説明

無線通信装置、無線通信システムおよび情報報知方法

【課題】外部アンテナを備える無線通信装置におけるアンテナ調整の作業性を向上させる技術を提供する。
【解決手段】基地局装置20は、通信制御回路210が設けられた本体部200と、本体部200とケーブルを介して電気的に接続されアンテナが設けられた外部アンテナ部300と、端末局装置50との通信処理のスループットを調査するスループット調査部214と、スループット調査部214による調査結果に基づく報知情報を外部アンテナ部300においてユーザに報知する報知制御部216、報知印加回路250および報知発生回路350とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ローカルエリアネットワーク(Local Area Network,LAN)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線LANにおける無線通信の通信状態を向上させるため、外部アンテナを備える無線通信装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。外部アンテナは、通信制御回路が設けられた本体部とケーブルを介して電気的に接続され、アンテナの設置位置および設置方向を調整するアンテナ調整を実施可能に構成されている。
【0003】
一般的に、アンテナ調整は、アンテナで受信される電界強度のレベルが高くなるように実施される。なお、電界強度のレベルが良好であったとしても、必ずしも、通信状態のレベルが良好になるとは限らない。例えば、無線LANで使用されている周波数帯域に他の無線通信やノイズが存在する電波環境や、建物の構造や障害物などの影響により通信電波の反射が比較的に多い電波環境では、電界強度のレベルが良好であっても、通信状態のレベルは低下してしまう。
【0004】
また、無線LANにおける無線通信を高速化するため、MIMO(Multi Input Multi Output)方式を無線LANに適用することが知られている(例えば、特許文献2を参照)。MIMO方式は、送信側および受信側の各無線通信装置にそれぞれ複数のアンテナを設け、送信側における複数のアンテナからそれぞれ異なるデータを送信し、受信側における複数のアンテナで同時にデータを受信することによって、無線通信の高速化を実現する技術である。MIMO方式では、受信側の無線通信装置は、複数のアンテナに伝播する直接波に加え、反射波についても有効な電波として利用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−164869号公報
【特許文献2】特開2008−160758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
直接波に加え反射波を利用するMIMO方式による無線通信では、電界強度と通信状態との間の相関性が特に低下するため、外部アンテナを備える無線通信装置では、アンテナ調整を手探りで実施するのが実情であった。
【0007】
本発明は、上記した課題を踏まえ、外部アンテナを備える無線通信装置におけるアンテナ調整の作業性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1] 適用例1の無線通信装置は、他の無線通信装置との間でMIMO方式による無線通信を行う無線通信装置であって、前記他の無線通信装置との無線通信を制御する通信制御回路が設けられた本体部と、前記本体部とケーブルを介して電気的に接続され、前記他の無線通信装置との間で通信電波を送受信するアンテナが設けられた外部アンテナ部と、前記他の無線通信装置との通信処理のスループットを調査するスループット調査部と、前記スループット調査部による調査結果に基づく報知情報を、前記外部アンテナ部においてユーザに報知する報知部とを備えることを特徴とする。適用例1の無線通信装置によれば、ユーザは、外部アンテナ部に報知される報知情報を確認することによって、スループットの調査結果に応じたアンテナ調整を実施することができる。その結果、アンテナ調整の作業性を向上させることができる。
【0010】
[適用例2] 適用例1の無線通信装置において、前記報知部は、前記他の無線通信装置との通信状態のレベル、および前記アンテナを設置すべき方向の少なくとも一方を示す情報を、前記報知情報として前記外部アンテナ部において報知しても良い。適用例2の無線通信装置によれば、ユーザは、スループットの調査結果に応じたアンテナ調整を容易に実施することができる。
【0011】
[適用例3] 適用例1または適用例2の無線通信装置において、前記ケーブルは、同軸ケーブルであり、前記報知部は、前記通信制御回路と前記ケーブルとの間を電気的に接続する第1配線に設けられ、前記報知情報に応じた直流電力を前記第1配線に印加する印加部と、前記第1配線における前記通信制御回路と前記印加部との間に設けられ、前記通信制御回路への直流電力の流入を遮断する第1直流遮断部と、前記ケーブルと前記アンテナとの間を電気的に接続する第2配線に設けられ、前記第2配線に印加された直流電力に応じて、光および音声の少なくとも一方を発生させる発生部と、前記第2配線における前記発生部と前記アンテナとの間に設けられ、前記アンテナへの直流電力の流入を遮断する第2直流遮断部とを含むとしても良い。適用例3の無線通信装置によれば、比較的に簡素な構成で報知部を実現することができる。
【0012】
[適用例4] 適用例1ないし適用例3のいずれかの無線通信装置において、前記スループット調査部は、前記他の無線通信装置との通信処理のスループットを測定する測定部と、前記他の無線通信装置において測定されたスループットの測定結果を前記他の無線通信装置から取得する取得部との少なくとも一方を含むとしても良い。適用例4の無線通信装置によれば、他の無線通信装置との間のスループットを実測値に基づいて調査することができる。
【0013】
[適用例5] 適用例5の無線通信システムは、無線基地局と無線端末局とを備える無線通信システムであって、前記無線基地局および前記無線端末局の少なくとも一方は、適用例1ないし適用例4のいずれかの無線通信装置であることを特徴とする。適用例5の無線通信システムによれば、無線基地局や無線端末局におけるアンテナ調整の作業性を向上させることができる。
【0014】
[適用例6] 適用例6の情報報知方法は、他の無線通信装置との間でMIMO方式による無線通信を行う無線通信装置において情報をユーザに報知する情報報知方法であって、前記他の無線通信装置との通信処理のスループットを調査し、前記他の無線通信装置との無線通信を制御する通信制御回路が設けられた本体部とケーブルを介して電気的に接続され、前記他の無線通信装置との間で通信電波を送受信するアンテナが設けられた外部アンテナ部において、前記スループットの調査結果に基づく報知情報を報知することを特徴とする。適用例6の情報報知方法によれば、外部アンテナ部に報知される報知情報を確認することによって、スループットの調査結果に応じたアンテナ調整を実施することができる。その結果、アンテナ調整の作業性を向上させることができる。
【0015】
本発明の形態は、無線通信装置、無線通信システムおよび情報報知方法に限るものではなく、例えば、無線通信装置用の外部アンテナ、アンテナ調整方法、アンテナ調整機能をコンピュータに実現させるためのプログラムなどの種々の形態に適用することも可能である。また、本発明は、前述の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】無線通信システムの構成を示す説明図である。
