説明

無線通信システム

【課題】親局装置1から子局装置2、3へ出力対象となる情報を無線により送信する無線通信システムで、情報の伝達を効率化する。
【解決手段】親局装置は、蓄積識別情報が付加され且つ必要な場合には出力タイミング指定情報が付加され且つ出力対象となる情報を含む信号を生成して送信する。子局装置は、受信信号に基づいて、蓄積識別情報が直ちに出力することを示す場合には出力対象となる情報を出力し、また、蓄積識別情報が蓄積することを示し且つ出力タイミング指定情報が付加されていない場合には出力対象となる情報を蓄積するとともに所定の表示を行い、また、蓄積識別情報が蓄積することを示し且つ出力タイミング指定情報が付加されている場合には出力対象となる情報を蓄積するとともに指定された出力タイミングで当該蓄積した出力対象となる情報を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親局装置から子局装置へ情報を送信する無線通信システムに関し、特に、情報の伝達を効率化した無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、国内のデジタル市町村防災無線システムは、電波産業会(ARIB)により規格化された、60MHz帯周波数を使用したSTD−T86のデジタル固定系無線システムと、260MHz帯周波数を使用したSTD−T79のデジタル移動系無線システムに大別され、各自治体単位で導入や運用が為されている。
【0003】
上記した60MHz帯周波数を使用したデジタル固定系無線システムでは、親局が無線送信している情報を子局がリアルタイムで受信し、子局に接続されているスピーカや文字表示装置などに出力する運用となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−244484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したデジタル固定系無線システムでは、地域毎に使用することができる周波数は、各地域の総合通信局より基本1波に限定されており、その1波を用いて地域内に放送連絡できる件数は限られており、例えば、5分の放送内容は1時間当たり12件しか放送することができないことになる。
【0006】
また、デジタル固定系無線システムを用いて放送が多く行われる時間帯としては、午前中の8時から10時、昼の12時から13時、夕方の16時から18時が多く、逆にそれ以外の時間帯では少なく、夜間や早朝に放送することは地域住民の迷惑となってしまい緊急性の高い情報以外は放送されていない。
【0007】
よって、1日24時間のうち、放送が行われているのは概ね8時間程度であり、その8時間の間に放送したい要望が集中し、放送件数の制限がかかってしまう。
また、残りの16時間はほとんど使用されておらず、1日のシステムの稼動状況に偏りがある状況にあった。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑み為されたもので、親局装置から子局装置へ情報を送信する場合に、情報の伝達を効率化することができる無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明では、親局装置から子局装置へ出力対象となる情報を無線により送信する無線通信システムにおいて、次のような構成とした。
すなわち、前記親局装置では、信号生成手段が、出力対象となる情報を直ちに出力するか(例えば、蓄積せずに出力するか)或いは蓄積するか(例えば、蓄積した後に出力するか)を識別する情報である蓄積識別情報が付加され、且つ当該蓄積識別情報が蓄積することを示す場合には出力タイミングを指定する情報である出力タイミング指定情報が付加されるか或いは付加されない態様で、出力対象となる情報を含む信号を生成する。送信手段が、前記信号生成手段により生成された信号を前記子局装置へ無線により送信する。
前記子局装置では、受信手段が、前記親局装置から無線により送信された信号を受信する。蓄積手段が、情報を蓄積する。情報出力手段が、情報を出力する。蓄積表示手段が、前記蓄積手段により出力対象となる情報を蓄積したことを示す表示を行う。受信情報制御手段が、前記受信手段により受信された信号に基づいて、当該信号に含まれる蓄積識別情報が直ちに出力することを示す場合には、当該信号に含まれる出力対象となる情報を前記情報出力手段により(直ちに)出力し、また、当該信号に含まれる蓄積識別情報が蓄積することを示し且つ当該信号に前記出力タイミング指定情報が付加されていない場合には、当該信号に含まれる出力対象となる情報を前記蓄積手段により蓄積するとともに前記蓄積表示手段により表示を行い、また、当該信号に含まれる蓄積識別情報が蓄積することを示し且つ当該信号に前記出力タイミング指定情報が付加されている場合には、当該信号に含まれる出力対象となる情報を前記蓄積手段により蓄積するとともに当該出力タイミング指定情報により指定された出力タイミングで当該蓄積した出力対象となる情報を前記情報出力手段により出力する。
