説明

無線通信システム

【課題】従来は、無線回線のS/N比が悪いことにより移動局から制御局に接続接続できない、又は、どの無線回線を選択するのがよいか制御局から移動局へ通知する必要があるという課題を解決する。
【解決手段】制御局との間で基地局を介して複数の無線回線により無線通信を行う移動局を備えた無線通信システムを、移動局が、無通話時において無線回線毎に測定信号を制御局へ送出する測定信号送出部と、制御局から返送される測定信号のS/N比を測定するS/N比測定部と、該測定したS/N比データを各無線回線に対応させて記憶する無線回線データ記憶部とを有し、移動局の通話時において前記無線回線データ記憶部に記憶した無線回線データに基づき、所定のS/N比以上である無線回線を選択して接続し、制御局が、移動局から送信された測定信号を受信すると、受話路と送話路を折返接続し、移動局からの測定信号を折り返すように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば無線回線接続制御を行うときに、S/N(信号レベル/ノイズレベル)比の良好な無線回線を使用する列車無線通信システム等の、無線通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3に従来の列車無線通信システムのブロック図を示す。図中、51は制御局、52は基地局、53は移動局である。複数の基地局52が制御局51に接続され、基地局52と移動局53との間で無線通信を行う。従来の列車無線通信システムでは、無線回線の品質状態に基づく回線接続制御機能がなく、移動局53から制御局51への接続は、基地局52を介して、基地局52と移動局53間の無線回線の状態に無関係に行っている。
また、特許文献1には、列車無線通信システムにおいて、制御局に、測定信号発生器と、測定信号測定器と、測定信号の値により移動局との回線接続の制御を行う回線接続制御部とを設け、移動局に、制御局から送出された測定信号を制御局に折り返す測定信号折返制御部を設けることにより、品質の良い回線を自動的に選択して使用することが開示されている。しかし、特許文献1に記載の列車無線通信システムにおいては、無線回線の品質データが制御局に存在するので、移動局が通話を行うときに、どの無線回線を選択するのがよいかを、制御局から移動局へ通知する必要があり、処理が複雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−163954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の従来の無線通信システムでは、例えば基地局は約20km間隔で山の上などに設置されており、基地局の設置場所による電波状態の変動や、移動局の走行位置による電波状態の変動や、基地局内無線機ハードウエア等の経年変化による信号レベル変動などがそのまま接続回線の品質に影響するため、移動局から制御局に接続しようとしても接続できなかったり、接続できた場合でも、ノイズの影響で通話が聞き取りにくかったり、データ伝送が正常に行えない場合がある、あるいは、どの無線回線を選択するのがよいか制御局から移動局へ通知する必要がある等の課題があった。本発明はこれらの課題を解決し、常に品質の良い回線を自動的に選択して使用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明における無線通信システムの代表的な構成は、次のとおりである。すなわち、
複数の基地局が接続された制御局と、基地局との間の複数の無線回線を使用して無線通信を行う移動局とを備えた無線通信システムであって、
移動局は、複数の無線回線から所定のS/N比以上である無線回線を選択して接続する無線回線接続制御部を備えるものであり、
該無線回線接続制御部は、当該移動局の無通話時において無線回線毎に測定信号を制御局へ送出する測定信号送出部と、制御局から返送される測定信号のS/N比を測定するS/N比測定部と、該測定したS/N比データを基地局及び該基地局の各無線回線に対応させて記憶する無線回線データ記憶部とを有し、移動局の通話時において前記無線回線データ記憶部に記憶した無線回線データに基づき、所定のS/N比以上である無線回線を選択して接続するものであり、
制御局は、移動局から送信された測定信号を受信すると、受話路と送話路を折返接続し、移動局からの測定信号を折り返す測定信号折返制御部を備えることを特徴とする無線通信システム。
【発明の効果】
【0006】
上記のように構成すると、品質の良い回線を選択して使用できるため、常に良好な通話とデータ伝送を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例に係る無線通信システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の無線回線データ記憶部の構成例を示す図である。
