説明

無線通信システム、車載無線通信装置、携帯端末及び無線通信の方法

【課題】車両内に持ち込まれる携帯端末が、移動体通信とローカルエリアの無線通信とを選択的に切り替えるタイプである場合に、その携帯端末が、車両内において移動体通信のサービスを利用できるとともに、車載無線通信装置が、その携帯端末のデータを、ローカルエリアの無線通信によって無駄なリンク処理を要することなく円滑に取得できること。
【解決手段】車載無線通信装置は、車内無線通信部を通じて、携帯端末との車内無線通信が許容される時期を表す情報を含む制御情報70を取得し(S107)、その制御情報70に従って、車内無線通信部を通じて携帯端末との間で行う通信の時期を制御する(S109,S111)。さらに、車載無線通信装置は、携帯端末と通信が行われる期間とその他の期間とで車内無線通信に用いられる搬送波の出力特性を制御する(S110,S112)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内でローカルな無線通信を行う車載無線通信装置、移動体通信を行う機能と機器間でのローカルな無線通信を行う機能とを兼ね備える携帯端末、それら両機器を含む無線通信システム、及びそれら両機器の間で行われる無線通信の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機又はスマートフォンなどの携帯端末は、基地局又は人工衛星などの無線局を通じた無線通信を行う移動体通信の機能と、IEEE802.11又はBluetooth(Bluetooth SGI Inc の登録商標)などの通信方式に従って比較的狭い領域内で他の機器と無線通信を行うローカルエリアの無線通信機能とを兼ね備える。
【0003】
また、カーナビゲーション装置又はカーオーディオ装置などの車載装置が、ローカルエリアの無線通信機能を備える場合もある。この場合、車載装置は、車両内に持ち込まれた携帯端末から地図、映像又は音楽などに関するコンテンツデータをローカルエリアの無線通信により取得し、取得したコンテンツデータを再生する機能を備える。
【0004】
例えば、車載装置がクラウド型のカーナビゲーション装置である場合、携帯端末は、移動体通信により地図のデータを随時ダウンロードし、車載装置は、その地図のデータを携帯端末からローカルエリアの無線通信によって取得するとともに、そのデータに基づく画像又は音声を出力する。
【0005】
また、特許文献1には、基地局を通じて移動体通信を行う車外通信部と、車内におけるローカルエリアの無線通信を行う車内通信部とを備えた車載通信装置が示されている。特許文献1に示される車載通信装置は、予め記憶された基地局ごとの通信エリア及び使用周波数の情報と、GPS(Global Positioning System)などによって検出された車両の現在位置とに基づいて車外通信部の使用周波数を特定し、それとは異なる周波数チャンネルを車内通信部に割り当てる。これにより、車内通信部と社外通信部との間の電波干渉に起因する通信エラーが低減する。
【0006】
また、特許文献2には、基地局(アクセスポイント)を通じて移動体通信を行う通信モジュールを備えた車載通信装置が示されている。特許文献2に示される車載通信装置は、予め記憶された各基地局の位置及びプロファイルの情報と、GPSなどによって検出された車両の現在位置とに基づいて、通信モジュール及びアンテナの指向性を制御する。これにより、通信モジュールが基地局をサーチして通信を確立するのに要する無駄な電力消費が低減される。
【0007】
また、特許文献3には、携帯端末が、基地局を通じて移動体通信を行う第一の通信モードと、基地局を経由せずにローカルエリアの無線通信を行う第二の通信モードとを選択的に切り替えることについて示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−243765号公報
【特許文献2】特開2006−262177号公報
【特許文献3】特開2010−268085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、スマートフォンなどの携帯端末は、限られた無線通信帯域の乱用を防止するため、ローカルエリアの無線通信を行う期間における移動体通信を禁止する機能、即ち、移動体通信とローカルエリアの無線通信とを選択的に切り替える機能が組み込まれている場合がある。以下、移動体通信とローカルエリアの無線通信とを選択的に切り替えるタイプの携帯端末のことを制限付き携帯端末と称する。
【0010】
なお、ここでいう無線通信帯域の乱用は、例えば、携帯端末が、移動体通信により送受信しているデータを、ローカルエリアの無線通信によって第三者の装置へ中継伝送することにより、そのデータが、第三者の装置において利用されることなどを意味する。
【0011】
しかしながら、車載装置が、コンテンツデータを車内に持ち込まれた制限付き携帯端末からローカルエリアの無線通信により取得し、利用したい場合、以下に示すような課題が生じる。
【0012】
即ち、第一の課題は、車載装置が、制限付き携帯端末との間でローカルエリアの無線通信を接続した状態を維持すると、制限付き携帯端末が、車両内において移動体通信のサービスを利用できなくなることである。また、第二の課題は、制限付き携帯端末が、移動体通信とローカルエリアの無線通信とを独自のタイミングで切り替えると、車載装置が、制限付き携帯端末をサーチしてローカルエリアの無線通信を確立するリンク処理に要する無駄な時間及び電力消費が増大することである。
【0013】
例えば、車載装置がクラウド型のカーナビゲーション装置であり、その通信相手となる携帯端末が制限付き携帯端末である場合を考える。この場合、携帯端末とカーナビゲーション装置とがローカルエリアの無線通信の接続を維持すると、携帯端末は地図のデータをダウンロードできず、カーナビゲーション装置は、地図のデータに基づくナビゲーション動作を実行できない。また、携帯端末が、移動体通信とローカルエリアの無線通信とを独自のタイミングで切り替えると、カーナビゲーション装置は、リンク処理が頻発することに起因して、円滑なナビゲーション動作を実行できない上に、バッテリの電力を無駄に消費する。
【0014】
一方、特許文献1に示される車載通信装置は、車外通信部による移動体通信と、車内通信部による携帯端末とのローカルエリアの無線通信とを同時に並行して行う。また、特許文献2に示される車載通信装置は、移動体通信を行う機能を備えるが、ローカルエリアの無線通信の機能を備えていない。即ち、特許文献1及び特許文献2に示される車載通信装置は、ローカルエリアの無線通信が携帯端末側の都合で断続する場合の上記課題及びその解決策について何ら考慮されていない。
