説明

無線通信システムおよび通信制御方法

【課題】ヘテロジーニアスネットワークにおいて、無線信号同士の干渉を抑制しつつ無線資源をより効率的に利用する。
【解決手段】第1無線基地局100と第2無線基地局200と移動局300とを備える無線通信システム1において、第1無線基地局100が第1期間NSFにおいて第1セルCmに在圏する移動局300への無線信号の送信を実行する一方で第2期間PSFにおいて移動局300への無線信号の送信を停止し、第2無線基地局200が第1期間NSFおよび第2期間PSFの双方において第2セルCpに在圏する移動局300への無線信号の送信を実行する。第1期間NSFにおいて、協調送信基地局セットCS内の第1無線基地局100および第2無線基地局200が協調して無線信号を送信可能であり、第2期間PSFにおいて、協調送信基地局セットCS内の第2無線基地局200が協調して無線信号を送信可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムおよび通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話ネットワーク等の無線通信システムにおいて、様々な干渉制御技術が提案されている。例えば、非特許文献1には、無線基地局間で相異なる無線資源(時間または周波数等)を用いることで各無線基地局から送信される無線信号(電波)同士の干渉を抑制するセル間干渉コーディネーション(Inter-Cell Interference Coordination,ICIC)が提案されている。また、非特許文献2には、複数の無線基地局同士が協調して送信を行うことで各無線基地局から送信される無線信号同士の干渉を抑制するセル間協調送受信(Coordinated Multiple Point transmission and reception,CoMP)が提案されている。
【0003】
一方、無線資源のより効率的な利用等のため、送信電力(送信能力)が相異なる複数種の無線基地局(マクロ基地局、ピコ基地局、フェムト基地局、リモートラジオヘッド(Remote Radio Head)等)を重層的に設置したヘテロジーニアスネットワーク(Heterogeneous Network,HetNet)が提案されている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Arne Simonsson, “Frequency Reuse and Intercell Interference Co-ordination in E-UTRA”, Vehicular VTC2007-Spring, pp. 3091-3095 (2007-04)
【非特許文献2】3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); Further advancements for E-UTRA physical layer aspects (Release 9); 3GPP TR 36.814 V9.0.0 (2010-03); Section 8, Coordinated multiple point transmission and reception
【非特許文献3】3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); Further advancements for E-UTRA physical layer aspects (Release 9); 3GPP TR 36.814 V9.0.0 (2010-03); Section 9A, Heterogeneous Deployments
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載されたICICおよび非特許文献2に記載されたCoMPにおいては、送信電力(送信能力)が等しい基地局(例えば、マクロ基地局)間から構成されるネットワーク(すなわちホモジーニアスネットワーク(Homogeneous Network))が前提とされており、ヘテロジーニアスネットワークにおけるICICおよびCoMPの適用方法については具体的に提案されていない。
【0006】
以上の事情に鑑み、本発明は、送信電力(送信能力)が相異なる複数種の無線基地局を含む無線通信システムにおいて、セル間干渉コーディネーションおよびセル間協調送受信を併用して、無線信号同士の干渉を抑制しつつ無線資源のより効率的な利用を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る無線通信システムは、相互に接続され、各々が第1セルを形成する複数の第1無線基地局と、前記第1無線基地局の少なくともいずれか1つと各々が接続し、接続先の前記第1無線基地局が形成する前記第1セル内に前記第1セルよりも面積が小さい第2セルを各々が形成する複数の第2無線基地局と、前記第1セルおよび前記第2セルのうち移動局自身が在圏する在圏セルに対応する前記第1無線基地局および前記第2無線基地局の各々との間で無線信号を送受信して無線通信を実行することが可能な移動局とを備える無線通信システムであって、前記移動局は、前記在圏セルに対応する前記第1無線基地局および前記第2無線基地局から送信される各無線信号の受信特性を測定する測定部と、前記測定部での前記各受信特性の測定結果を前記在圏セルに対応する前記第1無線基地局に通知する通知部とを備え、前記各第1無線基地局は、前記移動局から通知された前記測定結果に基づいて、前記受信特性が所定の閾値を上回る無線信号を送信する第1無線基地局および第2無線基地局を、当該移動局への協調送信無線基地局セットとして決定する決定部と、当該第1無線基地局に接続された第2無線基地局と同期して無線通信を実行する要素であって、第1期間において当該第1無線基地局自身の第1セルに在圏する前記移動局への無線信号の送信を実行し、第2期間において当該移動局への無線信号の送信を停止する第1無線通信部を備え、前記各第2無線基地局は、当該第2無線基地局が接続する第1無線基地局と同期して無線通信を実行する要素であって、当該第2無線基地局が接続する前記第1無線基地局の前記第1期間および前記第2期間の双方において当該第2無線基地局自身の第2セルに在圏する前記移動局への無線信号の送信を実行する第2無線通信部を備え、前記第1無線基地局の前記第1期間において、前記協調送信無線基地局セットに含まれる前記第1無線基地局の前記第1無線通信部と前記協調送信無線基地局セットに含まれる前記各第2無線基地局の前記第2無線通信部とが協調して、当該協調送信無線基地局セットに対応する移動局に対して無線信号を送信可能であり、前記第1無線基地局の前記第2期間において、前記協調送信無線基地局セットに含まれる前記各第2無線基地局の前記第2無線通信部が協調して、当該協調送信無線基地局セットに対応する移動局に対して無線信号を送信可能である。
