説明

無線通信装置およびスプリアス除去方法

【課題】無線通信装置の消費電力を低減する。
【解決手段】コンバータ4は、受信信号に含まれる予め測定されたスプリアスの周波数が所定の周波数となるようにLNA3から出力される受信信号をコンバートする。フィルタ5は、コンバータ4から出力される受信信号の所定の周波数の信号成分を除去する。これにより、受信信号をアナログ−デジタル変換するA/D変換器9は、スプリアスを考慮して入力ダイナミックレンジを大きくしなくて済み、消費電力を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は受信信号に含まれるスプリアスを除去する無線通信装置およびスプリアス除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信では高速・大容量のデータ伝送が要求され、無線通信装置では、高品質の受信信号が要求される。そのため、無線通信装置内で発生するノイズの除去は、無線通信装置において重要な技術の1つとなる。
【0003】
図17は、無線通信装置の回路図である。図17に示すように、無線通信装置は、アンテナ101、BPF(Band Pass Filter)102、LNA(Low Noise Amplifier)103、ミキサ104、シンセサイザ105、LPF(Low Pass Filter)106、A/D(Analog to Digital)変換器107、およびデジタルフィルタ108を有している。
【0004】
BPF102は、アンテナ101で受信されたRF(Radio Frequency)信号のイメージ成分を除去する。LNA103は、BPF102でイメージ成分が除去された受信信号を増幅する。
【0005】
ミキサ104は、LNA103によって増幅された受信信号に、シンセサイザ105から出力される信号を乗算し、受信信号の周波数(RF)をベースバンド帯域に直接ダウンコンバートする(ダイレクトコンバージョン方式)。
【0006】
シンセサイザ105は、受信信号の周波数をベースバンド帯域にダウンコンバートするための信号をミキサ104に出力する。シンセサイザ105は、例えば、VCO(Voltage Controlled Oscillator)を有するPLL(Phase Locked Loop)回路である。
【0007】
LPF106は、ミキサ104によってダウンコンバートされた受信信号(ベースバンド信号)の低域周波数成分のみ通過させ、ベースバンド信号として不要な高域周波数成分を除去する。A/D変換器107は、LPF106から出力されるアナログのベースバンド信号をデジタルのベースバンド信号に変換し、デジタルフィルタ108へ出力する。
【0008】
A/D変換器107から出力されるベースバンド信号には、スプリアスが含まれる場合がある。スプリアスの原因は、例えば、シンセサイザ105の有するVCOや、無線通信装置内のデジタル回路のクロックを供給する発振器などから発生する信号の一部が、LNA103やミキサ104に回り込み、ベースバンド帯域にダウンコンバートされて発生する。
【0009】
デジタルフィルタ108は、A/D変換器107から出力されるベースバンド信号に含まれるスプリアスを除去する。デジタルフィルタ108は、スプリアスを除去したベースバンド信号を、後段のベースバンド処理部へ出力する。ベースバンド処理部では、ベースバンド信号を復調し、送信側の無線通信装置の送信したデータを得る。
【0010】
LNA103やミキサ104などのアナログ部で発生するスプリアスを、デジタル部のデジタルフィルタ108で除去する場合、スプリアスによるA/D変換器107の飽和を防止する必要がある。スプリアスによって、A/D変換器107が飽和すると、A/D変換器107から出力されるベースバンド信号に歪みが生じるからである。そのため、A/D変換器107がスプリアスによって飽和しないように、A/D変換器107の入力ダイナミックレンジを大きくし、A/D変換器107の後段のデジタルフィルタ108でスプリアスを除去する。
【0011】
なお、入力信号帯域内に突発的に混入してくる挟帯域干渉波を迅速に検出して干渉波の存在する信号周波数帯域の一部を帯域阻止フィルタで除去する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、低チャンネルの周波数信号の、n倍の高調波による妨害を防ぎ、歪性能を改善する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平3−231544号公報
【特許文献2】特開2001−285379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、A/D変換器の入力ダイナミックレンジを大きくすると、A/D変換器における消費電力が増大するという問題点があった。
本件はこのような点に鑑みてなされたものであり、消費電力を低減できる無線通信装置およびスプリアス除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、無線通信を行う無線通信装置が提供される。この無線通信装置は、受信信号に含まれる予め測定されたスプリアスの周波数が所定の周波数となるように前記受信信号をコンバートするコンバータと、前記コンバータから出力される前記受信信号の前記所定の周波数の信号成分を除去するフィルタと、を有する。
【発明の効果】
【0015】
開示の無線通信装置によれば、消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施の形態に係る無線通信装置のブロック図である。
【図2】RF周波数の中心周波数より高域側にスプリアスが発生した場合の周波数コンバートを説明する図である。
【図3】RF周波数の中心周波数より低域側にスプリアスが発生した場合の周波数コンバートを説明する図である。
【図4】第2の実施の形態に係る無線通信装置のブロック図である。
【図5】記憶部のデータ構成例を示した図である。
【図6】周波数コンバートを説明する図である。
【図7】制御部の動作を示したフローチャートである。
【図8】第3の実施の形態に係る無線通信装置のブロック図である。
【図9】記憶部のデータ構成例を示した図である。
【図10】制御部の動作を示したフローチャートである。
【図11】第4の実施の形態に係る無線通信装置のブロック図である。
【図12】記憶部のデータ構成例を示した図である。
【図13】周波数コンバートを説明する図である。
【図14】制御部の動作を示したフローチャートである。
【図15】第5の実施の形態に係る無線通信装置のブロック図である。
【図16】制御部の動作を示したフローチャートである。
