説明

無線通信方法および無線通信装置

【課題】複数無線システムのリンク多重において、リンク毎の遅延特性を考慮し、多重するリンク間のパケット分配率を決定でき、また、目標品質を満足するようにリンク切替またはリンク多重を使い分ける。
【解決手段】各無線システムのスループットおよび遅延時間を測定すると共に、前記各リンク間の遅延時間差を算出するステップS101と、前記測定の結果に基づいて、単独で目標品質を満足する無線システムがあるかどうかを判断するステップS102と、前記判断の結果、単独で目標品質を満足する無線リンクが無い場合は、前記各リンク間の遅延時間差と閾値とを比較し、前記遅延時間差が前記閾値以下である場合は、前記各リンクのリンク多重を行なうリンク多重モードを選択する一方、前記遅延時間差が前記閾値を超える場合は、リンク切替を行なうリンク切替モードを選択するステップS106と、を少なくとも含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種無線方式を動的に利用する無線通信方法および無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、異種無線システムに対応したマルチモード端末の活用法として、最適な無線リンクを常に選択するリンク切替、複数の無線リンクを多重させるリンク多重の2種類がある。従来、無線資源が豊富に存在する状況を想定して、リンク切替に焦点を当てた検討が行なわれてきた。しかしながら、輻輳時など、無線資源が逼迫する場合には1リンクで所望の品質を確保することが困難である。そこで、複数無線システムの残無線資源を束ねて、所望の品質を提供するリンク多重が必要となる。
【0003】
これについて、無線LAN、携帯電話等の異なる無線システムを統合するための技術が提案されている。例えば、特許文献1は、ピコセル、マイクロセル、マクロセルなる異なるセルサイズを有する異種無線システムを、コグニティブ基地局、コグニティブ端末を用いて統合する技術が開示されている。コグニティブ基地局、コグニティブ端末は、スイッチ、複数の無線モジュール、無線環境認識部を備えており、無線環境認識部は、無線環境を認識して、その認識結果に基づき、スイッチに対してリンクフレームの分配先である無線モジュールを指示する。リンクフレームは指示された無線モジュールを介して送受信される。
【0004】
また、特許文献2は、電波環境の変動に応じて、通信品質に関する指標を通知する方式が提案されている。具体的には、一つの無線方式に閉じて、受信CIR(Carrier to Interference Ratio:搬送波対干渉電力比)を測定して、その将来予測値を算出して出力する技術である。また、非特許文献1は、WiMAX、Wi−Fiに対して、パケット毎の送信時間をAir time costとして定義し、その比率から多重するリンクへのパケット分配率を求める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−085759号公報
【特許文献2】特開2004−253830号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】IEICE TRANS. COMMUN., VOL.E91-B. NO.10 OCTOBER 2008「Adaptive Multimedia Flow Splitting over WIMAX and Wi-Fi Links」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、リンク多重では、リンク間に特性差が存在する場合に、パケットの到着順序が前後する等の不具合が生じる。これは、パケット再送の発生、再送に伴うリソースの消費等の悪影響をもたらす。また、これらを回避する為に、リンクの品質に応じて、パケットを適切に分配する必要がある。また、限られた無線資源を多重させる背景から、多重後のリンクの品質を見積もった上で、リンク多重を実行することが好ましい。
【0008】
一方、複数無線システムの残無線資源を束ねて、所望の品質を提供するリンク多重について検討が進められている。特許文献1は、無線リンク多重を行なう機構を示しているが、具体的な方式を示していない。非特許文献1は、複数無線リンクへパケットを分配する率を求めているが、多重するリンクの選択、リンク品質の変動、目標品質の設定を考慮していない。特許文献2は、遅延時間等のアプリケーションよりの指標を用いておらず、異種無線リンク制御の視点に立っていない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、複数無線システムのリンク多重において、リンク毎の遅延特性を考慮し、多重するリンク間のパケット分配率を決定でき、また、目標品質を満足するようにリンク切替またはリンク多重を使い分けることができる無線通信方法および無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の無線通信方法は、複数の異種無線システムから、少なくとも一つの無線リンクを選択して無線通信を行なう無線通信方法であって、前記各無線システムのスループット、遅延時間を測定すると共に、前記各リンク間の遅延時間差を算出するステップと、前記測定の結果に基づいて、単独で目標品質を満足する無線システムがあるかどうかを判断するステップと、前記判断の結果、単独で目標品質を満足する無線リンクが無い場合は、前記各リンク間の遅延時間差と閾値とを比較するステップと、前記比較の結果、前記遅延時間差が前記閾値以下である場合は、前記各リンクのリンク多重を行なうリンク多重モードを選択する一方、前記遅延時間差が前記閾値を超える場合は、リンク切替を行なうリンク切替モードを選択するステップと、前記選択したリンク多重モードまたはリンク切替モードのいずれか一方のモードで信号を送信するステップと、を少なくとも含むことを特徴とする。
