無線通信システム及びセル・アンテナ配備パターン最適化装置及びプログラム
【課題】 無線通信システムにおいて、最適なセルの配置及びアンテナの配置を行う。
【解決手段】 本発明は、無線通信システムにおいて、基地局が、n個のアンテナを備え、かつ、当該基地局により構成される通信エリアであるセルの中心と該n個のアンテナが、座標軸原点をあるセルの中心から別のセルの中心に移しても、また、座標軸を2π/n(nはアンテナ数)回転しても、同じ配備パターンとなることを拘束条件として、任意地点(x,y)での受信電力mn(d1,…,dn)=Kf(l(d1)ν1,…,l(dn)νn)が、目標値v'を確率1−ε以上で満足し、かつ、全平面を最小のセル数で覆う漸近的最小被覆問題を解くことにより導出された最適なセル配置のパターン及びアンテナの配置パターンにより配置される。
【解決手段】 本発明は、無線通信システムにおいて、基地局が、n個のアンテナを備え、かつ、当該基地局により構成される通信エリアであるセルの中心と該n個のアンテナが、座標軸原点をあるセルの中心から別のセルの中心に移しても、また、座標軸を2π/n(nはアンテナ数)回転しても、同じ配備パターンとなることを拘束条件として、任意地点(x,y)での受信電力mn(d1,…,dn)=Kf(l(d1)ν1,…,l(dn)νn)が、目標値v'を確率1−ε以上で満足し、かつ、全平面を最小のセル数で覆う漸近的最小被覆問題を解くことにより導出された最適なセル配置のパターン及びアンテナの配置パターンにより配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム及びセル・アンテナ配備パターン最適化装置及びプログラムに係り、特に、移動体通信のセル及びアンテナの配置を最適化するための無線通信システム及びセル・アンテナ配備パターン最適化装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信において、セル設計(アンテナの配備設計)を行うためのパスロス関数m(d)の第一近似としては、
【0003】
【数1】
がしばしば用いられる。ここで、dは、送受信装置間距離、αは定数である。そして、このパスロス関数が目標値vを満たす範囲をセルとすると、セルは、基地局を中心とする円となる。そして、サービスエリアである平面をこの円形のセルでもっとも効率的にカバーすると、円に内接する六角形により平面が分割されるパターンとなることがよく知られている。そして、この円形のセルと六角形により平面を分割するパターンは、無線システムのセル設計における第1近似として、評価や設計に重要な役割を果たしてきた。
【0004】
近年、複数のアンテナを用いた無線システムが登場し、特に、1つの基地局が複数の地点に設置されたアンテナを利用して、同一信号を送信、あるいは、受信して、主にエラー性能(誤り率特性)の改善をはかるマクロダイバシティ技術が利用され始めた(図1)。例えば、セクタアンテナを用いたシステムとしては、非特許文献1があり、基地局側が3箇所のアンテナを用いる構成が提案されている。本発明と同じ、全方位アンテナを用いるシステムのセル・アンテナ配備パターンについては、非特許文献2で検討され、図2に示すn=4(nは1つの基地局に配備されるアンテナ地点の数)のパターンが推奨された。
【0005】
なお、ミクロダイバシティを用いるようなケースでは、1箇所に複数のアンテナの場合がある。そこで、以下の記述では、アンテナは1箇所に設置されたアンテナの意味に用いる。従って、1つのアンテナ、という記述は、実際には、1箇所に設置された複数のアンテナの場合がある。
【0006】
また、無線システムにおいては、受信信号電力が非常に重要である。受信信号電力は、送信点からの距離に依存するパスロス関数でモデル化される成分と、遮蔽物等による影響からなるシャドーイングと称される成分と、マルチパス等の影響による瞬時変動成分に、通常、分けて考えることができる。ここで、瞬時変動は、ミクロダイバシティ等の技術により無視できるようになる場合が多いことから、パスロスとシャドーイングが考慮できることが重要である。
【0007】
パスロスとシャドーイングを考慮した場合、既存の1セル1アンテナのシステムでは、受信信号電力m(d)は、
m(d)=Kl(d)ν
で表される。ここで、dは、送受信間距離、l(d)は、パスロス関数であり、
【0008】
【数2】
がしばしば用いられる。Kは送信電力、アンテナゲイン等から定まる定数、νは、シャドウイングを表す確率変数である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】内田大誠等、「広域ユビキタスネットワークを実現する技術開発の取組」、2010年3月.
【非特許文献2】R. C. Bernhardt「Macroscopic Diversity in Frequency Reuse Radio Systems」IEEE J. Selected Areas in Communications, 5, 5, pp. 862-870, 1987年.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、従来の無線通信システムでは、通信セルを構成する基地局に1つのアンテナのみが備えられていることを前提としてセル配置の設計がなされていた。1つの基地局が複数の地点に全方位アンテナを配備する無線システムでは、最適なセル配置及びアンテナ配置を行うための方法は提供されておらず、セルは円形とはならず、平面を効率的に配備するパターンも知られていない。
【0011】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、均一の平面に対して、基地局、および、全方位アンテナを効率的に配備するパターンを決定する方法と、その結果得られるアンテナの配備パターンによりセル及びアンテナが配置されることが可能な無線通信システム及びセル・アンテナ配備パターン最適化装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【0012】
特に、基地局系の主たるコスト要因が基地局主装置である場合には、現実的な配備パターンのうち、平面をコスト最小で被覆するパターンを与える。なお、主たるコストが基地局主装置とは言えないような場合についても、「共用アンテナの場合」として言及する。また、本発明では、シャドウイングが考慮されていないが、アンテナ数が同じである場合には、シャドウイング対策に差がないので、距離減衰項のみに基づくものとした。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明(請求項1)は、1つの基地局がn箇所の地点に置かれたアンテナを使用する複数の基地局により構成される無線通信システムであって、
前記基地局が、n個のアンテナを備え、かつ、当該基地局により構成される通信エリアであるセルの中心と該n個のアンテナが、
座標軸原点をあるセルの中心から別のセルの中心に移しても、また、座標軸を2π/n(nはアンテナ数)回転しても、同じ配備パターンとなることを拘束条件として、任意地点(x,y)での受信電力mn(d1,…,dn)=Kf(l(d1)ν1,…,l(dn)νn)が、目標値v'を確率1−ε以上で満足し、かつ、全平面を最小のセル数で覆う漸近的最小被覆問題を解くことにより導出された最適なセル配置のパターン及びアンテナの配置パターンにより配置される。
【0014】
また、本発明(請求項2)は、アンテナ数が2(n=2)の場合は、平面を合同な平行四辺形で分割し、該平行四辺形の各頂点にセルの中心が配備され、
アンテナ数が3(n=3)の場合は、平面を合同な正六角形で分割し、該正六角形の各頂点にセルの中心が配備され、
アンテナ数が4(n=4)の場合は、平面を合同な正方形で分割し、該正方形の各頂点にセルの中心が配備され、
アンテナ数が6(n=6)の場合は、平面を合同な正三角形で分割し、該正三角形の各頂点にセルの中心が配備される。
【0015】
また、本発明(請求項3)は、複数の基地局により構成される無線通信システムにおけるセル配置及びアンテナ配置を最適化するためのセル・アンテナ配備パターン最適化装置であって、
前記最適化装置は、
拘束条件により、任意地点(x,y)での受信電力mn(d1,…,dn)=Kf(l(d1)ν1,…,l(dn)νn)が、目標値v'を確率1-ε以上で満足し、かつ、全平面を最小のセル数で覆う漸近的最小被覆問題を解くことにより、最適なセル配置のパターン及びアンテナの配置パターンを導出する最適化手段を備える。
