説明

無線通信方法及びシステム、無線通信装置、プログラム

【課題】無線通信装置間の同期性能を向上させる。
【解決手段】ヘッダ部11とペイロード部12を有するデータパケットを無線通信する無線通信方法において、ヘッダ部11は、同期化のためのプリアンブル部21と、プリアンブル部21に続くサブヘッダ部22とを有し、サブヘッダ部22には、少なくともプリアンブル部22における同期性能を助長するためのデータとして、付加的なプリアンブル信号成分、反転プリアンブル信号成分、Golay符号のいずれか1以上をを割り当てて構成されるデータパケットを無線通信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データパケットを無線通信する無線通信方法に関し、特に同期性能を向上させる上で好適な無線通信方法及びシステム、無線通信装置、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
PAN(Personal Area Network)は、高速化され、また安価になってきたため、PANに対する実用化が一段と加速している。このような背景から、PANの標準化がIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineering)で進められている。
【0003】
中でもIEEE802.15.4規格は、868MHz、915MHz及び2.45GHz付近の周波数を利用する無線通信であり、わが国では、IEEE802.15.4d規格が実用化されている。また、このIEEE802.15.4規格を利用したZigbee(登録商標)は、IEEE802.15.4規格で規定されたPHY層及びMAC層を用い、その上位のネットワーク層、アプリケーション層を規格化したものである。このZigbee(登録商標)は、IEEE802.15.4規格の特徴を生かし、超低消費電力化、小型化、低コスト化を実現可能としている。
【0004】
このように、IEEE802.15.4規格は、センサネットワークのみならず、ホームネットワーク、オフィスネットワーク、人体に装着した各種医療用機器との通信ネットワークに加え、将来的にはユビキタスネットワーク社会を実現するためのキーテクノロジーとしても注目されている。
【0005】
IEEE802.15.4規格による無線通信では、ネットワークを制御するNC(Network-Coordinator)と、複数のED(End Device)と間で近距離無線通信を行うのが一般的である。ちなみに、このネットワークの例としては、スター型、ツリー型、メッシュ型といった多彩なネットワーク形態が選択可能である。
【0006】
また、このIEEE802.15.4規格による無線通信に使用されるデータパケットは、図9に示すように、プリアンブル部61、SFD(Start Frame Delimiter)62、実データが記述されるペイロード部63に大きく分類することができる(例えば、特許文献1、2参照。)。また、ペイロード63部の前には、当該ペイロード63に関する管理情報等が記述されたPHYヘッダ65が付される場合もある。
【0007】
プリアンブル部61は、データパケットの先頭に割り当てられるものであり、データリンク上で通信の開始を知らせるため,実データに先立って流すビット列である。このプリアンブル部61に割り当てられたビット列は、主として同期化を行うためのプリアンブル信号成分である。
【0008】
また、このプリアンブル信号成分の終端には、SFD62が付加される。このSFD62は、プリアンブル信号成分の終わりを示すとともに、ペイロード部63前段の送信先アドレス部の開始を示す1オクテット(8ビット)長のフィールドである。このSFD62におけるデータビットの特定系列の割り当てが、プリアンブル部61におけるプリアンブル信号成分の終端を意味するものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−4316号公報
【特許文献2】特表2009−516935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上述したIEEE802.15.4規格による無線通信に使用されるデータパケットでは、あくまでプリアンブル信号成分のみに基づいて無線端末間で同期化を行う。このプリアンブル信号成分は、限られたビット数のみで構成されていることから、同期性能をより向上させる上での限界となっていた。一方SFD62は、上述したように、主としてプリアンブル信号成分の終端を示す役割に留まるものであり、同期性能を向上させるための信号を記述することを何ら意図する領域ではない。このため、より同期性能を向上させることが可能なIEEE802.15.4規格のデータパケットが従来より望まれていた。
【0011】
なお、この無線端末間の同期性能の向上は、全ての通信空間において要求されるものではなく、あくまである特定の通信空間でのみ要求されるものである。このため、各通信空間に応じて無線端末間の同期性能を臨機応変に切り替えることも可能なパケット構成も提案する必要があった。
【0012】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、同期性能を向上させることができ、しかも各通信空間に応じてかかる同期性能を臨機応変に切り替える上で好適な、IEEE802.15.4規格の無線通信方法及びシステム、無線通信装置、プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の無線通信方法は、ヘッダ部とペイロード部を有するデータパケットを無線通信する無線通信方法において、上記ヘッダ部は、同期化のためのプリアンブル部と、上記プリアンブル部に続くサブヘッダ部とを有し、上記サブヘッダ部には、上記プリアンブル部における同期性能を助長するための信号系列、当該同期性能を助長すると同時にデータパケットの状態に関する付加情報を明示する信号系列、の一方又はその双方を割り当てて構成されるデータパケットを無線通信することを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の無線通信方法は、請求項1記載の発明において、上記サブヘッダ部には、上記プリアンブル部に続く付加的なプリアンブル信号成分を割り当てて構成されるデータパケットを無線通信することを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の無線通信方法は、請求項1記載の発明において、上記サブヘッダ部には、上記プリアンブル部に続く反転プリアンブル信号成分を割り当てて構成されるデータパケットを無線通信することを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の無線通信方法は、請求項1記載の発明において、上記サブヘッダ部には、Golay符号のComplementary pairsの一方のサブ系列の符号と、他方のサブ系列の符号を、必要に応じて順序を入れ替え、或いは何れか一方又は両方の極性を反転させた上で組み合わせて構成した系列をサブヘッダに含ませたデータパケットを無線通信することを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の無線通信方法は、請求項4記載の発明において、上記サブヘッダ部に含ませるサブ系列(以下、元サブ系列)の前後に、当該元サブ系列の後半部分および前半部分をそれぞれ元サブ系列が巡回している形に置き換えることを特徴とする。
【0018】
請求項6記載の無線通信方法は、請求項4記載の発明において、上記サブヘッダ部には、Golay符号の一方のサブ系列の符号と、他方のサブ系列の符号とを順に割り当て、更にその後に上記一方のサブ系列、又は上記他方のサブ系列のいずれかの符号を割り当てて構成されるデータパケットを無線通信することを特徴とする。
【0019】
請求項7記載の無線通信方法は、請求項1記載の発明において、上記サブヘッダ部には、上記プリアンブル部に続く付加的なプリアンブル信号成分又は上記プリアンブル部に続く反転プリアンブル信号成分と、Golay符号とを順に割り当てて構成されるデータパケットを無線通信することを特徴とする。
【0020】
請求項8記載の無線通信方法は、請求項1記載の発明において、上記サブヘッダ部における、上記プリアンブル部における同期性能を助長するための信号系列、当該同期性能を助長すると同時にデータパケットの状態に関する付加情報を明示する信号系列の割り当てを、1)無線通信装置のネットワークへの割当毎に決定する場合、2)無線通信装置間の通信ストリーム毎に決定する場合、の何れか、又は双方が可能であって、上記選択は、A)ネットワーク内に割り当てられている無線通信装置の数、B)使用する通信メディアの種類、C)ネットワークの構成、の何れか1以上に基づいて行うことを特徴とする。
【0021】
請求項9記載の無線通信システムは、ヘッダ部とペイロード部を有するデータパケットを無線通信する無線通信システムにおいて、上記ヘッダ部は、更に同期化のためのプリアンブル部と、上記プリアンブル部に続くサブヘッダ部とを有し、上記サブヘッダ部には、上記プリアンブル部における同期性能を助長するための信号系列、当該同期性能を助長すると同時にデータパケットの状態に関する付加情報を明示する信号系列の一方又はその双方を割り当てて構成されるデータパケットを無線通信することを特徴とする。
【0022】
請求項10記載の無線通信システムは、請求項9記載の無線通信システムに適用される無線通信装置において、上記データパケットを生成するデータ生成手段と、他の当該無線通信装置から受信した上記データパケットから上記プリアンブル部並びに上記サブヘッダ部に割り当てられたデータに基づいて他の当該無線通信装置との間で同期化を行う同期化手段とを備えることを特徴とする。
【0023】
請求項11記載のプログラムは、請求項10記載の無線通信装置に実行させるためのプログラムにおいて、上記ヘッダ部は、同期化のためのプリアンブル部と、上記プリアンブル部に続くサブヘッダ部とを有し、上記サブヘッダ部には、上記プリアンブル部における同期性能を助長するための信号系列、当該同期性能を助長すると同時にデータパケットの状態に関する付加情報を明示する信号系列の一方又はその双方を割り当てて構成されるデータパケットを生成するデータ生成ステップと、他の当該無線通信装置から受信した上記データパケットから上記プリアンブル部並びに上記サブヘッダ部に割り当てられたデータに基づいて他の当該無線通信装置との間で同期化を行い、及び/又は上記付加情報に応じた制御を実行するステップとを上記無線通信装置に実行させる。
【発明の効果】
【0024】
上述した構成からなる本発明によれば、プリアンブル部に続くサブヘッダ部を新たに設定し、当該サブヘッダ部には、少なくともプリアンブル部における同期性能を助長するためのデータを割り当てて構成するものであるから、かかる同期性能をより向上させることができる。また、サブヘッダ部における同期性能を助長するためのデータは、各通信空間に応じて自在に改変可能であることから、かかる同期性能そのものを通信空間に応じて臨機応変に切り替えることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を適用した無線通信システムのシステム構成図である。
【図2】本発明を適用した無線通信システムに適用されるデータパケットの構成を示す図である。
【図3】サブヘッダ部にプリアンブル信号を割り当てた例を示す図である。
【図4】サブヘッダ部に反転プリアンブル信号を割り当てた例を示す図である。
【図5】サブヘッダ部にGolay符号を割り当てた例を示す図である。
【図6】Golay符号の一方のサブ系列の符号と、他方のサブ系列の符号とを組み合わせて構成した例を示す図である。
【図7】サブヘッダ部にGolay符号を割り当てる場合の他の例を示す図である。
【図8】サブヘッダ部に、プリアンブル信号成分又は反転プリアンブル信号成分と、Golay符号とを順に割り当てた例を示す図である。
【図9】IEEE802.15.4規格による無線通信に使用されるデータパケットの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明を適用した無線通信システム1のシステム構成を示している。この無線通信システム1は、各種通信方式に基づいて、一の通信装置2aと、他の通信装置2bとの間で互いに電波を送受信することにより双方向で無線通信するシステムである。
【0028】
この無線通信システム1は、例えばIEEE802.15.4、802.15.4d標準に基づくPAN(Personal Area Network)である。なお、無線通信システム1は、図1に示すような1対1のネットワーク形態に限定されるものではなく、1対複数のスター型、ツリー型等いかなるネットワーク形態を適用してもよい。
【0029】
通信装置2は、例えば、ノート型のパーソナルコンピュータ(ノートPC)や、携帯電話等を初めとした各種携帯情報端末、等で構成される。通信装置2は、少なくともPANにおいて他の通信装置2との間で無線パケット通信を行うことができる。また、これら通信装置2間では、互いに同期化を行った上で無線パケット通信を行う。
【0030】
また本発明を適用した無線通信システム1は、例えば図2に示すようなデータパケット5を使用する。このデータパケット5は、ヘッダ部11とペイロード部12を有する。ヘッダ部11は、管理情報等が書き込まれる領域であって、後述するペイロード部12に記述される実データに関する各種情報が書き込まれる。このヘッダ部11は、更にプリアンブル部21と、当該プリアンブル部21に続くサブヘッダ部22とを有する。ペイロード部12は、通信装置2を利用して実際に相手側へと本来伝達したい実データが記述される領域である。
【0031】
ヘッダ部11を構成するプリアンブル部21には、プリアンブル信号成分が記述される。このプリアンブル信号は、データパケットの先頭に割り当てられるものであり、パケットの同期確立等の目的で、実データに先立って流すビット列である。このプリアンブル部21に割り当てられたプリアンブル信号は、主として同期化を行うためビット列である。
【0032】
プリアンブル信号は、所定のコードに従ってビット列が規則的に並べられているため、このプリアンブル信号がプリアンブル部21に付されたパケットデータを受信した他の通信装置2においては、このプリアンブル信号における規則的なビット配列とそのコードを検出することにより、信号捕捉、同期、およびチャネル推定を行い、ひいては通信を行うことができる。
【0033】
サブヘッダ部22は、プリアンブル部21における同期性能を助長するためのデータを含むことが可能である。このサブヘッダ部22は、特定の形式で定義される領域ではなく、例えばSFD(Start Frame Delimiter)として構成するようにしてもよいし、他のデータいかなるデータ領域として構成するようにしてもよい。
【0034】
サブヘッダ部22における同期性能を助長するためのデータとしては、例えば、図3に示すようにプリアンブル信号としてもよいし、図4に示すように反転プリアンブル信号としてもよい。更に同期に加え、現在パケット構成等に関する付加的な情報を明示する目的として、図5に示すように、サブヘッダ22にGolay符号を構成するようにしてもよい。即ち、このサブヘッダ部22には、プリアンブル部における同期性能を助長するための信号系列、当該同期性能を助長すると同時にデータパケットの状態に関する付加情報を明示する信号系列、の一方又はその双方を割り当てて構成されることになる。
【0035】
サブヘッダ部22についてプリアンブル信号で構成する場合には、当該サブヘッダ部22のプリアンブル信号は、プリアンブル部21におけるプリアンブル信号に対して付加的なものとして構成される。かかる場合において、このサブヘッダ部22のプリアンブル信号は、その直前のプリアンブル部21のプリアンブル信号の延長のビット列で構成するようにしてもよい。かかる場合には、データパケット5を受信する側の通信装置2において、このサブヘッダ部22のプリアンブル信号と、その直前のプリアンブル部21のプリアンブル信号とを一体化して受信処理を行うことが可能となり、実質的にプリアンブル系列のビット列の拡張となることから、同期性能をより向上させることが可能となる。
【0036】
また、サブヘッダ部22について、反転プリアンブル信号とする場合には、プリアンブル部21におけるプリアンブル信号を構成する各ビットの符号を反転させて構成する。かかる場合には、データパケット5を受信する側の通信装置2において、プリアンブル部21のプリアンブル信号の相関処理後の出力が、サブヘッダ部22の反転プリアンブル信号により、途中で反転することになる。その結果、このプリアンブル信号の反転を識別することにより、プリアンブル部21のプリアンブル信号の終焉を容易に判別することが可能となる。
【0037】
次に図5に示すように、サブヘッダ部22において、プリアンブル部21における同期性能の助長に加え、現在パケット構成等に関する付加的な情報を明示する目的でGolay符号を付す場合について説明をする。このGolay符号は、図6に示すようにGolay符号の一方のサブ系列aの符号と、他方のサブ系列bの符号とを組み合わせて構成する。各サブ系列は、それぞれ8ビットの信号を形成するものであり、かかるサブ系列a、bの符号の組合せ方法に応じて識別子を形成させることも可能となる。
【0038】
例えば図6に示すように、サブヘッダ部22においてサブ系列a、サブ系列bの順で並べることにより、例えばペイロードを符号化する旨の識別子を形成することが可能となる。またサブヘッダ部22においてサブ系列a、サブ系列bを反転させたサブ系列−bの順で並べることにより、例えばペイロードを符号化しない旨の識別子を形成することが可能となる。更にサブヘッダ部22においてサブ系列b、サブ系列aの順で並べることにより、又はサブ系列b、サブ系列−aの順で並べることにより、ある所定の識別子を作り出すことも可能となる。
【0039】
即ち、Golay符号のComplementary pairsの一方のサブ系列の符号と、他方のサブ系列の符号を、必要に応じて順序を入れ替え、或いは何れか一方又は両方の極性を反転させた上で組み合わせて構成した系列をサブヘッダに含ませるものとする。
【0040】
このようにGolay符号は、2種類の補完的なサブ系列a、bを組み合せたn組で表わされる。そして、このサブ系列の組合せは、いずれかのサブ系列a又はサブ系列bを反転させた場合と、当該サブ系列の順序を入れ替えた場合で合計8通りの割り当て形態があり、n組を用いると8通りの割り当て形態が可能である。この割り当て形態の種類を、データパケットの付加的な情報の識別子として活用することができる。例えば、当該表示部分以降のヘッダ部、ペイロード部のいずれかあるいは両方が誤り制御符号化されている場合にその状態、すなわち符号化の有無や、符号語の種類等を識別子化して表示することができる。
【0041】
なお、このGolay符号はサブ系列aとサブ系列bとは、互いに相補的な符号であるため、2つのサブ系列a、bの相関検出信号を加算すると、ノイズ成分がキャンセルされる。このため、このGolay符号では、相関検出信号のサイドローブが小さくなり、理想的な相関検出信号が得られる。
【0042】
このようなGolay符号のサブ系列a、bを組み合せることにより、同期化を実現するための識別子を作り出すことも可能となる。これにより、プリアンブル部21におけるプリアンブル信号による同期性能をより向上させることが可能となる。
【0043】
また、このGolay符号を付す場合には、例えば以下の図7に示すような形態を用いるようにしてもよい。例えばサブ系列aの前半のビット列a=[1 −1 −1 −1]とし、後半のビット列a=[1 1 −1 1]とし、またサブ系列bの前半のビット列b=[−1 1 −1 −1]とし、後半のビット列b=[−1 −1 −1 1]とする。このとき、例えば図7(a)に示すように、サブヘッダ部22においてビット列をa、a、a、b、b、bの順で配列するようにしてもよい。即ち、このサブヘッダ部22におけるサブ系列a、bの一部の符号を抽出して、その前又は後に割り当ててこれを構成することとなる。即ち、サブヘッダ部22に含ませるサブ系列a(以下、元サブ系列)の前後に、当該元サブ系列aの後半部分aおよび前半部分aをそれぞれ元サブ系列aが巡回している形に置き換えることを行う。
【0044】
これにより、Golay符号のサブ系列は、相関時に一方が巡回シフトされた状態であると、極めて優れた無相関特性を示すため、図7(a)の例のように、互いに長さが等しいa、aの巡回成分を前後に付加した場合、相関時の前後、付加成分の時間区間において優れた無相関特性が得られることになる。これは、相関の誤検出の防止に有効である。
【0045】
また図7(b)に示すように、サブ系列についてサブ系列a、b、aの順で並べるようにしてもよい。これにより、Golayサブ系列のいずれかが複数回送信されることになり、重複送信による信頼度が向上する。このときサブ系列a、b、bの順で並べるようにしてもよい。即ち、この形態においては、サブヘッダ部22に、Golay符号の一方のサブ系列aと、他方のサブ系列bとを順に割り当て、更にその後に上記一方のサブ系列a又は他方のサブ系列bを割り当てて構成したものである。
【0046】
ちなみに、本発明を適用した無線通信システム1では、上述の如くサブヘッダ部22を新たに設定することにより、同期性能を助長するためのデータを自在に挿入することも可能となり、その種別も自由に決定して挿入することが可能となる。通信装置2間の同期性能の向上は、全ての通信空間において要求されるものではなく、あくまである特定の通信空間でのみ要求されるものである。このため、各通信空間に応じて通信装置2間の同期性能を臨機応変に切り替えるべく、サブヘッダ部22において同期性能を助長するためのデータを自在に入れ替えることも可能となる。なお、通信装置2間の同期性能を特段向上させる必要が無い場合には、このサブヘッダ部22をSFDとして構成するようにしてもよい。
【0047】
また、本発明では、サブヘッダ部22における、プリアンブル部21における同期性能を助長するための信号系列、当該同期性能を助長すると同時にデータパケットの状態に関する付加情報を明示する信号系列の割り当てを、1)通信装置2のネットワークへの割当毎に決定する場合、2)通信装置2間の通信ストリーム毎に決定する場合、の何れか、又は双方を可能とするようにしてもよい。そして、この1)、2)の何れか又は双方の選択を、A)ネットワーク内に割り当てられている無線通信装置の数、B)使用する通信メディアの種類、C)ネットワークの構成の何れか1以上に基づいて行うようにしてもよい。ここでいうB)使用する通信メディアの種類とは、例えば長/短データ、高品質/低品質データ等を表すものである。またC)ネットワークの構成とは、いわゆるネットワークのトポロジを意味するものであり、例えばツリー型、メッシュ状であるか否か、またそのネットワーク構成における通信相手までのホップ数等の情報である。
【0048】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、図8に示すように、サブヘッダ部22には、プリアンブル部21に続く付加的なプリアンブル信号成分又はプリアンブル部21に続く反転プリアンブル信号成分と、Golay符号とを順に割り当てて構成するようにしてもよい。ちなみに図8は、サブヘッダ部22の前段に反転プリアンブル信号を割り当てた例であるが、その代替として付加的なプリアンブル信号成分を割り当てるようにしてもよい。これらプリアンブル信号又は反転プリアンブル信号と、Golay符号とを組み合わせて構成することにより、上述した同期化並びに識別子化した情報の送信の双方を同時に実現することが可能となる。
【0049】
また本発明は、上述した無線通信方法、無線通信システム1として具体化される場合に加え、その無線通信システム1に適用される各通信装置2としても具体化されるものである。かかる場合には、各通信装置2において、上述したデータパケットを生成するための手段が実装されているとともに、他の当該通信装置2から受信したデータパケットからプリアンブル部21並びにサブヘッダ部22に割り当てられたデータに基づいて他の当該通信装置2との間で同期化を行う手段が実装されていることが必要になる。
【0050】
更に本発明では、かかる通信装置2に実行させるためのプログラムとして具体化されるものであってもよい。
【0051】
かかる場合には、ヘッダ部11は、同期化のためのプリアンブル部21と、プリアンブル部21に続くサブヘッダ部22とを有し、サブヘッダ部22には、少なくともプリアンブル部21における同期性能を助長するためのデータを割り当てて構成されるデータパケットを生成するデータ生成ステップを有するプログラムとする。また、他の当該通信装置2から受信したデータパケットからプリアンブル部21並びにサブヘッダ部22に割り当てられたデータに基づいて他の当該通信装置2との間で同期化を行う同期化ステップを有するプログラムとする。
【符号の説明】
【0052】
1 無線通信システム
2 通信装置
5 データパケット
11 ヘッダ部
12 ペイロード部
21 プリアンブル部
22 サブヘッダ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッダ部とペイロード部を有するデータパケットを無線通信する無線通信方法において、
上記ヘッダ部は、同期化のためのプリアンブル部と、上記プリアンブル部に続くサブヘッダ部とを有し、上記サブヘッダ部には、上記プリアンブル部における同期性能を助長するための信号系列、当該同期性能を助長すると同時にデータパケットの状態に関する付加情報を明示する信号系列、の一方又はその双方を割り当てて構成されるデータパケットを無線通信すること
を特徴とする無線通信方法。
【請求項2】
上記サブヘッダ部には、上記プリアンブル部に続く付加的なプリアンブル信号成分を割り当てて構成されるデータパケットを無線通信すること
