説明

無線通信装置及び無線通信システム

【課題】ランダム送信と定期送信を行う2種類の通信装置が混在する無線通信システムにおいて、各装置の通信期間を分離して、定期送信を行う通信装置が確実にデータ送信できるようにする。
【解決手段】同一の通信チャンネルを利用してデータの送受信を行う無線通信システムにおいて、ランダム送信を行う通信装置2Bは、定期送信を行う通信装置2Aから定期送信期間を表す定期送信情報と送信時刻を含む送信データを受信し、この受信した送信時刻と受信時刻に基づき、通信装置2Bは、自身の時計の時刻を補正することによって時刻同期を行う。そして、受信した定期送信情報から得られる定期送信期間の前後に時刻同期の誤差に対応したガードタイムGを加えて、ランダム送信の実行を禁止するランダム送信禁止期間を設定する。これにより、時刻同期の精度が低い場合に、定期送信とランダム送信とが重なり、データ衝突が発生するのを、より確実に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共通の通信チャンネルを利用して無線通信を行う通信装置として、定期送信機能を有する通信装置とランダム送信機能を有する通信装置とからなる複数の通信装置を備えた無線通信システム、及び、このシステムを構成するのに好適な通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の通信装置が同一の通信チャンネルを利用して相互に無線通信を行う無線通信システムとして、各通信装置が、送信要求の発生時に、キャリアセンスによって通信チャンネルの空き状態を検出するアクセス制御を行い、このアクセス制御によって通信チャンネルの空き状態を検出するとデータ送信を開始する、CSMA方式の無線通信システムが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
また、こうしたCSMA方式の無線通信システムでは、複数の通信装置がランダムにデータ送信を行うことから、例えば、自動車の安全運転支援システムでの無線通信に適用すると、路上機から車載機へ重要性の高い情報を送信しようとしても、路上機が通信チャンネルで送信権を取得するのに時間がかかり、重要情報を周囲の車両に送信できないことがある。
【0004】
そこで、従来、CSMA方式の無線通信システムにおいては、重要性の高い情報を送信する通信装置が、TDMA等による通信方式で重要データを定期的に送信できるようにすることも提案されている。
【0005】
つまり、例えば、任意の通信装置が、他の通信装置に対してTDMA通信の開始を宣言することにより、TDMA通信の制御局として動作して、各通信装置の送信時間(期間)を割り当て、その後、他の通信装置からの送信がなくなると、CSMA方式の通信に戻るようにするとか(例えば、特許文献2等参照)、各通信装置が、自らの送信時刻を自律的に決定して、他の通信装置に通知することで、各通信装置が周期的にデータ送信できるようにする(例えば特許文献3等参照)、といったことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−196597号公報
【特許文献2】特開2002−112345号公報
【特許文献3】特開2007−235445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記提案の無線通信システムのうち、前者のシステムでは、全ての通信装置がTDMA方式の無線通信に切り変わることから、通信装置が多くなると全通信装置に送信時間を割り当てることができなくなって、無線通信システムとして破綻するという問題がある。
【0008】
また、後者の無線通信システムでは、各通信装置が他の通信装置に送信時刻を通知することにより、定期送信するタイミングで通信チャンネルが空き状態となるようにするが、各通信装置は、重要な送信要求が発生した際には、CSMA方式の通信を開始することから、各通信装置が定期的な送信機会を確実に確保することはできないという問題がある。
【0009】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、ランダム送信を行う通信装置と定期送信を行う通信装置との2種類の通信装置が混在する無線通信装置及び無線通信システムにおいて、定期送信による通信とランダム送信による通信とを時間的に分離し、定期送信を行う通信装置が重要データを確実に送信できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の無線通信装置においては、データの送信要求が発生した際、通信チャンネルが空いているか否かを判定して、前記通信チャンネルが空いているときに無線によりランダム送信を行う無線通信装置において、予め決められた定期送信一周期内に割り当てられた期間を利用してデータの定期送信を行う外部の通信装置から、前記通信チャンネルを利用して送信される定期送信期間を表す定期送信情報と送信時刻を含む送信データを受信可能な受信手段と、受信手段より受信した送信時刻と受信時刻に基づき自身の時計の時刻を補正することによって時刻同期を行う同期制御手段と、受信手段より受信した定期送信情報から得られる定期送信期間の前後に時刻同期の誤差に対応したガードタイムを加えて、ランダム送信の実行を禁止するランダム送信禁止期間を設定する期間設定手段とを有することを特徴とする。
【0011】
ここで、本無線通信装置に設けられた時計の時刻にずれが生じると、定期送信期間とランダム送信禁止期間とが同期しなくなって、本無線通信装置と外部の通信装置の送信期間を時間分離することができない。そこで、本発明の無線通信装置には、受信した送信時刻と受信時刻に基づき自身の時計の時刻を補正することによって時刻同期を行う同期制御手段が設けられている。
【0012】
このため、本発明(請求項1)によれば、データの定期送信を行う外部の通信装置の定期送信期間を確保して、定期送信による重要データの定期送信を優先的に実行できるようになる。そして、外部の通信装置がデータの定期送信を行う定期送信期間中に、無線通信装置によるランダム送信を禁止することから、全通信装置に送信時間を割り当てるTDMA方式の無線通信システムのように、各通信装置に設けられた時計の時刻を高精度に同期させる必要はなく、その時刻同期の精度が低くてもデータ衝突が発生し難い無線通信システムを実現できる。
