説明

無線通信方法、無線通信システム及び無線基地局装置

【課題】無線基地局装置が、無線端末装置から下り通信品質を受信し、下り通信品質に基づいて前記無線端末装置に対してデータを送信する無線通信方法を提供する。
【解決手段】無線基地局装置は、所定時間後の下り通信品質を予測するための予測用パイロットを生成し、前記所定時間後のデータの送信に先行して前記予測用パイロットを前記無線端末装置に送信し、前記無線端末装置が前記データを処理するための検波用パイロットを生成し、前記所定時間後に前記検波用パイロットを前記無線端末装置に送信し、前記予測用パイロットの指向性利得と前記検波用パイロットの指向性利得とが同一である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートアンテナ技術を搭載した基地局装置において、下り通信品質のフィードバックに基づく適応変調通信によって周波数利用効率を高める技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や無線LANなどの無線通信システムの基地局やアクセスポイント(以下、無線基地局装置と総称する)に対し、アレイアンテナを用いたスマートアンテナ技術が実用化されている。スマートアンテナ技術の動作原理は、例えば、B. Widrow, et al., "Adaptive Antenna Systems", Proc. IEEE, vol. 55, No. 12, pp. 2143-2159, Dec. 1967に開示されている。スマートアンテナ技術によって、複数の端末が同一の時間及び周波数を共有し、空間多重通信する無線基地局装置は、例えば、特許第3167682号公報に開示されている。
【0003】
また、無線通信システムにおけるデータ通信への要求が高まっており、IMT−2000のパケット伝送方式として、下りのピーク伝送速度の高速化、高スループット化等を目的としたcdma2000 EV-DO(Evolution Data Only)方式が標準化されている(例えば、3GPP2 C.S0024-A "cdma2000 High Rate Packet Data Air Interface Specification",13−42から13−78ページ,2004年3月31日)。この高速パケット通信システムでは、限られた周波数及び時間を効率よく利用するためにパケットスケジューリングが行われる。
【0004】
EV−DO方式におけるパケットスケジューリングでは、無線基地局装置が1.67ミリ秒のタイムスロット毎に、下りデータの送信宛先となる無線端末装置を選択する技術である。無線端末装置の選択は、優先度の高いデータを持つ無線通信装置や、下り通信品質が高い無線通信装置が優先される。ここで下りとは、無線基地局装置が送信し、無線端末装置が受信する無線通信の方向を指す。A. Jalali et al, "Data Throughput of CDMA-HDR a High Efficiency-High Data Rate Personal Communication Wireless System", IEEE 51st VTC2000-Spring, Volume.3, pp.1854-1858, May 2000.では、EV−DO方式にProportional Fairnessと呼ばれるパケットスケジューリング方式を適用することによって、セルの周波数利用効率が向上することが報告されている。
【0005】
パケットスケジューリングとして代表的なものに、(1)Maximum CIR方式、(2)Round Robin方式、及び(3)Proportional Fairness方式の3種類がある。(1)のMaximum CIR方式では、下り通信品質の良い無線端末装置ほど優先して送信機会が割り当てられる。無線基地局装置近傍の無線端末装置との通信機会が増え、遠方の無線端末装置との通信機会が減少するため、無線端末装置間でのサービス格差が大きくなるスケジューリング方式である。(2)のRound Robin方式では、全ての無線端末装置に対し均等に通信機会が割り当てられる。Round Robin方式では、Maximum CIR方式に対し、遠方の無線端末装置との通信機会が増える分、無線基地局装置のスループットは低下する。(3)のProportional Fairness方式は、瞬時下り通信品質/平均下り通信品質を評価値として使用し、評価値の大きい無線端末装置ほど優先して送信機会が割り当てられる。このため、Proportional Fairness方式では、通信機会は均等で、かつRound Robin方式より周波数利用効率に優れている。ただし、無線基地局装置が無線端末装置毎の瞬時下り通信品質を正しく知ることが必要である。
【0006】
EV−DO方式では、無線端末装置が受信パイロット信号から下り通信品質(SINR : Signal to Interference plus Noise Ratio)を推定し、SINRにおいて1%以下のパケット誤りで通信できる変調方式と符号化率(MCS : Modulation and Coding Scheme)を、テーブルを参照して指定し、その変調方式と符号化率に対応するインデックス(DRC:Data Rate Control)を無線基地局装置にフィードバックする。この仕組みによって、無線基地局装置が無線端末装置毎の瞬時下り通信品質を知ることができる。
【0007】
この動作は、フィードバックされたDRCに応じたMCSを選択する適応変調となるため、無線端末装置が下り通信品質が正しく推定できれば、通信容量の限界に迫る高効率な無線通信が可能となる。ただし、パケットスケジューリングは瞬時下り通信品質のフィードバック後に実行されるため、フェージングなどの時間変化要因によって、SINR推定時とパケットスケジューリング完了後のSINRとの間に誤差が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3167682号公報
【特許文献2】特開2004−165834号公報
【特許文献3】特開2003−304577号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】B.Widrow,et al.:“Adaptive Antenna Systems”,Proc.IEEE,vol.55,No.12,pp.2143−2159,Dec.1967
【非特許文献2】3GPP2 C.S0024−A”cdma2000 High Rate Packet Data Air Interface Specification”,13−42から13−78ページ,2004年3月31日
【非特許文献3】A.Jalali et al,”Data Throughput of CDMA−HDR a High Efficiency−High Data Rate Personal Communication Wireless System”,IEEE 51st VTC2000−Spring,volume.3,pp.1854−1858,May 2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明では、スマートアンテナ技術を搭載した無線基地局装置(以下、スマートアンテナ基地局と呼ぶ)で構成される無線通信ネットワークで、下り通信品質情報(CQI:Channel Quality Information)の正確なフィードバックに基づくパケットスケジューリングを実行する無線基地局装置及び無線端末装置を提供する。
