説明

無線通信端末および無線通信端末における通信制御方法

【課題】圏外と判定された状態にあっても、発信操作が行なわれたときに通信システムの捕捉を効率的に行い、極力、ユーザが希望する通信方式による接続を試行する。
【解決手段】少なくともシステム選択部85と、捕捉指示機能実行部86とから構成され、シスシステム選択部85は、無線通信端末がシステムスキャンを行なうことのできる全ての通信システムが捕捉できない場合に限り捕捉指示機能実行部86に対して捕捉の失敗を報知する仕組みとし、また、捕捉指示機能実行部86は、システム選択部85から全システムのスキャンの結果としての捕捉失敗の報知がなされない限り、再度システムスキャンの要求を発行しない仕組みとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、マルチバンド対応の無線通信システムに用いて好適な、無線通信端末および無線通信端末における通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CDMA(Code Division Multiple Access)通信に適用される無線通信端末は、発着信やデータ通信を行なう際に、チャネルの捕捉動作を開始する。そして、捕捉したチャネルの構成情報、タイミング情報を取得し、また、捕捉したチャネルのタイミングに同期させて位置登録情報等を取得する。
ところで、チャネルの受信電界強度は、無線通信端末の使用環境(地形や建物等)によっては著しく低下することがあり、チャネルの受信電界強度が低い場合には、チャネルの電波を受信したにもかかわらず、当該チャネルが捕捉できなかったものと判定され、圏内復帰処理に移行する。この圏内復帰処理において、無線通信端末は所定の周期でチャネルの捕捉動作を行なうシステムスキャンを実行する。
【0003】
ところで、無線通信端末が圏外にある場合、無線通信端末は、内部的に圏外であることを示すフラグ(圏外フラグ)をONする。このような状況にあって、ユーザが発信操作を行なっても圏外フラグがONしている間は発信できる可能性が低く、また、省電力のために発信処理を起動していなかった。
また、一旦、圏外と判定された場合、圏内復帰処理を所定周期で行うが、復帰のためのシステムスキャンを試行する通信方式が限定的であったりして、圏内復帰のために要する時間は無視できないものとなっている。例えば、トンネルの出入り等、使用環境が極端に異なる場所では、トンネルから出てすぐに圏内復帰処理ができれば良いが、圏内復帰捕捉動作のタイミングにならない限りすぐには復帰できない。また、圏内復帰捕捉処理を行なってもすぐには圏内復帰につながるわけではない。
【0004】
上記した問題を解決するために、圏外と判定された場合でも発信操作がなされればチャネルの捕捉動作を行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−23665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1に開示された技術によれば、圏内復帰処理において発呼成功率を向上させることができる。しかしながら、最近、1個の無線通信端末で複数の周波数帯(例えば、800MHz、2GHz)が使用可能になってきており、また、使用できる通信プロトコルについても複数(1x、EVDO)対応可能な無線通信端末が増加してきており、単一の通信システムについての複数チャネルの圏内復帰捕捉処理だけでは、ユーザが希望する通信方式での発信がなされるとは限らない。
【0006】
本発明は上記した課題に基づいてなされたものであり、複数の通信方式に対応可能な無線通信端末において、圏外と判定された状態にあっても発信操作が行なわれたときに通信システムの捕捉を効率的に行い、極力、ユーザが希望する通信方式による接続を試行することのできる、無線通信端末および無線通信端末における通信制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点は、複数の通信システムを捕捉可能であって、第1の通信プロトコルによる通信と第2の通信プロトコルによる通信とのいずれも実行可能な通信部と、操作部と、前記操作部により通信開始が指示されたときに、前記複数の通信システムのいずれかで前記第1の通信プロトコルまたは第2の通信プロトコルを用いて前記通信部による通信を制御する制御部と、を備える無線通信端末であり、前記制御部は、前記通信部に、捕捉させる通信システムを指示する通信システム選択部と、前記通信部に前記第1の通信プロトコルによる捕捉を指示する第1プロトコル実行部と、前記通信部に前記第2の通信プロトコルによる捕捉を指示する第2プロトコル実行部と、前記通信システム選択部に、通信システムの捕捉開始指示を行う捕捉指示機能実行部と、を有し、前記捕捉指示機能実行部は、通信を行うことの出来ない圏外状態にあると判定された状態において、前記操作部による発信操作を検出したとき、前記通信システム選択部に対し、前記複数の通信システムのいずれかの捕捉を指示する第1の捕捉指示を行い、前記第1の捕捉指示に対して捕捉失敗が報知された場合に、前記通信システム選択部に対して第2の捕捉指示を行い、前記第1の捕捉指示、あるいは前記第2の捕捉指示に対して捕捉成功が報知された場合に、捕捉が成功した通信システムによる通信開始の処理を行い、前記通信システム選択部は、前記第1の捕捉指示にしたがう捕捉処理を前記複数の通信システム毎、捕捉が成功するまで前記第1プロトコル実行部に行わせ、いずれの通信システムにおいても捕捉が失敗した場合には前記捕捉指示機能実行部に捕捉が失敗したことを報知し、いずれかの通信システムにおいて捕捉が成功した場合には前記捕捉指示機能実行部に捕捉が成功したことを報知し、前記第2の捕捉指示にしたがう捕捉処理を前記複数の通信システム毎、捕捉が成功するまで前記第2プロトコル実行部に行わせ、いずれの通信システムにおいても捕捉が失敗した場合には前記捕捉指示機能実行部に捕捉失敗を報知し、いずれかの通信システムにおいて捕捉が成功した場合には前記捕捉指示機能実行部に捕捉成功を報知する。
また、前記捕捉指示機能実行部は、前記第1の捕捉指示を行ってから第1の所定時間が経過すると捕捉失敗の報知の有無を判定し、捕捉失敗の報知が無ければ、前記第1の所定時間より短い第2の所定時間の周期で捕捉失敗の報知の有無を判定する。
【0008】
また、好適には、前記複数の通信システムは、それぞれで周波数帯の異なる通信システムである。
【0009】
さらに、好適には、前記複数の通信システムは、それぞれでCDMA(Code Division Multiple Access)通信におけるバンドクラスの異なる通信システムを含む。
【0010】
また、好適には、前記複数の通信システムは、前記バンドクラスの異なる通信システムに関するプライマリチャネル、セカンダリチャネルである。
【0011】
さらに、好適には、表示部を更に有し、前記捕捉指示機能実行部は、圏外状態にあると判定された状態において前記操作部による発信操作を検出し、前記第1の捕捉指示による捕捉失敗が報知された後に、前記第2の捕捉指示による捕捉失敗が報知されたとき、前記表示部に発信の失敗を表示させる。
【0012】
