説明

無線通信システムにおける下り共通制御チャネルの周波数資源割り当て方法およびそのシステム

【課題】無線通信システムの運用状況に応じて、下り共通制御チャネルの周波数資源を効率的に利用できる周波数資源割り当て方法及びそのシステムを提供する。
【解決手段】複数の基地局2を含む対象領域1ごとに閾値を計算する閾値計算器3により、対象領域1内の各基地局2から下り共通制御チャネル用に配分された各周波数資源の状態を示す測定結果を収集し、この測定結果と各周波数資源の状態を判定するための規定閾値とに基づき、各基地局2に指定するための許容閾値と必要周波数資源数を算出して各基地局2に通知すると共に、各端末からの通信品質情報に基づき前記規定閾値を更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、無線通信システムにおいて基地局から各端末にシステム情報を通知するための下り共通制御チャネルの周波数資源割り当て方法およびそのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、下り共通制御チャネルの周波数資源の割り当て方法として、周波数資源の使用状況を測定し、所望の条件を満たしていれば該当する周波数資源を選択して使用する方法を用いる無線通信システムが提供されている。ここで、下り共通制御チャネルとは、基地局からすべての端末に対して送信されるチャネルで、基地局番号等の基地局を識別するためのシステム情報を送るチャネルである。また、上記所望の条件としては、他基地局からの干渉波電力が最小となるチャネルを選択するようになっている。
【0003】
無線通信システム帯域のうち、下り共通制御チャネルに必要とされる周波数資源は基地局設置状況により異なるので、下り共通制御チャネルに配分される周波数帯域が固定されている場合、上記のような画一的な条件による周波数資源選択方法では、地域によっては使用されない周波数資源が生じる地域と、周波数資源が枯渇する地域が出てくる。
【0004】
地形、建築物、トラフィック等を鑑みた無線通信システムの基地局設置方法は、地域によって異なる。すなわち、データ通信量の大小、建物の種類や地形などに応じて、基地局は高密度で設置されたり、ビルの屋上に設置されたり、柱の上に設置されたりして、運用状況がそれぞれ異なる。それに応じてシステム情報を通知する下り共通制御チャネルに必要となる周波数資源数も異なる。出願人による実測結果例によると、下り共通制御チャネル用周波数資源のうち、都市部のある地域では98%、住宅地のある地域では24%が使用されている。住宅地では、下り共通制御チャネル用に配分した周波数帯域のうち、未使用となる周波数資源が生じている。一方、都市部ではすでに周波数資源が枯渇している。
【0005】
特許文献1には、キャリアセンスを用い干渉が閾値以下か否かを判定し周波数資源を選択して通信を行う移動体通信システムにおいて、干渉波電力だけでなく、所望波電力も測定するために、基地局から端末へ予め使用候補周波数資源を通知し、その候補周波数資源を一時的に用いて各周波数資源の所望波電力と干渉波電力を測定し、最適な周波数資源を選択するようにして、干渉波電力だけでなく、所望波電力も用いることで、より品質のよい周波数資源を選択することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−206538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、通信品質の向上は期待できるものの画一的な条件による周波数資源選択方法に変わりはないので、地域によっては使用されない周波数資源が生じる地域と、周波数資源が枯渇する地域が出てくるという課題は解決されない。
【0008】
前述したように、下り共通制御チャネル用に配分した周波数帯域のうち、住宅地では未使用となる周波数資源が生じている一方、都市部ではすでに周波数資源が枯渇している。よって、運用状況に応じた周波数資源の選択条件の制御が必要とされている。また、都市部のような周波数資源が枯渇している地域では、特別な場合(例えば、回線品質の悪い状態にある通信や優先度の高い基地局)に使用可能な周波数資源を確保できない。よって、特別な場合に使用可能な周波数資源を確保するための運用状況に応じた周波数資源数の割り当て方法も必要とされている。