【図17】無線通信装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、第1の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る無線通信装置のブロック図である。図1に示す無線通信装置は、例えば、携帯電話であり、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)やLTE(Long Term Evolution)の通信方式によって無線通信を行う。無線通信装置は、図1に示すように、アンテナ1、BPF2、LNA3、コンバータ4、フィルタ5、ミキサ6、シンセサイザ7、LPF8、A/D変換器9、およびデジタルフィルタ10を有している。
【0018】
BPF2は、アンテナ1で受信されたRF信号のイメージ成分を除去する。LNA3は、BPF2でイメージ成分が除去された受信信号を増幅する。
コンバータ4は、予め測定されたスプリアスの周波数が所定の周波数となるように受信信号をコンバートする。例えば、コンバータ4は、受信信号の周波数を、スプリアスの周波数が所定の周波数となるように、所定のIF(Intermediate Frequency)にダウンコンバートする。スプリアスの測定は、例えば、無線通信装置の試作時等において測定する。
【0019】
具体的には、コンバータ4は、受信信号に含まれるスプリアスの周波数が300MHzになるように、受信信号をダウンコンバートする。無線通信装置で発生するスプリアスの周波数は、予め測定されているので、受信信号をどのくらいダウンコンバートすればスプリアスの周波数が300MHzになるか設定することができる。なお、BPF2でのイメージ成分の除去を確実にするため、IFは小さくしすぎないようにする。
【0020】
フィルタ5は、例えば、アナログ回路で形成されるノッチフィルタであり、コンバータ4から出力される受信信号の、所定の周波数の信号成分を除去する。上記例の場合、フィルタ5は、受信信号の300MHzの信号成分を除去する。これにより、コンバータ4から出力される受信信号から、スプリアスが除去される。
【0021】
なお、スプリアスの周波数が所定の周波数となるように受信信号をコンバートするのは、フィルタ5で必要以上の信号成分が取り除かれないようにするためである。例えば、ノッチフィルタでダウンコンバートしない受信信号のスプリアスを除去すると、必要以上の信号成分も除去し、ベースバンド帯域のレベルが低減するからである。
【0022】
ミキサ6は、フィルタ5によってスプリアスが除去されたIFの受信信号に、シンセサイザ7から出力される信号を乗算し、受信信号の周波数をベースバンド帯域にダウンコンバートする。
【0023】
シンセサイザ7は、受信信号の周波数をベースバンド帯域にダウンコンバートするための信号をミキサ6に出力する。シンセサイザ7は、例えば、VCOを有するPLL回路である。
【0024】
LPF8は、ミキサ6によってダウンコンバートされた受信信号(ベースバンド信号)の低域周波数成分のみ通過させ、ベースバンド信号として不要な高域周波数成分を除去する。A/D変換器9は、LPF8から出力されるアナログのベースバンド信号をデジタルのベースバンド信号に変換し、デジタルフィルタ10へ出力する。デジタルフィルタ10は、A/D変換器9から出力されるベースバンド信号の、フィルタ5で完全に除去しきれなかったスプリアスを除去する。デジタルフィルタ10は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)である。
【0025】
図2は、RF周波数の中心周波数より高域側にスプリアスが発生した場合の周波数コンバートを説明する図である。図2に示す帯域A1は、LNA3から出力される受信信号の帯域を示している。帯域A2は、コンバータ4によってダウンコンバートされた受信信号の帯域を示している。帯域A3は、ミキサ6によってダウンコンバートされた受信信号の帯域を示している。
【0026】
図2の帯域A1に示すように、LNA3から出力される受信信号には、周波数f1MHzにスプリアスB1が発生しているとする。
コンバータ4は、スプリアスB1の周波数f1MHzが300MHzとなるように、受信信号をダウンコンバートする。図2の例の場合、コンバータ4は、受信信号の周波数をf1MHz−300MHzダウンコンバートする。これにより、スプリアスB1の周波数f1MHzは、スプリアスB2に示すように、300MHzにダウンコンバートされる。なお、スプリアスB1の周波数f1MHzは、予め測定されるので、コンバータ4のダウンコンバートすべき周波数は、予め設定できる。
【0027】
フィルタ5は、受信信号の300MHzの信号成分を除去する。これにより、フィルタ5からは、スプリアスB2が除去された受信信号が出力される。
ミキサ6は、フィルタ5によってスプリアスが除去されたIFの受信信号に、シンセサイザ7から出力される信号を乗算し、受信信号をベースバンド帯域にダウンコンバートする。受信信号に含まれるスプリアスB2は、フィルタ5によって除去されているので、図2の帯域A3に示すように、ベースバンド帯域の受信信号には、スプリアスは含まれていない。
【0028】
無線通信装置の受信する受信信号の周波数(RF)は既知であるので、ミキサ6の受信信号をダウンコンバートすべき周波数は予め知ることができる。例えば、無線通信装置の受信する受信信号の周波数を2140MHzとする。この場合、IFにダウンコンバートされた受信信号の周波数は、300MHz−(f1MHz−2140MHz)と知ることができる。これにより、ミキサ6の受信信号をダウンコンバートすべき周波数は予め設定することができる。
【0029】
図3は、RF周波数の中心周波数より低域側にスプリアスが発生した場合の周波数コンバートを説明する図である。図3に示す帯域C1は、LNA3から出力される受信信号の帯域を示している。帯域C2は、コンバータ4によってダウンコンバートされた受信信号の帯域を示している。帯域C3は、ミキサ6によってダウンコンバートされた受信信号の帯域を示している。
【0030】
図3の帯域C1に示すように、LNA3から出力される受信信号には、周波数f2MHzにスプリアスD1が発生しているとする。
コンバータ4は、スプリアスD1の周波数f2MHzが300MHzとなるように、受信信号をダウンコンバートする。図3の例の場合、コンバータ4は、受信信号の周波数をf2MHz−300MHzダウンコンバートする。これにより、スプリアスD1の周波数f2MHzは、スプリアスD2に示すように、300MHzにダウンコンバートされる。なお、スプリアスD1の周波数f2MHzは、予め測定されるので、コンバータ4のダウンコンバートすべき周波数は、予め設定できる。
【0031】
フィルタ5は、受信信号の300MHzの信号成分を除去する。これにより、フィルタ5からは、スプリアスD2が除去された受信信号が出力される。
ミキサ6は、フィルタ5によってスプリアスが除去されたIFの受信信号に、シンセサイザ7から出力される信号を乗算し、受信信号の周波数をベースバンド帯域にダウンコンバートする。受信信号に含まれるスプリアスD2は、フィルタ5によって除去されているので、図3の帯域C3に示すように、ベースバンド帯域の受信信号には、スプリアスは含まれていない。