【0016】
また、本発明(請求項4)は、アンテナ数n、fの関数形、パスロス関数l(d)の関数形およびα等のパラメータ値、正規化目標値v、目標値不達成許容値εを入力する入力手段を有し、
前記最適化手段は、
前記入力手段から取得した値に基づいて、セルの中心を頂点とする多角形の一辺に沿った直線と、セル中心と当該セルのアンテナの1つを結ぶ直線のなす角φ∈Φ(n)と、原点に中心を持つセルの境界
Rn((x,y)|→x1(0,0,φ),…,→xn(0,0,φ))=1−ε
(→はベクトルを示す)
上の任意の(x,y)に対して、
Rn((x,y)|→x1(i,j,Fi,j(φ)),…,→xn(i,j,Fi,j(φ)))≧1−ε
を満たす(i,j)が存在することを拘束条件とし、セルの重なりあいを考慮した有効被覆サイズについて、拘束条件付最適化問題を解くことにより、該有効被覆サイズを該拘束条件の下で最大化し、最適なセル配置のパターン及びアンテナの配置パターンを導出する最適パターン導出手段を含む。
【0017】
また、本発明(請求項5)は、前記最適パターン導出手段において、
前記有効被覆サイズs(n)(pn)を、
【0018】
【数3】
(pnはnアンテナ時のパラメータ、|Φ(n)|はφが取り得る値の数、si (n,k)(pn)はφφkのときにセル中心が原点にあるセルを含むi個のセルによって被覆される領域の大きさ)
で与え、前記pnを調整し、前記有効被覆サイズs(n)(pn)を前記拘束条件の下で、最大化する手段を含む。
【0019】
また、本発明(請求項6)は、前記基地局が、前記アンテナを複数セルの基地局で共用する場合に、
前記入力手段は、
アンテナコスト、主要部コスト、または、それらの比を、共用するための条件として更に入力する手段を含み、
前記最適化手段は、
前記共用するための条件が付加された拘束条件に基づいて前記最適化問題の解を求め、得られた解によって定められる位置に前記セルの中心が配置され、前記n個のアンテナが、当該セルの中心を中心とする正n角形の各頂点に配置される配置パターンを導出する手段を含む。
【0020】
本発明(請求項7)は、コンピュータを、請求項3乃至6記載のいずれか1項に記載のセル・アンテナ配備パターン最適化装置の各手段として機能させるための最適化プログラムである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、座標軸原点をあるセルの中心から別のセルの中心に移しても同様のセル配置のパターンとなり、かつ、座標軸を2π/n(nは1つの基地局の備えるアンテナの本数)回転しても同様のセル位置のパターンとなることを制限して、漸近最小被覆(領域Φが2次元の全平面であるとき)問題を解くことによって、最適なセル位置のパターン及びアンテナの配置のパターンを導出し、当該方法により導出されたパターンに基づいてセル及びアンテナを配置することが可能となる。結果として、
・アンテナが2個の場合:
セルの中心:平面を平行四辺形に区切ったときの各頂点;
アンテナ:当該セルの中心を中点とする直線上の2箇所;
・アンテナが3個の場合:
セルの中心:平面を正六角形に区切ったときの各頂点;
アンテナ:当該セルの中心を中心とする正三角形の各頂点;
・アンテナが4個の場合:
セルの中心:平面を正方形に区切ったときの各頂点;
アンテナ:当該セルの中心を中心とする正方形の各頂点;
・アンテナが6個の場合:
セルの中心:平面を正三角形に区切ったときの頂点;
アンテナ:当該セルの中心を中心とする正六角形の各頂点
となる。このような構成とすることで、最小のセル数で平面をカバーすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の最適化対象となる無線通信システムの構成図である。
【図2】一つの基地局に配備されるアンテナ地点の数である。
【図3】本発明の一実施の形態におけるセル・アンテナ配備パターン最適化装置の構成図である。
【図4】本発明の一実施の形態におけるセル及びアンテナの配備パターンφ(n=2)の場合の例である。
【図5】本発明の一実施の形態におけるセル及びアンテナの配備パターンφ(n=3)の場合の例である。
【図6】本発明の一実施の形態におけるセル及びアンテナの配備パターンφ(n=4)の場合の例である。
【図7】本発明の一実施の形態におけるn=3の場合に得られた配備パターンの数値例である。
【図8】本発明の一実施の形態におけるn=4の場合に得られた配備パターンの数値例である。
【図9】本発明の一実施の形態におけるn=4の場合の共用条件の例である。
【図10】本発明の配備パターンによる有効被覆サイズである。
【図11】本発明と従来技術の比較結果である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下図面と共に、本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
図1は、本発明の最適化対象となる無線通信システムの構成を示す。
【0025】
同図において、アンテナ11〜14は、通常、数キロメートル離れた異なる設置場所に設置される。各アンテナ11〜14は、D/A変換等の簡単な機能を具備したリモートユニット21〜24と、専用線等のリンク31〜34を介して、信号処理等を行う基地局主装置41,42に接続される。図1の場合は、基地局41,42それぞれが2つアンテナを備える構成である。各基地局41,42は、ネットワーク51により相互に接続され、広域なサービスを提供する。端末61の送受信信号が、アンテナ11,12で受送信され、リモートユニット21,22での処理を経て、主装置41で変復調等がなされ、ネットワーク51を経て、通信相手である他の端末、ここでは固定端末71と通信する。
【0026】
図1の無線通信システムは、構成の一例であり、本発明では、1つの基地局がn箇所の地点に置かれたアンテナを使用するものであり、基地局が構成するセルを複数設置して通信サービスを提供する。図1の例では、基地局41,42は、2つのアンテナ(n=2)を備える構成である。このとき、セルの中心は平面を平行四辺形に区切ったときの各頂点であり、アンテナは当該セルの中心を中点とする直線上の2箇所に配置される。また、図1には記載していないが、アンテナが3個の場合は、セルの中心が平面を正六角形に区切ったときの各頂点であり、アンテナは当該セルの中心を中心とする正三角形の各頂点に配置される。また、アンテナが4個の場合は、セルの中心は平面を正方形に区切ったときの各頂点であり、アンテナは当該セルの中心を中心とする正方形の各頂点に配置される。さらに、アンテナが6個の場合は、セルの中心は平面を正三角形に区切ったときの頂点であり、アンテナ:当該セルの中心を中心とする正六角形の各頂点に配置される。
【0027】
以下に、このような配置パターンを決定する処理について説明する。
【0028】
[第1の実施の形態]
本実施の形態では、図1に示す無線通信システムを対象として、当該システムのアンテナ配置のパターン及びセル配置のパターンを決定するセル・アンテナ配備パターン最適化装置について説明する。
【0029】
理想的なマクロダイバシティと均一な平面のもとでは、受信信号電力は、
【0030】
【数4】
のように書ける。ここで、nは1基地局のアンテナ配備地点数、diは第i配備地点から受信端末への距離、νiは第i配備地点・受信端末間のシャドーイングを表す確率変数、fは信号合成アルゴリズムにより定まる関数であり、各アンテナの平均雑音電力が同じ場合、選択合成では、
【0031】
【数5】
最大比合成では、
【0032】
【数6】
である。そして、セルを面的に配置するためには、この受信信号電力の大きさが目標値v'を確率1-εで満たす必要がある。すなわち、セルは、
【0033】
【数7】
で定まる外周の内部の点である(一般的には、上式で定まる図形は、内部に穴が生じ得る。ここでは、外周の内部の点であるとして、セル内部には、穴が無いものとする)。以下、「アンテナ配備地点」と「アンテナ位置」は同義で用いる。
上式で、εは、目標値不達成許容値、
【0034】
【数8】
→xi= (xi, yj)は、2次元平面上の第i配備地点の位置、正規化目標値vはv=v'/K、である。なお、本明細書中ではベクトル標記として文中では「→」をベクトルである文字の前に付し、数式中では「→」を文字の上に付している。