【0008】
以上の構成によれば、第1無線基地局が無線信号を送信する期間が第1期間のみに制限されるので、第1無線基地局が無線信号を送信し続ける(第1期間および第2期間にて無線信号を送信する)構成と比較して、第2無線基地局から送信される無線信号に対する第1無線基地局からの干渉が抑制される。さらに、無線信号を送信する複数の無線基地局(第1無線基地局、第2無線基地局)が協調して移動局へ無線信号を送信するので、無線信号の送信がより動的に制御され、無線信号同士の干渉が抑制される。したがって、無線資源のより効率的な利用が可能となる。
【0009】
好ましくは、前記第1無線基地局において、前記第1期間と前記第2期間とが相等しい時間長を有し、前記第1期間と前記第2期間とが交互に到来する。
以上の構成によれば、第1期間と第2期間とが同程度に確保される。
【0010】
好ましくは、前記第1無線基地局において、当該第1無線基地局を含む前記協調送信無線基地局セットに含まれる無線基地局の数に応じて前記第1期間と前記第2期間との配分が決定される。
以上の構成によれば、協調送信基地局セット内の無線基地局の数に応じて第1期間と第2期間との配分が決定されるから、無線信号同士の干渉がより抑制され、無線資源の利用がより効率的となり得る。
【0011】
好ましくは、当該第1無線基地局を含む前記協調送信無線基地局セットに含まれる無線基地局の数が多い程、単位期間内における前記第1期間の個数を多くする。
以上の構成によれば、協調送信基地局セット内の無線基地局の数が多い程、第1無線基地局が無線信号を送信する第1期間の個数を多くするから、移動局に対して同時に無線信号の送信を実行する無線基地局がより多い期間が延長される。したがって、協調送信の効果が高まり得る。
【0012】
好ましくは、前記第1無線基地局の前記第1無線通信部の各々は、相互に同期して無線通信を実行することが可能である。
以上の構成によれば、複数の第1無線基地局の第1無線通信部が相互に同期するから、いずれの第1無線基地局も無線信号を送信しない(第2無線基地局のみが無線信号を送信する)第2期間も同期される。したがって、複数の第1無線基地局の各々が形成する複数の第1セルに在圏する移動局が存在する場合であっても、無線信号同士の干渉が抑制され、第2無線基地局からの無線信号がその移動局に品質良く受信され得る。
【0013】
本発明に係る通信制御方法は、相互に接続され、各々が第1セルを形成する複数の第1無線基地局と、前記第1無線基地局の少なくともいずれか1つと各々が接続し、接続先の前記第1無線基地局が形成する前記第1セル内に前記第1セルよりも面積が小さい第2セルを各々が形成する複数の第2無線基地局と、前記第1セルおよび前記第2セルのうち移動局自身が在圏する在圏セルに対応する前記第1無線基地局および前記第2無線基地局の各々との間で無線信号を送受信して無線通信を実行することが可能な移動局とを備える無線通信システムにおける通信制御方法であって、前記移動局が、前記在圏セルに対応する前記第1無線基地局および前記第2無線基地局から送信される各無線信号の受信特性を測定し、その測定結果を前記在圏セルに対応する前記第1無線基地局に通知し、前記各第1無線基地局が、前記移動局から通知された前記測定結果に基づいて、前記受信特性が所定の閾値を上回る無線信号を送信する第1無線基地局および第2無線基地局を、当該移動局への協調送信無線基地局セットとして決定し、当該第1無線基地局に接続された第2無線基地局と同期して無線通信を実行するに際し、第1期間において当該第1無線基地局自身の第1セルに在圏する前記移動局への無線信号の送信を実行し、第2期間において当該移動局への無線信号の送信を停止し、前記各第2無線基地局が、当該第2無線基地局が接続する第1無線基地局と同期して無線通信を実行するに際し、当該第2無線基地局が接続する前記第1無線基地局の前記第1期間および前記第2期間の双方において当該第2無線基地局自身の第2セルに在圏する前記移動局への無線信号の送信を実行し、前記第1無線基地局の前記第1期間において、前記協調送信無線基地局セットに含まれる前記第1無線基地局と前記協調送信無線基地局セットに含まれる前記各第2無線基地局とが協調して、当該協調送信無線基地局セットに対応する移動局に対して無線信号を送信し、前記第1無線基地局の前記第2期間において、前記協調送信無線基地局セットに含まれる前記各第2無線基地局が協調して、当該協調送信無線基地局セットに対応する移動局に対して無線信号を送信する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る無線通信システムを示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るユーザ装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るマクロ基地局の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るピコ基地局の構成を示すブロック図である。
【図5】前記無線通信システムにおいて送受信される無線フレームのフォーマットを示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るセル間干渉コーディネーション(eICIC)の概説図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るセル間協調送受信(CoMP)の概説図である。
【図8】前記セル間協調送受信における協調送信基地局セット(CoMP Set)の決定の様子を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第1の実施形態に係るeICICおよびCoMPを併用した場合の通信制御の様子を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る無線通信システムを示すブロック図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係るeICICおよびCoMPを併用した場合の通信制御の様子を示す図である。
【図12】本発明の変形例に係るeICICの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1実施形態