【図3】従来の無線通信システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態の一例である無線通信システムについて、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施例に係る無線通信システムの構成を示す図である。図1において、10は制御局、20は基地局、30は移動局である。11は、制御局10の端末である。31は、移動局30の端末で、制御局10の端末11との間で、通話やデータ通信を行う。12は、制御局10の通話路制御部で、複数の基地局20が接続され、該複数の基地局20を介して、移動局30と端末11との間の通話路制御を行う。13は、制御局10の受話路で、通話路制御部12からの受話や受信データを、端末11に接続する信号線である。14は、制御局10の送話路で、端末11からの送話や送信データを、通話路制御部12に接続する信号線である。
15は、制御局10の受話路13を送話路14に折り返し接続する測定信号折返制御部である。測定信号折返制御部15は、折返信号検出部16とリレー17を含んでおり、折返信号検出部16で、移動局30から送信されてきた折返信号を検出すると、リレー17を動作させる。リレー17が動作すると、図1の破線に示すように、受話路13を送話路14に接続する。
【0009】
32は、移動局30の制御部で、移動局30全体の制御を行う。33は、移動局30の無線部で、制御部32からの通話信号や制御信号を、基地局20への送信無線信号に変換し、あるいは、基地局20からの受信無線信号を、制御部32への通話信号や制御信号に変換する。
34は、無線回線接続制御部で、移動局30の通話時において、該移動局30が在線している基地局20、つまり該移動局30が通信可能である基地局20との間の複数の無線回線の中から、所定のS/N比以上となる無線回線を選択して接続する。35は、移動局30の送話路40に接続された折返信号発生器である。折返信号は、例えば特定の識別可能なコードや文字列として構成することができる。36は、移動局30の送話路40に接続された測定信号発生器である。測定信号は、信号レベルとノイズレベルを測定、すなわちS/N比を測定するための信号で、例えば、移動局30から制御局10への折返信号送出時間が10秒間の場合、前半の5秒間は測定信号発生器36からの測定信号を送出し、後半の5秒間は測定信号を送出しないようにする。37は、折返信号発生器35からの折返信号と、測定信号発生器36からの測定信号を合成する合成器である。折返信号発生器35と測定信号発生器36と合成器37とで、測定信号送出部43を構成する。測定信号送出部43は、移動局30の無通話時において、無線回線毎に、折返信号が重畳された測定信号を制御局10へ送出するものである。38は、移動局30の受話路41に接続されたS/N比測定部である。S/N比測定部38は、制御局10から返送される測定信号のS/N比を測定するものである。
なお、上述の例では、折返信号発生器35からの折返信号と、測定信号発生器36からの測定信号を重畳して合成するようにしたが、例えば2秒間の折返信号の後に続いて10秒間の測定信号を合成するようにしてもよい。
【0010】
39は、S/N比測定部38で測定したS/N比データを、移動局30が通信可能である基地局20、及び該基地局20との間の複数の無線回線に対応させて記憶し、移動局30の通話時において、前記記憶した無線回線データに基づき、所定のS/N比以上である無線回線を選択して接続するよう制御する回線制御記憶部である。回線制御記憶部39は、S/N比測定部38で測定したS/N比データを無線回線に対応させて記憶する無線回線データ記憶部を含む。
無線回線データ記憶部の一例を図2に示す。図2は、本発明の無線回線データ記憶部の構成例を示す図である。図2においては、特定の移動局が在線する基地局との間の無線回線毎に、S/N比、該S/N比の判定結果、回線接続順位が格納されている。例えば、基地局1との間の無線回線1は、S/N比がaaであり、該S/N比の判定結果が○、すなわち接続可能なS/N比であり、回線接続順位が2位である。また、基地局1との間の無線回線2は、S/N比がbbであり、該S/N比の判定結果が○であり、回線接続順位が1位である。また、基地局局1との間の無線回線3は、S/N比がccであり、該S/N比の判定結果が×、すなわち接続不可能なS/N比であり、回線接続しない。
折返信号発生器35、測定信号発生器36、合成器37、S/N比測定部38、回線制御記憶部39から、無線回線接続制御部34が構成されている。
【0011】
次に、図1に示すシステムの動作を説明する。まず無通話時において、特定の移動局30(第1の移動局)では、使用中でない特定の無線回線を用いて、折返信号発生器35からの折返信号と測定信号発生器36からの測定信号が、合成器37で合成されて送話路40に送出され、制御部32と無線部33を経由して、複数の基地局20のうちの特定の基地局20(第1の基地局)へ送信される。