【0011】
このように、遅延時間差が閾値以下である場合は、各リンクのリンク多重を行なうリンク多重モードを選択する一方、遅延時間差が閾値を超える場合は、リンク切替を行なうリンク切替モードを選択するステップと、選択したリンク多重モードまたはリンク切替モードのいずれか一方のモードで信号を送信するので、目標品質を満たすように一つもしくは複数の無線システムを選択した上で、リンク切替とリンク多重とを使い分けることが可能となる。また、遅延時間差が閾値以下である場合に、各リンクのリンク多重を行なうリンク多重モードを選択するので、帯域を確保するとともに、パケット到着順序の逆転を防ぐことが可能となる。
【0012】
(2)また、本発明の無線通信方法は、前記判断の結果、単独で目標品質を満足する無線システムがある場合は、前記リンク切替モードを選択することを特徴とする。
【0013】
このように、判断の結果、単独で目標品質を満足する無線システムがある場合は、リンク切替モードを選択するので、リンク切替とリンク多重とを使い分けることが可能となる。
【0014】
(3)また、本発明の無線通信方法は、リンクの遅延時間、CIR(Carrier to Interference Ratio)、パケットサイズおよび同時無線資源割当率間の特性を示すテーブルを用いて、前記各リンク間の遅延時間差を算出することを特徴とする。
【0015】
この構成により、目標品質を満たすように一つもしくは複数の無線システムを選択した上で、リンク切替とリンク多重とを使い分けることが可能となる。
【0016】
(4)また、本発明の無線通信方法は、前記CIRおよび前記パケットサイズの変動に応じて、前記テーブルの内容を更新することを特徴とする。
【0017】
この構成により、短い時間スケールで変動するCIRおよびパケットサイズについて、変動を考慮した処理を行なうことが可能となる。
【0018】
(5)また、本発明の無線通信方法は、前記リンク多重モードを選択した場合、多重する各リンクのスループット、遅延時間を考慮して、パケットを分配することを特徴とする。
【0019】
このように、パケットを分配するので、いずれかのリンクから過剰なパケットが送信されて、パケットの到着順序が逆転する事態を回避することができる。この結果、スループットの向上を図ることが可能となる。
【0020】
(6)また、本発明の無線通信方法は、前記各リンクのスループットおよび遅延時間を用いて指標を算出し、前記指標に基づいて、パケットを分配することを特徴とする。
【0021】
このように、各リンクのスループットおよび遅延時間で定まる指標を算出し、前記指標に基づいて、パケットを分配するので、いずれかのリンクから過剰なパケットが送信されて、パケットの到着順序が逆転する事態を回避することができる。この結果、スループットの向上を図ることが可能となる。この指標は、例えば、第1の指標として、指標BDP=Σ{(パケットサイズPi+オーバヘッドOi) ×Delayi}を用いて算出しても良いし、また、第2の指標として、指標2= Σ{(パケットサイズPi+オーバーヘッドOi)÷Delayi }を用いて算出しても良い。なお、上式のΣ{}は、単位時間内に送信されたパケットサイズと遅延時間の積の総和である。
【0022】
(7)また、本発明の無線通信装置は、複数の異種無線システムから、少なくとも一つの無線システムを選択して無線通信を行なう無線通信装置であって、前記各無線システムのスループット及び遅延時間を測定すると共に、前記各リンク間の遅延時間差を算出する無線環境認識部と、前記測定の結果に基づいて、単独で目標品質を満足する無線システムがあるかどうかを判断し、前記判断の結果、単独で目標品質を満足する無線システムが無い場合は、前記各リンク間の遅延時間差と閾値とを比較し、前記比較の結果、前記遅延時間差が前記閾値以下である場合は、前記各リンクのリンク多重を行なうリンク多重モードを選択する一方、前記遅延時間差が前記閾値を超える場合は、リンク切替を行なうリンク切替モードを選択する送信制御部と、前記選択されたリンク多重モードまたはリンク切替モードのいずれか一方のモードに基づいて信号を送信する複数の無線モジュールと、を備えることを特徴とする。
【0023】