図1は、本発明の第1の実施形態に係る無線通信システム1のブロック図である。無線通信システム1は、複数のマクロ基地局(マクロeNodeB(evolved Node B))100(100a,100b)と、複数のピコ基地局(ピコeNodeB)200(200a〜200c)と、複数のユーザ装置300(300a〜300e)とを備える。無線通信システム1内の各通信要素(マクロ基地局100、ピコ基地局200、ユーザ装置300等)は所定の無線アクセス技術(Radio Access Technology)、例えばLTE(Long Term Evolution)に従って無線通信を行う。
本実施形態では、無線通信システム1がLTEに従って動作する形態を例示して説明するが、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。本発明は、必要な設計上の変更を施した上で、他の無線アクセス技術(例えば、IEEE 802.16に規定されるWiMAX)にも適用可能である。
【0016】
複数のマクロ基地局100は、有線または無線にて相互に接続される。各マクロ基地局100は、不図示のコアネットワークにも接続される。各マクロ基地局100は、無線通信可能範囲であるマクロセルCmをその周囲に形成する。複数のピコ基地局200の各々は、少なくとも1つのマクロ基地局100に有線または無線にて接続する。各ピコ基地局200は、無線通信可能範囲であるピコセルCpをその周囲に形成する。ピコセルCpは、そのピコセルCp(例えば、ピコセルCpa)を形成するピコ基地局200(例えば、ピコ基地局200a)に接続されたマクロ基地局100(例えば、マクロ基地局100a)が形成するマクロセルCm(例えば、マクロセルCma)内に形成される。1つのマクロセルCm(例えば、マクロセルCma)内には、複数のピコセルCp(例えば、ピコセルCpaおよびピコセルCpb)が形成され得る。
【0017】
各基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)は、その基地局自身のセルCに在圏するユーザ装置(User Equipment,UE)300との間で電波(無線信号)を送受信することにより無線通信が可能である。逆に言うと、ユーザ装置300は、ユーザ装置300自身が在圏するセルC(マクロセルCm,ピコセルCp)に対応する基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)との間で電波(無線信号)を送受信することにより無線通信が可能である。
【0018】
マクロ基地局100は、ピコ基地局200と比較して無線送信能力(最大送信電力,平均送信電力等)が高いので、より遠くに位置するユーザ装置300と無線通信可能である。したがって、マクロセルCmはピコセルCpよりも面積が大きい。例えば、マクロセルCmは半径数百メートルから数十キロメートル程度の大きさであり、ピコセルCpは半径数メートルから数十メートル程度の大きさである。
【0019】
以上の説明から理解されるように、無線通信システム1内のマクロ基地局100およびピコ基地局200は、送信電力(送信能力)が相異なる複数種の無線基地局が重層的に設置されたヘテロジーニアスネットワークを構成する(非特許文献3参照)。
【0020】
ピコセルCpがマクロセルCmの内部に重層的に形成される(オーバレイされる)ことを考慮すると、ユーザ装置300がピコセルCp内に在圏する場合、そのユーザ装置300は、そのピコセルCpを形成するピコ基地局200と、そのピコセルCpを包含するマクロセルCmを形成するマクロ基地局100との双方と無線通信が可能であると理解できる。また、例えば図1のように、ユーザ装置300bが複数のピコセルCpa,Cpb内に在圏する場合、そのユーザ装置300bは各ピコセルCpa,Cpbを形成するピコ基地局200a,200bの各々及びそれらピコセルCpa,Cpbを包含するマクロセルCmaのいずれとも無線通信が可能であると理解できる。
【0021】
なお、各基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)とユーザ装置300との間の無線通信の方式は任意である。例えば、ダウンリンクではOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)が採用され得、アップリンクではSC−FDMA(Single-Carrier Frequency Division Multiple Access)が採用され得る。
【0022】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るユーザ装置300の構成を示すブロック図である。ユーザ装置300は、無線通信部310と、測定部320と、通知部330とを備える。なお、音声・映像等を出力する出力装置およびユーザからの指示を受け付ける入力装置等の図示は、便宜的に省略されている。
【0023】
無線通信部310は、基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)と無線通信するための要素であり、送受信アンテナ312と、基地局から電波(無線信号)を受信して電気信号に変換する受信回路と、音声信号等の電気信号を電波に変換して送信する送信回路とを含む。また、複数の基地局が協調して送信した複数系統の無線信号を無線通信部310が受信する場合、受信回路は、受信強度の大きい系統の無線信号のみを電気信号に変換してもよいし、空間多重された無線信号をそのまま電気信号に変換してもよいし、個別に分離した各系統の無線信号を電気信号に変換してもよい。なお、基地局による協調送信(CoMP送信)の詳細は後述される。
【0024】
測定部320は、ユーザ装置300が在圏するセルCに対応する各基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)が送信し、ユーザ装置300の無線通信部310に受信された無線信号の受信電力(Reference Signal Received Power,RSRP)を測定し、その測定結果R(測定した受信電力を示す特性値)を得る。ユーザ装置300における受信電力(特性値)は、そのユーザ装置300が各基地局から遠ざかるほど低下する。得られた測定結果R(各特性値)は通知部330に供給される。
【0025】
通知部330は、測定部320の測定により得られた測定結果R(各特性値)を、無線通信部310を介して、無線接続しているマクロ基地局100に通知する。
【0026】