【0009】
地域ごとに下り共通制御チャネル用の周波数資源必要数が異なる状況において、その地域に必要な下り共通制御チャネル用周波数資源を割り当て、特別な場合(例えば、回線品質の悪い状態にある通信や優先度の高い基地局)に使用可能な周波数資源を確保できることは運用面で有効である。
【0010】
そこで、本願発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、無線通信システムの運用状況に応じて、下り共通制御チャネルの周波数資源を効率的に利用できる周波数資源割り当て方法及びそのシステムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記のような目的を達成するために、本願発明に係る下り共通制御チャネルの周波数資源割り当て方法は、複数の基地局を含む対象領域ごとに閾値を計算する閾値計算器により、対象領域内の各基地局から下り共通制御チャネル用に配分された各周波数資源の状態を示す測定結果を収集し、この測定結果と各周波数資源の状態を判定するための規定閾値とに基づき、各基地局に指定するための許容閾値と必要周波数資源数を算出して各基地局に通知することを特徴とするものである。また、上記においては、各端末からの通信品質情報に基づき前記規定閾値を更新することが好ましい。
【0012】
また、複数の基地局を含む対象領域ごとに閾値を計算する閾値計算器により、対象領域内の各基地局から下り共通制御チャネル用に配分された各周波数資源の状態を示す測定結果を収集し、この測定結果と各周波数資源の状態を判定するための規定閾値とに基づき、各基地局に指定するための許容閾値と必要周波数資源数を算出する一方、複数の対象領域の中で必要周波数資源数が一番大きいものを、全ての対象領域の必要周波数資源数として選定し、複数の対象領域の中で必要周波数資源数が一番大きい対象領域については、当該対象領域の閾値計算器が持つ規定閾値を各基地局の許容閾値とし、その他の対象領域については、当該対象領域の閾値計算器が収集した測定結果と当該閾値計算器が持つ規定閾値と前記選定された必要周波数資源数とに基づき算出された許容閾値を各基地局に通知するようにしても良い。また、上記においては、各端末からの通信品質情報に基づき前記規定閾値を更新することが好ましい。
【0013】
一方、本願発明に係る下り共通制御チャネルの周波数資源割り当てシステムは、複数の基地局を含む対象領域ごとに閾値を計算するために設置され、対象領域内の各基地局から下り共通制御チャネル用に配分された各周波数資源の状態を示す測定結果を収集し、この測定結果と各周波数資源の状態を判定するための規定閾値とに基づき、各基地局に指定するための許容閾値と必要周波数資源数を算出して各基地局に通知する閾値計算器を備えたことを特徴とするものである。また、上記においては、各端末からの通信品質情報に基づき前記規定閾値を更新することが好ましい。
【0014】
また、複数の基地局を含む対象領域ごとに閾値を計算するために設置され、対象領域内の各基地局から下り共通制御チャネル用に配分された各周波数資源の状態を示す測定結果を収集し、この測定結果と各周波数資源の状態を判定するための規定閾値とに基づき、各基地局に指定するための許容閾値と必要周波数資源数を算出する閾値計算器を備え、各閾値計算器は、複数の対象領域の中で必要周波数資源数が一番大きいものを、全ての対象領域の必要周波数資源数として選定し、複数の対象領域の中で必要周波数資源数が一番大きい対象領域については、当該対象領域の閾値計算器が持つ規定閾値を各基地局の許容閾値とし、その他の対象領域については、当該対象領域の閾値計算器が収集した測定結果と当該閾値計算器が持つ規定閾値と前記選定された必要周波数資源数とに基づき算出された許容閾値を各基地局に通知する閾値計算器を備えるようにしても良い。