【0013】
特に本発明(請求項1)では、受信した定期送信情報から得られる定期送信期間の前後に時刻同期の誤差に対応したガードタイムを加えて、ランダム送信の実行を禁止するランダム送信禁止期間を設定する期間設定手段を有しているので、同期制御手段による時刻同期の精度が低い場合に、定期送信とランダム送信とが重なり、データ衝突が発生するのを、より確実に防止することができるようになる。
【0014】
ところで、本発明(請求項1)のように、受信した定期送信情報から得られる定期送信期間の前後に時刻同期の誤差に対応したガードタイムを加えたとしても、外部の通信装置及び本無線通信装置が定期送信或いはランダム送信を許可された期間中にパケットの送信を開始し、そのパケットの送信期間中に、ガードタイムから、他方の通信装置の送信期間に移行することも考えられる。
【0015】
そこで、このような問題を防止するには、請求項3、5若しくは請求項4、6に記載のように構成するとよい。
【0016】
すなわち、請求項3に記載の無線通信装置のように、請求項1おいて、定期送信期間の直前に、更に、ランダム送信による送信データ1パケット分の送信時間に対応した第1時間を設定するようする。
【0017】
また、請求項5に記載の無線通信装置のように、請求項3おいて、第1時間を設定する第1時間設定手段を備え、期間設定手段が、ランダム送信禁止期間を設定する際に、定期送信期間の直前に第1時間設定手段にて設定された第1時間を加えることとする。
【0018】
このため、請求項3、5によれば、本無線通信装置がランダム送信によるデータ送信を実行しているときに、ランダム送信禁止期間に入ることのないよう、ガードタイムを設定することができ、本無線通信装置によるランダム送信と外部の通信装置による定期送信とが重なるのをより確実に防止できる。
【0019】
また、請求項4に記載の無線通信装置のように、請求項1または3において、定期送信期間の直後に、更に、定期送信による送信データ1パケット分の送信時間に対応した第2時間を設定するようにする。
【0020】
そして、請求項6に記載の無線通信装置のように、請求項4において、第2時間を設定する第2時間設定手段を備え、期間設定手段が、ランダム送信禁止期間を設定する際に、定期送信期間の直後に第2時間設定手段にて設定された第2時間を加えることとする。
【0021】
このため、請求項4、6によれば、外部の通信装置が定期送信によるデータ送信を実行しているときに、ランダム送信禁止期間が終了することのないよう、ガードタイムを設定することができ、外部の通信装置による定期送信と本無線通信装置によるランダム送信とが重なるのをより確実に防止できる。
【0022】
また次に、請求項7に記載のように、請求項3または5において、ランダム送信禁止期間は外部の通信装置が定期送信を行う一周期内の特定期間として設定するよう構成されており、定期送信期間にガードタイムと第1時間を付加することにより導出される一つのランダム送信禁止期間が定期送信一周期の区切りを跨るときには、当該ランダム送信禁止期間を、定期送信一周期の区切りで分割した2つのランダム送信禁止期間として設定するようにするとよい。
【0023】
つまり、ランダム送信禁止期間をこのように設定するようにすれば、本無線通信装置で、定期送信の一周期毎に、ランダム送信によるデータ送信の禁止・許可を切り換えることができるようになり、延いては、そのための回路構成を簡単にして本無線通信装置を小型化できるようになる。
【0024】
次に、請求項2に記載の無線通信システムにおいては、所定の通信チャンネルを利用して、予め決められた定期送信一周期内に割り当てられた期間を利用して無線送信を行う定期送信機能を有し、定期送信期間を表す定期送信情報と送信時刻を含む送信データの定期送信を行う第1通信装置と、データの送信要求が発生した際、前記通信チャンネルが空いているか否かを判定して、前記通信チャンネルが空いているときに無線によりランダム送信を行うランダム送信機能を有する通信装置であって、第1通信装置からの送信データを受信する受信手段と、受信手段より受信した送信時刻と受信時刻に基づき自身の時計の時刻を補正することによって時刻同期を行う同期制御手段と、受信手段より受信した定期送信情報から得られる定期送信期間の前後に時刻同期の誤差に対応したガードタイムを加えて、ランダム送信の実行を禁止するランダム送信禁止期間を設定する設定手段とを備える第2通信装置とを有することを特徴とする。
【0025】
ここで、第2通信装置に設けられた時計の時刻にずれが生じると、定期送信期間とランダム送信禁止期間とが同期しなくなって、各通信装置の送信期間を時間分離することができない。そこで、本発明の無線通信システムにおける第2通信装置には、受信した送信時刻と受信時刻に基づき自身の時計の時刻を補正することによって時刻同期を行う同期制御手段が設けられている。
【0026】
このため、本発明(請求項2)によれば、送信データの定期送信を行う第1通信装置の定期送信期間を確保して、定期送信による重要データの定期送信を優先的に実行できるようになる。そして、第1通信装置が送信データの定期送信を行う定期送信期間中に、第2通信装置によるランダム送信を禁止することから、全通信装置に送信時間を割り当てるTDMA方式の無線通信システムのように、各通信装置に設けられた時計の時刻を高精度に同期させる必要はなく、その時刻同期の精度が低くてもデータ衝突が発生し難い無線通信システムを実現できる。
【0027】
特に本発明(請求項2)では、第2通信装置が、受信した定期送信情報から得られる定期送信期間の前後に時刻同期の誤差に対応したガードタイムを加えて、ランダム送信の実行を禁止するランダム送信禁止期間を設定する設定手段を有しているので、同期制御手段による時刻同期の精度が低い場合に、定期送信とランダム送信とが重なり、データ衝突が発生するのを、より確実に防止することができるようになる。
【0028】
ところで、本発明(請求項2)のように、第2通信装置において、受信した定期送信情報から得られる定期送信期間の前後に時刻同期の誤差に対応したガードタイムを加えたとしても、第1通信装置及び第2通信装置が定期送信或いはランダム送信を許可された期間中にパケットの送信を開始し、そのパケットの送信期間中に、ガードタイムから、他方の通信装置の送信期間に移行することも考えられる。
