後、無線信号にアップコンバートし、電力増幅器で送信出力レベルまで増幅してから、アンテナ20に供給する。
【0058】
[基地局12の動作]
次に、図7に基づいて、基地局12の動作の一部を説明する。図7は、基地局12における無線回線容量の調整処理の一例を示す図である。本処理は、中継装置16との無線通信が開始された後に実行される。
【0059】
図7に示すように、まず基地局12は、中継装置16から通知される下り信号(基地局12から中継装置16に送信された無線信号)のCNRを取得する(S100)。次に、基地局12は、中継装置16に割り当てる下りバーストを決定するとともに、S100で取得された下り信号のCNRに基づいてその下りバーストを介して中継装置16に送信する下り信号の変調方式を決定する(S102)。
【0060】
ここで、中継装置16から高速モードの要求があれば(S104:Y)、基地局12は、中継装置16と同じタイミングで基地局12と無線通信を行っている移動局14があるか否かを確認する(S106)。中継装置16と同じタイミングで基地局12と無線通信を行っている移動局14があれば(S106:Y)、基地局12は、その移動局14(制限対象の候補)に送信する下り信号の変調方式を取得し、その変調方式が伝送効率が最下位の変調方式であるか否かを確認する(S108)。そして、その変調方式が伝送効率最下位の変調方式でなければ(S108:N)、基地局12は、その移動局14の少なくとも1つを制限対象として選定し、制限対象として選定された移動局14に送信する下り信号の送信電力を減少させる(S110)。
【0061】
その後、基地局12は、S110で減少させた送信電力に応じた電力だけ中継装置16に送信する下り信号の送信電力を増加させる(S112)。なお、中継装置16と同じタイミングで基地局12と無線通信を行っている移動局14がない場合(S106:N)、基地局12は、平均送信電力の上限を超えない範囲で、中継装置16に送信する下り信号の送信電力を増加させる(S112)。
【0062】
S112の後または中継装置16から高速モードの要求がない場合(S104:N)、基地局12は、中継装置16との通信が終了するまでS100からの処理を繰り返し実行する(S114)。これにより、中継装置16からの高速モード要求に応じて、基地局12から送信される下り信号の中継装置16における受信電力が上昇し、中継装置16における下り信号のCNRも増大する。その結果、基地局12から中継装置16に送信される下り信号の変調方式が伝送効率のより高いものに変更されると、中継装置16と基地局12との間の下り回線容量も増加する。
【0063】
[中継装置16の構成]
図8は、中継装置16の機能ブロック図である。図8に示すように、中継装置16は、アンテナ50−1,50−2、送受信部52−1,52−2、変復調部54−1,54−2、制御部56(メッセージ解析部58、チャネル割当部60、変調方式決定部62、回線容量算出部64、高速モード要求部66、メッセージ生成部68)、および記憶部70を含んで構成される。
【0064】
このうち、アンテナ50−1、送受信部52−1、および変復調部54−1は、基地局12との無線通信に用いられる構成(中継装置16が基地局12に対して移動局として動作するための構成)であり、アンテナ50−2、送受信部52−2、および変復調部54−2は、移動局14との無線通信に用いられる構成(中継装置16が移動局14に対して基地局として動作するための構成)である。
【0065】
つまり、基地局12から送信された無線信号は、アンテナ50−1で受信され、送受信部52−1、変復調部54−1、制御部56、変復調部54−2、および送受信部52−2を介して、アンテナ50−2から中継装置16に無線接続している移動局14に対して送信される。逆に、中継装置16に無線接続している移動局14から送信された無線信号は、アンテナ50−2で受信され、送受信部52−2、変復調部54−2、制御部56、変復調部54−1、および送受信部52−1を介して、アンテナ50−1から中継装置16が無線接続している基地局12に対して送信される。
【0066】
アンテナ50−1,50−2は、基地局12および移動局14から送信される無線信号を受信し、受信された無線信号を送受信部52−1,52−2にそれぞれ出力する。また、アンテナ50−1,50−2は、送受信部52−1,52−2から供給される無線信号を基地局12および移動局14に対してそれぞれ送信する。なお、アンテナ50−1による無線信号の受信および送信(アンテナ50−2による無線信号の受信および送信)は、時分割で切り替えられる。
【0067】
送受信部52−1,52−2は、低雑音増幅器、電力増幅器、周波数変換器、帯域通過フィルタ、A/D変換器、およびD/A変換器を含んで構成される。送受信部52−1,52−2は、アンテナ50−1,50−2から入力される無線信号を、低雑音増幅器で増幅した後、中間周波数信号にダウンコンバートし、さらにデジタル信号に変換してから、変復調部54−1,54−2にそれぞれ出力する。また、送受信部52−1,52−2は、変復調部54−1,54−2から入力されるデジタル信号を、アナログ信号に変換した後、無線信号にアップコンバートし、電力増幅器で送信出力レベルまで増幅してから、アンテナ50−1,50−2にそれぞれ供給する。
【0068】
変復調部54−1,54−2は、FFT部、IFFT部、直並列変換器、並直列変換器、誤り検出部、および符号化回路を含んで構成される。変復調部54−1,54−2は、送受信部52−1,52−2からそれぞれ入力されるデジタル信号に、直並列変換、GIの除去、1次復調(高速フーリエ変換)、並直列変換、時分割分離処理、2次復調(シンボルデマッピング)、復号、誤り検出などを施し、得られた受信データを制御部56に出力する。変調部42は、制御部56から入力される基地局12および移動局14宛ての制御メッセージや送信データに、誤り検出符号の付加、符号化、1次変調(シンボルマッピング)、時分割多重処理、直並列変換、2次変調(逆高速フーリエ変換)、GIの付加、並直列変換などを施し、得られたデジタル信号を送受信部52−1,52−2にそれぞれ出力する。
【0069】
制御部56は、たとえばCPUおよびCPUの動作を制御するプログラムで構成され、中継装置16の各部を制御する。特に、制御部56は、メッセージ解析部58、チャネル割当部60、変調方式決定部62、回線容量算出部64、高速モード要求部66、およびメッセージ生成部68を機能的に含み、基地局12と中継装置16との間の無線回線容量を増加させるよう基地局12に要求するための処理、中継装置16に無線接続する1以上の移動局14と基地局12との間の通信を中継するための制御、などを行う。
【0070】
記憶部70は、たとえば半導体メモリ素子で構成され、中継装置16の動作に必要となるプログラム、データ、図6に示すテーブルなどを記憶する。
【0071】
ここで、制御部56の機能的構成をより詳細に説明する。
【0072】
メッセージ解析部58は、図2に例示するような上りサブフレームの構成に基づいて、変復調部54−1,54−2から入力される受信データに含まれる基地局12および移動局14からの各種メッセージをそれぞれ識別し、そのメッセージの内容を解析する。たとえば、メッセージ解析部58は、変復調部54−1から入力される受信データの中から基地局12からの制御メッセージを識別し、その制御メッセージより基地局12から割り当てられた下りバーストとその下りバーストを介して基地局12から送信される下り信号の変調方式を取得する。また、メッセージ解析部58は、変復調部54−2から入力される受信データの中から、移動局14で検出された下り信号(中継装置16が移動局14に割り当てた下りバーストを介して、中継装置16からその移動局14に送信される無線信号)のCNRを取得する。
【0073】
チャネル割当部60は、中継装置16に無線接続している移動局14に対して、スロット(無線チャネル)を割り当てる。すなわち、チャネル割当部60は、下りサブフレームに含まれるスロットの少なくとも1つを下りバーストとして、上りサブフレームに含まれるスロットの少なくとも1つを上りバーストとして、移動局14に割り当てる。このとき、チャネル割当部60は、移動局14が送受するデータの量や通信種別に応じた優先度などに基づいて、その移動局14に割り当てる下りバーストおよび上りバーストを決定してもよい。
【0074】
変調方式決定部62は、移動局14から通知される下り信号(中継装置16が移動局14に割り当てた下りバーストを介して、中継装置16からその移動局14に送信される無線信号)のCNRに基づいて、次フレーム(またはそれ以降)における下りバーストの変調方式を決定する。また、変調方式決定部62は、上り信号(中継装置16が移動局14に割り当てた上りバーストを介して、その移動局14から中継装置16に送信される無線信号)のCNRに基づいて、次フレーム(またはそれ以降)における上りバーストの変調方式を決定する。