【図2】基地局装置の外部アンテナ部を示す説明図である。
【図3】基地局装置の詳細構成を示す説明図である。
【図4】報知印加回路および報知発生回路の詳細構成を示す説明図である。
【図5】報知印加回路および報知発生回路の動作態様を示す説明図である。
【図6】端末局装置の詳細構成を示す説明図である。
【図7】無線通信システムの基地局装置による通信状態通知処理を示すフローチャートである。
【図8】無線通信システムの基地局装置および端末局装置によるスループット調査処理を示すフローチャートである。
【図9】第2実施例における基地局装置による全周評価処理を示すフローチャートである。
【図10】第3実施例における基地局装置による特定範囲評価処理を示すフローチャートである。
【図11】第4実施例における無線通信システムの基地局装置および端末局装置によるスループット調査処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以上説明した本発明の構成および作用を一層明らかにするために、以下本発明を適用した無線通信システムについて説明する。
【0018】
A.第1実施例:
図1は、無線通信システム10の構成を示す説明図である。無線通信システム10は、基地局装置20および端末局装置50を備える。基地局装置20および端末局装置50の各々は、IEEE802.11規格に準拠した無線LANを構築する無線通信装置であり、基地局装置20はアクセスポイントとも呼ばれ、端末局装置50はクライアントとも呼ばれる。図1では、基地局装置20に一台の端末局装置50が接続する様子を例示したが、実際には、基地局装置20は、同時に複数の端末局装置50と接続することも可能である。本実施例では、基地局装置20および端末局装置50は、相互にMIMO方式による無線通信を行う。
【0019】
基地局装置20は、無線通信システム10において構築される無線LANとは異なるネットワークである外部ネットワーク70に、無線LANを介して端末局装置50を接続するルーティングを行うことも可能である。本実施例では、外部ネットワーク70は、インターネットであるが、他の実施形態において、他の広域ネットワーク(Wide Area Network, WAN)や、IEEE802.3規格に準拠した有線LANであっても良い。
【0020】
無線通信システム10の基地局装置20は、端末局装置50との無線通信を制御する回路が設けられた本体部200と、端末局装置50との間で通信電波を送受信するアンテナ380が設けられた外部アンテナ部300とを備える。本体部200と外部アンテナ部300との間は、ケーブル310を介して電気的に接続され、本実施例では、ケーブル310は同軸ケーブルである。
【0021】
基地局装置20の外部アンテナ部300は、アンテナ380の他、アンテナ380を支持する支持台320と、光を発生させる三つの発光部360a,360b,360cとを備える。三つの発光部360a,360b,360cは、無線通信システム10のユーザに報知情報を報知する報知部の一部を構成する。
【0022】
図2は、基地局装置20の外部アンテナ部300を示す説明図である。図2には、重力方向上方から見た外部アンテナ部300を図示した。外部アンテナ部300のアンテナ380は、無線通信に利用する通信電波のRF(高周波)エネルギを特定の方向に集中させる指向性アンテナであり、アンテナ380の放射パターンPrは、指向方向Daに拡張した形状である。外部アンテナ部300の支持台320は、アンテナ380の指向方向Daが水平方向に向くようにアンテナ380を支持する。本実施例では、アンテナ380を支持台320に取り付ける角度を調整して、アンテナ380の指向方向Daが垂直方向に向く角度を調整することも可能である。
【0023】
外部アンテナ部300の三つの発光部360a,360b,360cは、本実施例では、水平方向に一列に配置され、指向方向Daに向かって、右側に発光部360a、中央に発光部360b、左側に発光部360cが配置されている。本実施例では、三つの発光部360a,360b,360cは、支持台320に設けられているが、他の実施形態において、アンテナ380に設けられていても良い。本実施例では、三つの発光部360a,360b,360cは、発光ダイオード(LED:light Emitting Diode)である。本実施例の説明では、発光部360aを「右LED」、発光部360bを「中央LED」。発光部360cを「左LED」とも呼ぶ。
【0024】
図3は、基地局装置20の詳細構成を示す説明図である。基地局装置20は、通信制御回路210、記憶部220、RF物理層チップ230、報知印加回路250、ネットワークインタフェース260、機器インタフェース270およびユーザインタフェース280を本体部200に備え、アンテナ380の他、報知発生回路350を外部アンテナ部300に備える。
【0025】
基地局装置20のネットワークインタフェース260は、外部ネットワーク70とデータをやり取りする。基地局装置20の機器インタフェース270は、パーソナルコンピュータや外部記憶装置などの機器と直接的にデータをやり取りし、本実施例では、USB(Universal Serial Bus)規格に準拠したインタフェースを含む。基地局装置20のユーザインタフェース280は、ユーザからの入力を受け付ける入力ボタンや、基地局装置20の動作状態を表示する表示ランプを含む。
【0026】
基地局装置20のRF物理層チップ230は、アンテナ380において送受信される通信電波の高周波(RF)信号と、通信制御回路210において取り扱われるデジタル信号とを、相互変換する電気回路である。
【0027】
基地局装置20のアンテナ380は、MIMO方式の無線通信を実現するために複数のアンテナ構造体382を備え、本体部200と外部アンテナ部300との間を接続するケーブル310は、アンテナ構造体382の個数に応じた本数が用意されている。本実施例では、基地局装置20は、アンテナ構造体382およびケーブル310を二組備える。基地局装置20におけるケーブル310の両端は、本体部200のコネクタ201、および外部アンテナ部300のコネクタ301にそれぞれ接続されている。本体部200のコネクタ201は、第1配線205を介してRF物理層チップ230に電気的に接続されている。外部アンテナ部300のコネクタ301は、第2配線305を介してアンテナ構造体382に電気的に接続されている。
【0028】
基地局装置20の通信制御回路210は、基地局装置20の各部を制御する。通信制御回路210は、無線LAN通信部212、スループット調査部214および報知制御部216を備える。本実施例では、通信制御回路210における無線LAN通信部212、スループット調査部214および報知制御部216の各機能は、通信制御回路210のCPU(Central Processing Unit)がプログラムに基づいて動作することによって実現されるが、他の実施形態において、通信制御回路210の少なくとも一部の機能は、通信制御回路210の物理的な回路構成に基づいて実現されても良い。
【0029】
通信制御回路210の無線LAN通信部212は、メディア・アクセス・コントローラ(MAC:Media Access Controller)とも呼ばれ、RF物理層チップ230に電気的に接続されている。無線LAN通信部212は、端末局装置50との無線通信を制御することによって、IEEE802.11規格に準拠した無線LANを構築する。