測定部320および通知部330は、ユーザ装置300内の図示しないCPU(Central Processing Unit)が、図示しない記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックであり得る。
【0027】
図3は、本発明の実施形態に係るマクロ基地局100の構成を示すブロック図である。マクロ基地局100は、無線通信部110および決定部120を備える。無線通信部110は、送受信アンテナ112と接続された送受信部114と、通信制御部116と、基地局間通信部118とを備える。
【0028】
送受信部114は、ユーザ装置300と無線通信を実行するための要素であり、ユーザ装置300から無線信号を受信して電気信号に変換する受信回路と、音声信号等の電気信号を無線信号に変換して送信する送信回路とを含む。通信制御部116は、送受信部114にて実行される無線通信を制御するための要素であり、例えば、送受信部114から無線信号を送信する際の送信電力を変化させる。送信電力を変化させることには、送信電力をゼロにすること、すなわち無線信号の送信を停止することが含まれる。基地局間通信部118は、マクロ基地局100自身と接続された他の基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)およびコアネットワーク(不図示)と通信するための要素である。
決定部120は、ユーザ装置300の通知部330から通知された測定結果R(各特性値)に基づいて、特性値が所定の閾値Thを上回る無線信号を送信する基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)を、そのユーザ装置300に対して協調して無線信号の送信を行う基地局の組合せである協調送信基地局セット(CoMP Set)CSとして決定する。決定された協調送信基地局セットCSは通信制御部116に供給される。なお、所定の閾値Thは、マクロ基地局100内の図示しない記憶部に記憶されている。
【0029】
マクロ基地局100は、基地局間通信部118を介して他の基地局との間で電気信号を送受信し、相互に制御(協調)し合う。特に、協調送信基地局セットCS内の各基地局と協調して、協調送信基地局セットCSに対応するユーザ装置300に対して無線信号の送信を実行する。各基地局の基地局間通信部は、任意の接続技術(例えば、光ファイバ、X2インタフェース等)にて相互に接続され得る。前述の通り、マクロ基地局100とピコ基地局200とは協調して無線信号の送信を実行するから、伝送遅延の少ない高速かつ大容量の接続技術(例えば、光ファイバ接続)によってマクロ基地局100とピコ基地局200とが接続されるとより好適である。なお、マクロ基地局100が他の基地局と無線にて通信を行う場合、基地局間通信部118は、無線通信部110を介して相互に無線信号を送受信して制御(協調)し合ってもよい。
【0030】
無線通信部110内の通信制御部116および基地局間通信部118並びに決定部120は、マクロ基地局100内の図示しないCPUが、図示しない記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックであり得る。
【0031】
図4は、本発明の実施形態に係るピコ基地局200の構成を示すブロック図である。ピコ基地局200は、無線通信部210を備える。無線通信部210は、送受信アンテナ212と接続された送受信部214と、通信制御部216と、基地局間通信部218とを備える。
【0032】
送受信部214は、ユーザ装置300と無線通信を実行するための要素であり、ユーザ装置300から無線信号を受信して電気信号に変換する受信回路と、音声信号等の電気信号を無線信号に変換して送信する送信回路とを含む。通信制御部216は、送受信部214にて実行される無線通信を制御するための要素であり、例えば、送受信部214から無線信号を送信する際の送信電力を変化させる。送信電力を変化させることには、送信電力をゼロにすること、すなわち無線信号の送信を停止することが含まれる。基地局間通信部218は、ピコ基地局200自身と接続されたマクロ基地局100と通信するための要素である。ピコ基地局200は、基地局間通信部218を介してマクロ基地局100との間で電気信号を送受信し、相互に制御(協調)し合う。なお、ピコ基地局200がマクロ基地局100と無線にて通信を行う場合、基地局間通信部218は、無線通信部210を介して相互に無線信号を送受信して制御(協調)し合ってもよい。
【0033】
ピコ基地局200は、マクロ基地局100が送信した情報を受信してユーザ装置300に転送でき、ユーザ装置300が送信した情報を受信してマクロ基地局100に転送できる。具体的には、ピコ基地局200の基地局間通信部218がマクロ基地局100から受信した電気信号を、通信制御部216が送受信部214に供給する。送受信部214は、供給された電気信号を無線信号に変換してユーザ装置300に対して送信する。また、ピコ基地局200の送受信部214が受信・変換して得た電気信号を、通信制御部216が基地局間通信部218に供給する。基地局間通信部218は、供給された電気信号をマクロ基地局100に対して送信する。以上の構成により、ユーザ装置300がピコ基地局200に近接しているためマクロ基地局100との無線通信が困難である場合でも、ユーザ装置300とマクロ基地局100との間で必要な情報を送受信することが可能となる。
【0034】
無線通信部210内の通信制御部216および基地局間通信部218は、ピコ基地局200内の図示しないCPUが、図示しない記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックであり得る。
【0035】
図5は、無線通信システム1の各通信要素間で送受信される無線フレームFのフォーマットを示す図である。無線フレームFは、各通信要素(マクロ基地局100、ピコ基地局200、ユーザ装置300等)が送信する無線信号の送信単位であり、所定の時間長(例えば、10ミリ秒)および所定の周波数帯域fを占める。無線フレームFが連続的に送信されることにより一連の無線信号が構成される。
無線フレームFは複数のサブフレームSFを含む。サブフレームSFは、無線フレームFよりも短い時間長(例えば、1ミリ秒)を占める送信単位であり、1つの無線フレームF内において0番(#0)から昇順にナンバリングされ得る。
【0036】
図6は、本発明の第1の実施形態に係るセル間干渉コーディネーション(eICIC,enhanced Inter-Cell Interference Coordination)の概説図である。ヘテロジーニアスネットワークにおいて実行されるICICがeICICと称される。
【0037】