【0075】
この変調方式の決定には、たとえば、記憶部70に記憶されている、CNRと変調方式との対応関係(高いCNRには伝送効率の高い変調方式が対応し、低いCNRには伝送効率の低い変調方式が対応している)を定義したテーブル(図6参照)が用いられる。なお、CNRの代わりに、RSSI、SINR、FERなどの他の受信品質を用いてもよい。
【0076】
回線容量算出部64は、中継装置16とその中継装置16に無線接続している1以上の移動局との間の無線回線容量と、中継装置16と基地局12との間の無線回線容量と、を算出する。たとえば、回線容量算出部64は、各移動局14に割り当てる下りバーストを構成するスロットの数と、その下りバーストを介して送信される下り信号の変調方式と、に基づいて、それら移動局14に送信する下り信号の伝送レート(移動局側伝送レート)を算出する。また、回線容量算出部64は、基地局12から割り当てられた下りバーストを構成するスロットの数と、その下りバーストを介して送信される下り信号の変調方式と、に基づいて、基地局12から送信される下り信号の伝送レート(基地局側伝送レート)を算出する。
【0077】
高速モード要求部66は、中継装置16とその中継装置16に無線接続している1以上の移動局との間の無線回線容量と、中継装置16と基地局12との間の無線回線容量と、の比較結果に基づいて、中継装置16と基地局12との間の無線回線容量を増加させるよう要求する高速モード要求(容量増加要求)を基地局12に送信する。
【0078】
たとえば、高速モード要求部66は、回線容量算出部64により算出された移動局側伝送レートと基地局側伝送レートとを比較し、移動局側伝送レートが基地局側伝送レートの所定係数倍を超えたタイミングで、高速モード要求を送信してもよい。こうすれば、中継装置16と移動局14との間の下り回線容量が中継装置16と基地局12との間の下り回線容量を大きく上回った場合に、それらの間の不均衡が是正されるため、中継装置16を介して基地局12からそれら移動局14に送信されるデータの伝送効率の低下を抑制することができる。
【0079】
メッセージ生成部68は、基地局12および移動局14宛ての制御メッセージや送信データを生成し、それらが図2に例示するような下りサブフレームの構成に基づいて送信されるよう変復調部54−1,54−2にそれぞれ出力する。たとえば、メッセージ生成部68は、高速モード要求を含む制御メッセージを生成し、変復調部54−1に出力する。また、メッセージ生成部68は、チャネル割当部60で決定された下りバーストを示すDL−MAP、チャネル割当部60で決定された上りバーストを示すUL−MAP、変調方式決定部62で決定された下りバーストの変調方式、変調方式決定部62で決定された上りバーストの変調方式などを含む制御メッセージを生成し、変復調部54−2に出力する。
【0080】
[中継装置16の動作]
次に、図9に基づいて、中継装置16の動作の一部を説明する。図9は、中継装置16における高速モード要求処理の一例を示す図である。
【0081】
図9に示すように、まず中継装置16は、中継装置16に無線接続している1以上の移動局14から通知される下り信号(中継装置16から移動局14に送信された無線信号)のCNRを取得する(S200)。次に、中継装置16は、各移動局14に割り当てる下りバーストを決定するとともに、S200で取得された下り信号のCNRに基づいてその下りバーストを介して各移動局14に送信する下り信号の変調方式を決定する(S202)。そして、中継装置16は、各移動局14に割り当てる下りバーストを構成するスロットの数と、その下りバーストを介して送信される下り信号の変調方式と、に基づいて、それら移動局14に送信する下り信号の伝送レート(移動局側伝送レート)を算出する(S204)。
【0082】
次に、中継装置16は、基地局12から割り当てられた下りバーストと、その下りバーストを介して送信される下り信号の変調方式と、を取得する(S206)。そして、中継装置16は、基地局12から割り当てられた下りバーストを構成するスロットの数と、その下りバーストを介して送信される下り信号の変調方式と、に基づいて、基地局12から送信される下り信号の伝送レート(基地局側伝送レート)を算出する(S208)。
【0083】
その後、中継装置16は、S204で算出された移動局側伝送レートと、S208で算出された基地局側伝送レートと、を比較し、その比較結果に基づいて、高速モードの要求が必要か否かを判断し(S210)、高速モードの要求が必要であると判断されると(S210:Y)、基地局12に対して高速モード要求を送信する(S212)。たとえば、中継装置16は、移動局側伝送レートが基地局側伝送レートの所定係数倍を超えている場合に、高速モードの要求が必要であると判断してもよい。
【0084】
以上説明した無線通信システム10によれば、基地局12が、中継装置16からの高速モード(容量増加要求)に応じて、中継装置16と同じタイミングで自局と無線通信を行う移動局14のいずれかとの間の下り回線容量を減少させることにより、中継装置16との間の下り回線容量の増分を優先的に確保する。このため、中継装置16に無線接続する1以上の移動局14の通信状況に応じて、中継装置16と基地局12との間の下り回線容量を増加させることができる。つまり、中継装置16とそれら移動局14との間の下り回線容量と、中継装置16と基地局12との間の下り回線容量と、の間の不均衡が是正されるため、中継装置16を介して基地局12からそれら移動局14に送信されるデータの伝送効率の低下を抑制することができる。
【0085】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0086】
たとえば、上記実施形態では、基地局12が下り信号の送信電力配分を調整することによって、中継装置16と基地局12との間の下り回線容量を増加させる例を示したが、基地局12がスロット(無線チャネル)の割り当て配分を調整することによって、中継装置16と基地局12との間の無線回線容量を増加させてもよい。
【0087】
図10は、基地局におけるスロット(無線チャネル)の割り当て配分の調整処理の一例を示す図である。
【0088】
図10に示すように、まず基地局12は、中継装置16から高速モード要求があった場合に、中継装置16に割り当て可能な空きスロットが存在するか否かを確認する(S300)。そして、中継装置16に割り当て可能な空きスロットが存在しなければ(S300:N)、基地局12は、中継装置16と同じタイミングで基地局12と無線通信を行っている移動局14があるか否かを確認する(S302)。ここで、中継装置16と同じタイミングで基地局12と無線通信を行っている移動局14があれば(S302:Y)、基地局12は、その移動局14(制限対象の候補)に割り当てるスロットの数を減らせるか否か(たとえば下りバーストおよび/または上りバーストが2以上のスロットから構成されているか否か)を確認する(S304)。
【0089】
そして、その移動局14に割り当てるスロットの数を減らせる場合(S304:Y)、基地局12は、その移動局14の少なくとも1つを制限対象として選定し、制限対象として選定された移動局14に割り当てるスロットの数を減少させる(S306)。
【0090】
こうして、中継装置16に割り当て可能な空きスロットが確保されると(S306またはS300:Y)、基地局12は、中継装置16に下りバーストおよび/または上りバーストとして割り当てるスロットの数を増加させる(S308)。
【0091】
このようにしても、中継装置16に無線接続する移動局14の通信状況に応じて、中継装置16と基地局12との間の無線回線容量を増加させることができる。
【0092】
なお、本発明は、OFDMA方式およびTDMA/TDD方式を採用する無線通信システムに限らず、基地局と中継装置とそれらに無線接続する複数の移動局とを含む無線通信システム全般に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0093】
10 無線通信システム、12 基地局、14 移動局、16 中継装置、18 カバーエリア、20,50 アンテナ、22 受信部、24 復調部、26,56 制御部、28,58 メッセージ解析部、30,60 チャネル割当部、32,62 変調方式決定部、34 制限対象選定部、36 送信電力制御部、38,68 メッセージ生成部、40,70 記憶部、42 変調部、44 送信部、52 送受信部、54 変復調部、64 回線容量算出部、66 高速モード要求部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、基地局、中継装置、および無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋内や地下街など基地局からの電波が直接届きにくい場所には、基地局と移動局との間の通信を中継する中継装置(リピータ)が設置されることがある。これにより、移動局は中継装置を介して基地局に接続することが可能となり、基地局のサービスエリアが拡張される。
