説明

無線通信装置、無線通信システム、および無線通信方法

【課題】高い回線容量を安定して確保することができる無線通信装置、無線通信システム、および無線通信方法を提供すること。
【解決手段】マスタ装置200は、受信側装置と、指向性の無線通信を行う送信側装置と、を含む複数のグループに対して、グループ内の通信を行う通信期間を割り当てるマスタ装置200であって、複数のグループの送信側装置に対して、送信側装置の指向の方向を、送信側装置と同じグループの受信側装置に向けて、所定の無線信号を送出させ、更に、複数のグループの受信側装置に対して、所定の無線信号を待ち受けさせ、グループ間を跨いで所定の無線信号の送受信が行われるグループに対して、互いに重ならない通信期間を割り当て、グループ間を跨いで所定の無線信号の送受信が行われないグループに対して、互いに重なる通信期間を割り当てる指示信号を出力する空間再利用調整部260を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指向性の無線通信により無線空間を再利用する無線通信装置、無線通信システム、および無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無指向性の無線通信を行う無指向性アンテナが広く採用されている。無指向性アンテナを使用する無線通信システムでは、無線通信装置が無線媒体中にデータパケットを送信する場合、その送信は、ブロードキャストの性質を帯びる。このような従来のシステムでは、本来の送信先以外の無線通信装置にもデータパケットが到達してしまうことから、複数の送信元から送出されたデータパケットが受信側装置側で衝突するという問題が発生する。
【0003】
図20は、従来の無指向性通信を行う、無線通信システムにおける無線通信の様子を示す図である。
【0004】
図20に示すように、無線通信システム10は、無指向性アンテナを備えた6つの無線通信装置として、装置A〜F(11〜16)を有している。装置A(11)が無指向性通信により無線媒体中に送信した無線信号は、その無指向性アンテナの通信範囲(17)にブロードキャストされる。なお、無指向性アンテナの通信範囲は、通常、完全な円形ではなく、その形状と大きさは、個々の無線通信装置、無線媒体の状態、環境内に存在する物体等、様々な要因に依存して異なる。
【0005】
無指向性通信を採用した場合の問題点は、無線通信に使用できる空間(以下「無線空間」という)あたりの回線容量が低いことである。
【0006】
図20に示す例では、装置A(11)の通信範囲(17)内に、本来の通信相手である装置B(12)以外に、装置C(13)と無線通信を行う装置D(14)と、装置E(15)と無線通信を行う装置F(16)とが位置している。この場合、図20に示すように、装置A(11)が装置B(12)に無線信号を送信するとき、その信号強度は、装置A(11)の通信範囲(17)内の全域に及ぶことから、装置C(13)から装置E(14)への無線信号送信、および装置E(15)から装置F(16)への無線信号送信に対して、潜在的に干渉を引き起こす可能性がある。
【0007】
これは、装置A(11)が装置B(12)と通信している間は、装置C〜F(13〜16)は正常な通信を行うことが困難であるということを意味する。すなわち、無線通信を行う他のグループ基づいて、ある無線空間が利用されている期間は、その無線空間内に位置する受信側装置は、その無線空間を利用することが困難である。
【0008】
そこで、指向性アンテナを採用することにより、このような無線空間を複数の無線通信で利用すること(以下「空間再利用」という)を可能にする技術が、従来提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0009】
指向性アンテナは、無指向性アンテナの場合のように、あらゆる方向へ包括的に無線信号をブロードキャストするのではなく、目的とする受信側装置が位置する方向等、特定の方向にビームを形成して、無線信号の送信を行う。また、指向性アンテナは、目的とする送信装置が位置する方向等、特定の方向にビームを形成して、無線信号の受信を行う。
【0010】
これにより、指向性アンテナは、受信側装置のゲインを増加させ、受信性能を高めることが可能となっている。更に、指向性アンテナは、対象外の方向、つまり指向方向以外から到来する電波を受信することによるマルチパス干渉を容易に除去することができるので、信号対雑音比を増加させることができ、受信性能を向上させることができる。
【0011】
指向性アンテナを用いることにより、無指向性アンテナのみを用いた場合に比べて、無線空間の回線容量を増大させることができる。
【0012】
図21は、従来の指向性通信を行う、無線通信システムにおける無線通信の様子を示す図である。
【0013】
図21に示すように、無線通信システム20は、指向性アンテナを備えた装置A〜F(21〜26)を有している。装置A、C、E(21、23、25)の指向性通信による無線信号の送信範囲(21a、23a、25a)は、角度の小さい扇形となっており、それぞれ通信相手である装置B、D、F(22、24、26)に向いている。
【0014】
ここで、装置D、F(24、26)は、装置A(21)の送信範囲(21a)内に位置していない。これは、装置A(21)が装置B(22)に無線信号を送信している期間と同じ期間に、装置D、F(24、26)は、それぞれ、装置C、E(23、25)から無線信号を受信できることを意味する。
【0015】
同様に、装置B、F(22、26)は、装置C(23)の送信範囲(23a)外に位置し、装置B、D(22、24)は、装置E(25)の送信範囲(25a)外に位置する。したがって、装置A、C、E(21、23、25)は、指向性通信を用いた同時送信(空間再利用)を実行することができ、その結果、無線空間の回線容量を更に向上させることができる。
【0016】
このように、指向性通信を行う無線通信システムによれば、無線空間の回線容量を向上させることができる。
【特許文献1】米国特許第5,949,760号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、指向性通信を行う無線通信システムにも、回線容量の向上を妨げる原因として起こり得る、幾つかの潜在的な問題がある。
【0018】
第1の問題は、一対の装置が指向性通信を用いて空間再利用を行おうとする前に、送信側装置は、自己の送信範囲が、他の送信側装置の指向性通信に干渉しないことを、確認しなければならないことである。
【0019】
図22は、無線通信装置により構成される2つのグループの配置関係のうち、上記第1の問題が発生しない場合の配置関係を示す図の一例である。
【0020】
図22において、装置A(21)は装置B(22)に無線信号を送信し、同時に、装置C(23)は装置D(24)に無線信号を送信している。図22に示すように、装置A(21)の送信範囲(21a)は、装置B(22)に重なっているが、装置C、D(23、24)には重なっていない。また、装置B(22)の送信範囲(22a)は、装置A(21)に重なっているが、装置C、D(23、24)には重なっていない。これは、装置C(23)と装置D(24)は、装置A(21)と装置B(22)とが通信しているときでも、互いに通信を行うことができ、空間再利用の実行に取りかかれることを意味する。
【0021】
また、装置C(23)の送信範囲(23a)は、装置D(24)に重なっているが、装置A、B(21、22)には重なっていない。更に、装置D(24)の送信範囲(24a)は、装置C(23)に重なっているが、装置A、B(21、22)には重なっていない。これは、装置A(21)と装置B(22)は、装置C(23)と装置D(24)とが通信しているときでも、互いに通信を行うことができ、空間再利用の実行に取りかかれることを意味する。
【0022】
図23は、無線通信装置により構成される2つのグループの配置関係のうち、上記第1の問題が発生する場合の配置関係を示す図の一例である。
【0023】
図23に示すように、装置C、D(23、24)の送信範囲(23a、24a)が、装置A、B(21、22)に重なっている場合には、装置A、B(21、22)に対する潜在的な干渉が有り得るので、空間再利用を十分に実行することが困難である。
【0024】
第2の問題は、各無線通信装置が、自己のグループの無線通信が他のグループの通信に干渉されず、また、自己のグループの無線通信が他のグループの通信に干渉しないかどうか、つまり、空間再利用が可能な状態にあるか否かの決定を、どのようにして行うかということである。この問題は、特に、無線通信ネットワークの中で各無線通信装置の位置が時間に伴って移動する場合に発生する。
【0025】
図24は、無線通信送信により構成される2つのグループの移動の様子のうち、上記第2の問題が発生する場合の移動の様子を示す図の一例である。
【0026】
図24において、装置A、B(21、22)のグループと、装置C、D(23、24)のグループは、グループ内での通信を同時に行うことにより、空間再利用を実行しているものとする。ここで、装置A(21)が、装置C、D(23、24)のグループからの干渉の無い元の位置(21b)から、経路21cで移動し、装置C(23)の送信範囲(23a)に入ったものとする。