eICICの説明のため、マクロ基地局100およびそのマクロ基地局100が形成するマクロセルCm内にピコセルCpを形成するピコ基地局200が、同一の無線フレームタイミングおよび同一の周波数帯域fにて無線信号(無線フレームF)を送信することを想定する。ここで、「同一の無線フレームタイミングで無線信号が送信される」とは、マクロ基地局100が送信する無線フレームFの送信開始時刻とピコ基地局200が送信する無線フレームFの送信開始時刻とが同時であることを意味する。すなわち、マクロ基地局100の無線通信部110とピコ基地局200の無線通信部210とは、同期して無線通信を実行し得る。
以上の場合、マクロ基地局100からの無線信号およびピコ基地局200からの無線信号は同一の周波数帯域fにて送信されるから、相互に干渉し合う。特に、マクロ基地局100の送信電力はピコ基地局200の送信電力よりも大きいので、ピコ基地局200からの無線信号に対するマクロ基地局100からの無線信号の干渉は顕著に大きい。したがって、双方の無線信号が常に送信され続けると、ピコ基地局200からの無線信号をユーザ装置300が受信することが困難である。
【0038】
以上の事情を考慮して、本発明のeICICにおいては、予め静的に定められたサブフレームSFのパターンに基づいて、マクロ基地局100の無線通信部110が無線信号を間欠的にユーザ装置300へ送信する。具体的には、図6に示すように、無線通信部110の通信制御部116は、1サブフレームSFごとに無線信号の送信実行と送信停止とを切り替えるように送受信部114を制御する。マクロ基地局100による干渉からピコ基地局200の無線信号が守られる(プロテクトされる)ことから、マクロ基地局100無線信号の送信を停止するサブフレームSFをプロテクテッドサブフレーム(Protected Subframe)PSFと称し、逆に、マクロ基地局100が無線信号の送信を実行するサブフレームSFを非プロテクテッドサブフレーム(Non-Protected Subframe)NSFと称する。
他方、ピコ基地局200の無線通信部210は、無線信号を継続的に、すなわち非プロテクテッドサブフレームNSFとプロテクテッドサブフレームPSFとの双方において無線信号をユーザ装置300へ送信する。
【0039】
以上の構成によれば、マクロ基地局100の無線通信部110が無線信号を送信しないプロテクテッドサブフレームPSFでは、ピコ基地局200の無線通信部210のみが無線信号を送信する。したがって、プロテクテッドサブフレームPSFにおいては、ピコ基地局200からの無線信号がマクロ基地局100からの無線信号による干渉を受けないから、マクロ基地局100が形成するマクロセルCmおよびピコ基地局200が形成するピコセルCpの双方に在圏するユーザ装置300が、ピコ基地局200からの無線信号を品質良く受信することが可能となる。
【0040】
図7は、本発明の第1の実施形態に係るセル間協調送受信(CoMP)の概説図である。CoMPの説明のため、図1と同様に、ユーザ装置300bが、マクロ基地局100aが形成するマクロセルCma並びにピコ基地局200a及びピコ基地局200bが形成するピコセルCpa及びピコセルCpbに在圏する場合を想定する。ユーザ装置300bに対応するマクロ基地局100a、ピコ基地局200a、およびピコ基地局200bは、後述する協調送信基地局セット(CoMP Set)CSを形成する。
【0041】
協調送信基地局セットCSを形成する基地局群(マクロ基地局100a、ピコ基地局200a、およびピコ基地局200b)は、マクロ基地局100aの制御に基づいて、協調送信基地局セットCSに対応するユーザ装置300bに対して協調して無線信号の送信(協調送信,Coordinated Transmission)を実行する。任意の協調送信が実行され得るが、例えば、協調送信基地局セットCSに含まれる基地局のうち、特定の基地局(例えば、ユーザ装置300における受信品質が最も高い無線信号を送信する基地局)以外の基地局がユーザ装置300bに対する無線信号の送信電力を低下させても良いし、協調送信基地局セットCSに含まれる複数の基地局が、同一のデータを示す無線信号を1つのユーザ装置300bへ送信しても良い。以上の協調送信により無線信号同士の干渉が抑制され得る。
【0042】
図8は、マクロ基地局100およびユーザ装置300による協調送信基地局セットCSの決定の様子を示すフローチャートである。ユーザ装置300の測定部320は、在圏セルに対応する各基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)からの無線信号の受信電力を測定し、その測定結果R(受信電力を示す特性値)を得る(ステップS100)。ユーザ装置300の通知部330は測定結果Rをマクロ基地局100に通知する(ステップS110)。マクロ基地局100の決定部120は、ユーザ装置300の通知部330から通知された測定結果R(各特性値)に基づいて、各特性値と所定の閾値Thとを比較し、閾値Thを上回る特性値に対応する基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)を、協調送信基地局セットCSとして決定(選択)する(ステップS120)。以上のステップにより、マクロ基地局100が協調送信基地局セットCSを決定する。なお、マクロ基地局100およびユーザ装置300は、任意の時刻に(好適には、所定のインターバルが経過する毎に、又はハンドオーバ実行時に)、図8のフローチャートの動作を実行し得る。
【0043】
本発明の無線通信システム1では、上述したeICICおよびCoMPを併用して、無線資源(送信時間(無線フレームF)等)をより効率的に利用する。図9は、eICICおよびCoMPを併用した場合の通信制御の一例を示す図である。
【0044】
図9では、図1および図7と同様に、ユーザ装置300bが、マクロ基地局100aが形成するマクロセルCma並びにピコ基地局200a及びピコ基地局200bが形成するピコセルCpa及びピコセルCpbに在圏する場合を想定する。ユーザ装置300bの協調送信基地局セットCSには、マクロ基地局100a、ピコ基地局200a、およびピコ基地局200bが含まれる。協調送信基地局セットCSに含まれる各基地局は、各基地局間通信部(118,218)を介して互いに同期して、同一の周波数帯域fにおいて無線通信を実行する。
【0045】
マクロ基地局100aは図6と同様にしてeICICを実行する。すなわち、マクロ基地局100aの通信制御部116は、非プロテクテッドサブフレームNSFにて無線通信部110の送受信部114からの無線信号の送信を実行し、プロテクテッドサブフレームPSFにて無線通信部110の送受信部114からの無線信号の送信を停止するように制御する。