【0030】
通信制御回路210のスループット調査部214は、端末局装置50との通信処理のスループットを調査する。本実施例では、スループット調査部214は、端末局装置50において測定されたスループットを端末局装置50から取得することによって、端末局装置50との通信処理のスループットを調査する。スループット調査部214による動作の詳細については後述する。
【0031】
通信制御回路210の報知制御部216は、無線通信システム10のユーザに報知情報を報知する報知部の一部を構成し、スループット調査部214による調査結果に基づく報知情報を、外部アンテナ部300においてユーザに報知する制御を行う。本実施例では、報知制御部216は、報知印加回路250に電気信号を出力することによって、外部アンテナ部300における三つの発光部360a,360b,360cの発光態様を制御することが可能である。報知制御部216による動作の詳細については後述する。
【0032】
基地局装置20の記憶部220は、通信制御回路210によって取り扱われる種々のデータを記憶する。記憶部220に記憶されるデータには、スループット調査データ222および報知情報テーブル224が含まれる。スループット調査データ222は、スループット調査部214によって作成され、スループット調査部214によるスループットの調査結果を示す。報知情報テーブル224は、報知制御部216によって作成され、スループット調査部214による調査結果に基づく報知情報を示す。
【0033】
基地局装置20の報知印加回路250は、三つの発光部360a,360b,360cを点灯させる電気回路であり、無線通信システム10のユーザに報知情報を報知する報知部の一部である印加部を構成する。報知印加回路250は、第1配線205の一つに設けられ、通信制御回路210の報知制御部216から出力される電気信号に応じた直流電力を第1配線205に印加する。報知印加回路250が設けられた第1配線205におけるRF物理層チップ230と報知印加回路250との間には、RF物理層チップ230への直流電力の流入を遮断する第1直流遮断部としてコンデンサ208が設けられている。
【0034】
基地局装置20の報知発生回路350は、三つの発光部360a,360b,360cを点灯させる電気回路であり、無線通信システム10のユーザに報知情報を報知する報知部の一部である発生部を構成する。報知発生回路350は、報知印加回路250へとケーブル310を介して電気的に接続される第2配線305に設けられ、第2配線に印加された直流電力に応じて、三つの発光部360a,360b,360cから光を発生させる。報知発生回路350が設けられた第2配線305における報知発生回路350とアンテナ構造体382との間には、アンテナ構造体382への直流電力の流入を遮断する第2直流遮断部としてコンデンサ308が設けられている。
【0035】
図4は、報知印加回路250および報知発生回路350の詳細構成を示す説明図である。通信制御回路210は、報知制御部216の指示に応じてハイレベルおよびローレベルのデジタル信号を出力する四つの出力端子「Enable」、「Set2.85V」、「Set2.55V」および「Set2.00V」を備え、これら四つの出力端子から出力されるデジタル信号は、報知印加回路250に入力される。
【0036】
報知印加回路250は、直流電源252、可変電圧レギュレータ254、インダクタL1、コンデンサC1、五つの抵抗R1,R2,R3,R4,R5、および三つのFET(Field Effect Transistor、電界効果コンデンサ)S1,S2,S3を備える。通信制御回路210の出力端子「Enable」は可変電圧レギュレータ254に接続され、出力端子「Set2.85V」はFET_S1に、出力端子「Set2.55V」はFET_S2に、出力端子「Set2.00V」はFET_S3に、それぞれ接続されている。FET_S1,S2,S3の各々は、ハイレベルの信号が入力されると電路を導通させ、ローレベルの信号が入力されると電路を電気的に遮断する。
【0037】
報知印加回路250の直流電源252は、直流電力を生成する。報知印加回路250の可変電圧レギュレータ254は、直流電源252で生成された直流電力の電圧を変化させる。可変電圧レギュレータ254は、端子「EN」、「In」、「Out」および「Adj」を備え、端子「In」に入力される直流電力を、端子「Adj」の入力電圧に応じた電圧に変化させて端子「Out」から出力する。通信制御回路210の出力端子「Enable」は、可変電圧レギュレータ254の端子「EN」に接続され、可変電圧レギュレータ254は、端子「EN」がハイレベルで電圧調整が無効になり、ローレベルで電圧調整が有効になる。
【0038】
可変電圧レギュレータ254の端子「Out」は、インダクタL1を介して第1配線205に接続されると共に、コンデンサC1を介して接地されている。更に、可変電圧レギュレータ254の端子「Out」は、抵抗R1、R2の順に直列に接続された電路を介して接地されている。
【0039】
可変電圧レギュレータ254の端子「Adj」は、それぞれ並列に接続された四つの抵抗R2,R3,R4,R5を介して接地され、抵抗R3の電路にはFET_S1、抵抗R4の電路にはFET_S2、抵抗R5の電路にはFET_S3がそれぞれ設けられている。
【0040】
報知発生回路350は、三つのリセットIC(Integrated Circuit)「3V」、「2.7V」および「2.4V」、インダクタL2、コンデンサC2、および三つの抵抗R6,R7,R8を備える。リセットIC「3V」、「2.7V」および「2.4V」は、基準電圧以上の入力電圧でハイレベルの信号を出力し、基準電圧よりも小さな入力電圧でローレベルの信号を出力する。リセットIC「3V」の基準電圧は3.00ボルト、リセットIC「2.7V」の基準電圧は2.70ボルト、リセットIC「2.4V」の基準電圧は2.40ボルトである。
【0041】
報知発生回路350のリセットIC「3V」、「2.7V」および「2.4V」は、インダクタL2を介して第2配線305に印加された直流電力の入力電圧を受け付ける。第2配線305に接続されているインダクタL2は、リセットIC「3V」、「2.7V」および「2.4V」に接続される他、コンデンサC2を介して接地されると共に、三つの発光部360a,360b,360cの各アノード側にそれぞれ抵抗R6,R7,R8を介して接続されている。三つの発光部360a,360b,360cの各カソード側は、論理回路を介してリセットIC「3V」、「2.7V」および「2.4V」の出力側に接続されている。
【0042】
図5は、報知印加回路250および報知発生回路350の動作態様を示す説明図である。図5における「H」はハイレベルの信号を示し、「L」はローレベルの信号を示す。図5には、本体部200の状態として、四つの出力端子「Enable」、「Set2.85V」、「Set2.55V」および「Set2.00V」の信号状態と、報知印加回路250によって第1配線205に印加される直流電力の印加電圧とを示し、外部アンテナ部300の状態として、報知発生回路350における各電路の信号状態と、三つの発光部360a,360b,360cの点灯態様を示した。
【0043】