従って、親局装置から子局装置へ情報を送信する場合に、情報の伝達を効率化することができる。
【0010】
ここで、無線通信システム、親局装置、子局装置としては、それぞれ、種々なものが用いられてもよい。
また、出力対象となる情報としては、種々なものが用いられてもよく、例えば、音声の情報や、文字の情報を用いることができる。
また、蓄積識別情報としては、種々な情報が用いられてもよく、例えば、フラグの情報を用いることができる。
また、出力タイミング指定情報としては、種々な情報が用いられてもよく、例えば、年、月、日、時刻の1以上を特定する情報を用いることができ、出力タイミングが把握されればよい。
【0011】
また、蓄積手段は、例えば、情報を記憶(蓄積)するメモリなどを用いて構成することができる。
また、情報出力手段としては、種々なものが用いられてもよく、例えば、音声の情報を出力するスピーカや、文字の情報を表示(出力)する画面などを用いることができる。
また、蓄積表示手段としては、種々なものが用いられてもよく、例えば、点灯するLED(Light Emitting Diode)や、文字等を表示する画面などを用いることができる。
また、情報出力手段と蓄積表示手段とは、例えば、別個なものが用いられてもよく、或いは、共通なものが用いられてもよい。
【0012】
一構成例として、親局装置では、信号の送信先となる子局装置(例えば、個別の子局装置、或いは、複数の子局装置を含むグループ)を指定する送信先子局指定手段を備え、そして、前記信号生成手段は、前記送信先子局指定手段により指定された子局装置を送信先として識別する情報である送信先識別情報が付加された信号を生成する。
【0013】
一構成例として、親局装置では、出力対象となる情報を直ちに出力するか或いは蓄積するかを指定する蓄積指定手段を備え、そして、前記信号生成手段は、前記蓄積指定手段による指定に基づいて、前記蓄積識別情報を生成する。
一構成例として、親局装置では、出力対象となる情報について出力タイミングを指定する出力タイミング指定手段を備え、そして、前記信号生成手段は、前記出力タイミング指定手段により指定された出力タイミングを指定する情報(出力タイミング指定情報)が付加された信号を生成する。
一構成例として、親局装置では、(子局装置において)出力対象となる情報を入力する出力対象情報入力手段を備え、そして、前記信号生成手段は、前記出力対象情報入力手段により入力された出力対象となる情報を含む信号を生成する。
【0014】
一構成例として、子局装置では、送信先としての自装置(当該子局装置)の識別情報(例えば、個別の子局装置の識別情報、或いは、自装置を含むグループの識別情報の一方又は両方)を記憶するメモリ等からなる自装置識別情報記憶手段と、前記自装置識別情報記憶手段により記憶された情報及び前記受信手段により受信された信号に基づいて、当該信号に含まれる送信先識別情報が自装置を指定するか否かを判定して、自装置を指定すると判定した場合に(のみ)、当該信号の処理を続行する受信指定判定手段と、を備える。
【0015】
一構成例として、子局装置では、時刻の情報(例えば、年、月、日の1以上の情報を含んでもよい)を取得する時計等からなる時刻情報取得手段を備え、そして、前記受信情報制御手段は、前記時刻情報取得手段により取得される時刻の情報に基づいて、前記出力タイミング指定情報により指定された出力タイミングになったか否かを判定する。
【0016】
一構成例として、子局装置では、前記蓄積手段により蓄積された出力対象となる情報を前記情報出力手段により出力する指示を受け付ける情報出力指示受け付け手段を備え、そして、例えば前記蓄積表示手段により表示が行われている場合或いは他の場合に、前記受信情報制御手段は、前記情報出力指示受け付け手段により指示が受け付けられたことに応じて、前記蓄積手段により蓄積された出力対象となる情報を前記情報出力手段により出力する。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明に係る無線通信システムによると、親局装置から子局装置へ情報を送信する場合に、情報の伝達を効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例に係る無線通信システムの構成例を示す図である。