他方、ピコ基地局200aおよびピコ基地局200bは、非プロテクテッドサブフレームNSFおよびプロテクテッドサブフレームPSFの双方において無線信号をユーザ装置300bへと送信する。
【0046】
マクロ基地局100aの非プロテクテッドサブフレームNSFでは、協調送信基地局セットCSに含まれ無線通信を実行するマクロ基地局100a、ピコ基地局200a、およびピコ基地局200bの各無線通信部(110,210)が、各基地局間通信部(118,218)を介して協調し、協調送信基地局セットCSに対応するユーザ装置300bに対して無線信号を送信する。一方、マクロ基地局100aのプロテクテッドサブフレームPSFでは、協調送信基地局セットCSに含まれ無線通信を実行するピコ基地局200aおよびピコ基地局200bの各無線通信部210が、各基地局間通信部218を介して協調し、協調送信基地局セットCSに対応するユーザ装置300bに対して無線信号を送信する。
【0047】
すなわち、非プロテクテッドサブフレームNSFにおいては協調送信基地局セットCSに含まれるマクロ基地局100および複数のピコ基地局200の全てが協調送信を実行し、プロテクテッドサブフレームPSFにおいては協調送信基地局セットCSに含まれる複数のピコ基地局200のみが協調送信を実行する。
【0048】
なお、全ての期間(全てのサブフレームSF)においてCoMPを実行する必要は無い。例えば、ユーザ装置300が1つのマクロ基地局100が形成するマクロセルCmのみに在圏する場合(例えば、図1におけるマクロセルCmbのみに在圏するユーザ装置300eの場合)には、マクロ基地局100は、非プロテクテッドサブフレームNSFにおいてCoMPを実行せずにそのユーザ装置300に無線信号の送信を実行すればよい。また、ユーザ装置300が1つのマクロ基地局100が形成するマクロセルCmおよび1つのピコ基地局200が形成するピコセルCpに在圏する場合(例えば、図1におけるマクロセルCmaおよびピコセルCpaに在圏するユーザ装置300aの場合)には、ピコ基地局200は、プロテクテッドサブフレームPSFにおいてCoMPを実行せずにそのユーザ装置300に無線信号の送信を実行すればよい。すなわち、ユーザ装置300に無線信号を送信すべき複数の基地局が存在するときにCoMPが実行されればよい。
【0049】
以上に説明した実施の形態によれば、eICICの実行により、マクロ基地局100が無線信号を送信するサブフレームSFが非プロテクテッドサブフレームNSFのみに制限されるので、マクロ基地局100が無線信号を送信し続ける構成(eICICを実行しない構成)と比較して、ピコ基地局200から送信される無線信号に対するマクロ基地局100からの干渉が抑制される。さらに、無線信号を送信する複数の基地局(マクロ基地局100、ピコ基地局200)が協調してユーザ装置300へ無線信号を送信するので、セル間干渉コーディネーションのみを採用した構成と比較して、無線信号の送信がより動的に制御され得るので、無線信号同士の干渉がより抑制され得る。したがって、無線資源のより効率的な利用が可能となる。
【0050】
第2実施形態
本発明の第2の実施形態を以下に説明する。なお、以下に例示する各態様において作用・機能が第1の実施形態と同等の要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0051】
図10は、第2実施形態に係る無線通信システム1のブロック図である。無線通信システム1は、複数のマクロ基地局100(100c,100d)と、複数のピコ基地局200(200d,200e)と、複数のユーザ装置300(300f,300g)とを備える。マクロ基地局100cが形成するマクロセルCmc内に重畳されるようにピコ基地局200dが形成するピコセルCpdは、その一部がマクロセルCmdとも重なり合う。
【0052】
ユーザ装置300fは、マクロセルCmc、マクロセルCmd、およびピコセルCpdが重なり合う範囲に位置する。したがって、ユーザ装置300fは、各セルC(Cmc,Cmd,Cpd)に対応するマクロ基地局100c、マクロ基地局100d、およびピコ基地局200dから無線信号を受信することが可能である。
【0053】
図11は、第2実施形態におけるeICICおよびCoMPを併用した場合の通信制御の一例を示す図である。ユーザ装置300fの協調送信基地局セットCSには、所定の閾値Thを上回る送信電力(特性値)の無線信号を各々が送信する、マクロ基地局100c、マクロ基地局100d、およびピコ基地局200dが含まれる。協調送信基地局セットCSに含まれる各基地局は、各基地局間通信部(118,218)を介して互いに同期して、同一の周波数帯域fにおいて無線通信を実行する。
【0054】
図11のeICICにおいて、マクロ基地局100cおよびマクロ基地局100dは、各基地局間通信部118を介した制御の下、共通した非プロテクテッドサブフレームNSFとプロテクテッドサブフレームPSFとを用いて(つまり、相互に同期して)無線信号を送信する。すなわち、マクロ基地局100cが無線信号を送信するときはマクロ基地局100dも無線信号を送信し、マクロ基地局100cが無線信号の送信を停止するときはマクロ基地局100dも無線信号の送信を停止する。
他方、ピコ基地局200dは非プロテクテッドサブフレームNSFおよびプロテクテッドサブフレームPSFの双方において無線信号をユーザ装置300fへと送信する。
なお、以上の制御は、主となる一方のマクロ基地局100(例えば、ユーザ装置300fが先に接続したマクロ基地局100)が従となる他方のマクロ基地局100を制御するのでもよいし、同列である双方のマクロ基地局100が相互に連携して制御し合ってもよい。
【0055】
非プロテクテッドサブフレームNSFでは、協調送信基地局セットCSに含まれるマクロ基地局100c、マクロ基地局100d、およびピコ基地局200dの各無線通信部(110,210)が、各基地局間通信部(118,218)を介して協調し、協調送信基地局セットCSに対応するユーザ装置300fに対して無線信号を送信する。プロテクテッドサブフレームPSFでは、ピコ基地局200dの無線通信部210がユーザ装置300fに対して無線信号を送信する。
なお、ユーザ装置300fが複数のピコセルCpに在圏する場合には、プロテクテッドサブフレームPSFにおいても複数のピコ基地局200による協調送信(CoMP送信)が実行され得ることは当然に理解される。
【0056】