【0035】
図3は、本発明の第1の実施の形態におけるセル・アンテナ配備パターン最適化装置の構成を示す。
【0036】
同図に示す最適化装置は、入力部1、最適化部3、出力部4から構成される。
【0037】
入力部1は、アンテナ数n、fの関数形、パスロス関数l(d)の関数形およびα等のパラメータ値、正規化目標値v、目標値不達成許容値εを最適化部3に入力する。
【0038】
最適化部3は、入力部1から入力された値により、有効被覆サイズを拘束条件のもとで最大化するよう最適化問題を解き、求められたセルおよびアンテナの配備パターンを出力部4に出力する。
【0039】
本発明では、基地局41,42、および、アンテナ11〜14の配備パターンとして、現実的なある集合を想定し、その集合に属するパターンの中で、漸近的最小被覆パターンを与える。
【0040】
まず、領域Φに対する最小被覆とは、最小のセル数で、領域Φ内の任意の点(x, y)に対して、必ず、(x, y)を覆うセルが存在するという条件を満たすものを言う。最小セル数は、実効被覆サイズ(領域Φの面積をセル数で割ったもの)の最大化と等価であることに注意する。さらに、領域Φが2次元の全平面であるとき、漸近的最小被覆という。
【0041】
セルの形状が一般的な場合、漸近的最小被覆問題は解けないので、ここでは、配備パターンを、ある条件を満たすものに限定する。その条件を定義するため、以下のノーテーションを用いる。
【0042】
・→cj:第jセル(基地局)の中心位置。
【0043】
【数9】
但し、→xi,jは第jセルの第iアンテナ位置を表す。
【0044】
・→Tc(x):xのセル中心→c分の平行移動。すなわち、
【0045】
【数10】
・→Qn, →o((x, y)):(x, y)の原点周りの角度2π/nの回転。すなわち、
【0046】
【数11】
・→Qn,→c(→x):→xのセル中心→c周りの角度2π/nの回転。すなわち、
【0047】
【数12】
・→Mn(→x):→xの、セル中心の平行移動とセル中心の回転の任意の組み合わせで、定義される移動。
【0048】
考慮の対象とする配備パターンの満たすべき条件として、以下を定める。
【0049】
1)第jセルの中心位置→cjに対して、→Mn(cj)もまた、セル中心となること。すなわち、
【0050】
【数13】
を満たす整数j'が存在すること。
【0051】
2)第jセルのアンテナ{→x1,j,…, →xn,j}に対して
【0052】
【数14】
も、また、ある1つのセルのアンテナ位置となること。すなわち、
【0053】
【数15】
を満たす整数j'が存在すること。
【0054】
上記条件は、座標軸原点をあるセルの中心から別のセルの中心に移しても、また、座標軸を2π/n回転しても、同じ配備パターンとなることを意味している。結果的に、同一形状セルが周期的に、また、角度2π/nの対称性をもって現れることを意味する。
【0055】
上記条件から、最適化部3で求められるセルおよびアンテナの配備パターンは、以下のようになることが証明できる。
【0056】
・n = 2では、平面を合同な平行四辺形で分割し、その平行四辺形の各頂点にセルの中心がくる。
【0057】
・n = 3では、平面を合同な正六角形で分割し、その各頂点にセルの中心がくる。
【0058】
・n = 4では、平面を合同な正方形で分割し、その各頂点にセルの中心がくる。
【0059】
・n = 6では、平面を合同な正三角形で分割し、その各頂点にセルの中心がくる。
【0060】
・各セルのアンテナは、セル中心を中心とする合同な正n角形の各頂点に配備される。
【0061】
さらに、L1を、n = 2の場合は、上記平行四辺形、n = 3の場合は、上記正六角形、n = 4の場合は、上記正方形、n = 6の場合は、上記正三角形、の一辺に沿った直線、L2をセル中心と当該セルのアンテナの1つを結ぶ直線とし、L1とL2のなす角をφとする。そのとき、「φは、周期的に、4つ(n = 2の場合、図4)、3つ(n = 3の場合、図5)、2つ(n = 4の場合、図6)、の値を周期的にとる」ことも証明できる。
【0062】
任意の整数i,jに対して、(x(i,j), y(i,j))をセル中心の位置、→xk(i,j,φ)をセル中心が(x(i,j), y(i,j))にあるセルの第kアンテナ位置、2aをセル内の隣接アンテナ間距離、Φ(n)をφがとり得る値の集合とする。(すなわち、
【0063】
【数16】
である。)さらに、
【0064】
【数17】
とする。(但し、Iはパスロスが目標値を満たしているかどうかで0,1のいずれかをとる)ここで
【0065】
【数18】
である。
【0066】
すると、漸近最小被覆問題は、次のような拘束条件付最適化問題になる。
【0067】
[拘束条件]
当該拘束条件は入力部1から予め入力され、最適化部3内のメモリ(図示せず)に保持されているものとする。
【0068】
任意のφ∈Φ(n)と、原点に中心を持つセルの境界
【0069】
【数19】
上の任意の(x, y)に対して、
【0070】
【数20】
を満たす(i, j)が存在すること。ここでFi,j(φ)は、各nについて、後に与える。
【0071】
[最適化]
以下に、最適化部3における最適化処理について説明する。
【0072】
有効被覆サイズs(n)(pn)は、入力部1より
【0073】
【数21】
で与えられる。ここで、pnは、nアンテナ時のパラメータ、|Φ(n)|は、φがとり得る値の数、si(n,k)(pn)は、φ=φkのときに、セル中心が原点にあるセルを含むi個のセルによって被覆される領域の大きさである(以下、「有効被覆サイズ」と記す)。pnを調整し、有効被覆サイズs(n)(pn)を上記拘束条件のもとで最大化する。si (n,k)(pn)は、各nについて、後に与える。
【0074】
(pnに含まれるパラメータ数が多い場合は、最適化は、数値計算上の重荷となる。この場合は、任意のi,jについて、φi=φjとして上記最適化を実行することが有効である。)
(1) アンテナ数n = 2の場合:
任意の整数i,jを用いて、セル中心は、
【0075】
【数22】
(但し、μ、ρはセル中心を頂点とする平行四辺形の辺の長さ)
で与えられ、当該セル中心をもつ2つのアンテナ位置は、
【0076】
【数23】
となる。φは、Φ(2) = {φ1, φ2, φ3, φ4}のいずれかの値をとる。
【0077】
[n = 2の場合の拘束条件]
R2((x, y)|→x1(0, 0,φ), →x2(0, 0,φ))=1−ε
を満たす任意の点(x,y)に対して、
R2((x, y)|→x1(i, j, Fi,j(φ)),→x2(i, j, Fi,j(φ)))≧1−ε
を満たす整数i, j(|i|≦1, |j|≦1, (i, j)≠(0, 0)が存在すること。ここで、
【0078】
【数24】
[n = 2の場合の最適化]
有効被覆サイズ
【0079】
【数25】
は、以下の式(14)で与えられる。
【0080】
【数26】
p2 = {a, μ, ρ, θ, φ1, φ2, φ3, φ4}を調整し、拘束条件を満たしつつ有効被覆サイズs(2)(p2)を最大化する。
【0081】
[n = 2 の場合の得られた配備パターン]
平行四辺形の頂点にセル中心があり、当該平行四辺形の辺に対してある角度をもって、アンテナが配備される。
【0082】
(2)アンテナ数n = 3 の場合
一辺の長さがηの正三角形で平面が分割され、その正三角形の頂点にセル中心があるとする。そのとき、セル中心は、任意の整数i,jを用いて
【0083】
【数27】
で与えられる。特に、原点周辺のセル中心位置は
【0084】
【数28】
で与えられる。ここで、
【0085】
【数29】
である。セル中心が(x(i,j), y(i,j))のアンテナは、
【0086】
【数30】
に位置する。ただし、φは、φ1, φ2, φ3のいずれかの値をとる。
【0087】
[n = 3の場合の拘束条件]
拘束条件は、各φ=φ1, φ2, φ3について、
R3((x, y)|→x1(0, 0,φ),→x2(0, 0,φ),→x3(0,0,φ))=1−ε
を満たす任意の点(x, y)に対して、
R3((x, y)|→x1(i, j, Fi,j(φ)),→x2(i, j, Fi,j(φ)),→x3(i, j, Fi,j(φ)))≧1−ε
を満たす整数i, j(|i|≦1,|j|≦1, i≠j)があること。ここで、
【0088】
【数31】
である。