また、好適には、前記圏外状態は、前記第1プロトコル実行部、および第2プロトコル実行部のいずれにおいても前記複数の通信システムの捕捉ができない状態が生じ、前記捕捉指示機能実行部により前記表示部に対して圏外表示させている状態であって、前記通信部による圏内復帰処理が実行される状態である。
【0013】
また、好適には、前記通信システム選択部は、前記第1の捕捉指示に基づく捕捉処理を、前記第1の所定時間中、繰り返し実行する。
【0014】
また、好適には、前記捕捉指示機能実行部は、前記発信操作が、音声発信の操作であった場合には、前記通信システム選択部に対して第3の捕捉指示を行い、前記通信システム選択部は、前記第3の捕捉指示をうけると、前記複数の通信システム毎に捕捉が成功するまで前記第2のプロトコル実行部に捕捉処理を行わせ、いずれの通信システムにおいても捕捉が失敗した場合には前記捕捉指示機能実行部に捕捉の失敗を報知し、いずれかの通信システムにおいて捕捉が成功した場合には前記捕捉指示機能実行部に捕捉が成功したことを報知する。
【0015】
さらに、好適には、前記捕捉指示機能実行部は、前記発信操作が音声発信の操作であった場合に、前記通信システム選択部に対して第3の捕捉指示を行い、前記通信システム選択部は、前記第3の捕捉指示にしたがい、前記複数の通信システム毎に捕捉が成功するまで前記第2のプロトコル実行部に捕捉処理を行わせ、いずれの通信システムにおいても捕捉が失敗した場合に前記捕捉指示機能実行部に捕捉の失敗を報知し、いずれかの通信システムにおいて捕捉が成功した場合に捕捉が成功したことを報知する。
【0016】
また、本発明の第2の観点の無線通信端末における通信制御方法は、複数の通信システムを捕捉可能であって、第1の通信プロトコルによる通信と第2の通信プロトコルによる通信とのいずれも実行可能な通信部と、操作部と、前記操作部により通信開始が指示されたときに、前記複数の通信システムのいずれかで前記第1の通信プロトコルまたは第2の通信プロトコルを用いて前記通信部による通信を制御する、通信システム選択部、第1プロトコル実行部、第2プロトコル実行部、捕捉指示機能実行部を含む制御部と、を備える無線通信端末における通信制御方法であり、前記捕捉指示機能実行部が、通信を行うことの出来ない圏外状態にあると判定された状態において、前記操作部による発信操作が検出されたとき、前記通信システム選択部に対し、前記複数の通信システムのいずれかの捕捉を指示する第1の捕捉指示を行う第1のステップと、前記第1のプロトコル実行部が、前記第1のステップに基づいて、前記複数の通信システム毎に捕捉が成功するまで捕捉処理を実行する第2のステップと、前記通信システム選択部が、前記第2のステップにおいて、いずれの通信システムにおいても捕捉できない場合には前記捕捉指示機能実行部に対して捕捉の失敗を報知する第3のステップと、前記捕捉指示機能実行部が、前記捕捉失敗が報知されたことをうけ、前記通信システム選択部に対して第2の捕捉指示を行う第4のステップと、前記第2のプロトコル実行部が、前記第4のステップに基づいて、前記複数の通信システム毎、捕捉が成功するまで捕捉処理を実行する第5のステップと、前記通信システム選択部が、前記第5のステップにおいて、いずれの通信システムにおいても捕捉できない場合には前記捕捉指示機能実行部に対して捕捉の失敗を報知する第6のステップと、前記通信システム選択部が、前記第2のステップ、もしくは第5のステップにおいて、いずれかの通信システムにおいて捕捉が成功した場合に、前記捕捉指示機能実行部に対して捕捉の成功を報知する第6のステップと、前記捕捉指示機能実行部が、前記捕捉成功の報知をうけ、捕捉が成功した通信システムによる通信開始の処理を行う第7のステップと、を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、圏外と判定された状態にあっても、発信操作が行なわれたときに通信システムの捕捉を効率的に行い、極力、ユーザが希望する通信方式による接続を試行可能な無線通信端末を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施形態の説明に先立ち、無線通信端末が適用可能な通信システムについての補足説明を行う。
近年、無線通信システムにおいて、使用する周波数帯の有効利用をはかるとともに、使用周波数を世界標準仕様に合わせるために周波数帯の再編が検討されている。例えば、CDMA2000 1x使用の無線通信システムにおいて、現在、日本国内では、日本仕様の800MHz帯(以下、旧800MHz帯)が用いられているが、この周波数帯が世界標準仕様である新800MHz帯へ再編される予定である。なお、旧800MHz帯と新800MHz帯とでは、使用する周波数帯のうち、上り、下りの周波数割り当て等が相違している。こうした背景から、現行の周波数帯(旧800MHz)、新たな周波数帯(新800MHz)、および高周波の周波数帯(2GHz)での通信が可能なマルチバンド対応の無線通信端末が開発されている。
【0019】
マルチバンド対応の無線通信端末は、基地局によって割当てられるチャネルを介して当該基地局との間で無線通信を行なう。このとき、無線通信端末は、複数の周波数帯で無線信号の送受信が可能であり、具体的には、現行の周波数帯(旧800MHz)、新たな周波数帯(新800MHz)、および高周波の周波数帯(2GHz)を用いて無線信号の送受信が可能である。
上記したそれぞれ異なる周波数帯の通信システムには、基地局と無線通信端末間で周波数帯を識別するための識別番号として、3GPP2(3rd Generation Partnership Project 2)で規定されたバンドクラスが付与されている。例えば、基地局から無線通信端末に報知される情報の中の近隣基地局リスト等において、無線通信端末の周辺に存在する通信システムを報知する等のためにこのバンドクラスが使用される。なお、現行の周波数帯(旧800MHz)はバンドクラス3、新たな周波数帯(新800MHz)はバンドクラス0、高周波の周波数帯(2GHz)はバンドクラス6にそれぞれ分類されている。また、各バンドクラスには、プライマリチャンネルとセカンダリチャンネルが割当てられ(但し、バンドクラス6のEVDO通信においてはプライマリチャンネルのみ)、更に、プロトコルの違い(EVDO)を考慮すれば、合計で11パターンの通信システムが存在することになる。
【0020】
以下、上記した11パターンの通信システムを有するマルチバンド対応の無線通信端末について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態1、実施の形態2にかかわる無線通信端末の内部構成を示すブロック図である。ここでは、無線通信端末として携帯電話が例示されており、この携帯電話は、通信部1と、操作部2と、音声処理部3と、スピーカ4と、マイク5と、表示部6と、記憶部7と、制御部8とにより構成される。
【0021】