【0011】
無線基地局装置が無線端末装置からフィードバックされるCQIに従って適応変調をする場合、CQIの誤差によってセルの周波数利用効率が低下する。例えば、無線端末装置が下り通信品質を実際より高めに推定すると、無線基地局装置は高度な変調方式や高い符号化率を採用するが、パケットエラーの発生頻度が増加するため周波数利用効率は低下する。逆に、無線端末装置が下り通信品質を実際より低めに推定すると、無線基地局装置は簡易な変調方式や低い符号化率を採用し、パケットエラーの発生頻度は低下する。しかし、無線基地局装置と無線端末装置は、効率の高い通信が可能な状態で効率の低い通信をするため、結果として周波数利用効率は低下する。このような周波数利用効率の低下を防ぐため、無線端末装置における正確なCQI推定は重要な課題である。
【0012】
スマートアンテナ基地局では、セクタアンテナを備える無線基地局装置と比較してCQI誤差が発生しやすい。このことを以下で説明する。
【0013】
図1は、EV−DO方式における無線基地局装置−無線端末装置間のシーケンス図を示す。ただし、説明を簡易にするためラウンドトリップ遅延を無視している。まず、無線基地局装置(Base Station)は、スロットN−1の先頭で無線端末装置(Mobile Station)に対し、データとパイロットを送信する。データは特定の無線端末装置に向けて送信される。その送信先は、1スロット前に実行されるパケットスケジューラで決定している。パイロットは、無線端末装置において、受信信号の検波用と受信SINR推定用との両方に使用される。パイロットを受信した無線端末装置は、ステップS101においてSINRを測定して適切なMCSを選択し、MCSに相当するインデックス(DRC)を無線基地局装置にフィードバックする。
【0014】
ここで、無線基地局装置にフィードバックされる情報を一般的にCQIと呼ぶ。EV−DOではDRCがCQIに相当するが、本質的にはパケットスケジューラによる無線端末装置の選択基準となる瞬時下り通信品質を表していればほかの制御信号でもよく、例えば無線端末装置が推定したSINRそのものでもよい。
【0015】
CQIのフィードバックを受けた無線基地局装置は、ステップS102でパケットスケジューリングをし、スロットNでデータの送信先とする無線端末装置を選択する。以上の動作をスロット毎に繰り返す。
【0016】
スマートアンテナ基地局では、最大強度のビーム及びヌルを向ける方向の制御によって空間多重通信ができることから、パケットスケジューラでスロット毎に複数の無線端末装置を同時にデータ送信先とする。選択された複数の無線端末装置の組み合わせによって指向性ビームの形状は変化するため、無線基地局装置から出力される指向性ビームの形状はスロット毎に変化すると考えられる。これがセクタアンテナ基地局との決定的な違いである。
【0017】
したがって、スロットNで送信されるパイロット及びデータの指向性ビームは、スロットN−1で送信されるものと異なるため、スロットN−1のパイロットで推定したSINRは、スロットNにおいては正確でない。このSINR推定誤差による周波数利用効率低下の防止が本願発明の課題である。
【0018】
特開2004−165834号公報において本課題は限定的に解決されている。特開2004−165834号公報では、無線基地局装置がパイロットを指向性ビームにより送信し、無線端末装置が受信パイロットから下り通信品質を判定して無線基地局装置にフィードバックし、無線基地局装置が当該無線端末装置に対して、同一指向性ビームパタンを維持してデータを適応変調しながら送信する技術が開示されている。
【0019】
しかし、この技術では、無線基地局装置間で指向性ビームパタンの切替タイミングが同期することを保障していない。つまり、SINR推定時とパケットスケジューリング完了時で、無線端末装置が通信している無線基地局装置(以下、所望基地局と呼ぶ)を除いた無線基地局装置(以下、干渉基地局と呼ぶ)が出力する指向性ビームの形状が同じとは限らないため、セル間干渉電力を正しく推定できない。この問題による影響は、下り受信品質に占めるセル間干渉の支配率が高いセルエッジにおいて顕著に現れ、セルエッジに存在する無線端末装置の周波数利用効率低下を引き起こす。
【0020】
特開2003−304577号公報において、本課題はスイッチドビームを前提として解決されている。特開2003−304577号公報では、無線基地局装置によって提供される全指向性ビームを用いてパイロットを同時に送信し、無線端末装置は所望基地局、干渉基地局を問わず各受信パイロットの受信電力を推定して所望基地局にフィードバックし、所望基地局は干渉基地局からデータ送信に使用するビーム番号の通知を受け、無線端末装置からのフィードバック情報と照らし合わせて無線端末装置におけるSINRを予測する技術が開示されている。
【0021】
この技術はスイッチドビームを前提としているため、無線基地局装置によって提供される指向性ビームのうち、データが送信されない指向性ビームが存在する。スケジューリング完了時点でどの指向性ビームでデータ送信されるかがSINR推定時に不確定であることからSINR推定誤差が発生する。しかし、この技術は、SINR推定誤差による不確定性を除くために、無線基地局装置はパイロット個別の受信電力フィードバック、及び干渉基地局からのビーム番号の通知を受けることによって課題を解決している。ただし、これらの不確定性を除くための処理が、無線端末装置及び無線基地局装置に負荷を与える。また、パイロットと同時に送信する時とデータ送信時の指向性ビーム形状が異なると適用できない。
【0022】
以上を考慮して、本発明によって解決しようとする課題をまとめる。
【0023】
スマートアンテナ基地局で構成される無線通信ネットワークにおいて、無線端末装置でのSINR推定時点でスケジューリング後における全基地局装置の送信指向性ビームを事前に確定させる前記不確定性の除去と、前記SINR推定時点で前記送信指向性ビームによって全無線基地局がパイロットを同時に送信し、セル間干渉も含めたスケジューリング後の正確なSINR推定を実施する無線基地局装置及び無線端末装置を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0024】
無線端末装置でのSINR推定時点でスケジューリング後における干渉電力が不確定となる問題は、無線基地局装置間で統一された時間後の空間信号処理後の下り通信品質を予測するための予測用パイロットを先行して送信する無線基地局装置と、前記予測用パイロットを受信して下り通信品質を測定し、上り回線を介して前記無線基地局装置に該下り通信品質を報告する無線端末装置とを備え前記予測用パイロットは前記無線基地局装置間で同一時間及び周波数で送信され、前記統一された時間後のデータ送信に用いられる指向性ビームと同じ指向性ビームで送信されることによって解決される。
【0025】
図2Bに、スロットN+M時点における無線基地局装置の出力を示す。