【0003】
ただし、複数の移動局が中継装置に無線接続すると、中継装置と基地局との間の無線回線容量がボトルネックとなり、それら移動局と基地局との間で送受されるデータの伝送効率が低下しやすくなる。このため、中継装置に無線接続する移動局の通信状況に応じて、中継装置と基地局との間の無線回線容量を増加させる技術が望まれている。
【0004】
この点、引用文献1には、接続先の基地局との通信チャネルの品質が劣化した場合に、ハンドオーバにより接続先の基地局を切り替える中継装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−61174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、引用文献1に記載された中継装置では、ハンドオーバを行うために周辺に2以上の基地局が存在することが必要となる上、ハンドオーバによるデータ伝送効率の低下が新たに問題となる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、中継装置に無線接続する移動局の通信状況に応じて、中継装置と基地局との間の無線回線容量を増加させることができる無線通信システム、基地局、中継装置、および無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る無線通信システムは、基地局と、前記基地局および1以上の移動局のそれぞれと無線接続し、前記基地局と前記1以上の移動局との間の通信を中継する中継装置と、を含む無線通信システムであって、前記中継装置は、前記1以上の移動局の通信状況に基づいて、当該中継装置と前記基地局との間の無線回線容量を増加させるよう要求する容量増加要求を前記基地局に送信する要求手段を含み、前記基地局は、前記中継装置からの前記容量増加要求に応じて、前記中継装置と同じタイミングで当該基地局と無線通信を行う移動局のいずれかを制限対象として選定する選定手段と、前記制限対象として選定された移動局と当該基地局との間の無線回線容量を減少させるとともに、該減少させた無線回線容量に応じた容量だけ前記中継装置と当該基地局との間の無線回線容量を増加させる回線容量制御手段と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明では、基地局が、中継装置からの容量増加要求に応じて、中継装置と同じタイミングで自局と無線通信を行う移動局のいずれかとの間の無線回線容量を減少させることにより、中継装置との間の無線回線容量の増分を優先的に確保する。このため、中継装置に無線接続する移動局の通信状況に応じて、中継装置と基地局との間の無線回線容量を増加させることができる。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記要求手段は、前記中継装置と前記1以上の移動局との間の無線回線容量と、前記中継装置と前記基地局との間の無線回線容量と、の比較結果に基づいて、前記容量増加要求を前記基地局に送信してもよい。
【0011】
この態様によれば、中継装置と移動局との間の無線回線容量と、中継装置と基地局との間の無線回線容量と、の間の不均衡が是正されるため、中継装置に無線接続する移動局と基地局との間で送受されるデータの伝送効率の低下を抑制することができる。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記選定手段は、前記中継装置と同じタイミングで前記基地局と無線通信を行う移動局のうち、前記基地局との間の無線回線容量が所定容量以上である移動局の少なくとも1つを前記制限対象として選定してもよい。
【0013】
この態様によれば、中継装置と同じタイミングで行われている基地局と移動局との無線通信の切断を防ぎつつ、基地局と中継装置との間の無線回線容量を増加させることができる。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記中継装置は、前記基地局から当該中継装置に送信される下り信号の受信品質を前記基地局に通知する手段をさらに含み、前記基地局は、前記中継装置から通知される前記下り信号の受信品質に基づいて、前記中継装置に送信される下り信号の変調方式を決定する変調方式決定手段をさらに含み、前記回線容量制御手段は、前記制限対象として選定された移動局に送信される下り信号の送信電力を減少させるとともに、該減少させた送信電力に応じた電力だけ前記中継装置に送信される下り信号の送信電力を増加させてもよい。
【0015】
この態様によれば、下り信号の送信電力配分を調整することによって、中継装置と基地局との間の無線回線容量を増加させることができる。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記回線容量制御手段は、前記制限対象として選定された移動局に対する無線チャネルの割り当てを減少させるとともに、該減少させた無線チャネルの割り当てに応じた量だけ前記中継装置に対する無線チャネルの割り当てを増加させてもよい。
【0017】
この態様によれば、無線チャネルの割り当て配分を調整することによって、中継装置と基地局との間の無線回線容量を増加させることができる。
【0018】
また、本発明に係る基地局は、1以上の移動局のそれぞれと無線接続する中継装置と無線接続し、前記中継装置を介して前記1以上の移動局と通信を行う基地局であって、前記中継装置と当該基地局との間の無線回線容量を増加させるよう前記中継装置から要求された場合に、前記中継装置と同じタイミングで当該基地局と無線通信を行う移動局のいずれかを制限対象として選定する選定手段と、前記制限対象として選定された移動局と当該基地局との間の無線回線容量を減少させるとともに、該減少させた無線回線容量に応じた容量だけ前記中継装置と当該基地局との間の無線回線容量を増加させる回線容量制御手段と、を含むことを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る中継装置は、基地局および1以上の移動局のそれぞれと無線接続し、前記基地局と前記1以上の移動局との間の通信を中継する中継装置であって、当該中継装置からの容量増加要求に応じて、当該中継装置と同じタイミングで前記基地局と無線通信を行う移動局のいずれかを制限対象として選定する選定手段と、前記制限対象として選定された移動局と前記基地局との間の無線回線容量を減少させるとともに、該減少させた無線回線容量に応じた容量だけ当該中継装置と前記基地局との間の無線回線容量を増加させる回線容量制御手段と、を含む前記基地局に対して、前記1以上の移動局の通信状況に基づいて、前記容量増加要求を送信する要求手段を含むことを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る無線通信方法は、基地局と、前記基地局および1以上の移動局のそれぞれと無線接続し、前記基地局と前記1以上の移動局との間の通信を中継する中継装置と、を含む無線通信システムにおける無線通信方法であって、前記中継装置が、前記1以上の移動局の通信状況に基づいて、当該中継装置と前記基地局との間の無線回線容量を増加させるよう要求する容量増加要求を前記基地局に送信するステップと、前記基地局が、前記中継装置からの前記容量増加要求に応じて、前記中継装置と同じタイミングで当該基地局と無線通信を行う移動局のいずれかを制限対象として選定するステップと、前記基地局が、前記制限対象として選定された移動局と当該基地局との間の無線回線容量を減少させるとともに、該減少させた無線回線容量に応じた容量だけ前記中継装置と当該基地局との間の無線回線容量を増加させるステップと、を含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る無線通信システムの構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係るTDDフレーム構成の一例を示す図である。
【図3A】基地局から送信される下り信号の送信電力(送信スペクトラム)の一例を示す図である。
【図3B】図3Aに示す送信電力で送信された下り信号の受信電力(受信スペクトラム)の一例を示す図である。
【図4A】中継装置からの高速モード要求に応じて基地局から送信される下り信号の送信電力の一例を示す図である。
【図4B】図4Aに示す送信電力で送信された下り信号の受信電力の一例を示す図である。
【図5】本実施形態に係る基地局の機能ブロック図である。
【図6】CNRと変調方式との対応関係を定義したテーブルの一例を示す図である。
