説明

無線通信システムおよびマクロ基地局の送信アンテナのチルト角制御方法

【課題】マクロ基地局からの干渉量を低減するとともに、スループットを改善することができる無線通信システムおよびマクロ基地局の送信アンテナのチルト角制御方法を得る。
【解決手段】マクロ基地局10とフェムト基地局とを含む無線通信システムであって、マクロ基地局10は、受信アンテナ16と、複数の送信アンテナ素子15a〜15nからなる送信アンテナと、チルト角制御情報に応じて複数の送信アンテナ素子15a〜15nの位相を変化させ、送信アンテナのチルト角を変更する可変移相器14a〜14nとを備え、受信アンテナ16で受信した信号の受信信号電力を測定する受信電力測定部17と、受信信号電力に基づいて、カバレッジ内のユーザ分布を算出するユーザ分布算出部18と、ユーザ分布に基づいて、送信アンテナのチルト角を決定し、可変移相器14a〜14nにチルト角制御情報を出力する移相制御部19とをさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばマクロ基地局およびフェムト基地局を含む無線通信システムおよびマクロ基地局の送信アンテナのチルト角制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信システムにおける高速大容量化の要求が増大しており、無線を用いた通信トラヒックは、今後も増加するものと予測される。特に、セルラ無線システムでは、第4世代無線通信システム(IMT−Advanced)が注目を集めており、3GPP(3rd Generation Partnership Project)では、LTE(Long Term Evolution)−Advancedに関する議論が行われている。
【0003】
また、WRC(World Radiocommunication Conference、世界無線通信会議)07において、IMT−Advancedでは、最も高い周波数帯として3.4〜3.6GHzが利用されることが決定された。このことから、既存の第3世代無線通信システムとは異なり、伝搬距離や屋内浸透による電力減衰量が大きくなるので、屋内の受信電力が小さくなるという問題が発生する。そこで、ユーザが設置するフェムト基地局(マクロ基地局よりもカバレッジの小さい従属基地局)により、屋内の無線品質を改善することが3GPPで検討されている。
【0004】
また、CAPEX(capital expenditure、資本的支出)およびOPEX(operating expense、運用コスト)を削減することを目的として、SON(Self Organizing Network、自己組織ネットワーク)と呼ばれる技術が提案されている。SONは、Self Configuration(自動設定)、Self Optimization(自動最適化)およびSelf Healing(自動修復)からなる。
【0005】
Self Configurationは、基地局の設置時に、自動的に基地局の設定ファイルをダウンロードし、基地局の基本的なパラメータを設定する。Self Optimizationは、周囲の無線環境に応じて、基地局の設定を動的に変更する。Self Healingは、基地局の故障を自動的に検出して修復する。3GPPにおいても、このSONに関する技術が検討されている。
【0006】
ここで、屋外のマクロ基地局と屋内のフェムト基地局とが、同一周波数を使用する場合、マクロ基地局の送信電力が、フェムト基地局に帰属するユーザに対する干渉電力となり、フェムト基地局のカバレッジの縮退やセル通信容量の劣化が発生するという問題がある。特に、マクロ基地局の近傍では、マクロ基地局からの干渉量が大きいので、フェムト基地局が屋内に設置されているにもかかわらず、屋内のユーザがフェムト基地局に帰属せず、フェムト基地局の無線リソースを有効に利用することができないという問題もある。
【0007】
そこで、上記の問題を解決するために、屋外のマクロ基地局からの送信電力のレベルを下げ、フェムト基地局に帰属するユーザに対する干渉電力を削減することにより、フェムト基地局のガバレッジやセル通信容量を改善する方法が提案されている。
【0008】