【0089】
[n = 3の場合の最適化]
有効被覆サイズ
【0090】
【数32】
は、以下で与えられる。ただし、p3 = {a, η,φ1, φ2, φ3}である。
【0091】
【数33】
p3を調整し、有効被覆サイズs(3)(p3)を拘束条件を満たしつつ最大化する。
【0092】
[n = 3の場合の得られた配備パターン]
正三角形の頂点にセル中心があり、当該正三角形の辺に対してある角度をもって、アンテナが配備される。具体的な数値例を、図7に示す。
【0093】
(3)アンテナ数n = 4の場合
一辺の長さがξの正方形で平面が分割され、その正方形の頂点にセル中心があるとする。そのとき、セル中心は、任意の整数i,jを用いて
【0094】
【数34】
で与えられる。また、そのセルのアンテナ位置は、
【0095】
【数35】
で与えられる。ただし、φは、φ1, φ2のいずれかの値である。
【0096】
[n = 4 の場合の拘束条件]
拘束条件は、各φ=φ1, φ2について、
R4((x, y)|→x1(0, 0,φ),→x2(0, 0,φ),…,→x4(0, 0, ))= 1−ε
を満たす任意の点(x, y)に対して、
R4((x, y)|→x1(i, j, Fi,j(φ)),→x2(i, j, Fi,j(φ)) ,…,→x4(i, j, Fi,j(φ)))≧1−ε
を満たす整数i, j(|i|≦1,|j|≦1,(i,j)≠(0, 0))が存在すること。ここで、
【0097】
【数36】
である。
【0098】
[n = 4の場合の最適化]
有効被覆サイズ
【0099】
【数37】
は、以下の式(26)から決まる。ただし、p4 = {a, ξ,φ1, φ2}
【0100】
【数38】
p4を調整し、拘束条件を満たしつつ、有効被覆サイズを最大化する。
【0101】
[n = 4の場合の得られた配備パターン]
正方形の頂点にセル中心があり、当該正方形の辺に対してある角度をもって、アンテナが配備される。具体的な数値例を、図8に示す。
【0102】
[第2の実施の形態]
本実施の形態では、複数のセルを共用する場合について説明する。
【0103】
[共用アンテナの場合]
上記は、1箇所のアンテナは1セル(1基地局)による利用を前提としていた。しかしながら、アンテナ、リモートユニット等のコストや、同設置費が高い場合は、コストの点からは、これらを複数のセル(複数の基地局)で共用することが有利となる可能性がある。
【0104】
本実施の形態において、入力部1は、第1の実施の形態における入力に加え、1つのアンテナを共有するセル数ns
アンテナコストcantenna、基地局主装置コストcmain、または、それらの比cantenna/cmainを最適化部3に入力する。
そこで目的関数を、コストCbaseの最小化として、定式化しなおす。ここでコストCbaseは、次のように書ける。
【0105】
【数39】
Cantennaは、アンテナ、リモートユニット等のコスト、nsは、1つのアンテナを共用するセル数、Cmainは基地局主装置コスト、scは1セルの有効被覆サイズである。Cantenna、Cmainは定数である。従って、n, nsが与えられたもとでは、有効被覆サイズscの最大化がCbaseの最小化と等価である。従って、アンテナを共用させるという拘束条件を付け加えた上で、前述の第1の実施の形態における最適化が適用可能である。
【0106】
アンテナを共用させるという条件は、アンテナ位置に条件をつけることになるため、アンテナ位置を決めるパラメータの自由度が減少することとなる。n = 4の場合を図9に例示する。隣接2セルとの共用の条件が、
【0107】
【数40】
であり、4セルとの共用の条件がφ1, φ2 = π/4, 2a = ξとなる。4セル共用の場合は、図2(a)と同じになる。
【0108】
以下に、本発明で得られる効果を具体的に示す。
【0109】
図10に有効被覆サイズ/アンテナ数を表す。図10に示すように、本発明による配備パターンによるアンテナ数あたりの有効被覆サイズは、n = 1のそれを、いずれも上回ることがわかる。
【0110】
また、既存技術にあげた論文で推奨されたアンテナ配備パターン(n = 4)で有効被覆サイズが最大となるようアンテナ間距離を決定した場合との比較結果を図11に示す。いずれの場合も、有効被覆サイズの点で、本発明が約2倍優位であることがわかる。本発明では、セル中心の配備とアンテナの配備という2段階での配備パターンで効率的な配備パターンを求めるのに対して、同論文での提案では、アンテナ位置をあるパターンで配備するためと考えられる。
【0111】
なお、上記の図3に示す最適化装置の各構成要素の動作をプログラムとして構築し、最適化装置として利用されるコンピュータにインストールして実行させる、または、ネットワークを介して流通させることが可能である。
【0112】
本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において種々変更・応用が可能である。
【符号の説明】
【0113】
1 入力部
3 最適化部
4 出力部
11〜14 アンテナ
21〜24 リモートユニット
31〜34 リンク
41,42 基地局主装置
51 ネットワーク
61 端末
71 固定端末
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム及びセル・アンテナ配備パターン最適化装置及びプログラムに係り、特に、移動体通信のセル及びアンテナの配置を最適化するための無線通信システム及びセル・アンテナ配備パターン最適化装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信において、セル設計(アンテナの配備設計)を行うためのパスロス関数m(d)の第一近似としては、
【0003】
【数1】
がしばしば用いられる。ここで、dは、送受信装置間距離、αは定数である。そして、このパスロス関数が目標値vを満たす範囲をセルとすると、セルは、基地局を中心とする円となる。そして、サービスエリアである平面をこの円形のセルでもっとも効率的にカバーすると、円に内接する六角形により平面が分割されるパターンとなることがよく知られている。そして、この円形のセルと六角形により平面を分割するパターンは、無線システムのセル設計における第1近似として、評価や設計に重要な役割を果たしてきた。
【0004】
近年、複数のアンテナを用いた無線システムが登場し、特に、1つの基地局が複数の地点に設置されたアンテナを利用して、同一信号を送信、あるいは、受信して、主にエラー性能(誤り率特性)の改善をはかるマクロダイバシティ技術が利用され始めた(図1)。例えば、セクタアンテナを用いたシステムとしては、非特許文献1があり、基地局側が3箇所のアンテナを用いる構成が提案されている。本発明と同じ、全方位アンテナを用いるシステムのセル・アンテナ配備パターンについては、非特許文献2で検討され、図2に示すn=4(nは1つの基地局に配備されるアンテナ地点の数)のパターンが推奨された。
【0005】
なお、ミクロダイバシティを用いるようなケースでは、1箇所に複数のアンテナの場合がある。そこで、以下の記述では、アンテナは1箇所に設置されたアンテナの意味に用いる。従って、1つのアンテナ、という記述は、実際には、1箇所に設置された複数のアンテナの場合がある。
【0006】
また、無線システムにおいては、受信信号電力が非常に重要である。受信信号電力は、送信点からの距離に依存するパスロス関数でモデル化される成分と、遮蔽物等による影響からなるシャドーイングと称される成分と、マルチパス等の影響による瞬時変動成分に、通常、分けて考えることができる。ここで、瞬時変動は、ミクロダイバシティ等の技術により無視できるようになる場合が多いことから、パスロスとシャドーイングが考慮できることが重要である。
【0007】
パスロスとシャドーイングを考慮した場合、既存の1セル1アンテナのシステムでは、受信信号電力m(d)は、
m(d)=Kl(d)ν
で表される。ここで、dは、送受信間距離、l(d)は、パスロス関数であり、
【0008】
【数2】
がしばしば用いられる。Kは送信電力、アンテナゲイン等から定まる定数、νは、シャドウイングを表す確率変数である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】内田大誠等、「広域ユビキタスネットワークを実現する技術開発の取組」、2010年3月.