【0015】
また、特許文献1及び特許文献2に示される車載通信装置において、各基地局(各アクセスポイント)の通信エリア内での基地局との無線通信が、ローカルエリアの無線通信の一種であると考えることもできる。この場合、特許文献1及び特許文献2に示される車載通信装置は、ローカルエリアの無線通信の相手である基地局と通信可能となる時期を、予め記憶した基地局の位置などの情報と現在位置の情報とに基づいて事前に検知する。
【0016】
しかしながら、ローカルエリアの無線通信の相手が車両内に持ち込まれる携帯端末である場合、その携帯端末との間で通信が可能となる時期を予め記憶した情報などに基づいて事前に検知することはできない。
【0017】
また、特許文献3は、携帯端末が移動体通信とローカルエリアの無線通信とを独自のタイミングで切り替えることを示している。しかしながら、車載通信装置におけるローカルエリアの無線通信の相手が、そのようなタイプの携帯端末である場合における上記課題及びその解決策については何ら示されていない。
【0018】
本発明の目的は、車両内に持ち込まれる携帯端末が、移動体通信とローカルエリアの無線通信とを選択的に切り替えるタイプである場合に、その携帯端末が、車両内において移動体通信のサービスを利用できるとともに、車載無線通信装置が、その携帯端末のデータを、ローカルエリアの無線通信によって無駄なリンク処理を要することなく円滑に取得できることである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る無線通信システムは、車両内で第一の無線通信方式によるローカルエリアでの無線通信を行う車内無線通信部を備えた車載無線通信装置と、第一の無線通信方式によるローカルエリアでの無線通信を行う第一携帯側無線通信部、及び第二の無線通信方式による移動体通信を行う第二携帯側無線通信部を備えた携帯端末と、を含むシステムである。さらに、本発明に係る無線通信システムにおいて、携帯端末は、第一携帯側無線通信部を通じて、第一の無線通信方式による無線通信を許容する時期を表す通信時期情報を出力する通信時期情報出力部を備える。さらに、車載無線通信装置は、車内無線通信部を通じて、通信時期情報を取得する通信時期情報取得部と、取得された通信時期情報に従って、車内無線通信部を通じて携帯端末との間で行う通信の時期を制御する通信制御部とを備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ローカルエリアの無線通信が携帯端末において許容される時期を表す通信時期情報が、携帯端末から車載無線通信装置へ伝送される。さらに、車載無線通信装置は、取得された通信時期情報に従って、携帯端末との間で行うローカルエリアの無線通信の時期を制御する。そのため、車両内に持ち込まれる携帯端末は、移動体通信とローカルエリアの無線通信とを選択的に切り替えつつ、移動体通信のサービスを利用できる。さらに、車載無線通信装置は、ローカルエリアの無線通信が許容される時期の情報を予め取得できるため、無駄なリンク処理を要することなく円滑に携帯端末とのデータ通信を実行できる。従って、車載無線通信装置は、携帯端末のデータを、ローカルエリアの無線通信によって無駄なリンク処理を要することなく円滑に取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る無線通信システム1の構成を表すブロック図である。
【図2】無線通信システム1における車載通信装置10と携帯端末20との間の通信処理の手順の第一の例を表すフローチャートである。
【図3】携帯端末20から車載通信装置10へ伝送される制御情報のデータ構成を示す図である。
【図4】無線通信システム1における車載通信装置10と携帯端末20との間の通信処理の手順の第二の例を表すフローチャートである。
【図5】無線通信システム1における車載通信装置10と携帯端末20との間の通信処理の手順の第三の例を表すフローチャートである。
【図6】通信処理の手順の第四の例において携帯端末20から車載通信装置10へ伝送される制御情報のデータ構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0023】
<システムの構成>
まず、図1を参照しつつ、本発明の実施形態に係る無線通信システム1の構成について説明する。図1に示されるように、無線通信システム1は、自動車などの車両に搭載され、車両内でのローカルな無線通信の機能を備えた車載通信装置10と、移動体通信の機能と機器間でのローカルな無線通信の機能とを兼ね備える携帯型の無線通信装置の一例である携帯端末20とを含むシステムである。
【0024】
車載通信装置10は、本発明の実施形態に係る車載無線通信装置の一例であり、携帯端末20は、本発明の実施形態に係る携帯端末の一例である。なお、図1には、無線通信システム1を構成する車載通信装置10及び携帯端末20に加え、DSRC車載装置30、DSRC路側装置40、無線局50、インターネット7及びサーバ60も示されている。なお、DSRCは、Dedicated Short Range Communications を意味する。
【0025】
DSRC車載装置30は、車両に搭載され、道路沿いに配置された複数のDSRC路側装置40各々との間で、5.8GHz帯のISMバンドを用いた無線通信を行う装置である。DSRC路側装置40の通信エリアは、20メートルから30メートル程度の範囲内に制限されており、DSRC車載装置30は、DSRC路側装置40各々の通信エリア内に入ったことを自動的に検出し、DSRC路側装置40との間で無線通信を行う。
【0026】
DSRC車載装置30は、例えば、車両の進行方向における道路の交通情報又は道路の利用料などの案内情報をDSRC路側装置40から取得し、その案内情報を車載通信装置10へ送信する。
【0027】
<車載通信装置>
車載通信装置10は、カーナビゲーション装置又はカーオーディオ装置などの車載装置と接続される、又はそのような車載装置の一部に含まれることにより、車載装置とデータの受け渡しが可能な装置である。図1に示されるように、車載通信装置10は、車内有線通信部11、車内無線通信部12、搬送波制御部13及び車内無線通信制御部14を備えている。
【0028】
車内有線通信部11は、MOST(Media Oriented Systems Transport)、IDB−1394もしくはCAN(Controller Area Network)などの車載機器間ネットワークの通信方式、或いはRS232もしくはUSB(Universal Serial Bus)などの通信規格に従って、通信ケーブル8を通信媒体とする有線通信を行う通信インターフェースである。DSRC車載装置30は、車載通信装置10が車内有線通信部11を通じて有線通信を行う際の通信相手の一つである。