【0026】
2001−1、2001−2は、それぞれ隣り合う無線基地局装置によってカバーされるセルを示す。指向性ビーム2002では検波用パイロットとデータが、指向性ビーム2003では予測用パイロットを出力している。指向性ビーム2002においてデータは適応変調されているが、そのメリットを活かすためにはスロットN+M時点の指向性ビーム出力を考慮して、下り通信品質を正しく推定する必要がある。ただし、異なる指向性ビーム出力を用いて推定すると、因果律を満たせず正しい推定ができない。
【0027】
よって、図2Aに示すように、因果律を満たすために、スロットNの時点で、スロットM+Nの指向性ビーム出力を確定させ、当該ビーム2002において予測パイロットを出力して、無線端末装置が下り通信品質を推定して無線基地局装置にフィードバックする。これによって、スロットNの時点でスロットM+Nの伝搬路品質を予測できるため、課題は解決する。ただし、通信品質の予測精度を上げるため、図2Bにおける指向性ビーム2002の信号と指向性ビーム2003の信号が、互いに干渉しないようスロット内で多重化(例えば、時間多重、周波数多重)することが望ましい。
【0028】
さらに、セル間干渉も含めたスケジューリング後の正確なSINR推定の問題も、同一の無線通信システムによって解決する。各無線基地局装置が互いに同期して、スロットM+N時点のデータ送信用指向性ビームに合わせた指向性ビームでスロットMの予測用パイロットを送信することによって、スロットM+N時点におけるセル間干渉も考慮した予測が可能となるからである。
【0029】
また、無線基地局装置間の伝搬時間差によってセル間干渉が適切に評価できない問題は、次のように解決される。
【0030】
図3Aに、無線基地局装置11、12から無線端末装置13に予測用パイロットを送信する概念図を示す。それぞれの伝搬時間をT1、T2とする。これらの予測用パイロットを無線基地局装置間で時刻T0に同時に送信した場合の、端末装置における受信タイミングを図3Bに示す。
【0031】
図3Aに示す伝搬時間を考慮すると、各予測用パイロットの受信時間はT0+T1、T0+T2となる。この受信タイミングの違い(T2−T1)に対して予測用パイロットが短い場合、無線基地局装置間の予測用パイロットが重ならないため、予測用パイロットによりセル間干渉を正しく推定できない。この問題は、無線基地局装置間を同期させ、かつ予測用パイロットの長さを干渉する可能性のある無線基地局装置間に発生し得る伝搬遅延時間差に対して十分に長くとることで解決する。
【0032】
例として、図3Cに周波数方向に拡張したスロットにおけるパイロット配置の一例を示す。予測用パイロットPP103は、前述したように、セル間の受信タイミングのずれを吸収する必要があるため、その必要がない検波用パイロットDP101と比較して時間軸方向において長い時間が割り当てられる。ここでは、予測用パイロットと検波用パイロットは周波数多重されている。データ信号は、検波用パイロットと同じ周波数のスロットの残りの部分で送信される。
【発明の効果】
【0033】
本発明によると、セル間干渉も含めた下り通信品質が正しく推定されるため、下り通信の適応変調が精度よく動作し、周波数利用効率が向上する。特に、セル間干渉電力が正しく推定できるようになるため、セルエッジに存在する無線端末装置の周波数利用効率が向上する。
【0034】
さらに本発明によると、スマートアンテナ技術によって生成されるどのような指向性ビームパタンに対しても下り通信品質を正しく推定できる。よって、スマートアンテナ技術による空間多重によるメリットと、正しい通信品質推定に基づく高精度な適応変調のメリットを最大限に活かせるため、互いの相乗効果により周波数利用効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】EV−DO方式における無線基地局装置−無線端末装置間の処理シーケンス図である。
【図2A】指向性ビーム制御の概念図である。
【図2B】指向性ビーム制御の概念図である。
【図3A】基地局間同期及び予測用パイロットを長めにする必要性を示す図である。
【図3B】基地局間同期及び予測用パイロットを長めにする必要性を示す図である。
【図3C】基地局間同期及び予測用パイロットを長めにする必要性を示す図である。
【図4】本発明の実施例の無線基地局装置のブロック図である。
【図5】本発明の実施例のスロットフォーマットの説明図である。
【図6A】本発明の実施例の指向性ビームの時系列上の制御の説明図である。
【図6B】本発明の実施例の指向性ビームの時系列上の制御の説明図である。
【図7A】本発明の実施例の各種バッファへ格納されるデータの説明図である。
【図7B】本発明の実施例の各種バッファへ格納されるデータの説明図である。
【図7C】本発明の実施例の各種バッファへ格納されるデータの説明図である。
【図8】第1の実施例の指向性ビームを決定する構成のブロック図である。
【図9】第2の実施例の指向性ビームを決定する構成のブロック図の変形例である。
【図10】本発明の実施の形態の無線端末装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図4に、本発明の実施例の無線基地局装置の構成を示すブロック図である。
【0037】
無線端末装置への送信待ちデータが格納されているキューバッファ(Queue Buffer)1001aと、無線端末装置から送信される下りチャネル情報(CQI)に関するフィードバック情報が記録されるフィードバック情報バッファ(Feedback Buffer)1001bと、無線基地局装置から見た無線端末装置の方位が記録されている端末方位バッファ(DOA(direction of arrival) Buffer)1001cは、メモリ1001によって実現される。各バッファへのデータ格納例を図7に示す。
【0038】
図7Aは、キューバッファの例を示す。
【0039】
第一列目は、端末識別番号MS−IDである。第二列目は、優先度(Priority)を表し、優先度が高いほどパケットスケジューラ1002が当該端末を選択しやすくなる。第三列目は、データの送信間隔(Interval)をスロット単位で示したもので、QoS制御での使用を想定している。パケットスケジューラが1スロット動作すると、全ての行について一律に1が加算され、データ送信先端末として選択された端末については0にリセットされる。第四列目(Bit Length)は、キューバッファに残っている未送信ビット数である。第五列目(Bit Stream)は実際の未送信ビット系列である。
【0040】
図7Bは、フィードバック情報バッファの例を示す。
【0041】
第一列目は端末識別番号で、第二列目はビーム識別番号Beam−ID、第三列目はフィードバック情報(CQI)である。フィードバック情報がInvalidであれば、フィードバック情報が無かったことを示し、パケットスケジューラによって当該ビームに当該端末が割り当てられないようにする。
【0042】
図7Cは端末方位バッファの例である。第一列目は端末識別番号、第二列目は無線基地局装置から見た無線端末装置の方位である。方位は、予め定められた方向(例えば、東)を基準とした角度で表される。空間多重による同時に送信をする際、ある程度角度差が大きくないと、互いの干渉が大きくなるので、角度が小さい方向への同時送信を避けるために参照される。
【0043】
パケットスケジューラ1002は、周期的(以下、タイムスロットとして定められた一定時間)毎にメモリ1001内のキューバッファ(図7A)とフィードバック情報バッファ(図7B)、さらに必要に応じて端末方位バッファ(図7C)を参照して、送信指向性ビーム毎のデータ送信先の無線端末装置を決定する。送信先の決定後、パケットスケジューラ1002はデータシンボル系列生成部1003に、送信指向性ビーム毎のビーム識別番号、端末識別番号、変調方式、符号化率及び送信可能な最大ビット数(物理パケットのMACペイロードに相当)を通知する。
【0044】
データシンボル系列生成部(Forward Link Data Generator)1003は、前記通知情報に基づいて、キューバッファ1001aから端末識別番号毎のビット系列を読み出し、指定された符号化率による符号化と、指定された変調方式による変調をしてデータシンボル系列を生成する。生成されたデータシンボル系列は、ビーム識別番号と関連付けられて第一多重部(Time Division Multiplexer)1005に送られる。
【0045】
検波用パイロット生成部(Detection Pilot Generator)1004は、無線端末装置で既知のシンボル系列に直交符号を積算し、ビーム識別番号毎に異なる直交符号の検波用パイロットを生成し、第一多重部1005に送る。
【0046】
第一多重部1005は、データシンボル系列生成部1003から送られたデータシンボル系列と検波用パイロット生成部1004から送られた検波用パイロットとを、同一のビーム識別番号同士で時間多重し、同出力をビーム識別番号と関連付けて第一ビームフォーム部(Beam Former)1006に送信する。
【0047】
図5に時間多重信号の例を示す。図5で、DP101が検波用パイロット、DATA102がデータシンボル系列を指す。PP103は、第二多重部で多重される予測用パイロットである。第二多重部1012については後述する。なお、CP104は共通パイロット信号、COMMON_DATA105は共通制御信号である。
【0048】
ここでは、DP101、DATA102及びPP103は互いに時間多重されたうえで、他の指向性ビームで送信される信号と空間多重され、CP104とCOMMON_DATA105はオムニ指向性で同時に送信される。なお、本実施例では各パイロット信号とデータ信号の多重方法として時間多重を採用しているが、受信側の無線端末装置で送信信号の復元が可能であれば、符号多重や周波数多重でもよい。
【0049】
第一ビームフォーム部1006は、タイムスロット毎に、第一多重部1005の出力を各送信アンテナに向けて分配して出力し、検波用指向性ビーム決定部1007によって提供される指向性ビームに相当する振幅位相制御をアンテナ素子毎に行う。以上の制御はビーム識別番号毎に行われ、時間分割でビーム識別番号毎にシーケンシャルに処理するか、第一ビームフォーム部1006を複数備え、ビーム識別番号毎にパラレル処理するかという選択肢がある。しかし、どちらの方法でも本発明の効果に違いはない。アンテナ素子毎に全ビーム識別番号に関する処理結果が加算され、第二多重部1012に送られる。
【0050】
検波用指向性ビーム決定部(Detection Beam Generator)1007は、タイムスロット毎にビーム識別番号毎の検波用指向性ビームに相当する振幅位相制御量を第一ビームフォーム部1006に通知し、ビーム識別番号毎の新たな指向性ビームに相当する振幅位相制御量を指向性ビームバッファ(Beam Buffer)1008から読み出す。
【0051】
指向性ビームバッファ1008は、FIFOバッファであって、タイムスロット毎に検波用指向性ビーム決定部1007によって最古の指向性ビームに相当する振幅位相制御量を読み出され、予測用指向性ビーム決定部(Estimation Beam Generator)1009によって最新の指向性ビームに相当する振幅位相制御量が書き込まれる。指向性ビームバッファ1008の容量を図2に示す無線基地局装置のMスロット分とする。これによって無線端末装置からのフィードバックに関連するラウンドトリップ遅延を吸収する。
【0052】
予測用指向性ビーム決定部(Estimation Beam Generator)1009は、タイムスロット毎にビーム識別番号毎の予測用指向性ビームを決定し、決定された予測用指向性ビームに相当する振幅位相制御量をビーム識別番号と関連付けて、予測用指向性ビームバッファ1008に書き込み、予測用指向性ビームを第二ビームフォーム部1011に通知する。この処理の詳細は後述する。
【0053】
予測用パイロット生成部(Estimation Pilot Generator)1010は、無線端末装置で既知のシンボル系列に直交符号を積算し、ビーム識別番号毎に異なる直交符号の予測用パイロットを生成し、第二ビームフォーム部1011に送る。
【0054】
第二ビームフォーム部1011は、タイムスロット毎に予測用パイロット生成部1010の出力を各送信アンテナに向けて分配して出力し、予測用指向性ビーム決定部1009によって提供される指向性ビームに相当する振幅位相制御をアンテナ素子毎に行う。以上の制御はビーム識別番号毎に行われる。アンテナ素子毎に全ビーム識別番号に関する処理結果が加算され、第二多重部1012に送られる。
【0055】
第二多重部1012は、第一ビームフォーム部1006の出力及び第二ビームフォーム部1011の出力をアンテナ素子毎に時間多重し、タイムスロット毎にフロントエンド部1013へ送信する。
【0056】
図5に時間多重信号の例を示す。図5で、DP101が検波用パイロット、DATA102がデータシンボル系列、PP103は予測用パイロットを指す。パイロット及びデータの時間配置によって本発明の効果は変わらない。なお、本実施例は時間多重を前提として記述されているが、検波パイロット及びデータが予測パイロットと相互干渉を生じなければ符号多重でもよい。
【0057】
フロントエンド部1013は、アンテナ素子(1014−1、2、3及び1020)毎にベースバンド信号とRF信号とを変換する。フロントエンド部1013は、DAC(Digital Analog Converter)、ADC(Analog Digital Converter)、フィルタ、アンプ及び周波数発振器を備える。例えば、特開2004−104040号公報にフロントエンド部の構成例が開示されている。
【0058】
受信信号処理部(Received Signal Processor)1015は、無線端末装置から受信される上り信号を無線端末装置毎に分離する。上り信号がCDMA信号の場合、無線端末装置固有の拡散符号により逆拡散することによって、無線端末装置毎に信号を分離することができる。
【0059】
送信信号復元部(Reverse Link Data Restoration Unit)1016は、受信信号処理部1015によって出力された無線端末装置毎の上り信号を復調や復号して、無線端末装置が送信したデータビット系列を生成する。
【0060】