【非特許文献2】R. C. Bernhardt「Macroscopic Diversity in Frequency Reuse Radio Systems」IEEE J. Selected Areas in Communications, 5, 5, pp. 862-870, 1987年.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、従来の無線通信システムでは、通信セルを構成する基地局に1つのアンテナのみが備えられていることを前提としてセル配置の設計がなされていた。1つの基地局が複数の地点に全方位アンテナを配備する無線システムでは、最適なセル配置及びアンテナ配置を行うための方法は提供されておらず、セルは円形とはならず、平面を効率的に配備するパターンも知られていない。
【0011】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、均一の平面に対して、基地局、および、全方位アンテナを効率的に配備するパターンを決定する方法と、その結果得られるアンテナの配備パターンによりセル及びアンテナが配置されることが可能な無線通信システム及びセル・アンテナ配備パターン最適化装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【0012】
特に、基地局系の主たるコスト要因が基地局主装置である場合には、現実的な配備パターンのうち、平面をコスト最小で被覆するパターンを与える。なお、主たるコストが基地局主装置とは言えないような場合についても、「共用アンテナの場合」として言及する。また、本発明では、シャドウイングが考慮されていないが、アンテナ数が同じである場合には、シャドウイング対策に差がないので、距離減衰項のみに基づくものとした。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明(請求項1)は、1つの基地局がn箇所の地点に置かれたアンテナを使用する複数の基地局により構成される無線通信システムであって、
前記基地局が、n個のアンテナを備え、かつ、当該基地局により構成される通信エリアであるセルの中心と該n個のアンテナが、
座標軸原点をあるセルの中心から別のセルの中心に移しても、また、座標軸を2π/n(nはアンテナ数)回転しても、同じ配備パターンとなることを拘束条件として、任意地点(x,y)での受信電力mn(d1,…,dn)=Kf(l(d1)ν1,…,l(dn)νn)が、目標値v'を確率1−ε以上で満足し、かつ、全平面を最小のセル数で覆う漸近的最小被覆問題を解くことにより導出された最適なセル配置のパターン及びアンテナの配置パターンにより配置される。
【0014】
また、本発明(請求項2)は、アンテナ数が2(n=2)の場合は、平面を合同な平行四辺形で分割し、該平行四辺形の各頂点にセルの中心が配備され、
アンテナ数が3(n=3)の場合は、平面を合同な正六角形で分割し、該正六角形の各頂点にセルの中心が配備され、
アンテナ数が4(n=4)の場合は、平面を合同な正方形で分割し、該正方形の各頂点にセルの中心が配備され、
アンテナ数が6(n=6)の場合は、平面を合同な正三角形で分割し、該正三角形の各頂点にセルの中心が配備される。
【0015】
また、本発明(請求項3)は、複数の基地局により構成される無線通信システムにおけるセル配置及びアンテナ配置を最適化するためのセル・アンテナ配備パターン最適化装置であって、
前記最適化装置は、
拘束条件により、任意地点(x,y)での受信電力mn(d1,…,dn)=Kf(l(d1)ν1,…,l(dn)νn)が、目標値v'を確率1-ε以上で満足し、かつ、全平面を最小のセル数で覆う漸近的最小被覆問題を解くことにより、最適なセル配置のパターン及びアンテナの配置パターンを導出する最適化手段を備える。
【0016】
また、本発明(請求項4)は、アンテナ数n、fの関数形、パスロス関数l(d)の関数形およびα等のパラメータ値、正規化目標値v、目標値不達成許容値εを入力する入力手段を有し、
前記最適化手段は、
前記入力手段から取得した値に基づいて、セルの中心を頂点とする多角形の一辺に沿った直線と、セル中心と当該セルのアンテナの1つを結ぶ直線のなす角φ∈Φ(n)と、原点に中心を持つセルの境界
Rn((x,y)|→x1(0,0,φ),…,→xn(0,0,φ))=1−ε
(→はベクトルを示す)
上の任意の(x,y)に対して、
Rn((x,y)|→x1(i,j,Fi,j(φ)),…,→xn(i,j,Fi,j(φ)))≧1−ε
を満たす(i,j)が存在することを拘束条件とし、セルの重なりあいを考慮した有効被覆サイズについて、拘束条件付最適化問題を解くことにより、該有効被覆サイズを該拘束条件の下で最大化し、最適なセル配置のパターン及びアンテナの配置パターンを導出する最適パターン導出手段を含む。
【0017】
また、本発明(請求項5)は、前記最適パターン導出手段において、
前記有効被覆サイズs(n)(pn)を、
【0018】
【数3】
(pnはnアンテナ時のパラメータ、|Φ(n)|はφが取り得る値の数、si (n,k)(pn)はφφkのときにセル中心が原点にあるセルを含むi個のセルによって被覆される領域の大きさ)
で与え、前記pnを調整し、前記有効被覆サイズs(n)(pn)を前記拘束条件の下で、最大化する手段を含む。
【0019】
また、本発明(請求項6)は、前記基地局が、前記アンテナを複数セルの基地局で共用する場合に、
前記入力手段は、
アンテナコスト、主要部コスト、または、それらの比を、共用するための条件として更に入力する手段を含み、
前記最適化手段は、
前記共用するための条件が付加された拘束条件に基づいて前記最適化問題の解を求め、得られた解によって定められる位置に前記セルの中心が配置され、前記n個のアンテナが、当該セルの中心を中心とする正n角形の各頂点に配置される配置パターンを導出する手段を含む。
【0020】
本発明(請求項7)は、コンピュータを、請求項3乃至6記載のいずれか1項に記載のセル・アンテナ配備パターン最適化装置の各手段として機能させるための最適化プログラムである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、座標軸原点をあるセルの中心から別のセルの中心に移しても同様のセル配置のパターンとなり、かつ、座標軸を2π/n(nは1つの基地局の備えるアンテナの本数)回転しても同様のセル位置のパターンとなることを制限して、漸近最小被覆(領域Φが2次元の全平面であるとき)問題を解くことによって、最適なセル位置のパターン及びアンテナの配置のパターンを導出し、当該方法により導出されたパターンに基づいてセル及びアンテナを配置することが可能となる。結果として、
・アンテナが2個の場合:
セルの中心:平面を平行四辺形に区切ったときの各頂点;
アンテナ:当該セルの中心を中点とする直線上の2箇所;
・アンテナが3個の場合:
セルの中心:平面を正六角形に区切ったときの各頂点;
アンテナ:当該セルの中心を中心とする正三角形の各頂点;
・アンテナが4個の場合:
セルの中心:平面を正方形に区切ったときの各頂点;
アンテナ:当該セルの中心を中心とする正方形の各頂点;
・アンテナが6個の場合:
セルの中心:平面を正三角形に区切ったときの頂点;
アンテナ:当該セルの中心を中心とする正六角形の各頂点
となる。このような構成とすることで、最小のセル数で平面をカバーすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の最適化対象となる無線通信システムの構成図である。
【図2】一つの基地局に配備されるアンテナ地点の数である。
【図3】本発明の一実施の形態におけるセル・アンテナ配備パターン最適化装置の構成図である。
【図4】本発明の一実施の形態におけるセル及びアンテナの配備パターンφ(n=2)の場合の例である。
【図5】本発明の一実施の形態におけるセル及びアンテナの配備パターンφ(n=3)の場合の例である。
【図6】本発明の一実施の形態におけるセル及びアンテナの配備パターンφ(n=4)の場合の例である。
【図7】本発明の一実施の形態におけるn=3の場合に得られた配備パターンの数値例である。
【図8】本発明の一実施の形態におけるn=4の場合に得られた配備パターンの数値例である。
【図9】本発明の一実施の形態におけるn=4の場合の共用条件の例である。
【図10】本発明の配備パターンによる有効被覆サイズである。
【図11】本発明と従来技術の比較結果である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下図面と共に、本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
図1は、本発明の最適化対象となる無線通信システムの構成を示す。