【図2】無線送受信装置(親局装置)により情報を送信するときにおける処理の手順の一例を示すフローチャートの図である。
【図3】子局装置により情報を受信するときにおける処理の手順の一例を示すフローチャートの図である。
【図4】子局装置において蓄積保存された情報を手動で出力する処理の手順の一例を示すフローチャートの図である。
【図5】子局装置において蓄積保存された情報を指定日時にタイマー出力する処理の手順の一例を示すフローチャートの図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る実施例を図面を参照して説明する。
まず、本実施例の概要を説明する。
例えば、従来のデジタル固定系無線システムでは、無線送受信装置(親局装置)から送信した音声や文字情報を屋外拡声子局装置や戸別受信装置などの子局装置でリアルタイムに受信し、その受信した情報を当該子局装置に接続されたスピーカや文字表示装置などから音声や文字表示としてリアルタイムに出力している。
【0020】
ここで、緊急性が高い情報であれば、時間帯を気にせず送信することが、一刻も早く地域住民に緊急情報を提供する上で最良の方式ではあるが、緊急性が低い情報である場合には、地域住民の生活リズムを気にしながら放送をすることとなる。また、日中であっても、夜間の仕事をしている住民などにとっては、昼間は睡眠を取っている時間帯でもあり、全地域住民の生活リズムに合わせて放送することには無理がある。
また、デジタル固定系無線システムでは、使用する時間帯と使用しない時間帯の割合(使用率)に偏りが大きく、使用率が高い時間帯においては放送数の制限により放送できない情報が出る可能性があるのに対し、使用率が低い時間帯においてはほとんど使用されない状況にある。
【0021】
このように、従来のデジタル固定系無線システムの運用では、稼働率が高い時間帯には放送したい件数を選別しなければならない時があるのに対し、稼働率が低い時間帯にはほとんど使用されていないほど、1日の時間帯によりシステムの稼動状況に偏りがあった。
【0022】
そこで、本例では、上記のような従来の問題点を解決するために、屋外拡声子局装置及び戸別受信装置などといった子局装置には、受信した音声や文字情報などのデータを蓄積保存するためのメモリを搭載し、そして、緊急性が低い情報については、これまでシステムを使用していなかった時間帯を用いて親局装置から子局装置へ送信し、子局装置側で情報の蓄積保存をしておく方式とする。
【0023】
無線送受信装置(親局装置)から送信する音声や文字情報などの送信データには、蓄積保存するか或いはしないかを示すフラグ(蓄積保存フラグ)を情報ヘッダーに持たせ、その情報(送信データ)を受信した子局装置では、まず、そのフラグの有無を確認し、蓄積保存フラグが付いている場合には、接続されているスピーカや文字表示装置からの出力をせずに、内部メモリにその情報を蓄積する。一方、蓄積保存フラグが付いていない場合には、子局装置では、受信と同時に、接続されているスピーカや文字表示装置から受信情報を出力する。
【0024】
また、本例では、伝送される情報には、保存するか或いはしないかを示すフラグ(蓄積保存フラグ)の他に、保存する場合にその情報を出力する日時の指定の有無も付けておく構成が用いられ、子局装置がその日時になったときに自動でスピーカや文字表示装置からその情報を出力する機能が設けられる。この場合に、蓄積した情報を出力する日時に、リアルタイムの防災情報の放送があったときには、本例では、リアルタイムの放送を優先的に出力し、その放送が終了した後に蓄積した情報の出力を行うことが好ましいが、他の態様が用いられてもよい。
【0025】
また、例えば、蓄積した情報の出力日時の指定がない場合には、屋外拡声子局装置や戸別受信装置などの子局装置において蓄積情報があることを示すLEDの点灯などを行う機能を付け、これにより、ユーザー(人)が子局装置等に設けられた出力ボタンの押下等の操作をしたことに応じて、蓄積されていた情報をスピーカや文字表示装置などに出力することで、地域住民に対して情報を提供するような構成とすることが可能である。
【0026】
このような構成により、本例では、例えば、稼働率が低い時間帯を用いて親局装置から送信した緊急性が低い音声情報や文字情報を、受信した子局装置の端末の中で一旦メモリに蓄積し、その後、子局装置において、その送信データで指定された日時に、子局装置に接続されたスピーカから音声を出力することや、子局装置に接続された文字表示装置に文字情報を表示することが可能であり、これにより、システムにおける通信トラフックを平滑化し且つシステムの稼働率を上げることができる。