このように、遅延時間差が閾値以下である場合は、各リンクのリンク多重を行なうリンク多重モードを選択する一方、遅延時間差が閾値を超える場合は、リンク切替を行なうリンク切替モードを選択するステップと、選択したリンク多重モードまたはリンク切替モードのいずれか一方のモードで信号を送信するので、目標品質を満たすように一つもしくは複数の無線システムを選択した上で、リンク切替とリンク多重とを使い分けることが可能となる。また、遅延時間差が閾値以下である場合に、各リンクのリンク多重を行なうリンク多重モードを選択するので、帯域を確保するとともに、パケット到着順序の逆転を防ぐことが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、目標品質を満たすように一つもしくは複数の無線システムを選択した上で、リンク切替とリンク多重とを使い分けることが可能となる。さらに、リンク多重において、品質の変動を加味した指標を用いることにより、動的な制御が可能となる。さらに、指標を考慮したパケット分配率を求めて、パケット分配率に応じてパケットを各リンクに分配するので、順序逆転を抑制することができ、再送を軽減するリンク多重が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の無線通信システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の基地局装置10の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の移動局装置100の概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の基地局装置10(図2)と移動局装置100(図3)の無線接続の関係を示す図である。
【図5A】WiMAX、LTE等の無線システムにおいて、CIRを変化させた時の、パケットサイズPと遅延時間Delayの関係を示すグラフである。
【図5B】WiMAX、LTE等の無線システムにおいて、無線資源割当率Rを変化させた時の、パケットサイズPと遅延時間Delayの関係を示すグラフである。
【図5C】本発明の第1の実施形態に係る無線資源割当率Rと補正値f(R)の関係を表すグラフである。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るパケットサイズPの度数分布を示すグラフである。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るパケットサイズPの累積度数分布を示すグラフである。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るCIRの累積度数分布を示すグラフである。
【図9】本発明の第4の実施形態におけるリンク切替とリンク多重を使い分ける手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。まず、本発明の前提となるシステム構成に関する説明を行なう。
【0027】
図1は、本発明の無線通信システムの構成を示す図である。図1に示すように、本発明の無線通信システムのネットワークは、マクロセル無線モジュール14aによるマクロセル、マイクロセル無線モジュール14bによるマイクロセル、ピコセル無線モジュール14cによるピコセル、移動局装置100、スイッチ部13から構成される(以下、マクロセル無線モジュール14a、マイクロセル無線モジュール14b、ピコセル無線モジュール14cを合わせて無線モジュール14と表す)。マクロセルとしては、例えば、携帯電話サービスを提供するセルラーシステムのセルである。マイクロセル無線モジュール14bは、マクロセルよりも狭い範囲の通信エリアを提供するマイクロセルを形成する。マイクロセルとしては、例えば、「IEEE802.16」または「IEEE802.20」準拠のセルである。ピコセル無線モジュール14cは、マイクロセルよりも狭い範囲の通信エリアを提供するピコセルを形成する。ピコセルとしては、例えば、「IEEE802.11」準拠のセルである。マイクロセルおよびピコセルは、マクロセル内に配置される。
【0028】
マクロセル無線モジュール14a、マイクロセル無線モジュール14bおよびピコセル無線モジュール14cは、各々のセルの配置に対応した場所に設置される。各無線モジュール14a、14b、14cは、別途設けられたスイッチ部13に通信回線を介して接続される。なお、図1では、基地局装置10が備える他の構成(コア網側インタフェイス11、仮想MAC処理部12、無線環境認識部15)については省略している。図1に示されるように、スイッチ部13には、マクロセルが一つだけ収容される。そして、そのマクロセルに内含されるマイクロセルおよびピコセルの全てが、そのマクロセルと同じスイッチ部13に収容される。これにより、一つのマクロセルと、そのマクロセルに内含されるマイクロセルおよびピコセルの全てとは、同一のスイッチ部13に収容され、同じリンク層で処理される。
【0029】
図2は、本発明の基地局装置10の概略構成を示すブロック図である。図2に示すように、基地局装置10は、コア網側インタフェイス11、仮想MAC処理部12、スイッチ部13、マクロセル無線モジュール14a、マイクロセル無線モジュール14b、ピコセル無線モジュール14c、無線環境認識部15、センサ16から構成される。基地局装置10は、コア網側インタフェイス11を介して、無線通信ネットワークのコアネットワークと接続する。各基地局装置10は、コアネットワークを介して相互に接続される。また、各基地局装置10は、コアネットワークを介して、インターネット等の無線通信ネットワークの外部のネットワークに接続することができる。
【0030】