また、上記においては、各端末からの通信品質情報に基づき前記規定閾値を更新することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本願発明によれば、下り共通制御チャネルの周波数資源必要数を運用状況に応じて設定することを可能にすることで、空きとなった下り共通制御チャネル用の周波数帯域を特別な場合に割り振ることが可能となり、周波数資源を効率的に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本願発明の実施例として、許容干渉電力閾値(許容閾値)および下り共通制御チャネルの必要周波数資源数を指定する手順例を示すシステム構成図であり、図1Aはキャリアセンス結果収集時、図1Bは許容干渉電力閾値(許容閾値)および必要周波数資源数指定時を示す。
【図2】上記において基地局が任意数iある場合のブロック図で、左側が収集時、右側が指定時を示す。
【図3】対象領域ごとに下り共通制御チャネルの必要周波数資源数および許容干渉電力閾値(許容閾値)を選定する場合の閾値計算器手順例を示すフローチャート。
【図4】同じくそのブロック図。
【図5】規定干渉電力閾値(規定閾値)の更新手順例を示すフローチャート。
【図6】周波数資源割り当て例を示す説明図で、図6Aは従来システムによる周波数資源割り当て例、図6Bは本案システムによる周波数資源割り当て例。
【図7】複数の対象領域で同一の下り共通制御チャネルの必要周波数資源数を選定する場合の手順例として追加された処理を示すフローチャート。
【図8】複数の対象領域で同一の下り共通制御チャネルの必要周波数資源数を選定する場合において、選定された必要周波数資源数を用いて許容干渉電力閾値(許容閾値)を算出する各閾値計算器の手順例として追加された処理を示すフローチャート。
【図9】同じくそのブロック図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0017】
ここでは、基地局で下り共通制御チャネルキャリアセンスのために用いられる許容干渉電力閾値(許容閾値)を地理的な領域ごとに決定することで、下り共通制御チャネルに割り当てる周波数資源必要数を規定し、空き周波数資源を特別な場合に割り当て可能にする技術を提案する。
【0018】
図1は、本願発明の実施例として、許容干渉電力閾値および使用する下り共通制御チャネルの必要周波数資源数を指定する手順例を示すシステム構成図であり、図1Aはキャリアセンス結果収集時、図1Bは許容干渉電力閾値(許容閾値)および必要周波数資源数指定時を示している。図1に破線で示す対象領域1のような地理的な領域の分け方としては、都市部や住宅地といった地域ごと、基地局グループごと、基地局密度等が考えられる。
【0019】
図1Aにおいて、複数の基地局2を含む対象領域1内の各基地局2は、下り共通制御チャネル用の周波数資源すべてをキャリアセンスし、干渉電力およびその干渉源の基地局番号を測定する。干渉電力とその干渉源の基地局番号からなるキャリアセンス結果は対象領域1ごとに設置された閾値計算器3に送信される。図1Bにおいて、閾値計算器3は受信したキャリアセンス結果と閾値計算器3が持つ規定干渉電力閾値(規定閾値)とをもとに許容干渉電力閾値(許容閾値)および必要周波数資源数を算出し、対象領域1内の各基地局2に送信する。図2は、基地局2が任意数iある場合のブロック図であり、左側が収集時、右側が指定時を示している。なお、上記閾値計算器3は、上記のように物理的に対象領域1ごとに設置されるのではなく、対象領域ごとに閾値を計算できれば、複数領域で共通であっても良い。
【0020】
図3,図4は、対象領域ごとに下り共通制御チャネルの必要周波数資源数を選定する場合の閾値計算器手順例を示すフローチャートとそのブロック図である。
【0021】
本実施例では、個々の基地局2から指定距離範囲外の基地局について、下り共通制御チャネルをキャリアセンスすることにより測定した干渉電力の総和を求める。指定する距離範囲を増加させ、求めた干渉電力の総和が閾値計算器3の持つ規定干渉電力閾値(規定閾値)を下回ったら、範囲内の基地局数を対象領域内での必要周波数資源数とし、閾値計算器3が持つ規定干渉電力閾値(規定閾値)を各基地局2の許容干渉電力閾値(許容閾値)とする。ただし、必要周波数資源数は、下り共通制御チャネル用に配分した周波数資源数を越えないものとする。
