無線通信装置および無線通信方法
【課題】ワイヤレスでありながら、電子機器と無線通信を確立させたい無線通信対象を、特定する。
【解決手段】無線通信装置100は、複数のアンテナ102A〜102Cをそれぞれ離間した状態で保持するストラップ104と、デジタルカメラ200とアンテナ102A〜102Cとの間に、ストラップ104を通して接続され、デジタルカメラ200と無線通信対象との無線通信を確立する無線通信部106と、ストラップ104に包囲された無線通信対象が存在するか否かを判定する判定部110と、包囲された無線通信対象が存在すると判定部110が判定した場合、複数のアンテナのうち1つ以上を用いて、無線通信対象とデジタルカメラ200との無線通信を無線通信部106に確立させる制御部108と、を備える。
【解決手段】無線通信装置100は、複数のアンテナ102A〜102Cをそれぞれ離間した状態で保持するストラップ104と、デジタルカメラ200とアンテナ102A〜102Cとの間に、ストラップ104を通して接続され、デジタルカメラ200と無線通信対象との無線通信を確立する無線通信部106と、ストラップ104に包囲された無線通信対象が存在するか否かを判定する判定部110と、包囲された無線通信対象が存在すると判定部110が判定した場合、複数のアンテナのうち1つ以上を用いて、無線通信対象とデジタルカメラ200との無線通信を無線通信部106に確立させる制御部108と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置および無線通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LAN(Local Area Network)通信機能が内蔵されたデジタルカメラが提案されている。これによれば、デジタルカメラから直接ワイヤレスでインターネットに接続し、インターネット上のサーバに、コンピュータを介することなく、画像データを送信して保存可能である。
【0003】
特許文献1には、携帯電話機に連結されたアンテナ内蔵ストラップが提案されている。これによれば、テレビジョン放送用電波などの広い周波数帯域の電波を効果的に受信することが可能である。
【特許文献1】特開2006−319734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、アンテナ内蔵ストラップによって電波を受信している。しかしこれは特定の無線通信対象との無線通信を目的としたものではなく、テレビジョン放送用電波という、不特定の受信相手に対して送信される電波を受信するものにすぎない。つまり、かかる技術では、無線通信対象を特定できないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、ワイヤレスでありながら、電子機器と無線通信を確立させたい無線通信対象を、特定することが可能な、無線通信装置および無線通信方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にかかる無線通信装置は、複数のアンテナをそれぞれ離間した状態で保持するアンテナ保持部材と、電子機器と複数のアンテナとの間に、アンテナ保持部材を通して接続され、電子機器と無線通信対象との無線通信を確立する無線通信部と、アンテナ保持部材に包囲された無線通信対象が存在するか否かを判定する判定部と、包囲された無線通信対象が存在すると判定部が判定した場合、複数のアンテナのうち1つ以上を用いて、その無線通信対象と電子機器との無線通信を無線通信部に確立させる制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記のアンテナ保持部材はループ状であり、複数のアンテナは、ループの周長をアンテナの個数で実質的に等分割する位置に配置され、判定部は、ループ内に無線通信対象が存在するか否かを判定してよい。
【0008】
上記の判定部は、無線通信部から、複数のアンテナを介して送信される、アンテナを中心とした所定の半径内に到達可能な電波出力を有する通信要求電波に対する応答の有無に基づいて、ループ内に無線通信対象が存在するか否かを判定してよい。
【0009】
上記の制御部は、ループ内に無線通信対象が存在しないと判定部が判定した場合、通信要求電波の電波出力を上昇させ、判定部に新たな判定を繰り返させてよい。
【0010】
上記の制御部は、電波出力を、ループの周囲長の1/2を上記の所定の半径とする上限値以下の範囲で上昇させてよい。
【0011】
上記の制御部は、ループ内に無線通信対象が存在しないと判定部が判定した場合、判定部に新たな判定を繰り返させ、新たな判定のタイミングまでの間隔を、直前の間隔より長くしてよい。
【0012】
上記のループ内に無線通信対象が存在すると判定部が判定した場合、制御部は、無線通信部が送信する通信要求電波の電波出力を、ループを円形とした場合の半径を上記の所定の半径とする下限値以下まで低下させて判定部に新たな判定を繰り返させ、判定が依然として覆らない場合、その判定を覆してよい。
【0013】
上記の制御部は、無線通信が確立された後、判定部に新たな判定を繰り返させ、ループ内に無線通信対象が存在しないと判定部が判定した場合、無線通信部に無線通信を切断させてよい。
【0014】
上記の制御部は、無線通信が確立された後、判定部に新たな判定を繰り返させ、ループ内に無線通信対象が存在しないと判定部が判定した場合、無線通信部に、単位時間あたりに送受信されるデータ量であるデータレートを落とさせてよい。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明にかかる無線通信方法は、電子機器に接続され、複数のアンテナをそれぞれ離間した状態で保持するアンテナ保持部材に包囲された無線通信対象が存在するか否かを判定し、包囲された無線通信対象が存在すると判定した場合、複数のアンテナのうち1つ以上を用いて、その無線通信対象と電子機器との無線通信を確立することを特徴とする。
【0016】
上述した無線通信装置における技術的思想に対応する構成要素やその説明は、当該無線通信方法にも適用可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ワイヤレスでありながら、電子機器と無線通信を確立させたい無線通信対象を、特定することが可能な、無線通信装置および無線通信方法を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。さらに、信号や電流はそれらが通る線路の符号によって表記するものとする。
【0019】
(無線通信装置)
図1は、本発明の実施形態にかかる無線通信装置の外観を示す図である。図1(a)の無線通信装置100は、3個のアンテナ102A、102B、102Cをそれぞれ離間した状態で保持するアンテナ保持部材を備えている。以下では、アンテナ保持部材の例として、ストラップ104を用いて説明する。アンテナ102A、102B、102Cは、後述の無線通信部106からの信号を無線通信対象(不図示)に送信し、無線通信対象から受信した信号を無線通信部106に送信する。本実施形態ではアンテナの数は3個であるが、複数であれば何個でもよい。
【0020】
図1(a)に示すように、本実施形態では、ストラップ104はループ状であり、アンテナ102A、102B、102Cは、ループの周長をアンテナの個数(3個)で実質的に等分割する位置に配置されている。
【0021】
図2は、無線通信装置の機能的構成を示すブロック図である。
【0022】
無線通信装置100はさらに、電子機器の一例であるデジタルカメラ200とアンテナ102A、102B、102Cとの間に、ストラップ104を通して接続され、デジタルカメラ200と無線通信対象(不図示)との無線通信を確立する無線通信部106を備える。
【0023】
アンテナ102A、102B、102Cはストラップ104を介して無線通信部106と接続されている。無線通信部106は、IEEE 802.11規格に準拠したWi-Fiのプロトコルに沿ったパケットを生成し、アンテナ102A、102B、102Cのいずれかを経由して無線通信対象に送信する。また無線通信部106は、アンテナ102A、102B、102Cから受信したパケットを解析し、その情報を後述の制御部108に通知する。無線通信部106は、例えば、無線通信対象であるアクセスポイントからのビーコン信号からアクセスポイントの情報を取り出したり、プローブ応答信号からアクセスポイントの情報を取り出したりする。無線通信部106が採用する無線通信プロトコルは、Wi-Fiの他、WirelessUSBなど、いかなる近距離無線方式でもよい。
【0024】
無線通信装置100はさらに、ストラップ104に包囲された無線通信対象が存在するか否かを判定する判定部110と、ストラップ104内に無線通信対象が存在すると判定部110が判定した場合、アンテナ102A、102B、102Cのうち1つ以上を用いて、ストラップ104内の無線通信対象とデジタルカメラ200との無線通信を無線通信部106に確立させる制御部108と、を備える。無線通信部106、制御部108、判定部110は、ストラップ104とデジタルカメラ200との間を中継する中継部材112内にまとめて内蔵されている。
【0025】
制御部108は、無線通信部106、判定部110、およびアンテナ102A、102B、102Cに接続されている。制御部108がアンテナ102A、102B、102Cのいずれを無線通信に用いるかについては、特に決められた手順はなく、任意の順番に使用するなどでよい。また、アンテナは1つ以上使用すればよく、3個すべてを使用してもよい。無線通信が確立されることによって、記録媒体300に記録されている画像データを画像読出部232が読み出し、無線通信部106がパケット化する。無線通信部106は、パケット化した画像データを、使用される上記の1つ以上のアンテナを介して、無線通信対象に送信する。