【図7】本実施形態に係る基地局における無線回線容量の調整処理の一例を示す図である。
【図8】本実施形態に係る中継装置の機能ブロック図である。
【図9】本実施形態に係る中継装置における高速モード要求処理の一例を示す図である。
【図10】本実施形態に係る基地局におけるスロット(無線チャネル)の割り当て配分の調整処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る無線通信システム10の構成を示す図である。図1に示すように、無線通信システム10は、基地局12と、複数の移動局14と、基地局12のカバーエリア18−1内に設置された中継装置16と、を含んで構成される。
【0024】
基地局12は、OFDMA方式およびTDMA/TDD方式により、自局のカバーエリア18−1内に位置する移動局14(ここでは移動局14−1〜14−5)および中継装置16のそれぞれと無線通信を行う。なお、移動局14には、携帯電話機、通信カード、通信機能を内蔵した携帯情報端末などが該当する。
【0025】
中継装置16は、基地局12と無線接続するとともに、自装置のカバーエリア18−2内に位置する移動局14(ここでは移動局14−6,14−7)と無線接続する。そして、中継装置16は、基地局12に対しては移動局として動作し、移動局14に対しては基地局として動作することにより、基地局12とカバーエリア18−2内に位置する移動局14との間の通信を中継する。これにより、中継装置16のカバーエリア18−2内に位置する移動局14は、中継装置16を介して基地局12に接続することが可能となる。つまり、基地局12のサービスエリアがカバーエリア18−1とカバーエリア18−2とを合わせた範囲に拡張される。
【0026】
図2は、無線通信システム10におけるTDDフレーム構成の一例を示す図である(横軸:シンボル(時間)、縦軸:サブチャネル(周波数))。図2に示すように、無線通信システム10では、1つのTDDフレームに、基地局12が移動局14および/または中継装置16に無線信号を送信する下りサブフレームと、基地局12が移動局14および/または中継装置16から送信された無線信号を受信する上りサブフレームと、基地局12が送信から受信に切り替えるためのガード時間TTG(Transmit Transition Gap)と、基地局12が受信から送信に切り替えるためのガード時間RTG(Receive Transition Gap)と、が設けられている。
【0027】
基地局12が移動局14または中継装置16に割り当てる無線チャネルの最小単位は、「スロット」と呼ばれ、各スロットは、周波数方向に定められた複数のサブチャネルのいずれかと、時間方向に定められた複数のOFDMシンボルのいずれかと、に属する。なお、複数のサブチャネルは、それぞれ複数のサブキャリアから構成されている。
【0028】
このうち、上りサブフレームのスロットは、上りデータ伝送用として移動局14または中継装置16に割り当てられるデータ・バースト(ここでは上りバースト#1〜6)、レンジングサブチャネルなどとして用いられる。
【0029】
一方、下りサブフレームのスロットは、下りデータ伝送用として移動局14または中継装置16に割り当てられるデータ・バースト(ここでは下りバースト#1〜6)、プリアンブル、FCH(Frame Control Header:フレーム制御ヘッダ)、下りサブフレームにおけるスロット割り当てを示すDL−MAP(Downlink Map)、上りサブフレームにおけるスロット割り当てを示すUL−MAP(Uplink Map)などとして用いられる。基地局12は、DL−MAPおよびUL−MAPによって、スロットの割り当てを1フレームごとに変更することができる。
【0030】
なお、基地局として動作する中継装置16とその中継装置16に無線接続する移動局14との間でも、図2に示すTDDフレーム構成と同様のTDDフレーム構成が用いられる。
【0031】
以下では、図2に示すように、上りバースト#1および下りバースト#1が移動局14−1に、上りバースト#2および下りバースト#2が中継装置16に、それぞれ割り当てられており、移動局14−1が中継装置16と同じタイミングで基地局12と無線通信を行っているものとする。
【0032】
図3Aは、下りバースト#1,#2を介して、基地局12から移動局14および中継装置16にそれぞれ送信される下り信号の送信電力(送信スペクトラム)の一例を示す図である。図3Aに示す例では、全サブキャリアで送信電力が一定であり(バースト平均電力がPa[dBm])、移動局14−1に送信される下り信号の送信電力と中継装置16に送信される下り信号の送信電力とは等しい。
【0033】
図3Bは、図3Aに示す送信電力で送信された下り信号の移動局14および中継装置16における受信電力(受信スペクトラム)の一例を示す図である。中継装置16は移動局14−1よりも基地局12から離れた場所に設置されているため(図1参照)、基地局12から送信された下り信号の中継装置16における受信電力は、移動局14−1におけるそれよりも低い。また、中継装置16における下り信号のCNR(Carrier to Noise Ratio:搬送波対雑音電力比、受信品質の指標の1つ)も、移動局14−1におけるそれより低い。
【0034】
下り信号のCNRが低下すると、下り信号に伝送効率の低い変調方式を適用せざるを得なくなり、下り回線容量が低下する。このため、複数の移動局14が中継装置16に無線接続すると、中継装置16と基地局12との間の下り回線容量がボトルネックとなって、基地局12からそれら移動局14に送信されるデータの伝送効率が低下しやすくなる。
【0035】
そこで無線通信システム10では、このような場合に、基地局12が、中継装置16からの要求(高速モード要求)に応じて、中継装置16と同じタイミングで自局と無線通信を行う移動局14のいずれか(ここでは移動局14−1)との間の下り回線容量を減少させることにより、中継装置16との間の下り回線容量の増分を優先的に確保する。
【0036】
たとえば、中継装置16と移動局14−6,14−7との間の下り回線容量が中継装置16と基地局12との間の下り回線容量を大きく上回った場合、基地局12は、中継装置16からの高速モード要求に応じて、図4Aに示すように、中継装置16と同じタイミングで自局と無線通信を行う移動局14−1に送信する下り信号の送信電力を低下させるとともに、その減少させた送信電力に応じた電力だけ中継装置16に送信する下り信号の送信電力を増加させる(バースト平均電力はPa[dBm]に維持される)。
【0037】
これにより、図4Bに示すように、基地局12から送信された下り信号の中継装置16における受信電力が上昇し、中継装置16における下り信号のCNRも増大する。
【0038】
このように、無線通信システム10では、中継装置16と無線接続する1以上の移動局14の通信状況に応じて、中継装置16とそれら移動局14との間の下り回線容量と、中継装置16と基地局12との間の下り回線容量と、の間の不均衡が是正されるため、中継装置16を介して基地局12からそれら移動局14に送信されるデータの伝送効率の低下を抑制することができる。
【0039】
以下では、上記処理を実現するために基地局12および中継装置16が備える構成を具体的に説明する。
【0040】
[基地局12の構成]
図5は、基地局12の機能ブロック図である。図5に示すように、基地局12は、アンテナ20、受信部22、復調部24、制御部26(メッセージ解析部28、チャネル割当部30、変調方式決定部32、制限対象選定部34、送信電力制御部36、メッセージ生成部38)、記憶部40、変調部42、および送信部44を含んで構成される。
【0041】
アンテナ20は、移動局14および/または中継装置16から送信される無線信号を受信し、受信された無線信号を受信部22に出力する。また、アンテナ20は、送信部44から供給される無線信号を移動局14および/または中継装置16に対して送信する。なお、無線信号の受信および送信は、図2に示す上りサブフレームおよび下りサブフレームにそれぞれ対応するよう、時分割で切り替えられる。
【0042】
受信部22は、低雑音増幅器、周波数変換器、帯域通過フィルタ、およびA/D変換器を含んで構成される。受信部22は、アンテナ20から入力される無線信号を、低雑音増幅器で増幅した後、中間周波数信号にダウンコンバートし、さらにデジタル信号に変換してから、復調部24に出力する。
【0043】
復調部24は、FFT(Fast Fourier Transform)部、直並列変換器、並直列変換器、および誤り検出部を含んで構成される。復調部24は、受信部22から入力されるデジタル信号に、直並列変換、GI(Guard Interval)の除去、1次復調(高速フーリエ変換)、並直列変換、時分割分離処理、2次復調(シンボルデマッピング)、復号、誤り検出などを施し、得られた受信データを制御部26に出力する。