以上に説明した実施の形態によれば、第1実施形態と同様の効果が奏される。さらに、複数のマクロ基地局100の無線通信部110が相互に同期して無線通信を実行するので、いずれのマクロ基地局100も無線信号を送信せずピコ基地局200のみが無線信号を送信する期間(非プロテクテッドサブフレームNSF)が確保される。そのため、複数のマクロ基地局100が形成するマクロセルCmのいずれにも在圏するユーザ装置300が存在する場合であっても、無線信号同士の干渉が抑制され得、ピコ基地局200からの無線信号がそのユーザ装置300に品質良く受信され得る。
【0057】
変形例
以上の実施の形態は多様に変形される。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は相互に矛盾しない限り適宜に併合され得る。
【0058】
(1)変形例1
以上の実施の形態では、測定された電波の受信電力(RSRP)から得られた特性値に基づいて協調送信基地局セットCSに含まれる基地局が決定(選択)されたが、特性値は、信号対干渉雑音比(Signal-to-Interference and Noise Ratio,SINR)、受信品質(Reference Signal Received Quality,RSRQ)等に基づいて得られてもよい。
【0059】
(2)変形例2
以上の実施の形態では、ユーザ装置300の測定部320に測定された特性値と所定の閾値Thとの比較がマクロ基地局100の決定部120にて実行された。しかしながら、特性値と閾値Thとの比較がユーザ装置300にて実行されてもよい。すなわち、閾値Thが記憶された不図示の記憶部をユーザ装置300自身が備え、測定部320が、各基地局からの無線信号の受信電力を測定して得た特性値と所定の閾値Thとを比較して、閾値Thを上回る無線信号を送信する基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)を示す情報を測定結果Rとして通知部330に供給してもよい。以上の場合、マクロ基地局100の決定部120は、ユーザ装置300の通知部330から通知された、特性値(受信電力)が所定の閾値Thを上回る無線信号を送信する基地局を示す測定結果Rに基づいて、そのユーザ装置300への協調送信基地局セットCSを決定することが可能である。
【0060】
(3)変形例3
以上の実施の形態では、マクロ基地局100よりも送信能力の低い基地局としてピコ基地局200が例示されたが、マイクロ基地局、ナノ基地局、フェムト基地局、リモートラジオヘッド等が送信能力の低い基地局として採用されてもよい。
特に、無線通信システム1の要素として、相異なる送信能力を有する複数の基地局の組合せ(例えば、マクロ基地局、ピコ基地局、およびフェムト基地局の組合せ)が採用されてもよい。
【0061】
(4)変形例4
以上の実施の形態では、サブフレームSFのパターン(非プロテクテッドサブフレームNSFおよびプロテクテッドサブフレームPSFの配分)が静的に定められたが、サブフレームSFのパターンは準静的に定められてもよい。例えば、マクロ基地局100の稼働中に必要に応じてピコ基地局200が追加または削除され得る場合には、そのマクロ基地局100の協調送信基地局セットCSに含まれるピコ基地局200の数に応じて、非プロテクテッドサブフレームNSFとプロテクテッドサブフレームPSFとの配分が変化されてもよい。
【0062】
例えば、基地局の個数が多いほどCoMPの効果が高まることを考慮して、マクロ基地局100の通信制御部116が、そのマクロ基地局100を含む協調送信基地局セットCSに含まれるピコ基地局200の個数Nが多い程、無線フレームF内における非プロテクテッドサブフレームNSFの個数を多くするように制御してもよい。図12の例において、通信制御部116は、協調送信基地局セットCSに含まれるピコ基地局200の個数Nが1である場合(図12(a))には非プロテクテッドサブフレームNSFの個数を2に、個数Nが2の場合(図12(b))には非プロテクテッドサブフレームNSFの個数を3に、個数Nが3の場合(図12(c))には非プロテクテッドサブフレームNSFの個数を5に設定する。以上の設定動作は、比較的長いインターバル(例えば1時間)毎に実行され得る。
【0063】
なお、例えば、ピコ基地局200が送信する無線信号に対するマクロ基地局100からの干渉がCoMPの効果よりも大きな影響を有するような環境においては、図12の例とは逆に、協調送信基地局セットCSに含まれるピコ基地局200の個数Nが多い程、無線フレームFにおけるプロテクテッドサブフレームPSFの個数を多くする構成も採用され得る。
【0064】
また、以上の変形例において、ピコ基地局200の個数Nでなく、協調送信基地局セットCSに含まれる基地局(マクロ基地局100、ピコ基地局200)の総数に基づいて、マクロ基地局100の通信制御部116が非プロテクテッドサブフレームNSFの個数を制御してもよい。
【0065】
(5)変形例5
第2実施形態においては、マクロ基地局100cとマクロ基地局100dとが相互に同期して無線信号の送信を実行したが、マクロ基地局100同士は必ずしも同期しなくてもよい。いずれかのマクロ基地局100からの無線信号の送信が停止されていれば、全てのマクロ基地局100から無線信号が送信されている場合と比較して、ピコ基地局200から送信される無線信号に対する干渉が抑制されるからである。また、各マクロ基地局100のプロテクテッドサブフレームPSF同士が一致しなくても、少なくとも一部が共通していれば、その一部の期間においてはピコ基地局200のみが無線信号を送信することとなるからである。さらに、マクロ基地局100同士の同期が不要となるため構成も簡易となり得る。
【0066】
(6)変形例6
ユーザ装置300は、各基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)と無線通信が可能な任意の装置である。ユーザ装置300は、例えばフィーチャーフォンまたはスマートフォン等の携帯電話端末でもよく、デスクトップ型パーソナルコンピュータでもよく、ノート型パーソナルコンピュータでもよく、UMPC(Ultra-Mobile Personal Computer)でもよく、携帯用ゲーム機でもよく、その他の無線端末でもよい。
【0067】
(7)変形例7
無線通信システム1内の各要素(マクロ基地局100、ピコ基地局200、ユーザ装置300)においてCPUが実行する各機能は、CPUの代わりに、ハードウェアで実行してもよいし、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)等のプログラマブルロジックデバイスで実行してもよい。
【符号の説明】
【0068】