【0027】
次に、より具体的に説明する。
図1には、本発明の一実施例に係る防災無線のデジタル固定系無線システムである無線通信システムの構成例を示してある。
本例の無線通信システムは、基地局装置となる無線送受信装置(親局装置の一例)1、屋外拡声子局装置(子局装置の一例)2、戸別受信装置(子局装置の他の一例)3を有している。
ここで、屋外拡声子局装置2は複数であるn台存在し、戸別受信装置3は複数であるm台存在する(nとmは、任意であってもよく、同じ数であってもよく或いは違う数であってもよい)。
【0028】
無線送受信装置1は、その内部に、送信アンテナ15を有する送信部11、受信アンテナ16を有する受信部12を備えており、その外部の機器として、操作部13、マイク14が(本例では、直列に)接続されて備えられている。本例では、これらにより、親局設備が構成されている。
屋外拡声子局装置2は、その内部に、受信アンテナ27を有する受信部21、メモリ22、増幅部23、制御部24を備えており、その外部の機器として、スピーカ25、文字表示装置26が(本例では、別々に)接続されて備えられている。
戸別受信装置3は、その内部に、受信アンテナ37を有する受信部31、メモリ32、増幅部33、制御部34を備えており、その外部の機器として、スピーカ35、文字表示装置36が(本例では、別々に)接続されて備えられている。
【0029】
無線送受信装置(親局装置)1から子局装置(本例では、屋外拡声子局装置2や戸別受信装置3)への情報(例えば、報知対象となる情報)の伝達について説明する。
本例では、このような情報の伝達に使用するデータには、そのデータの情報を子局装置において蓄積保存するか或いはしないかを示すフラグ(蓄積保存フラグ)が設けられ、また、蓄積保存する場合にそのデータの情報を出力する日時の指定の有無を示す情報及び日時の指定があるときにはその日時の情報(これらがまとめられて、日時の情報が有る状態と無い状態でもよい)が設定される。このような蓄積保存フラグや日時の指定に関する情報は、例えば、無線送受信装置1やより上位の装置などにおいて、オペレーター(人)による操作部13等の操作により或いは装置により自動的に、設定される。
【0030】
また、屋外拡声子局装置2や戸別受信装置3といった子局装置のそれぞれには、例えば予め個別の番号やグループの番号を登録しておき、自装置の個別の番号やグループの番号を特定する情報が各子局装置のメモリに設定される。
上記のような親局装置から子局装置への情報の伝達に使用するデータには、呼び出しの対象となる子局装置の個別の番号やグループの番号が設定される。そして、無線送受信装置(親局装置)からの呼び出し時には、送信データに含まれる個別の番号又はグループの番号で子局装置が呼び出され、その番号に該当する子局装置のみがその送信データを受信するような構成(例えば、ソフトウェア)となっている。
【0031】
本例の固定系無線システムを用いて放送する方法の一例を示す。
無線送受信装置1では、オペレーター(人)が操作部13を操作することで、送信したい子局装置(個別若しくはグループ)を選択して、無線送受信装置1を送信状態にし、オペレーターがマイク14で話した音声やオペレーターが操作部13を操作して入力した文字情報を、無線送受信装置1により、送信指定(選択)した子局装置に対して無線により送信する。
【0032】
ここで、無線送受信装置1では、送信部11により送信アンテナ15を用いて子局装置に対してデータ(信号)を無線送信し、また、他の装置から無線送信されたデータ(信号)を受信部12により受信アンテナ16を用いて受信することができる。
【0033】
屋外拡声子局装置2と個別受信装置3の動作は同様であるため、まとめて子局装置2、3として説明する。
子局装置2、3では、無線送受信装置1から無線送信されたデータを、受信部21、31により受信アンテナ27、37を用いて受信する。また、子局装置2、3では、受信したデータに含まれる音声などを出力等するときに増幅部23、33により増幅することができる。
また、子局装置2、3では、制御部24、34により、各種の判定(判断)などの処理や制御を行う。
【0034】
子局装置2、3では、無線送受信装置1から受信した無線データの情報が自局宛てであるか否かを、制御部24、34により、個別若しくはグループの番号に基づいて判定し、自局宛ての情報であると判定した場合には、データ受信状態となり、自局宛ての情報ではないと判定した場合には、その受信情報を無視する(例えば、破棄する)。
