説明

無線通信システム,該システムに設置される共存マネージャー,及び無線通信方法

【課題】 本発明は,セカンダリーユーザーを含むネットワークが共存していても,干渉を回避することができる無線通信システムなどを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の無線通信システムは,第1のネットワークに属するプライマリーユーザーと,第2のネットワークに属する第1のセカンダリーユーザーと,共存マネージャー(CM)とを含む。共存マネージャー(CM)は,プライマリーユーザーが少なくとも一時的に利用しないスペクトラムホールに関する情報を取得する。また,共存マネージャー(CM)は,第1のセカンダリーユーザーがスペクトラムホールを利用することにより第1のネットワークに干渉が生じるかどうかを判断する。判断の結果,干渉が生じる場合には,第2のネットワークとは別の第3ネットワークに属する第2のセカンダリーユーザーに対してその旨を通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,無線通信システム,該システムに設置される共存マネージャー,及び無線通信方法などに関し,特に,複数のネットワークを含む無線通信システム,並びに,該システムに設置される共存マネージャー,及び無線通信方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムでは,通信デバイスに対して周波数を割り当てることで,その通信デバイスの通信(通信サービス)を可能にしている。しかし,現在では,最新のアプリケーションやサービスに対して周波数を割り当てることは困難である。その理由は,規制団体などによって各種のサービスに対して所定の周波数帯域が既に割り当てられているために,スペクトラムが飽和状態にあるためである。この飽和状態とは対照的に,実際には,スペクトラムには占有されていない周波数帯域があり,スペクトラムに事実上かかる負荷はそれほど大きくはない。
【0003】
そこで,米連邦通信委員会(FCC)は,2002年に,スペクトラムポリシータスクフォース(SPTF)が用意した文書を公表した。この文書は,無線スペクトラムの効率的な利用に関するものである。具体的には,ライセンスされていない無線サービスが上述したような占有されていないスペクトラムにアクセスすることを許容することで,無線スペクトラムの効率的な利用が可能になるというものである。
【0004】
占有されていないスペクトラムを利用する無線技術としては,コグニティブ無線技術がある。コグニティブ無線技術を利用したコグニティブ無線通信システムでは,まず,プライマリーユーザーが一時的に利用していないスペクトラムを,セカンダリーユーザーが特定する。ここで,プライマリーユーザーとは,スペクトラムの利用についてライセンスがなされているユーザーである。続いて,セカンダリーユーザーは,特定した無線スペクトラムを利用して通信を開始する。これにより,無線スペクトラムの効率的な利用が可能になる。
【0005】
しかし,セカンダリーユーザーが複数存在する場合,各セカンダリーユーザーがスペクトラムを特定して通信を開始した場合,複数のセカンダリーユーザー間で互いに干渉が生じるという問題がある。特に,複数のセカンダリーユーザーが互いに異なるネットワークに属する場合や,互いに異なる通信プロトコルを用いる場合に,上述した問題は顕著となる。
【0006】
上述した問題を解決するために,例えば,IEEEの標準化グループは,互いに異なる複数の無線ネットワークが共存することをどのように管理するかについて研究している。そのような共存に関するこれまでの研究の成果としては,複数の無線ネットワーク間における情報交換を考慮して協働的な方法又は非協働的な方法によって共存を実現可能にするというものが挙げられる。ただし,そのような研究の対象は,主として,互いに異なる複数のプライマリーユーザー用ネットワーク(レガシー無線ネットワークともいう)である。ここで,互いに異なる複数のレガシー無線ネットワークの共存の一例としては,IEEE802.11によるネットワークとIEEE802.15によるネットワークがある。したがって,セカンダリーユーザーを含むネットワークが他のネットワークと共存することについては,十分に研究がなされていない。
【0007】
ここで,複数のセカンダリーユーザー用ネットワークの共存を実現させることを考える場合,レガシー無線ネットワーク同士の共存とは別の要件を考慮する必要があると考えられる。具体的には,以下の点を考慮しなければならず,共存を実現させることは容易ではない。
【0008】
第1に,セカンダリーユーザー用ネットワークの共存を実現させるためには,プライマリーユーザーのネットワークに対する干渉を考慮しなければならない。通常,各セカンダリーユーザーは,プライマリーユーザーが一時的に利用していないスペクトラムにアクセスするように構成されている。そのため,複数のセカンダリーユーザーが同じスペクトラムにアクセスするという事態が生じうる。そして,そのような事態が生じると,プライマリーユーザーに対しても干渉が生じる可能性がある。
【0009】
第2に,セカンダリーユーザー用ネットワークの共存が実現されるとしても,セカンダリーユーザー用ネットワークを再構成しなければならない可能性があり,そのような再構成のスキームを考慮しなければならない。
【0010】
第3に,スペクトラムへのアクセスを決定するのに必要な情報を入手可能に(又はアクセス可能に)する必要がある点を考慮しなければならない。例えば,コグニティブ無線通信システムでは,アクセス決定に必要な情報として,センシング情報と規制情報との2つがある。しかしながら,非特許文献1によれば,規制情報は,センシング情報とは異なる場所に格納される。このように,アクセスの決定に必要な情報が複数であり,個別のデータベースに格納されているような場合には,複数の情報を入手可能に構成するのは容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【非特許文献1】“SECOND REPORT AND ORDER AND MEMORANDUM OPINION AND ORDER”,FCC(米連邦通信委員会),文書番号 FCC 08−260,2008年11月14日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は,セカンダリーユーザーを含むネットワークが共存していても,干渉を回避することができる無線通信システム及び無線通信方法などを提供することを目的とする。また,本発明は,該システムに設置される共存マネージャーを提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は,基本的には,従来の無線通信システムなどにおいて,共存マネージャー(CM)を設置することで,複数のネットワークの共存を可能にするものである。そして,本発明の少なくとも一部は,下記の非特許文献A,Bにおいて開示される予定である。