100……マクロ基地局、110……無線通信部、112……送受信アンテナ、114……送受信部、116……通信制御部、118……基地局間通信部、120……決定部、200……ピコ基地局、210……無線通信部、212……送受信アンテナ、214……送受信部、216……通信制御部、218……基地局間通信部、300……ユーザ装置、310……無線通信部、312……送受信アンテナ、320……測定部、330……通知部、C……セル、CS……協調送信基地局セット、Cm……マクロセル、Cp……ピコセル、F……無線フレーム、N……個数、NSF……非プロテクテッドサブフレーム、PSF……プロテクテッドサブフレーム、R……特性値、SF……サブフレーム、Th……閾値、f……周波数帯域。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に接続され、各々が第1セルを形成する複数の第1無線基地局と、
前記第1無線基地局の少なくともいずれか1つと各々が接続し、接続先の前記第1無線基地局が形成する前記第1セル内に前記第1セルよりも面積が小さい第2セルを各々が形成する複数の第2無線基地局と、
前記第1セルおよび前記第2セルのうち移動局自身が在圏する在圏セルに対応する前記第1無線基地局および前記第2無線基地局の各々との間で無線信号を送受信して無線通信を実行することが可能な移動局と
を備える無線通信システムであって、
前記移動局は、
前記在圏セルに対応する前記第1無線基地局および前記第2無線基地局から送信される各無線信号の受信特性を測定する測定部と、
前記測定部での前記各受信特性の測定結果を前記在圏セルに対応する前記第1無線基地局に通知する通知部とを備え、
前記各第1無線基地局は、
前記移動局から通知された前記測定結果に基づいて、前記受信特性が所定の閾値を上回る無線信号を送信する第1無線基地局および第2無線基地局を、当該移動局への協調送信無線基地局セットとして決定する決定部と、
当該第1無線基地局に接続された第2無線基地局と同期して無線通信を実行する要素であって、第1期間において当該第1無線基地局自身の第1セルに在圏する前記移動局への無線信号の送信を実行し、第2期間において当該移動局への無線信号の送信を停止する第1無線通信部を備え、
前記各第2無線基地局は、
当該第2無線基地局が接続する第1無線基地局と同期して無線通信を実行する要素であって、当該第2無線基地局が接続する前記第1無線基地局の前記第1期間および前記第2期間の双方において当該第2無線基地局自身の第2セルに在圏する前記移動局への無線信号の送信を実行する第2無線通信部を備え、
前記第1無線基地局の前記第1期間において、前記協調送信無線基地局セットに含まれる前記第1無線基地局の前記第1無線通信部と前記協調送信無線基地局セットに含まれる前記各第2無線基地局の前記第2無線通信部とが協調して、当該協調送信無線基地局セットに対応する移動局に対して無線信号を送信可能であり、
前記第1無線基地局の前記第2期間において、前記協調送信無線基地局セットに含まれる前記各第2無線基地局の前記第2無線通信部が協調して、当該協調送信無線基地局セットに対応する移動局に対して無線信号を送信可能である
無線通信システム。
【請求項2】
前記第1無線基地局において、前記第1期間と前記第2期間とが相等しい時間長を有し、前記第1期間と前記第2期間とが交互に到来する
請求項1の無線通信システム。
【請求項3】
前記第1無線基地局において、当該第1無線基地局を含む前記協調送信無線基地局セットに含まれる無線基地局の数に応じて前記第1期間と前記第2期間との配分が決定される
請求項1の無線通信システム。
【請求項4】
当該第1無線基地局を含む前記協調送信無線基地局セットに含まれる無線基地局の数が多い程、単位期間内における前記第1期間の個数を多くする
請求項3の無線通信システム。
【請求項5】
前記第1無線基地局の前記第1無線通信部の各々は、相互に同期して無線通信を実行することが可能である
請求項2から4のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項6】
相互に接続され、各々が第1セルを形成する複数の第1無線基地局と、
前記第1無線基地局の少なくともいずれか1つと各々が接続し、接続先の前記第1無線基地局が形成する前記第1セル内に前記第1セルよりも面積が小さい第2セルを各々が形成する複数の第2無線基地局と、
前記第1セルおよび前記第2セルのうち移動局自身が在圏する在圏セルに対応する前記第1無線基地局および前記第2無線基地局の各々との間で無線信号を送受信して無線通信を実行することが可能な移動局と
を備える無線通信システムにおける通信制御方法であって、
前記移動局が、前記在圏セルに対応する前記第1無線基地局および前記第2無線基地局から送信される各無線信号の受信特性を測定し、その測定結果を前記在圏セルに対応する前記第1無線基地局に通知し、
前記各第1無線基地局が、前記移動局から通知された前記測定結果に基づいて、前記受信特性が所定の閾値を上回る無線信号を送信する第1無線基地局および第2無線基地局を、当該移動局への協調送信無線基地局セットとして決定し、当該第1無線基地局に接続された第2無線基地局と同期して無線通信を実行するに際し、第1期間において当該第1無線基地局自身の第1セルに在圏する前記移動局への無線信号の送信を実行し、第2期間において当該移動局への無線信号の送信を停止し、
前記各第2無線基地局が、当該第2無線基地局が接続する第1無線基地局と同期して無線通信を実行するに際し、当該第2無線基地局が接続する前記第1無線基地局の前記第1期間および前記第2期間の双方において当該第2無線基地局自身の第2セルに在圏する前記移動局への無線信号の送信を実行し、
前記第1無線基地局の前記第1期間において、前記協調送信無線基地局セットに含まれる前記第1無線基地局と前記協調送信無線基地局セットに含まれる前記各第2無線基地局とが協調して、当該協調送信無線基地局セットに対応する移動局に対して無線信号を送信し、
前記第1無線基地局の前記第2期間において、前記協調送信無線基地局セットに含まれる前記各第2無線基地局が協調して、当該協調送信無線基地局セットに対応する移動局に対して無線信号を送信する
通信制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−34053(P2013−34053A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168190(P2011−168190)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】