また、マクロ基地局およびフェムト基地局を含む無線通信システムにおいて、マクロ基地局のアンテナのチルト角を変更することにより、発生するハンドオーバーを抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−283440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
屋外のマクロ基地局からの送信電力のレベルを下げる方法では、マクロ基地局のカバレッジや、マクロ基地局に帰属するユーザのスループットも低下するという問題がある。
【0011】
また、特許文献1に示された方法では、発生するハンドオーバーを抑制することはできるものの、マクロ基地局のアンテナのチルト角を変更することによる無線通信システムのスループットの改善については、何等開示されていないという問題がある。
【0012】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、マクロ基地局からの干渉量を低減するとともに、スループットを改善することができる無線通信システムおよびマクロ基地局の送信アンテナのチルト角制御方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係る無線通信システムは、マクロ基地局と、マクロ基地局よりもカバレッジの小さい従属基地局とを含む無線通信システムであって、マクロ基地局は、受信アンテナと、複数の送信アンテナ素子からなる送信アンテナと、チルト角制御情報に応じて複数の送信アンテナ素子の位相を変化させ、送信アンテナのチルト角を変更するチルト角制御部と、を備え、受信アンテナで受信した信号の受信信号電力を測定する受信電力測定部と、受信信号電力に基づいて、カバレッジ内のユーザ分布を算出するユーザ分布算出部と、ユーザ分布に基づいて、送信アンテナのチルト角を決定し、チルト角制御部にチルト角制御情報を出力する移相制御部と、をさらに備えたものである。
【0014】
また、この発明に係るマクロ基地局の送信アンテナのチルト角制御方法は、マクロ基地局と、マクロ基地局よりもカバレッジの小さい従属基地局とを含む無線通信システムにおけるマクロ基地局の送信アンテナのチルト角制御方法であって、マクロ基地局の受信アンテナで受信した信号の受信信号電力を測定するステップと、受信信号電力に基づいて、カバレッジ内のユーザ分布を算出するステップと、ユーザ分布に基づいて、送信アンテナのチルト角を決定し、チルト角制御部にチルト角制御情報を出力するステップと、チルト角制御情報に応じてマクロ基地局の複数の送信アンテナ素子の位相を変化させ、マクロ基地局の送信アンテナのチルト角を変更するステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係る無線通信システムによれば、移相制御部は、受信信号電力から算出されるカバレッジ内のユーザ分布に基づいて、送信アンテナのチルト角を決定して、チルト角制御部にチルト角制御情報を出力し、チルト角制御部は、チルト角制御情報に応じて複数の送信アンテナ素子の位相を変化させ、送信アンテナのチルト角を変更する。
また、この発明に係るマクロ基地局の送信アンテナのチルト角制御方法によれば、送信アンテナのチルト角を決定するステップは、受信信号電力から算出されるカバレッジ内のユーザ分布に基づいて、送信アンテナのチルト角を決定して、チルト角制御部にチルト角制御情報を出力し、送信アンテナのチルト角を変更するステップは、チルト角制御情報に応じてマクロ基地局の複数の送信アンテナ素子の位相を変化させ、マクロ基地局の送信アンテナのチルト角を変更する。
そのため、マクロ基地局からの干渉量を低減するとともに、スループットを改善することができる無線通信システムおよびマクロ基地局の送信アンテナのチルト角制御方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施の形態1に係る無線通信システムのマクロ基地局を示すブロック構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る無線通信システムにおいて、マクロ基地局の周囲に他の基地局が存在する場合を示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係る無線通信システムのマクロ基地局を示すブロック構成図である。