【0035】
データ受信状態となった子局装置2、3では、まず、受信データの情報の中で蓄積保存するかしないかを示すフラグ(蓄積保存フラグ)の情報を制御部24、34により読み、「蓄積保存しない」旨が示されていると判定した場合には、そのまま受信情報を出力することとし、具体的には、音声の受信情報についてはその音声をスピーカ25、35へリアルタイムに出力し、文字情報の受信情報についてはその文字情報を文字表示装置26、36へリアルタイムに出力する。スピーカ25、35では入力された音声が出力され、文字表示装置26、36では入力された文字情報が画面(或いは、情報表示のためのLEDなど)により表示出力される。
【0036】
一方、データ受信状態となった子局装置2、3において、受信データに含まれる蓄積保存フラグの情報を制御部24、34により読み、「蓄積保存する」旨が示されていると判定した場合には、そのときには受信情報をスピーカ25、35や文字表示装置26、36へ出力せずに、受信情報を内部のメモリ22、32に蓄積(保存)処理する。
【0037】
この場合、子局装置2、3では、制御部24、34により、メモリ22、32に蓄積された情報の中に、出力すべき指定の日時の情報が設定されているか否かを判定し、日時の情報が設定されていると判定した場合には、当該子局装置2、3で自ら持っている時刻情報の取得機能(例えば、内部又は外部の時計により計時される時刻の情報)に基づいてその指定の日時になったと判定した時に、メモリ22、32に蓄積された情報を出力し、具体的には、音声の情報についてはその音声をスピーカ25、35へ出力し、文字情報についてはその文字情報を文字表示装置26、36へ出力する。
【0038】
一方、子局装置2、3では、制御部24、34により、メモリ22、32に蓄積された情報の中に、出力すべき指定の日時の情報が設定されていないと判定した場合には、当該子局装置2、3において情報が蓄積されている旨を示すLED(例えば、このための専用のLED)を点灯させる。このLEDや所定の操作部(本例では、確認ボタン)が子局装置2、3の内部又は外部に設けられている。LEDの点灯を見たユーザーは、子局装置2、3のメモリ22、32に蓄積された情報を確認するときには、子局装置2、3に装備された確認ボタンを押下し、これに応じて、子局装置2、3では、制御部24、34による制御により、メモリ22、32に蓄積された情報を出力する。
【0039】
図2には、無線送受信装置(親局装置)1により情報を送信するときにおける処理の手順の一例を示してある。
無線送受信装置1では、放送が開始されると(ステップS1)、送信したい相手局(子局装置2、3)の個別の番号若しくはグループの番号を設定し(ステップS2)、その送信する情報は「子局装置側で、蓄積せずに、すぐに音声出力若しくは文字表示するもの」であるか或いは「子局装置側で、蓄積し、後で音声出力若しくは文字表示するもの」であるかを選択的に設定する(ステップS3)。
【0040】
このとき、送信する情報を子局装置2、3に蓄積させる場合には、無線送受信装置1では、送信データ中の蓄積保存フラグをオン(ON)に設定し(ステップS4)、併せて、音声出力や文字表示させる日時を「指定する」か或いは「指定しない」かを設定し、「指定する」場合にはその日時の情報を設定し(ステップS5)、ステップS7の処理へ移行する。
一方、送信する情報を子局装置2、3に蓄積させない場合には、無線送受信装置1では、送信データ中の蓄積保存フラグをオフ(OFF)に設定し(ステップS6)、ステップS7の処理へ移行する。
【0041】
ステップS7の処理では、無線送受信装置1において、前記した設定の終了後に送信起動をかけ(ステップS7)、音声であればマイク14からその内容を話したものを入力し、また、文字情報であれば操作部13で文字のメッセージ情報を入力し、そして、入力した情報(音声や文字情報)を無線により送信する(ステップS8)。
無線送受信装置1では、無線送信後に無線回線を切り、送信処理を終了し(ステップS9)、本処理が終了となる(ステップS10)。
【0042】
図3には、子局装置2、3により情報を受信するときにおける処理の手順の一例を示してある。
全ての子局装置2、3では、放送が開始されて(ステップS21)、無線送受信装置1からの無線データが受信されると(ステップS22)、受信データの情報が自局向けの情報であるのか或いはそうでないのかを確認する(ステップS23)。ここで、受信データの情報が自局向けではない情報であると判定(確認)した場合には、子局装置2、3では、その情報をそのまま無視して、本処理は終了となる(ステップS32)。
【0043】