【0026】
なお、無線通信が確立されると、無線通信部106は、無線通信対象からの画像データを受信することもできる。無線通信部106が受信した画像データを、CPU250は、記憶媒体300に記録することができる。
【0027】
図1(b)はアンテナ保持部材であるストラップの他の例を示す図である。図1のストラップ104はデジタルカメラ200の一方の側面にループ状に装着されていたが、図1(b)のストラップ114は、その両端が、デジタルカメラ200の両側面にそれぞれ装着されている。
【0028】
なお図1(b)の無線通信装置120の構成および動作は、ストラップ114の形状を除き、図1(a)のそれらと同様であるため、以下、説明は省略する。
【0029】
(無線通信装置による無線通信確立の方法)
図3は無線通信装置による無線通信確立の方法を示す模式図である。図3ではデジタルカメラ200は図示を省略している。無線通信部106からアンテナ102A、102B、102Cを介して送信される通信要求電波(プローブ要求信号)は、各アンテナ102A、102B、102Cを中心とした所定の半径内(円形領域124A、124B、124C)に到達可能な電波出力を有する。判定部110は、これらプローブ要求信号に対する応答の有無に基づいて、ループ内に無線通信対象(アクセスポイント122A、デジタルカメラ122B)が存在するか否かを判定する。
【0030】
図4は、判定部が有する判定結果をまとめたテーブルである。判定部110は、3個すべてのアンテナ102A、102B、102Cからのプローブ要求信号に対してアクセスポイントが応答した場合(図4において「有」が3つ揃う場合)に、当該アクセスポイントがストラップ104のループ内に存在すると判定する。無線通信部106は、アンテナ102A、102B、102Cを介して、それぞれのアンテナから等しい電波出力のプローブ要求信号を送信する。それぞれのプローブ要求信号は、図3に示す円形領域124A、124B、124Cまで到達する。すると、3つの円形領域124A、124B、124Cは、ストラップ104のループ内で重なる。したがって、ストラップ104のループ内に存在するアクセスポイント122Aは、図4に「有」で示すように、3個すべてのアンテナ102A、102B、102Cからのプローブ要求信号に対して応答することとなる。かかる応答が得られるため、判定部110は、アクセスポイント122Aがストラップ104のループ内に存在すると判定できる。
【0031】
一方、ストラップ104のループ外のデジタルカメラ122Bは、図4に示すように、アンテナ102A、102Bからのプローブ要求信号に対しては応答「有」であるが、アンテナ102Cからのプローブ要求信号に対しては応答できず、「無」となる。したがって、判定部110は、デジタルカメラ122Bはストラップ104のループ外にあり、無線通信を確立すべき対象ではないと判定する。
【0032】
上記の構成によれば、ストラップ104のループ内に入れた無線通信対象とだけ無線通信が確立されるため、無線通信対象を特定可能である。言い換えれば、目的の無線通信対象と無線通信させたい場合には、その無線通信対象をストラップ104のループ内に入れればよい。
【0033】
本実施形態では、一例として、ストラップ104の周囲長を100cmとし、直径約33cmの円がループによって作られる例を説明する。各アンテナ102A、102B、102Cからのプローブ要求信号の電波出力Ptは、約−45dBmとした。一方、無線通信対象からのプローブ応答信号の受信電波強度Prsの閾値は、−65dBmとした。これを超えるプローブ応答信号を各アンテナ102A、102B、102Cが受信したとき、プローブ応答信号「有」と判定部110が判定することとした。
【0034】
必要な電波出力Ptを求める基礎とした式は、以下の通りである。
Prs=Gts+Grs+Pt−(Γ+Lf)
ここで、Prs:受信電波強度(dBm)、Gts:送信アンテナ利得(dB)、Grs:受信アンテナ利得(dB)、Pt:電波出力(dBm)、Γ:空間損失(dB)、Lf:送受信給電系損失(dB)である。
【0035】
(アンテナ保持部材の他の例)
図5は図1のアンテナ保持部材の他の例を示す図である。この無線通信装置130のアンテナ保持部材126に示すように、アンテナ保持部材は、アンテナ102A、102B、102Cを離間して保持できるものであればよく、ループ状でなくてもよい。
また、アンテナ保持部材の形状は、上述のようなストラップ104、114に限られない。アンテナ保持部材の材質は、アンテナ102A、102B、102Cを内蔵できるものであれば、布製、皮製、樹脂製などのいずれでもよい。
【0036】
図5に示すように、アンテナ保持部材126は、ストラップのように閉じている必要はない。このように閉じていない場合には、アンテナ保持部材126に包囲されている無線通信対象との無線通信が確立される。ここで「アンテナ保持部材に包囲されている」とは、無線通信対象の周囲に配置された複数のアンテナから送信されるプローブ要求信号をすべて受信可能な位置にあることを言う。具体的には、3つの円形領域124A、124B、124Cが重なる領域にある物は、アンテナ保持部材126によって包囲されている。かかる定義によれば、アンテナが2個であっても、アンテナ保持部材によって包囲される領域を特定できる。
【0037】
ただし、アンテナ保持部材の材質、幾何的形状、および、アンテナ102A、102B、102Cが配置されている位置に応じて、「包囲されている」という用語の定義は自由に定めてよい。
【0038】
(無線通信対象が存在しないと判定した場合の制御:その1)
図6は図1(a)の無線通信装置100と無線通信対象であるデジタルカメラ122Bとの位置関係の一例を示す模式図であり、図7は図6のケースにおける判定部110の有するテーブルの内容を示す図である。
【0039】
ストラップ104のループの形が略円形でなく、例えば図6(a)に示すように、略楕円形状になっている場合、ループ内に無線通信対象であるデジタルカメラ122Bがあっても、無線通信対象なし、と判定されてしまう場合がある。これは、図7(a)に示すように、デジタルカメラ122Bは、アンテナ102A、102Bからのプローブ要求信号に対しては応答「有」であるが、アンテナ102Cからのプローブ要求信号に対しては応答できず、「無」となるからである。
【0040】
制御部108は、図7(a)の結果から、ストラップ104のループ内にデジタルカメラ122Bが存在しないと判定部110が判定した場合、アンテナ102A、102B、102Cのプローブ要求信号の電波出力を上昇させる(Pt1からPt2へ上昇。Pt1<Pt2)。そして、制御部108は、上昇させた電波出力Pt2により、判定部110に判定を繰り返させる。
【0041】
これにより、図6(b)に示すように、プローブ要求信号が到達する円形領域124A、124B、124Cが拡大し、デジタルカメラ122Bがストラップ104のループ内に存在すると正しく判定されるからである(図7(b))。
【0042】
なお、制御部108は、電波出力を上昇させるときに、所定の上限値以下の範囲で上昇させるとよい。電波出力を際限無く上昇させてしまうと、ストラップ104のループ外に存在する無線通信対象をも、ループ内に存在すると判定してしまうためである。
【0043】
電波出力の上限値は、例えば以下のように決定する。例えば、電波出力の上限値を、電波を出力するアンテナを中心として、ストラップ104のループの周囲長の1/2まで届く電波出力とする。具体的には、例えば、ストラップ104が周囲長100cmの場合、各アンテナを中心として、半径50cmまで届く電波出力が上限値となる。アンテナと、ループ内の無線通信対象とが最も離れる距離は、ストラップ104が略直線状になるようにピンと張った状態での一端部から他端部までの距離50cmとなる。そのため、この距離を越えた場合は、無線通信対象がループ外となるためである。
【0044】
(無線通信対象が存在しないと判定した場合の制御:その2)
図8は図1(a)の無線通信装置100と無線通信対象であるデジタルカメラ122Bとの位置関係の一例を示す模式図である。
【0045】
図8の場合、無線通信対象であるデジタルカメラ122Bの位置は、図3に示した位置と同様であるから、判定部110は、ストラップ104のループ内に無線通信対象は存在しないと判定する。一旦このような判定がなされても、その後、ユーザが、ストラップ104のループ内に無線通信対象を入れる場合がある。そこで、制御部108は、判定部110に同様の判定を繰り返させる。ただし、新たな判定のタイミングまでの間隔を、直前の間隔より長くしてよい。
【0046】
これは、ストラップ104のループ内に無線通信対象が存在しないと判定された場合に再確認のための判定を頻繁に行うと、電力の消費量が大きくなるためである。
【0047】
(無線通信対象が存在すると判定した場合の制御)
図9は無線通信装置と無線通信対象であるデジタルカメラとの位置関係の一例を示す模式図であり、図10は図9のケースにおける判定部の有するテーブルの内容を示す図である。
【0048】
図9(a)、(b)の場合、判定部110は、ストラップ104のループ内に無線通信対象であるデジタルカメラ122Bが存在すると判定する。しかしこの判定は、ループ形状不良による誤判定である。そこで、このような誤判定を防止するために、制御部108は、無線通信部106が送信するプローブ要求信号の電波出力を所定の下限値以下まで低下させて判定部110に新たな判定を繰り返させる。そして、判定部110による判定が依然として覆らない場合、その判定を覆すこととしてもよい。