コア網側インタフェイス11は、コアネットワークとの間で、ネットワーク層の通信データとして、本発明ではパケットを送受する。仮想MAC処理部12は、仮想MACアドレスを用いたリンクを確立するための処理を行なう。仮想MACアドレスは、物理アドレスであり、基地局装置10および移動局装置100の各々に対して、唯一に予め付与される。基地局装置10の仮想MAC処理部12は、移動局装置100の仮想MAC処理部との間で、仮想MACアドレスを用いたリンクを確立する。仮想MAC処理部12は、このリンクを用いて伝送するフレームを生成する。このフレームのことを、説明の便宜上、「リンクフレーム」と称する。リンクフレームには、コアネットワークから受信されたパケットが格納される。仮想MAC処理部12は、生成したリンクフレームをスイッチ部13に出力する。また、仮想MAC処理部12は、スイッチ部13からリンクフレームを受け取り、そのリンクフレームからパケットを取り出してコア網側インタフェイス11に出力する。
【0031】
スイッチ部13は、仮想MAC処理部12から入力されるリンクフレームを各無線モジュール14へ分配し、又、各無線モジュール14から入力されるリンクフレームを仮想MAC処理部12へ出力する。
【0032】
無線モジュール14は、自己に固有のMACアドレスを有する。無線モジュール14に固有のMACアドレスのことを、仮想MACアドレスと区別するために、説明の便宜上、「実MACアドレス」と称する。実MACアドレスは、従来、利用されているものである。無線モジュール14は、同じ無線通信方式の無線モジュールとの間で、実MACアドレスを用いた無線リンクを確立する。無線リンクは、周波数チャネル単位で確立される。無線モジュール14は、無線リンクを用いて伝送する無線フレームを生成する。無線フレームには、スイッチ部13から受け取ったリンクフレームが格納される。また、無線モジュール14は、無線リンクにより受信した無線フレームからリンクフレームを取り出してスイッチ部13に出力する。
【0033】
無線環境認識部15は、無線環境を認識し、その認識結果に基づき、スイッチ部13に対して、仮想MAC処理部12から入力されるリンクフレームの分配先を指示する。無線環境認識部15は、各無線モジュール14から無線情報を取得する。また、図示しないセンサーアンテナで観測したデータから無線情報を得てもよい。無線情報としては、例えば、RSSI(Received Signal Strength Indicator)の値、バックグラウンド雑音レベル、変調方式、送信バッファに蓄積されている送信待ちのデータ量、送信失敗を示すNACK信号を相手局から受信した回数、相手局から受信した無線フレームの不良率などが挙げられる。
【0034】
無線環境認識部15は、その無線情報に基づいて、各無線通信方式の通信状況を判断する。例えば、どの無線通信方式が良好な通信状態であるのかを判断する。さらに、どの無線通信方式のどの周波数チャネルが良好な通信状態であるのかを判断する。また、長期的な統計データや短期的な統計データを用いて、将来的に良好な通信状態が得られる可能性がある無線通信方式、さらにはその周波数チャネルを特定する推定処理を行なう。無線環境認識部15は、各無線通信方式の通信状況に基づき、スイッチ部13に対して、仮想MAC処理部12から入力されるリンクフレームの分配先を指示する。リンクフレームの分配先としては、現時点で良好の通信状態であるもの、もしくは、将来的に良好な通信状態が得られるであろうものであって、一つ若しくは複数の無線モジュール14を指示し、さらにはその無線モジュール14における周波数チャネルを一つ若しくは複数を指示する。また、分配比率についても、各無線通信方式の通信状況に基づいて決定し、スイッチ部13に指示するようにしてよい。
【0035】
スイッチ部13は、無線環境認識部15から指示された分配先へ、仮想MAC処理部12から受け取ったリンクフレームを順番に出力する。なお、無線環境認識部15から分配比率が指示された場合には、その分配比率に従って、各分配先へリンクフレームを分配し出力する。なお、基地局装置10は、仮想MAC処理部12を有しているが、これに限定されるわけではない。このように、基地局装置10は、無線環境認識部15が取得した通信品質などの情報に基づき、最適な無線モジュールを選択するようにスイッチ部13を制御する。
【0036】
図3は、本発明の移動局装置100の概略構成を示すブロック図である。また、図3に示すように、移動局装置100は、ユーザ網側インタフェイス101、仮想MAC処理部102、スイッチ部103、マクロセル無線モジュール104a、マイクロセル無線モジュール104b、ピコセル無線モジュール104c、無線環境認識部105、センサ106から構成される。図3において、移動局装置100も、図2の基地局装置10と概ね同様の構成を採る。移動局装置100において、ユーザ側インタフェイスはネットワーク層の処理を行なう。なお、移動局装置100は、仮想MAC処理部102を有しているが、これに限定されるわけではない。移動局装置100は、無線環境認識部105が取得した通信品質などの情報に基づき、最適な無線モジュールを選択するようにスイッチ部103を制御する。
【0037】
図4は、本発明の基地局装置10(図2)と移動局装置100(図3)の無線接続の関係を示す図である。基地局装置10、移動局装置100の間では、同種の無線モジュール間で接続が行なわれる。なお、基地局装置10および移動局装置100は、無線通信装置を構成し、仮想MAC処理部12、102およびスイッチ部13、103は、送信制御部を構成する。次に、本発明の無線リンク多重方式の内容について説明を行なう。
【0038】
