説明

無線通信システムおよびダイバーシチ受信装置

【課題】複数の子局装置を介して無線端末から送信された無線信号を受信する待機時間を短縮し、かつ所要のダイバーシチ効果を得る。
【解決手段】親局装置20は、複数の子局装置のそれぞれを介して伝送された同一の無線端末が送信した同一の無線信号の中から、受信電力が閾値を超えるものを周期的に出力する組合せ検出手段26と、組合せ検出手段26から出力された無線信号について、最大比合成して尤度を出力する軟判定最大比合成手段27と、軟判定最大比合成手段27から出力された尤度を復号化して出力する復号手段28,29と、復号手段28,29の出力に含まれる誤り検出符号により受信の成否を判定し、受信が成功した場合には、組合せ検出手段26に対して受信成功を通知するフレームチェック手段30とを備え、組合せ検出手段26は、フレームチェック手段30から受信成功の通知を受けたときに当該無線信号についての処理を完了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの無線端末から複数の子局装置を介して送信された無線信号を親局装置でダイバーシチ受信する無線通信システムおよびダイバーシチ受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図2は、本発明が適用される無線通信システムの構成例を示す(特許文献1)。
図2において、無線端末1と親局装置20は、複数の子局装置10−1〜10−Nを介して接続される。無線端末1と複数の子局装置10−1〜10−Nは無線回線を介して接続され、複数M個のアンテナおよび伝送系を備える複数の子局装置10−1〜10−Nと親局装置20はM×N本のネットワークケーブルを介して接続される。無線端末1から送信された無線信号は、複数の子局装置10−1〜10−Nの少なくとも1つに受信され、受信した子局装置から親局装置20に伝送される。親局装置20では、無線端末1から2以上の子局装置を介して伝送された同一の信号を最大比合成による受信ダイバーシチを行う。これにより、無線端末1の送信電力が低い場合でも信号を受信することができる。また、親局装置20から無線端末1への送信信号はその逆の経路をとり、親局装置20による送信ダイバーシチも可能である。なお、複数の子局装置10−1〜10−Nと親局装置20はM×N本のネットワークケーブルを介して接続される形態に限らず、N:1の伝送路形態をとるPON(Passive Optical Network)システムや、イーサネット(登録商標)システムなどでもよい。
【0003】
図3は、無線通信システムの子局装置および親局装置の構成例を示す。ここでは、親局装置20で受信ダイバーシチを行う構成に対応し、無線端末1から3個(N=3の場合)の子局装置10−1〜10−3を介して親局装置20へ無線信号を伝送する上り方向についての構成例を示す。また、各子局装置10−1〜10−3がそれぞれM個(図3ではM=2)のアンテナおよび伝送系を備え、子局装置10−1〜10−3と親局装置20が3×2本のネットワークケーブルを介して接続される形態を示す。すなわち、無線端末1と通信可能な子局装置が1つの場合でも親局装置20で受信ダイバーシチが可能になっている。
【0004】
図3において、子局装置10−1〜10−3は、それぞれアンテナ11−1〜11−2に受信する無線端末1からの受信信号をAD変換処理部12−1〜12−2で周波数変換、フィルタリング、AD変換(標本化、デジタル化)等を行い、得られたデジタル信号をパケット化処理部13〜13−2でパケット化し、ヘッダ処理部14−1〜14−2で送受信装置番号等が付加される。その後、ネットワークインタフェース15−1〜15−2でイーサネットパケットに変換されて親局装置20に送信される。
【0005】
親局装置20は、ネットワークインタフェース21に受信する信号からイーサネットパケットを抽出し、ヘッダ処理部22で送受信装置番号を抽出し、パケット化処理部23でデジタル信号が再現される。フレーム同期処理部24は、再現されたデジタル信号に対して自己相関処理等によって無線端末1から送信された無線信号を抽出する。同期検波回路25は、無線信号に対して同期検波処理を行い、軟判定値を出力する。ここまでの処理は、各子局装置10−1〜10−3の各アンテナ11−1〜11−2で受信された無線信号ごとに独立して処理される。
【0006】
組合せ検出部26は、各子局装置10−1〜10−3の各アンテナ11−1〜11−2で受信された無線信号の軟判定値について、たとえば、受信電力が閾値を超えているか否か等の基準に基づいて、その後の処理に使用するもの(組合せ)を選択し、軟判定最大比合成処理部27に出力する。軟判定最大比合成処理部27は、各子局装置10−1〜10−3の各アンテナ11−1〜11−2で受信された無線信号の軟判定値の組合せについて最大比合成を行い、尤度計算処理部29に出力する。尤度計算処理部28は、最大比合成された軟判定値の尤度を計算し、ビタビ復号処理部29に出力する。ビタビ復号処理部29は、入力された尤度の列に対してビタビアルゴリズムに従って復号する。
【0007】
このような子局装置10−1〜10−3および親局装置20の構成により、変復調機能を親局装置20へ集約化し、子局装置のコストおよびメンテナンスコストを低減できるとともに、変復調方式の変更についても柔軟に対応できるため、新しいシステムの迅速な展開において有利である。また、パケットベースで無線信号を転送するため、既存のパケットベースのネットワークサービスの利用が可能であり、低コストでの運用も可能である。本方式を用いることにより、数km程度の無線アクセスネットワークの広域化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−166278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