【0049】
これは、図9(a)に示すように、ループ形状が円形でない不良な形状になっているために、無線通信対象であるデジタルカメラ122Bがストラップ104のループ外にあるにも拘らず、ループ内にある、という誤った判定(図10(a))をしてしまう場合に、その誤りを正し、より正確な判定を行うための制御である。図10(b)に示すように、所定の下限値以下まで電波出力を低下させる(Pt1からPt3へ低下。Pt1>Pt3)。
【0050】
電波出力を低下させる目的は、ループ内の無線通信対象が、3個のアンテナ102A、102B、102Cからのプローブ要求信号に対して少なくとも1つのアンテナへの応答を不可能とすることである。例えば図9(c)に示すように、ループをほぼ円形に配置した場合に、ループの内部で3つの円形領域124A、124B、124Cが重なる部分がなくなるまで、電波出力を低下させる。具体的には、円形領域124A、124B、124Cの半径が、図9(c)のようにループを円形とした場合のループの半径に等しくなる電波出力を下限値とし、それ以下に電波出力を下げれば、3つの円形領域124A、124B、124Cが重なる部分がなくなる。
【0051】
かかる電波出力の低下を行ったにも拘らず、3個すべてのアンテナ102A、102B、102Cからのプローブ要求信号に対する応答が「有」となり、図10(b)のように無線通信対象あり、と依然として判定される場合について考察する。この場合は、図9(b)に示されている通り、正常でない形状のループの外に無線通信対象(デジタルカメラ122B)があると判定するのが妥当である。したがって、図10(b)に示すように、判定を覆す。これにより、ループ内の無線通信対象とだけ無線通信を確立することができる。
【0052】
(無線通信確立後の制御:その1)
図11は無線通信装置と無線通信対象との無線通信が確立した後の、位置関係の変化を示す模式図である。
【0053】
制御部108は、無線通信が確立された後、所定の時間間隔で判定部110に同様の判定を繰り返させる。これは、ユーザが、無線通信確立後に、ストラップ104のループ外に無線通信対象を出してしまう場合もあるからである。制御部108は、ストラップ104のループ内に無線通信対象が存在しないと判定部110が判定した場合、無線通信部106に無線通信を切断させてよい。このように、図11(a)のようにループ内に存在していた無線通信対象(デジタルカメラ122B)が、無線通信が確立された後に図11(b)のようにループ外へ出たら、無線通信を切断する。
【0054】
(無線通信確立後の制御:その2)
制御部108は、無線通信が確立された後、所定の時間間隔で判定部110に同様の判定を繰り返させる。制御部108は、ストラップ104のループ内に無線通信対象が存在しないと判定部110が判定した場合、無線通信部106に、単位時間あたりに送受信されるデータ量であるデータレートを落とさせてもよい。
【0055】
これは、図11(a)のようにストラップ104のループ内に存在していた無線通信対象(デジタルカメラ122B)が、無線通信が確立された後に図11(b)のようにループ外へ出ても、無線通信を維持する例である。データレートを落とすと、通信可能範囲が伸びる性質を利用したものである。
【0056】
(デジタルカメラ)
図2を用いて、デジタルカメラの内部構造を簡単に説明する。撮像部220は、被写体を撮像して複数のフレームから構成される画像を記憶媒体300に記憶させる撮像手段であり、例えばCCD(Charge Coupled Device; 電荷結合素子)を用いることができる。
【0057】
撮像部220は、撮像レンズ210によって結像された被写体の光像を、画素毎にR(赤)、G(緑)、B(青)の色成分の画像信号(各画素で受光された画素信号の信号列からなる信号)に光電変換して出力する。
【0058】
撮像部220から得られる画像信号(アナログ信号)は、アナログ信号処理回路230に与えられる。アナログ信号処理回路230は、画像信号に対して所定のアナログ信号処理を行う回路である。アナログ信号処理回路230は、少なくとも相関二重サンプリング回路(Correlated Double Sampling:CDS。図示省略)およびオートゲインコントロール(Auto Gain Controlled: AGC。図示省略)回路を含む。相関二重サンプリング回路によって画像信号のノイズ低減処理が行われ、オートゲインコントロール回路でゲイン調整することによって、画像信号のレベル調整が行われる。
【0059】
A/D変換器240は、画像信号の各画素信号を、例えば12ビットのデジタル信号に変換する。変換後のデジタル信号は、中央処理装置(CPU: Central Processing Unit)250に与えられ、画像データとして一時的にRAM(Random Access Memory)260に格納される。RAM260に保存された画像データは、画像処理部280によって色補正処理等を施された後、圧縮伸張部290による圧縮処理等が施される。
【0060】
圧縮された高解像度の動画像データは、記憶媒体300に記憶される。記憶媒体300には、例えばSDカードまたはマイクロSDカードを用いることができる。操作部320は、電源ボタン320A、各種の操作ボタン320B、シャッタレリーズボタン320C等を含み、ユーザがデジタルカメラ200の設定を変更操作する際や撮像操作を行う際等に用いられる。
【0061】
画像読出部232は、操作部320を操作することにより、記憶媒体300と無線通信装置100との間で画像データをやりとりする。
【0062】
図12は、デジタルカメラ200で撮影した画像データを無線通信対象に転送する際にLCD(Liquid Crystal Display)310に表示されるユーザインターフェースの一例を示す図である。図12(a)(b)は、無線通信が確立される前に予め画像を選択しておく場合のGUI(Graphical User Interface)である。図12(a)に示すように、ユーザの操作により、記憶媒体300に保存されている画像一覧から、転送する画像を選択し、画面内のOKボタンを押すと選択が完了する。無線通信が確立された後に、図12(b)に示すように、転送が開始される。
【0063】
図12(c)(d)は、無線通信が確立された後に画像を選択する場合のGUIである。図12(c)に示すように、無線通信が確立されると、その旨のメッセージが表示され、次に図12(d)に示すように、記憶媒体300に保存されている画像一覧が表示される。ユーザが転送する画像を選択し、OKボタンを押すと、画像の転送が開始される。
【0064】
電源208は、デジタルカメラ200に対する電力供給源である。これはリチウムイオン電池などの二次電池を用いることができる。
【0065】
CPU250は、RAM260およびROM(Read Only Memory)255に記録された所定のプログラムを実行することにより、上記各部を統括的に制御する。なお、RAM260は、高速アクセス可能な半導体メモリであり、ROM255は電気的に書き換えが不可能な不揮発の半導体メモリ(例えばフラッシュROM)として構成される。また、RAM260内における一部の領域は、一時記憶用のバッファエリアとして機能し、動画像データおよび音声データを一時的に記憶する。
【0066】
CPU250は、画像処理部280および圧縮伸張部290を有する。これら各処理部280、290は、マイクロコンピュータが所定のプログラムを実行することにより実現される機能部位である。
【0067】
画像処理部280は、WB(ホワイトバランス)処理、γ補正処理等の各種のデジタル画像処理を施す処理部である。WB処理は、R、G、Bの各色成分のレベル変換を行い、カラーバランスを調整する処理であり、γ補正処理は、画素データの階調を補正する処理である。圧縮伸張部290は、画像処理部280によって色補正処理等が行われた画像データを、さらに圧縮する。圧縮方式としては、例えばJPEG方式などが採用される。
【0068】
記憶媒体300に対する動画像データの読み書き時には、圧縮伸張部290において、例えばJPEG形式で動画像データの圧縮処理が行われ、動画像データがRAM260と記憶媒体との間で送受信される。また、音声データの読み書き時においても、音声データがRAM260と記憶媒体との間で送受信される。
【0069】
さらに、CPU250は、画像および音声等のデータを送受信するだけではなく、デジタルカメラ200で動作するプログラムを取り込むことも可能である。例えば、記憶媒体に記録されている制御プログラムを、RAM260またはROM255内に取り込むことができる。これにより、制御プログラムを更新することも可能である。
【0070】
(無線通信方法)
図13は図1(a)の無線通信装置が行う、本実施形態にかかる無線通信方法の一例を示すフローチャートである。本フローチャートのプログラムは、RAM260またはROM255内に記録されている。
【0071】
目的の無線通信対象(アクセスポイント122A、デジタルカメラ122B)とデジタルカメラ200との無線通信を確立させるときは、まず、無線通信対象をストラップ104のループの中に入れ、デジタルカメラ200の操作部320によって、無線通信を開始する操作を行う。
【0072】
稼動中の無線通信対象は、一定の周期でビーコン信号を発信している。ステップS400において、アンテナ102A、102B、102Cでビーコン信号を受信して無線通信部106で信号パケットを解析することで、接続可能な無線通信対象の情報「アクセスポイント122A」や「デジタルカメラ122B」を認識する。これら、信号パケットから得られた情報は、判定部110のテーブル(図4)に保持される。本実施形態のように、複数の無線通信対象を認識することもありうるが、この時点においては、どの無線通信対象がストラップ104のループ内にあるかは不明である。