一方、受信データの情報が自局向けの情報であると判定(確認)した場合には、子局装置2、3では、受信データに含まれる蓄積保存フラグがオンであるか或いはオフであるかを確認し、つまり、その情報が、蓄積して後から出力する情報であるのか或いは蓄積しないですぐに音声出力や文字表示させる情報であるのかを確認する(ステップS24)。
【0044】
ここで、受信データに含まれる蓄積保存フラグがオフである(つまり、蓄積しないですぐに出力する情報である)ことを判定(確認)した場合には、子局装置2、3では、その受信情報が文字情報であるか否か(文字情報であるか或いは音声であるか)を判定し(ステップS29)、その受信情報が文字情報であると判定したときにはその文字情報を文字表示装置26、36に表示し(ステップS30)、その受信情報が音声情報であると判定したときにはその音声をスピーカ25、35から音声出力する(ステップS31)。そして、本処理は終了となる(ステップS32)。
【0045】
一方、受信データに含まれる蓄積保存フラグがオンである(つまり、蓄積して後から出力する情報である)ことを判定(確認)した場合には、子局装置2、3では、出力すべき日時の指定があるか否かを判定(確認)し(ステップS25)、日時の指定があると判定したときには、その時刻(その日時)に出力するようにタイマーを設定(セット)して(ステップS26)、受信データの情報を内部のメモリ22、32に蓄積し(ステップS27)、本処理は終了される(ステップS32)。
【0046】
また、受信データに含まれる蓄積保存フラグがオンである(つまり、蓄積して後から出力する情報である)ことを判定(確認)し、出力すべき日時の指定がないと判定したときには、子局装置2、3では、受信データの情報を内部のメモリ22、32に蓄積し(ステップS27)、蓄積情報があることを示すLEDを点灯表示させ(ステップS28)、本処理は終了される(ステップS32)。
【0047】
図4には、子局装置2、3において蓄積保存された情報を手動で出力する処理の手順の一例を示してある。
まず、子局装置2、3では、上述のように、動作開始の後に(ステップS41)、受信があり(ステップS42)、情報を蓄積し、情報の蓄積があることをユーザーに知らせるためのLEDが点灯しているとする(ステップS43)。
ユーザーは、蓄積情報がある時にその内容を確認する場合には(ステップS44)、確認ボタンを押下する(ステップS45)。
【0048】
確認ボタンが押下されると、子局装置2、3では、蓄積情報が文字情報であるか否か(文字情報であるか或いは音声であるか)を判定(判別)し(ステップS46)、蓄積情報が文字情報であると判定したときにはその文字情報を文字表示装置26、36に表示し(ステップS47)、蓄積情報が音声情報であると判定したときにはその音声をスピーカ25、35から音声出力する(ステップS48)。
【0049】
文字情報或いは音声情報の出力の後に、子局装置2、3では、まだ出力されていない蓄積情報(未読情報)があるか否かを判定し(ステップS49)、未読情報があると判定した場合には、それを出力する処理へ移行して(ステップS46の処理へ移行して)、引き続き次の情報が文字情報であるか或いは音声情報であるかを判定して出力する処理を繰り返して実行し(ステップS46〜ステップS48)、一方、未読情報がないと判定した場合(つまり、全ての蓄積情報を出力した後)には、情報の蓄積があることをユーザーに知らせるためのLEDを消灯させ(ステップS50)、本処理は終了される(ステップS51)。
【0050】
図5には、子局装置2、3において蓄積保存された情報を指定日時にタイマー出力する処理の手順の一例を示してある。
まず、子局装置2、3では、上述のように、動作開始の後に(ステップS61)、出力の日時が指定された情報が受信されて蓄積され(ステップS62)、出力のためのタイマーがセットされたとする(ステップS63)。ここで、子局装置2、3では、日時を指定する情報を蓄積すると、その日時になったら出力するようにタイマーのセットを行う。
【0051】
各子局装置2、3では、内部(他の例として、外部でもよい)に時計を持っており、例えば常に、その時計の日時を確認し(ステップS64)、その時計の日時と指定された日時の情報とを照らし合わせて(ステップS65)、指定の日時になったときに該当する蓄積情報を出力する。具体的な情報の出力としては、子局装置2、3では、蓄積情報を読み込んで(ステップS66)、蓄積情報が文字情報であるか否か(文字情報であるか或いは音声であるか)を判定(判別)し(ステップS67)、蓄積情報が文字情報であると判定したときにはその文字情報を文字表示装置26、36に表示し(ステップS68)、蓄積情報が音声情報であると判定したときにはその音声をスピーカ25、35から音声出力する(ステップS69)。そして、本処理は終了される(ステップS70)。