第1の移動局からの折返信号と測定信号を受信した前記第1の基地局では、該受信した折返信号と測定信号を、制御局10へ送出する。
前記第1の基地局から送出された折返信号と測定信号は、制御局10の通話路制御部12を経て、受話路13に送出される。折返信号検出部16が、折返信号を検出すると、リレー17を動作させる。リレー17が動作すると、受話路13を送話路14に接続し、これにより、前記第1の移動局から送られた測定信号は、前記第1の移動局へ向けて折り返され、制御局10から送出される。
制御局10から折り返された測定信号は、前記第1の基地局を経由し、前記第1の移動局へ送出される。前記第1の移動局では、測定信号が無線部33、制御部32を経由し、受話路41に伝達され、無線回線接続制御部34のS/N比測定部38で測定信号のS/N比を測定する。具体的には、例えば、移動局30から制御局10への折返信号送出時間が10秒間の場合、前半の5秒間は測定信号発生器36からの測定信号を送出し、後半の5秒間は測定信号を送出しないようにする(送出断)。こうすることにより、S/N比を測定することができる。
【0012】
以上のようにして、特定の移動局が在線する第1〜第nの複数の基地局、及び該各基地局との間の複数の無線回線のそれぞれに対応させて、複数の無線回線のS/N比データを、前記第1の移動局の回線制御記憶部39に記憶しておく(図2を参照)。このように、前記第1の移動局の回線制御記憶部39では、基地局毎の複数(例えば40回線)の無線回線毎に測定結果を記憶しておく。
その後、前記第1の移動局からの通話時等において、前記第1の移動局から基地局20を介して制御局10への回線接続するとき、前記第1の移動局の無線回線接続制御部34は、前記回線制御記憶部39に記憶したS/N比データに基づき、所定のS/N比以上である基地局と無線回線を選択、あるいは、複数回線の中からS/N比の値の最も大きい回線を自動的に選択して、基地局20との接続に使用する。例えば、図2の例の場合、第1の移動局は、基地局1の無線回線1〜m、基地局2の無線回線21〜、基地局nの無線回線n1〜の中から、最も回線接続順位の高い基地局1の無線回線2を選択する。また、第2〜第mの複数の移動局についても、前記第1の移動局と同様に動作するものである。
【0013】
なお、前述のS/N比データ測定は、無線回線が空いたときに行うようにすればよい。
【0014】
なお、本発明は、本発明に係る処理を実行するシステムとしてだけでなく、装置、方法として、或いは、このような装置、方法やシステムを実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして把握することができる。
また、本発明は、CPUがメモリに格納された制御プログラムを実行することにより制御する構成としてもよく、また、ハードウエア回路として構成してもよい。
【符号の説明】
【0015】
10・・制御局、11・・端末、12・・通話路制御部、13・・受話路、14・・送話路、15・・測定信号折返制御部、16・・折返信号検出部、17・・リレー、20・・基地局、30・・移動局、31・・端末、32・・制御部、33・・無線部、34・・無線回線接続制御部、35・・折返信号発生器、36・・測定信号発生器、37・・合成器、38・・S/N比測定部、39・・回線制御記憶部、40・・送話路、41・・受話路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基地局が接続された制御局と、基地局との間の複数の無線回線を使用して無線通信を行う移動局とを備えた無線通信システムであって、
移動局は、複数の無線回線から所定のS/N比以上である無線回線を選択して接続する無線回線接続制御部を備えるものであり、
該無線回線接続制御部は、当該移動局の無通話時において無線回線毎に測定信号を制御局へ送出する測定信号送出部と、制御局から返送される測定信号のS/N比を測定するS/N比測定部と、該測定したS/N比データを基地局及び該基地局の各無線回線に対応させて記憶する無線回線データ記憶部とを有し、移動局の通話時において前記無線回線データ記憶部に記憶した無線回線データに基づき、所定のS/N比以上である無線回線を選択して接続するものであり、
制御局は、移動局から送信された測定信号を受信すると、受話路と送話路を折返接続し、移動局からの測定信号を折り返す測定信号折返制御部を備えることを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−147082(P2011−147082A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8352(P2010−8352)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】