【0027】
この場合、装置A、B(21、22)のグループと、装置C、D(23、24)のグループとの間では、空間再利用が困難な状態に移行し、それぞれのグループ内の通信を継続するには、通信期間をずらさなければならない。ところが、各無線通信装置で、そのタイミングをどのように検出するかが問題となる。
【0028】
図24に示すように装置A(21)のみが移動した場合には、装置A、B(21、22)の相対位置に基づいて移動を検出し、空間再利用が困難な状態に移行したと推定することが可能である。
【0029】
ところが、装置A、B(21、22)が平行移動するなど、装置A、B(21、22)の相対位置に変化が無い場合、このような推定は困難である。
【0030】
すなわち、第3の問題は、グループ内の相対位置変化に基づいて通信期間を再設定すべきタイミングを推定したとしても、その推定の精度が低いということである。
【0031】
図25は、無線通信装置により構成される2つのグループの移動の様子のうち、上記第3の問題が発生する場合の移動の様子を示す図の一例である。
【0032】
図25に示すように、装置A、B(21、22)のグループの両方の装置が、装置C、D(23、24)のグループからの干渉の無い元の位置(21b、22b)から、経路21c、22cを経て、装置C、D(23、24)のグループと互いに干渉し合う位置に移動したものとする。また、装置A、B(21、22)は、互いに相手の通信範囲(21a、22a)に重なった状態を保持したままで、一緒に移動したものとする。
【0033】
新たな位置では、装置A、B(21、22)のグループと、装置C、D(23、24)のグループとの間で、潜在的干渉を引き起こし得る。装置A、B(21、22)は、互いの相対位置は同じままで一緒に移動しているので、グループ全体での移動を検出できず、上記した空間再利用が困難な状態に移行したと推定することが難しい。
【0034】
また、逆に、グループ内の相対位置が変化しからといって、必ずしも他のグループとの間で干渉が発生するとは限らないので、通信期間を不必要にずらし、空間再利用が十分に行われない可能性がある。
【0035】
以上の問題点をまとめると、指向性通信を用いる無線通信システムは、空間再利用に基づいて無線空間の利用効率を向上させることが可能である。しかし、特に、移動性を有する無線通信装置の場合、一定レベル以上の通信品質を安定して確保することが困難であり、また、高い回線容量を安定して維持することは困難である。
【0036】
したがって、実現可能で実用的なソリューションを提供するには、高い回線容量を安定して確保することができる無線通信システムが必要である。
【0037】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、高い回線容量を安定して確保することができる無線通信装置、無線通信システム、および無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明の無線通信装置は、受信側装置と、指向性の無線通信を行う送信側装置と、を含む複数のグループに対して、グループ内の通信を行う通信期間を割り当てる無線通信装置であって、前記複数のグループの送信側装置に対して、前記送信側装置の指向の方向を、前記送信側装置と同じグループの受信側装置に向けて、所定の無線信号を送出させる指示信号を出力する信号送出指示手段と、前記複数のグループの受信側装置に対して、前記所定の無線信号を待ち受けさせる指示信号を出力する信号待受指示手段と、グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われるグループに対して、互いに重ならない通信期間を割り当て、グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われないグループに対して、互いに重なる通信期間を割り当てる指示信号を出力する通信期間割当手段とを有する。
【0039】
本発明の無線通信装置は、送信側装置と、指向性の無線通信を行う受信側装置と、を含む複数のグループに対して、グループ内の通信を行う通信期間を割り当てる無線通信装置であって、前記複数のグループの送信側装置に対して、所定の無線信号を送出させる指示信号を出力する信号送出指示手段と、前記複数のグループの受信側装置に対して、前記受信側装置の指向の方向を、前記受信側装置と同じグループの送信側装置に向けて、前記所定の無線信号を待ち受けさせる指示信号を出力する信号待受指示手段と、グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われるグループに対して、互いに重ならない通信期間を割り当て、グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われないグループに対して、互いに重なる通信期間を割り当てる指示信号を出力する通信期間割当手段とを有する。
【0040】
本発明の無線通信システムは、受信側装置と、指向性の無線通信を行う送信側装置と、前記送信側装置および前記受信側装置を含む複数のグループに対して、グループ内の通信を行う通信期間を割り当てるマスタ装置と、を有する無線通信システムであって、前記送信側装置は、前記送信側装置の指向の方向を、自己のグループの受信側装置に向けて、所定の無線信号を送出する信号送出手段と、前記通マスタ装置が自己のグループに割り当てた通信期間に、自己のグループ内の通信を行う送信側通信手段とを有し、前記受信側装置は、前記所定の無線信号を待ち受ける無線信号受信手段と、前記マスタ装置が自己のグループに割り当てた通信期間に、自己のグループ内の通信を行う受信側通信手段とを有し、前記マスタ装置は、前記受信側装置がいずれのグループから前記所定の無線信号を受信したかを示す干渉情報を取得する干渉情報取得手段と、取得された前記干渉情報から、グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われたか否かを判断し、グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われるグループに対して、互いに重ならない通信期間を割り当て、グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われないグループに対して、互いに重なる通信期間を割り当てる指示信号を出力する通信期間割当手段とを有する。
【0041】
本発明の無線通信システムは、送信側装置と、指向性の無線通信を行う受信側装置と、前記送信側装置および前記受信側装置を含む複数のグループに対して、グループ内の通信を行う通信期間を割り当てるマスタ装置と、を有する無線通信システムであって、前記送信側装置は、所定の無線信号を送出する信号送出手段と、前記マスタ装置が自己のグループに割り当てた通信期間に、自己のグループ内の通信を行う送信側通信手段とを有し、前記受信側装置は、前記受信側装置の指向の方向を、自己のグループの送信側装置に向けて、前記所定の無線信号を待ち受ける無線信号受信手段と、前記マスタ装置が自己のグループに割り当てた通信期間に、自己のグループ内の通信を行う受信側通信手段と、を有し、前記マスタ装置は、前記受信側装置がいずれのグループから前記所定の無線信号を受信したかを示す干渉情報を取得する干渉情報取得手段と、取得された前記干渉情報から、グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われたか否かを判断し、グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われるグループに対して、互いに重ならない通信期間を割り当て、グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われないグループに対して、互いに重なる通信期間を割り当てる指示信号を出力する通信期間割当手段とを有する。
【0042】
本発明の無線通信方法は、受信側装置と、指向性の無線通信を行う送信側装置と、を含む複数のグループに対して、グループ内の通信を行う通信期間を割り当てる無線通信方法であって、前記複数のグループの送信側装置に対して、前記送信側装置の指向の方向を、前記送信側装置と同じグループの受信側装置に向けて、所定の無線信号を送出させ、前記複数のグループの受信側装置に対して、前記所定の無線信号を待ち受けさせる指示信号を出力する信号送受信指示ステップと、グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われるグループに対して、互いに重ならない通信期間を割り当て、グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われないグループに対して、互いに重なる通信期間を割り当てる指示信号を出力する通信期間割当ステップとを有する。
【0043】