【0044】
制御部26は、たとえばCPUおよびCPUの動作を制御するプログラムで構成され、基地局12の各部を制御する。特に、制御部26は、メッセージ解析部28、チャネル割当部30、変調方式決定部32、制限対象選定部34、送信電力制御部36、およびメッセージ生成部38を機能的に含み、基地局12が送信する下り信号の変調方式および送信電力の制御などを行う。
【0045】
記憶部40は、たとえば半導体メモリ素子で構成され、基地局12の動作に必要となるプログラム、データ、図6に示すテーブルなどを記憶する。なお、図6は、CNRと変調方式との対応関係を定義したテーブルの一例を示す図である。
【0046】
ここで、制御部26の機能的構成をより詳細に説明する。
【0047】
メッセージ解析部28は、図2に例示する上りサブフレームの構成に基づいて、復調部24から入力される受信データに含まれる移動局14および/または中継装置16からの各種メッセージを識別し、そのメッセージの内容を解析する。たとえば、メッセージ解析部28は、移動局14および/または中継装置16からの接続要求メッセージを識別し、その接続要求メッセージからその送信元が移動局14および中継装置16のいずれであるかを区別するための端末IDを取得する。また、メッセージ解析部28は、中継装置16からの高速モード要求を含むメッセージを識別する。この高速モード要求は、中継装置16と基地局12との間の無線回線容量を増加させるよう要求する容量増加要求である。また、メッセージ解析部28は、復調部24から入力される受信データの中から、移動局14および/または中継装置16で検出された下り信号(下りバーストを介して基地局12から移動局14および/または中継装置16に送信される無線信号)のCNRを取得する。
【0048】
チャネル割当部30は、移動局14および/または中継装置16に対して、スロット(無線チャネル)を割り当てる。すなわち、チャネル割当部30は、下りサブフレームに含まれるスロットの少なくとも1つを下りバーストとして、上りサブフレームに含まれるスロットの少なくとも1つを上りバーストとして、移動局14および/または中継装置16に割り当てる。このとき、チャネル割当部30は、移動局14および/または中継装置16が送受するデータの量や通信種別に応じた優先度などに基づいて、それらに割り当てる下りバーストおよび上りバーストを決定してもよい。
【0049】
変調方式決定部32は、移動局14および/または中継装置16から通知される下り信号(下りバーストを介して基地局12から移動局14および/または中継装置16に送信される無線信号)のCNRに基づいて、次フレーム(またはそれ以降)における下りバーストの変調方式を決定する。また、変調方式決定部32は、上り信号(上りバーストを介して移動局14および/または中継装置16から基地局12に送信される無線信号)のCNRに基づいて、次フレーム(またはそれ以降)における上りバーストの変調方式を決定する。
【0050】
この変調方式の決定には、たとえば、記憶部40に記憶されている、CNRと変調方式との対応関係(高いCNRには伝送効率の高い変調方式が対応し、低いCNRには伝送効率の低い変調方式が対応している)を定義したテーブル(図6参照)が用いられる。なお、CNRの代わりに、RSSI(Received Signal Strength Indication:受信信号強度)、SINR(Signal to Interference and Noise Ratio:信号対干渉および雑音電力比)、FER(Frame Error Rate:フレーム誤り率)などの他の受信品質を用いてもよい。これらの受信品質は、復調部24での1次復調(高速フーリエ変換)により得られる複素シンボル列、復調部24での誤り検出の結果、移動局14および/または中継装置16からフィードバックされる情報などから取得することができる。
【0051】
制限対象選定部34は、中継装置16からの高速モード要求に応じて、中継装置16と同じタイミングで基地局12と無線通信を行う移動局14のいずれかを制限対象として選定する。ここで、制限対象選定部34は、中継装置16と同じタイミングで基地局12と無線通信を行う移動局14のうち、基地局12との間の無線回線容量が所定容量以上である移動局14を制限対象として選定してもよい。
【0052】
たとえば、制限対象選定部34は、中継装置16と同じタイミングで基地局12と無線通信を行う移動局14のうち、基地局12に割り当てられた下りバーストの変調方式が変調効率最下位の変調方式(図6に示す例ではQPSK)ではないものを制限対象として選定してもよい。なお、制限対象の候補が複数ある場合、制限対象選定部34は、より伝送効率の高い変調方式の下りバーストが割り当てられた移動局14を制限対象として選定することが好ましい。
【0053】
送信電力制御部36は、制限対象選定部34により制限対象として選定された移動局14と基地局12との間の無線回線容量を減少させるとともに、その減少させた無線回線容量に応じた容量だけ中継装置16と基地局12との間の無線回線容量を増加させる。具体的には、送信電力制御部36は、中継装置16からの高速モード要求に応じて、制限対象として選定された移動局14に送信される下り信号の送信電力を減少させるとともに、その減少させた送信電力に応じた電力だけ中継装置16に送信される下り信号の送信電力を増加させるよう、送信部44を制御する。
【0054】
なお、調整の前後でバースト平均電力が一定となるよう下り信号の送信電力を増減させれば、送信部44における信号の線形性が維持されやすくなる。また、下り信号の送信電力の減少量および増加量は、予め定められた固定値であってもよいし、基地局12と移動局14および/または中継装置16との間で送受されるデータの量に応じた可変値であってもよい。
【0055】
メッセージ生成部38は、移動局14および/または中継装置16宛ての制御メッセージや送信データを生成し、それらが図2に例示する下りサブフレームの構成に基づいて送信されるよう変調部42に出力する。たとえば、メッセージ生成部38は、チャネル割当部30で決定された下りバーストを示すDL−MAP、チャネル割当部30で決定された上りバーストを示すUL−MAP、変調方式決定部32で決定された下りバーストの変調方式、変調方式決定部32で決定された上りバーストの変調方式などを含む制御メッセージを生成し、変調部42に出力する。
【0056】
変調部42は、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)部、直並列変換器、並直列変換器、および符号化回路を含んで構成される。変調部42は、制御部26から入力される移動局14および/または中継装置16宛ての制御メッセージや送信データに、誤り検出符号の付加、符号化、1次変調(シンボルマッピング)、時分割多重処理、直並列変換、2次変調(逆高速フーリエ変換)、GIの付加、並直列変換などを施し、得られたデジタル信号を送信部44に出力する。
【0057】
送信部44は、電力増幅器、周波数変換器、帯域通過フィルタ、およびD/A変換器を含んで構成される。送信部44は、変調部42から入力されるデジタル信号を、アナログ信号に変換した後、無線信号にアップコンバートし、電力増幅器で送信出力レベルまで増幅してから、アンテナ20に供給する。
【0058】
[基地局12の動作]
次に、図7に基づいて、基地局12の動作の一部を説明する。図7は、基地局12における無線回線容量の調整処理の一例を示す図である。本処理は、中継装置16との無線通信が開始された後に実行される。
【0059】
図7に示すように、まず基地局12は、中継装置16から通知される下り信号(基地局12から中継装置16に送信された無線信号)のCNRを取得する(S100)。次に、基地局12は、中継装置16に割り当てる下りバーストを決定するとともに、S100で取得された下り信号のCNRに基づいてその下りバーストを介して中継装置16に送信する下り信号の変調方式を決定する(S102)。
【0060】
ここで、中継装置16から高速モードの要求があれば(S104:Y)、基地局12は、中継装置16と同じタイミングで基地局12と無線通信を行っている移動局14があるか否かを確認する(S106)。中継装置16と同じタイミングで基地局12と無線通信を行っている移動局14があれば(S106:Y)、基地局12は、その移動局14(制限対象の候補)に送信する下り信号の変調方式を取得し、その変調方式が伝送効率が最下位の変調方式であるか否かを確認する(S108)。そして、その変調方式が伝送効率最下位の変調方式でなければ(S108:N)、基地局12は、その移動局14の少なくとも1つを制限対象として選定し、制限対象として選定された移動局14に送信する下り信号の送信電力を減少させる(S110)。
【0061】