【0029】
そこで、このような問題を防止するには、請求項8、10若しくは請求項9、11に記載のように構成するとよい。
【0030】
すなわち、請求項8に記載の無線通信装置のように、請求項2おいて、定期送信期間の直前に、更に、第2通信装置の前記ランダム送信による送信データ1パケット分の送信時間に対応した第1時間を設定するようにする。
【0031】
また、請求項10に記載の無線通信装置のように、請求項2、8、9の何れか一つおいて、第1通信装置は、第2通信装置が実行するランダム送信による送信データ1パケット分の送信時間に対応した時間を設定する第1時間設定手段を備え、定期送信期間を設定する際に、定期送信期間から第1時間設定手段にて設定された時間を減じることで、送信データの出力を許可する定期送信期間を決定することとする。
【0032】
このため、請求項8、10によれば、第2通信装置がランダム送信によるデータ送信を実行しているときに、ランダム送信禁止期間に入ることのないよう、ガードタイムを設定することができ、第2通信装置によるランダム送信と第1通信装置による定期送信とが重なるのをより確実に防止できる。
【0033】
また、請求項9に記載の無線通信装置のように、請求項2または8において、定期送信期間の直後に、更に、第1通信装置の定期送信による送信データ1パケット分の送信時間に対応した第2時間を設定するようにする。
【0034】
そして、請求項11に記載の無線通信装置のように、請求項2、8乃至10の何れか一つにおいて、第1通信装置は、自身の定期送信による送信データの1パケット分の送信時間に対応した時間を設定する第2時間設定手段を備え、定期送信期間から第2時間設定手段にて設定された時間を減じることで、送信データの出力を許可する定期送信期間を決定することとする。
【0035】
このため、請求項9、11によれば、第1通信装置が定期送信によるデータ送信を実行しているときに、ランダム送信禁止期間が終了することのないよう、ガードタイムを設定することができ、第1通信装置による定期送信と第2通信装置によるランダム送信とが重なるのをより確実に防止できる。
【0036】
また次に、請求項12に記載のように、請求項8または10において、ランダム送信禁止期間は第1通信装置が定期送信を行う一周期内の特定期間として設定するよう構成されており、定期送信期間にガードタイムと第1時間を付加することにより導出される一つのランダム送信禁止期間が定期送信一周期の区切りを跨るときには、当該ランダム送信禁止期間を、定期送信一周期の区切りで分割した2つのランダム送信禁止期間として設定するようにするとよい。
【0037】
つまり、ランダム送信禁止期間をこのように設定するようにすれば、第2通信装置側で、定期送信の一周期毎に、ランダム送信によるデータ送信の禁止・許可を切り換えることができるようになり、延いては、そのための回路構成を簡単にして第2通信装置を小型化できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施形態の無線通信システムの構成及び動作の概要を表す説明図である。
【図2】実施形態の通信装置の構成を表すブロック図である。
【図3】時刻同期ずれを考慮したガードタイムGを表す説明図である。
【図4】データ送受信に要する時間を考慮したガードタイムA、Bを表す説明図である。
【図5】ランダム送信禁止期間の分割動作を説明する説明図である。
【図6】通信装置を定期送信用として使用する際に動作する機能ブロックを表す説明図である。
【図7】通信装置をランダム送信用として使用する際に動作する機能ブロックを表す説明図である。
【図8】定期送信情報転送処理を表すフローチャートである。
【図9】定期送信情報更新・時刻同期処理及び時計の時刻補正動作を表すフローチャートである。
【図10】非同期設定処理を表すフローチャートである。
【図11】定期送信情報転送処理により更新される転送回数の変化を表す説明図である。
【図12】時計の時刻補正に用いられるオフセット量を表す説明図である。
【図13】時計の時刻補正に伴う補正用レジスタの変化を表す説明図である。
【図14】非同期設定処理により更新される転送回数の変化を表す説明図である。
【図15】定期送信用の通信装置が複数存在する場合にランダム送信用の通信装置で生成される定期送信期間テーブルの一例を表す説明図である。
【図16】変形例1の通信装置の構成を表すブロック図である。
【図17】変形例1におけるランダム送信禁止期間の分割動作を説明する説明図である。
【図18】変形例2における定期送信期間の同期動作を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
【0040】
[実施形態]
(無線通信システムの概要)
図1は、本発明が適用された実施形態の無線通信システムの構成及び動作の概要を表す説明図である。
【0041】
図1(a)に示すように、本実施形態の無線通信システムは、路上機として自動車の走行路付近に分散して設置される複数の通信装置2Aと、自動車に搭載され、路上機や他の車両との間で無線通信を行う通信装置2B、2C、・・・と、から構成されている。
【0042】
通信装置2Aは、交通情報等の各種情報を周囲の自動車に定期的に送信する定期送信機能を有し、通信装置2B、2C・・・は、自動車に搭載された制御装置からの送信要求を受けて、自車両の状態等を路上機や他の車両に送信するランダム送信機能を有する。
【0043】
そして、これら各通信装置2A、2B、2C、・・・間の通信には、全て共通の通信チャンネルが使用され、通信装置2B、2C、・・・がランダム送信する際には、CSMA方式のアクセス制御によって通信チャンネルが空いているか否かを判断し、通信チャンネルが空いているときにデータ送信を開始する。
【0044】
また、通信装置2Aは、定期送信を行うが、この定期送信の周期は、予め決められており、通信装置2Aには、定期送信一周期内のどの期間を定期送信に利用するかが割り当てられている。
【0045】
そして、通信装置2Aは、その割り当てられた定期送信期間を、定期送信によって他の通信装置2B、2C、・・・に通知し、他の通信装置2B、2C、・・・は、その通知された定期送信期間中は、ランダム送信を禁止する。
【0046】