【0032】
無線通信装置の受信する受信信号の周波数は既知であるので、ミキサ6の受信信号をダウンコンバートすべき周波数は予め知ることができる。例えば、無線通信装置の受信する受信信号の周波数を2140MHzとする。この場合、IFにダウンコンバートされた受信信号の周波数は、300MHz+(2140MHz−f2MHz)と知ることができる。これにより、ミキサ6の受信信号をダウンコンバートすべき周波数は予め設定することができる。
【0033】
A/D変換器9に入力される受信信号には、図2、図3で説明したように、スプリアス成分が含まれない。従って、A/D変換器9の入力ダイナミックレンジは、スプリアスを考慮して大きく設定しなくてよい。すなわち、A/D変換器9の入力ダイナミックレンジは、受信信号の入力レベルを考慮して設定する。
【0034】
このように、コンバータ4によって、予め測定されたスプリアスの周波数が所定の周波数となるように受信信号をダウンコンバートし、フィルタ5によって、受信信号の所定の周波数の信号成分を除去するようにした。これにより、受信信号をアナログ−デジタル変換するA/D変換器9の入力ダイナミックレンジを大きくしなくて済み、消費電力を低減することができる。
【0035】
また、A/D変換器9の前段のアナログ部でスプリアスを除去するので、A/D変換器9の後段の、例えば、DSPなどのデジタル部によるスプリアスの除去処理を低減することができる。これにより、デジタル部は、高負荷でベースバンド処理を行うことが可能となり、高速・大容量に向けたデータ伝送が可能となる。
【0036】
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では、無線通信装置は、複数の受信チャネルの受信信号を受信し、各受信チャネルの受信信号に発生するスプリアスを除去するようにする。また、無線通信装置は、スプリアスの発生しない受信チャネルを受信する場合には、スプリアスを除去するための部位の動作を停止し、消費電力の低減を図る。
【0037】
図4は、第2の実施の形態に係る無線通信装置のブロック図である。図4に示すように、無線通信装置は、ミキサ11、シンセサイザ12、ノッチフィルタ13、BPF14、スイッチ15、制御部16、および記憶部17を有している。図4において、図1と同じものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0038】
ミキサ11およびシンセサイザ12は、例えば、図1に示したコンバータ4に対応する。ミキサ11は、LNA3から出力される受信信号に、シンセサイザ12から出力される信号を乗算し、受信信号に含まれるスプリアスの周波数が所定の周波数となるように受信信号をダウンコンバートする。シンセサイザ12は、受信信号の周波数をIFにダウンコンバートするための信号をミキサ11に出力する。シンセサイザ12は、例えば、VCOを有するPLL回路である。
【0039】
シンセサイザ12は、制御部16の制御によって、ミキサ11に出力する信号の周波数を変えることができる。後述するが、これにより、無線通信装置は、受信チャネルの異なる(周波数帯域の異なる)受信信号を受信しても、各受信チャネルに応じて発生するスプリアスを受信信号から除去することができる。
【0040】
ノッチフィルタ13は、例えば、図1に示したフィルタ5に対応する。ノッチフィルタ13は、例えば、アナログ回路で形成され、ミキサ11から出力される受信信号の、所定の周波数成分を除去する。これにより、ミキサ11から出力される受信信号から、スプリアスが除去される。
【0041】
BPF14は、チャネル選択フィルタである。BPF14は、ノッチフィルタ13から出力される受信信号に含まれるイメージ成分およびブロッキング成分を除去する。
スイッチ15は、LNA3の出力とミキサ6の入力との間をオン/オフする。スイッチ15がオンした場合、LNA3の出力とミキサ6の入力はショートし、LNA3から出力される受信信号が直接、ミキサ6に入力される。
【0042】
受信信号に含まれるスプリアスの周波数は、受信する受信信号の受信チャネルによって異なる。そこで、制御部16は、無線通信装置の受信する受信信号の受信チャネルに応じて、シンセサイザ7,12の出力する信号の周波数を制御する。制御部16は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。
【0043】
例えば、制御部16は、受信信号の受信チャネルが受信チャネルAの場合、受信チャネルAに含まれるスプリアスの周波数が300MHzにダウンコンバートされるように、シンセサイザ12の出力する信号の周波数を制御する。また、制御部16は、ミキサ11によってダウンコンバートされた受信チャネルAの受信信号がベースバンド帯域にダウンコンバートされるように、シンセサイザ7の出力する信号の周波数を制御する。
【0044】
また、受信信号に含まれるスプリアスは、受信する受信信号の受信チャネルによって、受信信号に含まれない場合がある。そこで、制御部16は、スイッチ15のオン/オフを制御し、ミキサ11およびシンセサイザ12への電源供給の有無によって、ミキサ11およびシンセサイザ12の動作を制御する。これにより、無線通信装置の消費電力を低減する。
【0045】
例えば、制御部16は、スプリアスが含まれない受信チャネルの受信信号が受信される場合、スイッチ15をオンし、ミキサ11およびシンセサイザ12への電源供給を停止する。
【0046】
記憶部17は、例えば、フラッシュメモリや電源がバックアップされたRAM(Random Access Memory)などのメモリである。記憶部17には、各受信チャネルにおけるスプリアスの情報が記憶されている。例えば、記憶部17には、各チャネルのスプリアス発生の有無情報や、各チャネルの受信信号に発生するスプリアスの周波数の周波数情報などが記憶されている。
【0047】
図5は、記憶部のデータ構成例を示した図である。図5に示すように、記憶部17には、無線通信装置の受信する受信信号の受信チャネルA,B,…に対応して、スプリアス発生の有無に関する情報が記憶されている。また、受信チャネルA,B,…に対応して、スプリアスの発生する周波数の周波数情報が記憶されている。各受信チャネルA,B,…のスプリアスの周波数は、予め測定して記憶部17に記憶される。
【0048】
例えば、図5の例の場合、受信チャネルAの受信信号には、スプリアスが発生し、その周波数は、f1MHzであることが分かる。また、受信チャネルBの受信信号には、スプリアスは発生しないことが分かる。
【0049】
制御部16は、無線通信装置の受信する受信信号の受信チャネルに基づいて記憶部17を参照し、ミキサ11およびシンセサイザ12の受信信号をダウンコンバートする周波数を制御し、また、ミキサ11およびシンセサイザ12の動作の停止を制御する。また、制御部16は、無線通信装置の受信する受信信号の受信チャネルに基づいて記憶部17を参照し、ミキサ6およびシンセサイザ7の受信信号をダウンコンバートする周波数を制御する。