【0029】
車内無線通信部12は、車両内で第一の無線通信方式によりローカルエリアで機器間の無線通信を行う通信インターフェースである。第一の無線通信方式は、例えば、IEEE802.11、Bluetooth(Bluetooth SGI Inc の登録商標)又はIrDA(Infrared Data Association)などの通信方式である。
【0030】
以下の説明において、ローカルエリアの無線通信と車内無線通信とは、いずれも第一の無線通信方式に従った無線通信を意味する用語として用いられる。概ね、車内無線通信は、車載通信装置10が実行する第一の無線通信方式に従った無線通信のことを指し、ローカルエリアの無線通信は、携帯端末20が実行する第一の無線通信方式に従った無線通信のことを指す。
【0031】
搬送波制御部13は、車内無線通信部12が無線通信に用いる電波又は赤外線波などの搬送波の出力特性を制御する装置である。例えば、搬送波制御部13は、車内無線通信部12が無線通信に用いる搬送波の強度、周波数及び出力周期のうちの一つ又は複数を制御する機能を備える。本実施形態は、搬送波制御部13が、搬送波の特性の一例として搬送波の電波強度を制御する例を示す。なお、搬送波の強度の制御には、搬送波の出力の開始及び停止の制御が含まれる。
【0032】
車内無線通信制御部14は、車内無線通信部12及び搬送波制御部13を制御することにより、車両内に持ち込まれた携帯端末20との間で行われる車内無線通信を制御するマイクロコンピュータ又はマイクロコンピュータを含む回路である。例えば、車内無線通信制御部14は、車両内の各機器を制御する車載ECU(Electronic Control Unit)の一つである。
【0033】
また、車内無線通信制御部14には、リンク処理部141、制御情報取得部142及びタイミング制御部143などが含まれる。リンク処理部141、制御情報取得部142及びタイミング制御部143は、例えば、車載ECUなどが備えるマイクロコンピュータと、そのマイクロコンピュータが実行するプログラムモジュールとにより構成される。或いは、リンク処理部141、制御情報取得部142及びタイミング制御部143が、それぞれの機能を果たす制御回路として構成されてもよい。
【0034】
リンク処理部141は、車内無線通信部12を制御することにより、車両内に持ち込まれた携帯端末20との間で車内無線通信の開始のために必要な初期処理であるリンク処理を実行する。
【0035】
制御情報取得部142は、携帯端末20との間の車内無線通信がリンク処理部141によって確立された後に、車内無線通信部12を通じて車内無線通信の制御情報70を取得する処理を実行する。
【0036】
図3は、携帯端末20から車載通信装置10へ伝送される制御情報70のデータ構成の一例を示す図である。図3に示されるように、制御情報70には、通信開始時期データ71、通信許容時間データ72及び通信終了条件データ73が含まれる。
【0037】
通信開始時期データ71は、携帯端末20との間の車内無線通信が中断された場合に、その中断の後に携帯端末20との間の車内無線通信の開始が許容される時期を表すデータである。また、通信許容時間データ72は、通信開始時期データ71が表す車内無線通信の再開時点から、携帯端末20との間の車内無線通信が許容される時間を表すデータである。
【0038】
従って、車載通信装置10において、通信開始時期データ71及び通信許容時間データ72は、携帯端末20との間の車内無線通信の中断後に携帯端末20との間の車内無線通信が許容される時期を表す。また、通信終了条件データ73は、携帯端末20との間の車内無線通信を終了させる条件を表すデータである。
【0039】
通信開始時期データ71は、例えば、携帯端末20との間で一定周期で開始される車内無線通信の開始の周期を表すデータである。また、車載通信装置10及び携帯端末20が、共通のイベントを検知できる場合、そのイベントを表すデータが、通信開始時期データ71として設定されることも考えられる。例えば、車載通信装置10及び携帯端末20が、GPSなどによって現在位置又は移動距離を検出するセンサを備えている場合がある。この場合、通信開始時期データ71が、現在位置が所定の位置に到達したというイベント、又は所定の距離だけ移動したというイベントを表すデータであることが考えられる。
【0040】
上述の「所定の位置」の取得方法としては、携帯端末20が、無線通信を通じてインターネット7上の計算機であるサーバ60から取得する方法が考えられる。また、車載通信装置10が、予め装置内のROMなどの記憶装置内に「所定の位置」のデータを保持することも考えられる。また、携帯端末20が、サーバ60から取得した「所定の位置」のデータを無線通信により車載装置10へ送信し、車載通信装置10が、その「所定の位置」のデータを携帯端末20から無線通信により取得することも考えられる。なお、DSRC車載装置30が、GPSなどによって現在位置又は移動方向と移動距離とを検出するセンサを備えていれば、車載通信装置10が、DSRC車載装置30から「所定の位置」のデータを取得することも考えられる。
【0041】
また、上述の「所定の位置」が、DSRC車載装置30の無線通信の相手、即ち、図1に示されるDSRC路側装置40の設置位置である場合も考えられる。一般に、DSRC路側装置40が一度設置されると、その設置位置が変更されることは希であるが、新たなDSRC路側装置40が設置されることがある。
【0042】
そのため、車載無線装置10は、DSRC車載装置30が最寄りのDSRC路側装置40との通信接続を確立したときの現在位置、又は、DSRC通信の受信データに含まれるDSRC路側装置40の位置を、「所定の位置」として内部の記憶部に蓄積して利用してもよい。
【0043】
そして、車載無線装置10がGPSなどによって現在位置又は移動距離を検出するセンサを備えている場合は、蓄積した「所定の位置」に到達したというイベントを車載無線装置10で検出することができる。また、車載無線装置10が、GPSなどによって現在位置又は移動方向と移動距離とを検出するセンサを備えている携帯端末20から現在位置の情報を取得し、取得した情報に基づいて、蓄積した「所定の位置」に到達したというイベントを検出してもよい。
【0044】