[非特許文献A] スン チェン他,“Optimization of Transmit Power and Time Slot for Multiple Secondary Users in Cognitive Radio System”,電子情報通信学会(IEICE),SR研究会,2010年3月3日
[非特許文献B] スン チェン他,“Coexistence Manager of Heterogeneous TVWS Networks”,電子情報通信学会(IEICE),SR研究会,2010年3月3日
【0014】
本発明の第1の側面は,複数のネットワークを含む無線通信システムに関する。
【0015】
この無線通信システムは,第1のネットワークに属するプライマリーユーザーと,第2のネットワークに属する第1のセカンダリーユーザーと,共存マネージャー(CM)とを含む。ここで,共存マネージャー(CM)は,第1ネットワーク及び第2のネットワークで通信可能に設置されている。そして,共存マネージャー(CM)は,取得手段と,判断手段と,通知手段とを含む。
【0016】
取得手段は,プライマリーユーザーが少なくとも一時的に利用しないスペクトラムホールに関する情報を取得するための手段である。判断手段は,第1のセカンダリーユーザーがスペクトラムホールを利用することにより第1のネットワークに干渉が生じるかどうかを判断するための手段である。通知手段は,判断手段による判断の結果,第1のネットワークに干渉が生じる場合には,第2のネットワークとは別の第3ネットワークに属する第2のセカンダリーユーザーに対してその旨を通知するための手段である。
【0017】
これにより,第1のネットワーク内において,第2のネットワークと第3のネットワークとの共存が可能になる。具体的には,少なくとも第1のネットワークに対する干渉を回避するように複数のネットワークが共存することができる。
【0018】
また,本発明の好ましい側面では,上記共存マネージャー(CM)が,生成手段と,送信手段とをさらに含む。この生成手段は,前記判断手段による判断の結果,第1のネットワークに干渉が生じる場合には,第2のネットワークの共存を可能にするための共存ルールを所定のデータベースから取得するとともに,そのデータベースから取得した共存ルールから,第2のネットワークの共存に必要な制御メッセージと,第2のネットワークを再構築するために必要なパラメーター及びルールとを生成するための手段である。ここで,所定のデータベースとは,共存マネージャー(CM)に設けられた記憶装置に記憶されているものであってもよいし,他のソースに記憶されているものであってもよい。また,送信手段は,生成手段が生成した制御メッセージ,パラメーター,及びルールを第1のセカンダリーユーザーに対して送信するための手段である。これにより,プライマリーユーザーに対する干渉を確実に抑えることができる。
【0019】
また,本発明の好ましい側面では,上記共存マネージャー(CM)が,第2の判断手段を含む。この第2の判断手段は,第1のセカンダリーユーザーと第2のセカンダリーユーザーとがスペクトラムホールを利用することにより第1のネットワークに干渉が生じるかどうかを判断するための手段である。そして,上記通知手段は,第2の判断手段による判断の結果,第1のネットワークに干渉が生じる場合には,第1のセカンダリーユーザーと第2のセカンダリーユーザーの双方に対してその旨を通知する。これにより,プライマリーユーザーに対する干渉を確実に抑えることができる。
【0020】
さらに,本発明のより好ましい側面では,上記共存マネージャー(CM)が,第2の生成手段と送信手段とを含む。この第2の生成手段は,第2の判断手段による判断の結果,第1のネットワークに干渉が生じる場合には,第2のネットワークの共存を可能にするための共存ルールを所定のデータベースから取得し,データベースから取得した共存ルールから,第2のネットワーク及び第3のネットワークの共存に必要な制御メッセージと,第2のネットワーク及び第3のネットワークの少なくとも一方を再構築するために必要なパラメーター及びルールとを生成するための手段である。ここで,所定のデータベースとは,共存マネージャー(CM)に設けられた記憶装置に記憶されているものであってもよいし,他のソースに記憶されているものであってもよい。また,共存マネージャー(CM)は,これらの情報を生成するために所定のアルゴリズムを用いる。上記送信手段は,第2の生成手段が生成した制御メッセージ,パラメーター,及びルールを,第2のネットワーク及び第3のネットワークの少なくとも一方に対応するセカンダリーユーザーに対して送信するための手段である。これにより,干渉の発生をより確実に抑えることができる。
【0021】
さらに,本発明のより好ましい側面では,第1のセカンダリーユーザーと第2のセカンダリーユーザーが,スペクトラムホールを時分割で利用する。この場合,共存マネージャー(CM)の第2の生成手段は,第1のセカンダリーユーザー及び第2のセカンダリーユーザーのタイムスロットと送信出力とを割り当てる割当て手段を含んで構成されている。そして,この共存マネージャー(CM)の割当て手段は,第2の判断手段による判断の結果,第1のネットワークに干渉が生じる場合には,共存品質の値(QoC)が最大化されるように,第1のセカンダリーユーザーの送信出力値が高くなるように調整するとともに,第2のセカンダリーユーザーのタイムスロットが長くなるように調整する。ここで,共存品質の値(QoS)は,第1のセカンダリーユーザーと第2のセカンダリーユーザーの送信品質のプライマリーユーザーに対する干渉の割合を示すものである。そして,送信手段は,割当て手段が割り当てた送信出力値とタイムスロットを,第1のセカンダリーユーザーと第2のセカンダリーユーザーに送信する。これにより,無線通信システムにおいて複数のネットワークが共存してもそのパフォーマンスを高めることができる。
【0022】
また,本発明の好ましい側面では,第3のネットワークにおいて,上記共存マネージャー(CM)と同様に構成された第2の共存マネージャー(CM)が設置されている。この場合,共存マネージャー(CM)と第2の共存マネージャー(CM)とは,情報交換可能に構成されている。そして,共存マネージャー(CM)の通知手段は,第2の共存マネージャー(CM)を介して第2のセカンダリーユーザーに対して第1のネットワークに干渉が生じる旨を通知する。このように,複数の共存マネージャー(CM)が協働することも可能である。
【0023】
又は,本発明の別の好ましい側面では,第3のネットワークにおいて,第2の共存マネージャー(CM)が設置されている。この場合,第2の共存マネージャー(CM)は,共存マネージャー(CM)からの情報に基づいて,第2のネットワークと第3のネットワークの共存に必要な決定処理を行うように構成されている。そして,第2の共存マネージャー(CM)は,第2のセカンダリーユーザーに対して第1のネットワークや第2のネットワークに干渉が生じる旨を通知したり,第2のセカンダリーユーザーの無線通信の制御を行ったりする。すなわち,複数の共存マネージャー(CM)に,1つの共存マネージャー(CM)の機能を分散させることができる。
【0024】