その後、基地局12は、S110で減少させた送信電力に応じた電力だけ中継装置16に送信する下り信号の送信電力を増加させる(S112)。なお、中継装置16と同じタイミングで基地局12と無線通信を行っている移動局14がない場合(S106:N)、基地局12は、平均送信電力の上限を超えない範囲で、中継装置16に送信する下り信号の送信電力を増加させる(S112)。
【0062】
S112の後または中継装置16から高速モードの要求がない場合(S104:N)、基地局12は、中継装置16との通信が終了するまでS100からの処理を繰り返し実行する(S114)。これにより、中継装置16からの高速モード要求に応じて、基地局12から送信される下り信号の中継装置16における受信電力が上昇し、中継装置16における下り信号のCNRも増大する。その結果、基地局12から中継装置16に送信される下り信号の変調方式が伝送効率のより高いものに変更されると、中継装置16と基地局12との間の下り回線容量も増加する。
【0063】
[中継装置16の構成]
図8は、中継装置16の機能ブロック図である。図8に示すように、中継装置16は、アンテナ50−1,50−2、送受信部52−1,52−2、変復調部54−1,54−2、制御部56(メッセージ解析部58、チャネル割当部60、変調方式決定部62、回線容量算出部64、高速モード要求部66、メッセージ生成部68)、および記憶部70を含んで構成される。
【0064】
このうち、アンテナ50−1、送受信部52−1、および変復調部54−1は、基地局12との無線通信に用いられる構成(中継装置16が基地局12に対して移動局として動作するための構成)であり、アンテナ50−2、送受信部52−2、および変復調部54−2は、移動局14との無線通信に用いられる構成(中継装置16が移動局14に対して基地局として動作するための構成)である。
【0065】
つまり、基地局12から送信された無線信号は、アンテナ50−1で受信され、送受信部52−1、変復調部54−1、制御部56、変復調部54−2、および送受信部52−2を介して、アンテナ50−2から中継装置16に無線接続している移動局14に対して送信される。逆に、中継装置16に無線接続している移動局14から送信された無線信号は、アンテナ50−2で受信され、送受信部52−2、変復調部54−2、制御部56、変復調部54−1、および送受信部52−1を介して、アンテナ50−1から中継装置16が無線接続している基地局12に対して送信される。
【0066】
アンテナ50−1,50−2は、基地局12および移動局14から送信される無線信号を受信し、受信された無線信号を送受信部52−1,52−2にそれぞれ出力する。また、アンテナ50−1,50−2は、送受信部52−1,52−2から供給される無線信号を基地局12および移動局14に対してそれぞれ送信する。なお、アンテナ50−1による無線信号の受信および送信(アンテナ50−2による無線信号の受信および送信)は、時分割で切り替えられる。
【0067】
送受信部52−1,52−2は、低雑音増幅器、電力増幅器、周波数変換器、帯域通過フィルタ、A/D変換器、およびD/A変換器を含んで構成される。送受信部52−1,52−2は、アンテナ50−1,50−2から入力される無線信号を、低雑音増幅器で増幅した後、中間周波数信号にダウンコンバートし、さらにデジタル信号に変換してから、変復調部54−1,54−2にそれぞれ出力する。また、送受信部52−1,52−2は、変復調部54−1,54−2から入力されるデジタル信号を、アナログ信号に変換した後、無線信号にアップコンバートし、電力増幅器で送信出力レベルまで増幅してから、アンテナ50−1,50−2にそれぞれ供給する。
【0068】
変復調部54−1,54−2は、FFT部、IFFT部、直並列変換器、並直列変換器、誤り検出部、および符号化回路を含んで構成される。変復調部54−1,54−2は、送受信部52−1,52−2からそれぞれ入力されるデジタル信号に、直並列変換、GIの除去、1次復調(高速フーリエ変換)、並直列変換、時分割分離処理、2次復調(シンボルデマッピング)、復号、誤り検出などを施し、得られた受信データを制御部56に出力する。変調部42は、制御部56から入力される基地局12および移動局14宛ての制御メッセージや送信データに、誤り検出符号の付加、符号化、1次変調(シンボルマッピング)、時分割多重処理、直並列変換、2次変調(逆高速フーリエ変換)、GIの付加、並直列変換などを施し、得られたデジタル信号を送受信部52−1,52−2にそれぞれ出力する。
【0069】
制御部56は、たとえばCPUおよびCPUの動作を制御するプログラムで構成され、中継装置16の各部を制御する。特に、制御部56は、メッセージ解析部58、チャネル割当部60、変調方式決定部62、回線容量算出部64、高速モード要求部66、およびメッセージ生成部68を機能的に含み、基地局12と中継装置16との間の無線回線容量を増加させるよう基地局12に要求するための処理、中継装置16に無線接続する1以上の移動局14と基地局12との間の通信を中継するための制御、などを行う。
【0070】
記憶部70は、たとえば半導体メモリ素子で構成され、中継装置16の動作に必要となるプログラム、データ、図6に示すテーブルなどを記憶する。
【0071】
ここで、制御部56の機能的構成をより詳細に説明する。
【0072】
メッセージ解析部58は、図2に例示するような上りサブフレームの構成に基づいて、変復調部54−1,54−2から入力される受信データに含まれる基地局12および移動局14からの各種メッセージをそれぞれ識別し、そのメッセージの内容を解析する。たとえば、メッセージ解析部58は、変復調部54−1から入力される受信データの中から基地局12からの制御メッセージを識別し、その制御メッセージより基地局12から割り当てられた下りバーストとその下りバーストを介して基地局12から送信される下り信号の変調方式を取得する。また、メッセージ解析部58は、変復調部54−2から入力される受信データの中から、移動局14で検出された下り信号(中継装置16が移動局14に割り当てた下りバーストを介して、中継装置16からその移動局14に送信される無線信号)のCNRを取得する。
【0073】
チャネル割当部60は、中継装置16に無線接続している移動局14に対して、スロット(無線チャネル)を割り当てる。すなわち、チャネル割当部60は、下りサブフレームに含まれるスロットの少なくとも1つを下りバーストとして、上りサブフレームに含まれるスロットの少なくとも1つを上りバーストとして、移動局14に割り当てる。このとき、チャネル割当部60は、移動局14が送受するデータの量や通信種別に応じた優先度などに基づいて、その移動局14に割り当てる下りバーストおよび上りバーストを決定してもよい。
【0074】
変調方式決定部62は、移動局14から通知される下り信号(中継装置16が移動局14に割り当てた下りバーストを介して、中継装置16からその移動局14に送信される無線信号)のCNRに基づいて、次フレーム(またはそれ以降)における下りバーストの変調方式を決定する。また、変調方式決定部62は、上り信号(中継装置16が移動局14に割り当てた上りバーストを介して、その移動局14から中継装置16に送信される無線信号)のCNRに基づいて、次フレーム(またはそれ以降)における上りバーストの変調方式を決定する。
【0075】
この変調方式の決定には、たとえば、記憶部70に記憶されている、CNRと変調方式との対応関係(高いCNRには伝送効率の高い変調方式が対応し、低いCNRには伝送効率の低い変調方式が対応している)を定義したテーブル(図6参照)が用いられる。なお、CNRの代わりに、RSSI、SINR、FERなどの他の受信品質を用いてもよい。
【0076】
回線容量算出部64は、中継装置16とその中継装置16に無線接続している1以上の移動局との間の無線回線容量と、中継装置16と基地局12との間の無線回線容量と、を算出する。たとえば、回線容量算出部64は、各移動局14に割り当てる下りバーストを構成するスロットの数と、その下りバーストを介して送信される下り信号の変調方式と、に基づいて、それら移動局14に送信する下り信号の伝送レート(移動局側伝送レート)を算出する。また、回線容量算出部64は、基地局12から割り当てられた下りバーストを構成するスロットの数と、その下りバーストを介して送信される下り信号の変調方式と、に基づいて、基地局12から送信される下り信号の伝送レート(基地局側伝送レート)を算出する。
【0077】
高速モード要求部66は、中継装置16とその中継装置16に無線接続している1以上の移動局との間の無線回線容量と、中継装置16と基地局12との間の無線回線容量と、の比較結果に基づいて、中継装置16と基地局12との間の無線回線容量を増加させるよう要求する高速モード要求(容量増加要求)を基地局12に送信する。
【0078】