なお、上述の通信開始時期データ71が、車載無線通信装置30に有線接続された機器から提供されることも考えられる。例えば、後述のDSRC車載装置30が、車載通信装置10に対し、「DSRC通信接続」、「DSRC通信認証完了」、「DSRC通信切断」などDSRC通信のイベントを表すデータを、通信開始時期データ71として設定することが考えられる。この場合、DSRC車載装置30は、通信開始時期データ71として設定されたイベントを示すDSRC通信イベントデータを車載通信装置10に送信する。
【0045】
タイミング制御部143は、取得された制御情報70における通信開始時期データ71及び通信許容時間データ72の内容に従って、車内無線通信部12を通じて携帯端末20との間で行う車内無線通信の時期を制御する。
【0046】
<携帯端末>
一方、携帯端末20は、携帯電話機、スマートフォン又は無線通信機能を備えたタブレット型端末などの携帯型の無線通信装置であり、ローカルエリアの無線通信機能と、移動体通信の機能とを兼ね備える。図1に示されるように、携帯端末20は、移動体通信部21、ローカル無線通信部22、搬送波制御部23及び端末通信制御部24を備える。
【0047】
ローカル無線通信部22は、周辺に存在する機器との間でローカルエリアの無線通信を行う無線通信インターフェースである。ローカルエリアの無線通信は、前述したように、車載通信装置10の車内無線通信部12の通信方式と同じ第一の無線通信方式に従って比較的狭い領域内で他の機器との間で行われる無線通信である。
【0048】
移動体通信部21は、基地局又は人工衛星などの無線局50を通じて第二の無線通信方式に従って移動体通信を行う無線通信インターフェースである。第二の無線通信方式は、例えば、携帯電話網で採用されているIMT−2000又はIMT−Advancedなどの規格に準拠した無線通信方式である。前者の規格に準拠した通信は第3世代移動体通信と称され、後者の規格に準拠した通信は第4世代移動体通信と称される。なお、IMTは、International Mobile Telecommunication を意味する。
【0049】
また、移動体通信部21は、移動体通信によってインターネット7上の計算機であるサーバ60と通信することも可能である。例えば、移動体通信部21は、不図示の位置検出装置によって検出される現在位置の情報をサーバ60へ送信し、現在位置を基準とする所定範囲の地域における地図のデータをサーバ60から取得する。また、移動体通信部21が、不図示の操作部を通じて入力された音楽の識別情報をサーバ60へ送信し、音楽のデータをサーバ60から取得する。
【0050】
また、サーバ60から得られたコンテンツデータは、携帯端末20から車載通信装置10へ送信され、車載通信装置10との間でデータの受け渡しが可能な不図示のカーナビゲーション装置又はカーオーディオ装置などの車載装置によって再生される。
【0051】
携帯端末20の搬送波制御部23は、車載通信装置10の搬送波制御部13と同様に、ローカル無線通信部22が無線通信に用いる電波又は赤外線波などの搬送波の出力特性として、例えば、搬送波の強度、周波数及び出力周期のうちの一つ又は複数を制御する装置である。本実施形態は、搬送波制御部23が、搬送波の特性の一例として搬送波の電波強度を制御する例を示す。なお、搬送波の強度の制御には、搬送波の出力の開始及び停止の制御が含まれる。
【0052】
端末通信制御部24は、移動体通信部21、ローカル無線通信部22及び搬送波制御部23を制御することにより、無線局50との間で行われる移動体通信、及び車載通信装置10などの他の機器との間で行われるローカルエリアの無線通信を制御するマイクロコンピュータ又はマイクロコンピュータを含む回路である。
【0053】
また、端末通信制御部24には、移動体通信制御部241、ローカル無線通信制御部242、通信方式選択部243及び制御情報出力部244などが含まれる。移動体通信制御部241、ローカル無線通信制御部242、通信方式選択部243及び制御情報出力部244は、例えば、端末通信制御部24が備えるマイクロコンピュータと、そのマイクロコンピュータが実行するプログラムモジュールとにより構成される。或いは、移動体通信制御部241、ローカル無線通信制御部242、通信方式選択部243及び制御情報出力部244が、それぞれの機能を果たす制御回路として構成されてもよい。
【0054】
移動体通信制御部241は、移動体通信部21を制御することにより、無線局50との間で移動体通信を実行する。
【0055】
ローカル無線通信制御部242は、ローカル無線通信部22を制御することにより、近くに存在する機器との間で、ローカルエリアの無線通信の開始のために必要な初期処理であるリンク処理、及びデータの送受信処理を実行する。
【0056】
通信方式選択部243は、移動体通信とローカルエリアの無線通信とを選択的に切り替える制御を行う。即ち、通信方式選択部243は、ローカルエリアの無線通信を行う期間における移動体通信を禁止する制御を行う。従って、携帯端末20は、移動体通信とローカルエリアの無線通信とを選択的に切り替える制限付き携帯端末の一例である。
【0057】
制御情報出力部244は、車載通信装置10などの他の機器との間のローカルエリアの無線通信がローカル無線通信制御部242によって確立された後に、ローカル無線通信部22を通じて制御情報70を出力する処理を実行する。携帯端末20において、図3に示される制御情報70は、携帯端末20が第一の無線通信方式によるローカルエリアの無線通信を許容する時期を表す通信開始時期データ71及び通信許容時間データ72を含む。なお、ステップS205で出力される制御情報70の内容は、端末通信制御部24のメモリに記憶される。
【0058】
<通信処理の第一の例>
次に、図2に示されるフローチャートを参照しつつ、無線通信システム1における車載通信装置10と携帯端末20との間の通信処理の手順の第一の例について説明する。以下の説明において、S11,S12,…,S21,S22,…は、処理の手順の識別符号を表す。また、図2に示される車載通信装置10及び携帯端末20各々の処理は、それぞれの電源がON状態になったときなどに開始される。
【0059】
<携帯端末の処理の第一の例>
まず、携帯端末20の処理について説明する。携帯端末20において、まず、移動体通信制御部241が、移動体通信部21を通じた移動体通信によるデータ通信を開始する(S201)。これ以降、携帯端末20は、無線局50を通じたサーバ60とのデータ通信が可能となる。
【0060】
さらに、ローカル無線通信制御部242が、ローカルエリアの無線通信を開始する条件が成立したか否かを判別する処理を随時実行する(S202)。ローカルエリアの無線通信を開始する条件は、携帯端末20において予め設定された条件であり、例えば、携帯端末20が備える不図示の操作部に対して通信開始の操作が行われたこと、などである。