通信部1は、複数の通信システムを捕捉し、第1の通信プロトコル(例えば、EVDO)と第2の通信プロトコル(例えば、CPMA2000_1x:以降1xと略する)にしたがい、通信ネットワークに接続される不図示の基地局との間で無線通信を行う。なお、EVDO通信は、1x通信よりも高速であり、1x通信はEVDO通信と異なり音声通信もサポートするという特徴を有している。通信部1は、制御部8によって出力される送信データに所定の変調処理を施して無線信号に変換し、アンテナを介して送出し、また、アンテナにおいて受信される基地局からの無線信号に所定の復調処理を施して受信データに変換し、制御部8に出力する。
また、操作部3は、例えば、電源キー、通話キー、数字キー、文字キー、方向キー、決定キー、発信キーなど、各種の機能が割り当てられたキーを有しており、これらのキーがユーザによって操作された場合に、その操作内容に対応する信号を発生し、これをユーザの指示として制御部8に入力する。
【0022】
音声処理部3は、スピーカ4において出力される音声信号やマイク5において入力される音声信号の処理を行う。すなわち、マイク5から入力される音声を増幅し、アナログ−デジタル変換を行い、更に符号化等の信号処理を施し、デジタルの音声データに変換して制御部8に出力する。また、制御部8から供給される音声データに復号化、デジタル−アナログ変換、増幅等の信号処理を施し、アナログの音声信号に変換してスピーカ4に出力する。
また、表示部6は、例えば、液晶表示パネルや有機EL(Electro-Luminescence)パネルなどの表示デバイスを用いて構成されており、制御部8から供給される映像信号に応じた画像を表示する。例えば、発信時における発信先の電話番号、着信時における着信相手の電話番号、受信メールや送信メールの内容、日付、時刻、バッテリ残量、発信成否、待ち受け画面などの各種の情報や画像を表示する。
【0023】
記憶部7は、制御部8において処理に利用される各種のデータを記憶する。例えば、制御部8に備わるコンピュータのプログラム、通信相手の電話番号や電子メールアドレス等の個人情報を管理するアドレス帳、着信音やアラーム音を再生するための音声ファイル、待ち受け画面用の画像ファイル、各種の設定データ、プログラムの処理過程で利用される一時的なデータなどを保持する。
なお、上記した記憶部7は、例えば不揮発性の記憶デバイス(不揮発性半導体メモリ、ハードディスク装置、光ディスク装置など)やランダムアクセス可能な記憶デバイス(例えばSRAM、DRAM)などによって構成される。
【0024】
制御部8は、携帯電話の全体的な動作を統括的に制御する。すなわち、携帯電話の各種の処理(回線交換網を介して行われる音声通話、電子メールの作成と送受信、インターネットのWeb(World Wide Web)サイトの閲覧など)が操作部2の操作に応じて適切な手順で実行されるように、上述した各ブロックの動作(通信部1における信号の送受信、音声処理部3における音声の入出力、表示部6における画像の表示など)を制御する。
制御部8は、記憶部7に格納されるプログラム(オペレーティングシステム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行するコンピュータ(マイクロプロセッサ)を備えており、このプログラムにおいて指示された手順に従って上述した処理を実行する。すなわち、記憶部7に格納されるオペレーティングシステムやアプリケーションプログラム等のプログラムから命令コードを順次読み込んで処理を実行する。
【0025】
制御部8は、操作部2により通信開始が指示されたときに、複数の通信システムのいずれかで第1の通信プロトコル(例えば、EVDO:Evolution Data Only)、または第2の通信プロトコル(例えば、1x)を用いて通信部1による通信を制御する機能を有し、キー検出部81と、表示制御部82と、EVDOプロトコル実行部83と、1xプロトコル実行部84と、通信システム選択部85と、捕捉指示機能実行部86とにより構成される。
キー検出部81は、操作部2からの発信操作を検出して捕捉指示機能実行部86による捕捉処理を起動する機能を持ち、また、表示制御部82は、捕捉指示機能実行部86を介して出力される発信の成否を表示部6に表示する機能を持つ。
【0026】
一方、通信システム選択部85は、通信部1に対して捕捉させる通信システムを指示する機能を持つ。また、EVDOプロトコル実行部83は、通信部1に第1の通信プロトコル(EVDO)による捕捉を指示する第1プロトコル実行部として機能し、1xプロトコル実行部84は、通信部1に第2の通信プロトコル(1x)による捕捉を指示する第2プロトコル実行部として機能する。
なお、捕捉指示機能実行部86は、通信システム選択部85に対して通信システムの捕捉開始指示を行い、携帯電話が通信を行うことの出来ない圏外状態にあると判定された状態において、操作部2による発信操作を検出したとき、通信システム選択部85に対し、複数の通信システムのいずれかの捕捉を指示する第1の捕捉指示を行い、当該第1の捕捉指示に対して捕捉失敗が報知された場合に、通信システム選択部85に対して第2の捕捉指示を行い、上記した第1の捕捉指示、あるいは第2の捕捉指示に対して捕捉成功が報知された場合に、捕捉が成功した通信システムによる通信開始の処理を行う機能を持つ。
【0027】
なお、捕捉指示機能実行部86は、捕捉結果報知領域860を有し、ここに、システム選択部85によって報知される通信システム毎の捕捉の結果(捕捉失敗)がフラグONされ、このフラグは、システムスキャンの都度、更新され保持される。ここに書き込まれた通信システムの捕捉の結果は、後述する適当なタイミングで捕捉指示機能実行部86がチェックし、リトライ処理、もしくは発信失敗を表示部7に表示させる処理を行う。
なお、ここに示す捕捉結果報知領域860は、具体的には、記憶部7の適当な領域に割り付けられ記憶されるものとする。
【0028】
(実施の形態1)
図2は、本発明の実施の形態1にかかわる無線通信端末の動作を説明するために引用した動作シーケンス図であり、ここでは、制御部8を構成する、EVDOプロトコル実行部83(1xプロトコル実行部84)と、システム選択部85と、捕捉指示機能実行部86との間の動作シーケンスが示されている。また、図3は、その動作を模式的に示した動作概念図である。
以下、図2、図3を参照しながら、図1に示す本発明の実施の形態1にかかわる無線通信端末の動作について説明する。
【0029】
まず、携帯端末が圏外にいる状態において、ユーザが携帯電話の操作部2を操作すると(発信キー等の押下)、制御部8は、キー検出部81を介して発信要求を取得し、捕捉指示機能実行部86を起動する(図2のS201)。ここで、圏外とは、通信システムの捕捉が出来ない状態(内部で圏外フラグがONし、画面上、アンテナビクトが圏外表示を行っている)が生じ、圏内復帰処理が周期的に実行される状態をいう。また、「圏内復帰処理」とは、システムスキャン(受信周波数サーチ)を行い、その周波数の中で報知されているパイロット信号を解析することによって使用できるチャネル(通信システム)であるか否かを判定し、かつ、パイロット信号強度が所定のレベルを超えていた場合にその通信システムを捕捉する処理をいう。
捕捉指示機能実行部86は、この発信要求を取得し、発信処理を行う前に発信に要する通信システムを捕捉するために、発信によるシステムスキャンの実行を指示する。このシステムスキャンは、捕捉指示機能実行部86が、通信システム選択部85を起動し(S202:システムスキャン指示)、通信システム選択部85が、発信の「呼」設定に基づいて、どの通信システムをスキャンするかに応じて、EVDOプロトコル実行部83、または1xプロトコル実行部84を選択し(S203)、選択されたEVDOプロトコル実行部83、または1xプロトコル実行部84を起動することにより実現される(S204:システムスキャン指示)。
【0030】
すなわち、通信システム選択部85は、データ発信であればEVDOの通信システムを、音声発信であれば1Xの通信システムを選択してそのスキャン動作を実行するよう、EVDOプロトコル実行部83または1xプロトコル実行部84に指示する。
通信システム選択部85により選択されたEVDOプロトコル実行部83、または1xプロトコル実行部84は、システムスキャンの結果、その通信システムの捕捉の成否に関し、通信システム選択部85を経由して捕捉指示機能実行部86に報知する(S205、S206)。通信システム選択部85は、通信システムの捕捉に成功した場合は、捕捉指示機能実行部86に対し、その通信システムを用いた発信処理を指示するが、失敗した場合は、同一プロトコル内の他の通信システムをスキャンするように、先にシステムスキャンを実行したEVDOプロトコル実行部83または1xプロトコル実行部84に対して再度システムスキャンの実行を指示する(S207〜S211)。
【0031】
なお、システムスキャンの対象となる通信システムは、先にシステムスキャンを実行した通信システムである場合もあるし、そうでない同一プロトコル内の別の通信システムの場合もある。このとき、通信システム選択部85は、同時に捕捉指示機能実行部86に対して、通信システムの捕捉失敗を報知する。ここで、「報知」とは、通信システムの捕捉が失敗したことを示す信号を出力することをいう。
捕捉指示機能実行部86は、システムスキャンを通信システム選択部85に対して指示した後、4秒間、通信システム選択部85からの捕捉成功の報知を待つ。ここで、4秒間、システム選択部85から捕捉成功の通知が出力されない場合、捕捉指示機能実行部86は、再度、通信システム選択部85に対し、上記したシステムスキャンを再試行(リトライ)するように指示する(S212)。
【0032】
通信システムの選択、およびその捕捉動作を行っていた通信システム選択部85と、EVDOプロトコル実行部83または1xプロトコル実行部84は、捕捉指示機能実行部86から再度受信したシステムスキャン指示に基づき、現在実行中の通信システム捕捉動作をキャンセルし、再度システムスキャン動作を行い、捕捉の成否を報知する(S213〜S215)。
なお、通信システム選択部85と、EVDOプロトコル実行部83または1xプロトコル実行部84は、このシステムスキャンを契機に、通信システムを捕捉できるまで、上記した通信システムの捕捉動作を繰り返す。
【0033】
仮に、捕捉指示機能実行部86が、通信システム選択部85から捕捉成功通知を受信した場合、そのタイミングで発信処理を行う。システムスキャンは、捕捉指示機能実行部86が持つリトライ機能により、再度システムスキャン指示がなされるか、発信処理が終了するまで永遠に繰り返し実行される。
なお、発信処理に関し、AMSS(Advanced Mobile Solution Software)では、発信処理にタイマ機能が設けられており、40秒発信動作を続けても基地局と通信できない場合は自動的に発信終了となる(S216)。
【0034】
上記した本発明の実施の形態1によれば、通信システム選択部85は、捕捉指示機能実行部86から発信によるシステムスキャンが要求された場合、捕捉すべき通信システムの候補がリスト化された、例えば、図3(a)に示すスキャンリスト850を参照することにより、通信システムの選択起動を行なう。
すなわち、図3(b)に示されるように、携帯電話10(通信システム選択部85)は、スキャンリスト850のインデックスの始めに格納されている通信システム#1から捕捉指示を出力し(1)、以後、通信システム#1〜#nの捕捉が成功するまでスキャンリスト850に格納されている通信システムの捕捉試行を行うように、EVDOプロトコル実行部83または1xプロトコル実行部84を制御する。
【0035】
具体的に、通信システム選択部85は、スキャンリスト850の1番目のインデックスにある通信システムをスキャン候補として取得し(1)、ここでは通信システム#1の捕捉試行を行うように、EVDOプロトコル実行部83または1xプロトコル実行部84を制御する(2)。そして捕捉失敗の報知をうけた場合(3)、スキャンリスト850の2番目のインデックスにあるスキャン候補(通信システム#2)を取得し(4)、通信システム#2の捕捉試行を行うように、EVDOプロトコル実行部83または1xプロトコル実行部84を制御する(5)。
上記した通信システムの捕捉試行を繰り返し、捕捉指示機能実行部86により4秒経過したことが検出されると、再度システムスキャンが要求され、上記した(1)(2)の動作が繰り返し実行される(7)(8)。
【0036】
上記したように、圏外発信時、発信によるシステムスキャンが4秒以内に成功しない場合は、捕捉指示機能実行部86により、通信システム選択部85に対し、再度、発信によるシステムスキャンが要求される。通信システム選択部85は、これをうけて再びスキャンリスト850にある先頭の通信システムから捕捉試行を開始する。
例えば、通信システム#2が通信上に障害があって捕捉試行に4秒かかる場合、通信システム選択部85は、捕捉指示機能実行部86から、4秒満了によるシステムスキャンを要求されるため、通信システム#3以降の捕捉試行動作を行うことができず、通信システム#1から再度捕捉試行動を実行することになる。このような場合、発信中は、通信システム#3以降は永遠に捕捉試行動作が実行されない。仮に、通信システム#3の電波が安定しているエリアにおいて、捕捉可能な通信システムが存在するにも関わらず、その通信システムを捕捉しにいく契機がないため、発信できないことになってしまう。
【0037】
上記したように、実施の形態1では、捕捉指示機能実行部86は、発信によるシステムスキャンの結果として、通信システム選択部85に対し、システムスキャンのリトライの要求を4秒間待つ。ここで、4秒間経過しても何も応答がない場合、もしくは捕捉成功が報知されない場合、捕捉指示機能実行部86は、再度、システムスキャン要求をシステム選択部85に出力している。
これに対し、以下に説明する実施の形態2では、圏外発信時の発信によるシステムスキャンの実行手順において、全ての通信システム#1〜#nに対して捕捉試行を実行し、その結果が出るまで、再度、発信によるシステムスキャン要求を発行しない仕組みを構築することにより、捕捉可能な通信システムが存在するにも関わらず、その通信システムを捕捉する契機が与えられないことから発信が不可となっていた実施の形態1が持つ不都合が解消できる。
【0038】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2にかかわる無線通信端末の動作を示すシーケンス図であり、ここでは、制御部5を構成する、1xプロトコル実行部84と、EVDOプロトコル実行部83と、通信システム選択部85と、捕捉指示機能実行部86と間の動作シーケンスが示されている。また、図5は、発信処理開始時における通信プロトコル決定処理の流れを、図6は、通信システムの捕捉処理の流れをそれぞれ示すフローチャートである。
以下、図4〜図6を参照しながら、本発明の実施の形態2にかかわる無線通信端末の動作について詳細に説明する。
【0039】
まず、圏外の状態において、ユーザが操作部2を操作することにより発信キー等の通信開始のキーが押下されると、制御部8は、キー検出部81がその発信要求を取得し、捕捉指示機能実行部86を起動する(図4のS401)。
上記した捕捉指示機能実行部86を起動するにあたり、図5のフローチャートに示されるように、制御部8は、キー検知部81を介して発信操作有無を検知すると(図5のS501)、その操作は、音声発信か、データ通信かを判定する(S502)。ここで、音声発信の場合は、1xの通信システムに基づく発信処理を起動し(S503)、データ通信の場合は、更に、1xの通信システム以外使用できないINS(Information Network System)接続等による特殊データ通信でないことを確認したうえで、データレートの高いEVDOの通信システムを優先した発信処理を起動する(S504“No”、S505)。
【0040】
説明を図4のシーケンス図に戻す。捕捉指示機能実行部86は、上記した発信要求を取得し、発信処理を行う前に、発信に要する通信システムを捕捉するために、通信システム選択部85に対し、EVDOを優先した発信によるシステムスキャンの実行を指示する。
このシステムスキャンは、捕捉指示機能実行部86が、通信システム選択部85を起動し(S402:システムスキャン指示)、通信システム選択部85が、スキャンリスト850を参照してスキャンすべき通信システムを決定し、EVDOプロトコル実行部83を選択起動することにより実現される(S403、S404)。なお、このとき、スキャンリスト850には、デフォルトで設定された、無線通信端末自身がスキャンすることができるEVDO用の5パターンの通信システムが格納されている。
【0041】
通信システム選択部85により選択起動されたEVDOプロトコル実行部83は、まず、スキャンリスト850の1番目に格納された通信システムの捕捉を試行する。そして、EVDOプロトコル実行部83は、その通信システムの捕捉の成否を通信システム選択部85に報知する。ここで、EVDOプロトコル実行部83から、スキャンリスト850の1番目に格納された通信システムの捕捉失敗が報知された場合(S405)、通信システム選択部85は、捕捉指示機能実行部86に対して捕捉失敗を報知することなく、EVDOプロトコル実行部83に対し、スキャンリスト850の2番目に格納された通信システムに基づくシステムスキャンを指示する(S406、S407)。
【0042】
通信システム選択部85は、通信システムの捕捉に成功した場合は、捕捉指示機能実行部86に対してその通信システムを用いた発信処理を指示するが、EVDOプロトコル実行部83から捕捉失敗の報知をうけた場合は(S408)、上記同様、捕捉指示機能実行部86に対して捕捉失敗を報知することなく、EVDOプロトコル実行部83に対し、更なる他のシステムスキャンの実行を指示するように、スキャンリスト850に格納された残る3パターン分の通信システムを都度選択し、それぞれの通信システムに基づくシステムスキャンの実行を指示する。
通信システム選択部85は、EVDOプロトコル実行部84に対し、スキャンリスト850の最後尾のインデックスに格納された通信システム(5パターン目)のスキャンの指示を行い(S409、S410)、当該システムスキャンの結果、EVDOプロトコル実行部84から捕捉失敗が通知されたときに(S411)、捕捉指示機能実行部86に対して捕捉失敗を報知(捕捉失敗フラグをON)する(S412)。
【0043】
なお、捕捉指示機能実行部86は、発信によるシステムスキャンの実行を通信システム選択部85に対し指示した後、4秒間(第1の所定時間)、捕捉成否の報知(すなわち捕捉結果報知領域860へのフラグ更新の有無の確認)を待つ。ここで、4秒間、通信システム選択部85から捕捉成功の通知が出力されず、しかも、捕捉失敗のフラグもなかった場合、今度は、1秒(第2の所定時間)周期で捕捉結果報知領域860へのフラグの有無をを参照し、それでも捕捉成否の報知が確認されなかった場合、捕捉指示機能実行部86は、通信システム選択部85に対して1xを用いた6パターンの発信によるシステムスキャンの実行を指示する(S413)。
このシステムスキャンは、捕捉指示機能実行部86が、通信システム選択部85を起動し、通信システム選択部85が、スキャンリスト850の1番目のインデックスに格納された1x用の通信システムにしたがい、1xプロトコル実行部84を選択起動することにより実現される(S414、S415)。
【0044】
次に、選択起動された1xプロトコル実行部84は、捕捉試行した先の通信システムの捕捉の成否を通信システム選択部85に報知する。ここで、1xプロトコル実行部84から、スキャンリスト850の1番目に格納された通信システムの捕捉失敗が報知された場合(S416)、通信システム選択部85は、捕捉指示機能実行部86に対して捕捉失敗を報知することなく、1xプロトコル実行部84に対し、スキャンリスト850の2番目に格納された通信システムに基づくシステムスキャンの実行を指示する。
通信システム選択部85は、その通信システムの捕捉に成功した場合は、捕捉指示機能実行部86に対しその通信システムを用いた発信処理を指示するが、1xプロトコル実行部84から捕捉失敗の報知を受信した場合は、上記同様、捕捉指示機能実行部86に対して捕捉失敗を報知することなく、1xプロトコル実行部84に対し、更なる他のシステムスキャンの実行を指示するように、残る4パターン分の通信システムを都度選択し、それぞれの通信システムに基づくシステムスキャンの実行を指示する。
【0045】
通信システム選択部85は、1xプロトコル実行部83に対し、スキャンリスト850の最後尾のインデックスに格納された6パターン目の通信システムのスキャン指示を行い(S417、S418)、当該システムスキャンの結果、1xプロトコル実行部83から捕捉失敗が通知されたときに(S419)、捕捉指示機能実行部86に対して捕捉失敗を報知(860への捕捉失敗フラグをON)する(S420)。
なお、捕捉指示機能実行部86は、1xプロトコルでのシステムスキャン指示を行ったステップS413のタイミングで、再度第1の所定時間(4秒)のタイマをスタートさせ、4秒満了時に捕捉結果報知領域860に対する新たな失敗フラグの有無を確認する。また、4秒満了時にフラグが確認できなかった場合には、第2の所定時間(1秒)周期で捕捉結果報知領域860に対する新たな失敗フラグの有無を確認する処理についてはEVDOでのシステムスキャン時と同様である。
ステップS420の後捕捉指示機能実行部86は、スキャンリスト850の6パターン目の通信システムの捕捉失敗に基づくフラグONを確認すると、表示制御部82を制御して表示部6に発信の失敗を表示する(S421)。
【0046】
以上説明のように、上記した実施の形態2によれば、実施の形態1において、通信システム選択部85が、発信によるシステムスキャンが捕捉指示機能実行部86から要求されたとき、一つの通信システムの捕捉に失敗した結果として捕捉指示機能実行部86に対し、捕捉失敗を報知していたが、実施の形態2では、スキャンリスト850に格納された通信システムの全てに対して捕捉試行動作を実行した結果が捕捉失敗でない限り、捕捉指示機能実行部86に捕捉失敗した旨を報知しない仕組みとした。
すなわち、通信システム選択部85は、スキャンリスト850に存在する通信システムの全てに関して捕捉試行動作を実行した結果、全ての通信システムが捕捉できなかった場合に、捕捉指示機能実行部86に対して捕捉失敗を報知することになる。
【0047】
また、捕捉指示機能実行部86は、実施の形態1において、通信システム選択部85に対し、発信によるシステムスキャンの結果として、システムスキャンの要求を行ってから、4秒間のうちに、システム選択部85から応答がない、もしくは捕捉成功の通知がない場合に、通信システム選択部85に対し、再度、システムスキャン要求を発行していたが、実施の形態2では、通信システム選択部85から、全システムに対するシステムスキャンを行った結果として捕捉失敗のフラグ更新がなされない限り、再度システムスキャン要求を発行しない仕組みとした。
なお、通信システム選択部85から捕捉成功の報知があった場合は、実施の形態1同様、即座に捕捉が成功した通信システム上で発信処理を行う。
【0048】
上記した本発明の実施の形態2によれば、捕捉指示機能実行部86は、通信システム選択部85から捕捉失敗の報知を受信するまで、再度、発信によるシステムスキャン要求を発行することなく、また、通信システム選択部85は、発信によるシステムスキャン要求が捕捉指示機能実行部86から発行された場合、スキャンリスト850にある通信システムの全てに対して捕捉試行を繰り返した結果、捕捉失敗であることが確認されたときに、その旨を捕捉指示機能実行部86へ報知することにより、捕捉可能な通信システムが存在するにも関わらず、その通信システムを捕捉しにいく契機がないため発信できないおそれのあった実施の形態1の不都合を解消することができる。
以上説明のように、本発明の実施の形態2によれば、圏外発信時、スキャンリスト850にある全ての通信システムに対して捕捉試行が実行されるため、発信成功率が向上する。
【0049】
また、図5のステップS503において、1xによる発信処理を行う場合には本発明の実施の形態2の後半の処理を実行することとなる。すなわち、図4におけるステップS413以降の処理のみを実行することとなり、やはり1xにおける全システムのスキャンが一巡するまでは捕捉失敗のフラグをONせず、逆に捕捉成功した場合にはすぐさま捕捉成功を報告する。捕捉指示機能実行部86は、システムスキャン指示を行って後に、捕捉成功の報告を待つとともに第1もしくは第2の所定時間経過ごとに捕捉結果報知領域860をチェックし、捕捉成功が報告されたときには即座に接続処理を実行し、失敗フラグを確認したならば表示部に発信失敗の表示を行わせるように制御する。このように、本発明の実施の形態2によれば、1x発信処理の際にも、基本的に同じ捕捉処理ルーチンにより処理を行うことが出来、捕捉処理ルーチンを別途設ける必要が無いため、発信処理のプログラム肥大化を防止することにも役立つ。
さらに、データ通信の発信要求の際に、EVDOでの捕捉に失敗する環境においては、失敗判定も早期に行えるだけではなく、すぐさま1xでの捕捉試行を行えるように構成しているので、極力、通信接続できるチャンスを拡大している。
【0050】
図6に、上記した通信システムの捕捉処理の流れがフローチャートで示されている。以下、図4に示す動作シーケンスの説明の理解を深める意味で、図6に示すフローチャートを参照しながら通信システムの捕捉動作について補足する。
図6において、システム選択部85は、捕捉指示機能実行部86が発信要求をうけ、その発信処理を実行する前に、発信に要する通信システムを捕捉するために、まず、最優先バンドクラス(バンドクラス6)の選択を行い(S601)、次に、そのプライマリチャネルを選択して(S602)、EVDOプロトコル実行部83、あるいは1xプロトコル実行部84を起動し、発信によるシステムスキャンの実行を行なう。
【0051】
現在、バンドクラスには、“3(旧800MHz帯)”、“0(新800MHz帯)”、“6(2GHz帯)”の3種類あり、ここでは、“2GHz帯→新800MHz帯→旧800MHz帯”の優先順位にしたがい発信によるシステムスキャンを実行するものとする。各バンドクラスには、更に、プライマリチャネルとセカンダリチャネルが割当てられており(但し、2GHz帯のEVDOに関しては対応する無線通信端末の数が少ないためセカンダリチャネルの割当ては無い)、選択されたバンドクラスのプライマリチャネルを優先とする。
【0052】
次に、システム選択部85は、その通信システムの捕捉成功の有無を判定し(S603)、捕捉成功の場合はその通信システムを用いた発信処理を実行するよう捕捉指示機能実行部86に応答を返す(S609)。
一方、補足失敗の場合は、そのバンドクラスのセカンダリチャネルの選択が完了したか否かを判定し(S604)、完了していない場合は、そのセカンダリチャネルを選択して(S605)S603の処理(捕捉の成否判定)に戻り、セカンダリチャネルの選択が完了していた場合には、更に、全てのバンドクラス(BC)の選択が完了したか否かを判定する(S606)。
【0053】
なお、S606の処理において、未だ、全てのBCの選択が完了していなかった場合は、次に優先すべきBCを選択してS602の処理(プライマリチャネルの選択)に戻る。また、全てのBCの選択が完了した場合には、捕捉指示機能実行部86の捕捉結果報知領域860に対し捕捉失敗フラグをONすることにより捕捉失敗報知を行う(S608)。また、捕捉指示機能実行部86は、所定の周期で捕捉結果報知領域860のフラグをチェックしており、捕捉失敗フラグONが検出されると、表示制御部82を制御して表示部6に対し、発信が失敗したことを表示する。
【0054】
なお、捕捉指示機能実行部86は、通信システム選択部85に対して発信の指示を行うタイミングで、第1の所定時間である4秒の計時を開始する。ちなみにそれより短い第2の所定時間は1秒である。第1の所定時間が4秒であるのは、EVDO通信にかかわる全通信システムのスキャンは、特に障害がなければ通常4秒以内に完了することからそのように設定している。但し、CDMA通信であるため通信システムの捕捉には復号処理を要するが、この復号処理に失敗しやすい電波環境下では4秒以上要することもある。したがって、4秒を経ても捕捉結果が不明な場合には、より短い時間間隔で捕捉失敗の報知の有無を判定することにより、より早く結果判定を行えるように構成している。
【0055】
なお、図4に示す動作シーケンス図には、本発明の無線通信端末の通信制御方法の各工程(ステップ)も合わせて示されている。
すなわち、本発明の無線通信端末の通信制御方法は、複数の通信システムを捕捉し、第1の通信プロトコル(EVDO)と第2の通信プロトコル(1x)による通信を行う通信部1と、操作部2と、操作部2により通信開始が指示されたときに、複数の通信システムのいずれかで第1の通信プロトコルまたは第2の通信プロトコルを用いて通信部1による通信を制御する、通信システム選択部85、第1プロトコル実行部83、第2プロトコル実行部84、捕捉指示機能実行部86を含む制御部8と、を備える無線通信端末における通信制御方法であって、捕捉指示機能実行部86が、通信を行うことの出来ない圏外状態にあると判定された状態において、操作部2による発信操作が検出されたとき、通信システム選択部85に対し、複数の通信システムのいずれかの捕捉を指示する第1の捕捉指示を行う第1のステップ(S401、S402)と、第1のプロトコル実行部83が、第1のステップに基づいて、複数の通信システム毎、捕捉が成功するまで捕捉処理を実行する第2のステップ(S403〜S411)と、通信システム選択部85が、第2のステップにおいて、いずれの通信システムにおいても捕捉できない場合には捕捉指示機能実行部86に対して捕捉の失敗を報知する第3のステップと(S412)、捕捉指示機能実行部86が、捕捉失敗が報知されたことをうけ、通信システム選択部85に対して第2の捕捉指示を行う第4のステップ(S413)と、 第2のプロトコル実行部84が、第4のステップに基づいて、複数の通信システム毎、捕捉が成功するまで捕捉処理を実行する第5のステップ(S414〜S419)と、通信システム選択部85が、第5のステップにおいて、いずれの通信システムにおいても捕捉できない場合には捕捉指示機能実行部86に対して捕捉の失敗を報知する第6のステップ(S420)と、通信システム選択部85が、第2のステップ、もしくは第5のステップにおいて、いずれかの通信システムにおいて捕捉が成功した場合に、捕捉指示機能実行部86に対して捕捉の成功を報知する第6のステップ(該当ステップ不図示)と、捕捉指示機能実行部86が、捕捉成功の報知をうけ、捕捉が成功した通信システムによる通信開始の処理を行う第7のステップ(該当ステップ不図示)と、を有するものである。
【0056】
上記した本発明の無線通信端末の通信制御方法によれば、複数の通信方式を有する無線通信端末において、圏外と判定された状態にあっても、発信操作が行なわれたときに通信システムの捕捉を効率的に行い、極力、ユーザが希望する通信方式による接続を試行することができる。
【0057】
なお、上記した実施の形態1、実施の形態2によれば、無線通信端末として携帯電話を例示したが、他に、PDA(Personal Digital Assistants)、PC(Personal Computer)、ゲーム機に適用しても同様の効果が得られる。
また、本発明の無線通信端末の各構成ブロックの機能は、全てをソフトウェアによって実現しても、あるいはその少なくとも一部をハードウエアで実現してもよい。例えば、制御部8における処理や、通信部1、音声処理部3におけるデータ処理は、1または複数のプログラムによりコンピュータ上で実現してもよく、また、その少なくとも一部をハードウエアで実現してもよい。
【0058】
ところで、携帯電話などの無線通信端末においては、通常はこれらの発信処理を行う制御部は1つしか設けられておらず、また、その処理はシングルタスクであるため、各処理機能部は割り込みが生じる機会が多ければ多いほど、その処理時間は遅延する。第1の所定時間として4秒という時間を設定していることは、通常4秒あれば全システムのスキャンが完了するということに基づくとの説明を行った。これはすなわち、この4秒は捕捉指示機能実行部86によるチェック処理のための割込み機会を減らすこととなり、捕捉処理を遅延させることをなくすることに繋がる。そして、捕捉に手間取った場合においても、4秒をわずかに超える程度の時間を要するに過ぎない場合が多いと予測されるため、4秒経過後にはより短い1秒という第2の所定時間周期でフラグチェックの割り込みを生じさせるよう構成している。これにより、捕捉時間に対して極力悪影響を与えることなく、なおかつなるべく早い時間で捕捉成否判定が行える。
また、捕捉失敗を判定する場合においても、実施の形態1の場合には40秒を要していたが、実施の形態2によればそれよりも早い時間、なおかつより高い精度で失敗判定が行えるため、無理な補足試行に伴う電力消費を抑えることにも繋がるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態1、実施の形態2にかかわる無線通信端末の内部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかわる無線通信端末の動作を説明するために引用した動作シーケンス図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかわる無線通信端末の動作を模式的に示した動作概念図である。
【図4】本発明の実施の形態2にかかわる無線通信端末の動作を説明するために引用した動作シーケンス図である。
【図5】本発明の実施の形態2にかかわる無線通信端末の動作を説明するために引用したフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態2にかかわる無線通信端末の動作を説明するために引用したフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
1…通信部、2…操作部、3…音声処理部、4…スピーカ、5…マイク、6…表示部、7…記憶部、8…制御部、10…携帯電話、81…キー検出部、82…表示制御部、83…EVDOプロトコル実行部(第1プロトコル実行部)、84…1xプロトコル実行部(第2プロトコル実行部)、85…通信システム選択部、86…捕捉指示機能実行部、850…スキャンリスト、860…捕捉結果報知領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信システムを捕捉可能であって、第1の通信プロトコルによる通信と第2の通信プロトコルによる通信とのいずれも実行可能な通信部と、操作部と、前記操作部により通信開始が指示されたときに、前記複数の通信システムのいずれかで前記第1の通信プロトコルまたは第2の通信プロトコルを用いて前記通信部による通信を制御する制御部と、を備える無線通信端末であり、
前記制御部は、
前記通信部に、捕捉させる通信システムを指示する通信システム選択部と、
前記通信部に前記第1の通信プロトコルによる捕捉を指示する第1プロトコル実行部と、
前記通信部に前記第2の通信プロトコルによる捕捉を指示する第2プロトコル実行部と、
前記通信システム選択部に、通信システムの捕捉開始指示を行う捕捉指示機能実行部と、を有し、
前記捕捉指示機能実行部は、
通信を行うことの出来ない圏外状態にあると判定された状態において、前記操作部による発信操作を検出したとき、前記通信システム選択部に対し、前記複数の通信システムのいずれかの捕捉を指示する第1の捕捉指示を行い、前記第1の捕捉指示に対して捕捉失敗が報知された場合に、前記通信システム選択部に対して第2の捕捉指示を行い、前記第1の捕捉指示、あるいは前記第2の捕捉指示に対して捕捉成功が報知された場合に、捕捉が成功した通信システムによる通信開始の処理を行い、