たとえば、高速モード要求部66は、回線容量算出部64により算出された移動局側伝送レートと基地局側伝送レートとを比較し、移動局側伝送レートが基地局側伝送レートの所定係数倍を超えたタイミングで、高速モード要求を送信してもよい。こうすれば、中継装置16と移動局14との間の下り回線容量が中継装置16と基地局12との間の下り回線容量を大きく上回った場合に、それらの間の不均衡が是正されるため、中継装置16を介して基地局12からそれら移動局14に送信されるデータの伝送効率の低下を抑制することができる。
【0079】
メッセージ生成部68は、基地局12および移動局14宛ての制御メッセージや送信データを生成し、それらが図2に例示するような下りサブフレームの構成に基づいて送信されるよう変復調部54−1,54−2にそれぞれ出力する。たとえば、メッセージ生成部68は、高速モード要求を含む制御メッセージを生成し、変復調部54−1に出力する。また、メッセージ生成部68は、チャネル割当部60で決定された下りバーストを示すDL−MAP、チャネル割当部60で決定された上りバーストを示すUL−MAP、変調方式決定部62で決定された下りバーストの変調方式、変調方式決定部62で決定された上りバーストの変調方式などを含む制御メッセージを生成し、変復調部54−2に出力する。
【0080】
[中継装置16の動作]
次に、図9に基づいて、中継装置16の動作の一部を説明する。図9は、中継装置16における高速モード要求処理の一例を示す図である。
【0081】
図9に示すように、まず中継装置16は、中継装置16に無線接続している1以上の移動局14から通知される下り信号(中継装置16から移動局14に送信された無線信号)のCNRを取得する(S200)。次に、中継装置16は、各移動局14に割り当てる下りバーストを決定するとともに、S200で取得された下り信号のCNRに基づいてその下りバーストを介して各移動局14に送信する下り信号の変調方式を決定する(S202)。そして、中継装置16は、各移動局14に割り当てる下りバーストを構成するスロットの数と、その下りバーストを介して送信される下り信号の変調方式と、に基づいて、それら移動局14に送信する下り信号の伝送レート(移動局側伝送レート)を算出する(S204)。
【0082】
次に、中継装置16は、基地局12から割り当てられた下りバーストと、その下りバーストを介して送信される下り信号の変調方式と、を取得する(S206)。そして、中継装置16は、基地局12から割り当てられた下りバーストを構成するスロットの数と、その下りバーストを介して送信される下り信号の変調方式と、に基づいて、基地局12から送信される下り信号の伝送レート(基地局側伝送レート)を算出する(S208)。
【0083】
その後、中継装置16は、S204で算出された移動局側伝送レートと、S208で算出された基地局側伝送レートと、を比較し、その比較結果に基づいて、高速モードの要求が必要か否かを判断し(S210)、高速モードの要求が必要であると判断されると(S210:Y)、基地局12に対して高速モード要求を送信する(S212)。たとえば、中継装置16は、移動局側伝送レートが基地局側伝送レートの所定係数倍を超えている場合に、高速モードの要求が必要であると判断してもよい。
【0084】
以上説明した無線通信システム10によれば、基地局12が、中継装置16からの高速モード(容量増加要求)に応じて、中継装置16と同じタイミングで自局と無線通信を行う移動局14のいずれかとの間の下り回線容量を減少させることにより、中継装置16との間の下り回線容量の増分を優先的に確保する。このため、中継装置16に無線接続する1以上の移動局14の通信状況に応じて、中継装置16と基地局12との間の下り回線容量を増加させることができる。つまり、中継装置16とそれら移動局14との間の下り回線容量と、中継装置16と基地局12との間の下り回線容量と、の間の不均衡が是正されるため、中継装置16を介して基地局12からそれら移動局14に送信されるデータの伝送効率の低下を抑制することができる。
【0085】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0086】
たとえば、上記実施形態では、基地局12が下り信号の送信電力配分を調整することによって、中継装置16と基地局12との間の下り回線容量を増加させる例を示したが、基地局12がスロット(無線チャネル)の割り当て配分を調整することによって、中継装置16と基地局12との間の無線回線容量を増加させてもよい。
【0087】
図10は、基地局におけるスロット(無線チャネル)の割り当て配分の調整処理の一例を示す図である。
【0088】
図10に示すように、まず基地局12は、中継装置16から高速モード要求があった場合に、中継装置16に割り当て可能な空きスロットが存在するか否かを確認する(S300)。そして、中継装置16に割り当て可能な空きスロットが存在しなければ(S300:N)、基地局12は、中継装置16と同じタイミングで基地局12と無線通信を行っている移動局14があるか否かを確認する(S302)。ここで、中継装置16と同じタイミングで基地局12と無線通信を行っている移動局14があれば(S302:Y)、基地局12は、その移動局14(制限対象の候補)に割り当てるスロットの数を減らせるか否か(たとえば下りバーストおよび/または上りバーストが2以上のスロットから構成されているか否か)を確認する(S304)。
【0089】
そして、その移動局14に割り当てるスロットの数を減らせる場合(S304:Y)、基地局12は、その移動局14の少なくとも1つを制限対象として選定し、制限対象として選定された移動局14に割り当てるスロットの数を減少させる(S306)。
【0090】
こうして、中継装置16に割り当て可能な空きスロットが確保されると(S306またはS300:Y)、基地局12は、中継装置16に下りバーストおよび/または上りバーストとして割り当てるスロットの数を増加させる(S308)。
【0091】
このようにしても、中継装置16に無線接続する移動局14の通信状況に応じて、中継装置16と基地局12との間の無線回線容量を増加させることができる。
【0092】
なお、本発明は、OFDMA方式およびTDMA/TDD方式を採用する無線通信システムに限らず、基地局と中継装置とそれらに無線接続する複数の移動局とを含む無線通信システム全般に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0093】
10 無線通信システム、12 基地局、14 移動局、16 中継装置、18 カバーエリア、20,50 アンテナ、22 受信部、24 復調部、26,56 制御部、28,58 メッセージ解析部、30,60 チャネル割当部、32,62 変調方式決定部、34 制限対象選定部、36 送信電力制御部、38,68 メッセージ生成部、40,70 記憶部、42 変調部、44 送信部、52 送受信部、54 変復調部、64 回線容量算出部、66 高速モード要求部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と、
前記基地局および1以上の移動局のそれぞれと無線接続し、前記基地局と前記1以上の移動局との間の通信を中継する中継装置と、
を含む無線通信システムであって、
前記中継装置は、前記1以上の移動局の通信状況に基づいて、当該中継装置と前記基地局との間の無線回線容量を増加させるよう要求する容量増加要求を前記基地局に送信する要求手段を含み、
前記基地局は、
前記中継装置からの前記容量増加要求に応じて、前記中継装置と同じタイミングで当該基地局と無線通信を行う移動局のいずれかを制限対象として選定する選定手段と、
前記制限対象として選定された移動局と当該基地局との間の無線回線容量を減少させるとともに、該減少させた無線回線容量に応じた容量だけ前記中継装置と当該基地局との間の無線回線容量を増加させる回線容量制御手段と、
を含む、
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記要求手段は、前記中継装置と前記1以上の移動局との間の無線回線容量と、前記中継装置と前記基地局との間の無線回線容量と、の比較結果に基づいて、前記容量増加要求を前記基地局に送信する、
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の無線通信システムにおいて、
前記選定手段は、前記中継装置と同じタイミングで前記基地局と無線通信を行う移動局のうち、前記基地局との間の無線回線容量が所定容量以上である移動局の少なくとも1つを前記制限対象として選定する、
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の無線通信システムにおいて、