【0061】
そして、ローカル無線通信制御部242が、ローカルエリアの無線通信を開始する条件が成立したことを検知すると、搬送波制御部23が、ローカルエリアの無線通信に用いられる搬送波の出力を開始させる(S203)。
【0062】
搬送波の出力開始に続いて、ローカル無線通信制御部242が、ローカル無線通信部22を制御することにより、通信エリア内に存在する他の機器との間でローカルエリアの無線通信を開始するためのリンク処理を実行する(S204)。本実施形態において、通信相手となる他の機器は、車載通信装置10である。
【0063】
そして、リンク処理が成功し、ローカルエリアの無線通信が確立すると、制御情報出力部244が、ローカル無線通信部22を通じて制御情報70を出力する(S205)。さらに、通信方式選択部243が移動体通信制御部241に中断指令を出し、移動体通信制御部241が移動体通信を中断させる(S206)。
【0064】
それに続いて、通信方式選択部243がローカル無線通信制御部242にデータ通信開始指令を出し、ローカル無線通信制御部242が、ローカル無線通信部22を制御することによってローカルエリアの無線通信によるデータ通信を開始する(S207)。
【0065】
そして、ローカルエリアの無線通信が行われているときに、通信方式選択部243が、ローカルエリアの無線通信に関し、終了条件が成立したか否かの判別と、通信許容時間が経過したか否かの判別とを随時実行する(S208,S209)。ローカルエリアの無線通信は、終了条件の成立又は通信許容時間の経過が検知されるまで継続される。
【0066】
ステップS208で判別される終了条件は、携帯端末20において予め設定された条件であり、例えば、携帯端末20が備える不図示の操作部に対して通信終了の操作が行われたこと、又は、通信相手から一定時間以上継続して応答がないこと、などである。
【0067】
ステップS209で参照される通信許容時間は、制御情報70に設定された通信許容時間データ72が表す時間である。また、ステップS207でのデータ通信が開始されてからの経過時間が、ステップS209における判別の対象である。通信許容時間が経過したことは、ローカルエリアの無線通信を中断する条件の一例である。従って、ステップS209の処理は、ローカルエリアの無線通信を中断する条件を判別する処理の一例である。
【0068】
そして、ステップS208において終了条件の成立が検知された場合、通信方式選択部243が、携帯端末20における無線通信に関する処理を、前述したステップS201からの処理へ移行させる。なお、処理がステップS208からステップS201へ移行される際に、搬送波制御部23が、ローカルエリアの無線通信の搬送波を停止させるが、そのことは、図2において省略されている。
【0069】
また、ステップS209において通信許容時間の経過が検知された場合、搬送波制御部23が、ローカルエリアの無線通信の搬送波を停止させる(S210)。
【0070】
それに続いて、通信方式選択部243が移動体通信制御部241にデータ通信開始指令を出し、移動体通信制御部241が、移動体通信部21を制御することにより、ステップS206で中断された移動体通信によるデータ通信を再開させる(S211)。
【0071】
さらに、移動体通信が行われているときに、通信方式選択部243が、ステップS205で記憶した制御情報70の通信開始時期データ71の内容に従って、ローカルエリアの無線通信を再開する時期が来たか否かの判別を随時実行する(S212)。移動体通信は、ローカルエリアの無線通信の再開の時期が来るまで継続される。
【0072】
そして、ステップS212においてローカルエリアの無線通信の再開時期が来たことが検知された場合、搬送波制御部23が、ローカルエリアの無線通信の搬送波の出力を開始させる(S213)。さらに、通信方式選択部243が、携帯端末20における無線通信に関する処理を、前述したステップS206からの処理へ移行させる。これにより、携帯端末20において、移動体通信が中断され、ローカルエリアの無線通信が再開される。
【0073】
以上に示したように、携帯端末20の搬送波制御部23は、制御情報70に従ってローカル無線通信部22を通じて車載通信装置10と通信が行われる期間とその他の期間とで、ローカルエリアの無線通信に用いられる搬送波の出力特性を制御する。
【0074】
<車載通信装置の処理の第一の例>
次に、車載通信装置10の処理について説明する。車載通信装置10において、まず、車内有線通信部11が、通信ケーブル8を通信媒体とする有線通信を開始するためのリンク処理を実行する(S101)。本実施形態において、有線通信の通信相手となる機器は、DSRC車載装置30などの他の車載装置である。
【0075】
そして、リンク処理が成功し、DSRC車載装置30などの車載装置との有線通信が確立すると、車内有線通信部11は、DSRC車載装置30などの他の車載装置との間で車内の有線通信によるデータ通信を開始する(S102)。これ以降、車載通信装置10は、DSRC車載装置30を通じたDSRC路側装置40とのデータ通信が可能となる。
【0076】
さらに、車内無線通信制御部14のタイミング制御部143が、車内無線通信を開始する条件が成立したか否かを判別する処理を随時実行する(S103)。車内無線通信を開始する条件は、車載通信装置10において予め設定された条件であり、例えば、車載通信装置10が備える不図示の操作部に対して通信開始の操作が行われたこと、などである。また、車載通信装置10の起動が、車内無線通信を開始する条件であることも考えられる。この場合、ステップS201の処理は不要である。
【0077】
そして、タイミング制御部143が、車内無線通信を開始する条件が成立したことを検知すると、搬送波制御部13が、車内無線通信に用いられる搬送波の出力を開始させる(S104)。
【0078】
搬送波の出力開始に続いて、リンク処理部141が、車内無線通信部12を制御することにより、車両内に存在する携帯端末20との間で車内無線通信を開始するためのリンク処理を実行する(S105)。
【0079】
なお、ステップS105において、車載通信装置10の車内無線通信部12は、無線LANにおけるアクセスポイントとクライアントとの間、もしくはアドホック通信端末間の通信の接続と同様に、ローカルエリアの無線通信が可能な携帯端末20との通信を無差別に接続する動作を実行することが考えられる。しかしながら、車内無線通信部12が、予め設定された秘密鍵を用いて、WEP(Wired Equivalent Privacy)又はWPA(Wi-Fi Protected Access)などの暗号化方式に従って通信データを暗号化し、無線通信のセキュリティが高められることが望ましい。