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、基地局装置10は、リンク毎の遅延特性を、いくつかのパラメータの関数として規定して、概算式あるいはテーブルとして保持する。このリンク毎の遅延特性を用いることで、第3の実施形態に述べる指標を求めることができる。
【0039】
<リンク毎の遅延時間の算出方式>
図5Aは、WiMAX、LTE等の無線システムにおいて、CIRを変化させた時の、パケットサイズPと遅延時間Delayの関係を示すグラフである。横軸はパケットサイズP、縦軸は遅延時間Delayを表している。無線資源割当率Rが一定値の場合、パケットサイズPが大きく、CIR値が低い程、遅延時間が長い傾向を示す。低CIRの場合、リンクの伝送速度が下がり、パケット伝送に時間を要する為である。また、パケットサイズPが小さい場合、CIR値に関わらず、遅延時間は一定値を示す。ある程度のパケットサイズPまでは、伝送速度が低くても、一定の遅延時間で送信が可能だからである。
【0040】
図5Bは、WiMAX、LTE等の無線システムにおいて、無線資源割当率Rを変化させた時の、パケットサイズPと遅延時間Delayの関係を示すグラフである。横軸はパケットサイズP、縦軸は遅延時間Delayを表している。CIRが一定値の場合、パケットサイズPが大きく、無線資源割当率Rが高いほど、遅延時間Delayが長い特性を示す。無線資源割当率Rが高い場合、送信する機会が減少し、実効スループットが低下する為である。また、図5Aと同様に、ある程度のパケットサイズPまでは、無線資源割当率Rに係わらず、遅延時間は一定値を示す。
【0041】
基地局装置10は、図5A、5Bに示す遅延時間を実測しておき、これをテーブルとして保持する。基地局装置10は、パケットサイズP、CIR、無線資源割当率Rを設定して、この保持しておいたテーブルを参照することで、遅延時間Delayを得ることが可能となる。また、図5A、5Bに示す遅延時間を、式で求めることも可能である。
(Delay)=パケットサイズP[bit]÷{f1(CIR、P)[bit]÷TPDU[時間]×f2(R)}…(1)
【0042】
無線システムでは、パケットをPDU(Protocol Data Unit)に分割して伝送する場合があり、そのPDUサイズは状況により変化する。f(CIR、P)とは、搬送波対干渉電力比がCIRの時に、パケットサイズがPのパケットを伝送する際のPDUサイズ[bit]を示す。基地局装置10は、f(CIR、P)をテーブルとして保持してもよい。TPDU[時間]とは、1PDUの送信に要する時間を示す。
【0043】
式(1)において、f(R)とは、補正値を示す。無線資源割当率Rが上昇すると、すなわち、残資源が減少すると、送信する機会が減少する。これは、リンクの伝送速度(瞬時速度)が高くとも、送信する機会が減少する為に、実効スループットを確保できないケースを意味する。そこで、この補正をf(R)で行なう。f(R)は割合を表し、0≦f(R)≦1を値域とする(単位なし)。
【0044】
図5Cは、本発明の第1の実施形態に係る無線資源割当率Rとf(R)の関係を表すグラフである。図5Cでは、横軸を無線資源割当率Rとして、縦軸にf(R)を示している。無線資源割り当て率Rが低い場合、無線資源に余裕があるため、当該移動局装置100のスループットは低下せず、f(R)は1に近い値をとる。Rが高くなるにつれて、移動局装置100のスループットが低下する為、f(R)は低下する。特にRが100%となる場合、余剰無線資源が存在しない為、f(R)は0となる(この場合、Delay=∞となり、当該無線システムは通信不可とみなして、本制御の対象から除外される)。基地局装置10は、図5Cに示すf(R)の特性をテーブルとして保持してもよい。
【0045】
なお、図5Aのように、パケットサイズPが一定値以下の場合、CIR値に関わらず、Delayは一定値となる。よって、これに該当する場合、一定値を直接に参照してもよい。第1の実施形態に示した処理により、パケット単位の遅延時間Delayを得ることが可能となり、この遅延時間Delayを用いることで、パケット単位の遅延時間を把握することができる。
【0046】
(第2の実施形態)
パケットサイズP、CIRは短い時間スケールで変動する。第2の実施形態では、第1の実施形態のリンク毎の遅延特性を把握する際の、リンク毎のパラメータである、パケットサイズP、CIRが変動する場合の追加処理について説明する。
【0047】
<パケットサイズPの選択>
パケットサイズPは、アプリケーションにより異なり、アプリケーション毎に設定される。よって、アプリケーションが変われば、パケットサイズPが変動することになる。また、複数のアプリケーションが同時に使用されることも一般的である。このような場合にも、当然パケットサイズPは変動する。このようにパケットサイズPが変動する場合には、アプリケーション毎のパケットサイズのP分布を、遅延時間に反映させる。詳細には、以下の方式(P−1)、(P−2)、(P−3)のいずれかの方式を採用する。
【0048】
方式(P−1):アプリケーション毎のパケットサイズのP分布から最長パケットサイズPを求め、最長パケットサイズPを代表値(最悪値)として、第1の実施形態のパケットサイズPに設定する。
【0049】
方式(P−2):まず、パケットサイズPの分布を、アプリケーション種別から推測(あるいは実測)により求める。