また,本発明の好ましい側面では,無線通信システムが,データベースを含む。このデータベースは,プライマリーユーザーに関する情報と,第1のネットワークにおいて行われる無線通信を制御するための規制情報とを格納したものである。そして,共存マネージャー(CM)の取得手段は,データベースにアクセスすることにより,プライマリーユーザーに関する情報を取得し,取得したプライマリーユーザーに関する情報に基づいてスペクトラムホールに関する情報を取得する。これにより,スペクトラムの利用状況を正確に把握することができる。
【0025】
又は,本発明の別の好ましい側面では,無線通信システムが,データベースを含む。このデータベースは,スペクトラムホールに関する情報(センシング情報)と,第1のネットワークにおいて行われる無線通信を制御するための規制情報とを格納したものである。そして,共存マネージャー(CM)の取得手段は,データベースにアクセスすることにより,スペクトラムホールに関する情報を取得する。これにより,スペクトラムの利用状況を正確に把握することができる。また,データベースからの情報をそのまま利用することができるので,処理の高速化を図ることができる。
【0026】
さらに,本発明のより好ましい側面では,共存マネージャー(CM)の取得手段が,プライマリーユーザーに関する情報を取得するために,専用の制御チャネルを介してデータベースにアクセスする。これにより,共存マネージャー(CM)がプライマリーユーザーに対して干渉を生じさせることを回避することができる。
【0027】
また,本発明の好ましい側面では,上記共存マネージャー(CM)が,登録手段をさらに含む。この登録手段は,上記判断手段による判断の結果,第1のネットワークに干渉が生じない場合には,第3ネットワークに属する第2のセカンダリーユーザーがスペクトラムホールを利用する旨を登録するための手段である。これにより,第2のセカンダリーユーザーが第1のセカンダリーユーザーやプライマリーユーザーに対して干渉が生じない状態を確実に確保することができる。
【0028】
本発明の第2の側面は,共存マネージャー(CM)に関する。この共存マネージャー(CM)は,上述した第1の側面において,第1のネットワークと,第2のネットワークとを含む無線通信システムに設置されるものと同等である。したがって,この側面によっても,第1の側面によって得られる効果と同等の効果を奏することができる。
【0029】
本発明の第3の側面は,無線通信方法に関する。この無線通信方法は,第1のネットワークと,第2のネットワークとを含む無線通信システムにおいて,第2のネットワークと第3のネットワークとの共存を可能にするためのものである。したがって,この側面によっても,第1の側面によって得られる効果と同等の効果を奏することができる。
【0030】
また,本発明の他の側面は,上述した無線通信方法を実現するためのプログラム(アルゴリズム)や,当該プログラムを格納した記録媒体に関する。これらの側面によっても,第1の側面や第3の側面と同等の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば,無線通信システムにおいて,セカンダリーユーザーを含むネットワークが共存していても,干渉を回避することができる。また,本発明によって,該無線通信システムに設けることが可能な共存マネージャー(CM)や,対応する無線通信方法などを提供するができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は,本発明のコグニティブ無線通信システムの構成の一例を模式的に示すブロック図である。
【図2】図2は,図1における共存マネージャー(CM)が実行する共存管理処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】図3は,図1に示す無線通信システムの別の例の構成を模式的に示すブロック図である。
【図4】図4は,図1に示す無線通信システムのさらに別の例の構成を模式的に示すブロック図である。
【図5】図5は,図1に示す無線通信システムのさらにまた別の例の構成を模式的に示すブロック図である。
【図6】図6は,本発明の実施例で得られたシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態を説明する。しかしながら,以下説明する形態はある例であって,当業者にとって自明な範囲で適宜修正することができる。
【0034】
図1は,本発明の無線通信システムの構成の一例を模式的に示すブロック図である。
【0035】
図1に示す無線通信システム1は,例えば,コグニティブ無線通信システムであり,レガシー無線ネットワークとしてのプライマリーユーザー用ネットワーク10と,第1のセカンダリーユーザー用ネットワーク20(以下,第1ネットワーク20ともいう)と,第2のセカンダリーユーザー用ネットワーク30(以下,第2ネットワーク30ともいう)とを含んでいる。なお,無線通信システム1は,コグニティブ無線通信システムに限られることはなく,動的にアクセス可能なネットワークを含むものであればいかなるシステムであってもよい。
【0036】
プライマリーユーザー用ネットワーク10には,1つ以上のプライマリーユーザー11が属する。プライマリーユーザー11としては,無線通信可能に構成されたデバイスであればいかなるものであってもよく,例えば,IEEE802.11やIEEE802.15に準拠したデバイスであればよい。また,プライマリーユーザー用ネットワーク10でプライマリーユーザー11が通信可能なエリアは,基地局(ベースステーション)12によって定まる。
【0037】
第1のセカンダリーユーザー用ネットワーク20には,1つ以上の第1のセカンダリーユーザー21が属する。第1のセカンダリーユーザー21としては,無線通信可能に構成されたデバイスであればいかなるものであってもよいが,好ましくは,コグニティブ無線通信可能に構成されたデバイスである。また,第1のセカンダリーユーザー用ネットワーク20で第1のセカンダリーユーザー21が通信可能なエリアは,基地局(ベースステーション)22によって定まる。
【0038】
第2のセカンダリーユーザー用ネットワーク30には,1つ以上の第2のセカンダリーユーザー31が属する。第2のセカンダリーユーザー31としては,無線通信可能に構成されたデバイスであればいかなるものであってもよいが,好ましくは,コグニティブ無線通信可能に構成されたデバイスである。また,第2のセカンダリーユーザー用ネットワーク30で第2のセカンダリーユーザー31が通信可能なエリアは,基地局(ベースステーション)32によって定まる。
【0039】
また,無線通信システム1は,さらに,データベース40と,共存マネージャー(CM)50とを含む。
【0040】
データベース40は,無線通信の制御に必要な情報を格納するためのものであり,基地局12,22,32などからアクセス可能な位置に配置されている。データベース40は,通信可能に構成されたデータアーカイブ(DA)であってもよい。好ましくは,データベース40は,IEEE1900.6で規定されるデータアーカイブであるか,又はFCCによって規定された規制情報の格納場所(regulatory repository)であり,より好ましくは,データベース40は,コグニティブ無線通信の制御に必要なセンシング情報(ホワイトスペースに関する情報)と規制情報の双方を記憶したデータベース(ホワイトスペースセンシングデータベース(WSD))である。また,好ましくは,データベース40は,共存マネージャー(CM)50が解釈可能なプリミティブ及びデータフォーマットで情報を記憶している。また,好ましくは,データベース40は,共存マネージャー(CM)50からもアクセス可能な位置に配置されている。