【0052】
このようなシステムを用いることにより、例えば、今すぐ放送しなくても構わない緊急性が低い情報についてはこれまであまりシステムを使用していなかった時間帯を用いて情報送信し、そして、その情報を受信した子局装置の側で蓄積保存して、任意の時間や送信時に出力指定(設定)された時間に出力することができる。
また、これにより、これまで使用頻度が高かった時間帯のトラフィックを平滑化することができ、1日を通した全体のシステム稼働の偏りを現在より平滑化し且つ稼働率を上げることが可能である。
【0053】
以上のように、本例では、市町村で配備する防災用の無線送受信装置(親局装置)1と複数の無線装置(子局装置2、3)とが無線により通信する防災行政の固定系無線システムなどの無線通信システムにおいて、親局装置から送信した音声や文字のデータを子局装置2、3の端末の中で一旦メモリに蓄積し、その送信データ内で指定された日時などに、子局装置2、3に接続されたスピーカ25、35から音声を出力することや、子局装置2、3に接続された文字表示装置26、36に文字情報を表示することが行われる。
【0054】
具体例として、親局装置では、報知対象となる情報(報知情報)のデータを子局装置2、3へ送信する際に、報知情報を直ちに報知するか或いは蓄積するかを示すフラグ(蓄積保存フラグ)を送信データに付加するとともに、当該フラグを蓄積することを示すように設定した場合には指定の報知日時を付加し得るように構成されている。子局装置2、3では、親局装置から受信した報知情報のデータの蓄積保存フラグが直ちに報知することを示している場合にはその情報を直ちに報知し、一方、当該蓄積保存フラグが蓄積することを示している場合には報知日時が付加されているか否かを確認し、報知日時が付加されていなければ報知情報を受信及び蓄積したことを示す表示(例えば、LEDの点灯)を行い、また、報知日時が付加されていれば当該報知日時に蓄積した報知情報を報知する。
【0055】
従って、本例の無線通信システムでは、例えば、無線送受信装置(親局装置)1から送信する情報を、普段あまり使われていない時間帯を用いて送信することで、機器の使用時間帯を平滑化させることができるとともに、受信側の屋外拡声子局装置2や戸別受信装置3等の子局装置で、受信した情報を蓄積しておき、指定された時間に子局装置2、3に接続されているスピーカ25、35や文字表示装置26、36から情報出力することや、或いは、ユーザー(例えば、地域住民など)によるボタンの操作により任意の時間に情報を出力して確認させることが可能である。
【0056】
本例のような無線通信システムを用いることにより、例えば、今までほとんど使われていなかった時間帯に緊急性が少ない情報を親局装置から子局装置2、3へ送信し、子局装置2、3においてその情報を蓄積しておき、指定された日時や地域住民などの任意の選択時に子局装置2、3のスピーカ25、35や文字表示装置26、36から蓄積した情報を出力することができ、これにより、これまで防災無線のあまり使っていない時間帯の稼働率を上げ、導入したシステムを有効に使うことができる。
【0057】
なお、本例の無線送受信装置(親局装置)1では、蓄積識別情報(本例では、蓄積保存フラグの情報)が付加され且つ必要なときには出力タイミング指定情報(本例では、指定の出力日時の情報)が付加され且つ出力対象となる情報(本例では、音声や文字情報)を含む送信信号を生成する機能(本例では、図示しない制御部等の機能)により信号生成手段が構成されており、送信信号を無線送信する送信部11や送信アンテナ15の機能により送信手段が構成されている。また、本例の無線送受信装置(親局装置)1では、オペレーター等により送信先の子局装置2、3を指定する機能により送信先子局指定手段が構成されており、オペレーター等により蓄積識別情報の内容(蓄積するか否か)を指定する機能により蓄積指定手段が構成されており、オペレーター等により出力タイミングを指定する機能により出力タイミング指定手段が構成されており、オペレーター等により出力対象となる情報をマイク14や操作部13により入力する機能により出力対象情報入力手段が構成されている。
【0058】