信号分割部(Divider)1017は、送信信号復元部1016の出力である無線端末装置毎の送信データビット系列から、CQIフィードバック情報を抽出し、フィードバック情報バッファ1001bに書き込む。
【0061】
端末方位推定部(DOA Estimator)1018には、フロントエンド部1013によってベースバンド信号に変換された上り信号が入力される。無線端末装置毎のパイロット信号の相関行列を演算し、その固有値解析に基づいて上り信号の到来方向を推定するMUSIC法が知られている。無線端末装置毎の到来方向を推定した結果は、端末識別番号と関連付けて、端末方位バッファ1001cに書き込まれる。端末方位バッファ1001cは、予測用指向性ビーム決定部1009が指向性ビームを決定する際に参照するが、詳しくは後述する。
【0062】
以上の構成のうち、パケットスケジューラ1002、第一ビームフォーム部1006、検波用指向性ビーム決定部1007、予測用指向性ビーム決定部1009、第二ビームフォーム部1011及び第二多重部1012は、タイムスロット毎に動作することが望ましい。本発明では、無線基地局装置間でタイムスロットを同期させる必要があるため、EV−DO方式と同様にGPS信号によって、各基地局間の時間を同期させる。
【0063】
共通信号生成部(Common Signal Generator)1019は、パケットスケジューラ1002からビーム識別番号と端末識別番号を取得し、どの指向性ビームにどの無線端末装置が割り当てられたかを示すビーム割当制御情報を生成する。ビーム割当制御情報は、無線通信端末との間に定められたプロトコルに従って、データの並び替え、符号化及び変調がされる。また共通信号生成部1019は、セル内の全無線端末装置が同期、共通制御信号の検波に使用するため、共通パイロット信号を生成する。共通パイロット信号は、該予測用パイロットと該検波用パイロットと同時に送信されるため、これらと異なる直交符号が積算される。該ビーム割当制御情報と該共通パイロット信号は時間多重され、指向性ビームで送信される他の信号と同時に送信される。無線端末側では、制御データ復元部3005においてビーム割当制御情報を復号し、自局に対しデータ送信があるか否かを判断し、データを復号するか否かを決定する。
【0064】
以上の実施例で、フロントエンド部とアンテナを除いたディジタル信号処理は、DSPやFPGA(Field Programmable Gate Array)などで実現できる。
【0065】
図6A及び図6Bは、本発明による指向性ビーム制御を時間軸上で説明する図である。なお、オムニ指向性で送信される共通制御信号は常時出力されているため、以下の説明では省略する。
【0066】
図6Aに示す第1スロットに着目する。第1スロットでは、予測用指向性ビーム決定部1009で、予測用パイロットに適用する指向性ビーム(BPG#1(BPGはBeam Pattern Groupの略で、同時に出力される送信指向性ビームのグループである))が生成される。このとき、無線基地局装置は何も出力していないので、図6Bの第1スロットに示すように、セル2001には何も出力されない。
【0067】
次に、図6Aの第2スロットに着目する。第2スロットは、第1スロットにおいて生成された予測用指向性ビーム(BPG#1)を、指向性ビームバッファ1008へ書き込む(図6A破線)。第二ビームフォーム部1011では、予測用パイロットに上記予測用指向性ビーム(BPG#1)に相当する振幅位相制御(図6A実線)を行う。一方、予測用指向性ビーム決定部1009では次の予測用指向性ビーム(BPG#2)を生成している。以下、BPG#1と同じなので、BPG#2以降の説明は省略する。
【0068】
次に、図6Aの第3スロットに着目する。第3スロットは、第2スロットの第二ビームフォーム部1011で指向性ビームの処理がされた予測用パイロットが、図6Aに実線で示すように、第二多重部1012に入力される。同様に指向性ビームバッファ1008に格納された指向性ビームの振幅位相制御量は、図6Aに破線で示すように、検波用指向性ビーム決定部1007に読み出される。図6Bの第3スロットに示すように、セル2001には何も出力されない。
【0069】
次に、図6Aの第4スロットに着目する。第4スロットは、第3スロットの第二多重部1012で時間多重されたBPG#1の予測用パイロットが出力される。一方、第一ビームフォーム部1006で、指向性ビームバッファ1008に格納された指向性ビーム(BPG#1)の振幅位相制御量を読み出して、検波用パイロット及びデータシンボル系列に振幅位相制御を行う。図6Bの第4スロットに示すように、BPG#1の指向性ビーム(2004a、2004b)が出力され、前述したように予測用パイロットが出力されている。
【0070】
図6Aの第5スロットに着目する。第5スロットは、第4スロットの第一ビームフォーム部1006の出力(BPG#1の指向性利得が掛けられた検波パイロットとデータシンボル系列)が、第二ビームフォーム部1011の出力(BPG#3の指向性利得が掛けられた予測パイロット)と、第二多重部1012で時間多重されている。このときの出力は、図6Bの第5スロットに示すように、BPG#2の指向性ビーム(2005a、2005b)で予測用パイロットが出力されている。
【0071】
第6スロットは、第5スロットにおいて第二多重部によって多重化された信号が出力される。図6Bに示すように、BPG#1の指向性ビーム(2004a、2004b)とBPG#3の指向性ビーム(2006a、2006b)が出力される。BPG#1の指向性ビームでは、検波用パイロットとデータシンボル系列、BPG#3の指向性ビームでは、予測用パイロットが出力されている。
【0072】
以上が本発明の指向性ビーム制御の骨子である。この指向性ビーム制御とあわせ、第一ビームフォーマでBPG#1に相当する振幅位相制御を行う前に、BPG#1によって送信された予測用パイロットによるフィードバックがあり、同フィードバック情報に従うスケジューリング、及び検波パイロットとが多重されて送信される。つまり、第一ビームフォーム部1006に入力される指向性ビームと、データシンボル系列を生成する元となった予測用指向性ビームとの整合(同一のBPG)が、本発明の効果を得るための特徴である。
【0073】
この整合を取るため、指向性ビームバッファ1008への記憶量を調整し、同バッファへの書き込みから読み出しまでの遅延タイムスロットを調整する。さらに、この調整量を全無線基地局装置で揃えることが、セル間干渉も含めた、正しいSINR推定に必要である。
【0074】
図8は、本発明による予測用指向性ビーム決定に関する第1の実施形態を示す。
【0075】
第1実施形態は、無線基地局装置がスイッチドビーム基地局の場合における、予測用指向性ビーム決定について説明する。
【0076】
固定ビーム選択部(Beam Selector)1101は、無線基地局装置が固定指向性ビームバッファ(Fixed Beam Buffer)1103に保持される固定指向性ビームのうち、予測用指向性パタン、及び数タイムスロット後の検波用指向性パタンとして利用するものを選択し、そのビーム識別番号を指向性ビーム通知部(Beam notification unit)1102に通知する。
【0077】