【0073】
次に、ステップS410において、判定部110のテーブルに保持された情報に基づき、各無線通信対象に対して位置調査を行い、ストラップ104のループ内にいずれかの無線通信対象が存在するか否かを、判定部110によって判定する。具体的には、図3に示すような、ストラップ104のループ内に存在する無線通信対象に届くのに十分な電波出力で、プローブ要求信号を各アンテナ102A、102B、102Cから送信する。これに対し、プローブ応答信号が3個のアンテナ102A、102B、102Cすべてに返ってきた無線通信対象は、ループ内にあると判定する。
【0074】
ループ内に無線通信対象がない場合には、ステップS412にて、条件変更(電波出力を上昇させる図6に示した制御、あるいは、図8に関して説明した判定タイミングの間隔を長くする制御)を行い、ステップS400に戻る。
【0075】
ループ内に無線通信対象がある場合であっても、ステップS420にて、図9を用いて説明した、ループ形状不良による誤判定か否かを確かめる。誤判定と判定した場合には、再びステップS400に戻る。誤判定でないと判定した場合には、ステップS430に進み、アンテナ102A、102B、102Cのうち1つ以上を用いて、デジタルカメラ200と無線通信対象との無線通信を確立する。具体的には、無線通信対象の認証とアソシエーション確立とを行う。これらはIEEE802.11のプロトコルに従う。
【0076】
無線通信が確立されたらステップS440にて画像データの相互転送を行い、ステップS450にて、再び、ストラップ104のループ内に、無線通信中の無線通信対象が存在するか否かを判定する。判定の方法はステップS410と同様でよい。
【0077】
その結果、無線通信中の無線通信対象が依然として存在すると判定すれば、ステップS440に戻り、画像データ転送を継続可能である。一方、図11のように無線通信中の無線通信対象がループから出た場合には、ステップS460において、かかる場合の制御方法がどのように設定されているか、すなわち無線通信を続行するか否かを確認する。続行する場合にはステップS470にてデータレートを低減し、続行しない場合にはステップS480にて無線通信を切断する。
【0078】
なお、本明細書の無線通信方法における各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【0079】
本実施形態によれば、アンテナ保持部材に包囲されている無線通信対象との無線通信が確立されるため、ワイヤレスでありながら、電子機器と無線通信を確立させたい無線通信対象を、特定することが可能である。
【0080】
本実施形態によれば、ループ内の無線通信対象との無線通信が確立されるため、目的の無線通信対象がより明確になる。
【0081】
本実施形態によれば、すべてのアンテナから、ループ内に到達可能な等しい電波出力の通信要求電波を送信すれば、ループ内に存在する無線通信対象は、すべてのアンテナからの通信要求電波に対して応答することとなる。これによって、判定部は、当該無線通信対象がループ内に存在することを判定できる。
【0082】
本実施形態によれば、無線通信対象がループ内に存在するか否かの判定の信頼度を向上させることができる。
【0083】
本実施形態によれば、ループ内に無線通信対象が存在しないと判定された場合に、再確認のための判定による電力の消費量が大きくなることを、防ぐことができる。
【0084】
本実施形態によれば、無線通信対象が存在するか否かの判定の信頼度を向上させることができる。
【0085】
本実施形態によれば、ループ内に存在していた無線通信対象がループ外へ出ても、無線通信を維持するという方針に基づく制御がなされる。データレートを落とすと、通信可能範囲が伸びる性質を利用したものである。
【0086】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されるものではない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、無線通信装置および無線通信方法に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施形態にかかる無線通信装置の外観を示す図である。
【図2】無線通信装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図3】無線通信装置による無線通信確立の方法を示す模式図である。
【図4】判定部が有する判定結果をまとめたテーブルである。
【図5】アンテナ保持部材の他の例を示す図である。
【図6】無線通信装置と無線通信対象であるデジタルカメラとの位置関係の一例を示す模式図である。
【図7】図6のケースにおける判定部の有するテーブルの内容を示す図である。
【図8】無線通信装置と無線通信対象であるデジタルカメラとの位置関係の一例を示す模式図である。
【図9】無線通信装置と無線通信対象であるデジタルカメラとの位置関係の一例を示す模式図である。
【図10】図9のケースにおける判定部の有するテーブルの内容を示す図である。
【図11】無線通信装置と無線通信対象との無線通信が確立した後の、位置関係の変化を示す模式図である。
【図12】デジタルカメラで撮影した画像データを無線通信対象に転送する際のユーザインターフェースの一例を示す図である。
【図13】無線通信装置が行う、本実施形態にかかる無線通信方法の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0089】
100、120 …無線通信装置
102A、102B、102C …アンテナ
104、114 …ストラップ
106 …無線通信部
108 …制御部
110 …判定部
112 …中継部材
126 …アンテナ保持部材
200 …デジタルカメラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置および無線通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LAN(Local Area Network)通信機能が内蔵されたデジタルカメラが提案されている。これによれば、デジタルカメラから直接ワイヤレスでインターネットに接続し、インターネット上のサーバに、コンピュータを介することなく、画像データを送信して保存可能である。
【0003】
特許文献1には、携帯電話機に連結されたアンテナ内蔵ストラップが提案されている。これによれば、テレビジョン放送用電波などの広い周波数帯域の電波を効果的に受信することが可能である。
【特許文献1】特開2006−319734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、アンテナ内蔵ストラップによって電波を受信している。しかしこれは特定の無線通信対象との無線通信を目的としたものではなく、テレビジョン放送用電波という、不特定の受信相手に対して送信される電波を受信するものにすぎない。つまり、かかる技術では、無線通信対象を特定できないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、ワイヤレスでありながら、電子機器と無線通信を確立させたい無線通信対象を、特定することが可能な、無線通信装置および無線通信方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にかかる無線通信装置は、複数のアンテナをそれぞれ離間した状態で保持するアンテナ保持部材と、電子機器と複数のアンテナとの間に、アンテナ保持部材を通して接続され、電子機器と無線通信対象との無線通信を確立する無線通信部と、アンテナ保持部材に包囲された無線通信対象が存在するか否かを判定する判定部と、包囲された無線通信対象が存在すると判定部が判定した場合、複数のアンテナのうち1つ以上を用いて、その無線通信対象と電子機器との無線通信を無線通信部に確立させる制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記のアンテナ保持部材はループ状であり、複数のアンテナは、ループの周長をアンテナの個数で実質的に等分割する位置に配置され、判定部は、ループ内に無線通信対象が存在するか否かを判定してよい。
【0008】
上記の判定部は、無線通信部から、複数のアンテナを介して送信される、アンテナを中心とした所定の半径内に到達可能な電波出力を有する通信要求電波に対する応答の有無に基づいて、ループ内に無線通信対象が存在するか否かを判定してよい。
【0009】
上記の制御部は、ループ内に無線通信対象が存在しないと判定部が判定した場合、通信要求電波の電波出力を上昇させ、判定部に新たな判定を繰り返させてよい。
【0010】
上記の制御部は、電波出力を、ループの周囲長の1/2を上記の所定の半径とする上限値以下の範囲で上昇させてよい。
【0011】
上記の制御部は、ループ内に無線通信対象が存在しないと判定部が判定した場合、判定部に新たな判定を繰り返させ、新たな判定のタイミングまでの間隔を、直前の間隔より長くしてよい。
【0012】
上記のループ内に無線通信対象が存在すると判定部が判定した場合、制御部は、無線通信部が送信する通信要求電波の電波出力を、ループを円形とした場合の半径を上記の所定の半径とする下限値以下まで低下させて判定部に新たな判定を繰り返させ、判定が依然として覆らない場合、その判定を覆してよい。
【0013】