【0022】
図3のフローチャートを参照して具体的に説明すると、当該フローチャートで示す処理が開始すると、まず変数i,jに初期値「1」を設定し、変数k,max_numに初期値「0」を設定する(ステップS101)。次にi番目(最初は1番目)の基地局を基準基地局とする(ステップS102)。また、基準基地局からの指定距離範囲として、予め定められた単位指定距離M(m)に上記変数j(最初は1)を乗じた距離数を設定する(ステップS103)。
【0023】
そして、基準基地局から指定距離範囲外の基地局からの総干渉電力と指定距離範囲内の基地局数を計算する(ステップS104)。次に、上記ステップS104で得られた総干渉電力が後述する処理により更新される規定干渉電力閾値(規定閾値)を下回ったか否かをチェックする(ステップS105)。総干渉電力が規定干渉電力閾値(規定閾値)を下回っていなければ、変数jに「1」加算して(ステップS105のN→ステップS106)、上述したステップS103からの処理を繰り返す。
【0024】
基準基地局からの指定距離範囲を広げていって、総干渉電力が規定干渉電力閾値(規定閾値)を下回れば、変数kに指定距離範囲内の基地局数を設定する(ステップS107)。そして、変数max_num(最初は0)が上記変数k(指定距離範囲内基地局数)より小さいか否かをチェックする(ステップS108)。最初は変数max_numが「0」で変数kより小さいので、次のステップS109に進んで変数max_numに変数kの値を設定する(ステップS109)。次に、基準基地局番号を示す変数i(最初は1)が総基地局数に達したか否かをチェックし(ステップS110)、ここでは変数iが未だ総基地局数に達していないので、変数iに「1」加算して(ステップS110のN→ステップS111)、上述したステップS102からの処理を繰り返す。各基準基地局について上述した処理を実行して、得られた変数k(指定距離範囲内基地局数)がそれまでの変数max_num(指定距離範囲内基地局数)を超えれば変数max_numを変数kの値に更新し(ステップS108のY→ステップS109)、超えなければ変数max_numの更新は行わない(ステップS108のN→ステップS111)。
【0025】
基準基地局番号を示す変数iが総基地局数に達すると、必要周波数資源数に変数max_numの値を設定すると共に、許容干渉電力閾値(許容閾値)に規定干渉電力閾値(規定閾値)を設定して、それらを各基地局に送信する(ステップS110のY→ステップS112)。
【0026】
上述した図3のフローチャートで示す処理は、図4に示す総干渉電力計算器31と計算範囲指定器32により実行され、これらは閾値計算器3に内蔵されたCPU,DSP,FPGA等を用いてソフトウエアで実現することができる。総干渉電力計算器31は、各基地局2からのキャリアセンス結果と、予め入力されて半導体メモリ等に記憶されている基地局位置情報と、計算範囲指定器32から出力される干渉電力計算範囲とに基づき、総干渉電力と計算範囲(指定距離範囲)内基地局数を算出して出力する。一方、計算範囲指定器32は、上記総干渉電力計算器31から出力された総干渉電力及び計算範囲(指定距離範囲)内基地局数と、予め下述する処理により更新されて半導体メモリ等に記憶されている規定干渉電力閾値(規定閾値)とに基づき、総干渉電力計算器31に出力する干渉電力計算範囲を更新すると共に、最終的に各基地局2に送信される許容干渉電力閾値(許容閾値)と、必要周波数資源数を算出して出力する。
【0027】
図5は、上述した規定干渉電力閾値(規定閾値)の更新手順例を示すフローチャートであり、各端末や閾値計算器に内蔵されたCPU,DSP,FPGA等を用いてソフトウエアで実施可能である。
【0028】