【図4】この発明の実施の形態3に係る無線通信システムのマクロ基地局を示すブロック構成図である。
【図5】この発明の実施の形態4に係る無線通信システムを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明に係る無線通信システムの好適な実施の形態につき図面を用いて説明するが、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する。なお、本実施例により、この発明が限定されるものではない。
【0018】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る無線通信システムのマクロ基地局10を示すブロック構成図である。図1において、屋外のマクロ基地局10は、FECエンコード部11、変調部12、ベースバンド/RF処理部13、可変移相器14a、14b・・・14n(チルト角制御部)、送信アンテナ素子15a、15b・・・15n、受信アンテナ16、受信電力測定部17、ユーザ分布算出部18、移相制御部19を備えている。
【0019】
なお、例えば受信電力測定部17、ユーザ分布算出部18、移相制御部19は、必ずしもマクロ基地局10内に設けられている必要はなく、セルラ環境のように周囲に複数の基地局が存在する場合には、ネットワークを通じた他の装置内に設けられてもよい。具体的には、受信電力測定部17、ユーザ分布算出部18、移相制御部19は、複数のマクロ基地局10やフェムト基地局(従属基地局)を制御する中央制御装置に設けられていてもよい。
【0020】
FEC(Forward Error Correction、前方誤り訂正)エンコード部11は、ユーザデータである送信ビット系列に対して、システムにて規定される誤り訂正符号の種別に従って誤り訂正符号化を実行し、1つのFECブロックを生成する。変調部12は、FECエンコード部11からのFECブロックに対して、一次変調、具体的には、コンスタレーション上へのマッピングを実行する。
【0021】
ベースバンド/RF処理部13は、無線リソースに対して、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing、直交周波数分割多重)/OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access、直交周波数分割多重接続)等の変調方式に従って変調データのマッピングを実行する。
【0022】
また、ベースバンド/RF処理部13は、マッピングされた変調データに対して、無線信号処理を実行し、D/A(Digital to Analog)変換後にアップコンバートして、RF(Radio Frequency)帯への変換を実行する。なお、無線信号処理は、IDFT(Inverse Discreat Fourier Transfer)によるOFDM処理等を含む。
【0023】
可変移相器14a〜14nは、それぞれ移相制御部19からのチルト角制御情報に応じて、ベースバンド/RF処理部13から入力されるRF信号の位相を変化させる。送信アンテナ素子15a〜15nは、可変移相器14a〜14nにそれぞれ接続され、ダウンリンクの信号を送信する。受信アンテナ16は、アップリンクの信号を受信する。なお、受信アンテナ16は、素子ではなく、1つのアンテナである。
【0024】
ここで、送信アンテナ素子15a〜15nは、1つの送信アンテナを構成する1素子であり、アンテナアレイの構成をとる。また、通常、送信アンテナ素子15a〜15nは、仰角方向に指向性を有するように配置される。このとき、移相制御部19からのチルト角制御情報に応じて、可変移相器14a〜14nを制御することにより、送信アンテナのチルト角を変更することができる。
【0025】
受信電力測定部17は、受信アンテナ16で受信したアップリンクの信号を解析し、受信信号電力を測定する。ユーザ分布算出部18は、受信電力測定部17での受信信号電力の測定結果に基づいて、カバレッジ内のユーザ分布の特徴量を算出する。移相制御部19は、ユーザ分布算出部18で算出されたユーザ分布に基づいて、送信アンテナ素子15a〜15nの移相量(チルト角)を決定し、可変移相器14a〜14nにチルト角制御情報をそれぞれ出力する。
【0026】