つまり、本実施形態では、定期送信機能を有する通信装置2Aが、図1(b)に示すように、定期送信期間の開始タイミングと定期送信期間の長さ(期間長)を表す定期送信期間情報に、通信装置2Aの識別情報である装置IDと後述の転送回数を付与した定期送信情報を、単独或いは他の送信データに付与して、周囲に定期送信する。
【0047】
そして、ランダム送信機能を有する他の通信装置2B、2C、・・・は、通信装置2Aが送信した定期送信情報を受けると、その定期送信情報に基づき、図1(c)に示すように、通信装置2Aの定期送信期間内にランダム送信を開始してしまうことのないよう自らのランダム送信禁止期間を設定し、そのランダム送信禁止期間以外の期間(ランダム送信期間)内に、ランダム送信を行う。
【0048】
また、図1(a)に示すように、通信装置2Bが、通信装置2Aからの送信電波が届くエリア(図に斜線で示す領域)内に位置し、通信装置2Cがそのエリア外に位置する場合、通信装置2Cには通信装置2Aから送信された定期送信情報が届かず、通信装置2Cが通信装置2Aの定期送信期間内にランダム送信を開始し、通信装置2B側では、通信装置2A、2Cからの送信電波が同時に届き、それぞれの送信データを受信できなくなることが考えられる。
【0049】
そこで、本実施形態では、通信装置2B、2C、・・・が定期送信情報を受信したときには、その定期送信情報を再送信することにより、通信装置2Aから離れた他の通信装置に定期送信情報を通知するようにされている。
【0050】
そして、各通信装置2B、2C、・・・が他の通信装置に定期送信情報を再送信する際には、定期送信情報に付与された転送回数を更新(+1)することで、定期送信情報を受信した通信装置側で、その定期送信情報が、通信装置2Aが最初に送信してから何度目の転送で届いたのかを識別できるようにされている。
【0051】
また、通信装置2B、2C、・・・側で、定期送信情報に基づきランダム送信禁止期間を設定するには、通信装置2A側で認識されている定期送信の周期と、通信装置2B、2C、・・・側で認識されている定期送信の周期とを一致させる必要がある。
【0052】
そこで、本実施形態では、通信装置2Aが定期送信情報を送信するときや、通信装置2B、2C、・・・が定期送信情報を転送するときには、その送信時刻を自らの時計から読み出して定期送信情報に付与し、定期送信情報を受信した通信装置2B、2C、・・・側では、定期送信情報に付与されている送信時刻と、自らの時計から読み出した受信時刻とを比較することで、時計の時刻を、定期送信情報を送信してきた通信装置2A、2B、・・・側の時刻と同期させる。
【0053】
つまり、例えば、図1(a)において、通信装置2Aから送信された定期送信情報は通信装置2Bに届き、通信装置2Bは、その定期送信情報を通信装置2Cに転送することになるが、通信装置2B、2Cが定期送信情報を受信した際に、自らの時計の時刻を、定期送信情報を送信してきた通信装置2A、2Bの時計と同期させることで、定期送信情報を受信した各通信装置2B、2C、・・・の時計が、全て、通信装置2Aの時計と同一時刻となるように時刻同期させるのである。
【0054】
この結果、各通信装置2A、2B、2C、・・・は、自らの時計を用いて、定期送信の一周期を同タイミングで検知できるようになる。
【0055】
(通信装置の構成)
次に、図2は、上述した本実施形態の無線通信システムを構築するのに用いられる通信装置2の構成を表すブロック図である。
【0056】
図2に示す通信装置2は、定期送信機能とランダム送信機能との両方の機能を有し、路上機としての通信装置2Aにも、車載機としての通信装置2B、2C、・・・にも使用できるものである。
【0057】
図2に示すように、通信装置2には、外部の制御装置から入力される送信データにヘッダ等の付加情報を付与して出力するデータ送信部12と、データ送信部12から出力された送信データを所定の通信チャンネルでの送信信号(高周波信号)に変換して通信アンテナ(図示せず)に出力する変調処理部14と、通信アンテナにて受信された受信信号を取り込み、他の通信装置からの送信データを復元する復調処理部16と、復調処理部16にて復元された受信データからヘッダ等の付加情報を抽出し、受信データが当該通信装置2に向けて送信されたものであれば受信データを外部の制御装置に出力するデータ受信部18と、が設けられている。
【0058】
また、通信装置2には、通信装置2が定期送信を行う際に設定される定期送信情報、若しくは、通信装置2がランダム送信を行う際に他の通信装置から取得した定期送信情報を記憶するための定期送信期間テーブル(具体的にはメモリ)20、当該通信装置2が定期送信を行う際に実際にデータ送信を行う定期送信期間を、定期送信期間テーブル20内の定期送信情報(通信装置自身の定期送信期間情報)に基づき決定し、データ送信部12に出力する定期送信期間決定部30と、当該通信装置2がランダム送信を行う際にランダム送信を禁止する期間(ランダム送信禁止期間)を、定期送信期間テーブル20内の定期送信情報(他の通信装置から取得した定期送信期間情報)に基づき決定し、データ送信部12に出力するランダム送信禁止期間決定部40と、が設けられている。
【0059】
そして、データ送信部12は、定期送信期間決定部30から定期送信期間情報が入力されると、その情報に対応した定期送信期間だけ、送信データの定期送信が可能となり、ランダム送信禁止期間決定部40からランダム送信禁止期間情報が入力されると、その情報に対応したランダム送信禁止期間だけ、送信データのランダム送信を禁止する。
【0060】
また、通信装置2には、内部クロックをカウントすることにより時刻を計時する時計4が設けられており、データ送信部12は、この時計4による計時時刻に基づき、定期送信の周期、及び、その周期内の定期送信期間或いはランダム送信禁止期間を検知し、定期送信或いはランダム送信を制御する。
【0061】
また、時計4には、時計4による計時時刻(詳しくはカウント値)が、定期送信一周期分のカウント値の所定の整数値倍になった時点で、時計4をリセットして、そのカウント値を初期化する、タイマリセット部6が接続されている。
【0062】
なお、このタイマリセット部6は、基準となる絶対時刻を表す外部信号を入力できるようにされており、タイマリセット部6は、外部信号が入力されているときには、この外部信号から得られる基準時刻で時計4をリセットすることにより、同じ外部信号が入力される他の通信装置との間で、時計4を時刻同期させる。