【0025】
同図において、アンテナ11〜14は、通常、数キロメートル離れた異なる設置場所に設置される。各アンテナ11〜14は、D/A変換等の簡単な機能を具備したリモートユニット21〜24と、専用線等のリンク31〜34を介して、信号処理等を行う基地局主装置41,42に接続される。図1の場合は、基地局41,42それぞれが2つアンテナを備える構成である。各基地局41,42は、ネットワーク51により相互に接続され、広域なサービスを提供する。端末61の送受信信号が、アンテナ11,12で受送信され、リモートユニット21,22での処理を経て、主装置41で変復調等がなされ、ネットワーク51を経て、通信相手である他の端末、ここでは固定端末71と通信する。
【0026】
図1の無線通信システムは、構成の一例であり、本発明では、1つの基地局がn箇所の地点に置かれたアンテナを使用するものであり、基地局が構成するセルを複数設置して通信サービスを提供する。図1の例では、基地局41,42は、2つのアンテナ(n=2)を備える構成である。このとき、セルの中心は平面を平行四辺形に区切ったときの各頂点であり、アンテナは当該セルの中心を中点とする直線上の2箇所に配置される。また、図1には記載していないが、アンテナが3個の場合は、セルの中心が平面を正六角形に区切ったときの各頂点であり、アンテナは当該セルの中心を中心とする正三角形の各頂点に配置される。また、アンテナが4個の場合は、セルの中心は平面を正方形に区切ったときの各頂点であり、アンテナは当該セルの中心を中心とする正方形の各頂点に配置される。さらに、アンテナが6個の場合は、セルの中心は平面を正三角形に区切ったときの頂点であり、アンテナ:当該セルの中心を中心とする正六角形の各頂点に配置される。
【0027】
以下に、このような配置パターンを決定する処理について説明する。
【0028】
[第1の実施の形態]
本実施の形態では、図1に示す無線通信システムを対象として、当該システムのアンテナ配置のパターン及びセル配置のパターンを決定するセル・アンテナ配備パターン最適化装置について説明する。
【0029】
理想的なマクロダイバシティと均一な平面のもとでは、受信信号電力は、
【0030】
【数4】
のように書ける。ここで、nは1基地局のアンテナ配備地点数、diは第i配備地点から受信端末への距離、νiは第i配備地点・受信端末間のシャドーイングを表す確率変数、fは信号合成アルゴリズムにより定まる関数であり、各アンテナの平均雑音電力が同じ場合、選択合成では、
【0031】
【数5】
最大比合成では、
【0032】
【数6】
である。そして、セルを面的に配置するためには、この受信信号電力の大きさが目標値v'を確率1-εで満たす必要がある。すなわち、セルは、
【0033】
【数7】
で定まる外周の内部の点である(一般的には、上式で定まる図形は、内部に穴が生じ得る。ここでは、外周の内部の点であるとして、セル内部には、穴が無いものとする)。以下、「アンテナ配備地点」と「アンテナ位置」は同義で用いる。
上式で、εは、目標値不達成許容値、
【0034】
【数8】
→xi= (xi, yj)は、2次元平面上の第i配備地点の位置、正規化目標値vはv=v'/K、である。なお、本明細書中ではベクトル標記として文中では「→」をベクトルである文字の前に付し、数式中では「→」を文字の上に付している。
【0035】
図3は、本発明の第1の実施の形態におけるセル・アンテナ配備パターン最適化装置の構成を示す。
【0036】
同図に示す最適化装置は、入力部1、最適化部3、出力部4から構成される。
【0037】
入力部1は、アンテナ数n、fの関数形、パスロス関数l(d)の関数形およびα等のパラメータ値、正規化目標値v、目標値不達成許容値εを最適化部3に入力する。
【0038】
最適化部3は、入力部1から入力された値により、有効被覆サイズを拘束条件のもとで最大化するよう最適化問題を解き、求められたセルおよびアンテナの配備パターンを出力部4に出力する。
【0039】
本発明では、基地局41,42、および、アンテナ11〜14の配備パターンとして、現実的なある集合を想定し、その集合に属するパターンの中で、漸近的最小被覆パターンを与える。
【0040】
まず、領域Φに対する最小被覆とは、最小のセル数で、領域Φ内の任意の点(x, y)に対して、必ず、(x, y)を覆うセルが存在するという条件を満たすものを言う。最小セル数は、実効被覆サイズ(領域Φの面積をセル数で割ったもの)の最大化と等価であることに注意する。さらに、領域Φが2次元の全平面であるとき、漸近的最小被覆という。
【0041】
セルの形状が一般的な場合、漸近的最小被覆問題は解けないので、ここでは、配備パターンを、ある条件を満たすものに限定する。その条件を定義するため、以下のノーテーションを用いる。
【0042】
・→cj:第jセル(基地局)の中心位置。
【0043】
【数9】
但し、→xi,jは第jセルの第iアンテナ位置を表す。
【0044】
・→Tc(x):xのセル中心→c分の平行移動。すなわち、
【0045】
【数10】
・→Qn, →o((x, y)):(x, y)の原点周りの角度2π/nの回転。すなわち、
【0046】
【数11】
・→Qn,→c(→x):→xのセル中心→c周りの角度2π/nの回転。すなわち、
【0047】
【数12】
・→Mn(→x):→xの、セル中心の平行移動とセル中心の回転の任意の組み合わせで、定義される移動。
【0048】
考慮の対象とする配備パターンの満たすべき条件として、以下を定める。
【0049】
1)第jセルの中心位置→cjに対して、→Mn(cj)もまた、セル中心となること。すなわち、
【0050】
【数13】
を満たす整数j'が存在すること。
【0051】
2)第jセルのアンテナ{→x1,j,…, →xn,j}に対して
【0052】
【数14】
も、また、ある1つのセルのアンテナ位置となること。すなわち、
【0053】
【数15】
を満たす整数j'が存在すること。
【0054】
上記条件は、座標軸原点をあるセルの中心から別のセルの中心に移しても、また、座標軸を2π/n回転しても、同じ配備パターンとなることを意味している。結果的に、同一形状セルが周期的に、また、角度2π/nの対称性をもって現れることを意味する。
【0055】
上記条件から、最適化部3で求められるセルおよびアンテナの配備パターンは、以下のようになることが証明できる。
【0056】
・n = 2では、平面を合同な平行四辺形で分割し、その平行四辺形の各頂点にセルの中心がくる。
【0057】
・n = 3では、平面を合同な正六角形で分割し、その各頂点にセルの中心がくる。
【0058】
・n = 4では、平面を合同な正方形で分割し、その各頂点にセルの中心がくる。
【0059】
・n = 6では、平面を合同な正三角形で分割し、その各頂点にセルの中心がくる。
【0060】
・各セルのアンテナは、セル中心を中心とする合同な正n角形の各頂点に配備される。
【0061】
さらに、L1を、n = 2の場合は、上記平行四辺形、n = 3の場合は、上記正六角形、n = 4の場合は、上記正方形、n = 6の場合は、上記正三角形、の一辺に沿った直線、L2をセル中心と当該セルのアンテナの1つを結ぶ直線とし、L1とL2のなす角をφとする。そのとき、「φは、周期的に、4つ(n = 2の場合、図4)、3つ(n = 3の場合、図5)、2つ(n = 4の場合、図6)、の値を周期的にとる」ことも証明できる。
【0062】
任意の整数i,jに対して、(x(i,j), y(i,j))をセル中心の位置、→xk(i,j,φ)をセル中心が(x(i,j), y(i,j))にあるセルの第kアンテナ位置、2aをセル内の隣接アンテナ間距離、Φ(n)をφがとり得る値の集合とする。(すなわち、
【0063】
【数16】
である。)さらに、
【0064】
【数17】
とする。(但し、Iはパスロスが目標値を満たしているかどうかで0,1のいずれかをとる)ここで
【0065】
【数18】
である。
【0066】
すると、漸近最小被覆問題は、次のような拘束条件付最適化問題になる。
【0067】
[拘束条件]
当該拘束条件は入力部1から予め入力され、最適化部3内のメモリ(図示せず)に保持されているものとする。
【0068】
任意のφ∈Φ(n)と、原点に中心を持つセルの境界
【0069】
【数19】
上の任意の(x, y)に対して、
【0070】
【数20】
を満たす(i, j)が存在すること。ここでFi,j(φ)は、各nについて、後に与える。
【0071】
[最適化]
以下に、最適化部3における最適化処理について説明する。
【0072】
有効被覆サイズs(n)(pn)は、入力部1より
【0073】
【数21】