上記の制御部は、無線通信が確立された後、判定部に新たな判定を繰り返させ、ループ内に無線通信対象が存在しないと判定部が判定した場合、無線通信部に無線通信を切断させてよい。
【0014】
上記の制御部は、無線通信が確立された後、判定部に新たな判定を繰り返させ、ループ内に無線通信対象が存在しないと判定部が判定した場合、無線通信部に、単位時間あたりに送受信されるデータ量であるデータレートを落とさせてよい。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明にかかる無線通信方法は、電子機器に接続され、複数のアンテナをそれぞれ離間した状態で保持するアンテナ保持部材に包囲された無線通信対象が存在するか否かを判定し、包囲された無線通信対象が存在すると判定した場合、複数のアンテナのうち1つ以上を用いて、その無線通信対象と電子機器との無線通信を確立することを特徴とする。
【0016】
上述した無線通信装置における技術的思想に対応する構成要素やその説明は、当該無線通信方法にも適用可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ワイヤレスでありながら、電子機器と無線通信を確立させたい無線通信対象を、特定することが可能な、無線通信装置および無線通信方法を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。さらに、信号や電流はそれらが通る線路の符号によって表記するものとする。
【0019】
(無線通信装置)
図1は、本発明の実施形態にかかる無線通信装置の外観を示す図である。図1(a)の無線通信装置100は、3個のアンテナ102A、102B、102Cをそれぞれ離間した状態で保持するアンテナ保持部材を備えている。以下では、アンテナ保持部材の例として、ストラップ104を用いて説明する。アンテナ102A、102B、102Cは、後述の無線通信部106からの信号を無線通信対象(不図示)に送信し、無線通信対象から受信した信号を無線通信部106に送信する。本実施形態ではアンテナの数は3個であるが、複数であれば何個でもよい。
【0020】
図1(a)に示すように、本実施形態では、ストラップ104はループ状であり、アンテナ102A、102B、102Cは、ループの周長をアンテナの個数(3個)で実質的に等分割する位置に配置されている。
【0021】
図2は、無線通信装置の機能的構成を示すブロック図である。
【0022】
無線通信装置100はさらに、電子機器の一例であるデジタルカメラ200とアンテナ102A、102B、102Cとの間に、ストラップ104を通して接続され、デジタルカメラ200と無線通信対象(不図示)との無線通信を確立する無線通信部106を備える。
【0023】
アンテナ102A、102B、102Cはストラップ104を介して無線通信部106と接続されている。無線通信部106は、IEEE 802.11規格に準拠したWi-Fiのプロトコルに沿ったパケットを生成し、アンテナ102A、102B、102Cのいずれかを経由して無線通信対象に送信する。また無線通信部106は、アンテナ102A、102B、102Cから受信したパケットを解析し、その情報を後述の制御部108に通知する。無線通信部106は、例えば、無線通信対象であるアクセスポイントからのビーコン信号からアクセスポイントの情報を取り出したり、プローブ応答信号からアクセスポイントの情報を取り出したりする。無線通信部106が採用する無線通信プロトコルは、Wi-Fiの他、WirelessUSBなど、いかなる近距離無線方式でもよい。
【0024】
無線通信装置100はさらに、ストラップ104に包囲された無線通信対象が存在するか否かを判定する判定部110と、ストラップ104内に無線通信対象が存在すると判定部110が判定した場合、アンテナ102A、102B、102Cのうち1つ以上を用いて、ストラップ104内の無線通信対象とデジタルカメラ200との無線通信を無線通信部106に確立させる制御部108と、を備える。無線通信部106、制御部108、判定部110は、ストラップ104とデジタルカメラ200との間を中継する中継部材112内にまとめて内蔵されている。
【0025】
制御部108は、無線通信部106、判定部110、およびアンテナ102A、102B、102Cに接続されている。制御部108がアンテナ102A、102B、102Cのいずれを無線通信に用いるかについては、特に決められた手順はなく、任意の順番に使用するなどでよい。また、アンテナは1つ以上使用すればよく、3個すべてを使用してもよい。無線通信が確立されることによって、記録媒体300に記録されている画像データを画像読出部232が読み出し、無線通信部106がパケット化する。無線通信部106は、パケット化した画像データを、使用される上記の1つ以上のアンテナを介して、無線通信対象に送信する。
【0026】
なお、無線通信が確立されると、無線通信部106は、無線通信対象からの画像データを受信することもできる。無線通信部106が受信した画像データを、CPU250は、記憶媒体300に記録することができる。
【0027】
図1(b)はアンテナ保持部材であるストラップの他の例を示す図である。図1のストラップ104はデジタルカメラ200の一方の側面にループ状に装着されていたが、図1(b)のストラップ114は、その両端が、デジタルカメラ200の両側面にそれぞれ装着されている。
【0028】
なお図1(b)の無線通信装置120の構成および動作は、ストラップ114の形状を除き、図1(a)のそれらと同様であるため、以下、説明は省略する。
【0029】
(無線通信装置による無線通信確立の方法)
図3は無線通信装置による無線通信確立の方法を示す模式図である。図3ではデジタルカメラ200は図示を省略している。無線通信部106からアンテナ102A、102B、102Cを介して送信される通信要求電波(プローブ要求信号)は、各アンテナ102A、102B、102Cを中心とした所定の半径内(円形領域124A、124B、124C)に到達可能な電波出力を有する。判定部110は、これらプローブ要求信号に対する応答の有無に基づいて、ループ内に無線通信対象(アクセスポイント122A、デジタルカメラ122B)が存在するか否かを判定する。
【0030】
図4は、判定部が有する判定結果をまとめたテーブルである。判定部110は、3個すべてのアンテナ102A、102B、102Cからのプローブ要求信号に対してアクセスポイントが応答した場合(図4において「有」が3つ揃う場合)に、当該アクセスポイントがストラップ104のループ内に存在すると判定する。無線通信部106は、アンテナ102A、102B、102Cを介して、それぞれのアンテナから等しい電波出力のプローブ要求信号を送信する。それぞれのプローブ要求信号は、図3に示す円形領域124A、124B、124Cまで到達する。すると、3つの円形領域124A、124B、124Cは、ストラップ104のループ内で重なる。したがって、ストラップ104のループ内に存在するアクセスポイント122Aは、図4に「有」で示すように、3個すべてのアンテナ102A、102B、102Cからのプローブ要求信号に対して応答することとなる。かかる応答が得られるため、判定部110は、アクセスポイント122Aがストラップ104のループ内に存在すると判定できる。
【0031】
一方、ストラップ104のループ外のデジタルカメラ122Bは、図4に示すように、アンテナ102A、102Bからのプローブ要求信号に対しては応答「有」であるが、アンテナ102Cからのプローブ要求信号に対しては応答できず、「無」となる。したがって、判定部110は、デジタルカメラ122Bはストラップ104のループ外にあり、無線通信を確立すべき対象ではないと判定する。
【0032】
上記の構成によれば、ストラップ104のループ内に入れた無線通信対象とだけ無線通信が確立されるため、無線通信対象を特定可能である。言い換えれば、目的の無線通信対象と無線通信させたい場合には、その無線通信対象をストラップ104のループ内に入れればよい。
【0033】
本実施形態では、一例として、ストラップ104の周囲長を100cmとし、直径約33cmの円がループによって作られる例を説明する。各アンテナ102A、102B、102Cからのプローブ要求信号の電波出力Ptは、約−45dBmとした。一方、無線通信対象からのプローブ応答信号の受信電波強度Prsの閾値は、−65dBmとした。これを超えるプローブ応答信号を各アンテナ102A、102B、102Cが受信したとき、プローブ応答信号「有」と判定部110が判定することとした。
【0034】
必要な電波出力Ptを求める基礎とした式は、以下の通りである。
Prs=Gts+Grs+Pt−(Γ+Lf)
ここで、Prs:受信電波強度(dBm)、Gts:送信アンテナ利得(dB)、Grs:受信アンテナ利得(dB)、Pt:電波出力(dBm)、Γ:空間損失(dB)、Lf:送受信給電系損失(dB)である。
【0035】
(アンテナ保持部材の他の例)
図5は図1のアンテナ保持部材の他の例を示す図である。この無線通信装置130のアンテナ保持部材126に示すように、アンテナ保持部材は、アンテナ102A、102B、102Cを離間して保持できるものであればよく、ループ状でなくてもよい。
また、アンテナ保持部材の形状は、上述のようなストラップ104、114に限られない。アンテナ保持部材の材質は、アンテナ102A、102B、102Cを内蔵できるものであれば、布製、皮製、樹脂製などのいずれでもよい。
【0036】