【0063】
(ガードタイムの設定)
次に、通信装置2には、時計4の他の通信装置との同期精度を表す同期精度情報に基づき、定期送信期間とランダム送信期間との間に設けるガードタイムGを決定するガードタイム決定部22が設けられている。
【0064】
つまり、通信装置2の時計4と他の通信装置の時計は、後述の時刻同期処理によって時刻同期されるが、その時刻同期処理では各時計の時刻を完全に一致させることができず、誤差が生じる。
【0065】
そこで、本実施形態では、時刻同期による誤差があっても、定期送信期間とランダム送信禁止期間とが重複することのないよう、図3に示すように、定期送信期間とランダム送信期間との間に、時計の同期精度に対応したガードタイムGを設けて、ランダム送信禁止期間の終了後は、ガードタイムGが経過してから定期送信期間に入り、定期送信期間の終了後は、ガードタイムGが経過してからランダム送信禁止期間が終了して、ランダム送信を許可するようにされている。
【0066】
また、本実施形態では、このガードタイムGを設けるに当たって、定期送信情報を受信した通信装置2B、2C、・・・側で、ガードタイムGを考慮してランダム送信禁止期間を設定する必要がないよう、通信装置2Aが送信する定期送信情報に、ガードタイムGを含む定期送信期間が設定される。
【0067】
この結果、通信装置2において、定期送信期間決定部30に入力される定期送信期間情報は、ガードタイムGを含む定期送信期間を表すものとなり、定期送信期間決定部30が、定期送信期間情報をそのまま用いてデータ送信部12からのデータ送信を許可する定期送信期間を設定すると、ガードタイムGが消滅してしまう。
【0068】
そこで、本実施形態では、定期送信期間決定部30が、定期送信期間情報から得られる定期送信期間の前後を、カードタイムG分だけ短くすることで、定期送信期間情報を補正し、データ送信部12に出力するようにされている。
【0069】
また、変調処理部14は、データ送信部12からの指令に従い送信データの変調方式(BPSK、QPSK、16QAM等)を設定するようにされており、通信装置2には、変調処理部14からその変調方式を表す変調情報を取り込み、この変調情報とデータ送信部12が変調処理部14に出力する送信データのデータ長とに基づき、変調処理部14が送信データを1パケット分変調するのに要する時間(送信時間)を算出する、送信時間判定部24が設けられている。
【0070】
そして、この送信時間判定部24にて求められた送信時間情報は、定期送信期間決定部30及びランダム送信禁止期間決定部40に出力され、定期送信期間決定部30は、定期送信期間情報から得られる定期送信期間の終了タイミングを送信時間分だけ前に移動させて、定期送信期間を短くすることで、データ送信部12に出力する定期送信期間情報を決定する。
【0071】
また、ランダム送信禁止期間決定部40は、定期送信期間情報から得られる定期送信期間の開始タイミングを送信時間分だけ前に移動させて、ランダム送信禁止期間を長くすることで、データ送信部12に出力するランダム送信禁止期間情報を決定する。
【0072】
つまり、本実施形態では、通信装置2Aが定期送信を行う定期送信期間と、通信装置2B、2C、・・・がランダム送信を行うランダム送信期間とを分離することで、定期送信による送信データとランダム送信による送信データが衝突するのを防止し、しかも、定期送信期間とランダム送信期間とが、各通信装置2A、2B、2C、・・・間の時計の同期ずれによって重複することのないよう、定期送信期間とランダム送信期間との間にガードタイムGを設けている。
【0073】
しかし、このような対策だけでは、定期送信によるデータ送信中に定期送信期間が終了したときや、ランダム送信によるデータ送信中にランダム送信期間が終了したときに、そのデータ送信が継続されて、定期送信によるデータ送信とランダム送信によるデータ送信とが同時に実行されることが考えられる。
【0074】
そこで、本実施形態では、図4に示すように、定期送信期間の終了タイミングと、ランダム送信禁止期間の終了タイミング(換言すればランダム送信期間の開始タイミング)との間に、定期送信による送信データ1パケット分の送信時間に対応したガードタイムAを設け、ランダム送信禁止期間の開始タイミング(換言すればランダム送信期間の終了タイミング)と、定期送信期間の開始タイミングとの間に、ランダム送信による送信データ1パケット分の送信時間に対応したガードタイムBを設けることで、定期送信によるデータ送信とランダム送信によるデータ送信とが重複するのを防止する。
【0075】
そして、このために、本実施形態では、通信装置2Aが送信する定期送信情報として、正規の定期送信期間の前後に時刻同期の誤差に対応したガードタイムGを加え、更に、その定期送信期間の最後に、送信装置2Aが送信データ1パケット分を送信するのに要する送信時間に対応したガードタイムAを加えたものを予め設定しておき、通信装置2Aが実際に定期送信を行う際には、定期送信期間決定部30が、定期送信情報から得られる定期送信期間からガードタイムG及びガードタイムAを減じることで、定期送信時にデータ送信部12が送信データを出力する期間を、正規の定期送信期間に制御し、通信装置2B、2C、・・・側では、ランダム送信禁止期間決定部40が、定期送信情報から得られる定期送信期間(つまり正規の定期送信期間にガードタイムG及びガードタイムAが付与された定期送信期間)に、ガードタイムBを加えることで、正規の定期送信期間にガードタイムG、A、Bを加えたランダム送信禁止期間を設定するようにされている。
【0076】
なお、ランダム送信禁止期間決定部40は、定期送信情報に対応した定期送信期間に、自らのデータ送信時間であるガードタイムBを加えて、ランダム送信禁止期間を設定するが、図5に示すように、このランダム送信禁止期間が、定期送信の一周期の区切りを跨ぐ場合には、ランダム送信禁止期間を、その区切りに沿って2つに分離し、その分離した各送信禁止期間1、2を、ランダム送信禁止期間として、データ送信部12に指令する。
【0077】