【0041】
共存マネージャー(CM)50は,上述した共存問題を解決するための新規なデバイスであり,具体的にはロジカル要素である。共存マネージャー(CM)は,図1に示す例では,スタンドアローン型のものであり,無線通信システム1の任意の位置に設置されている。なお,共存マネージャー(CM)50は,スタンドアローン型のものに限られることはなく,例えば,共存マネージャー(CM)50は,プライマリーユーザー11やセカンダリーユーザー21,31に搭載されていてもよいし,基地局12,22,32に搭載されていてもよい。ただし,共存マネージャー(CM)50は,プライマリーユーザー11やセカンダリーユーザー21,32と通信可能なエリア内に設置される。また,本態様では,共存マネージャー(CM)は,基地局22や基地局32と通信可能であり,これにより,基地局22や基地局32を介してデータベース40から情報を取得可能となっている。なお,図1に示す例では,共存マネージャー(CM)50は,セカンダリーユーザー用ネットワーク20,30の双方で通信可能に設置されて,中心的な制御を行うことができるように構成されている。しかし,共存マネージャー(CM)の設置は,これに限られることはなく,例えば,各ネットワークに分配的に又は分散的に設置されてもよく,この場合には,複数の共存マネージャー(CM)の間で情報交換可能に構成される(図3,図4参照)。なお,複数のネットワークの全てに共存マネージャー(CM)を設置しなくてもよい。
【0042】
共存マネージャー(CM)50を無線通信システム1に設置することにより,複数のセカンダリーユーザーによるスペクトラム利用を管理して,互いの干渉を回避するとともに,プライマリーユーザーに対する干渉も回避することができるようになる。これを実現するために,共存マネージャー(CM)50は,以下の複数の機能のうち,少なくともいくつかの機能を有するように構成されている。
【0043】
第1に,共存マネージャー(CM)50は,データベース40にアクセスすることが可能に構成されている。本態様では,共存マネージャー(CM)50は,基地局22や基地局32を介してデータベース40にアクセスすることとなる。
【0044】
これにより,共存マネージャー(CM)50は,データベース40からセンシング情報を取得することができる。ここで,センシング情報は,所定のエリアにおけるスペクトラムの利用状況に関する情報を含んでいる。特に,本態様では,センシング情報は,セカンダリーユーザーの互いに異なる複数のネットワークが無線環境を共有しようとしている特定のエリアにおけるスペクトラムの利用状況に関する情報を含んでいる。また,共存マネージャー(CM)50は,データベース40からセンシング情報を取得することができる。ここで,規制情報は,例えば,どの周波数が利用されていないのかに関する情報,又は利用可能な周波数に関する情報(例えば,利用可能なチャネルのリスト)を含む。
【0045】
第2に,共存マネージャー(CM)50は,1つ以上のプライマリーユーザーに関する情報を保持する。ここで,プライマリーユーザーに関する情報としては,スペクトラム利用状況に関する情報やMACに関する情報が含まれる。好ましくは,プライマリーユーザーに関する情報には,プライマリーユーザーの地理上の位置に関する情報と,プライマリーユーザーの無線受信機の地理上の位置に関する情報とを含む。すなわち,共存マネージャー(CM)50は,プライマリーユーザーの地理上の位置に関する情報と,プライマリーユーザーの無線受信機の地理上の位置に関する情報とを保持することが好ましい。そして,共存マネージャー(CM)50は,プライマリーユーザーに関する情報を用いて,プライマリーユーザーが保護されるような要件として,セカンダリーユーザーに求められる要件を導き出す。
【0046】
第3に,共存マネージャー(CM)50は,複数のセカンダリーユーザー用ネットワーク(例えば,第1及び第2ネットワーク20,30)に関する情報を保持可能に構成されている。ここで,セカンダリーユーザー用ネットワークに関する情報は,各ネットワークのPHYに関する情報と,MACに関する情報と,チャネル利用状況に関する情報とを含む。好ましくは,セカンダリーユーザー用ネットワークに関する情報は,PHY層やMAC層より高い層の情報を含む。
【0047】
第4に,共存マネージャー(CM)50は,利用可能なチャネル(つまり,スペクトラム機会)に関する情報を保持可能に構成されている。利用可能なチャネルに関する情報は,例えば,プライマリーユーザーが現在利用していないチャネルであって,セカンダリーユーザーがアクセス可能なチャネルに関する情報である。利用可能なチャネルに関する情報は,データベース40からのセンシング情報から取得することが可能である。また,利用可能なチャネルに関する情報は,データベース40からの規制情報から取得可能である。なお,FCCによれば,デバイスがテレビ用ホワイトスペースを利用する場合,各デバイスはデータベースをチェックして,アクセス可能な利用されていないチャネルを特定することが求められている。
【0048】
第5に,共存マネージャー(CM)50は,保持している情報に基づいて,又はアルゴリズムに従うことで,共存ルール(例えばポリシー情報)とパラメーターを生成することが可能に構成されている。このパラメーターは,セカンダリーユーザーのネットワークに対して,該パラメーターに応じた再構成を実行するように促すための情報である。例えば,共存マネージャー(CM)50は,チャネル情報(例えば,RSSIといったチャネル情報)に基づいて,セカンダリーユーザーに対して,送信出力の変更,パケットサイズの変更,チャネル利用状況の変更などを促す。すなわち,共存マネージャー(CM)50は,セカンダリーユーザー用ネットワークに関する情報を用いることで,互いに異なるセカンダリーユーザー用ネットワークをコーディネートすることが可能である。また,共存ルールは,各セカンダリーユーザーが遵守することで,共存の秩序を守るための情報である。
【0049】
具体的には,共存マネージャー(CM)は,対象となるネットワークに干渉が生じる場合には,第2のネットワークの共存を可能にするための共存ルールを所定のデータベースから取得し,データベースから取得した共存ルールから,第2のネットワーク及び第3のネットワークの共存に必要な制御メッセージと,第2のネットワーク及び第3のネットワークの少なくとも一方を再構築するために必要なパラメーター及びルールとを生成する。ここで,所定のデータベースとは,共存マネージャー(CM)50に設けられた記憶装置に記憶されているものであってもよいし,他のソースに記憶されているものであってもよい。そして,共存マネージャー(CM)50は,生成した情報(制御メッセージ,パラメーター,及びルール)を対応するセカンダリーユーザーに送信(提供)する。なお,複数のネットワークを対象とする場合には,少なくとも1つのネットワークに属するセカンダリーユーザーに,共存マネージャー(CM)50が生成した情報が提供される。これにより,干渉の発生をより確実に抑えることができる。