続いて、上記構成の無線通信システムのマクロ基地局10における信号の処理の流れについて説明する。
まず、ユーザデータである送信ビット系列は、FECエンコード部11において、誤り訂正符号化され、FECブロックが生成される。生成されたFECブロックは、内部のビット系列が、変調部12において、一次変調されたコンスタレーション上にマッピングされる。
【0027】
続いて、一次変調された送信コンスタレーションデータは、ベースバンド/RF処理部13において、OFDM等の変調方式に従ってベースバンド/RF処理され、RF信号に変換される。RF信号は、可変移相器14a〜14nにおいて、それぞれ移相制御部19からのチルト角制御情報に応じて位相が変化され、送信アンテナ素子15a〜15nからそれぞれダウンリンクの信号として送信される。
【0028】
また、アップリンクの信号は、受信アンテナ16で受信される。受信されたアップリンクの信号は、受信電力測定部17で解析され、受信信号電力が測定されて、ユーザ毎の受信電力が推定される。推定されたユーザ毎の受信電力から、ユーザ分布算出部18において、カバレッジ内のユーザ分布が算出される。算出されたカバレッジ内のユーザ分布から、移相制御部19において、所望の送信アンテナパタンのチルト角となる送信アンテナ素子15a〜15nの移相量が決定され、可変移相器14a〜14nに対して、チルト角制御情報がそれぞれ出力される。
【0029】
一般的に、マクロ基地局の送信アンテナは、仰角方向に指向性を持ち、無線通信システムのセル設計時に固定のチルト角に設定し、運用中はこれを変更しない。この発明の実施の形態1では、マクロ基地局10の送信アンテナのチルト角を、マクロ基地局10のカバレッジ内に存在するユーザ分布や位置に応じて変更する。
【0030】
次に、図2を参照しながら、マクロ基地局10の周囲に他の基地局が存在する場合における信号の処理について説明する。図2は、この発明の実施の形態1に係る無線通信システムにおいて、マクロ基地局10の周囲に他の基地局が存在する場合を示す説明図である。
【0031】
図2において、マクロ基地局10によって形成されるセル101内には、フェムト基地局31(従属基地局)およびフェムト基地局32(従属基地局)が設置されている。また、セル101内には、移動端末33および移動端末34が存在している。なお、図2において、図1に示したユーザ分布算出部18および移相制御部19は、マクロ基地局10ではなく、マクロ基地局10およびフェムト基地局31、32を制御する中央制御装置40に設けられている。
【0032】
移動端末33は、マクロ基地局10およびフェムト基地局31から、受信電力を測定するための信号である参照信号201および参照信号202をそれぞれ受信する。ここで、移動端末33の周囲に複数のフェムト基地局が配置されており、それらからの参照信号を受信することが可能ならば、移動端末33は、複数のフェムト基地局からの参照信号を受信する。移動端末33は、受信した参照信号に基づいて、各基地局からの受信電力を測定する。
【0033】
次に、移動端末33は、測定した各基地局からの受信電力の情報を、受信した参照信号を送信したマクロ基地局10およびフェムト基地局31に、フィードバック203およびフィードバック204として送信する。このフィードバックは、高速なフィードバックではなく、MACメッセージ等を用いた低速なフィードバックである。マクロ基地局10およびフェムト基地局31は、移動端末33以外の移動端末34等のカバレッジ内に存在する移動局からも、同様にフィードバックを受信する。フェムト基地局32も同様である。
【0034】
マクロ基地局10およびフェムト基地局31、32は、それぞれフィードバックによって得られた受信電力の情報を、各移動端末の情報と対応づけたRSSI(Received Signal Strength Indicator)情報205、206、207として、バックホールネットワークを介して中央制御装置40に送信する。
【0035】
中央制御装置40に設けられたユーザ分布算出部18は、受信したRSSI情報に基づいて、送信電力と受信電力との差異からユーザ分布を算出する。また、中央制御装置40に設けられた移相制御部19は、算出されたユーザ分布に基づいて、セル101内の伝送容量を最大化させるマクロ基地局10の送信アンテナのチルト角を決定し、チルト角制御情報41をマクロ基地局10に送信する。マクロ基地局10は、中央制御装置40からのチルト角制御情報41に基づいて、送信アンテナのチルト角を変更する。
【0036】
移相制御部19は、RSSI情報を用いて、以下のようにセル101内の伝送容量を推定することにより、チルト角制御情報41を決定する。ここで、Pmijはフェムト基地局#jの近傍に位置する移動端末#iへのマクロ基地局10からの受信電力、Pfijはフェムト基地局#jの近傍に位置する移動端末#iへのフェムト基地局#jからの受信電力、Pr_ijはフェムト基地局#jの近傍に位置する移動端末#iへの所望電力、Iijはフェムト基地局#jの近傍に位置する移動端末#iへの干渉電力とする。
【0037】
この場合、Pmij>Pfij(マクロ基地局10に帰属するとき)であれば、Pr_ij=PmijおよびIij=Pfijが成立し、Pmij≦Pfij(フェムト基地局に帰属するとき)であれば、Pr_ij=PfijおよびIij=Pmijが成立する。このとき、セル内の伝送容量は、次式(1)により推定される。
【0038】
【数1】

【0039】
移相制御部19は、受信したRSSI情報、既知のマクロ基地局10の配置位置およびフェムト基地局の配置位置から算出されるユーザ分布、並びに送信アンテナパタンに基づいて、マクロ基地局10の送信アンテナパタンから送信アンテナのチルト角を変更したチルト角tにおける各移動端末の受信電力Pr_ij_tおよび干渉電力Iij_tを推測し、チルト角tにおけるセル101内の伝送容量を、次式(2)により推定する。
【0040】
【数2】

【0041】
移相制御部19は、チルト角tをパラメータとして、最大Cell_tとなるチルト角tを決定し、これがチルト角制御情報41となる。
【0042】
以上のように、実施の形態1によれば、移相制御部は、受信信号電力から算出されるカバレッジ内のユーザ分布に基づいて、送信アンテナのチルト角を決定して、チルト角制御部にチルト角制御情報を出力し、チルト角制御部は、チルト角制御情報に応じて複数の送信アンテナ素子の位相を変化させ、送信アンテナのチルト角を変更する。
そのため、従属基地局の周辺に存在するユーザへのマクロ基地局からの干渉量が低減され、従属基地局のカバレッジが拡大して、従属基地局のユーザ数が増加するとともに、通信容量が向上することにより、無線通信システム全体の収容ユーザ数を改善して、システムスループットを向上させることができる。
【0043】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、RF帯における可変移相器14a〜14nを用いて、送信アンテナ素子15a〜15nの移相制御を実行している。しかしながら、これに限定されず、デジタル信号処理によって、送信アンテナ素子15a〜15nの移相制御を実行してもよい。
【0044】
図3は、この発明の実施の形態2に係る無線通信システムのマクロ基地局10Aを示すブロック構成図である。図3において、マクロ基地局10Aは、図1に示したベースバンド/RF処理部13および可変移相器14a、14b・・・14nに代えて、ベースバンド/RF処理部13a、13b・・・13n(チルト角制御部)を備えている。
【0045】
ベースバンド/RF処理部13a〜13nは、変調部12からのコンステレーションデータの位相を、デジタル信号として変更する。これにより、図1のRF帯における可変移相器14a〜14nと同等の構成とすることができる。この場合には、可変移相器14a〜14nが不要となるが、複数のベースバンド/RF処理部13a〜13nが必要となる。
【0046】
実施の形態3.
上記実施の形態1、2では、電子的に送信アンテナのチルト角を変更する場合について説明したが、これに限定されず、機械的に送信アンテナのチルト角を変更してもよい。図3は、この発明の実施の形態3に係る無線通信システムのマクロ基地局10Bを示すブロック構成図である。
【0047】
図3において、マクロ基地局10Bは、図1に示した可変移相器14a、14b・・・14nに代えて、送信アンテナ機械式チルト制御部20(チルト角制御部)を備えている。送信アンテナ機械式チルト制御部20は、移相制御部19からのチルト角制御情報に応じて、機械的に送信アンテナの傾きを制御することにより、送信アンテナのチルト角を変更する。
【0048】
実施の形態4.