【0050】
例えば、無線通信装置が受信チャネルAの受信信号を受信する場合、制御部16は、受信チャネルAに基づいて記憶部17を参照し、スプリアスの周波数f1MHzが300MHzにタウンコンバートされるように、シンセサイザ12の出力する信号の周波数を制御する。制御部16は、ミキサ11によってIFにダウンコンバートされた受信信号を、ベースバンド帯域にダウンコンバートされるように、シンセサイザ7の出力する信号の周波数を制御する。
【0051】
また、無線通信装置が受信チャネルBの受信信号を受信する場合、制御部16は、受信チャネルBに基づいて記憶部17を参照し、スイッチ15をオンしてミキサ11およびシンセサイザ12への電源供給を停止するようにする。制御部16は、LNA3から出力される受信信号がベースバンド帯域にダウンコンバートされるようにシンセサイザ7の出力する信号の周波数を制御する。
【0052】
なお、各受信チャネルA,B,…に発生するスプリアスの周波数は予め測定するので既知である。また、受信チャネルA,B,…の受信信号のRFは既知である。従って、制御部16は、記憶部17を参照することにより、各受信チャネルA,B,…の受信信号のIFにダウンコンバートすべき周波数およびベースバンド帯域にダウンコンバートすべき周波数を認識(算出)することができる。
【0053】
図6は、周波数コンバートを説明する図である。図6に示す帯域E1は、LNA3から出力される受信チャネルAの受信信号の帯域を示している。帯域E2は、LNA3から出力される受信チャネルCの受信信号の帯域を示している。帯域E3は、LNA3から出力される受信チャネルDの受信信号の帯域を示している。スプリアスF1〜F3は、受信チャネルA,C,Dの受信信号に含まれるスプリアスを示している。
【0054】
帯域E4は、ミキサ11およびシンセサイザ12によってダウンコンバートされた受信チャネルAの受信信号の帯域を示している。スプリアスF4は、ダウンコンバートされた受信チャネルAの受信信号に含まれるスプリアスを示している。帯域E5は、ミキサ6によってダウンコンバートされた受信チャネルAの受信信号の帯域を示している。
【0055】
無線通信装置は、受信チャネルAの受信信号を受信するとする。制御部16は、受信チャネルAに基づいて記憶部17を参照し、スプリアスF1の周波数f1MHzが300MHzとなるように、シンセサイザ12の出力する信号の周波数を制御する。これにより、スプリアスF1は、スプリアスF4に示すように、300MHzにダウンコンバートされる。なお、スプリアスF1の周波数f1MHzは、予め測定されて記憶部17に記憶されているので、制御部16は、記憶部17を参照することにより、シンセサイザ12の出力する信号の周波数を制御することができる。
【0056】
ノッチフィルタ13は、受信信号の300MHzの信号成分を除去する。これにより、ノッチフィルタ13からは、スプリアスF4が除去された受信信号が出力される。
ミキサ6は、ノッチフィルタ13によってスプリアスが除去されたIFの受信信号に、シンセサイザ7から出力される信号を乗算し、受信信号をベースバンド帯域にダウンコンバートする。受信信号に含まれるスプリアスF4は、ノッチフィルタ13によって除去されているので、図6の帯域E5に示すように、ベースバンド帯域の受信信号には、スプリアスは含まれていない。
【0057】
無線通信装置の受信する受信チャネルAの受信信号の周波数は既知であるので、ミキサ6の受信信号をダウンコンバートすべき周波数は予め知ることができる。これにより、制御部16は、ミキサ6の受信信号をダウンコンバートすべき周波数を設定することができる。受信チャネルC,Dの受信信号が受信される場合も上記と同様である。
【0058】
図7は、制御部の動作を示したフローチャートである。ステップS1において、制御部16は、受信される受信信号の受信チャネルに基づいて記憶部17を参照し、受信信号がスプリアスの発生する受信チャネルであるか否か判断する。制御部16は、受信信号がスプリアスの発生する受信チャネルであると判断した場合、ステップS2へ進む。制御部16は、受信信号がスプリアスの発生しない受信チャネルであると判断した場合、ステップS4へ進む。
【0059】
ステップS2において、制御部16は、受信信号に含まれるスプリアスを除去するようにシンセサイザ12の出力する信号の周波数を制御する。例えば、制御部16は、受信信号の受信チャネルに基づいて記憶部17を参照し、受信信号に含まれるスプリアスが、例えば、300MHzにダウンコンバートされるように、シンセサイザ12の出力する信号の周波数を制御する。
【0060】
ステップS3において、制御部16は、スプリアスが除去された受信信号がベースバンド帯域にダウンコンバートされるように、シンセサイザ7の出力する信号の周波数を制御する。制御部16は、受信チャネルに基づいて記憶部17を参照し、受信チャネルの受信信号がベースバンド帯域にダウンコンバートされるように、シンセサイザ7の出力する信号の周波数を制御する。
【0061】
ステップS4において、制御部16は、スイッチ15をオンする。制御部16は、ミキサ11およびシンセサイザ12に供給される電源を停止し、ミキサ11およびシンセサイザ12の動作を停止する。また、制御部16は、受信される受信信号の受信チャネルに基づいて記憶部17を参照し、LNA3から出力される受信信号がベースバンド帯域にダウンコンバートされるように、シンセサイザ7の出力する信号の周波数を制御する。
【0062】
このように、受信信号の受信チャネル、スプリアスの発生有無の発生情報、およびスプリアスの周波数の周波数情報を対応付けて記憶部17に記憶する。そして、制御部16は、受信される受信信号の受信チャネルに基づいて記憶部17を参照し、ミキサ11およびシンセサイザ12の受信信号をダウンコンバートする周波数を制御するようにした。これにより、受信チャネルの異なる受信信号を受信してもスプリアスを除去することができる。
【0063】
また、制御部16は、受信される受信信号の受信チャネルに基づいて記憶部17を参照し、ミキサ11およびシンセサイザ12の動作を制御するようにした。これにより、スプリアスの発生しない受信チャネルの受信信号を受信するときは、ミキサ11およびシンセサイザ12の動作を停止するので、消費電力を低減することができる。
【0064】
なお、記憶部17は、スプリアスの発生情報を記憶せず、スプリアスの周波数情報を記憶するようにしてもよい。そして、スイッチ15を省略し、制御部16は、ミキサ11およびシンセサイザ12の動作を制御しないようにしてもよい。これによっても、無線通信装置は、受信する受信信号の受信チャネルに応じて、スプリアスを除去することができ、A/D変換器9による消費電力の増大を抑制することができる。以下で説明する実施の形態においても同様である。
【0065】