報知発生回路350の電路(a)は、リセットIC「3V」の出力側の電路であり、報知発生回路350の電路(b)は、リセットIC「2.7V」の出力側の電路である。報知発生回路350の電路(A)は、発光部360aのカソード側の電路であり、報知発生回路350の電路(B)は、発光部360bのカソード側の電路であり、報知発生回路350の電路(C)は、発光部360cのカソード側の電路である。
【0044】
本体部200において、出力端子「Enable」がハイレベル、出力端子「Set2.85V」、「Set2.55V」および「Set2.00V」がローレベルの場合、報知印加回路250による印加電圧は「3.30ボルト」になる。この場合、報知発生回路350の電路(a)、(b)、(A)、(B)および(C)のいずれの電路もハイレベルになり、点灯態様は、三つの発光部360a,360b,360cのいずれの発光部が消灯する「全消灯」になる。
【0045】
本体部200において、出力端子「Set2.85V」がハイレベル、出力端子「Enable」、「Set2.55V」および「Set2.00V」がローレベルの場合、報知印加回路250による印加電圧は「2.85ボルト」になる。この場合、報知発生回路350の電路(b)、(B)および(C)がハイレベル、電路(a)および(A)がローレベルになり、点灯態様は、三つの発光部360a,360b,360cのうち発光部360aのみが点灯する「右LED点灯」になる。
【0046】
本体部200において、出力端子「Set2.55V」がハイレベル、出力端子「Enable」、「Set2.85V」および「Set2.00V」がローレベルの場合、報知印加回路250による印加電圧は「2.55ボルト」になる。この場合、報知発生回路350の電路(A)および(C)がハイレベル、電路(a)、(b)および(B)がローレベルになり、点灯態様は、三つの発光部360a,360b,360cのうち発光部360bのみが点灯する「中央LED点灯」になる。
【0047】
本体部200において、出力端子「Set2.00V」がハイレベル、出力端子「Enable」、「Set2.85V」および「Set2.55V」がローレベルの場合、報知印加回路250による印加電圧は「2.00ボルト」になる。この場合、報知発生回路350の電路(A)および(B)がハイレベル、電路(a)、(b)および(C)がローレベルになり、点灯態様は、三つの発光部360a,360b,360cのうち発光部360cのみが点灯する「左LED点灯」になる。
【0048】
図6は、端末局装置50の詳細構成を示す説明図である。端末局装置50は、制御部510、記憶部520、RF物理層チップ530、機器インタフェース570、ユーザインタフェース580およびアンテナ590を備える。
【0049】
端末局装置50の機器インタフェース570は、外部機器と直接的にデータをやり取りし、本実施例では、USB規格に準拠したインタフェースを含む。端末局装置50のユーザインタフェース580は、ユーザから情報の入力を受け付けるキーボードや、ユーザに向けて情報を出力するモニタを含む。
【0050】
端末局装置50のRF物理層チップ530は、アンテナ590において送受信される通信電波の高周波(RF)信号と、制御部510において取り扱われるデジタル信号とを、相互変換する電気回路である。
【0051】
端末局装置50のアンテナ590は、MIMO方式の無線通信を実現するために複数のアンテナ構造体592を備える。本実施例では、基地局装置20のアンテナ構造体382の個数に合わせて、端末局装置50は、二つのアンテナ構造体592をアンテナ590に備える。
【0052】
端末局装置50の制御部510は、端末局装置50の各部を制御する。制御部510は、無線LAN通信部512およびスループット測定部514を備える。本実施例では、制御部510における無線LAN通信部512およびスループット測定部514の各機能は、制御部510のCPUがプログラムに基づいて動作することによって実現されるが、他の実施形態において、制御部510の少なくとも一部の機能は、制御部510の物理的な回路構成に基づいて実現されても良い。
【0053】
制御部510の無線LAN通信部512は、メディア・アクセス・コントローラとも呼ばれ、RF物理層チップ530に電気的に接続されている。無線LAN通信部512は、基地局装置20との無線通信を制御することによって、基地局装置20により構築される無線LANに接続する。
【0054】
制御部510のスループット測定部514は、基地局装置20との通信処理のスループットを測定する。本実施例では、スループット測定部514は、スループットを測定した測定結果を基地局装置20に提供する。スループット測定部514による動作の詳細については後述する。
【0055】
端末局装置50の記憶部520は、制御部510によって取り扱われる種々のデータを記憶する。記憶部220に記憶されるデータには、スループット測定データ522が含まれる。スループット測定データ522は、スループット測定部514によって作成され、スループット測定部514によるスループットの測定結果を示す。
【0056】
図7は、無線通信システム10の基地局装置20による通信状態通知処理(ステップS100)を示すフローチャートである。通信状態通知処理(ステップS100)は、外部アンテナ部300の現状の設置位置および設置方向による通信状態の良否を示す報知情報を、外部アンテナ部300においてユーザに報知する処理である。本実施例では、基地局装置20の通信制御回路210は、ユーザインタフェース280により受け付けられたユーザからの指示入力に基づいて、通信状態通知処理(ステップS100)を実行する。
【0057】
通信状態通知処理(ステップS100)を開始すると、基地局装置20の通信制御回路210は、スループット調査部214として動作することによってスループット調査処理(ステップS120)を実行する。スループット調査処理(ステップS120)において、通信制御回路210は、端末局装置50との通信処理のスループットを調査し、その調査結果を示すスループット調査データ222を記憶部220に書き込む。本実施例では、スループット調査処理(ステップS120)を処理中であることをユーザに報知するために、通信制御回路210は、報知制御部216として動作することによって、中央LEDである発光部360bを点滅させる。スループット調査処理(ステップS120)の詳細については後述する。
【0058】
スループット調査処理(ステップS120)の後、通信制御回路210は、報知制御部216として動作することによって通信状態のレベルを判断する(ステップS130)。具体的には、通信制御回路210は、記憶部220に保存されているスループット調査データ222に基づいて、通信状態のレベルを判断し、その判断結果を報知情報として記憶部220の報知情報テーブル224に格納する。本実施例では、報知制御部216は、「十分良い」、「良い」および「悪い」の三段階で通信状態のレベルを判断するが、他の実施形態において、「良い」および「悪い」の二段階であっても良いし、四段階以上で判断しても良い。本実施例では、記憶部220の報知情報テーブル224には、「十分良い」、「良い」および「悪い」のいずれかを示す報知情報が格納される。
【0059】