これは、データ送信部12側で、時計4による計時時刻(換言すればカウント値)に基づき、定期送信の一周期毎に、ランダム送信を禁止する期間(換言すれば送信データを出力する期間)を設定できるようにするためである。つまり、このようにすることで、データ送信部12を、送信データの出力/停止を切り替えるゲート回路や、ゲート回路の開閉を一定周期毎に所定タイミングで切り替えるタイミング回路等からなる簡単なデジタル回路で構成できるようにしている。
【0078】
(ソフトウェア処理により実現される機能ブロック)
次に、通信装置2には、データ受信部18にて受信データから抽出された定期送信情報に基づき、定期送信期間テーブル20内の定期送信情報を更新する定期送信期間更新部50と、データ受信部18が受信データから抽出した定期送信情報の送信時刻やその受信データの受信時刻を取り込み、時刻差(受信時刻−送信時刻)を算出する時刻差分計算部52と、時刻差分計算部52で算出された時刻差と同期精度情報とに基づき、時刻差が同期精度に対応した許容範囲内にあるか否かを判定して、許容範囲内になければ、時計4に時刻補正情報を出力することで、時刻を補正させる時刻補正判断部54が設けられている。
【0079】
この定期送信期間更新部50、時刻差分計算部52、及び、時刻補正判断部54は、マイクロコンピュータによるソフトウェア処理により実現される機能ブロックであり、定期送信期間更新部50は、マイクロコンピュータのソフトウェア処理によって、通信装置2Aによる定期送信情報の送信処理や、通信装置2B、2C、・・・による定期送信情報の再送信処理も実現する。
【0080】
なお、図2において、定期送信期間更新部50、時刻差分計算部52及び時刻補正判断部54以外の機能ブロック、つまり、時計4、タイマリセット部6、データ送信部12、変調処理部14、復調処理部16、定期送信期間テーブル20、ガードタイム決定部22、送信時間判定部24、定期送信期間決定部30、及び、ランダム送信禁止期間決定部40は、全てデジタル回路からなるハードウェア構成にて実現される。
【0081】
次に、図6は、本実施形態の通信装置2において、通信装置2が定期送信を行う路上機として使用される場合に動作する、定期送信用の機能ブロックを表し、図7は、同じく、通信装置2がランダム送信を行う車載機として使用される場合に動作する、ランダム送信用の機能ブロックを表している。
【0082】
図6に示すように、通信装置2が、定期送信を行う通信装置2Aとして使用されるときには、時計4、タイマリセット部6、データ送信部12、変調処理部14、定期送信期間テーブル20、ガードタイム決定部22、送信時間判定部24、定期送信期間決定部30、及び、定期送信期間更新部50が動作し、データ送信部12からの送信データの出力期間が、定期送信期間決定部30にて決定される定期送信期間に制限される。
【0083】
また、この場合、定期送信期間テーブル20には、通信装置2自身が定期送信を行う際の定期送信期間を表す定期送信情報が記憶されており、定期送信期間更新部50は、マイクロコンピュータによるソフトウェア処理によって、定期送信期間テーブル20からこの定期送信情報を読み込み、データ送信部12に出力することで、この定期送信情報を、単独の送信データ、或いは、他の送信データのヘッダとして、定期送信させる。なお、データ送信部12は、定期送信情報を送信する際、その送信時刻を時計4から読み出し、定期送信情報に付与する。
【0084】
一方、図7に示すように、通信装置2が、ランダム送信を行う通信装置2B、2C、・・・として使用されるときには、定期送信期間決定部30とガードタイム決定部22を除く全機能ブロックが動作し、ランダム送信禁止期間決定部40にて決定されるランダム送信禁止期間の間、データ送信部12からの送信データの出力が禁止される。
【0085】
そして、この場合、定期送信期間更新部50は、マイクロコンピュータによるソフトウェア処理によって、データ受信部18にて受信データから抽出された定期送信情報に基づき、定期送信期間テーブル20内の定期送信情報を更新すると共に、その更新後の定期送信情報をデータ送信部12に出力することで、この定期送信情報を、ランダム送信する他の送信データのヘッダ等に付与して、他の通信装置に転送させる。
【0086】
また、時刻差分計算部52及び時刻補正判断部54は、マイクロコンピュータによるソフトウェア処理によって、データ受信部18が受信した定期送信情報の送信時刻と受信時刻との時刻差に基づき、時計4の時刻を補正する。
【0087】
そこで、次に、通信装置2がランダム送信を行う通信装置2B、2C、・・・として使用される際に、定期送信期間更新部50、時刻差分計算部52、及び時刻補正判断部54の機能を実現するためにマイクロコンピュータにて実行されるソフトウェア処理について、図8〜図10に示すフローチャートに沿って説明する。
【0088】
(定期送信情報転送処理)
まず図8は、マイクロコンピュータにおいて、データ受信部18にて受信データから抽出された定期送信情報を他の通信装置に転送するために実行される、定期送信情報転送処理を表すフローチャートである。
【0089】
図8に示すように、定期送信情報転送処理では、S110(Sはステップを表す)にて、データ受信部18が定期送信情報を含むデータを受信したか否かを判断することにより、他の通信装置から定期送信情報が送信されてくるのを待ち、データ受信部18にて定期送信情報を含むデータが受信されると、S120に移行して、定期送信情報の転送回数Cを読み込む。
【0090】
なお、データ受信部18にて、装置IDが同じで転送回数Cが異なる定期送信情報が略同時(例えば定期送信の一周期内)に受信されている場合、S120においては、その複数の定期送信情報の中から転送回数Cが小さい定期送信情報を選択し、転送回数Cを読み込む。
【0091】
次に、続くS130では、S120にて読み込んだ定期送信情報の転送回数Cが、予め設定されたしきい値Cmaxよりも小さいか否かを判断し、転送回数Cがしきい値Cmaxよりも小さい場合には、S140に移行して、定期送信情報の転送回数Cを更新(+1)し、S150に移行する。
【0092】
そして、S150では、転送回数更新後の定期送信情報を、データ送信部12に出力することで、ランダム送信する送信データのヘッダの一つとして定期送信情報を付与して、他の通信装置に送信させる。なお、データ送信部12は、送信データに定期送信情報を付与して、他の送信装置に送信する際、送信時刻を時計4から読み出し、定期送信情報に付与する。
【0093】