図5に示すように、アンテナ保持部材126は、ストラップのように閉じている必要はない。このように閉じていない場合には、アンテナ保持部材126に包囲されている無線通信対象との無線通信が確立される。ここで「アンテナ保持部材に包囲されている」とは、無線通信対象の周囲に配置された複数のアンテナから送信されるプローブ要求信号をすべて受信可能な位置にあることを言う。具体的には、3つの円形領域124A、124B、124Cが重なる領域にある物は、アンテナ保持部材126によって包囲されている。かかる定義によれば、アンテナが2個であっても、アンテナ保持部材によって包囲される領域を特定できる。
【0037】
ただし、アンテナ保持部材の材質、幾何的形状、および、アンテナ102A、102B、102Cが配置されている位置に応じて、「包囲されている」という用語の定義は自由に定めてよい。
【0038】
(無線通信対象が存在しないと判定した場合の制御:その1)
図6は図1(a)の無線通信装置100と無線通信対象であるデジタルカメラ122Bとの位置関係の一例を示す模式図であり、図7は図6のケースにおける判定部110の有するテーブルの内容を示す図である。
【0039】
ストラップ104のループの形が略円形でなく、例えば図6(a)に示すように、略楕円形状になっている場合、ループ内に無線通信対象であるデジタルカメラ122Bがあっても、無線通信対象なし、と判定されてしまう場合がある。これは、図7(a)に示すように、デジタルカメラ122Bは、アンテナ102A、102Bからのプローブ要求信号に対しては応答「有」であるが、アンテナ102Cからのプローブ要求信号に対しては応答できず、「無」となるからである。
【0040】
制御部108は、図7(a)の結果から、ストラップ104のループ内にデジタルカメラ122Bが存在しないと判定部110が判定した場合、アンテナ102A、102B、102Cのプローブ要求信号の電波出力を上昇させる(Pt1からPt2へ上昇。Pt1<Pt2)。そして、制御部108は、上昇させた電波出力Pt2により、判定部110に判定を繰り返させる。
【0041】
これにより、図6(b)に示すように、プローブ要求信号が到達する円形領域124A、124B、124Cが拡大し、デジタルカメラ122Bがストラップ104のループ内に存在すると正しく判定されるからである(図7(b))。
【0042】
なお、制御部108は、電波出力を上昇させるときに、所定の上限値以下の範囲で上昇させるとよい。電波出力を際限無く上昇させてしまうと、ストラップ104のループ外に存在する無線通信対象をも、ループ内に存在すると判定してしまうためである。
【0043】
電波出力の上限値は、例えば以下のように決定する。例えば、電波出力の上限値を、電波を出力するアンテナを中心として、ストラップ104のループの周囲長の1/2まで届く電波出力とする。具体的には、例えば、ストラップ104が周囲長100cmの場合、各アンテナを中心として、半径50cmまで届く電波出力が上限値となる。アンテナと、ループ内の無線通信対象とが最も離れる距離は、ストラップ104が略直線状になるようにピンと張った状態での一端部から他端部までの距離50cmとなる。そのため、この距離を越えた場合は、無線通信対象がループ外となるためである。
【0044】
(無線通信対象が存在しないと判定した場合の制御:その2)
図8は図1(a)の無線通信装置100と無線通信対象であるデジタルカメラ122Bとの位置関係の一例を示す模式図である。
【0045】
図8の場合、無線通信対象であるデジタルカメラ122Bの位置は、図3に示した位置と同様であるから、判定部110は、ストラップ104のループ内に無線通信対象は存在しないと判定する。一旦このような判定がなされても、その後、ユーザが、ストラップ104のループ内に無線通信対象を入れる場合がある。そこで、制御部108は、判定部110に同様の判定を繰り返させる。ただし、新たな判定のタイミングまでの間隔を、直前の間隔より長くしてよい。
【0046】
これは、ストラップ104のループ内に無線通信対象が存在しないと判定された場合に再確認のための判定を頻繁に行うと、電力の消費量が大きくなるためである。
【0047】
(無線通信対象が存在すると判定した場合の制御)
図9は無線通信装置と無線通信対象であるデジタルカメラとの位置関係の一例を示す模式図であり、図10は図9のケースにおける判定部の有するテーブルの内容を示す図である。
【0048】
図9(a)、(b)の場合、判定部110は、ストラップ104のループ内に無線通信対象であるデジタルカメラ122Bが存在すると判定する。しかしこの判定は、ループ形状不良による誤判定である。そこで、このような誤判定を防止するために、制御部108は、無線通信部106が送信するプローブ要求信号の電波出力を所定の下限値以下まで低下させて判定部110に新たな判定を繰り返させる。そして、判定部110による判定が依然として覆らない場合、その判定を覆すこととしてもよい。
【0049】
これは、図9(a)に示すように、ループ形状が円形でない不良な形状になっているために、無線通信対象であるデジタルカメラ122Bがストラップ104のループ外にあるにも拘らず、ループ内にある、という誤った判定(図10(a))をしてしまう場合に、その誤りを正し、より正確な判定を行うための制御である。図10(b)に示すように、所定の下限値以下まで電波出力を低下させる(Pt1からPt3へ低下。Pt1>Pt3)。
【0050】
電波出力を低下させる目的は、ループ内の無線通信対象が、3個のアンテナ102A、102B、102Cからのプローブ要求信号に対して少なくとも1つのアンテナへの応答を不可能とすることである。例えば図9(c)に示すように、ループをほぼ円形に配置した場合に、ループの内部で3つの円形領域124A、124B、124Cが重なる部分がなくなるまで、電波出力を低下させる。具体的には、円形領域124A、124B、124Cの半径が、図9(c)のようにループを円形とした場合のループの半径に等しくなる電波出力を下限値とし、それ以下に電波出力を下げれば、3つの円形領域124A、124B、124Cが重なる部分がなくなる。
【0051】
かかる電波出力の低下を行ったにも拘らず、3個すべてのアンテナ102A、102B、102Cからのプローブ要求信号に対する応答が「有」となり、図10(b)のように無線通信対象あり、と依然として判定される場合について考察する。この場合は、図9(b)に示されている通り、正常でない形状のループの外に無線通信対象(デジタルカメラ122B)があると判定するのが妥当である。したがって、図10(b)に示すように、判定を覆す。これにより、ループ内の無線通信対象とだけ無線通信を確立することができる。
【0052】
(無線通信確立後の制御:その1)
図11は無線通信装置と無線通信対象との無線通信が確立した後の、位置関係の変化を示す模式図である。
【0053】
制御部108は、無線通信が確立された後、所定の時間間隔で判定部110に同様の判定を繰り返させる。これは、ユーザが、無線通信確立後に、ストラップ104のループ外に無線通信対象を出してしまう場合もあるからである。制御部108は、ストラップ104のループ内に無線通信対象が存在しないと判定部110が判定した場合、無線通信部106に無線通信を切断させてよい。このように、図11(a)のようにループ内に存在していた無線通信対象(デジタルカメラ122B)が、無線通信が確立された後に図11(b)のようにループ外へ出たら、無線通信を切断する。
【0054】
(無線通信確立後の制御:その2)
制御部108は、無線通信が確立された後、所定の時間間隔で判定部110に同様の判定を繰り返させる。制御部108は、ストラップ104のループ内に無線通信対象が存在しないと判定部110が判定した場合、無線通信部106に、単位時間あたりに送受信されるデータ量であるデータレートを落とさせてもよい。
【0055】
これは、図11(a)のようにストラップ104のループ内に存在していた無線通信対象(デジタルカメラ122B)が、無線通信が確立された後に図11(b)のようにループ外へ出ても、無線通信を維持する例である。データレートを落とすと、通信可能範囲が伸びる性質を利用したものである。
【0056】
(デジタルカメラ)
図2を用いて、デジタルカメラの内部構造を簡単に説明する。撮像部220は、被写体を撮像して複数のフレームから構成される画像を記憶媒体300に記憶させる撮像手段であり、例えばCCD(Charge Coupled Device; 電荷結合素子)を用いることができる。
【0057】
撮像部220は、撮像レンズ210によって結像された被写体の光像を、画素毎にR(赤)、G(緑)、B(青)の色成分の画像信号(各画素で受光された画素信号の信号列からなる信号)に光電変換して出力する。
【0058】
撮像部220から得られる画像信号(アナログ信号)は、アナログ信号処理回路230に与えられる。アナログ信号処理回路230は、画像信号に対して所定のアナログ信号処理を行う回路である。アナログ信号処理回路230は、少なくとも相関二重サンプリング回路(Correlated Double Sampling:CDS。図示省略)およびオートゲインコントロール(Auto Gain Controlled: AGC。図示省略)回路を含む。相関二重サンプリング回路によって画像信号のノイズ低減処理が行われ、オートゲインコントロール回路でゲイン調整することによって、画像信号のレベル調整が行われる。
【0059】
A/D変換器240は、画像信号の各画素信号を、例えば12ビットのデジタル信号に変換する。変換後のデジタル信号は、中央処理装置(CPU: Central Processing Unit)250に与えられ、画像データとして一時的にRAM(Random Access Memory)260に格納される。RAM260に保存された画像データは、画像処理部280によって色補正処理等を施された後、圧縮伸張部290による圧縮処理等が施される。