【0050】
具体的には,このコーディネートのために,共存マネージャー(CM)50は,セカンダリーユーザー用ネットワークのパラメーター(例えば,送信出力,占有周波数,データレート,パケットサイズ)を調整したり,共存ルールを新たに設定したりする。
【0051】
好ましくは,共存マネージャー(CM)50は,セカンダリーユーザーの送信品質を示す数値を,プライマリーユーザーに対するネガティブな干渉の値で割り算したものを共存品質(QoC)として定義し,この共存品質の値を共存時におけるパフォーマンスの判断基準として用いて,送信出力に関するパラメーターやタイムスロットの割り当てに関するパラメーターの調整を行う。このようにすることで,スペクトラムの利用効率と,プライマリーユーザーに対する干渉の度合いの双方を評価した上でパラメーターを調整することができる。そして,第1のセカンダリーユーザーと第2のセカンダリーユーザーは,スペクトラムホームを,割り当てられたタイムスロット内で(つまり,時分割で)利用する。これにより,無線通信システム1において複数のネットワークが共存してもそのパフォーマンスを高めることができる。
【0052】
上述したように共存マネージャー(CM)50を構成することにより,無線通信システム1では,複数のセカンダリーユーザーが干渉するのを回避するための管理が実現される。特に,共存マネージャー(CM)50がパラメーターの調整や共存ルールの設定などを行うことにより,複数のネットワークがスペクトラム機会を共有する際の最適化を行ってスペクトラム効率(つまり,無線通信システム1のパフォーマンス)を最大化させることができる。
【0053】
続いて,共存マネージャー(CM)50が実行するネットワーク管理処理について図2を用いて詳細に説明する。このネットワーク管理処理によって,複数のネットワークの共存が管理される。
【0054】
図2は,図1における共存マネージャー(CM)50によって実行されるネットワーク管理処理の手順を示すフローチャートである。図2に示すような処理は,例えば,第1のセカンダリーユーザー用ネットワーク20が,特定されているスペクトラム機会(スペクトラムホール)の利用を開始している場合に,第2のセカンダリーユーザー用ネットワーク30が,同じスペクトラムホールにアクセス可能であることに起因して,共存状態が生じるときに特に有効である。なお,図2に対応するプログラム(アルゴリズム)は,例えば記録媒体に記録されており,このプログラムを共存マネージャー(CM)50が読み出して実行することにより,図2に対応する処理が行われる。
【0055】
図2において,まず,ステップS110では,共存マネージャー(CM)50は,図1に示したような専用の制御チャネルを介して,利用可能なチャネル(スペクトラム機会)のリストを入手する。ここで,なお,専用の制御チャネルは,専用の周波数によって実現されるものであってもよいし,特定されているスペクトラム機会を用いて実現してもよい。
【0056】
ここで,利用可能なチャネルとは,プライマリーユーザー用ネットワーク10が一時的に利用していないチャネルである。そして,利用可能なチャネルは,共存マネージャー(CM)50が,データベース40にアクセスしてセンシング情報及び/又は規制情報を入手することで特定可能である。なお,テレビ用ホワイトスペースに関しては,FCCで規定される規制情報データベースが,特定位置で利用されていないチャネルに関する情報を保持することとなっている。そのため,共存マネージャー(CM)は,プライマリーユーザー用ネットワーク10の地理上の位置に基づいて利用可能なチャネルを確認することができる。同様に,第1のセカンダリーユーザー用ネットワーク20も,上記特定されたスペクトラムホール(利用可能なチャネルのリスト)とその利用状況に関する情報を確認することができる。
【0057】
ステップS120では,第1のセカンダリーユーザー用ネットワーク20はスペクトラムホールの利用を既に開始している場合において,第2のセカンダリーユーザー用ネットワーク30がスペクトラムホールを利用しようとしているときは,第2のセカンダリーユーザー用ネットワーク30は,共存マネージャー(CM)50に対して,利用可能なチャネルについての問い合わせをする。つまり,共存マネージャー(CM)50は,利用可能なチャネルについての問い合わせを第2のセカンダリーユーザー用ネットワーク30から受ける。
【0058】
ここで,複数の利用可能なチャネルのうち,第1のセカンダリーユーザー用ネットワーク20が利用していないチャネルがある場合(ステップS130でYES),第2のセカンダリーユーザー用ネットワーク30は,そのチャネルを利用してビーコン又はテスト信号を,パイロット信号(pilot tone)として送信する(ステップS140)。
【0059】
共存マネージャー(CM)50は,第1のセカンダリーユーザー用ネットワーク20に対して既にアクセスしているので,共存マネージャー(CM)50は,第1のセカンダリーユーザー21に対して問い合わせをすることが可能である。そこで,ステップS150では,共存マネージャー(CM)50は,第1のセカンダリーユーザー用ネットワーク20に対して問い合わせを行う。ここで,問い合わる内容は,第1のセカンダリーユーザー用ネットワーク20がビーコンやテスト信号をセンシングした際に,第2のセカンダリーユーザー用ネットワーク30が干渉を検出(センシング)したかどうかに関するものである。なお,問い合わせることに代えて,共存マネージャー(CM)50は,干渉警報があるかどうかを確認してもよい。
【0060】
上述した問い合わせに対して,共存マネージャー(CM)50は,第1のセカンダリーユーザー用ネットワーク20が干渉を受けた旨を受信した場合(ステップS160でYES),共存マネージャー(CM)50は,セカンダリーユーザー用ネットワーク20,30の再構成を提案する(ステップS200)。このような再構成の提案は,共存マネージャー(CM)50がセカンダリーユーザー用ネットワーク20,30に対して,制御メッセージ,再構成パラメーター,及びルールを送信することによって実現することができる。
【0061】
第1のセカンダリーユーザー用ネットワーク20に干渉がない旨を共存マネージャー(CM)50が受信した場合(ステップS160でNO),共存マネージャー(CM)50は,同じ周波数帯に共存する2つのネットワーク20,30がプライマリーユーザー用ネットワーク10に対して干渉を生成する可能性があることを容認するかどうかを確認する(ステップS170)。
【0062】
干渉の可能性がある場合(ステップS170でYES),共存マネージャー(CM)50は,セカンダリーユーザー用ネットワーク20,30のパラメーターに基づいて再構成を提案する(ステップS200)。
【0063】
一方,干渉の可能性がない場合(ステップS170でNO),共存マネージャー(CM)50は,2つのセカンダリーユーザー用ネットワーク20,30の共存を実現することが可能となる。具体的には,第2のセカンダリーユーザー用ネットワーク30は,当該ネットワーク30が利用する周波数帯(例えば,テレビ用ホワイトスペースの周波数帯)を共存マネージャー(CM)50に登録する(ステップS190)。これにより,本処理が終了する。