【0080】
そして、リンク処理が成功し、車内無線通信が確立すると、制御情報取得部142が、車内無線通信部12を通じて携帯端末20から制御情報70を取得する(S106)。取得された制御情報70は、車内無線通信制御部14のメモリに記録される。
【0081】
さらに、タイミング制御部143が、車内無線通信部12を制御することによって車内無線通信によるデータ通信を開始する(S107)。
【0082】
そして、車内無線通信が行われているときに、タイミング制御部143が、車内無線通信に関し、終了条件が成立したか否かの判別と、通信許容時間が経過したか否かの判別とを随時実行する(S108,S109)。車内無線通信は、終了条件の成立又は通信許容時間の経過が検知されるまで継続される。
【0083】
本実施形態において、ステップS108で判別される終了条件は、取得された制御情報70に設定されている通信終了条件データ73が示す条件を含む。また、ステップS108で判別される終了条件に、車載通信装置10において予め設定された条件が含まれることも考えられる。その終了条件は、例えば、車載装置10が備える不図示の操作部に対して通信終了の操作が行われたこと、又は、通信相手から一定時間以上継続して応答がないこと、などである。
【0084】
また、ステップS109で参照される通信許容時間は、制御情報70に設定された通信許容時間データ72が表す時間である。また、ステップS107でのデータ通信が開始されてからの経過時間が、ステップS109における判別の対象である。通信許容時間が経過したことは、車内無線通信を中断する条件の一例である。従って、ステップS109の処理は、車内無線通信を中断する条件を判別する処理の一例である。
【0085】
そして、ステップS108において少なくとも1つの終了条件の成立が検知された場合、タイミング制御部143が、車載通信装置10における車内無線通信に関する処理を、前述したステップS103からの処理へ移行させる。なお、処理がステップS108からステップS103へ移行される際に、搬送波制御部13が、車内無線通信の搬送波を停止させるが、そのことは、図2において省略されている。
【0086】
また、ステップS109において通信許容時間の経過が検知された場合、搬送波制御部13が、車内無線通信の搬送波を停止させる(S110)。これにより、車載通信装置10における車内無線通信によるデータ通信は中断される。
【0087】
そして、車載通信装置10の車内無線通信が中断されているときに、タイミング制御部143が、ステップS105で取得された制御情報70の通信開始時期データ71の内容に従って、車内無線通信の再開の時期が来たか否かの判別を随時実行する(S111)。車載通信装置10による車内無線通信は、車内無線通信の再開の時期が来るまで継続される。
【0088】
そして、ステップS111において車内無線通信の再開時期が来たことが検知された場合、搬送波制御部13が、車内無線通信の搬送波の出力を開始させる(S112)。さらに、タイミング制御部143が、車載通信装置10における車内無線通信に関する処理を、前述したステップS107からの処理へ移行させる。これにより、車載通信装置10において、ステップS110において中断された車内無線通信によるデータ通信が再開される。
【0089】
以上に示したように、車載通信装置10の搬送波制御部13は、制御情報70に従って車内無線通信部12を通じて携帯端末20と通信が行われる期間とその他の期間とで、車内無線通信に用いられる搬送波の出力特性を制御する。なお、車載通信装置10の搬送波制御部13は、搬送波出力制御部の一例である。
【0090】
<効果>
無線通信システム1においては、ローカルエリアの無線通信が携帯端末20において許容される時期の情報を含む制御情報70が、携帯端末20から車載通信装置10へ伝送される(S205,S105)。さらに、車載通信装置10は、取得された制御情報70に従って、携帯端末20との間で行う車内無線通信の時期を制御する(S109,S111)。そのため、車両内に持ち込まれる携帯端末20は、移動体通信とローカルエリアの無線通信とを選択的に切り替えつつ、移動体通信のサービスを利用できる。さらに、車載通信装置10は、車内無線通信が許容される時期の情報を予め取得できるため、無駄なリンク処理を要することなく円滑に携帯端末20とのデータ通信を実行できる(S107)。従って、車載通信装置10は、携帯端末20のデータ、例えば、携帯端末20がインターネット7経由で得たコンテンツデータを、車内無線通信によって無駄なリンク処理を要することなく円滑に取得できる。
【0091】
また、無線通信システム1において、車載通信装置10の搬送波制御部13及び携帯端末20の搬送波制御部23は、制御情報70に従って第一の無線通信方式による通信が行われる期間とその他の期間とで、その通信に用いられる搬送波の出力特性を制御する。そのため、車載通信装置10と携帯端末20との間の無線通信が中断されている間における無駄な電力の消費が低減される。
【0092】
<通信処理の第二の例>
次に、図4に示されるフローチャートを参照しつつ、無線通信システム1における車載通信装置10と携帯端末20との間の通信処理の手順の第二の例について説明する。この第二の例は、図2に示された第一の例と比較して、携帯端末20から車載通信装置10へ制御情報70が伝送されるタイミングのみが異なる。図4において、図2に示される処理と同じ処理は、同じ参照符号が付されている。以下、第二の例における第一の例と異なる点についてのみ説明する。
【0093】
第一の例においては、制御情報70は、車載通信装置10と携帯端末20との間で最初に無線通信が実行されたときに1回だけ携帯端末20から車載通信装置10へ伝送される。
【0094】
一方、第二の例においては、車載通信装置10と携帯端末20との間で断続的に無線通信が実行される状況下において、最初の無線通信が実行されるときに加え、無線通信が再開されるごとに、制御情報70が、携帯端末20から車載通信装置10へ伝送される。
【0095】
即ち、携帯端末20におけるステップS213の手順において、ローカルエリアの無線通信の搬送波の出力が開始された後、通信方式選択部243は、携帯端末20における無線通信に関する処理を、前述したステップS205からの処理へ移行させる。これにより、携帯端末20において、移動体通信が中断され、ローカルエリアの無線通信が再開されるとともに、車載通信装置10に対する制御情報70の出力が実行される。
【0096】