ここでは、一定期間の運用の間に端末から通信品質情報として所望CINR(信号対干渉雑音比)等を満たさない旨の通知を受けなければ、閾値計算器3が持つ規定干渉電力閾値(規定閾値)を上げ、再度計算を行う。一方、一定期間の運用の間に端末から通信品質情報として所望CINR等を満たさない旨の通知を受けた場合は、閾値計算器3が持つ規定干渉電力閾値(規定閾値)を下げ、端末の所望CINR等を確保する。
【0029】
図5のフローチャートを参照して具体的に説明すると、端末側では、一定期間ごとに下り共通制御チャネルのCINRを測定する(ステップS201)。次に、端末で測定したCINR(Est_CINR)が端末の所望CINR(Req_CINR)に満たないか否かをチェックし(ステップS202)、満たなければフラグ(Flag)を「1」に設定し(ステップS203)、満たしておればフラグ(Flag)を「0」に設定する(ステップS204)。これらは、図1,図2に示すように、基地局2を介してCINR測定結果として閾値計算器3に通知される。
【0030】
一方、閾値計算器3側では、一定期間ごとに上記フラグ(Flag)が「1」か否かをチェックする(ステップS205)。そして、上記フラグ(Flag)が「1」であれば規定干渉電力閾値(規定閾値)を所定値だけ下げ(ステップS206)、「1」でなければ規定干渉電力閾値(規定閾値)を所定値だけ上げる(ステップS207)。これにより、前述した図3のフローチャートにおける規定干渉電力閾値(規定閾値)が更新されて再度計算され、図3のステップS112で得られた必要周波数資源数と許容干渉電力閾値(許容閾値)が各基地局2に送信される。
【0031】
閾値計算器3は、下り共通制御チャネルに配分される周波数帯域のうち、必要周波数資源数を各基地局2に送信する。空きとなる周波数資源は特別な場合(例えば、回線品質の悪い状態にある通信や優先度の高い基地局)に利用可能となる。上記において、閾値計算器3から必要周波数資源数を各基地局2に送信する場合、閾値計算器3から下り共通制御チャネル周波数資源番号一覧として送信しても良いし、閾値計算器3からは必要周波数資源数のみを送信し、基地局2側で必要周波数資源数と使用可能な資源番号との対応付けを行っても良い。例えば、必要周波数資源数がLであれば、0番からL−1番までの周波数資源を下り共通制御チャネルに使用するとすれば良い。
【0032】
図6は周波数資源割り当て例を示す説明図で、図6Aは従来システムによる周波数資源割り当て例で、図6Bは本案システムによる周波数資源割り当て例である。同図に示すように、共通制御チャネル用周波数資源は1フレームのタイムスロットで、従来システムでは1フレームの全スロットが割り当てられていたが、本案システムでは、1フレームの全スロットのうち必要数だけが割り当てられ、残ったスロット(図6Bでは2スロット)が空き周波数資源となる。この空き周波数資源が、回線品質の悪い状態にある通信や優先度の高い基地局等の特別な場合に割り当て可能となる。
【0033】
以上のように、下り共通制御チャネルの周波数資源必要数を運用状況に応じて設定することを可能にすることで、空きとなった下り共通制御チャネル用の周波数帯域を特別な場合(例えば、回線品質の悪い状態にある通信や優先度の高い基地局)に割り振ることが可能となり、周波数資源を効率的に利用できる。
【0034】
次に、複数の対象領域で同一の下り共通制御チャネルの必要周波数資源数を選定する場合について説明する。
【0035】
本実施例でも、前記実施例の図3のフローチャートに示したように、各対象領域において、個々の基地局2から指定距離範囲外の基地局2について、下り共通制御チャネルをキャリアセンスすることにより測定した干渉電力の総和を求める。指定する距離範囲を増加させ、求めた干渉電力の総和が閾値計算器3の持つ規定干渉電力閾値(規定閾値)を下回ったら、範囲内の基地局数を対象領域内での必要周波数資源数とする。なお、図3のフローチャートに沿った具体的な説明は、前述したのと同様となり、重複するので省略する。
【0036】