親局装置は、複数の子局装置を介して伝送された無線端末からの無線信号の最大比合成処理を行う場合に、各子局装置を介する経路の伝送遅延を考慮する必要がある。すなわち、親局装置ですべての子局装置からの無線信号が受信されるまで待機して最大比合成処理を行うか、タイマにより所定の期間が経過するまで待機し、その時点で受信している子局装置からの無線信号について最大比合成処理を行うことになる。しかし、前者は、無線端末からの無線信号を中継できない子局装置があった場合に処理不能になるので後者の方法が一般的であるが、いずれにしても所要のダイバーシチ効果を得るためには処理遅延が大きくなる課題がある。
【0010】
本発明は、複数の子局装置を介して無線端末から送信された無線信号を受信する待機時間を短縮し、かつ所要のダイバーシチ効果を得ることができる無線通信システムおよびダイバーシチ受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、1つの無線端末から複数の子局装置を介して送信された無線信号を親局装置でダイバーシチ受信する無線通信システムにおいて、子局装置は、無線端末から送信された無線信号を受信するアンテナと、アンテナに受信した無線信号を親局装置に送信する第1のインタフェース手段とを備え、親局装置は、子局装置から送信された無線信号を受信する第2のインタフェース手段と、第2のインタフェース手段で受信した無線信号であって、複数の子局装置のそれぞれを介して伝送された同一の無線端末が送信した同一の無線信号の中から、受信電力が閾値を超えるものを周期的に出力する組合せ検出手段と、組合せ検出手段から出力された無線信号について、最大比合成して尤度を出力する軟判定最大比合成手段と、軟判定最大比合成手段から出力された尤度を復号化して出力する復号手段と、復号手段の出力に含まれる誤り検出符号により受信の成否を判定し、受信が成功した場合には、組合せ検出手段に対して受信成功を通知するフレームチェック手段とを備え、組合せ検出手段は、フレームチェック手段から受信成功の通知を受けたときに当該無線信号についての処理を完了する構成である。
【0012】
第2の発明は、1つの無線端末から複数の子局装置を介して送信された無線信号を親局装置でダイバーシチ受信する無線通信システムの親局装置が備えるダイバーシチ受信装置において、子局装置から送信された無線信号を受信する第2のインタフェース手段と、第2のインタフェース手段で受信した無線信号であって、複数の子局装置のそれぞれを介して伝送された同一の無線端末が送信した同一の無線信号の中から、受信電力が閾値を超えるものを周期的に出力する組合せ検出手段と、組合せ検出手段から出力された無線信号について、最大比合成して尤度を出力する軟判定最大比合成手段と、軟判定最大比合成手段から出力された尤度を復号化して出力する復号手段と、復号手段の出力に含まれる誤り検出符号により受信の成否を判定し、受信が成功した場合には、組合せ検出手段に対して受信成功を通知するフレームチェック手段とを備え、組合せ検出手段は、フレームチェック手段から受信成功の通知を受けたときに当該無線信号についての処理を完了する構成である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、所定の周期ごとに、受信している無線信号を用いて最大比合成を行い、復号処理を行った復号信号が正しく受信できている場合には、それ以降に受信する無線信号を最大比合成の対象にする必要がなくなるので、それ以上の待機時間が不要になる。すなわち、すべての子局装置から送信された無線信号が揃うまで待機せず、所定の待機時間で必要十分なダイバーシチ効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の無線通信システムの親局装置のダイバーシチ受信装置の構成例を示す図である。
【図2】本発明が適用される無線通信システムの構成例を示す図である。
【図3】無線通信システムの子局装置および親局装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の無線通信システムの親局装置のダイバーシチ受信装置の構成例を示す。
ここでは、図3に示す無線通信システムの子局装置11−1〜11−3および親局装置20において、子局装置11−1〜11−3の構成は同様であるので、親局装置20の構成例のみについて示す。
【0016】
図1において、親局装置20は、ネットワークインタフェース21に受信する信号からパケットを抽出し、ヘッダ処理部22で送受信装置番号およびタイムスタンプ等を抽出し、パケット化処理部23でデジタル信号が再現される。なお、タイムスタンプは、組合せ検出部26において同一の受信信号であるか否かを判定するために使用されるため、組合せ検出部26まで関連付けて出力される。
【0017】
フレーム同期処理部24は、再現されたデジタル信号に対して自己相関処理等によって無線端末から送信された無線信号を抽出する。同期検波回路25は、無線信号に対して同期検波処理を行い、軟判定値を出力する。ここまでの処理は、各子局装置の各アンテナで受信された無線信号ごとに独立して処理される。
【0018】
組合せ検出部26は、各子局装置の各アンテナで受信された無線信号の軟判定値について、たとえば、受信電力が閾値を超えているか否か等の基準に基づいて、その後の処理に使用するもの(組合せ)を選択し、軟判定最大比合成処理部27に出力する。組み合わせの対象となる無線信号は、ヘッダ処理部22で抽出されたタイムスタンプが同一のものである。ここで、組合せ検出部26は、同一の無線信号についての最初の処理を開始した時に、所定の期間の経過を検出するタイマのカウントを開始する。
【0019】
軟判定最大比合成処理部27は、各子局装置の各アンテナで受信された無線信号の軟判定値の組合せについて最大比合成を行い、尤度計算処理部28に出力する。尤度計算処理部28は、最大比合成された軟判定値の尤度を計算し、ビタビ復号処理部29に出力する。ビタビ復号処理部29は、入力された尤度の列に対してビタビアルゴリズムに従って復号する。
【0020】
フレームチェック処理部30は、復号後の誤り検出符号により、正常に受信できたか否かを判定する。誤り検出符号は、無線端末が無線フレームを送信する際に付与する、たとえば、CRC符号等を利用することができる。フレームチェック処理部30は、誤り検出符号を用いた誤り検出処理により、無線端末が送信した無線フレームを正常に受信できたと判定した場合には、組合せ検出部26に受信が成功したことを通知する。一方、正常に受信できなかったと判定した場合には、その復号データを破棄する。
【0021】
組合せ検出部27は、フレームチェック処理部31から受信成功の通知を受けたときに、それ以降に受信した同一の無線信号の合成処理は不要になるため廃棄する。すなわち、それ以上の待機時間は不要となる。また、受信成功の通知を受けずにタイマが期限になれば、その時点で受信している同一の無線信号を組み合わせて出力する。このように、受信成功になるまで、受信電力が閾値を超えている無線信号を周期的に軟判定最大比合成処理部28に出力し、復号処理を繰り返す。
【符号の説明】
【0022】
1 無線端末
10 子局装置
11 アンテナ
12 AD変換処理部
13 パケット化処理部
14 ヘッダ処理部
15 ネットワークインタフェース
20 親局装置
21 ネットワークインタフェース
22 ヘッダ処理部
23 パケット化処理部
24 フレーム同期処理部
25 同期検波回路
26 組合せ検出部
27 軟判定最大比合成処理部
28 尤度計算処理部
29 ビタビ復号処理部
30 フレームチェック処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの無線端末から複数の子局装置を介して送信された無線信号を親局装置でダイバーシチ受信する無線通信システムにおいて、
前記子局装置は、
前記無線端末から送信された無線信号を受信するアンテナと、
前記アンテナに受信した無線信号を前記親局装置に送信する第1のインタフェース手段と
を備え、
前記親局装置は、
前記子局装置から送信された前記無線信号を受信する第2のインタフェース手段と、
前記第2のインタフェース手段で受信した前記無線信号であって、前記複数の子局装置のそれぞれを介して伝送された同一の無線端末が送信した同一の無線信号の中から、受信電力が閾値を超えるものを周期的に出力する組合せ検出手段と、
前記組合せ検出手段から出力された無線信号について、最大比合成して尤度を出力する軟判定最大比合成手段と、
前記軟判定最大比合成手段から出力された尤度を復号化して出力する復号手段と、
前記復号手段の出力に含まれる誤り検出符号により受信の成否を判定し、受信が成功した場合には、前記組合せ検出手段に対して受信成功を通知するフレームチェック手段と
を備え、
前記組合せ検出手段は、前記フレームチェック手段から受信成功の通知を受けたときに当該無線信号についての処理を完了する構成である
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
1つの無線端末から複数の子局装置を介して送信された無線信号を親局装置でダイバーシチ受信する無線通信システムの親局装置が備えるダイバーシチ受信装置において、
前記子局装置から送信された前記無線信号を受信する第2のインタフェース手段と、
前記第2のインタフェース手段で受信した前記無線信号であって、前記複数の子局装置のそれぞれを介して伝送された同一の無線端末が送信した同一の無線信号の中から、受信電力が閾値を超えるものを周期的に出力する組合せ検出手段と、
前記組合せ検出手段から出力された無線信号について、最大比合成して尤度を出力する軟判定最大比合成手段と、
前記軟判定最大比合成手段から出力された尤度を復号化して出力する復号手段と、
前記復号手段の出力に含まれる誤り検出符号により受信の成否を判定し、受信が成功した場合には、前記組合せ検出手段に対して受信成功を通知するフレームチェック手段と
を備え、
前記組合せ検出手段は、前記フレームチェック手段から受信成功の通知を受けたときに当該無線信号についての処理を完了する構成である
ことを特徴とするダイバーシチ受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−249026(P2012−249026A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118426(P2011−118426)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】