本発明の無線通信方法は、送信側装置と、指向性の無線通信を行う受信側装置と、を含む複数のグループに対して、グループ内の通信を行う通信期間を割り当てる無線通信方法であって、前記複数のグループの送信側装置に対して、所定の無線信号を送出させ、前記複数のグループの受信側装置に対して、前記受信側装置の指向の方向を、前記受信側装置と同じグループの送信側装置に向けて、前記所定の無線信号を待ち受けさせる指示信号を出力する信号送受信指示ステップと、グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われるグループに対して、互いに重ならない通信期間を割り当て、グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われないグループに対して、互いに重なる通信期間を割り当てる指示信号を出力する通信期間割当ステップとを有する。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、指向性の無線通信を行う複数のグループにおいて、通信が干渉するグループ間では互いに重ならない時間でグループ内の通信を行い、通信が干渉しないグループ間では互いに重なる時間でグループ内の通信を行うことができる。これにより、通信品質の低下を避けつつ空間再利用を行うことができ、高い回線容量を安定して確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0046】
図1は、本発明の一実施の形態に係る無線通信システムの構成を示すシステム構成図である。
【0047】
図1に示すように、無線通信システム100は、無線通信装置200、300s、300rを有する。無線通信システム100のネットワークトポロジは、無線通信装置200をマスタ装置とし無線通信装置300s、300rをスレーブ装置とする、スタートポロジとなっている。以下、無線通信装置200をマスタ装置200といい、このマスタ装置200に関連付けられた無線通信装置300をスレーブ装置300と称する。
【0048】
スレーブ装置300s、300rは、双方向通信を行う1つのグループを形成しており、いずれもマスタ装置200の無指向性通信の通信範囲200a内に位置している。ここでは、説明の簡便化のため、スレーブ装置300sを、無線信号を送信する側の装置として、適宜「送信側装置」と称し、更に、スレーブ装置300rを、無線信号を受信する側の装置として、適宜「受信側装置」と称するものとする。無線通信装置200に関係付けられる同様のグループは、マスタ装置200の通信範囲200a内に複数存在しているが、スレーブ装置300s、300rと同様の構成を採るので、ここでの図示および説明を省略する。
【0049】
マスタ装置200は、同期およびその他の情報を含むビーコンフレームを、無指向性通信を用いて定期的にブロードキャストして、新しい無線通信装置に対してネットワークを発見させる。マスタ装置200は、上記の動作により、全てのスレーブ装置300の同期を維持させる。また、マスタ装置200は、各グループに対して、指向性通信予約(DTR:directional time reservation)期間を割り当てる。指向性通信予約期間(以下「DTR期間」という)は、グループ内の指向性通信を行う通信期間である。マスタ装置200は、複数のグループに対して互いに重なるDTR期間を設定することで、空間再利用を実現する。
【0050】
また、マスタ装置200は、本実施の形態の特徴として、送信側装置300sに対して、受信側装置300rに向けて指向性通信予約告知(DTRA:directional time reservation announcement)フレームを送出させる。マスタ装置200は、指向性通信予約告知フレーム(以下「DTRAフレーム」という)の送受信が、グループ間を跨いで行われるグループには、互いに重ならないDTR期間を割り当てる。DTRAフレームは、受信側装置300r側で検出可能な信号である。
【0051】
送信側装置300sは、マスタ装置200が割り当てたDTR期間を利用して、受信側装置300rと指向性通信を行う。送信側装置300sは、受信側装置300rの方向にビームを形成して、その通信範囲300saを受信側装置300rに重ねた状態で、無線信号を送出することにより、受信側装置300rに無線信号を送信する。
【0052】
また、送信側装置300sは、本実施の形態の特徴として、マスタ装置200からの指示に従って、受信側装置300rにビームを形成した状態でDTRAフレームを送出する。
【0053】
受信側装置300rは、マスタ装置200が割り当てたDTR期間を利用して、送信側装置300sと指向性通信を行う。受信側装置300rは、送信側装置300sの方向にビームを形成してその通信範囲を送信側装置300sに重ねた状態で無線信号を待ち受けることにより、送信側装置300sから無線信号を受信する。
【0054】
また、受信側装置300rは、本実施の形態の特徴として、マスタ装置200からの指示に従って、送信側装置300sにビームを形成した状態でDTRAフレームを待ち受ける。そして、受信側装置300rは、他のグループ(以下「他グループ」という)から送出されたDTRAフレームをも受信したか否か判断する。受信側装置300rは、この判断結果に基づいて、他のどのグループからDTRAフレームを受信したか、つまりどのグループから通信の干渉を受ける可能性があるかを示す干渉情報を作成し、マスタ装置200に送信する。
【0055】
このような構成の無線通信システム100によれば、指向性の無線通信を行う複数のグループにおいて、通信が干渉するグループ間では互いに重ならない時間でグループ内の通信を行うことができる。また、この無線通信システム100によれば、通信が干渉しないグループ間では互いに重なる時間でグループ内の通信を行うことができる。
【0056】
次に、各装置の構成について説明する。
【0057】
図2は、マスタ装置200の構成を示すブロック図である。
【0058】
図2に示すように、マスタ装置200は、無指向性アンテナ210、指向性アンテナ220、アンテナ指向性制御部230、物理リンク制御部240、媒体アクセス予約制御部250、空間再利用調整部260、データ送受信部270、およびアプリケーション部280を有する。
【0059】
無指向性アンテナ210は、無指向性通信用のアンテナである。
【0060】
指向性アンテナ220は、指向性通信用のアンテナである。本実施形態では、無指向性アンテナ210と指向性アンテナ220という2つの別個のアンテナセットが使用されるが、指向性ビーム形成と無指向性通信の両方を実現できる単一のアンテナセットを使用することも可能である。
【0061】
物理リンク制御部240は、送信するメッセージ変調および符号化と、受信したメッセージの復調および復号化を実行する。
【0062】
媒体アクセス予約制御部250は、無線媒体を複数のグループで、どのようにシェアするか、および、指向性通信による通信に用いる媒体アクセス時間の予約をどのように行うか、を制御する。
【0063】
空間再利用調整部260は、スレーブ装置300に空間再利用機能を持たせるために、媒体アクセス予約制御部250と接続(インタフェース)する。具体的には、空間再利用調整部260は、送信側装置300sに対して、送信側装置300sと同じグループの受信側装置300rに、その指向の方向を向けてDTRAフレームを送出させる。そして、空間再利用調整部260は、グループ間を跨いで、その送受信が行われるグループに対しては、互いに重ならないDTR期間を割り当てる。また、空間再利用調整部260は、グループ間を跨いで、その送受信が行われないグループに対しては、互いに重なる通信期間を割り当てる。
【0064】
データ送受信部270は、媒体アクセス予約制御部250が予約した媒体アクセス時間を使用して、ピアツーピアのデータ交換およびメッセージ交換を行う。
【0065】
アプリケーション部280は、データ送受信部270、媒体アクセス予約制御部250が提供する無線通信機能と、空間再利用調整部260が提供する空間再利用機能とを活用する、一つまたは複数のアプリケーションを実行する。
【0066】
マスタ装置200は、CPU(central processing unit)、制御プログラムを格納したROM(read only memory)等の記憶媒体、およびRAM(random access memory)等の作業用メモリを有する(いずれも図示せず)。すなわち、CPUが制御プログラムを実行することで、上記マスタ装置200における各部の機能は実現される。
【0067】
図3は、スレーブ装置300の構成を示すブロック図である。スレーブ装置300の構成は、特に説明する部分を除いて図2に示すマスタ装置200の構成と同一であり、この同一の部分については、図2と同一の符号を付し説明を省略する。
【0068】
図3に示すように、スレーブ装置300は、無指向性アンテナ210、指向性アンテナ220、アンテナ指向性制御部230、物理リンク制御部240、媒体アクセス予約制御部250、空間再利用通信部360、データ送受信部270、およびアプリケーション部280を有する。つまり、スレーブ装置300は、マスタ装置200の空間再利用調整部260に代えて、空間再利用通信部360を有する。