上記実施の形態1では、マクロ基地局10が1つのセル101を形成する場合について説明した。しかしながら、1つのマクロ基地局が、複数領域を担当する送信アンテナを有するセクタ構成をとる場合がある。
【0049】
図5は、この発明の実施の形態4に係る無線通信システムを示す構成図である。図5において、マクロ基地局10Cは、複数領域(セクタ301、302、303、304、305、306)をそれぞれ担当する送信アンテナを有し、セクタ構成をとっている。
【0050】
このとき、マクロ基地局10Cは、特定のセクタを担当する送信アンテナ毎に、上記実施の形態1と同様に、ユーザ分布およびフェムト基地局35の分布に基づいて、独立して適切にチルト角を制御することができる。これにより、マクロ基地局が1つのセルを形成する場合よりも、小さな領域での制御が可能となり、セル通信容量をさらに向上させることができる。
【符号の説明】
【0051】
10、10A、10B、10C マクロ基地局、11 FECエンコード部、12 変調部、13、13a〜13n ベースバンド/RF処理部、14a〜14n 可変移相器、15a〜15n 送信アンテナ素子、16 受信アンテナ、17 受信電力測定部、18 ユーザ分布算出部、19 移相制御部、20 送信アンテナ機械式チルト制御部、31、32、35 フェムト基地局、33、34 移動端末、40 中央制御装置、41 チルト角制御情報、101 セル、201、202 参照信号、203、204 フィードバック、205、206、207 RSSI情報、301 セクタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マクロ基地局と、前記マクロ基地局よりもカバレッジの小さい従属基地局とを含む無線通信システムであって、
前記マクロ基地局は、
受信アンテナと、
複数の送信アンテナ素子からなる送信アンテナと、
チルト角制御情報に応じて前記複数の送信アンテナ素子の位相を変化させ、前記送信アンテナのチルト角を変更するチルト角制御部と、を備え、
前記受信アンテナで受信した信号の受信信号電力を測定する受信電力測定部と、
前記受信信号電力に基づいて、カバレッジ内のユーザ分布を算出するユーザ分布算出部と、
前記ユーザ分布に基づいて、前記送信アンテナのチルト角を決定し、前記チルト角制御部に前記チルト角制御情報を出力する移相制御部と、をさらに備えた
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記移相制御部は、前記従属基地局の近傍に位置する移動端末への前記マクロ基地局からの受信電力、前記従属基地局の近傍に位置する移動端末への前記従属基地局からの受信電力、前記従属基地局の近傍に位置する移動端末への所望電力および前記従属基地局の近傍に位置する移動端末への干渉電力に基づいて、前記マクロ基地局が形成するセル内の伝送容量を最大化させるように、前記送信アンテナのチルト角を決定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記チルト角制御部は、電子的に前記送信アンテナのチルト角を変更することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記チルト角制御部は、機械的に前記送信アンテナのチルト角を変更することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記マクロ基地局は、複数セクタをそれぞれ担当する複数の送信アンテナを有し、
前記移相制御部は、前記複数の送信アンテナ毎にチルト角を決定する
ことを特徴とする請求項1から請求項4までの何れか1項に記載の無線通信システム。
【請求項6】
マクロ基地局と、前記マクロ基地局よりもカバレッジの小さい従属基地局とを含む無線通信システムにおけるマクロ基地局の送信アンテナのチルト角制御方法であって、
前記マクロ基地局の受信アンテナで受信した信号の受信信号電力を測定するステップと、
前記受信信号電力に基づいて、カバレッジ内のユーザ分布を算出するステップと、
前記ユーザ分布に基づいて、前記送信アンテナのチルト角を決定し、前記チルト角制御部に前記チルト角制御情報を出力するステップと、
前記チルト角制御情報に応じて前記マクロ基地局の複数の送信アンテナ素子の位相を変化させ、前記マクロ基地局の送信アンテナのチルト角を変更するステップと、
を備えたことを特徴とするマクロ基地局の送信アンテナのチルト角制御方法。
【請求項7】
前記送信アンテナのチルト角を決定するステップは、前記従属基地局の近傍に位置する移動端末への前記マクロ基地局からの受信電力、前記従属基地局の近傍に位置する移動端末への前記従属基地局からの受信電力、前記従属基地局の近傍に位置する移動端末への所望電力および前記従属基地局の近傍に位置する移動端末への干渉電力に基づいて、前記マクロ基地局が形成するセル内の伝送容量を最大化させるように、前記送信アンテナのチルト角を決定することを特徴とする請求項6に記載のマクロ基地局の送信アンテナのチルト角制御方法。
【請求項8】
前記マクロ基地局は、複数セクタをそれぞれ担当する複数の送信アンテナを有し、
前記送信アンテナのチルト角を決定するステップは、前記複数の送信アンテナ毎にチルト角を決定する
ことを特徴とする請求項6または請求項7に記載のマクロ基地局の送信アンテナのチルト角制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−175467(P2012−175467A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36398(P2011−36398)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、総務省、「自律的エリア設計運用技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】