ビーム方向を選択するため、無線基地局装置に保持される情報が読み出される。具体的には、キューバッファ1001a、フィードバック情報バッファ1001b及び端末方位バッファ1001cから情報が読み出される。ただし、これらの情報を読み出すことは必須ではなく、例えば、固定ビームを順番に選択したり、ランダムに選択したりしてもよい。
【0078】
前述した固定ビーム選択方法によれば、相互干渉の少ない指向性ビームを組み合わせてBPGとすることが容易になるため、周波数利用効率を更に向上させることができる。
【0079】
従って、ベストエフォート志向やギャランティ志向など、システム要求に対して異なる情報を参照すると考えられるため、様々な固定ビーム選択方法を想定してキューバッファ1001a、フィードバック情報バッファ1001b及び端末方位バッファ1001cから情報を読み出せるようにしている。
【0080】
指向性ビーム通知部1102は、固定ビーム選択部1101から通知されたビーム識別番号に従って、対応する振幅位相制御量を固定指向性ビームバッファ1103から読み出し、指向性ビームバッファ1008と第二ビームフォーム部1011に送信する。
【0081】
固定指向性ビームバッファ1103は、ビーム識別番号と関連付けてアンテナ素子毎の振幅位相制御量を記録している。
【0082】
図9は、本発明による予測用指向性ビーム決定に関する第2の実施形態を示す。
【0083】
第2の実施形態は、無線基地局装置が任意の指向性ビームパタンを出力する基地局である場合の、予測用指向性ビームの決定について説明する。
【0084】
方向決定部(Direction Decision Unit)1104は、指向性ビーム生成部(Beam Generator)1105によって生成される指向性ビームのビーム方向及びヌル方向をビーム識別番号毎に決定し、指向性ビーム生成部1105に通知する。ビーム方向を決定するため、無線基地局装置に保持され情報が読み出される。具体的には、キューバッファ1001a、フィードバック情報バッファ1001b及び端末方位バッファ1001cから情報が読み出される。
【0085】
第1の実施形態と同様、方向決定方法による周波数利用効率の違いは現れると考えられるが、何れの方法でも本発明の効果を得ることができる。従って、様々な方向決定方法を想定してキューバッファ1001a、フィードバック情報バッファ1001b及び端末方位バッファ1001cから情報を読み出せる仕組みとしている。
【0086】
指向性ビーム生成部1105は、方向決定部1104から指示されたビーム識別番号毎のビーム方向とヌル方向及び送信アンテナ配置に基づいて、ビーム識別番号毎の送信指向性パタンを生成する。ここでは、単純なヌルステアリングによる指向性ビームの生成例を示す。
【0087】
ビーム方向のアレー応答ベクトルを以下のように定義する。
【0088】
【数1】

【0089】
ただし、iはビーム方向カウンタ、φiはi番目のビーム方向、bn,i(φi)はi番目のビーム方向、n番目の送信アンテナにおける基準点からの位相差である。
【0090】
ヌル方向のアレー応答ベクトルも同様に定義できる。
【0091】
【数2】

【0092】
ただし、jはビーム方向カウンタ、ψjはj番目のビーム方向、cn,j(ψj)はj番目のビーム方向、n番目の送信アンテナにおける基準点からの位相差である。
【0093】
ヌルをステアリングするためのアンテナ素子毎の振幅位相制御量のベクトルであるウェイトベクトルを定義する。
【0094】
【数3】

【0095】
ただし、wnはアンテナ素子への振幅位相制御量、Tは転置を示す。
【0096】
以上より、ヌルステアリングのためのウェイトベクトルは次式のように計算される。
【0097】
【数4】

【0098】
ただし、Nbはビーム方向の数、Ncはヌル方向の数である。
【0099】
以上で計算したウェイトベクトル及びビーム識別番号を関連付けて指向性ビーム通知部1102に送信する。
【0100】
指向性ビーム通知部1102は、ウェイトベクトル及びビーム識別番号を関連付けて、指向性ビームバッファ1008及び第二ビームフォーム部1011に送信する。
【0101】
図10に、本発明の実施の形態の無線端末装置の構成を示すブロック図である。
【0102】
本実施の形態の無線通信端末装置は、送受信アンテナ3001、及びベースバンド帯とRF帯の変換を行うフロントエンド部3002を備える。フロントエンド部3002はDAC、ADC、フィルタ、アンプ及び周波数発振器を備える。
【0103】
端末同期部(Slot Sync Unit)3003は、下り信号のスロットの先頭を見つけるために、共通パイロットの相関演算によってパイロットの受信タイミングを見つけ、スロット先頭からのパイロットのオフセット及びパイロット受信タイミングに基づいて、スロットの先頭タイミングを判定することができる。同部3003で見つけられたスロットの先頭タイミングは、受信信号分割部(Divider)3004に通知される。
【0104】
受信信号分割部3004は、端末同期部3003から通知されたスロット先頭タイミング及び既知であるスロットフォーマット(図5参照)に基づいて受信信号を分割する。具体的には、共通パイロット及び共通制御信号(図5のCP104とCOMMON_DATA105)が、制御信号復元部(Common Signal Restoration Unit)3005に送信され、検波用パイロット及びデータシンボル系列の組(図5のDP101とDATA102)が、データ復元部(FL Data Restoration Unit)3006に送信され、予測用パイロット(図5のPP103)が、品質情報生成部(CQ Estimator)3007に送信される。
【0105】
制御信号復元部3005は、共通パイロットによって共通制御信号を検波し、その後、復調や復号をすることによって、無線基地局装置が送信した制御データを取得する。制御データの内の該ビーム割当制御情報から、ビーム識別子毎にスロットに割り当てられた端末識別子が分かる。当該無線端末装置は、自局の端末識別子とスロットに割り当てられた端末識別子とを比較し、指向性ビームが割り当てられているかどうかが分かる。
【0106】
スロットが割り当てられていなければ、制御信号復元部3005はその旨をデータシンボル復元部3006に通知し、データシンボル復元部3006は該検波用指向性ビームで送信されたデータシンボル系列の復元動作は行わない。一方、スロットが割り当てられていれば、制御信号復元部3005は割り当てられたビーム識別子をデータシンボル復元部3006に通知し、データシンボル復元部3006は当該ビーム識別子の検波用指向性ビームで送信されたデータシンボル系列を復元する処理を行う。復元処理とは検波、復調、復号である。
【0107】
品質情報生成部3007は、該予測用指向性ビームのビーム識別子毎に、各ビームのパイロットを所望信号としたSINRを推定し、CQIに変換する。EV−DO方式の場合は、DRCがCQIに相当する。ビーム識別子毎のCQIは、送信データ生成部3008に通知されるが、SINRが最も高いCQIだけを通知することも本発明の範疇である。
【0108】
送信データ生成部(RL Data Generator)3008は、品質情報生成部3007から出力されるビーム識別子毎のCQIを、無線基地局装置との間で約束されたプロトコルに従って、データの並び替え、符号化及び変調する。変調された信号は、フロントエンド部3002において、ベースバンド−RFバンドに変換され、無線基地局装置に送信される。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、パケット交換型の無線通信システムにおける下り通信全般に適用できるが、セル間干渉の正しい推定を目標としているため、基地局間同期を要求する。現存するシステムで基地局間同期をサポートしたパケット交換型無線通信システムはcdma2000 1xEV−DOのみだが、基地局間の同期手段を確保すれば他のパケット交換型無線通信システムにも適用できる。
【0110】
特許請求の範囲に記載した以外の本発明の観点の代表的なものとして、次のものがあげられる。
【0111】
1.複数の無線端末装置と、前記無線端末装置から下り通信品質情報のフィードバックを受け、周期的に前記フィードバックを受けた下り通信品質情報を参照してデータ送信先の無線端末装置を選択し、前記選択された無線端末装置に対して指向性ビームを用いてデータを送信する複数の無線基地局装置と、を備える無線通信システムであって、
前記各無線基地局装置は、無線基地局装置間で統一された所定時間後の空間信号処理後の下り通信品質を予測するための予測用パイロットを先行して送信し、
前記各無線端末装置は、前記予測用パイロットを受信して下り通信品質を測定し、上り回線を介して前記無線基地局装置に測定された下り通信品質を報告し、
前記予測用パイロットは、前記複数の無線基地局装置で統一された時間及び周波数で送信され、前記統一された時間後のデータ送信に用いられる指向性ビームと同じ指向性ビームで送信されることを特徴とする無線通信システム。
【0112】
2.前記1項に記載の無線通信システムであって、前記予測用パイロットを、隣接する前記無線基地局装置間に発生する端末への送信信号の伝搬遅延時間差に対して十分に長い期間送信することを特徴とする無線通信システム。
【0113】
3.前記1項に記載の無線通信システムであって、前記予測用パイロットは、前記各無線端末装置のための伝送データ及び前記伝送データの受信処理に利用される検波用パイロットと多重されて送信されることを特徴とする無線通信システム。
【0114】
4.前記3項に記載の無線通信システムであって、前記予測用パイロットは、前記検波用パイロットより長い期間にわたって送信されることを特徴とする無線通信システム。
【0115】
5.前記1項に記載の無線通信システムであって、前記予測用パイロットは、前記所定時間後に前記各無線端末装置宛ての伝送データの送信に用いられる指向性ビームと同じ指向性ビームによって送信されることを特徴とする無線通信システム。
【0116】
6.複数の無線端末装置と、前記無線端末装置から下り通信品質情報のフィードバックを受け、周期的に前記フィードバックを受けた下り通信品質情報を参照してデータ送信先の無線端末装置を選択し、前記選択された無線端末装置に対して指向性ビームを用いてデータを送信する複数の無線基地局装置と、を備える無線通信システムにおける無線基地局装置であって、
各無線基地局装置間で統一された所定時間後の空間信号処理後の下り通信品質を予測するための予測用パイロットを先行して送信する送信部と、
前記予測用パイロットを受信して下り通信品質を測定する前記各無線端末装置から、上り回線を介して送信される下り通信品質の報告を受ける受信部と、を備え、
前記送信部は、前記予測用パイロットを、前記複数の無線基地局装置で統一された時間及び周波数で送信し、前記統一された時間後のデータ送信に用いられる指向性ビームと同じ指向性ビームで送信することを特徴とする無線基地局装置。
【0117】
7.前記6項に記載の無線基地局装置であって、
前記送信部は、前記予測用パイロットを、隣接する前記無線基地局装置との間に発生する端末への送信信号の伝搬遅延時間差に対して十分に長い期間送信することを特徴とする無線基地局装置。
【0118】
8.前記6項に記載の無線基地局装置であって、
前記送信部は、前記予測用パイロットを、前記各無線端末装置のための伝送データ及び前記伝送データの受信処理に利用される検波用パイロットと多重して送信することを特徴とする無線基地局装置。
【0119】
9.前記8項に記載の無線基地局装置であって、
前記送信部は、前記予測用パイロットを、前記検波用パイロットより長い期間にわたって送信することを特徴とする無線基地局装置。
【0120】
10.前記6項に記載の無線基地局装置であって、
前記送信部は、前記予測用パイロットを、前記所定時間後に前記各無線端末装置宛ての伝送データの送信に用いられる指向性ビームと同じ指向性ビームによって送信することを特徴とする無線基地局装置。
【0121】
11.前記6項に記載の無線基地局装置であって、
前記送信部は、
データ送信先の無線端末装置を選択し、前記無線端末装置への信号の送信タイミングをスケジューリングするスケジューリング部と、
前記選択された無線端末装置に送信されるデータシンボル系列を生成する送信データ生成部と、
前記スケジューリングの結果を前記無線端末装置に報知する割当情報報知部と、
前記無線端末装置で検波するために用いられるパイロットを生成する検波パイロット生成部と、
前記生成されたデータシンボル系列と前記生成された検波パイロットとを多重化する第一多重部と、
前記第一多重部からの出力に適用される指向性ビームを決定する検波用指向性ビーム決定部と、
前記第一多重部からの出力を各送信アンテナ素子にコピーして、前記検波用指向性ビームに相当する振幅位相制御を行う第一ビームフォーム部と、
前記無線端末装置で下り通信品質を予測するため、無線基地局装置間の伝搬遅延時間差に対して十分な長さの予測パイロットを生成する予測パイロット生成部と、
前記生成された予測パイロットに適用される指向性ビームを決定する予測用指向性ビーム決定部と、
前記生成された予測パイロットを各送信アンテナにコピーして、前記予測用指向性ビームに相当する振幅位相制御を行う第二ビームフォーム部と、
過去に決定された前記予測用指向性ビームに相当する振幅位相制御量を記録する指向性ビームバッファと、
前記第一ビームフォーム部の出力と前記第二ビームフォーム部の出力とを送信アンテナ素子毎に多重する第二多重部と、
前記第二多重部の出力を前記無線基地局装置間で同期させるための同期部とを備え、
前記検波用指向性ビーム決定部は、無線基地局装置間で統一された時間前に決定された前記予測用指向性ビームに基づいて前記検波用指向性ビームを決定することを特徴とする無線基地局装置。
【0122】
12.前記11項に記載の無線基地局装置であって、
前記無線端末装置によって送信される上り信号から前記無線端末装置の方位を推定する端末方位推定部と、
前記無線端末装置の方位を記録する端末方位バッファと、を備えることを特徴とする無線基地局装置。
【0123】
13.前記11項又は12項に記載の無線基地局装置であって、
前記予測用指向性ビーム決定部は、時間によって変化しない指向性ビームに相当する送信アンテナ毎の振幅位相制御量を記憶する固定ビーム記録部と、前記第二ビームフォーム部及び前記指向性ビームバッファに前記振幅位相制御量を通知する指向性ビーム通知部と、前記指向性ビーム通知部によって通知される時不変指向性ビームを1又は複数選択する固定ビーム選択部と、を備えることを特徴とする無線基地局装置。