【0064】
なお,ステップS200において再構成が提案されたセカンダリーユーザー用ネットワーク20,30が再構築を終了した場合には,本処理は,ステップS120に戻り,その後の処理が実行される。
【0065】
上述した処理によれば,プライマリーユーザー用ネットワーク10で利用されていないスペクトラム(つまり,スペクトラム機会又はスペクトラムホール)が特定されている場合に,2つのセカンダリーユーザー用ネットワーク20,30が,その特定されているスペクトラムホールにおいて共存することができる。言い換えると,共存マネージャー(CM)50は,少なくとも,セカンダリーユーザー用ネットワーク20,30の共存を管理することで,プライマリーユーザー用ネットワーク10を保護するように(つまり,干渉が生じないように)機能する。
【0066】
また,上述した処理によれば,第1のセカンダリーユーザー用ネットワーク20に干渉が生じないように,第2のセカンダリーユーザー用ネットワーク30が管理される。これにより,複数のネットワークの共存を確実に行うことができる。さらに,上述した処理によれば,第1ネットワーク20及び第2ネットワーク30の双方がスペクトラム利用の可能性が有る場合,双方のネットワークに属する共存マネージャー(CM)50は,プライマリーユーザーに対する干渉の可能性が確認され,そして,干渉の可能性が有る場合,共存マネージャー(CM)50は,第1ネットワーク20や第2ネットワーク30に属するデバイスに再構成の提案に関する情報(制御メッセージ,パラメーター,及びルール)を送信する。これにより,プライマリーユーザーへの干渉を確実に抑制することができる。
【0067】
なお,上述した処理は,共存マネージャー(CM)50がセカンダリーユーザー用ネットワーク20,30を管理するときの一例にすぎない。なお,上述した処理は,複数のセカンダリーユーザー用ネットワークが存在する場面において適用することができる。また,共存マネージャー(CM)50は,互いに異なるアルゴリズム(プログラム)を利用可能に構成されていてもよいし,複数のアルゴリズム(プログラム)を利用して上述した処理を実現可能に構成されていてもよい。
【0068】
続いて,本発明の一実施態様を説明する。
【0069】
本実施態様では,無線技術を農村地域で適用した場合に相当する。農村地域では,長距離におよぶ地域エリアネットワーク(RAN)によって,インターネットアクセスが農村地域内の各家庭に供給されている。ここで,インターネットアクセスは,例えば,テレビ用ホワイトスペースを利用して,基地局(ベースステーション)とカスタマー構内設備(CPE)とを介して行われる。
【0070】
上述したようなインターネットアクセスに係るサービスは,例えば,IEEE802.22のテレビ用ホワイトスペース(TV WS)基準に準拠させることで実現可能である。
【0071】
一方で,各家庭内では,無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)によって,家庭内での無線アクセスが実現されており,また,それにより,テレビ用ホワイトスペースを利用したアドホック型のネットワークが形成されている。
【0072】
したがって,2種類の無線サービスが同じテレビ用ホワイトスペースを利用していることとなり,互いに干渉が生じることが考えられる。そして,干渉が生じた場合,2種類のシステム(ネットワーク)のスループットが低下し,結果として,ユーザーはパフォーマンスに満足することができない状態となる。
【0073】
そこで,本実施態様では,上述したような2種類の無線サービスが存在する位置に,共存マネージャー(CM)を独立したデバイスとして設置する。なお,共存マネージャー(CM)は,WLANのアクセスポイントに設けられてもよいし,カスタマー構内設備(CPE)に設けられてもよい。
【0074】
そして,共存マネージャー(CM)は,スペクトラムの利用状況に関する情報,サービスタイプに関する情報,クオリティオブサービス(QoS)に関する情報といった情報を双方の無線ネットワークから入手する。また,共存マネージャー(CM)は,データベースにアクセスして,セカンダリーユーザーの地理上の位置に関する情報,プライマリーユーザー地理上の位置に関する情報,及び伝播環境に関する情報などを入手している。そして,共存マネージャー(CM)は,これらの入手した情報を用いて,各ネットワークの干渉に関する数値を見積もるとともに,双方のネットワークに対して,再構成を提案する旨の情報を送出する。再構成は,双方のネットワークについて,送信出力,変調,データレート,クオリティオブサービス(QoS)などのパラメーターを調整することによって実施される。調整に際しては,双方のネットワークが互いに干渉することがない状態で共存することができるようにする必要がある。そのために,共存マネージャー(CM)は,制御メッセージ,パラメーター,及びルールを設定する。上述したようにすることで,ユーザーは,同時に双方のネットワークからサービスを受けることができるようになる。
【0075】
本発明は,無線ネットワーク(第1のネットワーク)がテレビ用ホワイトスペースを利用するようにセットアップされている場面において,他のサービスが同じ周波数帯を利用して他のネットワーク(第2ネットワーク)をセットアップしようとするときに有効である。このような場面では,第2のネットワークの共存マネージャー(CM)が,まず,第1のネットワークに属するデバイスの共存マネージャー(CM)と通信を行って,スペクトラム利用状況に関する情報を入手する。なお,共存マネージャー(CM)間の通信は,専用チャネルを利用することによって,又はビーコンを用いた手法を利用することによって実現される。続いて,第2のネットワークに属するデバイスは,利用されていないスペクトラムを特定して,その特定したスペクトラムを利用して,パイロット信号を送出する。その後,第1のネットワークに属するデバイスの各共存マネージャー(CM)は,第1のネットワークでの干渉が検出された場合にはその旨を第2のネットワークに属するデバイスの共存マネージャー(CM)に対して通知する。一方,干渉が検出されない場合には,双方のネットワークに属する共存マネージャー(CM)は,プライマリーユーザー(例えば,テレビの無線受信機)の情報が格納されているデータベースを確認することになる。
【0076】