【0050】
図6は、本発明の第2の実施形態に係るパケットサイズPの度数分布を示すグラフである。横軸はパケットサイズP、縦軸は度数を表す。この度数分布から、度数がピークとなるパケットサイズPを上位からi個選び、第1の実施形態のパケットサイズPに設定する。そして、同一のアプリケーションについて、パケットサイズ毎に遅延時間を求める。図6においては、2つの度数ピーク(i=1、2)が存在するので、2つの遅延時間を求める。
【0051】
方式(P−3):まず、方式(P−2)同様、パケットサイズPの分布を、アプリケーション種別から推測(あるいは実測)により求める。
【0052】
図7は、本発明の第2の実施形態に係るパケットサイズPの累積度数分布を示すグラフである。横軸はパケットサイズP、縦軸は累積度を表す。この累積度数分布から、X%値(例えばX=50)、すなわち、累積度がX%に達した時のパケットサイズPを求めて、これを第1の実施形態のパケットサイズPに設定する。
【0053】
<CIRの選択>
CIRの変動は、移動局装置100の静止状態、基地局装置10の見通し状態では少ないが、移動局装置100の移動状態等では多い。このようにCIRが変動する場合には、CIRの分布を、遅延時間に反映させる。詳細には、以下の方式(C−1)、(C−2)、(C−3)のいずれかの方式を採用する。
方式(C−1):CIRの瞬時値を、第1の実施形態のCIRに設定する。
方式(C−2):まず、CIRの分布を観測する。
【0054】
図8は、本発明の第2の実施形態に係るCIRの累積度数分布を示すグラフである。この累積度数分布から、Y%値(例えばY=90)、すなわち、累積度がY%に達した時のCIRを求めて、これを第1の実施形態のCIRに設定する。あるいは、CIR瞬時値に対する遅延時間を求めた後に、そのY%値を算出する。
方式(C−3):CIRの変動を観測して、CIRの変動に応じて方式C−1、方式C−2を切り替え、併用する。
【0055】
<パケットサイズPの選択方式とCIRの選択方式の組み合わせ例>
パケットサイズP、CIRの変動は同時に発生しうるため、方式P−#、方式C−#の組み合わせを考える。組み合わせの例を以下の(case-1)、(case-2)に示す。
【0056】
CASE−1(方式P-1&C-1):最長パケットサイズP、CIR瞬時値を用いて、第1の実施形態に沿って遅延時間を求める。この組み合わせは、統計的な処理量が少ない反面、小さいパケットに対して過剰に遅延時間を見積もる欠点がある。
【0057】
CASE−2(方式P-3&C-2):パケットサイズPのX%値、CIRのY%値を用いて、第1の実施形態に沿ってリンク特性を求める。このように第2の実施形態では、第1の実施形態示したリンク毎の遅延時間を得る際に用いるパラメータが変動する場合に、パラメータに2次的な統計処理を行なう。これにより、パラメータの変動を考慮した遅延時間を取得することができる。
【0058】
(第3の実施形態)
第1の実施形態、第2の実施形態により、リンク毎の遅延時間Delayを取得する。本実施形態では、多重するリンクのスループット、遅延時間を考慮する指標を用いることで、一方のリンクから過剰なパケットが送信されて順序逆転が発生する状況を避ける。指標として、スループットと遅延時間を乗じた帯域幅遅延積BDPを式2に従って求める。式2より、単位時間当たりの、オーバヘッドを含めたパケットサイズと遅延時間の積の総和を指標として求める。同式のΣ{}は、単位時間内に送信されたパケットサイズと遅延時間の積の総和である。
指標BDP=Σ{(パケットサイズPi+オーバヘッドOi) ×Delayi}…(2)
【0059】
ここで、iは無線リンク内で送信されたパケットの番号(インデックス)を示す。パケットサイズPとして、第2の実施形態の<パケットサイズPの選択>で示した追加処理後の値を代表として用いてもよく、1個ずつのパケットサイズPを監視して用いてもよい。オーバヘッドOは無線システム毎に異なる値であり、テーブルに保持してもよい。Delayは、第1の実施形態で求める値である。
【0060】
上記のように本実施形態では、基地局装置10は、各リンクの指標BDPに分配率を乗じた結果が一致するように、パケットを分配する。説明上、条件を簡略化してオーバーヘッドO=0、パケットサイズPを一定と仮定すると、Delayの比率だけで、分配率を求められる。Delayの逆数を指標Fとすると、Delay=50ms、Delay=20msの場合、F=20、F=50となり、分配率を以下のように求められる。これにより、基地局装置10は、到着パケットの28.5%をリンク1、71.5%をリンク2に分配する。
分配率1=F1÷(F1+F2)=20÷(20+50)=28.5% ・・・(3)
分配率2=F2÷(F1+F2)=50÷(20+50)=71.5% ・・・(4)
【0061】
このように、第3の実施形態では、基地局装置10はリンク多重を行なう際に、指標BDPを用いてパケット分配率を求める。これにより、基地局装置10は、リンク毎の遅延時間の差異を吸収する。
【0062】
(第4の実施形態)