【0124】
14.前記11項又は12項に記載の無線基地局装置であって、
前記予測用指向性ビーム決定部は、生成される指向性ビームのビーム方向とヌル方向を決定する方向決定部と、前記決定された方向に従って指向性ビームを生成する指向性ビーム生成部と、前記生成された指向性ビームに相当する振幅位相制御量を前記第二ビームフォーム部及び前記指向性ビームバッファに通知する指向性ビーム通知部と、を備えることを特徴とする無線基地局装置。
【0125】
15.複数の無線端末装置と、前記無線端末装置から下り通信品質情報のフィードバックを受け、周期的に前記フィードバックを受けた下り通信品質情報を参照してデータ送信先の無線端末装置を選択し、前記選択された無線端末装置に対して指向性ビームを用いてデータを送信する複数の無線基地局装置と、を備える無線通信システムにおける無線端末装置であって、
無線基地局装置間で統一された所定時間後の空間信号処理後の下り通信品質を予測するために、前記複数の無線基地局装置で統一された時間及び周波数で送信され、前記統一された時間後のデータ送信に用いられる指向性ビームと同じ指向性ビームで先行して送信される予測用パイロットを受信して下り通信品質を予測する受信部と、
上り回線を介して前記無線基地局装置に前記予測された下り通信品質を報告する送信部と、を備えることを特徴とする無線端末装置。
【0126】
16.前記15項に記載の無線端末装置であって、
前記受信部は、前記無線基地局装置が送信する下り信号を受信して、予測パイロットと、検波用パイロットとデータシンボル系列の組と、スケジューリング結果の報知情報とを分離する受信信号分割部と、前記報知情報を参照して検波用パイロットとデータシンボル系列から送信データを復元するデータシンボル復元部と、を備え、
前記送信部は、前記受信した予測パイロットから推定される下り通信品質情報を生成する品質情報生成部と、前記下り通信品質情報を前記無線基地局装置に送信する送信データ生成部と、を備えることを特徴とする無線端末装置。
【0127】
17.前記16項に記載の無線端末装置であって、前記下り通信品質が最も良かった予測用指向性ビームを選択する選択部を備え、選択された以外の前記予測用指向性ビームに関する下り通信品質情報を前記無線基地局装置に報告しないことを特徴とする無線端末装置。
【0128】
18.無線基地局装置における無線通信方法であって、
前記無線基地局装置から無線端末装置への下りの信号を予測するための品質予測用パイロットを生成し、
前記無線端末装置のための伝送データの受信処理に利用される検波用パイロットを生成し、
前記品質予測用パイロットと前記検波用パイロットとを多重化し、
前記多重化された信号を送信する、ことを特徴とする無線通信方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線基地局装置が、無線端末装置から下り通信品質を受信し、前記下り通信品質に基づいて前記無線端末装置に対してデータを送信する無線通信方法であって、
前記無線基地局装置は、
所定時間後の前記下り通信品質を予測するための予測用パイロットを生成し、前記所定時間後の前記データの送信に先行して前記予測用パイロットを前記無線端末装置に送信し、
前記無線端末装置が前記データを処理するための検波用パイロットを生成し、前記所定時間後に前記検波用パイロットを前記無線端末装置に送信し、
前記予測用パイロットの指向性利得と前記検波用パイロットの指向性利得とが同一であることを特徴とする無線通信方法。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信方法であって、
前記無線基地局装置は、前記予測用パイロットと前記検波用パイロットとを多重化して前記無線端末装置に送信することを特徴とする無線通信方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の無線通信方法であって、
前記予測用パイロットは、前記検波用パイロットよりも長い期間送信されることを特徴とする無線通信方法。
【請求項4】
無線端末装置から下り通信品質を受信し、前記下り通信品質に基づいて前記無線端末装置に対してデータを送信する無線基地局装置を備える無線通信システムであって、
前記無線基地局装置は、
所定時間後の前記下り通信品質を予測するための予測用パイロットを生成し、前記所定時間後の前記データの送信に先行して前記予測用パイロットを前記無線端末装置に送信し、
前記無線端末装置が前記データを処理するための検波用パイロットを生成し、前記所定時間後に前記検波用パイロットを前記無線端末装置に送信し、
前記予測用パイロットの指向性利得と前記検波用パイロットの指向性利得とが同一であることを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
請求項4に記載の無線通信システムであって、
前記無線基地局装置は、前記予測用パイロットと前記検波用パイロットとを多重化して前記無線端末装置に送信することを特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の無線通信システムであって、
前記予測用パイロットは、前記検波用パイロットよりも長い期間送信されることを特徴とする無線通信システム。
【請求項7】
無線端末装置から下り通信品質を受信し、前記下り通信品質に基づいて前記無線端末装置に対してデータを送信する無線基地局装置であって、
所定時間後の前記下り通信品質を予測するための予測用パイロットを生成し、前記所定時間後の前記データの送信に先行して前記予測用パイロットを前記無線端末装置に送信し、
前記データを処理するための検波用パイロットを生成し、前記所定時間後に前記検波用パイロットを前記無線端末装置に送信し、
前記予測用パイロットの指向性利得と前記検波用パイロットの指向性利得とが同一であることを特徴とする無線基地局装置。
【請求項8】
請求項7に記載の無線基地局装置であって、
前記予測用パイロットと前記検波用パイロットとを多重化して前記無線端末装置に送信することを特徴とする無線基地局装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の無線基地局装置であって、
前記予測用パイロットは、前記検波用パイロットよりも長い期間送信されることを特徴とする無線基地局装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−231469(P2012−231469A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−110446(P2012−110446)
【出願日】平成24年5月14日(2012.5.14)
【分割の表示】特願2010−281372(P2010−281372)の分割
【原出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、独立行政法人情報通信研究機構「移動通信システムにおける高度無線信号処理技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】