図7は、複数の対象領域で同一の下り共通制御チャネルの必要周波数資源数を選定する場合の手順例として追加された処理を示すフローチャートであり、ここでは、複数の対象領域の中で必要周波数資源数が一番大きいものを、全ての対象領域の必要周波数資源数とする。なお、この処理は、複数の対象領域の中で所定の対象領域の閾値計算器が他の対象領域の閾値計算器と連携して行うことにより実施しても良いし、各対象領域の閾値計算器が他の対象領域の閾値計算器と連携して行うことにより実施しても良い。
【0037】
図7のフローチャートを参照して具体的に説明する。なお、ここでは、複数ある対象領域に「0」から「対象領域数−1」までの番号が付されているものとする。さて、当該フローチャートで示す処理が開始すると、まず変数iに「1」を設定する(ステップS301)。次に、変数max_numに0番目の対象領域の必要周波数資源数を設定する(ステップS302)。また、変数tmp_numにi番目(最初は1)の対象領域の必要周波数資源数を設定する(ステップS303)。そして、変数tmp_numが変数max_numより大きいか否かをチェックし(ステップS304)、大きいときのみ変数max_numに変数tmp_numの値を設定して変数max_numを更新する(ステップS304のY→ステップS305)。
【0038】
次のステップS306では、変数iが対象領域番号の最大値である「対象領域数−1」に達したか否かをチェックし、達していなければ変数iに「1」加算して上記ステップS303からの処理を繰り返す。変数iが対象領域番号の最大値である「対象領域数−1」
に達すれば(ステップS306のY)、全ての対象領域における必要周波数資源数の大小比較と変数max_numの更新が完了したことになるので、ステップS308に進んで必要周波数資源数に変数max_numの値を設定する。
【0039】
また、複数の対象領域の中で必要周波数資源数が一番大きい対象領域については、図3,図4に示したように、閾値計算器3が持つ規定干渉電力閾値(規定閾値)を各基地局2の許容干渉電力閾値(許容閾値)とし、選定された必要周波数資源数と共に各基地局2に送信することができる。その他の対象領域の閾値計算器3は、図7のフローチャートで示した処理で選定された必要周波数資源を各基地局2に送信するが、許容干渉電力閾値(許容閾値)については、図8,図9に示すように、選定された必要周波数資源数となる距離範囲外における干渉電力の総和を基地局2の許容干渉電力閾値(許容閾値)とする。ただし、前記の場合と同様に、必要周波数資源数は下り共通制御チャネル用に配分した周波数資源数を越えないものとする。
【0040】
図8,図9は、複数の対象領域で同一の下り共通制御チャネルの必要周波数資源数を選定する場合において、選定された必要周波数資源数を用いて許容干渉電力閾値(許容閾値)を算出する各閾値計算器の手順例として追加された処理を示すフローチャートとそのブロック図である。
【0041】
図8のフローチャートを参照して具体的に説明すると、当該フローチャートで示す処理が開始すると、前記図3のフローチャートと同様に、まず変数i,jに初期値「1」を設定し、変数k,max_numに初期値「0」を設定する(ステップS401)。次にi番目(最初は1番目)の基地局を基準基地局とする(ステップS402)。また、基準基地局からの指定距離範囲として、予め定められた単位指定距離M(m)に上記変数j(最初は1)を乗じた距離数を設定する(ステップS403)。
【0042】
そして、基準基地局から指定距離範囲外の基地局からの総干渉電力と指定距離範囲内の基地局数を計算する(ステップS404)。次に、上記ステップS404で得られた指定距離範囲内の基地局数が前記図7の処理で選定された各対象領域中で最大の必要周波数資源数を上回ったか否かをチェックする(ステップS405)。上回っていなければ、変数kに上記ステップS404で得られた総干渉電力を設定すると共に、変数jに「1」加算して(ステップS405のN→ステップS406→ステップS407)、上述したステップS403からの処理を繰り返す。
【0043】