【0060】
圧縮された高解像度の動画像データは、記憶媒体300に記憶される。記憶媒体300には、例えばSDカードまたはマイクロSDカードを用いることができる。操作部320は、電源ボタン320A、各種の操作ボタン320B、シャッタレリーズボタン320C等を含み、ユーザがデジタルカメラ200の設定を変更操作する際や撮像操作を行う際等に用いられる。
【0061】
画像読出部232は、操作部320を操作することにより、記憶媒体300と無線通信装置100との間で画像データをやりとりする。
【0062】
図12は、デジタルカメラ200で撮影した画像データを無線通信対象に転送する際にLCD(Liquid Crystal Display)310に表示されるユーザインターフェースの一例を示す図である。図12(a)(b)は、無線通信が確立される前に予め画像を選択しておく場合のGUI(Graphical User Interface)である。図12(a)に示すように、ユーザの操作により、記憶媒体300に保存されている画像一覧から、転送する画像を選択し、画面内のOKボタンを押すと選択が完了する。無線通信が確立された後に、図12(b)に示すように、転送が開始される。
【0063】
図12(c)(d)は、無線通信が確立された後に画像を選択する場合のGUIである。図12(c)に示すように、無線通信が確立されると、その旨のメッセージが表示され、次に図12(d)に示すように、記憶媒体300に保存されている画像一覧が表示される。ユーザが転送する画像を選択し、OKボタンを押すと、画像の転送が開始される。
【0064】
電源208は、デジタルカメラ200に対する電力供給源である。これはリチウムイオン電池などの二次電池を用いることができる。
【0065】
CPU250は、RAM260およびROM(Read Only Memory)255に記録された所定のプログラムを実行することにより、上記各部を統括的に制御する。なお、RAM260は、高速アクセス可能な半導体メモリであり、ROM255は電気的に書き換えが不可能な不揮発の半導体メモリ(例えばフラッシュROM)として構成される。また、RAM260内における一部の領域は、一時記憶用のバッファエリアとして機能し、動画像データおよび音声データを一時的に記憶する。
【0066】
CPU250は、画像処理部280および圧縮伸張部290を有する。これら各処理部280、290は、マイクロコンピュータが所定のプログラムを実行することにより実現される機能部位である。
【0067】
画像処理部280は、WB(ホワイトバランス)処理、γ補正処理等の各種のデジタル画像処理を施す処理部である。WB処理は、R、G、Bの各色成分のレベル変換を行い、カラーバランスを調整する処理であり、γ補正処理は、画素データの階調を補正する処理である。圧縮伸張部290は、画像処理部280によって色補正処理等が行われた画像データを、さらに圧縮する。圧縮方式としては、例えばJPEG方式などが採用される。
【0068】
記憶媒体300に対する動画像データの読み書き時には、圧縮伸張部290において、例えばJPEG形式で動画像データの圧縮処理が行われ、動画像データがRAM260と記憶媒体との間で送受信される。また、音声データの読み書き時においても、音声データがRAM260と記憶媒体との間で送受信される。
【0069】
さらに、CPU250は、画像および音声等のデータを送受信するだけではなく、デジタルカメラ200で動作するプログラムを取り込むことも可能である。例えば、記憶媒体に記録されている制御プログラムを、RAM260またはROM255内に取り込むことができる。これにより、制御プログラムを更新することも可能である。
【0070】
(無線通信方法)
図13は図1(a)の無線通信装置が行う、本実施形態にかかる無線通信方法の一例を示すフローチャートである。本フローチャートのプログラムは、RAM260またはROM255内に記録されている。
【0071】
目的の無線通信対象(アクセスポイント122A、デジタルカメラ122B)とデジタルカメラ200との無線通信を確立させるときは、まず、無線通信対象をストラップ104のループの中に入れ、デジタルカメラ200の操作部320によって、無線通信を開始する操作を行う。
【0072】
稼動中の無線通信対象は、一定の周期でビーコン信号を発信している。ステップS400において、アンテナ102A、102B、102Cでビーコン信号を受信して無線通信部106で信号パケットを解析することで、接続可能な無線通信対象の情報「アクセスポイント122A」や「デジタルカメラ122B」を認識する。これら、信号パケットから得られた情報は、判定部110のテーブル(図4)に保持される。本実施形態のように、複数の無線通信対象を認識することもありうるが、この時点においては、どの無線通信対象がストラップ104のループ内にあるかは不明である。
【0073】
次に、ステップS410において、判定部110のテーブルに保持された情報に基づき、各無線通信対象に対して位置調査を行い、ストラップ104のループ内にいずれかの無線通信対象が存在するか否かを、判定部110によって判定する。具体的には、図3に示すような、ストラップ104のループ内に存在する無線通信対象に届くのに十分な電波出力で、プローブ要求信号を各アンテナ102A、102B、102Cから送信する。これに対し、プローブ応答信号が3個のアンテナ102A、102B、102Cすべてに返ってきた無線通信対象は、ループ内にあると判定する。
【0074】
ループ内に無線通信対象がない場合には、ステップS412にて、条件変更(電波出力を上昇させる図6に示した制御、あるいは、図8に関して説明した判定タイミングの間隔を長くする制御)を行い、ステップS400に戻る。
【0075】
ループ内に無線通信対象がある場合であっても、ステップS420にて、図9を用いて説明した、ループ形状不良による誤判定か否かを確かめる。誤判定と判定した場合には、再びステップS400に戻る。誤判定でないと判定した場合には、ステップS430に進み、アンテナ102A、102B、102Cのうち1つ以上を用いて、デジタルカメラ200と無線通信対象との無線通信を確立する。具体的には、無線通信対象の認証とアソシエーション確立とを行う。これらはIEEE802.11のプロトコルに従う。
【0076】
無線通信が確立されたらステップS440にて画像データの相互転送を行い、ステップS450にて、再び、ストラップ104のループ内に、無線通信中の無線通信対象が存在するか否かを判定する。判定の方法はステップS410と同様でよい。
【0077】
その結果、無線通信中の無線通信対象が依然として存在すると判定すれば、ステップS440に戻り、画像データ転送を継続可能である。一方、図11のように無線通信中の無線通信対象がループから出た場合には、ステップS460において、かかる場合の制御方法がどのように設定されているか、すなわち無線通信を続行するか否かを確認する。続行する場合にはステップS470にてデータレートを低減し、続行しない場合にはステップS480にて無線通信を切断する。
【0078】
なお、本明細書の無線通信方法における各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【0079】
本実施形態によれば、アンテナ保持部材に包囲されている無線通信対象との無線通信が確立されるため、ワイヤレスでありながら、電子機器と無線通信を確立させたい無線通信対象を、特定することが可能である。
【0080】
本実施形態によれば、ループ内の無線通信対象との無線通信が確立されるため、目的の無線通信対象がより明確になる。
【0081】
本実施形態によれば、すべてのアンテナから、ループ内に到達可能な等しい電波出力の通信要求電波を送信すれば、ループ内に存在する無線通信対象は、すべてのアンテナからの通信要求電波に対して応答することとなる。これによって、判定部は、当該無線通信対象がループ内に存在することを判定できる。
【0082】
本実施形態によれば、無線通信対象がループ内に存在するか否かの判定の信頼度を向上させることができる。
【0083】
本実施形態によれば、ループ内に無線通信対象が存在しないと判定された場合に、再確認のための判定による電力の消費量が大きくなることを、防ぐことができる。
【0084】
本実施形態によれば、無線通信対象が存在するか否かの判定の信頼度を向上させることができる。
【0085】
本実施形態によれば、ループ内に存在していた無線通信対象がループ外へ出ても、無線通信を維持するという方針に基づく制御がなされる。データレートを落とすと、通信可能範囲が伸びる性質を利用したものである。
【0086】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されるものではない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、無線通信装置および無線通信方法に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施形態にかかる無線通信装置の外観を示す図である。
【図2】無線通信装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図3】無線通信装置による無線通信確立の方法を示す模式図である。
【図4】判定部が有する判定結果をまとめたテーブルである。
【図5】アンテナ保持部材の他の例を示す図である。
【図6】無線通信装置と無線通信対象であるデジタルカメラとの位置関係の一例を示す模式図である。
【図7】図6のケースにおける判定部の有するテーブルの内容を示す図である。