次に、第3の実施の形態について説明する。受信信号に発生するスプリアスの大きさは、受信チャネルによって異なる。第3の実施の形態では、減衰量の異なるフィルタを複数備え、各受信チャネルの大きさの異なるスプリアスを除去する。
【0066】
図8は、第3の実施の形態に係る無線通信装置のブロック図である。図8に示すように、無線通信装置は、ノッチフィルタ21〜23、選択部24、制御部25、および記憶部26を有している。図8において、図4と同じものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0067】
図8の無線通信装置では、図4の無線通信装置に対し、複数のノッチフィルタ21〜23および選択部24を有している。ノッチフィルタ21〜23は、信号を減衰する減衰量がそれぞれ異なる。例えば、ノッチフィルタ22の減衰量は、ノッチフィルタ22の減衰量より大きく、ノッチフィルタ21の減衰量は、ノッチフィルタ21の減衰量より大きいとする。すなわち、ノッチフィルタの21の減衰量が最も大きく、ノッチフィルタ23の減衰量が最も小さいとする。ノッチフィルタ22の減衰量は、その中間とする。
【0068】
ノッチフィルタ21〜23の信号を阻止する帯域は、それぞれ同じであり、例えば、300MHzとする。ノッチフィルタ21〜23のそれぞれには、ミキサ11から出力される受信信号が入力される。
【0069】
選択部24は、制御部25の制御によって、ノッチフィルタ21〜23から出力される受信信号のいずれかを選択して、BPF14に出力する。
制御部25は、無線通信装置の受信する受信信号の受信チャネルに応じて、選択部24の出力を制御する。なお、制御部25のその他の機能は、図4で示した制御部16と同様である。
【0070】
記憶部26は、図4の記憶部17と同様の情報を記憶し、さらに、各受信チャネルに対応して、スプリアスの減衰すべき減衰量の情報記憶している。
図9は、記憶部のデータ構成例を示した図である。図9に示すように、記憶部26には、受信チャネルに対応して、スプリアスの減衰すべき減衰量の情報が記憶されている。スプリアスの減衰量の情報は、例えば、スプリアスのパワーの大きさを大中小の三段階に分け、各段階に応じた大中小の減衰量の情報が記憶される。
【0071】
例えば、受信チャネルAのスプリアスは、最もパワーの大きい段階に属するとする。この場合、図9に示すように、受信チャネルAのスプリアスは、最も減衰されるように、減衰量大が記憶される。
【0072】
なお、スプリアスの発生の有無、スプリアスの周波数情報については、図5と同様であり、その説明を省略する。
制御部25は、受信される受信信号の受信チャネルに基づいて記憶部26を参照し、選択部24の出力を制御する。制御部25は、記憶部26の減衰量の情報に対応したノッチフィルタ21〜23の出力を選択するように選択部24の出力を制御する。
【0073】
例えば、受信チャネルAの受信信号が受信された場合、制御部25は、受信チャネルAに基づいて記憶部26を参照し、スプリアスの減衰量の情報を取得する。制御部25は、取得した減衰量大の情報に基づいて、減衰量の最も大きいノッチフィルタ21から出力される受信信号を出力するように選択部24を制御する。
【0074】
図10は、制御部の動作を示したフローチャートである。ステップS11において、制御部25は、受信信号の受信チャネルに基づいて記憶部26を参照し、受信信号がスプリアスの発生する受信チャネルであるか否か判断する。制御部25は、受信信号がスプリアスの発生する受信チャネルであると判断した場合、ステップS12へ進む。制御部25は、受信信号がスプリアスの発生しない受信チャネルであると判断した場合、ステップS15へ進む。
【0075】
ステップS12において、制御部25は、受信信号の受信チャネルに基づいて記憶部26を参照し、スプリアスの減衰量の情報を取得する。制御部25は、取得した減衰量の情報に基づいて選択部24を制御し、受信信号のスプリアスを減衰するノッチフィルタ21〜23の出力を選択する。
【0076】
ステップS13において、制御部25は、受信信号に含まれるスプリアスを除去するようにシンセサイザ12の出力する信号の周波数を制御する。例えば、制御部25は、記憶部26を参照し、受信チャネルの受信信号に含まれるスプリアスが、300MHzにダウンコンバートされるように、シンセサイザ12の出力する信号の周波数を制御する。
【0077】
ステップS14において、制御部25は、スプリアスが除去された受信信号がベースバンド帯域にダウンコンバートされるように、シンセサイザ7の出力する信号の周波数を制御する。制御部25は、記憶部26を参照し、受信チャネルの受信信号がベースバンド帯域にダウンコンバートされるように、シンセサイザ7の出力する信号の周波数を制御する。
【0078】
ステップS15において、制御部25は、スイッチ15をオンする。制御部25は、ミキサ11およびシンセサイザ12に供給される電源を停止し、ミキサ11およびシンセサイザ12の動作を停止する。また、制御部25は、記憶部26を参照し、LNA3から出力される受信信号がベースバンド帯域にダウンコンバートされるように、シンセサイザ7の出力する信号の周波数を制御する。
【0079】
このように、制御部25は、受信される受信信号のスプリアスのパワーの大きさに応じて、減衰量の異なるノッチフィルタ21〜23の出力を選択する。これにより、スプリアスを適切に除去した受信信号を、A/D変換器9に入力することができる。
【0080】
次に、第4の実施の形態について説明する。第4の実施の形態では、受信信号に発生するスプリアスが複数存在する場合のスプリアスの除去について説明する。
図11は、第4の実施の形態に係る無線通信装置のブロック図である。図11に示すように、無線通信装置は、ミキサ31、シンセサイザ32、ノッチフィルタ33、BPF34、制御部35、および記憶部36を有している。図11において、図4と同じものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0081】
図11の無線通信装置では、受信信号をIFにダウンコンバートする回路が2段、直列に接続されている。すなわち、ミキサ11、シンセサイザ12、ノッチフィルタ13、およびBPF14に、ミキサ31、シンセサイザ32、ノッチフィルタ33、およびBPF34が直列に接続されている。
【0082】
受信信号には、スプリアスが複数含まれる場合がある。例えば、受信信号に2つのスプリアスが含まれる場合、前段のミキサ11、シンセサイザ12、ノッチフィルタ13、およびBPF14で1つのスプリアスを除去し、後段のミキサ31、シンセサイザ32、ノッチフィルタ33、およびBPF34でもう1つのスプリアスを除去する。
【0083】