基準基地局からの指定距離範囲を広げていって、指定距離範囲内の基地局数が選定された最大の必要周波数資源数を上回れば(ステップS405のY)、変数max_val(最初は0)が上記変数k(総干渉電力)より小さいか否かをチェックする(ステップS408)。最初は変数max_valが「0」で変数kの値より小さいので、次のステップS409に進んで変数max_valに変数kの値を設定する。次に、基準基地局番号を示す変数i(最初は1)が総基地局数に達したか否かをチェックし(ステップS410)、ここでは変数iが未だ総基地局数に達していないので、変数iに「1」加算して(ステップS410のN→ステップS411)、上述したステップS402からの処理を繰り返す。各基準基地局について上述した処理を実行して、得られた変数k(総干渉電力)がそれまでの変数max_num(総干渉電力)を超えれば変数max_valを変数kの値に更新し(ステップS408のY→ステップS409)、超えなければ変数max_valの更新は行わない(ステップS408のN→ステップS411)。
【0044】
基準基地局番号を示す変数iが総基地局数に達すると(ステップS410のY)、変数max_val(総干渉電力)は閾値計算器3が持つ規定干渉電力閾値(規定閾値)よりも大きいか否かをチェックし(ステップS412)、大きければ許容干渉電力閾値(許容閾値)として規定干渉電力閾値(規定閾値)を設定し(ステップS413)、大きくなければ許容干渉電力閾値(許容閾値)として変数max_valの値を設定して(ステップS414)、図9に示すように各基地局2に送信する。
【0045】
上述した図8のフローチャートで示す処理は、図9に示す総干渉電力計算器31と計算範囲指定器32により実行され、これらは閾値計算器3に内蔵されたCPU,DSP,FPGA等を用いてソフトウエアで実現することができる。総干渉電力計算器31は、各基地局2からのキャリアセンス結果と、予め入力されて半導体メモリ等に記憶されている基地局位置情報と、計算範囲指定器32から出力される干渉電力計算範囲とに基づき、総干渉電力と計算範囲(指定距離範囲)内基地局数を算出して出力する。一方、計算範囲指定器32は、上記総干渉電力計算器31から出力された総干渉電力及び計算範囲(指定距離範囲)内基地局数と、上記図7の処理で選定された必要周波数資源数と予め下述する処理により更新されて半導体メモリ等に記憶されている規定干渉電力閾値(規定閾値)とに基づき、総干渉電力計算器31に出力する干渉電力計算範囲を更新すると共に、最終的に各基地局2に送信される許容干渉電力閾値(許容閾値)を算出して出力する。
【0046】
規定干渉電力閾値(規定閾値)の更新手順例を示す前記図5のフローチャート同様、一定期間の運用の間に端末から所望CINR等を満たさない旨の通知を受けなければ、閾値計算器3が持つ規定干渉電力閾値(規定閾値)を上げ、再度計算を行う。一方、一定期間の運用の間に端末から所望CINR等を満たさない旨の通知を受けた場合は、閾値計算器3が持つ規定干渉電力閾値(規定閾値)を下げ、端末の所望CINR等を確保する。なお、図5のフローチャートに沿った具体的な説明は、前述したのと同様となり、重複するので省略する。
【0047】
各閾値計算器3は、下り共通制御チャネルに配分される周波数帯域のうち、必要周波数資源数を各基地局2に送信する。空きとなる周波数資源は特別な場合に利用可能となる。
【0048】
本実施例においても前記実施例とほぼ同様な作用効果が得られると共に、複数の対象領域で同一の下り共通制御チャネルの必要周波数資源数を不具合なく設定することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 対象領域
2 基地局
3 閾値計算器
31 総干渉電力計算器
32 計算範囲指定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムにおいて基地局から各端末にシステム情報を通知するための下り共通制御チャネルの周波数資源割り当て方法であって、
複数の基地局を含む対象領域ごとに閾値を計算する閾値計算器により、対象領域内の各基地局から下り共通制御チャネル用に配分された各周波数資源の状態を示す測定結果を収集し、この測定結果と前記各周波数資源の状態を判定するための規定閾値とに基づき、各基地局に指定するための許容閾値と必要周波数資源数を算出して各基地局に通知することを特徴とする無線通信システムにおける下り共通制御チャネルの周波数資源割り当て方法。
【請求項2】
前記閾値計算機は、各端末からの通信品質情報に基づき前記規定閾値を更新することを特徴とする請求項1記載の無線通信システムにおける下り共通制御チャネルの周波数資源割り当て方法。
【請求項3】
無線通信システムにおいて基地局から各端末にシステム情報を通知するための下り共通制御チャネルの周波数資源割り当て方法であって、
複数の基地局を含む対象領域ごとに閾値を計算する閾値計算器により、対象領域内の各基地局から下り共通制御チャネル用に配分された各周波数資源の状態を示す測定結果を収集し、この測定結果と前記各周波数資源の状態を判定するための規定閾値とに基づき、各基地局に指定するための許容閾値と必要周波数資源数を算出する一方、複数の対象領域の中で必要周波数資源数が一番大きいものを、全ての対象領域の必要周波数資源数として選定し、複数の対象領域の中で必要周波数資源数が一番大きい対象領域については、当該対象領域の閾値計算器が持つ規定閾値を各基地局の許容閾値とし、その他の対象領域については、当該対象領域の閾値計算器が収集した測定結果と当該閾値計算器が持つ規定閾値と前記選定された必要周波数資源数とに基づき算出された許容閾値を各基地局に通知することを特徴とする無線通信システムにおける下り共通制御チャネルの周波数資源割り当て方法。
【請求項4】
前記閾値計算機は、各端末からの通信品質情報に基づき前記規定閾値を更新することを特徴とする請求項3記載の無線通信システムにおける下り共通制御チャネルの周波数資源割り当て方法。
【請求項5】
無線通信システムにおいて基地局から各端末にシステム情報を通知するための下り共通制御チャネルの周波数資源割り当てシステムであって、
複数の基地局を含む対象領域ごとに閾値を計算するために設置され、対象領域内の各基地局から下り共通制御チャネル用に配分された各周波数資源の状態を示す測定結果を収集し、この測定結果と前記各周波数資源の状態を判定するための規定閾値とに基づき、各基地局に指定するための許容閾値と必要周波数資源数を算出して各基地局に通知する閾値計算器を備えたこと特徴とする下り共通制御チャネルの周波数資源割り当てシステム。
【請求項6】
前記閾値計算機は、各端末からの通信品質情報に基づき前記規定閾値を更新すること特徴とする請求項5記載の下り共通制御チャネルの周波数資源割り当てシステム。
【請求項7】
無線通信システムにおいて基地局から各端末にシステム情報を通知するための下り共通制御チャネルの周波数資源割り当てシステムであって、
複数の基地局を含む対象領域ごとに閾値を計算するために設置され、対象領域内の各基地局から下り共通制御チャネル用に配分された各周波数資源の状態を示す測定結果を収集し、この測定結果と前記各周波数資源の状態を判定するための規定閾値とに基づき、各基地局に指定するための許容閾値と必要周波数資源数を算出する閾値計算器を備え、各閾値計算器は、複数の対象領域の中で必要周波数資源数が一番大きいものを、全ての対象領域の必要周波数資源数として選定し、複数の対象領域の中で必要周波数資源数が一番大きい対象領域については、当該対象領域の閾値計算器が持つ規定閾値を各基地局の許容閾値とし、その他の対象領域については、当該対象領域の閾値計算器が収集した測定結果と当該閾値計算器が持つ規定閾値と前記選定された必要周波数資源数とに基づき算出された許容閾値を各基地局に通知することを特徴とする下り共通制御チャネルの周波数資源割り当てシステム。
【請求項8】
前記閾値計算機は、各端末からの通信品質情報に基づき前記規定閾値を更新すること特徴とする請求項7記載の下り共通制御チャネルの周波数資源割り当てシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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