【図8】無線通信装置と無線通信対象であるデジタルカメラとの位置関係の一例を示す模式図である。
【図9】無線通信装置と無線通信対象であるデジタルカメラとの位置関係の一例を示す模式図である。
【図10】図9のケースにおける判定部の有するテーブルの内容を示す図である。
【図11】無線通信装置と無線通信対象との無線通信が確立した後の、位置関係の変化を示す模式図である。
【図12】デジタルカメラで撮影した画像データを無線通信対象に転送する際のユーザインターフェースの一例を示す図である。
【図13】無線通信装置が行う、本実施形態にかかる無線通信方法の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0089】
100、120 …無線通信装置
102A、102B、102C …アンテナ
104、114 …ストラップ
106 …無線通信部
108 …制御部
110 …判定部
112 …中継部材
126 …アンテナ保持部材
200 …デジタルカメラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナをそれぞれ離間した状態で保持するアンテナ保持部材と、
電子機器と前記複数のアンテナとの間に、前記アンテナ保持部材を通して接続され、該電子機器と無線通信対象との無線通信を確立する無線通信部と、
前記アンテナ保持部材に包囲された無線通信対象が存在するか否かを判定する判定部と、
前記包囲された無線通信対象が存在すると前記判定部が判定した場合、前記複数のアンテナのうち1つ以上を用いて、該無線通信対象と前記電子機器との無線通信を前記無線通信部に確立させる制御部と、
を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記アンテナ保持部材はループ状であり、
前記複数のアンテナは、前記ループの周長を前記アンテナの個数で実質的に等分割する位置に配置され、
前記判定部は、前記ループ内に無線通信対象が存在するか否かを判定することを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の無線通信装置において、
前記判定部は、前記無線通信部から、前記複数のアンテナを介して送信される、該アンテナを中心とした所定の半径内に到達可能な電波出力を有する通信要求電波に対する応答の有無に基づいて、前記ループ内に無線通信対象が存在するか否かを判定することを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
請求項3に記載の無線通信装置において、
前記制御部は、前記ループ内に無線通信対象が存在しないと前記判定部が判定した場合、前記通信要求電波の電波出力を上昇させ、前記判定部に新たな判定を繰り返させることを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
請求項4に記載の無線通信装置において、
前記制御部は、前記電波出力を、前記ループの周囲長の1/2を前記所定の半径とする上限値以下の範囲で上昇させることを特徴とする無線通信装置。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか1項に記載の無線通信装置において、
前記制御部は、前記ループ内に無線通信対象が存在しないと前記判定部が判定した場合、該判定部に新たな判定を繰り返させ、該新たな判定のタイミングまでの間隔を、直前の間隔より長くすることを特徴とする無線通信装置。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1項に記載の無線通信装置において、
前記ループ内に無線通信対象が存在すると前記判定部が判定した場合、前記制御部は、前記無線通信部が送信する前記通信要求電波の電波出力を、前記ループを円形とした場合の半径を前記所定の半径とする下限値以下まで低下させて前記判定部に新たな判定を繰り返させ、前記判定が依然として覆らない場合、該判定を覆すことを特徴とする無線通信装置。
【請求項8】
請求項3から7のいずれか1項に記載の無線通信装置において、
前記制御部は、前記無線通信が確立された後、前記判定部に新たな判定を繰り返させ、前記ループ内に無線通信対象が存在しないと前記判定部が判定した場合、前記無線通信部に前記無線通信を切断させることを特徴とする無線通信装置。
【請求項9】
請求項3から7のいずれか1項に記載の無線通信装置において、
前記制御部は、前記無線通信が確立された後、前記判定部に新たな判定を繰り返させ、前記ループ内に無線通信対象が存在しないと前記判定部が判定した場合、前記無線通信部に、単位時間あたりに送受信されるデータ量であるデータレートを落とさせることを特徴とする無線通信装置。
【請求項10】
電子機器に接続され、複数のアンテナをそれぞれ離間した状態で保持するアンテナ保持部材に包囲された無線通信対象が存在するか否かを判定し、
前記包囲された無線通信対象が存在すると判定した場合、前記複数のアンテナのうち1つ以上を用いて、該無線通信対象と前記電子機器との無線通信を確立することを特徴とする無線通信方法。
【請求項1】
複数のアンテナをそれぞれ離間した状態で保持するアンテナ保持部材と、
電子機器と前記複数のアンテナとの間に、前記アンテナ保持部材を通して接続され、該電子機器と無線通信対象との無線通信を確立する無線通信部と、
前記アンテナ保持部材に包囲された無線通信対象が存在するか否かを判定する判定部と、
前記包囲された無線通信対象が存在すると前記判定部が判定した場合、前記複数のアンテナのうち1つ以上を用いて、該無線通信対象と前記電子機器との無線通信を前記無線通信部に確立させる制御部と、
を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記アンテナ保持部材はループ状であり、
前記複数のアンテナは、前記ループの周長を前記アンテナの個数で実質的に等分割する位置に配置され、
前記判定部は、前記ループ内に無線通信対象が存在するか否かを判定することを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の無線通信装置において、
前記判定部は、前記無線通信部から、前記複数のアンテナを介して送信される、該アンテナを中心とした所定の半径内に到達可能な電波出力を有する通信要求電波に対する応答の有無に基づいて、前記ループ内に無線通信対象が存在するか否かを判定することを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
請求項3に記載の無線通信装置において、
前記制御部は、前記ループ内に無線通信対象が存在しないと前記判定部が判定した場合、前記通信要求電波の電波出力を上昇させ、前記判定部に新たな判定を繰り返させることを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
請求項4に記載の無線通信装置において、
前記制御部は、前記電波出力を、前記ループの周囲長の1/2を前記所定の半径とする上限値以下の範囲で上昇させることを特徴とする無線通信装置。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか1項に記載の無線通信装置において、
前記制御部は、前記ループ内に無線通信対象が存在しないと前記判定部が判定した場合、該判定部に新たな判定を繰り返させ、該新たな判定のタイミングまでの間隔を、直前の間隔より長くすることを特徴とする無線通信装置。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1項に記載の無線通信装置において、
前記ループ内に無線通信対象が存在すると前記判定部が判定した場合、前記制御部は、前記無線通信部が送信する前記通信要求電波の電波出力を、前記ループを円形とした場合の半径を前記所定の半径とする下限値以下まで低下させて前記判定部に新たな判定を繰り返させ、前記判定が依然として覆らない場合、該判定を覆すことを特徴とする無線通信装置。
【請求項8】
請求項3から7のいずれか1項に記載の無線通信装置において、
前記制御部は、前記無線通信が確立された後、前記判定部に新たな判定を繰り返させ、前記ループ内に無線通信対象が存在しないと前記判定部が判定した場合、前記無線通信部に前記無線通信を切断させることを特徴とする無線通信装置。
【請求項9】
請求項3から7のいずれか1項に記載の無線通信装置において、
前記制御部は、前記無線通信が確立された後、前記判定部に新たな判定を繰り返させ、前記ループ内に無線通信対象が存在しないと前記判定部が判定した場合、前記無線通信部に、単位時間あたりに送受信されるデータ量であるデータレートを落とさせることを特徴とする無線通信装置。
【請求項10】
電子機器に接続され、複数のアンテナをそれぞれ離間した状態で保持するアンテナ保持部材に包囲された無線通信対象が存在するか否かを判定し、
前記包囲された無線通信対象が存在すると判定した場合、前記複数のアンテナのうち1つ以上を用いて、該無線通信対象と前記電子機器との無線通信を確立することを特徴とする無線通信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−124271(P2010−124271A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296367(P2008−296367)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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