【0069】
空間再利用通信部360は、自装置が送信側装置300sのとき、マスタ装置200からの指示に従って、受信送信300rに対して、その指向の方向を向けてDTRAフレームを送出する。また、空間再利用通信部360は、自装置が受信側装置300rの場合、マスタ装置200からの指示に従って、送信側装置300sから送信されるDTRAフレームを待ち受ける。更に、空間再利用通信部360は、他グループから送信されるDTRAフレームの到達を監視し、干渉情報を作成してマスタ装置200に送信する。
【0070】
ここで、無線通信システム100における無線媒体の利用方法について説明する。
【0071】
図4は、無線通信システム100における媒体アクセス時間の構成を示す図の一例である。
【0072】
図4に示すように、無線通信システム100における媒体アクセス時間は、スーパフレーム700と呼ばれる一定周期の時間区分に分割されている。また、スーパフレーム700は、ビーコンスロット710、コンテンションアクセス期間(CAP:contention access period)720、およびコンテンションフリー期間(CFP:contention free period)740から成る。
【0073】
ビーコンスロット710は、ビーコンフレームをブロードキャストするために、マスタ装置200が使用する。ビーコンスロット710には、後述するビーコン送出期間が含まれる。
【0074】
コンテンションアクセス期間720は、マスタ装置200からスレーブ装置300へのコマンドパケット、スレーブ装置300からマスタ装置200への応答パケット、および各種データパケットを送信するために、マスタ装置200とスレーブ装置300との両方が使用する。コンテンションアクセス期間720では、全ての装置は、コンテンションベースの媒体アクセス方法を使用して、媒体アクセス時間を利用し、無線信号の送信を行う。コンテンションベースの媒体アクセス方法としては、例えば、CSMA/CA(carrier sense multiple access / collision avoidance)が使用されるが、これに限定されるものではない。コンテンションアクセス期間720には、後述するDTRA期間が含まれる。
【0075】
コンテンションフリー期間740は、非コンテンションベースの媒体アクセス方法を使用して、無線信号の送信を行う期間であり、装置ごとにグループ内の通信に使用可能な期間(DTR期間)を予約可能となっている。本実施の形態では、マスタ装置200の空間再利用調整部260が、このコンテンションフリー期間740における各グループのDTR期間を設定する。
【0076】
コンテンションフリー期間740において、通信の干渉が発生しない範囲で複数のグループのDTR期間を重ねることにより、上述の空間再利用が実現される。
【0077】
図5は、スーパフレーム700におけるDTR期間の配置を示す図の一例である。図5において、横軸は時間を示し、奥行き軸は基準点からの各グループの空間的距離を示す。
【0078】
図5において、空間的に離れて位置する第1〜第3のグループのそれぞれについて、奥行き軸の対応する位置に時間線751−1〜751−3を配置し、関連する区間のみを、時間線751−1〜751−3に沿ってグループごとに分離して示す。ビーコン期間711は、図4のビーコンスロット710に含まれる区間であり、装置間で同期を取るためのビーコンがマスタ装置200から送出される区間である。DTRA期間721は、図4のコンテンションアクセス期間720に含まれる区間であり、送信側装置300sからDTRAフレームを送信してグループ間の干渉の有無を検出する区間である。DTR期間741は、図4のコンテンションフリー期間740に含まれる区間であり、グループ内の指向性通信を行う通信期間である。
【0079】
第1〜第3のグループは、互いに通信が干渉しない距離に位置しているものとする。このように空間的に離れていることが保証されれば、媒体アクセス時間中にDTR期間741が重なることを許容できる。空間的に離れていることの保証は、ここでは、通信の干渉が発生しないことの保証と等価である。そこで、マスタ装置200は、DTRA期間721におけるDTRAフレーム送受信に基づいて、第1〜第3のグループ間で通信の干渉が発生していないことを検出し、図5に示すように、第1〜第3のグループのDTR期間741−1〜741−3を重ねて設定する。
【0080】
図6は、DTRA期間721の構成を示す図の一例である。
【0081】
図6に示すように、DTRA期間721は、1つ以上(ここではN個とする)のDTRAスロット730−1〜730−Nから成る。各DTRAスロット730は、マスタ装置200が、グループごとに割り当てるものであり、図3のDTRに対応している。各グループ送信側装置300sおよび受信側装置300rは、交互に指向性通信を用いて、DTRAフレームを送信する。
【0082】
DTRAフレームは、各装置で認識可能なフレームであり、その目的は、以下の通りである。
・同時に指向性通信を行うDTRA割り当てを望む他の装置に対して、干渉の有無の検出を可能にする。
・スレーブ装置300が移動したことを検出し、空間再利用を維持する。
・同時に指向性通信を行う複数のグループが、空間距離がとられた状態であることを保証可能にする。
【0083】
DTRAスロット730におけるDTRAフレームの送受信には、様々な手法またはプロトコルの適用が可能である。
【0084】
図7は、DTRAスロット730の構成を示す図の一例である。
【0085】
図7に示すように、DTRAスロット730には、例えば、ガード区間731、ビーム形成時間(BFT:beam-form time)732、送受反転時間(TRT:turnaround time)733、送信側DTRA送信期間734、送受反転時間735、および受信側DTRA送信期間736が、この順序で配置される。ガード区間731は、クロックずれ誤差を見込んで設けられた区間である。ビーム形成時間732は、送信側装置300sおよび受信側装置300rが互いに相手に向けてビームを形成する区間である。送受反転時間733は、送信側装置300sが送信モードに切り換え、受信側装置300rが受信モードに切り換える区間である。送信側DTRA送信期間734は、送信側装置300sがDTRAフレームを送信する区間である。送受反転時間735は、送信側装置300sが受信モードに切り換え、受信側装置300rが送信モードに切り換える区間である。受信側DTRA送信期間736は、受信側装置300rがDTRAフレームを送信する区間である。
【0086】
図8は、DTRAスロット730の構成を示す図の他の例である。
【0087】
図8に示すように、DTRAスロット730には、例えば、図7のガード区間731に代えて、DTRAポーリング区間731aが配置され、受信側DTRA送信期間736の後に更に送受反転時間737およびビーム形成時間738をこの順序で配置している。DTRAポーリング区間731aは、DTRAフレームの送受信を開始するために、マスタ装置200から各スレーブ装置300へDTRAポーリングパケットを送信する区間である。送受反転時間737は、送信側装置300sおよび受信側装置300rの両方が受信モードに切り換わる区間である。ビーム形成時間738は、送信側装置300sおよび受信側装置300rの両方が無指向性通信のモードに切り換わる時間である。
【0088】
無線通信システム100は、図7または図8に示すようにDTRAスロットを利用することにより、グループ内の送信側装置300sと受信側装置300rとの間でDTRAフレームを正常に送受信することができるか否かを、確認することができる。
【0089】
また、各受信側装置300rは、DTRA期間のうち、自己のグループ(以下「自グループ」という)のDTRAスロット以外の全期間において、他グループから送出されるDTRAフレームを受信する否かを監視する。もしも受信した場合、該当するグループと重なるDTR期間を割り当てられると、通信の干渉が発生する可能性が高い。そこで、各受信側装置300rは、監視結果を示す干渉情報を、DTRA時間の終了後に、マスタ装置200に送信する。この動作は、空間再利用通信部360により実現される。そして、マスタ装置200は、各受信側装置300rから送られてきた干渉情報に基づいて、このようなグループ間を跨いで行われるグループには、互いに重ならないDTR期間を割り当てる。この動作は、空間再利用調整部260により実現される。
【0090】
次に、上記構成を有するスレーブ装置300およびマスタ装置200の動作について説明する。
【0091】
スレーブ装置300は、指向性通信を用いた空間再利用を行うために、DTR期間の割り当てを求めて、マスタ装置200とのネゴシエーションを開始する。このネゴシエーションにおいて、スレーブ装置300には、マスタ装置200から、DTRAスロットおよびDTR期間がグループ単位で割り当てられる。また、スレーブ装置300は、自グループおよび他グループにどのようにDTRAスロットおよびDTR期間が割り当てられているかを示すDTR情報を、マスタ装置200からビーコンフレームにより取得する。ネゴシエーションが完了すると、各スレーブ装置300は、空間再利用のための動作を開始する。
【0092】
図9は、スレーブ装置300の動作の流れを示すフローチャートである。
【0093】
まず、ステップS1100で、スレーブ装置300は、DTRA期間が開始されたか否かを判断し、開始された場合には(S1100:YES)、ステップS1200に進む。
【0094】
ステップS1200で、スレーブ装置300は、自グループのDTRAスロットが開始されたか否かを判断し、開始された場合には(S1200:YES)、ステップS1300に進む。また、スレーブ装置300は、他グループのDTRAスロットが開始された場合には(S1200:NO)、ステップS1400に進む。
【0095】
ステップS1300で、スレーブ装置300は、自グループ内でのDTRAフレーム送受信を行うDTRA送受信処理を実行し、ステップS1500に進む。DTRA送受信処理の詳細については、後に別図を用いて説明する。
【0096】
ステップS1400で、スレーブ装置300は、他グループからのDTRAフレーム受信を監視するDTRA監視処理を実行し、ステップS1500に進む。DTRA監視処理については、後に別図を用いて説明する。
【0097】
ステップS1500で、スレーブ装置300は、DTRA期間が終了したか否かを判断し、終了していない場合には(S1500:NO)、ステップS1200に戻り、終了した場合には(S1500:YES)、ステップS1600に進む。
【0098】
ステップS1600で、スレーブ装置300は、DTRA送受信処理およびDTRA監視処理の結果から、他グループとの干渉の有無を示すDTR干渉元リスト(DIL:DTR interferer list)を作成し、自装置に保持するとともに、マスタ装置200に送信する。DTR干渉元リストの詳細については、後に別図を用いて説明する。
【0099】
そして、ステップS1700で、スレーブ装置300は、動作を継続するか否かを判断し、継続する場合には(S1700:YES)、ステップS1100に戻り、継続しない場合には(S1700:NO)、一連の処理を終了する。
【0100】
図10は、スレーブ装置300のDTRA送受信処理の流れを示すフローチャートである。
【0101】
まず、ステップS1310で、スレーブ装置300は、自装置のDTRA送信期間が開始されたか否かを判断し、開始された場合には(S1310:YES)、ステップS1320に進む。また、スレーブ装置300は、開始されていない場合には(S1310:NO)、ステップS1330に進む。
【0102】
ステップS1320で、スレーブ装置300は、自己の通信相手に向けてビーム形成する。すなわち、図1に示す例では、送信側装置300sであれば、受信側装置300rに向けてビーム形成し、受信側装置300rであれば、送信側装置300sに向けてビーム形成する。
【0103】
なお、送信側装置300sと受信側装置300rとが互いの方向を判定するには、例えば、国際公開第2007/123487号パンフレットに記載された手法を用いればよい。また、上記方向判定のタイミングは、例えば、ネゴシエーション開始時、あるいは、受信側装置300rが後述するDTR要求を受け入れた旨が送信側装置300sに通知されたときとすればよい。
【0104】
そして、ステップS1340で、スレーブ装置300は、DTRAフレームを送信し、ステップS1350に進む。自己の通信相手に向けてビーム形成した状態で送信がされているため、DTRAフレームは、理想的にはその通信相手にのみ到達すべきである。しかし、DTRAフレームは、図23〜図25で説明したように、その通信範囲内に他のスレーブ装置300が位置する場合には、他のスレーブ装置300にも到達し得る。
【0105】
また、スレーブ装置300は、ステップS1340で送信するDTRAフレームに、DILフラグと、送信側OKフラグ(SOKF:sender OK flag)とを、適宜セットする。DILフラグは、スレーブ装置300が保持するDTR干渉元リストに、1つ以上の干渉の可能性のある装置が登録されている等、指向性通信の干渉の兆候がある場合にセットされるフラグである。送信側OKフラグは、受信側装置300rが送信するDTRAフレームである場合において、通信相手である送信側装置300sから送信されたDTRAフレームの受信が成功したときにセットされるフラグである。
【0106】
一方、ステップS1330で、スレーブ装置300は、自装置のDTRA受信期間が開始されたか否かを判断し、開始された場合には(S1330:YES)、ステップS1360に進む。また、スレーブ装置300は、自装置のDTRA受信期間が、開始されていない場合には(S1330:NO)、ステップS1350に進む。
【0107】
ステップS1360で、スレーブ装置300は、自己の通信相手に向けてビーム形成する。
【0108】
そして、ステップS1370で、スレーブ装置300は、DTRAフレームを待ち受け、DTRAフレームが到達した場合にはこれを受信して、DTRA受信期間が終了すると、ステップS1350に進む。
【0109】
ステップS1350で、スレーブ装置300は、自グループのDTRAスロットが終了したか否かを判断する。また、スレーブ装置300は、自グループのDTRAスロットが終了していない場合には(S1350:NO)、ステップS1310に戻り、終了した場合には(S1350:YES)、図9の処理に戻る。
【0110】
図11は、スレーブ装置300のDTRA監視処理の流れを示すフローチャートである。
【0111】
まず、ステップS1410で、スレーブ装置300は、図10のステップS1320、S1360と同様に、通信相手に向けてビーム形成する。これは、通常の指向性通信と同じ状態で、干渉の有無を判断するためである。
【0112】
そして、ステップS1420で、スレーブ装置300は、現在のDTRAスロットの終わりまでDTRAフレームを待ち受け、DTRAフレームが到達した場合にはこれを受信して、DTRA受信期間が終了すると、ステップS1430に進む。理想的には、通信相手も受信モードであることから、DTRAフレームは到達しないはずであるが、図23〜図25で説明したように他のスレーブ装置300の通信範囲内に位置し、そのスレーブ装置300がDTRAフレーム送信している場合には、到達し得る。
【0113】
そして、ステップS1430で、スレーブ装置300は、ステップS1420でDTRAフレームを受信したか否かを判断し、受信した場合には(S1430:YES)、ステップS1440に進む。
【0114】
ステップS1440で、スレーブ装置300は、受信したDTRAが肯定DTRAフレームであるか否かを判断し、肯定DTRAフレームである場合には(S1440:YES)、ステップS1450に進む。
【0115】
ここで、肯定DTRAフレームとは、DILフラグがセットされておらず、かつ、送信側OKフラグがセットされているDTRAフレームである。すなわち、肯定DTRAフレームは、他グループからの指向性通信の干渉が無く、かつ、グループ内での通信が可能であることを示すフレームであり、有意なDTRAフレームである。
【0116】
ステップS1450で、スレーブ装置300は、肯定DTRAフレームの送信元をそのフレームから取得し、取得した送信元をDTR干渉元リストに追加して、図9の処理に戻る。
【0117】
このようにして編集されるDTR干渉元リストは、通信の干渉を発生する可能性が高い相手先をリストアップすることになる。作成されたDTR干渉元リストは、図9のステップS1600で、マスタ装置200に送信される。
【0118】
また、スレーブ装置300は、ステップS1420でDTRAフレームを受信しなかった場合(S1430:NO)、およびステップS1420で受信したDTRAフレームが肯定DTRAフレームではない場合(S1440:NO)には、DTR干渉元リストを編集することなく、図9の処理に戻る。
【0119】
このように、スレーブ装置300は、スーパフレームごとに、指向性通信に干渉を発生する可能性が高い相手先をリストアップしたDTR干渉元リストを作成し、マスタ装置200に送信する。
【0120】
この結果、マスタ装置200には、各スレーブ装置300のDTR干渉元リストが収集される。マスタ装置200は、全てのスレーブ装置300のDTR干渉元リストをまとめ、干渉情報データベースとして格納し、更に、新たなDTR干渉元リストを受信するたびに、その内容を更新する。
【0121】
なお、上述したDTRA監視処理は、マスタ装置200から受信したDTR情報に基づき、自己のグループと重なるグループのDTRAスロットの場合にのみ、実施するようにしてもよい。
【0122】
図12は、干渉情報データベースの内容の一例を示す図である。
【0123】
図12に示すように、干渉情報データベース810は、スレーブ装置300ごとに、スレーブ装置300の識別情報811、そのスレーブ装置300の通信相手の識別情報812、およびスレーブ装置300から受信したDTR干渉元リスト813を対応付けしている。例えば、装置Bの通信相手は、装置Aのみであるが、装置BのDTR干渉元リスト813には、装置Dが記載されている。これは、装置Bが、装置Dからの干渉を受けている、または受ける可能性が高いことを示す。
【0124】
マスタ装置200は、このような干渉情報データベース810に基づいて、DTA期間の割り当てを行う。
【0125】
図13は、マスタ装置200の動作の流れを示すフローチャートである。
【0126】
まず、ステップS2100で、マスタ装置200は、スレーブ装置300のグループを1つ選択する。
【0127】
そして、ステップS2200で、マスタ装置200は、干渉情報データベース810を参照し、選択したグループのスレーブ装置300から受信したDTR干渉元リストを取得する。
【0128】
そして、ステップS2300で、マスタ装置200は、取得したDTR干渉元リストに記載されたスレーブ装置300のDTR期間と重ならないように、選択したグループのDTR期間を設定する。このとき、マスタ装置200は、他のDTR期間に重なるように、選択したグループのDTR期間を設定する。
【0129】
そして、ステップS2400で、マスタ装置200は、全てのグループについて選択が済んだか否かを判断し、済んでいない場合には(S2400:NO)、ステップS2100に進み、済んだ場合には(S2400:YES)、ステップS2500に進む。
【0130】
ステップS2500で、マスタ装置200は、特に干渉の有無を監視すべき対象(以下「モニタ対象装置」という)をリストアップした干渉監視リストを作成する。干渉監視リストの詳細については後述する。
【0131】
そして、ステップS2600で、マスタ装置200は、ビーコンスロットにおいて、ビーコンのブロードキャストによりDTR情報を各スレーブ装置300に送信する。
【0132】
そして、ステップS2700で、マスタ装置200は、動作を継続するか否かを判断し、継続する場合には(S2700:YES)、ステップS2100に戻り、継続しない場合には(S2700:NO)、一連の処理を終了する。
【0133】
このように、マスタ装置200は、通信が干渉するグループ間では互いに重ならないようにDTR期間を設定し、通信が干渉しないグループ間では互いに重なるようにDTR期間を設定する。マスタ装置200は、全てのグループに対してDTR期間を設定した後は、各グループから送られてくるDTR干渉元リストに基づいて、装置の移動に起因する新たな干渉の発生を検出する。また、マスタ装置200は、新たな干渉が発生したときには、同様にDTR期間の再割り当てを行う。また、DTR期間の再割り当てを行わない間は、必ずしもDTR情報を送信しなくてもよい。
【0134】
ここで、干渉監視リストについて、DTR期間の割り当ての一例を挙げて説明する。
【0135】
図14は、DTR期間の割り当ての一例を示す図である。図14において、横軸は時間を示す。ここでは、グループに代えて、スレーブ装置300を用いて説明する。
【0136】
図14に示すように、例えば、装置AのDTR期間741−aは、他の全ての装置B〜DのDTR期間741−b〜741−dの全てと重なっている。一方、例えば、装置DのDTR期間741−dは、装置CのDTR期間741−cとは重なっていない。
【0137】
図15は、図14に示すDTR期間割り当ての場合に作成される干渉監視リストの一例を示す図である。
【0138】
図15に示すように、干渉監視リスト820において、例えば、装置Aのモニタ対象装置は、DTR期間が重なっている装置D、B、Cとなり、装置Dのモニタ対象装置は、DTR期間が重なっている装置A、Bとなる。マスタ装置200は、全てのグループに対してDTR期間を設定した後は、干渉監視リスト820に基づいて、干渉が発生する可能性のあるスレーブ装置の状態を監視し、移動等の状態変化があったときにのみ、図13のステップS2100〜S2600の処理を行う。図15に示す例では、例えば、装置Dが移動した場合には、装置A、B、Dに対して、図13のステップS2100〜S2600の処理を実行する。このように、干渉監視リスト820を活用することにより、DTR期間割り当ての処理の実行を必要最小限に抑えることができ、各装置の処理負荷を軽減することができる。なお、これとは別に、新たなスレーブ装置の参加や干渉監視リスト820を正しく作成できなかった場合を考慮して、所定の周期で図13のステップS2100〜S2600の処理を実行するようにしてもよい。
【0139】
以下、無線通信システム100全体の動作の流れについて、一例を説明する。
【0140】
以下、動作の流れを、各装置がDTR期間の割り当てのために、調整(ネゴシエート)する段階(以下「ネゴシエーション段階」という)と、DTR期間が割り当てられた後に空間再利用を図りながら指向性通信を行う段階(以下「空間再利用段階」という)と、に分けて説明する。
【0141】
図16は、無線通信システム100のネゴシエーション段階における動作の流れを示すシーケンス図である。
【0142】
図16に示すように、ネゴシエーション段階の動作は、更に、受信側装置300rに対して送信側装置300sの通信開始要求を通知する第1のステップS3100と、DTRA期間中に干渉するスレーブ装置300をスキャンする第2のステップS3200と、DTR期間を割り当てる第3のステップS3300と、に分かれる。
【0143】
第1のステップS3100において、まず、送信側装置300sは、2ホップ無指向性通信を用いて、マスタ装置200を介して受信側装置300rに通知する。送信側装置300sは、DTR要求を、スーパフレームのコンテンションアクセス期間の間にマスタ装置200に送信し(S4100)、マスタ装置200はこのDTR要求を受信側装置300rへ転送する(S4200)。ここで、DTR要求とは、DTR期間の設定およびDTR期間を利用した、指向性通信の開始の要求をいう。
【0144】
このようにDTR要求の転送にマスタ装置200を利用するのは、送信側装置300sと受信側装置300rが、互いの無指向性通信の通信範囲外に位置することも有り得るからである。指向性通信の通信距離は、一般的に、無指向性通信の通信距離よりも長い。したがって、このような転送を行うことにより、無指向性通信の通信距離よりも離れた距離で位置しているが、指向性通信の通信距離に位置するような送信側装置300sおよび受信側装置300rに対して、これらを互いに指向性通信を行うグループとし、DTR期間を割り当てることが可能となる。
【0145】
そして、受信側装置300rがDTR応答を送信すると(S4300)、マスタ装置200は、この受け入れを示すDTR応答を送信側装置300sへ転送して返す(S4400)。マスタ装置200は、また、ビーコンフレームにより、進行中のDTRネゴシエーションのシグナリングを開始する(S4500)。ここで、DTR応答とは、DTR要求を受け入れる旨の応答をいう。
【0146】
第2のステップS3200において、まず、送信側装置300sおよび受信側装置300rは、通信相手であるお互いに向けて自己のアンテナをビーム形成し、DTRA期間の全てのDTRAスロットについて、DTRAフレームの受信をスキャンする(S4600)。このスキャンの詳細については、後に別図を用いて説明する。送信側装置300sおよび受信側装置300rは、通信相手以外からDTRAフレームを受信すると、そのDTRAフレームの送信元を、DTR干渉元リストに記録する。送信側装置300sおよび受信側装置300rは、DTRAフレームをスキャンした後に、それぞれのDTR干渉元リストをマスタ装置200へフィードバックする(S4700、S4800)。
【0147】
第3のステップS3300において、マスタ装置200は、DTR期間とDTRAスロットの割り当てを行う(S4900)。
【0148】
具体的には、マスタ装置200は、まず、送信側装置300sおよび受信側装置300rからフィードバックされた両方のDTR干渉元リストを一つにまとめて、コンテンションフリー期間において、DTR期間を割り当てる。
【0149】
この割り当ては、図13のステップS2300で説明した手法で行う。すなわち、マスタ装置200は、以下の条件を満たすように、DTR期間を割り当てる。
・新たに割り当てられたDTR期間が、DTR干渉元リストに記載されて報告された、スレーブ装置300のDTR期間のいずれとも重ならない。
・新たに割り当てられたDTR期間が、送信側装置300sまたは受信側装置300rが参加している他グループのDTR期間に重ならない。
【0150】
そして、マスタ装置200は、新しいDTR期間を割り当てた後、更に、この新しいDTR期間のための新しいDTRAスロットを、DTRA期間の最後に割り当てる。以降、送信側装置300sおよび受信側装置300rは、DTRA期間中のDTRAフレーム送信に参加することができ、更に、通信にDTR期間を使用することができる。
【0151】
具体的には、マスタ装置200は、例えば、DTR期間の予約順序に従って、DTRAスロットをDTRA期間に割り当て(スケジュール)する。この場合、DTR期間の予約が早ければ早いほど、DTRAスロットのDTRA期間における順序はより前となる。装置A、B、Cが存在し、装置B、装置C、装置Aの順に予約が行われた場合、DTRA期間における最初のDTRAスロットは装置Bのものであり、2番目のDTRAスロットは装置Cのものであり、最後のDTRAスロットは装置Aのものである。このように、DTRAスロットの順序については、より早い時点にDTR期間が割り当てられたスレーブ装置300が優先される。このようにすることで、例えば、干渉が発生した場合に、DTRA期間の後方から優先的にDTR期間およびDTRA期間の割り当てを解除するというように、予約順序に従った処理の選択が可能となる。
【0152】
また、マスタ装置200は、DTR期間を割り当てているスレーブ装置300については、そのスレーブ装置300の潜在的なDTR干渉元を把握するために、受信したDTR干渉元リストを保持しておく。
【0153】
図17は、送信側装置300sおよび受信側装置300rのDTRAフレームをスキャンする時の動作の流れを示すシーケンス図であり、図16のステップS4600、S470に対応するものである。
【0154】
まず、送信側装置300sは、受信側装置300rに向けてその指向性アンテナ220をビーム形成し(S4610)し、受信側装置300rは、送信側装置300sに向けてその指向性アンテナ220をビーム形成する(S4620)。受信側装置300rは、送信側装置300sからのDTRAフレームの待ち受けを開始する(S4630)。その後、送信側装置300sは、指向性アンテナ220を用いて、受信側装置300rにDTRAフレームを送信し(S4640)、受信側装置300rからの肯定DTRAフレームの待ち受けを開始する(S4650)。受信側装置300rは、送信側装置300sからのDTRAフレームを受信することに成功すると、これに対する応答として、指向性アンテナ220を用いて、送信側装置300sに肯定DTRAフレームを送信する(S4660)。送信側装置300sおよび受信側装置300rの両方がDTRAフレームをそれぞれ送信した後、その送信側装置300sおよび受信側装置300rのDTRAスロットは終了し、DTRA期間の終了に至るまで、次のDTRAスロットに移って同様の処理が繰り返される。
【0155】
図18は、無線通信システム100の空間再利用段階における動作の流れを示すシーケンス図である。
【0156】
図18に示すように、マスタ装置200が、送信側装置300sおよび受信側装置300rに割り当てたDTR期間をビーコンフレームで告知すると(S5100)、送信側装置300sおよび受信側装置300rは、DTR期間を利用した通信(以下「DTR通信」という)を実行可能となる。
【0157】
送信側装置300sおよび受信側装置300rは、DTRA期間が到来すると(S5200)、DTRA期間の全てのDTRAスロットについて、それぞれの指向性アンテナ220を使用して、DTRAのリスニングまたはDTRAフレーム交換を行う(S5210−1〜S5210−N)。
【0158】
DTRA期間が終了した後、送信側装置300sおよび受信側装置300rは、割り当てられたDTR期間を通信に使用できるか否かを判断する(S5300)。送信側装置300sおよび受信側装置300rは、例えば、任意のスーパフレームにおいて、以下の条件が満たされるとき、割り当てられたDTR期間に、データ通信を開始することができると判断する。
・現在のスーパフレームのDTRAスロットで、DTRAフレームの交換が成功した。
・送信側装置300sおよび受信側装置300rの両方で、DILフラグを受信しなかった。
【0159】
上記の条件に基づいて、割り当てられたDTR期間を通信に使用できると判断すると、送信側装置300sおよび受信側装置300rは、そのDTR期間において(S5400)、データパケットあるいはACKパケットの送受信を行う(S5410)。
【0160】
なお、以上の説明では、マスタ装置200とスレーブ装置300とで異なる構成を有するものとしたが、このように限定されるものではなく、これらを同一の構成の無線通信装置とし、状況に応じて役割を決定し、それぞれの役割で機能させるようにしてもよい。
【0161】
図19は、マスタ装置200としてもスレーブ装置300としても機能することができる無線通信装置の構成を示すブロック図であり、図2および図3に対応するものである。図2および図3と同一部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。
【0162】
図19において、無線通信装置900は、図2の空間再利用調整部260と、図3の空間再利用通信部360の両方を備えている。このような構成により、無線通信装置900は、マスタ装置200として機能するときには、スレーブ装置300に対して通信品質の低下を避けつつ無線空間を再利用するようなDTR期間の割り当てを行うことができ、スレーブ装置300として機能するときには、マスタ装置200からDTR期間の割り当てを受けて、通信品質の低下を避けつつ無線空間を再利用することができる。
【0163】
以上説明したように、本実施の形態によれば、指向性の無線通信を行う複数のグループにおいて、通信が干渉するグループ間では互いに重ならない時間でグループ内の通信を行い、通信が干渉しないグループ間では互いに重なる時間でグループ内の通信を行うことができる。これにより、空間再利用を行うことができ、高い回線容量を確保することができる。
【0164】
また、例えばスレーブ装置が移動する場合でも、DTR干渉元リストに基づいて通信期間の再割り当てを行うべきタイミングを判断することができるので、スレーブ装置が移動する場合にも、通信品質の低下を避けつつ空間再利用を行うことができ、高い回線容量を安定して確保することができる。
【0165】
なお、以上説明した実施の形態では、送信側装置300sおよび受信側装置300rの両方が指向性アンテナを用いてグループ内の通信を行う場合について説明したが、一方が指向性アンテナを用い、他方が無指向性アンテナを用いてグループ内の通信を行うようにしてもよい。この場合においても、空間再利用は可能なためである。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明に係る無線通信装置、無線通信システム、および無線通信方法は、高い回線容量を安定して確保することができる無線通信装置、無線通信システム、および無線通信方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】本発明の一実施の形態に係る無線通信システムの構成を示すシステム構成図
【図2】本実施の形態に係るマスタ装置の構成を示すブロック図
【図3】本実施の形態に係るスレーブ装置の構成を示すブロック図
【図4】本実施の形態における媒体アクセス時間の構成を示す図
【図5】本実施の形態におけるDTR期間の配置を示す図
【図6】本実施の形態におけるDTRA期間の構成を示す図
【図7】本実施の形態におけるDTRAスロットの構成を示す図の一例
【図8】本実施の形態におけるDTRAスロットの構成を示す図の他の例
【図9】本実施の形態に係るスレーブ装置の動作の流れを示すフローチャート
【図10】本実施の形態におけるDTRA送受信処理の流れを示すフローチャート
【図11】本実施の形態におけるDTRA監視処理の流れを示すフローチャート
【図12】本実施の形態における干渉情報データベースの内容を示す図
【図13】本実施の形態に係るマスタ装置の動作の流れを示すフローチャート
【図14】本実施の形態におけるDTR期間の割り当てを示す図
【図15】本実施の形態における干渉監視リストの構成を示す図
【図16】本実施の形態に係る無線通信システムのネゴシエーション段階における動作の流れを示すシーケンス図
【図17】本実施の形態に係る送信側装置および受信側装置のDTRAフレームをスキャンする時の動作の流れを示すシーケンス図
【図18】本実施の形態に係る無線通信システムの空間再利用段階における動作の流れを示すシーケンス図
【図19】本実施の形態に係る無線通信装置の構成を示すブロック図
【図20】従来の無指向性通信を行う無線通信システムにおける無線通信の様子を示す図
【図21】従来の指向性通信を行う無線通信システムにおける無線通信の様子を示す図
【図22】従来の第1の問題が発生しない場合のグループの配置関係を示す図
【図23】従来の第1の問題が発生する場合のグループの配置関係を示す図
【図24】従来の第2の問題が発生する場合のグループの移動の様子を示す図
【図25】従来の第3の問題が発生する場合のグループの移動の様子を示す図
【符号の説明】
【0168】
100 無線通信システム
200 マスタ装置
210 無指向性アンテナ
220 指向性アンテナ
230 アンテナ指向性制御部
240 物理リンク制御部
250 媒体アクセス予約制御部
260 空間再利用調整部
270 データ送受信部
280 アプリケーション部
300s 送信側装置(スレーブ装置)
300r 受信側装置(スレーブ装置)
360 空間再利用通信部
900 無線通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信側装置と、指向性の無線通信を行う送信側装置と、を含む複数のグループに対して、グループ内の通信を行う通信期間を割り当てる無線通信装置であって、
前記複数のグループの送信側装置に対して、前記送信側装置の指向の方向を、前記送信側装置と同じグループの受信側装置に向けて、所定の無線信号を送出させる指示信号を出力する信号送出指示手段と、
前記複数のグループの受信側装置に対して、前記所定の無線信号を待ち受けさせる指示信号を出力する信号待受指示手段と、
グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われるグループに対して、互いに重ならない通信期間を割り当て、グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われないグループに対して、互いに重なる通信期間を割り当てる指示信号を出力する通信期間割当手段と、
を有する無線通信装置。
【請求項2】
送信側装置と、指向性の無線通信を行う受信側装置と、を含む複数のグループに対して、グループ内の通信を行う通信期間を割り当てる無線通信装置であって、
前記複数のグループの送信側装置に対して、所定の無線信号を送出させる指示信号を出力する信号送出指示手段と、
前記複数のグループの受信側装置に対して、前記受信側装置の指向の方向を、前記受信側装置と同じグループの送信側装置に向けて、前記所定の無線信号を待ち受けさせる指示信号を出力する信号待受指示手段と、
グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われるグループに対して、互いに重ならない通信期間を割り当て、グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われないグループに対して、互いに重なる通信期間を割り当てる指示信号を出力する通信期間割当手段と、
を有する無線通信装置。
【請求項3】
前記受信側装置がいずれのグループから前記所定の無線信号を受信したかを示す干渉情報を取得する干渉情報取得手段、を更に有し、
前記通信期間割当手段は、
取得された前記干渉情報から、グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われたか否かを判断する、
請求項1または請求項2記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記送信側装置から、前記受信側装置に対する通信開始の要求を受信した場合は、前記受信側装置に対して前記要求を転送する要求転送手段と、
前記信号送出指示手段は、
前記要求の転送を行った前記受信側装置から前記要求を受け入れる旨の応答があったとき、前記送信側装置と前記受信側装置とを同じグループとして、前記通信期間の割り当てを行う、
請求項1または請求項2記載の無線通信装置。
【請求項5】
媒体アクセス時間を分割して、所定の無線信号の送出を行う第1の期間と、前記通信期間を配置する第2の期間とを、周期的に配置する時間分割手段、を更に有し、
前記信号送出指示手段は、
前記第1の期間を分割して前記グループごとに前記所定の無線信号の送出を行うスロットを設定し、
前記通信期間割当手段は、
前記第2の期間の中から前記グループごとに前記通信期間を割り当てる指示信号を出力する、
請求項1または請求項2記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記信号送出指示手段は、前記複数のグループに対して、定期的に、前記所定の無線信号の送出および待ち受けを行わせて前記干渉情報を取得し、
前記通信期間割当手段は、
取得される前記干渉情報に応じて前記通信期間の再割り当てを行う、
請求項3記載の無線通信装置。
【請求項7】
受信側装置と、指向性の無線通信を行う送信側装置と、前記送信側装置および前記受信側装置を含む複数のグループに対して、グループ内の通信を行う通信期間を割り当てるマスタ装置と、を有する無線通信システムであって、
前記送信側装置は、
前記送信側装置の指向の方向を、自己のグループの受信側装置に向けて、所定の無線信号を送出する信号送出手段と、
前記マスタ装置が自己のグループに割り当てた通信期間に、自己のグループ内の通信を行う送信側通信手段と、を有し、
前記受信側装置は、
前記所定の無線信号を待ち受ける無線信号受信手段と、
前記マスタ装置が自己のグループに割り当てた通信期間に、自己のグループ内の通信を行う受信側通信手段と、を有し、
前記マスタ装置は、
前記受信側装置がいずれのグループから前記所定の無線信号を受信したかを示す干渉情報を取得する干渉情報取得手段と、
取得された前記干渉情報から、グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われたか否かを判断し、グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われるグループに対して、互いに重ならない通信期間を割り当て、グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われないグループに対して、互いに重なる通信期間を割り当てる指示信号を出力する通信期間割当手段と、を有する、
無線通信システム。
【請求項8】
送信側装置と、指向性の無線通信を行う受信側装置と、前記送信側装置および前記受信側装置を含む複数のグループに対して、グループ内の通信を行う通信期間を割り当てるマスタ装置と、を有する無線通信システムであって、
前記送信側装置は、
所定の無線信号を送出する信号送出手段と、
前記マスタ装置が自己のグループに割り当てた通信期間に、自己のグループ内の通信を行う送信側通信手段と、を有し、
前記受信側装置は、
前記受信側装置の指向の方向を、自己のグループの送信側装置に向けて、前記所定の無線信号を待ち受ける無線信号受信手段と、
前記マスタ装置が自己のグループに割り当てた通信期間に、自己のグループ内の通信を行う受信側通信手段と、を有し、
前記マスタ装置は、
前記受信側装置がいずれのグループから前記所定の無線信号を受信したかを示す干渉情報を取得する干渉情報取得手段と、
取得された前記干渉情報から、グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われたか否かを判断し、
グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われるグループに対して、互いに重ならない通信期間を割り当て、
グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われないグループに対して、互いに重なる通信期間を割り当てる指示信号を出力する通信期間割当手段と、を有する、
無線通信システム。
【請求項9】
受信側装置と、指向性の無線通信を行う送信側装置と、を含む複数のグループに対して、グループ内の通信を行う通信期間を割り当てる無線通信方法であって、
前記複数のグループの送信側装置に対して、前記送信側装置の指向の方向を、前記送信側装置と同じグループの受信側装置に向けて、所定の無線信号を送出させ、前記複数のグループの受信側装置に対して、前記所定の無線信号を待ち受けさせる指示信号を出力する信号送受信指示ステップと、
グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われるグループに対して、互いに重ならない通信期間を割り当て、
グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われないグループに対して、互いに重なる通信期間を割り当てる指示信号を出力する通信期間割当ステップと、
を有する無線通信方法。
【請求項10】
送信側装置と、指向性の無線通信を行う受信側装置と、を含む複数のグループに対して、グループ内の通信を行う通信期間を割り当てる無線通信方法であって、
前記複数のグループの送信側装置に対して、所定の無線信号を送出させ、前記複数のグループの受信側装置に対して、前記受信側装置の指向の方向を、前記受信側装置と同じグループの送信側装置に向けて、前記所定の無線信号を待ち受けさせる指示信号を出力する信号送受信指示ステップと、
グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われるグループに対して、互いに重ならない通信期間を割り当て、
グループ間を跨いで前記所定の無線信号の送受信が行われないグループに対して、互いに重なる通信期間を割り当てる指示信号を出力する通信期間割当ステップと、
を有する無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2009−302871(P2009−302871A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154579(P2008−154579)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】