前記中継装置は、前記基地局から当該中継装置に送信される下り信号の受信品質を前記基地局に通知する手段をさらに含み、
前記基地局は、前記中継装置から通知される前記下り信号の受信品質に基づいて、前記中継装置に送信される下り信号の変調方式を決定する変調方式決定手段をさらに含み、
前記回線容量制御手段は、前記制限対象として選定された移動局に送信される下り信号の送信電力を減少させるとともに、該減少させた送信電力に応じた電力だけ前記中継装置に送信される下り信号の送信電力を増加させる、
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の無線通信システムにおいて、
前記回線容量制御手段は、前記制限対象として選定された移動局に対する無線チャネルの割り当てを減少させるとともに、該減少させた無線チャネルの割り当てに応じた量だけ前記中継装置に対する無線チャネルの割り当てを増加させる、
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
1以上の移動局のそれぞれと無線接続する中継装置と無線接続し、前記中継装置を介して前記1以上の移動局と通信を行う基地局であって、
前記中継装置と当該基地局との間の無線回線容量を増加させるよう前記中継装置から要求された場合に、前記中継装置と同じタイミングで当該基地局と無線通信を行う移動局のいずれかを制限対象として選定する選定手段と、
前記制限対象として選定された移動局と当該基地局との間の無線回線容量を減少させるとともに、該減少させた無線回線容量に応じた容量だけ前記中継装置と当該基地局との間の無線回線容量を増加させる回線容量制御手段と、
を含むことを特徴とする基地局。
【請求項7】
基地局および1以上の移動局のそれぞれと無線接続し、前記基地局と前記1以上の移動局との間の通信を中継する中継装置であって、
当該中継装置からの容量増加要求に応じて、当該中継装置と同じタイミングで前記基地局と無線通信を行う移動局のいずれかを制限対象として選定する選定手段と、
前記制限対象として選定された移動局と前記基地局との間の無線回線容量を減少させるとともに、該減少させた無線回線容量に応じた容量だけ当該中継装置と前記基地局との間の無線回線容量を増加させる回線容量制御手段と、
を含む前記基地局に対して、前記1以上の移動局の通信状況に基づいて、前記容量増加要求を送信する要求手段、
を含むことを特徴とする中継装置。
【請求項8】
基地局と、
前記基地局および1以上の移動局のそれぞれと無線接続し、前記基地局と前記1以上の移動局との間の通信を中継する中継装置と、
を含む無線通信システムにおける無線通信方法であって、
前記中継装置が、前記1以上の移動局の通信状況に基づいて、当該中継装置と前記基地局との間の無線回線容量を増加させるよう要求する容量増加要求を前記基地局に送信するステップと、
前記基地局が、前記中継装置からの前記容量増加要求に応じて、前記中継装置と同じタイミングで当該基地局と無線通信を行う移動局のいずれかを制限対象として選定するステップと、
前記基地局が、前記制限対象として選定された移動局と当該基地局との間の無線回線容量を減少させるとともに、該減少させた無線回線容量に応じた容量だけ前記中継装置と当該基地局との間の無線回線容量を増加させるステップと、
を含むことを特徴とする無線通信方法。
【請求項1】
基地局と、
前記基地局および1以上の移動局のそれぞれと無線接続し、前記基地局と前記1以上の移動局との間の通信を中継する中継装置と、
を含む無線通信システムであって、
前記中継装置は、前記1以上の移動局の通信状況に基づいて、当該中継装置と前記基地局との間の無線回線容量を増加させるよう要求する容量増加要求を前記基地局に送信する要求手段を含み、
前記基地局は、
前記中継装置からの前記容量増加要求に応じて、前記中継装置と同じタイミングで当該基地局と無線通信を行う移動局のいずれかを制限対象として選定する選定手段と、
前記制限対象として選定された移動局と当該基地局との間の無線回線容量を減少させるとともに、該減少させた無線回線容量に応じた容量だけ前記中継装置と当該基地局との間の無線回線容量を増加させる回線容量制御手段と、
を含む、
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記要求手段は、前記中継装置と前記1以上の移動局との間の無線回線容量と、前記中継装置と前記基地局との間の無線回線容量と、の比較結果に基づいて、前記容量増加要求を前記基地局に送信する、
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の無線通信システムにおいて、
前記選定手段は、前記中継装置と同じタイミングで前記基地局と無線通信を行う移動局のうち、前記基地局との間の無線回線容量が所定容量以上である移動局の少なくとも1つを前記制限対象として選定する、
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の無線通信システムにおいて、
前記中継装置は、前記基地局から当該中継装置に送信される下り信号の受信品質を前記基地局に通知する手段をさらに含み、
前記基地局は、前記中継装置から通知される前記下り信号の受信品質に基づいて、前記中継装置に送信される下り信号の変調方式を決定する変調方式決定手段をさらに含み、
前記回線容量制御手段は、前記制限対象として選定された移動局に送信される下り信号の送信電力を減少させるとともに、該減少させた送信電力に応じた電力だけ前記中継装置に送信される下り信号の送信電力を増加させる、
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の無線通信システムにおいて、
前記回線容量制御手段は、前記制限対象として選定された移動局に対する無線チャネルの割り当てを減少させるとともに、該減少させた無線チャネルの割り当てに応じた量だけ前記中継装置に対する無線チャネルの割り当てを増加させる、
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
1以上の移動局のそれぞれと無線接続する中継装置と無線接続し、前記中継装置を介して前記1以上の移動局と通信を行う基地局であって、
前記中継装置と当該基地局との間の無線回線容量を増加させるよう前記中継装置から要求された場合に、前記中継装置と同じタイミングで当該基地局と無線通信を行う移動局のいずれかを制限対象として選定する選定手段と、
前記制限対象として選定された移動局と当該基地局との間の無線回線容量を減少させるとともに、該減少させた無線回線容量に応じた容量だけ前記中継装置と当該基地局との間の無線回線容量を増加させる回線容量制御手段と、
を含むことを特徴とする基地局。
【請求項7】
基地局および1以上の移動局のそれぞれと無線接続し、前記基地局と前記1以上の移動局との間の通信を中継する中継装置であって、
当該中継装置からの容量増加要求に応じて、当該中継装置と同じタイミングで前記基地局と無線通信を行う移動局のいずれかを制限対象として選定する選定手段と、
前記制限対象として選定された移動局と前記基地局との間の無線回線容量を減少させるとともに、該減少させた無線回線容量に応じた容量だけ当該中継装置と前記基地局との間の無線回線容量を増加させる回線容量制御手段と、
を含む前記基地局に対して、前記1以上の移動局の通信状況に基づいて、前記容量増加要求を送信する要求手段、
を含むことを特徴とする中継装置。
【請求項8】
基地局と、
前記基地局および1以上の移動局のそれぞれと無線接続し、前記基地局と前記1以上の移動局との間の通信を中継する中継装置と、
を含む無線通信システムにおける無線通信方法であって、
前記中継装置が、前記1以上の移動局の通信状況に基づいて、当該中継装置と前記基地局との間の無線回線容量を増加させるよう要求する容量増加要求を前記基地局に送信するステップと、
前記基地局が、前記中継装置からの前記容量増加要求に応じて、前記中継装置と同じタイミングで当該基地局と無線通信を行う移動局のいずれかを制限対象として選定するステップと、
前記基地局が、前記制限対象として選定された移動局と当該基地局との間の無線回線容量を減少させるとともに、該減少させた無線回線容量に応じた容量だけ前記中継装置と当該基地局との間の無線回線容量を増加させるステップと、
を含むことを特徴とする無線通信方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−176499(P2011−176499A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37978(P2010−37978)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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