また、車載通信装置10におけるステップS112の手順において、車内無線通信の搬送波の出力が開始された後、タイミング制御部143は、車載通信装置10における車内無線通信に関する処理を、前述したステップS106からの処理へ移行させる。これにより、車載通信装置10において、中断された車内無線通信によるデータ通信が再開されるとともに、制御情報70が携帯端末20から取得される。
【0097】
この第二の例においては、車載通信装置10と携帯端末20との間の無線通信が再開されるごとに、携帯端末20の通信方式選択部243は、次回の無線通信を許容する時期の情報を含む制御情報70の内容を新たに設定することが可能である。例えば、通信方式選択部243が、それまでの移動体通信の負荷の状況に応じて、通信開始時期データ71及び通信許容時間データ72を更新することが考えられる。図4に示される処理を実行する無線通信システム1も、本発明の実施形態の一つである。
【0098】
<通信処理の第三の例>
次に、図5に示されるフローチャートを参照しつつ、無線通信システム1における車載通信装置10と携帯端末20との間の通信処理の手順の第三の例について説明する。この第三の例は、図2に示された第一の例と比較して、車載通信装置10と携帯端末20との間の無線通信の中断する手法が異なる。図6において、図2に示される処理と同じ処理は、同じ参照符号が付されている。以下、第三の例における第一の例と異なる点についてのみ説明する。
【0099】
第一の例においては、車載通信装置10及び携帯端末20の各々が、制御情報70に含まれる通信開始時期データ71及び通信許容時間データ72の内容に応じて、無線通信を中断する時期を判別した(S109,S209)。
【0100】
一方、第三の例において、携帯端末20の通信方式選択部243は、ローカルエリアの無線通信が行われているときに、ローカルエリアの無線通信に関し、終了条件が成立したか否かの判別と、中断条件が成立したか否かの判別とを随時実行する(S208,S214)。
【0101】
ステップS214において、通信方式選択部243は、通信許容時間データ72の内容に関わらず、通信開始時期データ71の内容に矛盾が生じない範囲で、予め定められた他の条件に基づいて無線通信の中断時期を制御できる。
【0102】
そして、通信方式選択部243は、中断条件の成立を検知したときに、ローカル無線通信部22を通じて車載通信装置10に対して中断通知を送信する(S215)。その後、携帯端末20の処理はステップS211からの処理へ移行される。
【0103】
また、第三の例において、車載通信装置10のタイミング制御部143は、車内無線通信が行われているときに、車内無線通信の終了条件が成立したか否かの判別と、携帯端末20から中断通知が受信されたか否かの判別とを随時実行する(S108,S113)。
【0104】
そして、タイミング制御部143は、中断通知が受信されたときに、車載通信装置10の処理はステップS110からの処理へ移行される。
【0105】
この第三の例においては、携帯端末20は、車載通信装置10との無線通信の中断のタイミングを、状況に応じて側で独自に制御するこが可能である。また、通信を中断する時期を表す通信許容時間データ72は、制御情報70に含められなくてもよい。例えば、通信方式選択部243が、移動体通信及びローカルエリアの無線通信の負荷の状況に応じて、中断通知の送信タイミングを制御することが考えられる。図5に示される処理を実行する無線通信システム1も、本発明の実施形態の一つである。
【0106】
なお、図5に示される第三の例において、携帯端末20における搬送波の出力特性の制御が省力されているが、図1に示されるステップS211及びS213と同様の処理が、第三の例に含められてもよい。
【0107】
<通信処理の第四の例>
ところで、車載通信装置10の通信相手となる携帯端末20が、移動体通信とローカルエリアの無線通信とを選択的に切り替えるタイプの携帯端末、即ち、制限付き携帯端末ではない場合も考えられる。そこで、以下に示すような通信処理の第四の例も考えられる。
【0108】
第四の例において、車載通信装置10の制御情報取得部142は、車内無線通信部12を通じて、携帯端末20がローカルエリアの無線通信の実行中に移動体通信の実行を休止するタイプであるか否かを表す端末タイプ識別データを取得する。なお、前述したように、ローカルエリアの無線通信は、第一の無線通信方式による無線通信であり、移動体通信は、第二の無線通信方式による移動体通信である。
【0109】
図6は、端末タイプ識別データ74が、制御情報70に含まれる例を示している。この場合、携帯端末20の制御情報出力部244は、ステップS205において、端末タイプ識別データ74を含む制御情報70を出力する。一方、車載通信装置10の制御情報取得部142は、ステップS106において、端末タイプ識別データ74を、制御情報70の一部として取得する。
【0110】
そして、車載通信装置10のタイミング制御部143は、端末タイプ識別データ74がローカルエリアの無線通信の実行中に移動体通信の実行を休止するタイプであることを示す休止タイプ識別子であるか否かを判別する。さらに、車載通信装置10のタイミング制御部143は、端末タイプ識別データ74が休止タイプ識別子である場合にのみ、即ち、休止タイプ識別子を取得した場合のみ、制御情報70に従って車内無線通信の時期を制御する。
【0111】
また、携帯端末20が、移動体通信とローカルエリアの無線通信とを選択的に切り替えるタイプではない場合に、制御情報70を出力する機能を備えないことも考えられる。この場合、制御情報70そのものを休止タイプ識別子と捉えることが可能である。そのため、車載通信装置10のタイミング制御部143は、ステップS106において制御情報70を取得できた場合にのみ、制御情報70に従って車内無線通信の時期を制御する。
【0112】
なお、制御情報70に従って車内無線通信の時期を制御する処理は、第一の例及び第二の例におけるステップS108〜S112の処理、及び第三の例におけるステップS108,S113,S110〜S112の処理である。
【0113】
以上に示される通信処理の第四の例を実行する無線通信システム1も、本発明の実施形態の一つである。
【0114】
<その他>
以上に示された実施形態において、制御情報70における通信終了条件データ73が省略されることも考えられる。その場合、車載通信装置10のタイミング制御部143は、ステップS108において、制御情報70の内容とは異なる予め設定された終了条件を判別する。
【0115】