で与えられる。ここで、pnは、nアンテナ時のパラメータ、|Φ(n)|は、φがとり得る値の数、si(n,k)(pn)は、φ=φkのときに、セル中心が原点にあるセルを含むi個のセルによって被覆される領域の大きさである(以下、「有効被覆サイズ」と記す)。pnを調整し、有効被覆サイズs(n)(pn)を上記拘束条件のもとで最大化する。si (n,k)(pn)は、各nについて、後に与える。
【0074】
(pnに含まれるパラメータ数が多い場合は、最適化は、数値計算上の重荷となる。この場合は、任意のi,jについて、φi=φjとして上記最適化を実行することが有効である。)
(1) アンテナ数n = 2の場合:
任意の整数i,jを用いて、セル中心は、
【0075】
【数22】
(但し、μ、ρはセル中心を頂点とする平行四辺形の辺の長さ)
で与えられ、当該セル中心をもつ2つのアンテナ位置は、
【0076】
【数23】
となる。φは、Φ(2) = {φ1, φ2, φ3, φ4}のいずれかの値をとる。
【0077】
[n = 2の場合の拘束条件]
R2((x, y)|→x1(0, 0,φ), →x2(0, 0,φ))=1−ε
を満たす任意の点(x,y)に対して、
R2((x, y)|→x1(i, j, Fi,j(φ)),→x2(i, j, Fi,j(φ)))≧1−ε
を満たす整数i, j(|i|≦1, |j|≦1, (i, j)≠(0, 0)が存在すること。ここで、
【0078】
【数24】
[n = 2の場合の最適化]
有効被覆サイズ
【0079】
【数25】
は、以下の式(14)で与えられる。
【0080】
【数26】
p2 = {a, μ, ρ, θ, φ1, φ2, φ3, φ4}を調整し、拘束条件を満たしつつ有効被覆サイズs(2)(p2)を最大化する。
【0081】
[n = 2 の場合の得られた配備パターン]
平行四辺形の頂点にセル中心があり、当該平行四辺形の辺に対してある角度をもって、アンテナが配備される。
【0082】
(2)アンテナ数n = 3 の場合
一辺の長さがηの正三角形で平面が分割され、その正三角形の頂点にセル中心があるとする。そのとき、セル中心は、任意の整数i,jを用いて
【0083】
【数27】
で与えられる。特に、原点周辺のセル中心位置は
【0084】
【数28】
で与えられる。ここで、
【0085】
【数29】
である。セル中心が(x(i,j), y(i,j))のアンテナは、
【0086】
【数30】
に位置する。ただし、φは、φ1, φ2, φ3のいずれかの値をとる。
【0087】
[n = 3の場合の拘束条件]
拘束条件は、各φ=φ1, φ2, φ3について、
R3((x, y)|→x1(0, 0,φ),→x2(0, 0,φ),→x3(0,0,φ))=1−ε
を満たす任意の点(x, y)に対して、
R3((x, y)|→x1(i, j, Fi,j(φ)),→x2(i, j, Fi,j(φ)),→x3(i, j, Fi,j(φ)))≧1−ε
を満たす整数i, j(|i|≦1,|j|≦1, i≠j)があること。ここで、
【0088】
【数31】
である。
【0089】
[n = 3の場合の最適化]
有効被覆サイズ
【0090】
【数32】
は、以下で与えられる。ただし、p3 = {a, η,φ1, φ2, φ3}である。
【0091】
【数33】
p3を調整し、有効被覆サイズs(3)(p3)を拘束条件を満たしつつ最大化する。
【0092】
[n = 3の場合の得られた配備パターン]
正三角形の頂点にセル中心があり、当該正三角形の辺に対してある角度をもって、アンテナが配備される。具体的な数値例を、図7に示す。
【0093】
(3)アンテナ数n = 4の場合
一辺の長さがξの正方形で平面が分割され、その正方形の頂点にセル中心があるとする。そのとき、セル中心は、任意の整数i,jを用いて
【0094】
【数34】
で与えられる。また、そのセルのアンテナ位置は、
【0095】
【数35】
で与えられる。ただし、φは、φ1, φ2のいずれかの値である。
【0096】
[n = 4 の場合の拘束条件]
拘束条件は、各φ=φ1, φ2について、
R4((x, y)|→x1(0, 0,φ),→x2(0, 0,φ),…,→x4(0, 0, ))= 1−ε
を満たす任意の点(x, y)に対して、
R4((x, y)|→x1(i, j, Fi,j(φ)),→x2(i, j, Fi,j(φ)) ,…,→x4(i, j, Fi,j(φ)))≧1−ε
を満たす整数i, j(|i|≦1,|j|≦1,(i,j)≠(0, 0))が存在すること。ここで、
【0097】
【数36】
である。
【0098】
[n = 4の場合の最適化]
有効被覆サイズ
【0099】
【数37】
は、以下の式(26)から決まる。ただし、p4 = {a, ξ,φ1, φ2}
【0100】
【数38】
p4を調整し、拘束条件を満たしつつ、有効被覆サイズを最大化する。
【0101】
[n = 4の場合の得られた配備パターン]
正方形の頂点にセル中心があり、当該正方形の辺に対してある角度をもって、アンテナが配備される。具体的な数値例を、図8に示す。
【0102】
[第2の実施の形態]
本実施の形態では、複数のセルを共用する場合について説明する。
【0103】
[共用アンテナの場合]
上記は、1箇所のアンテナは1セル(1基地局)による利用を前提としていた。しかしながら、アンテナ、リモートユニット等のコストや、同設置費が高い場合は、コストの点からは、これらを複数のセル(複数の基地局)で共用することが有利となる可能性がある。
【0104】
本実施の形態において、入力部1は、第1の実施の形態における入力に加え、1つのアンテナを共有するセル数ns
アンテナコストcantenna、基地局主装置コストcmain、または、それらの比cantenna/cmainを最適化部3に入力する。
そこで目的関数を、コストCbaseの最小化として、定式化しなおす。ここでコストCbaseは、次のように書ける。
【0105】
【数39】
Cantennaは、アンテナ、リモートユニット等のコスト、nsは、1つのアンテナを共用するセル数、Cmainは基地局主装置コスト、scは1セルの有効被覆サイズである。Cantenna、Cmainは定数である。従って、n, nsが与えられたもとでは、有効被覆サイズscの最大化がCbaseの最小化と等価である。従って、アンテナを共用させるという拘束条件を付け加えた上で、前述の第1の実施の形態における最適化が適用可能である。
【0106】
アンテナを共用させるという条件は、アンテナ位置に条件をつけることになるため、アンテナ位置を決めるパラメータの自由度が減少することとなる。n = 4の場合を図9に例示する。隣接2セルとの共用の条件が、
【0107】
【数40】
であり、4セルとの共用の条件がφ1, φ2 = π/4, 2a = ξとなる。4セル共用の場合は、図2(a)と同じになる。
【0108】
以下に、本発明で得られる効果を具体的に示す。
【0109】
図10に有効被覆サイズ/アンテナ数を表す。図10に示すように、本発明による配備パターンによるアンテナ数あたりの有効被覆サイズは、n = 1のそれを、いずれも上回ることがわかる。
【0110】
また、既存技術にあげた論文で推奨されたアンテナ配備パターン(n = 4)で有効被覆サイズが最大となるようアンテナ間距離を決定した場合との比較結果を図11に示す。いずれの場合も、有効被覆サイズの点で、本発明が約2倍優位であることがわかる。本発明では、セル中心の配備とアンテナの配備という2段階での配備パターンで効率的な配備パターンを求めるのに対して、同論文での提案では、アンテナ位置をあるパターンで配備するためと考えられる。
【0111】
なお、上記の図3に示す最適化装置の各構成要素の動作をプログラムとして構築し、最適化装置として利用されるコンピュータにインストールして実行させる、または、ネットワークを介して流通させることが可能である。
【0112】
本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において種々変更・応用が可能である。
【符号の説明】
【0113】
1 入力部
3 最適化部
4 出力部
11〜14 アンテナ
21〜24 リモートユニット
31〜34 リンク
41,42 基地局主装置
51 ネットワーク
61 端末
71 固定端末
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの基地局がn箇所の地点に置かれたアンテナを使用する複数の基地局により構成される無線通信システムであって、
前記基地局が、n個のアンテナを備え、かつ、当該基地局により構成される通信エリアであるセルの中心と該n個のアンテナが、
座標軸原点をあるセルの中心から別のセルの中心に移しても、また、座標軸を2π/n(nはアンテナ数)回転しても、同じ配備パターンとなることを拘束条件として、任意地点(x,y)での受信電力mn(d1,…,dn)=Kf(l(d1)ν1,…,l(dn)νn)が、目標値v'を確率1−ε以上で満足し、かつ、全平面を最小のセル数で覆う漸近的最小被覆問題を解くことにより導出された最適なセル配置のパターン及びアンテナの配置パターンにより配置される
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
アンテナ数が2(n=2)の場合は、平面を合同な平行四辺形で分割し、該平行四辺形の各頂点にセルの中心が配備され、
アンテナ数が3(n=3)の場合は、平面を合同な正六角形で分割し、該正六角形の各頂点にセルの中心が配備され、
アンテナ数が4(n=4)の場合は、平面を合同な正方形で分割し、該正方形の各頂点にセルの中心が配備され、
アンテナ数が6(n=6)の場合は、平面を合同な正三角形で分割し、該正三角形の各頂点にセルの中心が配備される
請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
複数の基地局により構成される無線通信システムにおけるセル配置及びアンテナ配置を最適化するためのセル・アンテナ配備パターン最適化装置であって、
前記最適化装置は、
拘束条件により、任意地点(x,y)での受信電力mn(d1,…,dn)=Kf(l(d1)ν1,…,l(dn)νn)が、目標値v'を確率1-ε以上で満足し、かつ、全平面を最小のセル数で覆う漸近的最小被覆問題を解くことにより、最適なセル配置のパターン及びアンテナの配置パターンを導出する最適化手段を備える
ことを特徴とする最適化装置。
【請求項4】
アンテナ数n、fの関数形、パスロス関数l(d)の関数形およびα等のパラメータ値、正規化目標値v、目標値不達成許容値εを入力する入力手段を有し、
前記最適化手段は、
前記入力手段から取得した値に基づいて、セルの中心を頂点とする多角形の一辺に沿った直線と、セル中心と当該セルのアンテナの1つを結ぶ直線のなす角φ∈Φ(n)と、原点に中心を持つセルの境界
Rn((x,y)|→x1(0,0,φ),…,→xn(0,0,φ))=1−ε
(→はベクトルを示す)
上の任意の(x,y)に対して、
Rn((x,y)|→x1(i,j,Fi,j(φ)),…,→xn(i,j,Fi,j(φ)))≧1−ε
を満たす(i,j)が存在することを拘束条件とし、セルの重なりあいを考慮した有効被覆サイズについて、拘束条件付最適化問題を解くことにより、該有効被覆サイズを該拘束条件の下で最大化し、最適なセル配置のパターン及びアンテナの配置パターンを導出する最適パターン導出手段を含む
請求項3記載のセル・アンテナ配備パターン最適化装置。
【請求項5】
前記最適パターン導出手段は、
前記有効被覆サイズs(n)(pn)を、
【数41】
(pnはnアンテナ時のパラメータ、|Φ(n)|はφが取り得る値の数、si (n,k)(pn)はφφkのときにセル中心が原点にあるセルを含むi個のセルによって被覆される領域の大きさ)
で与え、前記pnを調整し、前記有効被覆サイズs(n)(pn)を前記拘束条件の下で、最大化する手段を含む
請求項4記載のセル・アンテナ配備パターン最適化装置。
【請求項6】
前記基地局が、前記アンテナを複数セルの基地局で共用する場合に、
前記入力手段は、
アンテナコスト、主要部コスト、または、それらの比を、共用するための条件として更に入力する手段を含み、
前記最適化手段は、
前記共用するための条件が付加された拘束条件に基づいて前記最適化問題の解を求め、得られた解によって定められる位置に前記セルの中心が配置され、前記n個のアンテナが、当該セルの中心を中心とする正n角形の各頂点に配置される配置パターンを導出する手段を含む
請求項4記載のセル・アンテナ配備パターン最適化装置。
【請求項7】
コンピュータを、請求項3乃至6記載のいずれか1項に記載のセル・アンテナ配備パターン最適化装置の各手段として機能させるための最適化プログラム。
【請求項1】
1つの基地局がn箇所の地点に置かれたアンテナを使用する複数の基地局により構成される無線通信システムであって、
前記基地局が、n個のアンテナを備え、かつ、当該基地局により構成される通信エリアであるセルの中心と該n個のアンテナが、
座標軸原点をあるセルの中心から別のセルの中心に移しても、また、座標軸を2π/n(nはアンテナ数)回転しても、同じ配備パターンとなることを拘束条件として、任意地点(x,y)での受信電力mn(d1,…,dn)=Kf(l(d1)ν1,…,l(dn)νn)が、目標値v'を確率1−ε以上で満足し、かつ、全平面を最小のセル数で覆う漸近的最小被覆問題を解くことにより導出された最適なセル配置のパターン及びアンテナの配置パターンにより配置される
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
アンテナ数が2(n=2)の場合は、平面を合同な平行四辺形で分割し、該平行四辺形の各頂点にセルの中心が配備され、
アンテナ数が3(n=3)の場合は、平面を合同な正六角形で分割し、該正六角形の各頂点にセルの中心が配備され、
アンテナ数が4(n=4)の場合は、平面を合同な正方形で分割し、該正方形の各頂点にセルの中心が配備され、
アンテナ数が6(n=6)の場合は、平面を合同な正三角形で分割し、該正三角形の各頂点にセルの中心が配備される
請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
複数の基地局により構成される無線通信システムにおけるセル配置及びアンテナ配置を最適化するためのセル・アンテナ配備パターン最適化装置であって、
前記最適化装置は、
拘束条件により、任意地点(x,y)での受信電力mn(d1,…,dn)=Kf(l(d1)ν1,…,l(dn)νn)が、目標値v'を確率1-ε以上で満足し、かつ、全平面を最小のセル数で覆う漸近的最小被覆問題を解くことにより、最適なセル配置のパターン及びアンテナの配置パターンを導出する最適化手段を備える
ことを特徴とする最適化装置。
【請求項4】
アンテナ数n、fの関数形、パスロス関数l(d)の関数形およびα等のパラメータ値、正規化目標値v、目標値不達成許容値εを入力する入力手段を有し、
前記最適化手段は、
前記入力手段から取得した値に基づいて、セルの中心を頂点とする多角形の一辺に沿った直線と、セル中心と当該セルのアンテナの1つを結ぶ直線のなす角φ∈Φ(n)と、原点に中心を持つセルの境界
Rn((x,y)|→x1(0,0,φ),…,→xn(0,0,φ))=1−ε
(→はベクトルを示す)
上の任意の(x,y)に対して、
Rn((x,y)|→x1(i,j,Fi,j(φ)),…,→xn(i,j,Fi,j(φ)))≧1−ε
を満たす(i,j)が存在することを拘束条件とし、セルの重なりあいを考慮した有効被覆サイズについて、拘束条件付最適化問題を解くことにより、該有効被覆サイズを該拘束条件の下で最大化し、最適なセル配置のパターン及びアンテナの配置パターンを導出する最適パターン導出手段を含む
請求項3記載のセル・アンテナ配備パターン最適化装置。
【請求項5】
前記最適パターン導出手段は、
前記有効被覆サイズs(n)(pn)を、
【数41】
(pnはnアンテナ時のパラメータ、|Φ(n)|はφが取り得る値の数、si (n,k)(pn)はφφkのときにセル中心が原点にあるセルを含むi個のセルによって被覆される領域の大きさ)
で与え、前記pnを調整し、前記有効被覆サイズs(n)(pn)を前記拘束条件の下で、最大化する手段を含む
請求項4記載のセル・アンテナ配備パターン最適化装置。
【請求項6】
前記基地局が、前記アンテナを複数セルの基地局で共用する場合に、
前記入力手段は、
アンテナコスト、主要部コスト、または、それらの比を、共用するための条件として更に入力する手段を含み、
前記最適化手段は、
前記共用するための条件が付加された拘束条件に基づいて前記最適化問題の解を求め、得られた解によって定められる位置に前記セルの中心が配置され、前記n個のアンテナが、当該セルの中心を中心とする正n角形の各頂点に配置される配置パターンを導出する手段を含む
請求項4記載のセル・アンテナ配備パターン最適化装置。
【請求項7】
コンピュータを、請求項3乃至6記載のいずれか1項に記載のセル・アンテナ配備パターン最適化装置の各手段として機能させるための最適化プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−253496(P2012−253496A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123421(P2011−123421)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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