また、S130にて、転送回数Cがしきい値Cmax以上であると判断された場合や、S150にて、データ送信部12に、転送回数更新後の定期送信情報を出力した場合には、当該定期送信情報転送処理を一旦終了し、再度S110以降の処理を実行する。
【0094】
このように、定期送信情報転送処理では、データ受信部18にて抽出された定期送信情報の転送回数Cを、しきい値Cmaxを上限として更新(+1)した後、定期送信情報を転送する。また、図11に示すように、通信装置2Aが送信した定期送信情報は、周囲の通信装置2B、2C、・・・にて順に転送されるだけでなく、定期送信情報の転送回数C(初期値:0)が、転送のたびにカウントアップされる。そして、定期送信情報転送処理では、定期送信情報の転送回数Cがしきい値Cmax以上であれば、定期送信情報の転送を中止する。
【0095】
従って、定期送信情報は、通信装置2Aからの送信電波が届くエリアの外に位置する通信装置2C、・・・に伝達できるだけでなく、その伝達範囲を、転送回数Cを用いて所望範囲内に制限することができる。
【0096】
(定期送信情報更新・時刻同期処理)
次に図9は、マイクロコンピュータにおいて、データ受信部18にて受信データから抽出された定期送信情報に基づき定期送信期間テーブル20を更新し、更に、その定期送信情報に付与された送信時刻とデータ受信部18での受信時刻とに基づき時計4の時刻を補正するために実行される、定期送信情報更新・時刻同期処理を表すフローチャートである。
【0097】
図9に示すように、この処理が開始されると、まずS210にて、データ受信部18が定期送信情報を含むデータを受信したか否かを判断することにより、他の通信装置から定期送信情報が送信されてくるのを待ち、データ受信部18にて定期送信情報を含むデータが受信されると、S220に移行して、その定期送信情報は、定期送信期間テーブル20に既に登録されているものであるか否かを判定する。なお、この判定は、定期送信情報の装置IDに基づき行われる。
【0098】
そして、S220にて、定期送信情報は未登録であると判断されると、S230にて、その未登録の定期送信情報を定期送信期間テーブル20に新規登録した後、S240に移行し、逆に、S220にて、定期送信情報は定期送信期間テーブル20に既に登録されていると判断されると、そのままS240に移行する。
【0099】
S240では、今回受信した定期送信情報の転送回数C(受信転送回数C)は、定期送信期間テーブル20に登録されている定期送信情報(詳しくは装置IDが同じ定期送信情報)の転送回数C(登録転送回数C)よりも小さいか否かを判断し、受信転送回数Cが登録転送回数Cよりも小さい場合には、S260に移行する。
【0100】
なお、今回受信した定期送信情報が定期送信期間テーブル20に登録されておらず、S230にて新規登録されたものである場合、S240では、登録転送回数Cは最大値であるとして、受信転送回数Cと登録転送回数Cとを比較する。この結果、今回受信した定期送信情報が新規登録されたものであれば、S240からS260の処理に移行することになる。
【0101】
次に、S240にて、受信転送回数Cが登録転送回数C以上であると判断された場合には、S250に移行して、受信転送回数Cと登録転送回数Cとが同一で、且つ、今回受信した定期送信情報の装置IDが、前回時計4の時刻同期に用いた定期送信情報の装置ID以下であるか否かを判断する。なお、装置IDの比較は、装置IDの値から時刻同期を行うのに用いる定期送信情報の優先順位を判定するために行われる。
【0102】
そして、今回受信した定期送信情報の転送回数Cと定期送信期間テーブルに記憶されている定期送信情報の転送回数Cとが同じで、その装置IDが前回時刻同期に用いた定期送信情報の装置IDよりも小さい場合には、S260に移行し、そうでなければ、当該処理を一旦終了して、再度S210に移行する。
【0103】
次にS260では、今回受信された定期送信情報の送信時刻と、その定期送信情報の受信時刻とを、データ受信部18から取り込み、その取り込んだ送信時刻と受信時刻との時刻差を、時計4の同期ずれ量として算出する。
【0104】
なお、S260において、同期ずれ量を算出する際には、図12に示すように、通信装置が定期送信情報を送信してから、その定期送信情報を他の通信装置が受信するのに要するオフセット量が用いられ、同期ずれ量は、「同期ずれ量=受信時刻−送信時刻−オフセット量」として算出される。
【0105】
つまり、定期送信情報の送信時刻は、データ送信部12が送信データを出力する際に付与されるが、その送信データは、変調処理部14にて変調処理されることにより送信信号に変換されることから、送信データが送信信号に変換されて通信アンテナから放射されるまでに、変調処理に要する遅延時間(変調処理遅延)が生じる。
【0106】
また、通信アンテナから放射された送信信号(電波)が他の通信装置の通信アンテナに届くまでの間にも、電波伝播に伴う遅延時間(伝搬遅延)が生じ、更に、その受信信号が復調処理部16で復調処理され、定期送信情報が復元されるまでの間にも、復調処理に要する遅延時間(復調処理遅延)が発生する。
【0107】
そこで、本実施形態では、送信時刻と受信時刻との間に生じる遅延時間(変調処理遅延、伝搬遅延、復調処理遅延)を、オフセット量として予め設定しておき、送信時刻と受信時刻とから時計4の同期ずれ量を算出する際には、このオフセット量を用いることで、時計4の真の同期ずれ量を算出するようにしている。
【0108】
次に、S260にて、時計4の同期ずれ量が算出されると、今度はS270に移行して、その算出された同期ずれ量が、上述した同期精度に対応した許容範囲内にあるか否かを判断し、同期ずれ量が許容範囲内にあれば、当該処理を一旦終了して、再度S210に移行し、逆に、同期ずれ量が許容範囲内になければ、S280に移行して、前回時計4の補正用レジスタに設定した同期ずれ量(つまり時刻補正量)が、補正用レジスタに残っているか否かを判断することにより、前回の時刻補正が完了しているか否かを判断する。
【0109】
そして、時計4の補正用レジスタに前回の時刻補正量が残っている場合には、当該処理を一旦終了して、再度S210に移行し、逆に、時計4の補正用レジスタが「0」で、前回の時刻補正量が残っていなければ、S290に移行して、S260にて今回算出した時刻ずれ量を時計4の補正用レジスタに書き込む。