リンク多重は、順序逆転が生じる等の問題が生じる可能性がある為、その利用を制約することが好ましい。そこで、第4の実施形態では、スループット、遅延時間の目標品質と状況の差異に応じて、リンク切替をするか、リンク多重をするかを判定する。また、リンク多重を使う場合には、適切なリンクを選択した多重を行なう。具体的には、目標遅延時間をDelayTarget、目標スループットをThrTarget、目標ジッタをJitterTargetを設定し、これらを参照しながら、無線システムiのリンク特性である、遅延時間Delay、無線システムiの期待実効スループットThr、ジッタJitterに基づいてリンク切替をするか、リンク多重をするかの判定を行なう。尚、Thrは式(5)に従って求める。Jitterは、Delayの分散として求める。
Thri=f1i(CIR、P)[bit]×f2i(R)…(5)
Jitteri=f3i(Delayi)…(6)
【0063】
図9は、本発明の第4の実施形態におけるリンク切替とリンク多重を使い分ける手順を示すフローチャートである。まず、基地局装置10は、無線リンク毎のスループット、遅延時間、ジッタを測定する(ステップS101)。次に、基地局装置10は、それらと目標品質を比較して、目標品質を単独で満足できる無線リンクを検索する。判断条件を以下に示す(ステップS102)。
【0064】
(i)DelayTargetのみが設定されている場合:式(7)を満たすシステムの存在を検索する。
Delayi<DelayTarget…(7)
(ii)ThrTargetのみが設定されている場合:式(8)を満たすシステムの存在を検索する。
Thri>ThrTarget…(8)
(iii)JitterTargetのみが設定されている場合:式(9)を満たすシステムの存在を検索する。
Jitteri<JitterTarget…(9)
【0065】
(iv)(i)、(ii)、(iii)の組み合わせとして、目標品質が設定されている場合、式(7)、(8)、(9)の組み合わせ条件を満たすリンクを検索する。
【0066】
続いて、単独で目標品質を満足する無線リンクが一つ以上存在する場合(ステップS102:YES)、基地局装置10は、それらとの間でリンクを切り替えるモードに移行する(ステップS103)。基地局装置10は、ステップS102の(i)、(ii)、(iii)、(iv)のいずれかを満たすリンクを切替先候補として、リンク切替方式に沿って動作する。なお、目標品質がベストエフォットである場合および目標品質がスループットのみである場合、単独で目標品質を満足する無線リンクが存在していても、リンク多重モードへ移行してもよい。これは、輻輳状態にある無線リンクの残無線資源を束ねて活用することで、無線資源の分割損を削減する効果を狙うものである。この場合、上記ステップS102の(ii)の条件を満たしつつ、混雑度が閾値を超えている無線リンクを、多重候補として選択する。
【0067】
また、単独で満足できる無線リンクが存在しない場合(ステップS102:NO)、品質目標がThrTargetのみであるかどうかを判断する(ステップS104)。品質目標がThrTargetのみである場合(ステップS104:YES)、リンク多重モードへ移行する(ステップS105)。この場合、リンク多重する候補リンクは、式(10)を満たすリンクの存在を検索し、その中から選択する。
(ΣThri)×α>ThrTarget…(10)
α:リンク多重の効率を示す補正係数
【0068】
また、品質目標がThrTargetのみでない場合(ステップS104:NO)、設定された品質目標に対して、式(7)、(8)、(9)の中から対応する条件式を満たすリンクを多重対象の候補とする。特にオプションとして、候補リンクが2リンク以上となる場合、式(11)を満たす候補リンクのペアが存在するかどうかを判断する(ステップS106)。
min{abs(Delayi-Delayj)}≦Delay_diffTarget…(11)
【0069】
式(11)を満たす無線リンクのペアが存在する場合(ステップS106:YES)、その無線リンクのペアをリンク多重の対象に絞り込む(ステップS105)。これは、遅延時間差が少ないリンクのペアを優先してリンク多重させることで、順序逆転の発生を軽減するためである。式(11)に該当するリンクのペアが存在しない場合(ステップS106:NO)、リンク多重を中止して、リンク切替に移行する(ステップS103)。基地局装置10は、ステップS101〜ステップS106の処理を繰り返し実行して、適応的にリンク切替、リンク多重を使い分ける。
【0070】
このように第4の実施形態では、基地局装置10は、目標品質に応じてリンク切替、リンク多重を動的に使い分ける。これにより、パケットの順序逆転を生じさせるリンク多重を使わずに、目標品質を満たす無線リンクに切り替えることが可能となる。また、リンク多重する際に、目標品質を満たしうる一つもしくは複数の無線リンクを候補として選択する。これにより、目標品質を満たすリンク多重が可能となる。
【0071】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態では、第3の実施形態における式(2)の代わりに、式(2’)のように定義する指標2を用いる。
指標2= Σ{(パケットサイズPi+オーバーヘッドOi)÷Delayi }(2’)
【0072】
ここで、第3の実施形態と同様に、iは無線リンク内で送信されたパケットの番号(インデックス)である。パケットサイズPi+オーバーヘッドOiの値として、平均的な値で代表してもよく、その値に対応する平均的なDelayiを用いてもよい。式(2’)を用いる場合、基地局装置10は、指標2に比例するようにパケットを分配する。例えば、