通信状態の良否を判断した後(ステップS130)、通信制御回路210は、報知制御部216として動作することによって、スループット調査処理(ステップS120)による調査結果に基づく報知情報を、外部アンテナ部300においてユーザに報知する(ステップS140,S150,S160)。本実施例では、通信制御回路210は、記憶部220の報知情報テーブル224に格納されている報知情報が「十分良い」を示す場合、全てのLEDである三つの発光部360a,360b,360cを点滅させ(ステップS140)、報知情報が「良い」を示す場合には右LEDおよび中央LEDである二つの発光部360a,360bを点滅させ(ステップS150)、報知情報が「悪い」を示す場合には右LEDである発光部360aのみを点滅させる(ステップS160)。報知情報を報知した後(ステップS140,S150,S160)、通信制御回路210は、通信状態通知処理(ステップS100)を終了する。
【0060】
図8は、無線通信システム10の基地局装置20および端末局装置50によるスループット調査処理(ステップS120,S220)を示すフローチャートである。スループット調査処理(ステップS120,S220)は、基地局装置20と端末局装置50との間の通信処理のスループットを調査する処理である。
【0061】
基地局装置20の通信制御回路210は、スループット調査処理(ステップS120)を開始すると、端末局装置50にスループットの測定を要求する(ステップS122)。
【0062】
端末局装置50の制御部510は、スループット調査処理(ステップS220)を開始した後、基地局装置20から測定要求を受信すると(ステップS222)、スループット測定部514として動作することによって測定処理(ステップS224)を実行する。測定処理(ステップS224)において、制御部510は、基地局装置20との通信処理のスループットを測定し、その測定結果を示すスループット測定データ522を記憶部520に書き込む。
【0063】
具体的には、測定処理(ステップS224)において、制御部510は、アンテナ590を用いた無線通信によって、基地局装置20に測定用データを送信し(ステップS225)、そのデータ送信に対する基地局装置20からの応答データを受信する(ステップS226)。その後、制御部510は、測定用データの送信から応答データの受信までに要した時間と、測定用データのデータ量とを用いて、基地局装置20との通信処理のスループットを測定する。本実施例では、制御部510は、測定処理(ステップS224)においてスループットの測定を複数回実施し、これらの平均値をスループットの測定結果として算出する。本実施例では、制御部510は、測定処理(ステップS224)の測定用データに、エコー(Echo)メッセージを利用するが、他の実施形態において、基地局装置20との間で予め設定されたデータを利用しても良い。
【0064】
端末局装置50において測定処理(ステップS224)が実行されている間、基地局装置20の通信制御回路210は、アンテナ380を用いた無線通信によって、端末局装置50から測定用データを受信すると(ステップS125)、その応答データを端末局装置50に送信する(ステップS126)。
【0065】
測定処理(ステップS224)の後、端末局装置50の制御部510は、記憶部520のスループット測定データ522が示すスループットの測定結果を、基地局装置20に送信する(ステップS228)。その後、端末局装置50の制御部510は、スループット調査処理(ステップS220)を終了する。
【0066】
基地局装置20の通信制御回路210は、スループット調査部214の一機能である取得部として動作することによって、スループットの測定結果を端末局装置50から受信する取得処理(ステップS128)を実行する。取得処理(ステップS128)の後、通信制御回路210は、端末局装置50から受信した測定結果に基づいてスループット調査データ222を作成し、そのスループット調査データ222を記憶部220に書き込む(ステップS129)。その後、基地局装置20の通信制御回路210は、スループット調査処理(ステップS120)を終了する。
【0067】
以上説明した第1実施例の無線通信システム10によれば、ユーザは、基地局装置20の外部アンテナ部300に報知される報知情報を確認することによって、スループットの調査結果に応じた基地局装置20のアンテナ調整を実施することができる。その結果、基地局装置20のアンテナ調整の作業性を向上させることができる。
【0068】
また、基地局装置20は、端末局装置50との通信状態のレベルを示す報知情報を、外部アンテナ部300において報知するため、ユーザは、スループットの調査結果に応じた基地局装置20のアンテナ調整を容易に実施することができる。
【0069】
また、基地局装置20では、本体部200側の報知印加回路250によってケーブル310に印加した直流電力に応じて、外部アンテナ部300側の報知発生回路350が三つの発光部360a,360b,360cを点灯させるため、外部アンテナ部300における報知を比較的に簡素な構成で実現することができる。
【0070】
また、基地局装置20において、端末局装置50において測定されたスループットの測定結果を端末局装置50から取得する取得処理(ステップS128)を実施するため、端末局装置50との間のスループットを実測値に基づいて調査することができる。
【0071】
B.第2実施例:
図9は、第2実施例における基地局装置20による全周評価処理(ステップS300)を示すフローチャートである。第2実施例における無線通信システム10は、基地局装置20が全周評価処理(ステップS300)を実施する点を除き、第1実施例と同様である。全周評価処理(ステップS300)は、水平方向の全周にわたるアンテナ380の設置方向ごとに通信状態を調査し、アンテナ380を設置すべき方向を示す報知情報を外部アンテナ部300においてユーザに報知する処理である。本実施例では、基地局装置20の通信制御回路210は、ユーザインタフェース280により受け付けられたユーザからの指示入力に基づいて、全周評価処理(ステップS300)を実行する。
【0072】
全周評価処理(ステップS300)を開始すると、基地局装置20の通信制御回路210は、水平方向の全周にわたるアンテナ380の設置方向ごとに通信状態を調査する全周調査処理(ステップS310)を実行する。本実施例では、全周調査処理(ステップS310)の開始時におけるアンテナ380の水平方向の設置方向を「0°」に設定し、重力方向上方から見て反時計回りに60°ずつ回転させた各設置方向の通信状態を調査する。すなわち、本実施例の全周調査処理(ステップS310)では、「0°」、「60°」、「120°」、「180°」、「240°」および「300°」の六つの設置方向について通信状態を調査するが、他の実施形態において、六つよりも少ない設置方向であっても良いし、六つよりも多い設置方向であっても良い。本実施例では、ユーザが手動でアンテナ380の設置方向を変えるが、他の実施形態において、モータ駆動でアンテナ380の設置方向を変えても良い。
【0073】
全周調査処理(ステップS310)において、通信制御回路210は、スループット調査部214として動作することによって、スループット調査処理(ステップS320)を実行する。スループット調査処理(ステップS320)において、通信制御回路210は、端末局装置50との通信処理のスループットを調査し、その調査結果を示すスループット調査データ222を記憶部220に書き込む。スループット調査処理(ステップS320)の詳細は、第1実施例のスループット調査処理(ステップS120)と同様である。
【0074】
スループット調査処理(ステップS320)の後、通信制御回路210は、スループット調査処理(ステップS320)を設定回数実施したか否かを判断する(ステップS334)。本実施例では、六つの設置方向について通信状態を調査するため、スループット調査処理(ステップS320)を六回実施したか否かを判断する。
【0075】
設定回数のスループット調査処理(ステップS320)を実施していない場合(ステップS334:「NO」)、通信制御回路210は、報知制御部216として動作することによって、左LEDである発光部360cを点滅させて、アンテナ380の設置方向を反時計回りに一段階(本実施例では60°)回転させる旨を指示する(ステップS336)。アンテナ380の設置方向の変更をユーザに指示した後(ステップS336)、通信制御回路210は、スループット調査処理(ステップS320)からの処理を繰り返す。
【0076】
設定回数のスループット調査処理(ステップS320)を実施した場合(ステップS334:「YES」)、通信制御回路210は、報知制御部216として動作することによって、水平方向の全周にわたるスループットの調査完了を、外部アンテナ部300においてユーザに報知する(ステップS338)。具体的には、本実施例では、通信制御回路210は、全てのLEDである三つの発光部360a,360b,360cを点滅させて、スループットの調査完了をユーザに報知する。スループットの調査完了を報知した後(ステップS338)、通信制御回路210は、全周調査処理(ステップS310)を終了する。
【0077】
全周調査処理(ステップS310)の後、通信制御回路210は、報知制御部216として動作することによって、アンテナ380を設置すべき方向を選定する(ステップS350)。具体的には、通信制御回路210は、記憶部220に保存されているスループット調査データ222に基づいて、通信状態のレベルが良好な設置方向を選定し、その選定結果を報知情報として記憶部220の報知情報テーブル224に格納する。本実施例では、通信制御回路210は、「0°」、「60°」、「120°」、「180°」、「240°」および「300°」の六つの設置方向の一つを選定し、記憶部220の報知情報テーブル224には、六つの設置方向から選定された一つ(例えば、120°)が格納される。
【0078】
アンテナ380を設置すべき方向を選定した後(ステップS350)、通信制御回路210は、報知制御部216として動作することによって、アンテナ380を設置すべき方向である選定方向を示す報知情報を外部アンテナ部300においてユーザに報知する設置方向報知処理(ステップS360)を実行する。本実施例では、設置方向報知処理(ステップS360)において、全周調査処理(ステップS310)の終了時点の設置方向から、アンテナ380を設置すべき選定方向へと、アンテナ380の設置方向を回転させる回転方向および回転回数を示す報知情報を、外部アンテナ部300においてユーザに報知する。
【0079】
例えば、全周調査処理(ステップS310)の終了時点の設置方向が「300°」であり、アンテナ380を設置すべき選定方向が「60°」の場合には、半時計回りの回転方向に二段階(120°)回転させる旨を報知するために、発光部360b(中央LED)の点滅を間に挟んで、発光部360c(左LED)の点滅を二回実行する。また、例えば、全周調査処理(ステップS310)の終了時点の設置方向が「300°」であり、アンテナ380を設置すべき選定方向が「180°」の場合には、時計回りの回転方向に二段階(120°)回転させる旨を報知するために、発光部360b(中央LED)の点滅を間に挟んで、発光部360a(右LED)の点滅を二回実行する。
【0080】
また、例えば、全周調査処理(ステップS310)の終了時点の設置方向が「300°」であり、アンテナ380を設置すべき選定方向が「120°」の場合のように、三段階(180°)回転させる場合には、発光部360b(中央LED)の点滅を間に挟んで、発光部360a(右LED)および発光部360c(左LED)のいずれか一方の点滅を三回実行する。また、例えば、全周調査処理(ステップS310)の終了時点の設置方向が「300°」であり、アンテナ380を設置すべき選定方向も「300°」のように、アンテナ380の設置方向を変更する必要がない場合には、発光部360a(右LED)および発光部360c(左LED)の一方のみによる点滅は実行しない。
【0081】
設置方向報知処理(ステップS360)において、通信制御回路210は、報知制御部216として動作することによって、アンテナ380の設置方向の変更を指示するために、発光部360a(右LED)および発光部360c(左LED)の一方を点滅させる(ステップS364)。その後、通信制御回路210は、中央LEDである発光部360bを点滅させる(ステップS366)。
【0082】
通信制御回路210は、設置方向の変更指示(ステップS364)を必要回数実施すると(ステップS362:「YES」)、全てのLEDである三つの発光部360a,360b,360cを点滅させて、選定方向の報知完了をユーザに報知する(ステップS368)。なお、アンテナ380の設置方向を変更する必要がない場合には、通信制御回路210は、設置方向報知処理(ステップS360)の開始後、直ちに、選定方向の報知完了をユーザに報知する(ステップS368)。選定方向の報知完了を報知した後(ステップS368)、通信制御回路210は、設置方向報知処理(ステップS360)を終えて全周評価処理(ステップS300)を終了する。
【0083】
以上説明した第2実施例の無線通信システム10によれば、ユーザは、基地局装置20の外部アンテナ部300に報知される報知情報を確認することによって、スループットの調査結果に応じた基地局装置20のアンテナ調整を実施することができる。その結果、基地局装置20のアンテナ調整の作業性を向上させることができる。
【0084】
また、基地局装置20は、アンテナ380を設置すべき方向を示す報知情報を、外部アンテナ部300において報知するため、ユーザは、スループットの調査結果に応じた基地局装置20のアンテナ調整を容易に実施することができる。
【0085】
C.第3実施例:
図10は、第3実施例における基地局装置20による特定範囲評価処理(ステップS400)を示すフローチャートである。第3実施例における無線通信システム10は、基地局装置20が特定範囲評価処理(ステップS400)を実施する点を除き、第1実施例と同様である。特定範囲評価処理(ステップS400)は、良好な通信状態にあるアンテナ380の設置方向を絞り込み、アンテナ380を設置すべき方向を示す報知情報を外部アンテナ部300においてユーザに報知する処理である。本実施例では、基地局装置20の通信制御回路210は、ユーザインタフェース280により受け付けられたユーザからの指示入力に基づいて、特定範囲評価処理(ステップS400)を実行する。
【0086】
特定範囲評価処理(ステップS400)を開始すると、基地局装置20の通信制御回路210は、スループット調査部214として動作することによって、スループット調査処理(ステップS420)を実行する。スループット調査処理(ステップS420)において、通信制御回路210は、端末局装置50との通信処理のスループットを調査し、その調査結果を示すスループット調査データ222を記憶部220に書き込む。スループット調査処理(ステップS420)の詳細は、第1実施例のスループット調査処理(ステップS120)と同様である。
【0087】