制御部35は、前段のミキサ11、シンセサイザ12、ノッチフィルタ13、およびBPF14が1つのスプリアスを除去するように、シンセサイザ12の出力する信号の周波数を制御する。また、制御部35は、後段のミキサ31、シンセサイザ32、ノッチフィルタ33、およびBPF34がもう1つのスプリアスを除去するように、シンセサイザ32の出力する信号の周波数を制御する。ノッチフィルタ13,33の信号成分を除去する周波数は同じであり、例えば、300MHzである。なお、図11では、2段しか示していないが、受信信号に発生するスプリアスの数に応じて2段以上接続する。
【0084】
制御部35は、記憶部36を参照して、シンセサイザ12,32の出力する信号の周波数を制御する。記憶部36には、各受信チャネルに対応して、受信信号にスプリアスが発生する数を示すスプリアス発生数情報と、スプリアスの周波数情報とを記憶している。
【0085】
図12は、記憶部のデータ構成例を示した図である。図12に示すように、記憶部36には、受信チャネルに対応して、その受信チャネルの受信信号に含まれるスプリアスの発生数と、スプリアスの周波数とが記憶されている。例えば、図12の例の場合、受信チャネルCの受信信号には、スプリアスが‘2’発生し、それぞれのスプリアスの周波数は、f11,f12であることが分かる。
【0086】
制御部35は、1つの受信チャネルに対してスプリアスの周波数情報が複数存在する場合、複数直列接続されたそれぞれのコンバータのダウンコンバートする周波数を制御する。例えば、制御部35は、受信される受信信号の受信チャネルが受信チャネルCの場合、記憶部36を参照し、スプリアスの発生数‘2’を取得する。また、制御部35は、スプリアスの周波数f11,f12を取得する。制御部35は、取得した情報に基づいて、シンセサイザ12,32の出力する信号の周波数を制御する。また、制御部35は、受信信号をベースバンド帯域にダウンコンバートするようにシンセサイザ7の出力する信号の周波数を制御する。
【0087】
なお、受信される受信信号の受信チャネルが受信チャネルAの場合、制御部35は、後段のミキサ31、シンセサイザ32、ノッチフィルタ33、およびBPF34では、受信信号の周波数をダウンコンバートしないようにシンセサイザ32の出力する信号を制御する。また、図12の例の場合、受信チャネルDは、スプリアスが5個発生するので、受信信号をダウンコンバートしてスプリアスを除去するコンバータは少なくとも5段必要である。
【0088】
図13は、周波数コンバートを説明する図である。図13に示す帯域G1は、LNA3から出力される受信チャネルCの受信信号の帯域を示している。図13の帯域G1に示すように、LNA3から出力される受信信号には、周波数f11MHz,f12MHzにスプリアスH1,H2が発生しているとする。
【0089】
ミキサ11およびシンセサイザ12は、スプリアスH1の周波数f11MHzが300MHzとなるように、受信信号をダウンコンバートする。図13の例の場合、ミキサ11およびシンセサイザ12は、受信信号の周波数をf11MHz−300MHzダウンコンバートする。これにより、スプリアスH1の周波数f11MHzは、スプリアスH3に示すように、300MHzにダウンコンバートされる。
【0090】
なお、スプリアスH1の周波数f11MHzは、予め測定されているので、ミキサ11およびシンセサイザ12のダウンコンバートすべき周波数は、予め設定できる。
ノッチフィルタ13は、受信信号の300MHzの信号成分を除去する。これにより、ノッチフィルタ13からは、スプリアスH3が除去された受信信号が出力される。
【0091】
ミキサ31およびシンセサイザ32は、スプリアスH4の周波数300MHz+(f12MHz−f11MHz)が300MHzとなるように、受信信号をダウンコンバートする。図13の例の場合、ミキサ11およびシンセサイザ12は、受信信号の周波数をf12MHz−f11MHzダウンコンバートする。これにより、スプリアスH4の周波数300MHz+(f12MHz−f11MHz)は、300MHzにダウンコンバートされる。
【0092】
ノッチフィルタ33は、受信信号の300MHzの信号成分を除去する。これにより、ノッチフィルタ33からは、スプリアスH4が除去された受信信号が出力される。
ミキサ6は、フィルタ5によってスプリアスが除去されたIFの受信信号に、シンセサイザ7から出力される信号を乗算し、受信信号の周波数をベースバンド帯域にダウンコンバートする。受信信号に含まれるスプリアスH3,H4は、ノッチフィルタ13,33によって除去されているので、図13の帯域G3に示すように、ベースバンド帯域の受信信号には、スプリアスは含まれていない。なお、無線通信装置の受信する受信信号の周波数(RF)は既知であるので、ミキサ6の受信信号をダウンコンバートすべき周波数は予め知ることができる。
【0093】
図14は、制御部の動作を示したフローチャートである。ステップS21において、制御部35は、受信信号の受信チャネルに基づいて記憶部36を参照し、受信信号がスプリアスの発生する受信チャネルであるか否か判断する。制御部35は、受信信号がスプリアスの発生する受信チャネルであると判断した場合、受信信号の受信チャネルに基づいて記憶部36を参照してスプリアス発生数情報を取得し、ステップS22へ進む。制御部35は、受信信号がスプリアスの発生しない受信チャネルであると判断した場合、ステップS25へ進む。
【0094】
ステップS22において、制御部35は、受信信号の受信チャネルに基づいて記憶部36を参照し、1以上あるスプリアス周波数情報のうち、別のスプリアスの周波数情報を取得する。制御部35は、取得した周波数情報に基づいて受信信号に含まれるスプリアスを除去するようにシンセサイザ12,32の出力する信号の周波数を制御する。
【0095】
ステップS23において、制御部35は、ステップS21にて取得したスプリアス発生情報から‘1’を減算する。
ステップS24において、制御部35は、スプリアス発生情報が‘0’になったか否か判断する。制御部35は、スプリアス発生情報が‘0’になった場合、ステップS25へ進む。制御部35は、スプリアス発生情報が‘0’でない場合、ステップS22へ進む。
【0096】
ステップS25において、制御部35は、スプリアスが除去された受信信号がベースバンド帯域にダウンコンバートされるように、シンセサイザ7の出力する信号の周波数を制御する。制御部35は、記憶部36を参照し、受信チャネルの受信信号がベースバンド帯域にダウンコンバートされるように、シンセサイザ7の出力する信号の周波数を制御する。
【0097】
ステップS26において、制御部35は、スイッチ15をオンする。制御部35は、ミキサ11,31およびシンセサイザ12,32に供給される電源を停止し、ミキサ11,31およびシンセサイザ12,32の動作を停止する。また、制御部35は、記憶部36を参照し、LNA3から出力される受信信号がベースバンド帯域にダウンコンバートされるように、シンセサイザ7の出力する信号の周波数を制御する。
【0098】
このように、受信信号をIFにダウンコンバートする回路を複数直列に接続する。そして、制御部35は、記憶部36に記憶される周波数情報が1つの受信チャネルに対して複数存在する場合、複数直列接続されたそれぞれの回路の周波数を制御する。これにより、受信信号に複数のスプリアスが含まれても適切に除去することができる。