また、制御情報70における通信許容時間データ72は、車載通信装置10と携帯端末20との間の無線通信の中断時期を表す情報の一例である。そのため、第一の例又は第二の例において、通信許容時間データ72の代わりに、ローカルエリアの無線通信の中断時期を表す他のデータが、制御情報70に含められることも考えられる。例えば、無線通信が開始又は再開された時点を基準とする通信中断時期のデータが、制御情報70に含められることなどが考えられる。
【0116】
また、以上に示された実施形態において、車載通信装置10の搬送波制御部13及び携帯端末20の搬送波制御部23は、第一の無線通信方式による通信が行われる期間とその他の期間とで、その通信に用いられる搬送波の出力特性の制御の一例として、搬送波の出力及び停止を制御する。しかしながら、搬送波の出力特性の制御としては、搬送波の強度の制御の他、搬送波の周波数又は出力周期の制御なども考えられる。
【0117】
例えば、搬送波制御部13及び搬送波制御部23が、第一の無線通信方式による通信が行われる期間に搬送波の電波強度を相対的に強くし、その他の期間の期間において搬送波の電波強度を相対的に弱くすることも考えられる。
【0118】
また、搬送波の周波数帯域が、第一の無線通信方式による通信が行われる期間において、第一の無線通信方式に準拠した帯域に設定され、その他の期間において、第一の無線通信方式に準拠しない帯域に設定されることも考えられる。
【0119】
また、搬送波の出力周期が、第一の無線通信方式による通信が行われる期間における出力周期よりも、その他の期間における出力周期の方が長い周期に設定されることも考えられる。また、搬送波制御部13及び搬送波制御部23が、第一の無線通信方式による通信が行われる期間とその他の期間とで、無線通信に用いる搬送波の強度、周波数及び出力周期のうちの複数の特性を併せて変更することも考えられる。
【符号の説明】
【0120】
1 無線通信システム、7 インターネット、8 通信ケーブル、10 車載通信装置、10 車載装置、11 車内有線通信部、12 車内無線通信部、13 搬送波制御部、14 車内無線通信制御部、20 携帯端末、21 移動体通信部、22 ローカル無線通信部、23 搬送波制御部、24 端末通信制御部、30 DSRC車載装置、40 路側装置、50 無線局、60 サーバ、70 制御情報、71 通信開始時期データ、72 通信許容時間データ、73 通信終了条件データ、74 端末タイプ識別データ、141 リンク処理部、142 制御情報取得部、143 タイミング制御部、241 移動体通信制御部、242 ローカル無線通信制御部、243 通信方式選択部、244 制御情報出力部、S101〜S112,S201〜S214 処理手順の識別符号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内で第一の無線通信方式によるローカルエリアでの無線通信を行う車内無線通信部を備えた車載無線通信装置と、
前記第一の無線通信方式によるローカルエリアでの無線通信を行う第一携帯側無線通信部、及び第二の無線通信方式による移動体通信を行う第二携帯側無線通信部を備えた携帯端末と、を含む無線通信システムであって、
前記携帯端末は、
前記第一携帯側無線通信部を通じて、前記第一の無線通信方式による無線通信を許容する時期を表す通信時期情報を出力する通信時期情報出力部を備え、
前記車載無線通信装置は、
前記車内無線通信部を通じて、前記通信時期情報を取得する通信時期情報取得部と、
取得された前記通信時期情報に従って、前記車内無線通信部を通じて前記携帯端末との間で行う通信の時期を制御する通信制御部と、を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
車両内で携帯端末との間で第一の無線通信方式によるローカルエリアでの無線通信を行う車内無線通信部を備えた車載無線通信装置であって、
前記車内無線通信部を通じて、前記第一の無線通信方式による無線通信が許容される時期を表す通信時期情報を前記携帯端末から取得する通信時期情報取得部と、
取得された前記通信時期情報に従って、前記車内無線通信部を通じて前記携帯端末との間で行う通信の時期を制御する通信制御部と、を備えることを特徴とする車載無線通信装置。
【請求項3】
前記通信時期情報に従って前記車内無線通信部を通じて前記携帯端末と通信が行われる期間とその他の期間とで前記第一の無線通信方式による無線通信に用いられる搬送波の出力特性を制御する搬送波出力制御部をさらに備える請求項2に記載の車載無線通信装置。
【請求項4】
前記車内無線通信部を通じて、前記携帯端末が前記第一の無線通信方式による無線通信の実行中に第二の無線通信方式による移動体通信の実行を休止するタイプであることを表す休止タイプ識別情報を前記携帯端末から取得する端末種別情報取得部をさらに備え、
前記通信制御部は、前記携帯端末から前記休止タイプ識別情報を取得した場合にのみ、前記通信時期情報に従って通信の時期を制御する、請求項2又は請求項3に記載の車載無線通信装置。
【請求項5】
第一の無線通信方式によるローカルエリアでの無線通信を行う第一携帯側無線通信部、及び第二の無線通信方式による移動体通信を行う第二携帯側無線通信部を備えた携帯端末であって、
前記第一携帯側無線通信部を通じて通信を行う期間と前記第二携帯側無線通信部を通じて通信を行う期間とを選択的に切り替える切替制御部と、
前記第一携帯側無線通信部を通じて、前記第一の無線通信方式による無線通信を許容する時期を表す通信時期情報を出力する通信時期情報出力部と、を備えることを特徴とする携帯端末。
【請求項6】
車両内で第一の無線通信方式による無線通信を行う車内無線通信部を備えた車載無線通信装置と、前記第一の無線通信方式による無線通信を行う第一携帯側無線通信部、及び第二の無線通信方式による移動体通信を行う第二携帯側無線通信部を備えた携帯端末と、の間で行われる無線通信の方法であって、
前記携帯端末が、前記第一携帯側無線通信部を通じて、前記第一の無線通信方式による無線通信を許容する時期を表す通信時期情報を出力する手順と、
前記車載無線通信装置が、前記車内無線通信部を通じて、前記通信時期情報を取得する手順と、
前記車載無線通信装置が、取得された前記通信時期情報に従って、前記車内無線通信部を通じて前記携帯端末との間で行う通信の時期を制御する手順と、を有することを特徴とする無線通信の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−186666(P2012−186666A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48516(P2011−48516)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】