前記通信システム選択部は、
前記第1の捕捉指示にしたがう捕捉処理を前記複数の通信システム毎、捕捉が成功するまで前記第1プロトコル実行部に行わせ、いずれの通信システムにおいても捕捉が失敗した場合には前記捕捉指示機能実行部に捕捉が失敗したことを報知し、いずれかの通信システムにおいて捕捉が成功した場合には前記捕捉指示機能実行部に捕捉が成功したことを報知し、
前記第2の捕捉指示にしたがう捕捉処理を前記複数の通信システム毎、捕捉が成功するまで前記第2プロトコル実行部に行わせ、いずれの通信システムにおいても捕捉が失敗した場合には前記捕捉指示機能実行部に捕捉失敗を報知し、いずれかの通信システムにおいて捕捉が成功した場合には前記捕捉指示機能実行部に捕捉成功を報知する
ことを特徴とする無線通信端末。
【請求項2】
前記捕捉指示機能実行部は、
前記第1の捕捉指示を行ってから第1の所定時間が経過すると捕捉失敗の報知の有無を判定し、捕捉失敗の報知が無ければ、前記第1の所定時間より短い第2の所定時間の周期で捕捉失敗の報知の有無を判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項3】
前記複数の通信システムは、
それぞれで周波数帯の異なる通信システムである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の無線通信端末。
【請求項4】
前記複数の通信システムは、
それぞれでCDMA(Code Division Multiple Access)通信におけるバンドクラスの異なる通信システムを含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載の無線通信端末。
【請求項5】
前記複数の通信システムは、
前記バンドクラスの異なる通信システムに関するプライマリチャネル、セカンダリチャネルである
ことを特徴とする請求項4に記載の無線通信端末。
【請求項6】
表示部を更に有し、
前記捕捉指示機能実行部は、圏外状態にあると判定された状態において前記操作部による発信操作を検出し、前記第1の捕捉指示による捕捉失敗が報知された後に、前記第2の捕捉指示による捕捉失敗が報知されたとき、前記表示部に発信の失敗を表示させる
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の無線通信端末。
【請求項7】
前記圏外状態は、
前記第1プロトコル実行部、および第2プロトコル実行部のいずれにおいても前記複数の通信システムの捕捉ができない状態が生じ、前記捕捉指示機能実行部により前記表示部に対して圏外表示させている状態であって、前記通信部による圏内復帰処理が実行される状態である
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の無線通信端末。
【請求項8】
前記通信システム選択部は、
前記第1の捕捉指示に基づく捕捉処理を、前記第1の所定時間中、繰り返し実行する
ことを特徴とする請求項2に記載の無線通信端末。
【請求項9】
前記捕捉指示機能実行部は、
前記発信操作が、音声発信の操作であった場合には、前記通信システム選択部に対して第3の捕捉指示を行い、
前記通信システム選択部は、
前記第3の捕捉指示をうけると、前記複数の通信システム毎に捕捉が成功するまで前記第2のプロトコル実行部に捕捉処理を行わせ、いずれの通信システムにおいても捕捉が失敗した場合には前記捕捉指示機能実行部に捕捉の失敗を報知し、いずれかの通信システムにおいて捕捉が成功した場合には前記捕捉指示機能実行部に捕捉が成功したことを報知する
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の無線通信端末。
【請求項10】
前記捕捉指示機能実行部は、
前記発信操作が音声発信の操作であった場合に、前記通信システム選択部に対して第3の捕捉指示を行い、
前記通信システム選択部は、
前記第3の捕捉指示にしたがい、前記複数の通信システム毎に捕捉が成功するまで前記第2のプロトコル実行部に捕捉処理を行わせ、いずれの通信システムにおいても捕捉が失敗した場合に前記捕捉指示機能実行部に捕捉の失敗を報知し、いずれかの通信システムにおいて捕捉が成功した場合に捕捉が成功したことを報知する
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の無線通信端末。
【請求項11】
複数の通信システムを捕捉可能であって、第1の通信プロトコルによる通信と第2の通信プロトコルによる通信とのいずれも実行可能な通信部と、操作部と、前記操作部により通信開始が指示されたときに、前記複数の通信システムのいずれかで前記第1の通信プロトコルまたは第2の通信プロトコルを用いて前記通信部による通信を制御する、通信システム選択部、第1プロトコル実行部、第2プロトコル実行部、捕捉指示機能実行部を含む制御部と、を備える無線通信端末における通信制御方法であり、
前記捕捉指示機能実行部が、通信を行うことの出来ない圏外状態にあると判定された状態において、前記操作部による発信操作が検出されたとき、前記通信システム選択部に対し、前記複数の通信システムのいずれかの捕捉を指示する第1の捕捉指示を行う第1のステップと、
前記第1のプロトコル実行部が、前記第1のステップに基づいて、前記複数の通信システム毎に捕捉が成功するまで捕捉処理を実行する第2のステップと、
前記通信システム選択部が、前記第2のステップにおいて、いずれの通信システムにおいても捕捉できない場合には前記捕捉指示機能実行部に対して捕捉の失敗を報知する第3のステップと、
前記捕捉指示機能実行部が、前記捕捉失敗が報知されたことをうけ、前記通信システム選択部に対して第2の捕捉指示を行う第4のステップと、
前記第2のプロトコル実行部が、前記第4のステップに基づいて、前記複数の通信システム毎、捕捉が成功するまで捕捉処理を実行する第5のステップと、
前記通信システム選択部が、前記第5のステップにおいて、いずれの通信システムにおいても捕捉できない場合には前記捕捉指示機能実行部に対して捕捉の失敗を報知する第6のステップと、
前記通信システム選択部が、前記第2のステップ、もしくは第5のステップにおいて、いずれかの通信システムにおいて捕捉が成功した場合に、前記捕捉指示機能実行部に対して捕捉の成功を報知する第6のステップと、
前記捕捉指示機能実行部が、前記捕捉成功の報知をうけ、捕捉が成功した通信システムによる通信開始の処理を行う第7のステップと、
を有することを特徴とする無線通信端末における通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−85907(P2008−85907A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265891(P2006−265891)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.INS
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】