【0099】
次に、第5の実施の形態について説明する。第5の実施の形態では、受信系統を2系統(受信ダイバーシチ)有する無線通信装置の場合について説明する。無線通信装置は、受信ダイバーシチをオフした場合、未使用となるミキサをスプリアスのダウンコンバートに用いる。
【0100】
図15は、第5の実施の形態に係る無線通信装置のブロック図である。図15において、図4と同じものには同じ符号を付し、その説明を省略する。なお、アンテナ41、BPF42、LNA43、LPF44、A/D変換器45、およびデジタルフィルタ46は、アンテナ1、BPF2、LNA3、LPF8、A/D変換器9、およびデジタルフィルタ10と同様であり、その説明を省略する。
【0101】
図15の無線通信装置は、アンテナ1、BPF2、LNA3、ミキサ6、シンセサイザ7、LPF8、A/D変換器9、およびデジタルフィルタ10を有する受信系統で1つの受信ブランチを形成している。また、無線通信装置は、アンテナ41、BPF42,LNA43、ミキサ51、LPF44、A/D変換器45、およびデジタルフィルタ46を有する受信系統で1つの受信ブランチを形成している。無線通信装置は、アンテナ1〜デジタルフィルタ10の受信ブランチで受信動作し、また、アンテナ1〜デジタルフィルタ10の受信ブランチとアンテナ41〜デジタルフィルタ46の受信ブランチとで受信動作(受信ダイバーシチ)することができる。
【0102】
無線通信装置は、アンテナ1〜デジタルフィルタ10の1つの受信ブランチで動作する場合、他方の受信ブランチのミキサ51が未使用となる。そこで、無線通信装置は、1つの受信ブランチで受信動作する場合、未使用のミキサ51を、アンテナ1〜デジタルフィルタ10の受信ブランチでのスプリアス除去に用いる。なお、無線通信装置は、2つの受信ブランチで動作する場合、スプリアス除去は、行わない。
【0103】
無線通信装置は、ミキサ51、シンセサイザ52,53、制御部54、記憶部55、スイッチ61〜63を有している。
記憶部55には、図5で説明した記憶部17と同様の情報が記憶されている。制御部54は、受信される受信信号の受信チャネルに基づいて記憶部17を参照し、シンセサイザ7,52の出力する信号の周波数を制御する。
【0104】
制御部54は、アンテナ1〜デジタルフィルタ10の受信ブランチのみで受信信号を受信する場合、受信信号をミキサ51に出力し、シンセサイザ52の信号をミキサ51に出力し、ミキサ51の出力をノッチフィルタ13に出力するように制御する。また、制御部54は、アンテナ1〜デジタルフィルタ10の受信ブランチと、アンテナ41〜デジタルフィルタ46の受信ブランチとで受信信号を受信する場合、アンテナ41〜デジタルフィルタ46の受信ブランチで受信される受信信号をミキサ51に出力し、シンセサイザ53の信号をミキサ51に出力するように制御する。
【0105】
具体的には、制御部54は、1つの受信ブランチで動作する場合、スイッチ15をオフする。制御部54は、LNA3とミキサ51とを接続するようにスイッチ61を制御する。制御部54は、ミキサ51とノッチフィルタ13とを接続するようにスイッチ62を制御する。制御部54は、ミキサ51とシンセサイザ52とを接続するようにスイッチ63を制御する。シンセサイザ52は、予め測定されたスプリアスの周波数が所定の周波数にダウンコンバートされるようにするための信号を出力する。これにより、無線通信装置には、スプリアスを除去する1つの受信ブランチが形成される。
【0106】
また、制御部54は、2つの受信ブランチで動作する場合、LNA3とミキサ6とを接続するようにスイッチ15をオンする。制御部54は、LNA43とミキサ51とを接続するようにスイッチ61を制御する。制御部54は、ミキサ51とLPF44とを接続するようにスイッチ62を制御する。制御部54は、シンセサイザ53とミキサ51とを接続するようにスイッチ63を制御する。シンセサイザ53は、受信信号がベースバンド帯域にダウンコンバートされるようにするための信号を出力する。これにより、無線通信装置には、2つの受信ブランチが形成される。
【0107】
図16は、制御部の動作を示したフローチャートである。ステップS31において、制御部54は、受信ダイバーシチがオフであるか否か判断する。制御部54は、受信ダイバーシチがオフの場合、すなわち、1つの受信ブランチで受信信号を受信する場合、ステップS32へ進む。制御部54は、受信ダイバーシチがオンの場合、すなわち、2つの受信ブランチで受信信号を受信する場合、ステップS36へ進む。
【0108】
ステップS32において、制御部54は、受信信号の受信チャネルに基づいて記憶部55を参照し、受信信号がスプリアスの発生する受信チャネルであるか否か判断する。制御部54は、受信信号がスプリアスの発生する受信チャネルであると判断した場合、ステップS33へ進む。制御部54は、受信信号がスプリアスの発生しない受信チャネルであると判断した場合、ステップS35へ進む。
【0109】
ステップS33において、制御部54は、スイッチ15をオフする。制御部54は、LNA3とミキサ51とを接続するようにスイッチ61を制御する。制御部54は、ミキサ51とノッチフィルタ13とを接続するようにスイッチ62を制御する。制御部54は、ミキサ51とシンセサイザ52とを接続するようにスイッチ63を制御する。制御部54は、受信信号に含まれるスプリアスを除去するようにシンセサイザ52の出力する信号の周波数を制御する。制御部54は、記憶部55を参照し、受信チャネルの受信信号に含まれるスプリアスが、例えば、300MHzにダウンコンバートされるように、シンセサイザ52の出力する信号の周波数を制御する。
【0110】
ステップS34において、制御部54は、スプリアスが除去された受信信号がベースバンド帯域にダウンコンバートされるように、シンセサイザ7の出力する信号の周波数を制御する。制御部54は、記憶部55を参照し、受信チャネルの受信信号がベースバンド帯域にダウンコンバートされるように、シンセサイザ7の出力する信号の周波数を制御する。
【0111】
ステップS35において、制御部54は、スイッチ15をオンする。制御部54は、ミキサ51およびシンセサイザ52に供給される電源をオフし、ミキサ51およびシンセサイザ52の動作を停止する。また、制御部54は、記憶部55を参照し、LNA3から出力される受信信号がベースバンド帯域にダウンコンバートされるように、シンセサイザ7の出力する信号の周波数を制御する。
【0112】
ステップS36において、制御部54は、LNA3とミキサ6とを接続するようにスイッチ15を制御する。制御部54は、LNA43とミキサ51とを接続するようにスイッチ61を制御する。制御部54は、ミキサ51とLPF44とを接続するようにスイッチ62を制御する。制御部54は、シンセサイザ53とミキサ51とを接続するようにスイッチ63を制御する。これにより、無線通信装置には、2つの受信ブランチが形成され、アンテナ1,41で受信された受信信号は、ミキサ6,51によってベースバンド帯域にダウンコンバートされる。