また,好ましい実施態様では,複数の共存マネージャー(CM)を,無線通信システムにおいて分散配置されるように設置される。例えば,各無線通信機器に共存マネージャー(CM)を設置する。これにより,無線通信デバイスの全てが共存マネージャー(CM)の機能をもつこととなる。また,別の例では,図3〜図5に示すように,セカンダリーユーザー用ネットワークの各々の基地局(又はアクセスポイント)に共存マネージャー(CM)を搭載してもよい。図3に示す例では,共存マネージャー(CM)は,セカンダリーユーザー用ネットワークやそのネットワークに属するデバイスに対してアクセスのサービスを提供したり,コマンドやメッセージを送信したりする。図4に示す例では,2つの共存マネージャー(CM)が情報交換を行うことで,各共存マネージャー(CM)は,共存に必要な決定処理を行うことが可能となっている。図5に示す例は,一方の共存マネージャー(CM)が情報収集と共存ルールを設定し,それらの情報をもう一方の共存マネージャー(CM)に供給する。そして,情報を受けた共存マネージャー(CM)は,共存に必要な決定処理を行う。決定処理で決定された情報にしたがって,各セカンダリーユーザーは動作する。このように,複数の共存マネージャー(CM)が1つの共存マネージャー(CM)の複数の機能を分散的に有していてもよい。したがって,図5に示す例は,一例に過ぎず,他の方法で共存マネージャー(CM)の機能を分散させてもよい。
【実施例】
【0077】
本発明の実施例を説明する。
【0078】
上述した態様では,共存マネージャー(CM)が2つのセカンダリーユーザー用ネットワークが共存できるように,パラメーター等の調整を行うことが可能に構成されている。本実施例では,2つのセカンダリーユーザーが時分割でスペクトラムホールを利用する場合に関して,各セカンダリーユーザーに対してタイムスロットを割り当てたときのシミュレーションを行った。
【0079】
図6は,本発明の実施例で得られたシミュレーション結果を示すグラフである。ここで,図6における横軸は,スペクトラムホールを利用する時間を1としたときの一方のセカンダリーユーザー(第1のセカンダリーユーザー)に割り当てたタイムスロットt1に対応している。なお,もう一方のセカンダリーユーザー(第2のセカンダリーユーザー)に割り当てられるタイムスロットt2は,1からt1を減算すればよい(つまり,t2=1−t1)。図6における縦軸は,共存品質(QoC)の数値を示している。また,図6において,曲線Aは,2つのセカンダリーユーザーの送信出力を共に1であるとした場合に対応しており,曲線Bは,第1のセカンダリーユーザーの送信出力を0.5とし,もう一方のセカンダリーユーザー(第2のセカンダリーユーザー)の送信出力を1.5とした場合に対応しており,曲線Cは,第1のセカンダリーユーザーの送信出力を0.5とし,もう一方のセカンダリーユーザー(第2のセカンダリーユーザー)の送信出力を1.5とした場合に対応している。
【0080】
図6から,割り当てるタイムスロットや送信出力によって,共存品質(QoC)の値が変動することが分かる。そこで,本発明の好ましい態様では,共存マネージャー(CM)50は,共存品質(QoC)の値を共存時におけるパフォーマンスの判断基準として用いて,送信出力に関するパラメーターやタイムスロットの割り当てに関するパラメーターの調整を行う。具体例を挙げると,共存品質の値(QoC)が最大化されるように,第1のセカンダリーユーザーの送信出力値が高くなるように調整するとともに,第2のセカンダリーユーザーのタイムスロットが長くなるように調整する。ただし,第1のセカンダリーユーザーの送信出力値と第2のセカンダリーユーザーの送信出力値の和が一定であるとしている。なお,第2のセカンダリーユーザーの送信出力値が高くなるように調整するとともに,第1のセカンダリーユーザーのタイムスロットが長くなるように調整してもよい。このようにすることで,スペクトラムの利用効率と,プライマリーユーザーに対する干渉の度合いの双方を評価した上でパラメーター等を調整することができる。そして,第1のセカンダリーユーザーと第2のセカンダリーユーザーは,スペクトラムホームを,割り当てられたタイムスロット内で(つまり,時分割で)利用する。これにより,無線通信システム1において複数のネットワークが共存してもそのパフォーマンスを高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は,無線通信システム及び無線通信方法に適用することができ,工業用途での利用も可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 無線通信システム
10 プライマリーユーザー用ネットワーク
11 プライマリーユーザー
12 基地局
20 第1のセカンダリーユーザー用ネットワーク
21 第1のセカンダリーユーザー
22 基地局
30 第2のセカンダリーユーザー用ネットワーク
31 第2のセカンダリーユーザー
32 基地局
40 データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のネットワークと,第2のネットワークとを含む無線通信システムであって,
前記第1のネットワークに属するプライマリーユーザーと,
前記第2のネットワークに属する第1のセカンダリーユーザーと,
前記第1ネットワーク及び前記第2のネットワークで通信可能に設置された共存マネージャー(CM)と,
を含み,
前記共存マネージャー(CM)は,
前記プライマリーユーザーが少なくとも一時的に利用しないスペクトラムホールに関する情報を取得する取得手段と,
前記第1のセカンダリーユーザーが前記スペクトラムホールを利用することにより前記第1のネットワークに干渉が生じるかどうかを判断する判断手段と,
前記判断手段による判断の結果,前記第1のネットワークに干渉が生じる場合には,前記第2のネットワークとは別の第3ネットワークに属する第2のセカンダリーユーザーに対してその旨を通知する通知手段と,
を含み,
これにより,前記第1のネットワーク内において,前記第2のネットワークと前記第3のネットワークとの共存を可能にする,
無線通信システム。
【請求項2】
前記共存マネージャー(CM)は,
前記判断手段による判断の結果,前記第1のネットワークに干渉が生じる場合には,
前記第2のネットワークの共存を可能にするための共存ルールを所定のデータベースから取得し,
前記データベースから取得した共存ルールから,前記第2のネットワークの共存に必要な制御メッセージと,前記第2のネットワークを再構築するために必要なパラメーター及びルールとを生成する生成手段と,
前記生成手段が生成した前記制御メッセージ,前記パラメーター,及び前記ルールを前記第1のセカンダリーユーザーに対して送信する送信手段と,
をさらに含む,
請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記共存マネージャー(CM)は,
前記第1のセカンダリーユーザーと前記第2のセカンダリーユーザーとが前記スペクトラムホールを利用することにより前記第1のネットワークに干渉が生じるかどうかを判断する第2の判断手段,をさらに含み,
前記通知手段は,前記第2の判断手段による判断の結果,前記第1のネットワークに干渉が生じる場合には,前記第1のセカンダリーユーザーと前記第2のセカンダリーユーザーの双方に対してその旨を通知する,
請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記共存マネージャー(CM)は,
前記第2の判断手段による判断の結果,前記第1のネットワークに干渉が生じる場合には,
前記第2のネットワークの共存を可能にするための共存ルールを所定のデータベースから取得し,
前記データベースから取得した共存ルールから,前記第2のネットワーク及び前記第3のネットワークの共存に必要な制御メッセージと,前記第2のネットワーク及び前記第3のネットワークの少なくとも一方を再構築するために必要なパラメーター及びルールとを生成する第2の生成手段と,
前記第2の生成手段が生成した前記制御メッセージ,前記パラメーター,及び前記ルールを,前記第2のネットワーク及び前記第3のネットワークの少なくとも一方に対応するセカンダリーユーザーに対して送信する送信手段と,
をさらに含む,
請求項3に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記第1のセカンダリーユーザーと前記第2のセカンダリーユーザーは,
前記スペクトラムホールを時分割で利用するものであり,
前記共存マネージャー(CM)の第2の生成手段は,
前記第1のセカンダリーユーザー及び前記第2のセカンダリーユーザーのタイムスロットと送信出力とを割り当てる割当て手段を含み,
前記共存マネージャー(CM)の割当て手段は,
前記第2の判断手段による判断の結果,前記第1のネットワークに干渉が生じる場合には,前記第1のセカンダリーユーザーと前記第2のセカンダリーユーザーの送信品質の前記プライマリーユーザーに対する干渉の割合を示す共存品質の値(QoC)が最大化されるように,前記第1のセカンダリーユーザーの送信出力値が高くなるように調整するとともに,前記第2のセカンダリーユーザーのタイムスロットが長くなるように調整し,
前記送信手段は,
前記割当て手段が割り当てた送信出力値とタイムスロットを,前記第1のセカンダリーユーザーと前記第2のセカンダリーユーザーに送信する,
請求項3に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記第3のネットワークには,前記共存マネージャー(CM)と同様に構成された第2の共存マネージャー(CM)が設置されており,
前記共存マネージャー(CM)と前記第2の共存マネージャー(CM)とは,
情報交換可能に構成されており,
前記共存マネージャー(CM)の通知手段は,
前記第2の共存マネージャー(CM)を介して前記第2のセカンダリーユーザーに対して前記第1のネットワークに干渉が生じる旨を通知する,
請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記第3のネットワークには,第2の共存マネージャー(CM)が設置されており,
前記第2の共存マネージャー(CM)は,
前記共存マネージャー(CM)からの情報に基づいて,前記第2のネットワークと前記第3のネットワークの共存に必要な決定処理を行う,
請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記プライマリーユーザーに関する情報と,前記第1のネットワークにおいて行われる無線通信を制御するための規制情報とを格納したデータベースを含み,
前記共存マネージャー(CM)の取得手段は,
前記データベースにアクセスすることにより,前記プライマリーユーザーに関する情報を取得し,取得したプライマリーユーザーに関する情報に基づいて前記スペクトラムホールに関する情報を取得する,
請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項9】
前記スペクトラムホールに関する情報と,前記第1のネットワークにおいて行われる無線通信を制御するための規制情報とを格納したデータベースを含み,
前記共存マネージャー(CM)の取得手段は,
前記データベースにアクセスすることにより,前記スペクトラムホールに関する情報を取得する,
請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項10】
前記共存マネージャー(CM)の取得手段は,
前記プライマリーユーザーに関する情報を取得するために,専用の制御チャネルを介して前記データベースにアクセスする,
請求項8又は9に記載の無線通信システム。
【請求項11】
前記共存マネージャー(CM)は,
前記判断手段による判断の結果,前記第1のネットワークに干渉が生じない場合には,前記第3ネットワークに属する第2のセカンダリーユーザーが前記スペクトラムホールを利用する旨を登録する登録手段,をさらに含む,
請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項12】
第1のネットワークと,第2のネットワークとを含む無線通信システムに設置される共存マネージャー(CM)であって,
前記共存マネージャー(CM)は,
前記第1ネットワーク及び前記第2のネットワークで通信可能に設置されており,
前記第1のネットワークに属するプライマリーユーザーが少なくとも一時的に利用しないスペクトラムホールに関する情報を取得する取得手段と,
前記第2のネットワークに属する第1のセカンダリーユーザーが前記スペクトラムホールを利用することにより前記第1のネットワークに干渉が生じるかどうかを判断する判断手段と,
前記判断手段による判断の結果,前記第1のネットワークに干渉が生じる場合には,前記第2のネットワークとは別の第3ネットワークに属する第2のセカンダリーユーザーに対してその旨を通知する通知手段と,
を含み,
これにより,前記第1のネットワーク内において,前記第2のネットワークと前記第3のネットワークとの共存を可能にする,
共存マネージャー(CM)。
【請求項13】
第1のネットワークと,第2のネットワークとを含む無線通信システムにおいて,前記第2のネットワークと前記第3のネットワークとの共存を可能にするための無線通信方法であって,
前記無線通信システムは,
前記第1のネットワークに属するプライマリーユーザーと,
前記第2のネットワークに属する第1のセカンダリーユーザーと,
前記第1ネットワーク及び前記第2のネットワークで通信可能に設置された共存マネージャー(CM)と,
を含んでおり,
前記無線通信方法は,
前記共存マネージャー(CM)が,前記プライマリーユーザーが少なくとも一時的に利用しないスペクトラムホールに関する情報を取得する取得ステップと,
前記共存マネージャー(CM)が,前記第1のセカンダリーユーザーが前記スペクトラムホールを利用することにより前記第1のネットワークに干渉が生じるかどうかを判断する判断ステップと,
前記共存マネージャー(CM)が,前記判断ステップでの判断の結果,前記第1のネットワークに干渉が生じる場合には,前記第2のネットワークとは別の第3ネットワークに属する第2のセカンダリーユーザーに対してその旨を通知する通知ステップと,
を含む,
無線通信方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−176508(P2011−176508A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38021(P2010−38021)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)総務省委託「電波資源拡大のための研究開発」の一環,産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】