を特徴とする請求項1記載の無線通信方法。
【請求項3】
上記サブヘッダ部には、上記プリアンブル部に続く反転プリアンブル信号成分を割り当てて構成されるデータパケットを無線通信すること
を特徴とする請求項1記載の無線通信方法。
【請求項4】
上記サブヘッダ部には、Golay符号のComplementary pairsの一方のサブ系列の符号と、他方のサブ系列の符号を、必要に応じて順序を入れ替え、或いは何れか一方又は両方の極性を反転させた上で組み合わせて構成した系列をサブヘッダに含ませたデータパケットを無線通信すること
を特徴とする請求項1記載の無線通信方法。
【請求項5】
上記サブヘッダ部に含ませるサブ系列(以下、元サブ系列)の前後に、当該元サブ系列の後半部分および前半部分をそれぞれ元サブ系列が巡回している形に置き換えることを特徴とする請求項4記載の無線通信方法。
【請求項6】
上記サブヘッダ部には、Golay符号の一方のサブ系列の符号と、他方のサブ系列の符号とを順に割り当て、更にその後に上記一方のサブ系列、又は上記他方のサブ系列のいずれかの符号を割り当てて構成されるデータパケットを無線通信すること
を特徴とする請求項4記載の無線通信方法。
【請求項7】
上記サブヘッダ部には、上記プリアンブル部に続く付加的なプリアンブル信号成分又は上記プリアンブル部に続く反転プリアンブル信号成分と、Golay符号とを順に割り当てて構成されるデータパケットを無線通信すること
を特徴とする請求項1記載の無線通信方法。
【請求項8】
上記サブヘッダ部における、上記プリアンブル部における同期性能を助長するための信号系列、当該同期性能を助長すると同時にデータパケットの状態に関する付加情報を明示する信号系列の割り当てを、
1)無線通信装置のネットワークへの割当毎に決定する場合、
2)無線通信装置間の通信ストリーム毎に決定する場合、
の何れか、又は双方が可能であって、
上記選択は、
A)ネットワーク内に割り当てられている無線通信装置の数、
B)使用する通信メディアの種類、
C)ネットワークの構成、
の何れか1以上に基づいて行うこと
を特徴とする請求項1記載の無線通信方法。
【請求項9】
ヘッダ部とペイロード部を有するデータパケットを無線通信する無線通信システムにおいて、
上記ヘッダ部は、更に同期化のためのプリアンブル部と、上記プリアンブル部に続くサブヘッダ部とを有し、上記サブヘッダ部には、上記プリアンブル部における同期性能を助長するための信号系列、当該同期性能を助長すると同時にデータパケットの状態に関する付加情報を明示する信号系列の一方又はその双方を割り当てて構成されるデータパケットを無線通信すること
を特徴とする無線通信システム。
【請求項10】
請求項9記載の無線通信システムに適用される無線通信装置において、
上記データパケットを生成するデータ生成手段と、
他の当該無線通信装置から受信した上記データパケットから上記プリアンブル部並びに上記サブヘッダ部に割り当てられたデータに基づいて他の当該無線通信装置との間で同期化を行う同期化手段とを備えること
を特徴とする無線通信装置。
【請求項11】
請求項10記載の無線通信装置に実行させるためのプログラムにおいて、
上記ヘッダ部は、同期化のためのプリアンブル部と、上記プリアンブル部に続くサブヘッダ部とを有し、上記サブヘッダ部には、上記プリアンブル部における同期性能を助長するための信号系列、当該同期性能を助長すると同時にデータパケットの状態に関する付加情報を明示する信号系列の一方又はその双方を割り当てて構成されるデータパケットを生成するデータ生成ステップと、
他の当該無線通信装置から受信した上記データパケットから上記プリアンブル部並びに上記サブヘッダ部に割り当てられたデータに基づいて他の当該無線通信装置との間で同期化を行い、及び/又は上記付加情報に応じた制御を実行するステップとを上記無線通信装置に実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−146974(P2011−146974A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6788(P2010−6788)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】