【0113】
このように、2つの受信ブランチを有する場合において1つの受信ブランチをオフする場合、オフした受信ブランチのミキサを用いてスプリアス除去を行うようにした。これにより、回路規模の増大を抑制することができる。
【0114】
(付記1) 無線通信を行う無線通信装置において、
受信信号に含まれる予め測定されたスプリアスの周波数が所定の周波数となるように前記受信信号をコンバートするコンバータと、
前記コンバータから出力される前記受信信号の前記所定の周波数の信号成分を除去するフィルタと、
を有することを特徴とする無線通信装置。
【0115】
(付記2) 前記受信信号の受信チャネルと前記スプリアスの周波数の周波数情報とを対応付けて記憶した記憶部と、
受信される前記受信信号の前記受信チャネルに基づいて前記記憶部の前記周波数情報を参照し、前記周波数情報に基づいて前記スプリアスの周波数が前記所定の周波数となるように前記コンバータの周波数を制御する制御部と、
をさらに有することを特徴とする付記1記載の無線通信装置。
【0116】
(付記3) 前記記憶部は、さらに前記スプリアスの発生有無の発生情報を前記受信チャネルと対応付けて記憶し、
前記制御部は、受信される前記受信信号の前記受信チャネルに基づいて前記記憶部の前記発生情報を参照し、前記発生情報に基づいて前記コンバータへの電源供給を制御することを特徴とする付記2記載の無線通信装置。
【0117】
(付記4) 前記フィルタは、減衰量の異なる複数のフィルタ回路を有し、
前記記憶部は、さらに前記スプリアスの減衰すべき減衰量情報を前記受信チャネルと対応付けて記憶し、
前記複数のフィルタ回路から出力される前記受信信号を選択して出力する選択部をさらに備え、
前記制御部は、受信される前記受信信号の前記受信チャネルに基づいて前記記憶部を参照し、前記減衰量情報に基づいた前記受信信号が出力されるように前記選択部を制御することを特徴とする付記2記載の無線通信装置。
【0118】
(付記5) 前記コンバータと前記フィルタは、直列に複数接続され、
前記制御部は、前記記憶部に記憶される前記周波数情報が1つの前記受信チャネルに対して複数存在する場合、複数直列接続されたそれぞれの前記コンバータの周波数を制御することを特徴とする付記2記載の無線通信装置。
【0119】
(付記6) 第1の受信ブランチと
前記コンバータの有するミキサを有する第2の受信ブランチと、
前記スプリアスの周波数が前記所定の周波数にコンバートされるようにするための第1の信号を出力する第1の信号出力部と、
前記受信信号がベースバンド信号にコンバートされるようにするための第2の信号を出力する第2の信号出力部と、
前記第1の受信ブランチのみで前記受信信号を受信する場合、前記受信信号を前記ミキサに出力し、前記第1の信号を前記ミキサに出力し、前記ミキサの出力を前記フィルタに出力し、前記第1の受信ブランチと前記第2の受信ブランチとで前記受信信号を受信する場合、前記第2の受信ブランチで受信される前記受信信号を前記ミキサに出力し、前記第2の信号を前記ミキサに出力するように制御する制御部と、
をさらに有することを特徴とする付記1記載の無線通信装置。
【0120】
(付記7) 無線通信を行う無線通信装置のスプリアス除去方法において、
受信信号に含まれる予め測定されたスプリアスの周波数が所定の周波数となるように前記受信信号をコンバートし、
コンバータされた前記受信信号の前記所定の周波数の信号成分を除去する、
ことを特徴とするスプリアス除去方法。
【符号の説明】
【0121】
1 アンテナ
2 BPF
3 LNA
4 コンバータ
5 フィルタ
6 ミキサ
7 シンセサイザ
8 LPF
9 A/D変換器
10 デジタルフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信を行う無線通信装置において、
受信信号に含まれる予め測定されたスプリアスの周波数が所定の周波数となるように前記受信信号をコンバートするコンバータと、
前記コンバータから出力される前記受信信号の前記所定の周波数の信号成分を除去するフィルタと、
を有することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記受信信号の受信チャネルと前記スプリアスの周波数の周波数情報とを対応付けて記憶した記憶部と、
受信される前記受信信号の前記受信チャネルに基づいて前記記憶部の前記周波数情報を参照し、前記周波数情報に基づいて前記スプリアスの周波数が前記所定の周波数となるように前記コンバータの周波数を制御する制御部と、
をさらに有することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記記憶部は、さらに前記スプリアスの発生有無の発生情報を前記受信チャネルと対応付けて記憶し、
前記制御部は、受信される前記受信信号の前記受信チャネルに基づいて前記記憶部の前記発生情報を参照し、前記発生情報に基づいて前記コンバータへの電源供給を制御することを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記フィルタは、減衰量の異なる複数のフィルタ回路を有し、
前記記憶部は、さらに前記スプリアスの減衰すべき減衰量情報を前記受信チャネルと対応付けて記憶し、
前記複数のフィルタ回路から出力される前記受信信号を選択して出力する選択部をさらに備え、
前記制御部は、受信される前記受信信号の前記受信チャネルに基づいて前記記憶部を参照し、前記減衰量情報に基づいた前記受信信号が出力されるように前記選択部を制御することを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記コンバータと前記フィルタは、直列に複数接続され、
前記制御部は、前記記憶部に記憶される前記周波数情報が1つの前記受信チャネルに対して複数存在する場合、複数直列接続されたそれぞれの前記コンバータの周波数を制御することを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項6】
無線通信を行う無線通信装置のスプリアス除去方法において、
受信信号に含まれる予め測定されたスプリアスの周波数が所定の周波数となるように前記受信信号をコンバートし、
コンバータされた前記受信信号の前記所定の周波数の信号成分を除去する、
ことを特徴とするスプリアス除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−10122(P2011−10122A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152766(P2009−152766)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】