また、本例の屋外拡声子局装置2や戸別受信装置3といった子局装置2、3では、受信部21、31や受信アンテナ27、37の機能により受信手段が構成されており、メモリ22、32の機能により蓄積手段が構成されており、スピーカ25、35や文字表示装置26、36の機能により情報出力手段が構成されており、LEDの機能により蓄積表示手段が構成されており、制御部24、34の機能により受信情報制御手段が構成されている。また、本例の子局装置2、3では、自装置の個別やグループの識別情報をメモリ(例えば、メモリ22、32でもよい)に記憶する機能により自装置識別情報記憶手段が構成されており、受信信号が自局宛てであるか否かを制御部24、34により判定する機能により受信指定判定手段が構成されており、時計(例えば、制御部24、34等に設けられる)の機能により時刻情報取得手段が構成されており、ユーザーが確認ボタンを押下することにより蓄積情報を出力する指示を受け付ける機能(例えば、図示しない操作部(確認ボタン)や、制御部24、34等の機能)により情報出力指示受け付け手段が構成されている。
【0059】
ここで、本発明に係るシステムや装置などの構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法或いは方式や、このような方法や方式を実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして提供することも可能であり、また、種々なシステムや装置として提供することも可能である。
また、本発明の適用分野としては、必ずしも以上に示したものに限られず、本発明は、種々な分野に適用することが可能なものである。
また、本発明に係るシステムや装置などにおいて行われる各種の処理としては、例えばプロセッサやメモリ等を備えたハードウェア資源においてプロセッサがROM(Read Only Memory)に格納された制御プログラムを実行することにより制御される構成が用いられてもよく、また、例えば当該処理を実行するための各機能手段が独立したハードウェア回路として構成されてもよい。
また、本発明は上記の制御プログラムを格納したフロッピー(登録商標)ディスクやCD(Compact Disc)−ROM等のコンピュータにより読み取り可能な記録媒体や当該プログラム(自体)として把握することもでき、当該制御プログラムを当該記録媒体からコンピュータに入力してプロセッサに実行させることにより、本発明に係る処理を遂行させることができる。
【符号の説明】
【0060】
1・・無線送受信装置、 2・・屋外拡声子局装置、 3・・戸別受信装置、 11・・送信部、 12、21、31・・受信部、 13・・操作部、 14・・マイク、 15・・送信アンテナ、 16、27、37・・受信アンテナ、 22、32・・メモリ、 23、33・・増幅部、 24、34・・制御部、 25、35・・スピーカ、 26、36・・文字表示装置、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親局装置から子局装置へ出力対象となる情報を無線により送信する無線通信システムにおいて、
前記親局装置は、出力対象となる情報を直ちに出力するか或いは蓄積するかを識別する情報である蓄積識別情報が付加され、且つ当該蓄積識別情報が蓄積することを示す場合には出力タイミングを指定する情報である出力タイミング指定情報が付加されるか或いは付加されない態様で、出力対象となる情報を含む信号を生成する信号生成手段と、
前記信号生成手段により生成された信号を前記子局装置へ無線により送信する送信手段と、を備え、
前記子局装置は、前記親局装置から無線により送信された信号を受信する受信手段と、
情報を蓄積する蓄積手段と、
情報を出力する情報出力手段と、
前記蓄積手段により出力対象となる情報を蓄積したことを示す表示を行う蓄積表示手段と、
前記受信手段により受信された信号に基づいて、当該信号に含まれる蓄積識別情報が直ちに出力することを示す場合には、当該信号に含まれる出力対象となる情報を前記情報出力手段により出力し、また、当該信号に含まれる蓄積識別情報が蓄積することを示し且つ当該信号に前記出力タイミング指定情報が付加されていない場合には、当該信号に含まれる出力対象となる情報を前記蓄積手段により蓄積するとともに前記蓄積表示手段により表示を行い、また、当該信号に含まれる蓄積識別情報が蓄積することを示し且つ当該信号に前記出力タイミング指定情報が付加されている場合には、当該信号に含まれる出力対象となる情報を前記蓄積手段により蓄積するとともに当該出力タイミング指定情報により指定された出力タイミングで当該蓄積した出力対象となる情報を前記情報出力手段により出力する受信情報制御手段と、を備えた、
ことを特徴とする無線通信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate