説明

無線通信装置、無線通信システム、無線通信制御方法及びプログラム

【課題】無線通信システム全体において、他システムの影響の小さい通信用無線チャネルを用いた、効率的で品質の良い通信が可能な無線通信システムを提供する。
【解決手段】無線通信装置(親機)は、無線通信装置(子機)に対して使用可能な無線チャネルのチャネル周波数における電界強度測定を要求する(ステップS102)とともに、無線通信装置(親機)の電界強度測定部でも、そのチャネル周波数における電界強度の測定を行う(ステップS103)。無線通信装置(親機)は、無線通信装置(子機)が測定した電界強度の測定情報を受信して取得する(ステップS104)。ステップS103、S104で取得した電界強度の測定情報から、当該無線通信システムで使用する通信用無線チャネルを決定する(ステップS106)。各無線通信装置は、その通信用無線チャネルを使用して他の無線通信装置と無線通信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、無線通信システム、無線通信制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムは、特定の周波数帯の電波によって通信を行うため、周辺の装置等から発生される電波の影響を受けやすい。特に、周波数の近い電波ほど干渉等の影響を受けやすく、同一周波数帯を利用する他システムは、無線通信を妨害する大きな要因となりうる。
【0003】
このため、各周波数帯には、周波数を少しずつずらした複数の無線チャネルが標準規格等で定められている。システムごとに異なる無線チャネルを使用することで干渉を回避し、効率的な通信を実現できる。例えば、無線LANなどに広く利用されている2.4GHz帯(2400〜2495MHz)では、以下のような無線チャネルが定められている。
(2.4GHz帯の無線チャネル例)
チャネル1:2412MHz
チャネル2:2417MHz
チャネル3:2422MHz
チャネル4:2427MHz
チャネル5:2432MHz
チャネル6:2437MHz
(中略)
チャネル13:2472MHz
【0004】
特定のシステムがいずれかの無線チャネルで通信を行うと、その無線チャネルの周波数帯はそのシステムに占有される。よって、無線通信システムでは、他システムとの干渉等の影響を低減させるために、これらのチャネルから、空きチャネルを選択して、そのチャネルを用いて通信を実行する必要がある。
【0005】
ここで、他システムが特定の無線チャネルを利用しているかどうかは、当該チャネル周波数における電界強度を測定し、一定時間内の最大値や平均値に基づいて判別できる。この手法を用いて、利用可能な無線チャネルの電界強度を測定し、その測定結果に基づいて使用する無線チャネルを選択する無線通信システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1に記載されている無線通信システムにおいては、この無線通信システムに属する1台の無線通信装置(親機)が、無線通信に利用可能な複数の無線チャネル各々における電界強度を複数回繰り返して測定し、測定値と閾値を比較して、電界強度が閾値未満であった回数が最も多い無線チャネルを通信用無線チャネルとして決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−103665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の無線通信システムでは、このシステムに属する親機の電界強度測定の結果に基づいて、無線通信システムが使用する通信用無線チャネルを決定している。このため、電界強度測定を実施した親機周辺の電界強度の状態に適した通信用無線チャネルを選択することができるが、その通信用無線チャネルが、親機と直接的または間接的に通信する他の無線通信装置(子機)周辺の電界強度の状態に適しておらず、無線通信システム全体としては、他システムの影響を受け、効率が低下すると共に通信品質が低くなってしまう場合がある。
【0009】
例えば、親機からは遠く、子機に近い場所に他システムが存在した場合、他システムが通信中であっても、親機周辺では他システムの使用チャネルにおける電界強度は弱いが、子機周辺では、そのチャネルの電界強度が強くなる。このような場合、親機の電界強度測定情報に基づいて決定した通信用無線チャネルを使用しても、他システムの影響を受け、親機と子機間の通信に支障が生じてしまう。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、無線通信システム全体において、他システムの影響の小さい通信用無線チャネルを用いた通信が可能な無線通信装置等を提供することを目的とする。
また、本発明は、効率的で品質の良い通信が可能な無線通信装置等を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の無線通信装置は、
複数の無線チャネルのうちから選択された所定の通信用無線チャネルを用いて、他の無線通信装置と無線信号の送受信を行う無線通信手段と、
前記複数の無線チャネルのそれぞれにおける電界強度を測定する電界強度測定手段と、
前記無線通信手段が前記他の無線通信装置から受信した情報より、前記他の無線通信装置が測定した各前記無線チャネルにおける電界強度を示す測定情報を取得する測定情報取得手段と、
前記電界強度測定手段で測定した各前記無線チャネルのそれぞれにおける電界強度と前記測定情報取得手段が取得した測定情報が示す各前記無線チャネルのそれぞれにおける電界強度とに基づいて、前記所定の通信用無線チャネルを決定する通信用無線チャネル決定手段と、
前記通信用無線チャネル決定手段で決定した通信用無線チャネルを用いて、前記他の無線通信装置と無線信号の送受信を行うように前記無線通信手段を制御する無線通信制御手段と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、無線通信システム全体において、他システムの影響の小さい通信用無線チャネルを用いた、効率的で品質のよい通信が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態1に係る無線通信システムを含む構成を示す図である。
【図2】実施の形態1に無線通信装置(親機)の内部構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1に無線通信装置(子機)の内部構成を示すブロック図である。
【図4】実施の形態1に係る無線通信装置(親機)が実行するチャネル設定処理(親機)を示すフローチャートである。
【図5】無線通信装置(親機)と無線通信装置(子機)の電界強度測定結果の例を示す図である。
【図6】実施の形態1に係る無線通信装置(子機)が実行するチャネル設定処理(子機)を示すフローチャートである。
【図7】無線通信装置(親機)と無線通信装置(子機)間のデータの流れを示すシーケンス図である。
【図8】実施の形態2に係る無線通信装置(親機)が実行するチャネル設定処理(親機)を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態2に係る無線通信装置(子機)が実行するチャネル設定処理(子機)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1に係る無線通信システムについて図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
実施の形態1に係る無線通信システム1は、図1に示す無線通信装置11、12、13から構成される。
【0016】
図1において、無線通信システム1を構成する無線通信装置11は親機として機能し、無線通信装置12、13は子機として機能している。
【0017】
無線通信システム1の動作環境内に、他の無線通信システムが複数存在する場合がある。例えば、図1に示すように、無線通信装置11、12、13からなる無線通信システム1の動作環境内に、無線通信装置21、22からなる無線通信システム2、無線通信装置31、32からなる無線通信システム3が存在している場合がある。
【0018】
親機となる無線通信装置11は、予め指定された装置でもよいし、システム内で最初に起動した無線通信装置を親機として機能させてもよい。以下の説明において、無線通信装置11を無線通信装置(親機)11と記し、無線通信装置12、13をそれぞれ無線通信装置(子機)12、13と記す。なお、理解を容易にするため、図1には無線通信装置(子機)を2つ描いているが、無線通信装置(子機)の数は任意であり、1つであっても2つ以上であっても良い。
【0019】
無線通信装置(親機)11は、無線通信により、無線通信装置(子機)12、13との間でデータを送受信する機能を有する無線通信装置であり、無線通信システム1を正常に動作させるための情報を含むデータの送受信や、ユーザの操作に基づくデータの送受信を行う。
【0020】
本実施の形態では、無線通信装置(親機)11は、無線通信装置(子機)12、13が測定した無線チャネル毎の電界強度を含む情報データを受信し、自装置11が測定した電界強度の測定情報と合わせて、無線通信システム1全体として最良の通信環境を提供できる通信用無線チャネルを決定し、その通信用無線チャネルを使用して、無線通信装置(子機)12、13との無線通信を行う。
【0021】
無線通信装置(親機)11は、図2に示すように、アンテナ111と、無線回路112と、電界強度測定部113と、データ通信部114と、制御部115と、記憶部116、操作部117、表示部118を備える。
【0022】
アンテナ111は無線回路112に接続されている。アンテナ111の構成は任意であるが、例えば、その構成の簡単さから、ダイポールアンテナから構成される。アンテナ111は、無線回路112から出力される電気信号を無線信号に変換して放射し、また、他の無線通信回路から送信された無線信号を受信し、電気信号に変換して、無線回路112に出力する。
【0023】
無線回路112は、アンテナ111と電界強度測定部113に接続されており、受信回路と送信回路を備える。
【0024】
無線回路112の送信回路は、データ通信部114から供給される通信制御信号に従って動作し、データ通信部114から供給された信号(ベースバンド信号)により搬送波を変調して、通信用無線チャネルの周波数帯の信号を生成し、アンテナ111に出力する。一方、無線回路112の受信回路は、データ通信部114から供給される通信制御信号に従って動作し、アンテナ111が出力した電気信号から通信用無線チャネルに相当する周波数帯域の信号を抽出し、これを復調して、ベースバンド信号を再生し、データ通信部114に出力する。ここで、通信用無線チャネルは、本実施の形態における無線通信システムで予め指定された無線チャネルから、後述するチャネル設定処理で選択されたチャネルである。例えば、前述した2.4GHz帯の無線チャネル1〜13から選択されたチャネル3(2422MHz)である。
【0025】
また、無線回路112の受信回路は、データ通信部114から供給される通信制御信号に従って、アンテナ111が出力した電気信号のうち、各無線チャネルに相当する周波数帯域の電気信号を順次抽出し、電界強度測定部113に出力する。例えば、前述した2.4GHz帯の無線チャネル1〜13の全チャネルの周波数帯域の電気信号を順次電界強度測定部113に出力する。
【0026】
電界強度測定部113は、無線回路112と制御部115に接続されており、制御部115の制御に従って動作する。電界強度測定部113には、前述したように無線回路112の受信回路から各無線チャネルに相当する周波数帯域の電気信号が順次入力される。電界強度測定部113は、制御部115の制御に従い各々のチャネルの電気信号の入力のタイミングで電気信号の強度(RSSI;Receive Signal Strength Indication)を順次測定することにより、測定対象の無線チャネル(例えば、2.4GHz帯の無線チャネル1〜13)の電界強度を求める。
【0027】
電界強度測定部113は、測定して得られた各無線チャネルの電界強度に基づく測定情報を制御部115に出力する。
【0028】
データ通信部114は、無線回路112および制御部115と接続される。データ通信部114は、制御部115の制御に従って、無線回路112の送信回路による送信を制御するための通信制御信号を無線回路112に出力する。この通信制御信号は、制御部115が指定する無線チャネル情報を含む信号である。また、データ通信部114は、制御部115から出力されたデータ信号を、無線通信規格に準拠した信号(ベースバンド信号)に変換して無線回路112の送信回路に出力する。
【0029】
また、データ通信部114は、制御部115の制御に従って、無線回路112の受信回路へ通信制御信号を出力すると共に、無線回路112の受信回路から出力される信号(ベースバンド信号)を制御部115で取り扱い可能なデータ方式に変換して、制御部115に出力する。
【0030】
制御部115は、演算装置、制御装置等から構成され、記憶部116に記憶されているプログラムを実行することにより、無線回路112、電界強度測定部113、データ通信部114を含む無線通信装置(親機)11の各構成部の制御や、後述するチャネル設定処理等の無線通信装置(親機)11が有する機能を実現するためのプログラム処理を行う。
【0031】
制御部115は、データ通信部114から無線回路112の送信回路へ通信制御信号を出力させることにより、通信用無線チャネルを使用した無線送信を制御する。また、制御部115は、データ通信部114から無線回路112の受信回路へ通信制御信号を出力させることにより、通信用無線チャネルを使用した無線受信を制御する。
【0032】
つまり、制御部115は、無線回路112の送信回路から無線送信データを通信用無線チャネルの搬送波で送信させるために、無線回路112を制御する。また、無線回路112の受信回路へ入力された電気信号から、通信用無線チャネルの周波数帯域の信号を抽出させるように、無線回路112を制御する。
【0033】
また、制御部115は、送信するデータを生成してデータ通信部114に出力したり、データ通信部114でベースバンド信号から変換された受信データを取得してデータ処理する。本実施の形態のチャネル設定処理では、無線通信装置(子機)12、13に対して電界強度測定要求を行う際に、測定対象の無線チャネル等の測定条件を含むデータを出力する。また、無線通信装置(子機)12、13が測定した電界強度の測定情報を取得する際に、測定情報を含むデータをアンテナ111、無線回路112、データ通信部114を介して取得する。
【0034】
また、制御部115は、無線通信装置(親機)11における電界強度測定を行うために、無線回路112が測定対象の無線チャネルそれぞれに対応する周波数帯域の電気信号を抽出するように、無線回路112を制御する。また、電気信号の抽出のタイミングに合わせて電界強度測定部113が電界強度測定を行い、測定値を出力するように、電界強度測定部113を制御する。
【0035】
また、制御部115は、無線通信装置(子機)12から取得した電界強度測定情報や、電界強度測定部113が測定した電界強度測定情報を含むデータを記憶部116に記憶させる。また、制御部115に内蔵する一時記憶部に一時記憶させた上で、一時記憶させたデータに基づく情報を表示部118に表示させたり、チャネル設定処理機能等の機能を実現するためのプログラム処理に、データ信号を使用する。
【0036】
記憶部116は、例えば、フラッシュメモリ等の読み書き可能な不揮発性の半導体メモリから構成され、制御部115が実行するプログラムや、そのプログラムが参照する条件データや、無線通信するデータや、ユーザが操作入力したデータ等を記憶する。記憶部116に記憶されたデータは、操作部117に入力するユーザの操作や制御部115の制御により書き換え可能な構成となっている。
【0037】
記憶部116は、後述するチャネル設定処理で用いる、無線通信システム1で使用可能な無線チャネルのリストや、電界強度測定の条件等の情報も記憶している。
【0038】
操作部117は、方向キー・決定キー・ファンクションキー等の各種のキーボタンやダイヤル等から構成され、ユーザからの操作入力を受け付け、受け付けた操作入力に係る信号を制御部115に出力する。また、操作部117はユーザから、データ送信要求や、送信するデータの入力操作等を受け付ける。
【0039】
表示部118は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro -Luminescence)ディスプレイ等の表示デバイスから構成され、画像、図形、文字、記号などの情報表示出力を行う。表示部118には、無線通信で受信したデータや、ユーザが操作入力した送信するデータ等を表示する。
【0040】
無線通信装置(子機)12は図3に示すように、アンテナ121と、無線回路122と、電界強度測定部123と、データ通信部124と、制御部125、記憶部126、操作部127、表示部128とを備える。無線通信装置(子機)13も無線通信装置(子機)12と同等の構成部を備える。
【0041】
無線通信装置(子機)12の各機能部は、無線通信装置(親機)11の同じ名称が付された各機能部と同様の機能を有している。
【0042】
無線通信装置(子機)12の制御部125は、無線通信装置(親機)11の制御部115と同様の機能を実行するほか、無線通信装置(親機)11から送信された電界強度測定要求を含む信号を受信した時には、その電界強度測定要求に基づいた電界強度測定を行うように無線回路122や電界強度測定部123を制御する。つまり、制御部125は、無線通信装置(子機)12における電界強度測定を行うために、無線回路122が測定対象の無線チャネルそれぞれに対応する周波数帯域の電気信号を抽出するように無線回路122を制御する。また、電気信号の抽出のタイミングに合わせて電界強度測定部123が電界強度測定を行い、測定値を出力するように、電界強度測定部123を制御する。
【0043】
また、電界強度測定部123から、電界強度測定要求に従い、電界強度の測定を行った測定情報が制御部125に入力されると、制御部125は、測定情報を無線通信装置(親機)11に対して送信するように、データ通信部124を介して無線回路112を制御する。電界強度測定情報の送信は、例えば、無線通信装置(親機)11からの送信要求に応答して送信する。
【0044】
以上説明したように構成された無線通信システム1におけるチャネル設定処理について、図1乃至5を用いて説明する。
【0045】
無線通信システム1に属する無線通信装置(親機)11や無線通信装置(子機)12、13は、無線通信装置(親機)11に電源投入されたタイミング、又は各々の無線通信装置に電源投入されたタイミングで、それぞれの装置の初期設定を行う。例えば、無線通信システム1に属する無線通信装置の通常の初期設定として、システムの識別子であるPANIDや無線通信装置の識別子であるアドレスの設定を実行する。また、予め親機を指定していない場合であって、最初に電源投入された無線通信装置を親機として機能させるシステムの場合には、最初に電源投入された無線通信装置は、初期設定時に自装置が無線通信装置(親機)11であることを示すフラグのセットなども実行する。
【0046】
無線通信装置(親機)11の制御部115は、初期設定を実行した後に、図4のフローチャートに示すチャネル設定処理を開始する。
【0047】
なお、使用する通信用無線チャネルを決定するまでは、仮の通信用無線チャネルを初期設定時に設定する。仮の通信用無線チャネルは、記憶部116、126に記憶されている予め指定されたチャネルでもよいし、立ち上がり時に手動で設定してもよい。
【0048】
まず、無線通信装置(親機)11の制御部115は、記憶部116から、無線通信システム1で使用可能なチャネルのリストを読み出す(ステップS101)。制御部115は、無線通信装置(子機)12、13に対して電界強度測定を要求する情報を含む無線信号を送信するように、データ通信部114を介して無線回路112の送信回路を制御する(ステップS102)。このとき、電界強度測定を要求する情報には、ステップS101で読み出したチャネル周波数、測定時間、測定回数等の測定条件も含む。
【0049】
その後、制御部115はステップS101で読み出したチャネル情報に基づき、各々のチャネルの電界強度を測定する(ステップS103)。具体的には、無線回路112の受信部が測定対象の無線チャネルそれぞれに対応する周波数帯域の電気信号を抽出するように制御すると共に、電界強度測定部113が電界強度測定を行うように制御する。制御部115は、電界強度測定部113よりそれぞれのチャネルの測定値を取得すると、予め設定しておいた閾値と比較する。
【0050】
この電界強度の測定と、閾値との比較を複数回繰り返す。そして、通信用無線チャネル毎に電界強度が閾値を超えた回数を計数する。測定回数は、例えば周辺に存在する他システムの通信が、送信時間100msec、送信間隔が1000msecであると想定した場合、10回以上の測定回数で他システムの存在を検知できると考えられる。
【0051】
一方、無線通信装置(親機)11からの電界強度測定要求を受けた無線通信装置(子機)12、13は電界強度を測定した後に、各チャネルの測定値を予め設定しておいた閾値と比較し、閾値を超えた回数を無線通信装置(親機)11に対して送信する。無線通信装置(親機)11の制御部115は、アンテナ111、無線回路112、データ通信部114を介して、無線通信装置(子機)12、13の送信信号を受信し、受信信号より、無線チャネル毎の電界強度が閾値を超えた回数を取得する(ステップS104)。制御部115は、閾値を超えた回数を示すデータを記憶部116に記憶する。
【0052】
制御部115は、ステップS103、S104で取得して記憶部116に記憶した電界強度測定値が予め設定された閾値を超えた回数をチャネル毎に合算する。この値が0であるものを空きチャネルと判別し(ステップS105)、空きチャネルの中から使用する通信用無線チャネルを決定する(ステップS106)。使用する通信用無線チャネルを決定する方法は、例えば、空きチャネルの中で、最もチャネル番号の小さいチャネルとしてもよいし、最もチャネル番号の大きいチャネルやランダムに選択してもよい。また、空きチャネルが存在しない場合は、例えば電界強度の測定値が予め設定された閾値を超えた回数の合計が最も少ないチャネルとする。
【0053】
ステップS103からS106までのチャネルを決定する手順について、図5の例を用いて説明する。図1に示す無線通信システム1、2、3が混在している状態において、無線通信装置(親機)11の電界強度測定部113が測定した測定結果の例を図5(a)に示し、無線通信装置(子機)12の電界強度測定部123が測定した測定結果の例を図5(b)に示す。この例の測定は、チャネル1〜6の周波数帯域の電気信号を抽出してVSSIを測定したものであり、測定回数は20回である。図5(a)、(b)はチャネル毎の測定値が予め設定しておいた閾値を超えた回数を示したものである。
【0054】
この例において、無線通信システム2はチャネル2を使用し、無線通信システム3はチャネル5を使用している。
【0055】
図5(a)に示すように、ステップS103で無線通信装置(親機)11の電界強度測定部113が測定したチャネル5の電界強度の測定値が閾値を超えた回数が3であることから、ステップS105でチャネル5が空きチャネルでないことは判別できる。しかし、チャネル2の電界強度の測定値が閾値を超えた回数が0であることから、無線通信装置(親機)の測定情報のみに基づいて判断すると、ステップS105でチャネル2も空きチャネルであると判別されてしまう。ところが実際は、無線通信装置(子機)12の近くにチャネル2を使用している無線通信システム2が存在することから、無線通信装置(子機)12との無線通信にチャネル2を使用すると干渉等の影響が大きくなる。
【0056】
一方、図5(b)に示すように、ステップS104で取得した無線通信装置(子機)12の電界強度測定部123が測定したチャネル2及びチャネル5の電界強度の測定値が閾値を超えた回数がいずれも2であることから、チャネル2及び5がいずれも空きチャネルではないと判別することができる。
【0057】
ステップS103とS104で取得した回数の合計を図5(c)に示す。ステップS105で回数の合計が0であるチャネルを空きチャネルとして判別するため、チャネル3、4、6が空きチャネルと判別される。よってステップS106で、空きチャネルの中で、最もチャネル番号の小さいチャネル3を通信用無線チャネルと選択することになる。
【0058】
よって、図1、5に示す例において、近隣に存在する無線通信システム2、3の影響の小さいチャネル3を選択することができる。
【0059】
制御部115は、選択した通信用無線チャネルの情報を含むデータ信号を、データ通信部114に出力するとともに、そのデータ信号に基づく信号を無線通信装置(子機)12に対して無線送信するように、無線回路112の送信回路を制御する(ステップS107)。
【0060】
その後、無線回路112に通信用無線チャネルを設定するために、制御部115は、データ通信部114を介して無線回路112を制御する(ステップS108)。無線回路112は、その通信用無線チャネルを用いて、無線通信装置(子機)12、13と無線通信する。
【0061】
次に、無線通信装置(子機)12の制御部125の処理動作について図6を用いて説明する。初期設定を実施した後に、図6のフローチャートに示すチャネル設定処理を開始する。
【0062】
無線通信装置(子機)12の制御部125は、無線通信装置(親機)11から電界強度測定の要求を受信したかを判定する(ステップS201)。要求を受信した場合は(ステップS201:Yes)、ステップS202に移り、要求を受信しない間は、ステップS201を繰り返し受信するまで待機する。
【0063】
無線通信装置(子機)12が無線通信装置(親機)11から受ける電界強度測定の要求には、電界強度を測定するチャネル周波数や測定時間や測定回数等の情報を含んでおり、制御部125は、その要求を受信した際には、電界強度測定部123が電界強度を測定するように制御する(ステップS202)。具体的には、無線回路122の受信部が測定対象の無線チャネルそれぞれに対応する周波数帯域の電気信号を抽出するように無線回路122を制御する。また、電気信号の抽出のタイミングに合わせて電界強度測定部123が電界強度測定を行い、測定値を出力するように、電界強度測定部123を制御する。制御部125は、電界強度測定部123よりそれぞれのチャネルの測定値を取得すると、予め設定しておいた閾値と比較する。
【0064】
この電界強度の測定と、閾値との比較を複数回繰り返す。そして、通信用無線チャネル毎に電界強度が閾値を超えた回数を計数する。測定回数は、例えば周辺に存在する他システムの通信が、送信時間100msec、送信間隔が1000msecであると想定した場合、10回以上の測定回数で他システムの存在を検知できると考えられる。
【0065】
電界強度が閾値を超えた回数の計数が完了すると、制御部125は、無線回路122から無線通信装置(親機)11に、計数結果を電界強度測定情報として送信する。電界強度測定情報の送信は無線通信装置(親機)11からの要求に対する応答として行う。
【0066】
その後、無線通信装置(親機)11が決定した無線通信システム1で使用する通信用無線チャネルを含む情報が親機から送られてくるまで待機する(ステップS204)。通信用無線チャネルの情報を受信すると、受信した通信用無線チャネルを無線回路122に設定する(ステップS205)。無線回路122は、その通信用無線チャネルを用いて、無線通信装置(親機)11や他の子機と無線通信する。
【0067】
次に、無線通信装置(親機)11と無線通信装置(子機)12との間の、通信用無線チャネルを設定するまでのデータの流れを図7のシーケンス図を用いて説明する。このシーケンス図は、無線通信装置(親機)11と無線通信装置(子機)12とのデータ送受信のみを記載している。なお、無線通信装置(子機)が2以上ある場合には、無線通信装置(親機)11から複数の無線通信装置(子機)へのマルチキャスト送信を行い、複数の無線通信装置(子機)からの応答を全て、無線通信装置(親機)11が受信して、それに基づいて通信用の無線チャネルを決定する。
【0068】
無線通信装置(親機)11は、無線通信装置(子機)11に対して、測定パラメータ設定要求を送信する(ステップS301)。設定を要求する測定パラメータは測定する無線チャネルのチャネル周波数や測定時間や測定回数などがある。チャネル周波数は例えば、前述した2.4GHz帯のチャネル周波数である。測定時間は、例えば周辺に存在する他システムの送信時間が100msecであると予測される場合、100msecとする。
【0069】
無線通信装置(子機)12の制御部125は、無線通信装置(親機)11がステップS301において送信した測定パラメータ設定要求を受信すると、受信した測定パラメータを設定する(ステップS302)。
【0070】
無線通信装置(子機)12の制御部125は、測定パラメータの設定が完了すると、無線通信装置(親機)11に測定パラメータ設定応答を送信する。設定応答は、例えば設定成功、設定失敗などを送信する(ステップS303)。
【0071】
無線通信装置(親機)11の制御部115は、無線通信装置(子機)12がステップS303において送信した測定パラメータ設定応答を受信すると、無線通信装置(子機)12に測定開始要求を送信させる(ステップS304)。
【0072】
無線通信装置(子機)12の制御部125は、無線通信装置(親機)11がステップS304において送信した測定開始要求を受信すると、無線通信装置(親機)11に測定開始応答を送信させる(ステップS305)。
【0073】
無線通信装置(子機)12の制御部125は、ステップS305において測定開始応答を送信後一定時間待機する。これは、無線通信装置(親機)11が測定開始応答を正確に受信するまで待つものである。無線通信装置(親機)11が測定開始応答を正確に受信しない場合、無線通信装置(親機)11が再度、無線通信装置(子機)12に測定開始要求を送信する可能性があり、前記測定開始要求送信中に、無線通信装置(子機)12が電界強度測定を実施すると、自システムの通信を測定してしまう。これを回避するために一定時間待機する。一定時間は、例えば要求に対する応答待ち時間、再送に要する通信時間、再送回数から決定し、応答待ち時間110msec、再送に要する通信時間100msec、再送回数2回の場合には、420msec( =(110+110)×2)とする。なお、待機する時間は、予め定められた時間でも良いし、ステップS301において、パラメータとして設定してもよい。
【0074】
無線通信装置(子機)12の制御部125は、ステップS306において一定時間待機後、電界強度測定部123に、電界強度測定を実施させる(ステップS307)。この時の測定条件は、ステップS301で受信した測定パラメータに基づく条件である。
【0075】
一方、無線通信装置(親機)11の制御部115も、ステップS305で無線通信装置(子機)12から測定開始応答を受けると、一定時間待機後、電界強度測定部113により、電界強度測定を実施する(ステップS308)。この時の測定条件は、ステップS301で送信した測定パラメータと同じ条件である。また、無線通信装置(親機)と無線通信装置(子機)における測定のタイミングが略同時となるように、それぞれの電界強度測定部113、123を制御する。
【0076】
無線通信装置(子機)12の制御部125は、ステップS307における電界強度測定の完了後、無線回路112より、測定終了通知を送信させる(ステップS309)。
【0077】
無線通信装置(親機)11の制御部115は、ステップS309において、無線通信装置(子機)12が送信した測定終了通知を受信すると、無線回路112より、無線通信装置(子機)12に測定情報要求を送信する(ステップS310)。
【0078】
無線通信装置(子機)12の制御部125は、ステップS310において、無線通信装置(親機)11が送信した測定情報要求を受信すると、無線回路122より、無線通信装置(親機)11に測定情報応答を送信させる(ステップS311)。測定情報応答に含まれる測定情報は、無線通信装置(子機)12の電界強度測定部123が、ステップS307において測定した測定値が予め定めた閾値を超えた回数をチャネル毎に計数した結果である。
【0079】
無線通信装置(親機)11の制御部115は、ステップS308で測定した電界強度に基づく測定情報と、ステップS311で複数の無線通信装置(子機)から受信した測定情報応答に含まれる測定情報に基づいて、無線通信に使用する通信用無線チャネルを決定する(ステップS312)。
【0080】
無線通信装置(親機)11の制御部115は、ステップS312で決定した通信用無線チャネルを、無線通信装置(子機)12、13を含む全ての無線通信装置(子機)に対して通知する(ステップS313)。
【0081】
その後、無線通信装置(親機)11の制御部115は無線回路112のチャネルをステップS312で決定した通信用無線チャネルに設定し(ステップS314)、無線通信装置(子機)12の制御部125は、無線回路121のチャネルをステップS313で通知された通信用無線チャネルに設定する(ステップS315)。なお、複数の無線通信装置(子機)へのマルチキャスト送信を行って、各装置に通信用無線チャネルを通知する場合は、各無線通信装置(子機)は、無線回路のチャネルを通知された通信用無線チャネルに設定する。
【0082】
本実施の形態では、図7のシーケンス図に示したように、要求に対して逐次応答を送信することにより、無線通信装置(親機)11のチャネル制御部が、次のステップに進んでよいか、同じステップを繰り返すかをスムーズに判断できる。
【0083】
以上のように、本実施の形態の無線通信システム1は、無線通信装置(親機)11および少なくとも1台以上の無線通信装置(子機)12、13において電界強度測定を実行し、無線通信装置(親機)11と無線通信装置(子機)12、13の電界強度測定情報に基づいて通信用無線チャネルを決定しているため、他システムの影響の小さい通信用無線チャネルを選択することができ、無線通信システム全体で、効率的で品質の良い通信が可能となる。
【0084】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2について図8、9を参照して説明する。本実施の形態に係る無線通信システム1の構成及び無線通信装置(親機)11、無線通信装置(子機)12、13の内部構成は、実施の形態1と同一である。無線通信装置(親機)11の制御部115、無線通信装置(子機)12の制御部125の処理内容が実施の形態1と異なるため、各制御部の処理内容を詳細に説明する。
【0085】
本実施の形態における無線通信装置(親機)11と無線通信装置(子機)12、13は、定期的に記憶部116に記憶されている通信用無線チャネルへ変更することにより、時間帯に応じてチャネルを自動変更する機能を有する。また、無線通信装置(親機)11と無線通信装置(子機)12、13が断続的に電界強度を測定して得られた電界強度の時間変化に基づいて、時間帯に対応した通信用無線チャネルを決定して、記憶部116に記憶されている通信用無線チャネルのリストを更新する機能も有する。
【0086】
これら2つの機能は、ユーザの操作により、有効、無効を切り替えることができる。
【0087】
無線通信装置(親機)11の制御部11が実行するチャネル設定処理について、図8のフローチャートを用いて説明する。図8のフローチャートは、時間帯に応じてチャネルを自動変更する機能が有効となった時にスタートする。
【0088】
無線通信装置(親機)11の制御部115は、まず、現在時刻を読み出し、現在時刻がチャネル変更時刻となったか判別する(ステップS401、S402)。ここで、チャネル変更時刻とは、予め記憶部116に記憶しておいたチャネルを変更する時刻であり、例えば、1時間おきの時刻である。
【0089】
ステップS402でチャネル変更時刻になっていなければ(ステップS402;No)、チャネルは変更せず、ステップS406に進む。一方、現在時刻がチャネル変更時刻になっている場合には(ステップS402;Yes)、記憶部116から、この時のチャネル変更時刻に対応して記憶している通信用無線チャネルを読出す(ステップS403)。ここで、後述する電界強度測定を行って通信用無線チャネルを決定し記憶する前は、記憶部116に予め記憶しておいた初期値が用いられる。
【0090】
そして、無線通信装置(子機)12、13に対してその通信用無線チャネルの情報を送信すると共に(ステップS404)、無線通信装置(親機)11の無線回路112のチャネルを、その通信用無線チャネルに設定する(ステップS405)。
【0091】
以上のステップS401乃至S405の処理により、記憶部116に記憶されている通信用無線チャネルを定期的に自動変更することができる。その後、ステップS406に進み、記憶部116に記憶されている通信用無線チャネルのリストを更新する処理を行う。
【0092】
ステップS406では、記憶部116に記憶されている、時間帯に対応した通信用無線チャネルのリストを更新する機能が有効となっているか否かを判別する。この機能の有効無効の切替は、ユーザが操作部117を操作することに行っても良いし、予め設定した日時になった時に有効とするようにしても良い。
【0093】
ステップS406で、この機能が無効となっている場合には、ステップS415に進む。一方、この機能が有効となっている場合には、ステップS407以降の処理を行う。
【0094】
無線通信装置(親機)11の制御部115は、ステップS407で現在時刻が、電界強度の測定時刻として予め記憶部に記憶されている時刻になっている場合には(ステップS407;Yes)には、記憶部116からこのシステムで使用可能なチャネルを読み出し(ステップS408)、ステップS409に進む。一方、現在時刻が電界強度の測定時刻になっていない場合には、ステップS415に進む。
【0095】
ステップS409では、制御部115は、無線通信装置(子機)12、13に対して電界強度測定を要求する情報を含む無線信号を送信するように、無線回路112の送信回路を制御する(ステップS102)。このとき、電界強度測定を要求する情報には、測定する無線チャネルのチャネル周波数、測定時間、測定回数等の測定条件も含む。
【0096】
次に、制御部115は読み出したチャネル情報に基づき、各々のチャネルの電界強度を測定する(ステップS410)。具体的には、無線回路112の受信部が測定対象の無線チャネルそれぞれに対応する周波数帯域の電気信号を抽出するように制御する。また、電気信号の抽出のタイミングに合わせて電界強度測定部113が電界強度測定を行い、測定値を出力するように、電界強度測定部123を制御する。制御部115は、電界強度測定部113よりそれぞれのチャネルの測定値を取得すると、予め設定しておいた閾値と比較する。
【0097】
この電界強度の測定と、閾値との比較を複数回繰り返す。そして、通信用無線チャネル毎に電界強度が閾値を超えた回数を計数する。測定回数は、例えば周辺に存在する他システムの通信が、送信時間100msec、送信間隔が1000msecであると想定した場合、10回以上の測定回数で他システムの存在を検知できると考えられる。チャネル毎に計数した閾値を超えた回数は、記憶部116に記憶される。
【0098】
無線通信装置(親機)11からの電界強度測定要求を受けた無線通信装置(子機)12、13は電界強度を測定した後に、測定情報を無線通信装置(親機)11に対して送信するため、制御部115は、無線回路112、データ通信部114を介して受信したデータ信号より、測定情報を取得する(ステップS411)。制御部115は、取得した結果を記憶部116に記憶する。
【0099】
制御部115は、ステップS409、S410で取得して記憶部116に記憶した電界強度測定値が閾値を超えた回数をチャネル毎に合算する。この値が0であるものを空きチャネルと判別し(ステップS412)、空きチャネルの中から使用する通信用無線チャネルを決定する(ステップS413)。使用する通信用無線チャネルを決定する方法は、例えば、空きチャネルの中で、最もチャネル番号の小さいチャネルとしてもよいし、最もチャネル番号の大きいチャネルやランダムに選択してもよい。また、空きチャネルが存在しない場合は、例えば電界強度の測定値が予め設定された閾値を超えた回数の合計が最も少ないチャネルとする。
【0100】
制御部115は、決定した通信用無線チャネルの情報を、現在時刻に基づくチャネル変更時刻に対応させて記憶部115に記憶する(ステップS414)。
【0101】
以上説明したステップS407乃至S414の処理により、記憶部116に記憶されている時間帯に対応した通信用無線チャネルのリストを更新することができる。
【0102】
その後、ステップS415に進み、時間帯に応じてチャネルを自動変更する機能がユーザの操作などによりOFFとなっていないかを判別し、OFFとなっていない場合には、ステップS401に戻って、処理を継続する。
【0103】
無線通信装置(子機)12の制御部125は、初期設定を実施した後に、図9のフローチャートに示すチャネル設定処理を開始する。無線通信装置(子機)13等の他の子機も無線通信装置(子機)12と同じ処理を行う。
【0104】
無線通信装置(子機)12の制御部125は、無線通信装置(親機)11から、電界強度測定の要求を受信したかを判定する(ステップS501)。要求を受信した場合は(ステップS501:Yes)、ステップS502に移り、要求を受信しない間は、ステップS504に進む。
【0105】
無線通信装置(子機)12が無線通信装置(親機)11から受ける電界強度測定の要求には、電界強度を測定するチャネル周波数や測定時間や測定回数等の情報を含んでおり、制御部125は、その要求に従い、電界強度測定部123が電界強度を測定するように制御する(ステップS502)。具体的には、無線回路122の受信部に測定対象の無線チャネルそれぞれに対応する周波数帯域の電気信号を抽出するように制御する。また、電気信号の抽出のタイミングに合わせて電界強度測定部123が電界強度測定を行い、測定値を出力するように、電界強度測定部123を制御する。制御部125は、電界強度測定部123よりそれぞれのチャネルの測定値を取得すると、予め設定しておいた閾値と比較する。
【0106】
この電界強度の測定と、閾値との比較を複数回繰り返す。そして、通信用無線チャネル毎に電界強度が閾値を超えた回数を計数する。
【0107】
電界強度が閾値を超えた回数の計数が完了すると、制御部125は、無線回路122から無線通信装置(親機)11に、計数結果を電界強度測定情報として送信する。電界強度測定情報の送信は無線通信装置(親機)11からの要求に対する応答として行う(ステップS503)。
【0108】
その後、無線通信装置(親機)11が決定した無線通信システム1で使用する通信用無線チャネルを含む情報を親機から受信したか否かを判別する(ステップS504)。通信用無線チャネルの情報を受信した場合は、制御部125は、無線回路122の通信用無線チャネルを通知されたチャネルに変更する(ステップS505)。無線回路112は、通知された通信用無線チャネルを用いて、無線通信装置(親機)11や他の子機と無線通信する。
【0109】
その後、ステップS506で、チャネルを自動変更する機能がユーザの操作などによりOFFとなっていないかを判別し、OFFとなっていない場合には、ステップS501に戻って、処理を継続する。
【0110】
以上のように、本実施の形態の無線通信システム1は、無線通信装置(親機)11が測定した電界強度の測定情報と、無線通信装置(子機)12、13等が測定した電界強度の測定情報に基づいて、通信用無線チャネルを決定し、記憶部116に記憶されている時間帯に対応した通信用無線チャネルのリストを更新し、その通信用無線チャネルのリストに基づいて、時間帯毎に通信用無線チャネルを自動変更することとしたため、時間帯に応じて、他システムの影響の小さい通信用無線チャネルを選択することができ、無線通信システム全体で、常に効率的で品質の良い通信が可能となる。
【0111】
以上のように、本発明における無線通信システムは、無線通信装置(親機)および少なくとも1台以上の無線通信装置(子機)において電界強度測定を実施し、得られた電界強度測定情報に基づいて通信用無線チャネルを決定しているため、無線通信システム全体において、他システムの影響の小さい通信用無線チャネルを用いた通信が可能となる。また、効率的で品質のよい無線通信が可能となる。
【0112】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更は勿論可能である。
【0113】
例えば、上記実施の形態1、2においては、電界強度測定を無線通信装置が使用可能なチャネルにおいて実施するとしたが、無線通信装置が使用可能なチャネルの全部であっても一部であってもよい。測定するチャネルの指定は、例えば、ステップS102やステップS103において、測定パラメータとして設定する方法がある。測定するチャネルを減らした場合には、測定に要する時間を短縮することができる。
【0114】
また、無線通信装置(子機)12、13等から受信した情報に含まれる電界強度の測定情報に基づいて決定するが、無線通信システム1に属する全ての無線通信装置(子機)に対して、使用する通信用無線チャネルを同じとしてもよいし、異なっていてもよい。例えば、図1において、無線通信装置(親機)11と無線通信装置(子機)12間の通信用無線チャネルを決定する際に、無線通信装置(親機)11と無線通信装置(子機)12の測定情報から空きチャネルを抽出し、その中から通信用無線チャネルを選択する。一方、無線通信装置(親機)11と無線通信装置(子機)13間の通信用無線チャネルを決定する際には、無線通信装置(親機)11と無線通信装置(子機)13の測定情報から空きチャネルを抽出し、その中から通信用無線チャネルを選択する。これにより、システム全体において空きチャネルが存在しない場合でも、局所的な空きチャネルを通信用無線チャネルとして選択できる。
【0115】
また、上記実施の形態1、2において、無線通信装置(子機)12、13等は、電界強度の測定を行った後、無線通信装置(親機)11からの要求により測定情報を通知するとしたが、無線通信装置(子機)12、13等が、電界強度の測定後に自発的に通知してもよい。
【0116】
また、上記実施の形態1、2において、記憶部116に記憶する無線通信装置(親機)11の電界強度測定部113による電界強度の測定情報や、無線通信装置(子機)12等から受信する無線通信装置(子機)12の電界強度の測定情報は、電界強度測定値が予め設定された閾値を超えた回数をチャネル毎に計数した結果であるとしたが、電界強度測定値そのものや測定値の最大値や平均の情報であってもよいし、無線通信システム1の通信頻度や通信時間であってもよい。また、電界強度は各無線チャネルにおけるVSSIを測定して求めるとしたが、測定方法はこれに限らず、任意の測定方法であって良い。
【0117】
また、上記実施の形態1において、電源投入時等などのシステム立ち上げ時に通信用無線チャネルの設定を行う構成について説明したが、システム稼働後も、定期的に電界強度の測定を実施することにより、通信用無線チャネルを更新するように構成してもよい。これにより、無線通信システムの立ち上げ後も、電波環境の変化に対応して動的に通信用無線チャネルを変更することができ、新たに設置された他システムによる干渉を回避し、効率的な通信を維持することができる。
【0118】
また、上記実施の形態1において、電界強度測定は、無線通信装置(親機)11と無線通信装置(子機)12とで略同時であるとしたが、電界強度測定のタイミングは任意に決めても良く、親機で測定してその結果をふまえて子機に測定させる構成としても良い。これにより、無線通信装置(子機)で測定するチャネル数を減らすことができ、処理量や無線通信するデータ容量も低減させることができる。
【0119】
また、上記実施の形態1において、無線通信装置(子機)での電界強度の測定は、10回実施する例について説明したが、測定回数は任意であり、1回であってもよい。測定回数の指定は、例えば、ステップS102やステップS103において、測定パラメータとして設定する方法があり、全ての無線通信装置で同一であってもよいし、無線通信装置ごとに異なっていてもよい。測定回数が1回である場合には、電界強度が予め設定した閾値を超えないチャネルを選択することとなり、処理を単純化することができる。一方、複数回測定を実施した場合には、1回の測定で検出できなかった間欠動作する他システムの通信を検出する確率が上がり、より正確に無線通信装置周辺の電波環境を反映することができる。
【0120】
さらに、上記実施の形態2において、電界強度測定を記憶部に記憶されている測定時刻に行うとしたが、測定時刻、測定期間は任意である。測定期間は例えば一日間とする。これにより、一日の各時間帯におけるチャネルの使用状況をより詳細に知ることができ、他システムの通信頻度が高い時間帯を避けて通信を行うことができる。
【符号の説明】
【0121】
1、2、3 無線通信システム
11 無線通信装置(親機)
12、13 無線通信装置(子機)
21、22、31、32 無線通信装置
111、121 アンテナ
112、122 無線回路
113、121 電界強度測定部
114、124 データ通信部
115、125 制御部
116、126 記憶部
117、127 操作部
118、128 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線チャネルのうちから選択された所定の通信用無線チャネルを用いて、他の無線通信装置と無線信号の送受信を行う無線通信手段と、
前記複数の無線チャネルのそれぞれにおける電界強度を測定する電界強度測定手段と、
前記無線通信手段が前記他の無線通信装置から受信した情報より、前記他の無線通信装置が測定した各前記無線チャネルにおける電界強度を示す測定情報を取得する測定情報取得手段と、
前記電界強度測定手段で測定した各前記無線チャネルのそれぞれにおける電界強度と前記測定情報取得手段が取得した測定情報が示す各前記無線チャネルのそれぞれにおける電界強度とに基づいて、前記所定の通信用無線チャネルを決定する通信用無線チャネル決定手段と、
前記通信用無線チャネル決定手段で決定した通信用無線チャネルを用いて、前記他の無線通信装置と無線信号の送受信を行うように前記無線通信手段を制御する無線通信制御手段と、
を有することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記他の無線通信装置に、各前記無線チャネルにおける電界強度の測定を要求する測定要求情報を、前記無線通信手段を介して送信する測定要求情報送信制御手段を、更に有し、
前記測定情報取得手段が取得する測定情報は、前記測定要求情報送信制御手段により送信された前記測定要求情報を受信した前記他の無線通信装置が、前記測定要求情報に基づいて測定した前記電界強度を示す情報を送信したものである、
ことを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記無線通信制御手段は、
前記無線通信手段を介して、前記他の無線通信装置に、前記通信用無線チャネル決定手段が決定した前記所定の通信用無線チャネルを特定する情報を送信する通信用無線チャネル情報送信手段と、
前記無線通信手段の使用する無線チャネルを、前記所定の通信用無線チャネルに設定する無線チャネル設定手段と、
を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記通信用無線チャネル決定手段は、当該無線通信装置及び前記他の無線通信装置が測定した電界強度が、予め設定した閾値を超えない無線チャネルを前記所定の通信用無線チャネルとして決定する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記通信用無線チャネル決定手段は、当該無線通信装置及び前記他の無線通信装置が複数回測定した電界強度が、予め設定した閾値を超えた回数が最も少ない無線チャネルを前記所定の通信用無線チャネルとして決定する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項6】
無線通信手段が、前記所定の通信用無線チャネルを用いて、無線信号の送受信を実行してから所定時間の後に、
前記電界強度測定手段で測定した各前記無線チャネルのそれぞれにおける電界強度と、前記測定情報取得手段が取得した測定情報が示す、前記他の無線通信装置が測定した各前記無線チャネルにおける電界強度とに基づいて、前記通信用無線チャネルを、更新する通信用無線チャネル更新手段を、更に有する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記電界強度測定手段で複数の時間帯において測定した各前記無線チャネルのそれぞれにおける電界強度と、前記測定情報取得手段が取得した測定情報が示す、前記他の無線通信装置が前記複数の時間帯において測定した各前記無線チャネルにおける電界強度とに基づいて、前記通信用無線チャネルを、前記複数の時間帯毎に変更する通信用無線チャネル変更手段を、更に有する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記通信用無線チャネル決定手段は、前記他の無線通信装置が複数ある場合に、前記測定情報取得手段が、各々の前記他の無線通信装置から送信された情報より取得した電界強度の測定情報に基づいて、各々の無線通信装置毎に前記通信用無線チャネルを決定する、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項9】
複数の無線通信装置から構成される無線通信システムであって、
各々の無線通信装置は、
複数の無線チャネルのうちから選択された所定の通信用無線チャネルを用いて、他の無線通信装置と無線信号の送受信を行う無線通信手段と、
前記複数の無線チャネルのそれぞれにおける電界強度を測定する電界強度測定手段と、を有し、
前記複数の無線通信装置の中から選択した第1無線通信装置は、
前記第1無線通信装置の前記無線通信手段が前記他の無線通信装置から受信した情報より、前記他の無線通信装置が測定した各前記無線チャネルにおける電界強度を示す測定情報を取得する測定情報取得手段と、
前記第1無線通信装置の前記電界強度測定手段で測定した各前記無線チャネルのそれぞれにおける電界強度と前記測定情報取得手段が取得した測定情報が示す各前記無線チャネルのそれぞれにおける電界強度とに基づいて、前記所定の通信用無線チャネルを決定する通信用無線チャネル決定手段と、を有し、
前記複数の無線通信装置は、前記通信用無線チャネル決定手段で決定した前記所定の通信用無線チャネルを用いて、前記複数の無線通信装置間で無線信号の送受信を行うように、各々の前記無線通信手段を制御する、
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項10】
複数の無線通信装置間で、複数の無線チャネルのうちから選択された所定の通信用無線チャネルを用いて、無線信号の送受信を行う無線通信制御方法であって、
前記複数の無線チャネルのそれぞれにおける電界強度を測定する電界強度測定ステップと、
他の無線通信装置から受信した情報から、前記他の無線通信装置が測定した各前記無線チャネルにおける電界強度を示す測定情報を取得する測定情報取得ステップと、
前記電界強度測定ステップで測定した各前記無線チャネルのそれぞれにおける電界強度と前記測定情報取得ステップで取得した測定情報が示す各前記無線チャネルのそれぞれにおける電界強度とに基づいて、前記所定の通信用無線チャネルを決定する通信用無線チャネル決定ステップと、
前記通信用無線チャネル決定ステップで決定した所定の通信用無線チャネルを用いて、前記他の無線通信装置と無線信号の送受信を行うように制御する無線通信制御ステップと、
を有することを特徴とする無線通信制御方法。
【請求項11】
コンピュータに、
複数の無線チャネルのそれぞれにおける電界強度を測定する電界強度測定手順と、
他の無線通信装置から受信した情報から、前記他の無線通信装置が測定した各前記無線チャネルにおける電界強度を示す測定情報を取得する測定情報取得手順と、
前記電界強度測定手順で測定した各前記無線チャネルのそれぞれにおける電界強度と前記測定情報取得手順で取得した測定情報が示す各前記無線チャネルのそれぞれにおける電界強度とに基づいて、前記他の無線通信装置との通信に使用する無線チャネルを通信用無線チャネルとして決定する通信用無線チャネル決定手順と、
前記通信用無線チャネル決定手順で決定した通信用無線チャネルを用いて、前記他の無線通信装置と無線信号の送受信を行うように制御する無線通信制御手順と、
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−248939(P2012−248939A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116941(P2011−116941)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】