最初のスループット調査処理(ステップS420)の後、通信制御回路210は、報知制御部216として動作することによって、左LEDである発光部360cを点滅させて、アンテナ380の設置方向を反時計回りに一段階(本実施例では30°)回転させる旨を指示する(ステップS436)。アンテナ380の設置方向の変更をユーザに指示した後(ステップS436)、通信制御回路210は、スループット調査処理(ステップS420)を再度実行する。
【0088】
二回目以降のスループット調査処理(ステップS420)の後、通信制御回路210は、スループット調査処理(ステップS420)によるスループットの調査結果が設置方向の変更前後で悪化したか否かを判断する(ステップS434)。スループットの調査結果が同等または改善された場合、通信制御回路210は、設置方向の回転指示(ステップS436)からの処理を繰り返す。これによって、反時計回り側においてスループットの調査結果が悪化する設置方向を特定することができる。
【0089】
スループット調査処理(ステップS420)によるスループットの調査結果が悪化した場合(ステップS434)、通信制御回路210は、スループット調査処理(ステップS420)の実行回数が2回か3回以上かを判断する(ステップS438)。これによって、実行回数が2回である場合には、時計回り側に、最初の設置方向よりも良好な設置方向が存在する可能性があると判断することができ、実行回数が3回以上である場合には、調査結果が悪化した設置方向よりも一段階前に調査した設置方向がより良好であると判断することができる。
【0090】
スループット調査処理(ステップS420)の実行回数が3回以上である場合(ステップS438)、通信制御回路210は、報知制御部216として動作することによって、右LEDである発光部360aを点滅させて、アンテナ380の設置方向を時計回りに一段階(本実施例では30°)回転させる旨を指示する(ステップS453)。これによって、反時計回りの調査において調査結果が悪化した設置方向よりも一段階前に調査した設置方向を、アンテナ380を設置すべき方向として、ユーザに報知することができる。
【0091】
スループット調査処理(ステップS420)の実行回数が2回である場合(ステップS438)、通信制御回路210は、報知制御部216として動作することによって、右LEDである発光部360aを点滅させて、アンテナ380の設置方向を時計回りに一段階(本実施例では30°)回転させる旨を指示する(ステップS442)。その後、通信制御回路210は、前述したスループット調査処理(ステップS420)と同様に、スループット調査処理(ステップS446)を実行する。
【0092】
スループット調査処理(ステップS446)の後、通信制御回路210は、スループット調査処理(ステップS446)によるスループットの調査結果が設置方向の変更前後で悪化したか否かを判断する(ステップS448)。スループットの調査結果が同等または改善された場合、通信制御回路210は、設置方向の回転指示(ステップS442)からの処理を繰り返す。これによって、時計回り側においてスループットの調査結果が悪化する設置方向を特定し、その調査結果が悪化した設置方向よりも一段階前に調査した設置方向がより良好であると判断することができる。
【0093】
スループット調査処理(ステップS446)によるスループットの調査結果が悪化した場合(ステップS448)、通信制御回路210は、報知制御部216として動作することによって、左LEDである発光部360cを点滅させて、アンテナ380の設置方向を反時計回りに一段階(本実施例では30°)回転させる旨を指示する(ステップS452)。これによって、時計回りの調査において調査結果が悪化した設置方向よりも一段階前に調査した設置方向を、アンテナ380を設置すべき方向として、ユーザに報知することができる。
【0094】
アンテナ380を設置すべき方向を報知した後(ステップS452,S453)、通信制御回路210は、全てのLEDである三つの発光部360a,360b,360cを点滅させて、スループットの調査完了をユーザに報知する(ステップS454)。その後、通信制御回路210は、特定範囲評価処理(ステップS400)を終了する。
【0095】
以上説明した第3実施例の無線通信システム10によれば、ユーザは、基地局装置20の外部アンテナ部300に報知される報知情報を確認することによって、スループットの調査結果に応じた基地局装置20のアンテナ調整を実施することができる。その結果、基地局装置20のアンテナ調整の作業性を向上させることができる。
【0096】
また、基地局装置20は、アンテナ380を設置すべき方向を示す報知情報を、外部アンテナ部300において報知するため、ユーザは、スループットの調査結果に応じた基地局装置20のアンテナ調整を容易に実施することができる。
【0097】
D.第4実施例:
図11は、第4実施例における無線通信システム10の基地局装置20および端末局装置50によるスループット調査処理(ステップS520,S620)を示すフローチャートである。第4実施例の無線通信システム10は、図8のスループット調査処理(ステップS120,S220)に代えて、図11のスループット調査処理(ステップS520,S620)を実施する点を除き、第1実施例と同様である。図11のスループット調査処理(ステップS520,S620)は、基地局装置20と端末局装置50との間の通信処理のスループットを調査する処理であり、基地局装置20がスループットを測定する点で、端末局装置50がスループットを測定する図8のスループット調査処理(ステップS120,S220)と異なる。
【0098】
基地局装置20の通信制御回路210は、スループット調査処理(ステップS520)を開始すると、スループット調査部214として動作することによって測定処理(ステップS524)を実行する。測定処理(ステップS524)において、通信制御回路210は、端末局装置50との通信処理のスループットを測定する。
【0099】
具体的には、測定処理(ステップS524)において、通信制御回路210は、アンテナ380を用いた無線通信によって、端末局装置50に測定用データを送信し(ステップS525)、そのデータ送信に対する端末局装置50からの応答データを受信する(ステップS526)。その後、通信制御回路210は、測定用データの送信から応答データの受信までに要した時間と、測定用データのデータ量とを用いて、端末局装置50との通信処理のスループットを測定する。
【0100】
基地局装置20において測定処理(ステップS524)が実行されている間、端末局装置50の制御部510は、アンテナ590を用いた無線通信によって、基地局装置20から測定用データを受信すると(ステップS625)、その応答データを基地局装置20に送信する(ステップS626)。
【0101】
測定処理(ステップS524)の後、基地局装置20の通信制御回路210は、測定処理(ステップS524)による測定結果に基づいてスループット調査データ222を作成し、そのスループット調査データ222を記憶部220に書き込む(ステップS528)。その後、基地局装置20の通信制御回路210は、スループット調査処理(ステップS520)を終了する。
【0102】
以上説明した第4実施例の無線通信システム10によれば、ユーザは、基地局装置20の外部アンテナ部300に報知される報知情報を確認することによって、スループットの調査結果に応じた基地局装置20のアンテナ調整を実施することができる。その結果、基地局装置20のアンテナ調整の作業性を向上させることができる。
【0103】
また、基地局装置20において、端末局装置50との通信処理のスループットを測定する測定処理(ステップS524)を実施するため、端末局装置50の処理負荷を抑制して、端末局装置50との間のスループットを実測値に基づいて調査することができる。
【0104】
E.その他の実施形態:
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。例えば、第4実施例のスループット調査処理(ステップS520,S620)を第2実施例および第3実施例に適用しても良い。また、第2実施例の全周調査処理(ステップS310)では、反時計回りで各設置方向の通信状態を調査したが、これに限るものではなく、時計回りであっても良いし、任意の順序であっても良い。また、第3実施例の特定範囲評価処理(ステップS400)では、反時計回りの後に時計回りで各設置方向の通信状態を調査したが、これに限るものではなく、時計回りの後に反時計回りであっても良いし、任意の順序であっても良い。
【0105】
また、上述の実施例では、RF物理層チップ230とアンテナ380を接続するケーブル310を用いて、外部アンテナ部300における報知を本体部200から制御したが、他の実施形態において、RF物理層チップ230とアンテナ380を接続するケーブル310とは別体の専用ケーブルを用いても良い。また、上述の実施例では、一本のケーブル310を用いて、外部アンテナ部300における報知を本体部200から制御したが、他の実施形態において、複数のケーブル310を用いても良い。
【0106】
また、上述の実施例では、三つの発光部360a,360b,360cにより光を発生させて、外部アンテナ部300における報知を実施したが、他の実施形態において、一つや二つの発光部を用いても良いし、四つ以上の発光部を用いても良いし、スピーカにより音を発生させても良い。
【0107】
また、上述の実施例では、ユーザが外部アンテナ部300を移動させて支持台320ごとアンテナ380の設置方向を変えることによってアンテナ380の設置方向の調整を実施したが、他の実施形態において、水平方向に回転可能にアンテナ380を支持台320に設け、支持台320の位置を固定した状態で、ユーザがアンテナ380の設置方向を変えても良い。また、他の実施形態において、モータで水平方向に回転可能にアンテナ380を支持台320に設け、支持台320の位置を固定した状態で、スループットの調査結果に応じてモータを駆動することによってアンテナ380の設置方向を変えても良い。
【0108】
また、上述の実施例では、基地局装置20に外部アンテナを採用したが、他の実施形態において、基地局装置20および端末局装置50の少なくとも一方に外部アンテナを採用し、上述の実施例と同様に、外部アンテナ部においてユーザに報知情報を報知しても良い。
【符号の説明】
【0109】
10…無線通信システム
20…基地局装置
50…端末局装置
70…外部ネットワーク
200…本体部
201…コネクタ
205…第1配線
208…コンデンサ
210…通信制御回路
212…無線LAN通信部
214…スループット調査部
216…報知制御部
220…記憶部
222…スループット調査データ
224…報知情報テーブル
250…報知印加回路
252…直流電源
254…可変電圧レギュレータ
260…ネットワークインタフェース
270…機器インタフェース
280…ユーザインタフェース
300…外部アンテナ部
301…コネクタ
305…第2配線
308…コンデンサ
310…ケーブル
320…支持台
350…報知発生回路
360a…発光部
360b…発光部
360c…発光部
380…アンテナ
382…アンテナ構造体
510…制御部
514…スループット測定部
520…記憶部
512…無線LAN通信部
522…スループット測定データ
570…機器インタフェース
580…ユーザインタフェース
590…アンテナ
592…アンテナ構造体
L1,L2…インダクタ
C1,C2…コンデンサ
R1〜R8…抵抗
Da…指向方向
Pr…放射パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の無線通信装置との間でMIMO方式による無線通信を行う無線通信装置であって、
前記他の無線通信装置との無線通信を制御する通信制御回路が設けられた本体部と、
前記本体部とケーブルを介して電気的に接続され、前記他の無線通信装置との間で通信電波を送受信するアンテナが設けられた外部アンテナ部と、
前記他の無線通信装置との通信処理のスループットを調査するスループット調査部と、
前記スループット調査部による調査結果に基づく報知情報を、前記外部アンテナ部においてユーザに報知する報知部と
を備える無線通信装置。
【請求項2】
前記報知部は、前記他の無線通信装置との通信状態のレベル、および前記アンテナを設置すべき方向の少なくとも一方を示す情報を、前記報知情報として前記外部アンテナ部において報知する、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の無線通信装置であって、
前記ケーブルは、同軸ケーブルであり、
前記報知部は、
前記通信制御回路と前記ケーブルとの間を電気的に接続する第1配線に設けられ、前記報知情報に応じた直流電力を前記第1配線に印加する印加部と、
前記第1配線における前記通信制御回路と前記印加部との間に設けられ、前記通信制御回路への直流電力の流入を遮断する第1直流遮断部と、
前記ケーブルと前記アンテナとの間を電気的に接続する第2配線に設けられ、前記第2配線に印加された直流電力に応じて、光および音声の少なくとも一方を発生させる発生部と、
前記第2配線における前記発生部と前記アンテナとの間に設けられ、前記アンテナへの直流電力の流入を遮断する第2直流遮断部と
を含む、無線通信装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の無線通信装置であって、
前記スループット調査部は、
前記他の無線通信装置との通信処理のスループットを測定する測定部と、
前記他の無線通信装置において測定されたスループットの測定結果を前記他の無線通信装置から取得する取得部と
の少なくとも一方を含む、無線通信装置。
【請求項5】
無線基地局と無線端末局とを備える無線通信システムであって、
前記無線基地局および前記無線端末局の少なくとも一方は、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の無線通信装置である、無線通信システム。
【請求項6】
他の無線通信装置との間でMIMO方式による無線通信を行う無線通信装置において情報をユーザに報知する情報報知方法であって、
前記他の無線通信装置との通信処理のスループットを調査し、
前記他の無線通信装置との無線通信を制御する通信制御回路が設けられた本体部とケーブルを介して電気的に接続され、前記他の無線通信装置との間で通信電波を送受信するアンテナが設けられた外部アンテナ部において、前記スループットの調査結果に基づく報知情報を報知する、情報報知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−100184(P2012−100184A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248057(P2010−248057)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(390040187)株式会社バッファロー (378)
【Fターム(参考)】