無線リンク1の期待スループットが5Mbps、遅延時間が100msecである場合、
無線リンク1の指標2=50 ( 5 [Mbit/s] ÷ 0.1 [s] )
無線リンク2の期待スループットが10Mbps、遅延時間が50msecである場合、
無線リンク2の指標2=200 (10[Mbit/s] ÷ 0.05[s] )
指標2の値に比例するように、無線リンク1、無線リンク2の分配率を設定する(1対4)に設定する。なお、式(2’)において、Delayiの代わりに、係数を乗じたもの、n乗したもの、Delayiと共に単調増加する関数を用いるなどの派生も含む。
【0073】
第1の実施形態〜第5の実施形態では、基地局装置10におけるリンク多重方式およびリンク切替・多重の使い分けについて述べた。移動局装置100においても、第1の実施形態〜第4の実施形態を提供することで、当該コントロールを行なう事が可能である。
【符号の説明】
【0074】
10 基地局装置
11 コア網側インタフェイス
12 仮想MAC処理部
13 スイッチ部
14a マクロセル無線モジュール
14b マイクロセル無線モジュール
14c ピコセル無線モジュール
15 無線環境認識部
16 センサ
100 移動局装置
101 ユーザ網側インタフェイス
102 仮想MAC処理部
103 スイッチ部
104a マクロセル無線モジュール
104b マイクロセル無線モジュール
104c ピコセル無線モジュール
105 無線環境認識部
106 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異種無線システムから、少なくとも一つの無線リンクを選択して無線通信を行なう無線通信方法であって、
前記各無線システムのスループットおよび遅延時間を測定すると共に、前記各リンク間の遅延時間差を算出するステップと、
前記測定の結果に基づいて、単独で目標品質を満足する無線システムがあるかどうかを判断するステップと、
前記判断の結果、単独で目標品質を満足する無線リンクが無い場合は、前記各リンク間の遅延時間差と閾値とを比較するステップと、
前記比較の結果、前記遅延時間差が前記閾値以下である場合は、前記各リンクのリンク多重を行なうリンク多重モードを選択する一方、前記遅延時間差が前記閾値を超える場合は、リンク切替を行なうリンク切替モードを選択するステップと、
前記選択したリンク多重モードまたはリンク切替モードのいずれか一方のモードで信号を送信するステップと、を少なくとも含むことを特徴とする無線通信方法。
【請求項2】
前記判断の結果、単独で目標品質を満足する無線システムがある場合は、前記リンク切替モードを選択することを特徴とする請求項1記載の無線通信方法。
【請求項3】
リンクの遅延時間、CIR(Carrier to Interference Ratio)、パケットサイズおよび同時無線資源割当率間の特性を示すテーブルを用いて、前記各リンク間の遅延時間差を算出することを特徴とする請求項1または請求項2記載の無線通信方法。
【請求項4】
前記CIRおよび前記パケットサイズの変動に応じて、前記テーブルの内容を更新することを特徴とする請求項3記載の無線通信方法。
【請求項5】
前記リンク多重モードを選択した場合、多重する各リンクのスループットおよび遅延時間を考慮して、パケットを分配することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の無線通信方法。
【請求項6】
前記各リンクのスループットおよび遅延時間を用いて指標を算出し、前記指標に基づいて、パケットを分配することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の無線通信方法。
【請求項7】
複数の異種無線システムから、少なくとも一つの無線リンクを選択して無線通信を行なう無線通信装置であって、
前記各無線システムのスループットおよび遅延時間を測定すると共に、前記各リンク間の遅延時間差を算出する無線環境認識部と、
前記測定の結果に基づいて、単独で目標品質を満足する無線システムがあるかどうかを判断し、前記判断の結果、単独で目標品質を満足する無線リンクが無い場合は、前記各リンク間の遅延時間差と閾値とを比較し、前記比較の結果、前記遅延時間差が前記閾値以下である場合は、前記各リンクのリンク多重を行なうリンク多重モードを選択する一方、前記遅延時間差が前記閾値を超える場合は、リンク切替を行なうリンク切替モードを選択する送信制御部と、
前記選択されたリンク多重モードまたはリンク切替モードのいずれか一方のモードに基づいて信号を送信する複数の無線モジュールと、を備えることを特徴とする無線通信装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−142602(P2011−142602A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47822(P2010−47822)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、総務省、「電波資源拡大のための研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(599108264)株式会社KDDI研究所 (233)
【Fターム(参考)】