【0110】
なお、時計4には、図9に示す時刻補正動作手順に従い、自身の計時時刻(換言すればカウント値)を補正する補正回路が設けられている。
【0111】
そして、この補正回路は、通信装置2の起動に伴い内部回路を初期設定(S310)した後、補正用レジスタが「0」であるか否かを判断することにより、補正用レジスタに時刻補正量(つまり時刻ずれ量)が書き込まれるのを待ち(S320)、補正用レジスタに時刻ずれ量が書き込まれると、その書き込まれた時刻ずれ量にて、自身の計時時刻(換言すればカウント値)を補正し(S330)、補正用レジスタを「0」に初期設定して、再度S310の待機動作に移行する、といった手順で、計時4の時刻を、定期送信情報を送信してきた通信装置側の時計と同期させる。
【0112】
従って、マイクロコンピュータが、S290にて、時計4の補正用レジスタに時刻ずれ量を書き込むと、時計4が、その時刻ずれ量に応じて時刻を自動補正することになる。
【0113】
そして、マイクロコンピュータは、S290にて、時計4の補正用レジスタに時刻ずれ量を書き込んだ後は、S300に移行して、S260、S290の処理にて、今回、時計4の時刻同期に用いた定期送信情報に基づき、定期送信期間テーブル20に登録された定期送信情報を更新し、その後、当該処理を一旦終了して、再度S210に移行する。
【0114】
なお、S300による定期送信情報の更新は、定期送信情報の転送回数Cを書き換えることにより実行される。
【0115】
また、S280にて、補正用レジスタに前回の時刻補正量が残っている場合(換言すれば補正用レジスタが「0」でない場合)に、今回算出した時刻ずれ量を補正用レジスタに書き込むことなく、当該処理を一旦終了するのは、図13に示すように、ソフトウェア処理にて、時計4の補正用レジスタに時刻ずれ量を書き込んでから、時計4側の時刻補正処理にて、その書き込んだ時刻ずれ量に応じて時刻補正がなされるまでには時間がかかり、その間に算出した時刻ずれ量を補正用レジスタに書き込むと、その時刻ずれ量にて再度時計4の時刻が補正されて、新たな時刻ずれを発生させてしまう虞があるためである。
【0116】
つまり、本実施形態では、S260にて時刻ずれ量を算出した際、補正用レジスタに前回の時刻ずれ量が残っていて、その時刻ずれ量に基づく時刻補正が完了していないときには、今回算出した時刻ずれ量を破棄することで、時計4の時刻補正が不必要に実行されて、時刻ずれを発生させてしまうのを防止している。
【0117】
(非同期設定処理)
次に、図10は、車両が定期送信を行う通信装置2Aから離れて、その通信装置2Aの定期送信期間にランダム送信を実行できるようになったときに、その通信装置2Aの定期送信情報を、ランダム送信禁止期間の設定に用いない非同期情報として書き換えるために実行される、非同期設定処理を表すフローチャートである。
【0118】
図10に示すように、この非同期設定処理は、定期送信の一周期毎に実行される処理であり、この処理が開始されると、まずS410にて、定期送信期間テーブル20に登録された定期送信情報のうち、定期送信の一周期内に受信できなかった定期送信情報はあるか否かを判断する。
【0119】
そして、定期送信の一周期内に受信できなかった定期送信情報があれば、S420にて、その定期送信情報の転送回数Cを読み込み、続くS430にて、その読み込んだ定期送信情報の転送回数Cが、予め設定されたしきい値Cmaxよりも小さいか否かを判断する。
【0120】
そして、転送回数Cがしきい値Cmaxよりも小さい場合には、S440に移行して、定期送信情報の転送回数Cを更新(+1)し、S450に移行する。
【0121】
S450では、S440にて更新(+1)した転送回数Cは、しきい値Cmaxに達したか否かを判断し、転送回数Cがしきい値Cmaxに達していれば、S460にて、ソフトウェアタイマを起動してその後の経過時間の計時を開始し、当該非同期設定処理を一旦終了する。また、転送回数Cがしきい値Cmaxに達していなければ、そのまま当該非同期設定処理を一旦終了する。
【0122】
なお、S460にてソフトウェアタイマを起動することにより開始される経過時間の計時は、定期送信期間テーブル20に登録された定期送信情報の中で、転送回数Cがしきい値Cmaxに達している定期送信情報毎に行われ、その定期送信情報の転送回数Cがしきい値Cmaxよりも小さい値に更新されると、経過時間の計時は終了する。
【0123】
また、S420〜S460の処理、及び、次に説明するS470及びS480の処理も、登録済みで定期送信の一周期内に受信できなかった定期送信情報が複数存在する場合には、その複数の定期送信情報毎に実行される。
【0124】
次に、S430にて、定期送信情報の転送回数Cがしきい値Cmax以上であると判断された場合には、S470に移行して、上述のS460で計時を開始した経過時間が、予め設定された非同期判定時間Tout以上になったか否かを判断する。
【0125】
そして、経過時間が非同期判定時間Tout以上でなければ、当該非同期設定処理を一旦終了し、逆に、経過時間が非同期判定時間Tout以上であれば、S480に移行して、転送回数Cがしきい値Cmaxに達してからの経過時間が非同期判定時間Tout以上になった定期送信情報の転送回数を、非同期情報を表す規定値(しきい値Cmaxよりも大きい固定値:例えば値15)に設定することで、その定期送信情報を非同期情報として書き換え、当該非同期設定処理を一旦終了する。
【0126】
なお、定期送信期間テーブル20内で非同期情報として書き換えられた定期送信情報は、転送或いはランダム送信禁止期間の設定には用いられず、過去の履歴として定期送信期間テーブル20に保存される。
【0127】
このように、非同期設定処理では、図14に例示するように、ランダム送信を行う通信装置2Bにおいて、定期送信期間テーブル20に記憶されている定期送信情報を受信できない場合には、その転送回数Cを定期送信の一周期毎にカウントアップして行き、転送回数Cが、定期送信情報の転送を中止するしきい値Cmaxに達し、その後、非同期判定時間Toutが経過すると、自車両が、その定期送信情報に対応した通信装置2Aから離れ、その通信装置2Aの定期送信期間にランダム送信しても問題ないものと判断して、定期送信情報を非同期情報に書き換える。
【0128】
従って、定期送信期間テーブル20に定期送信を行う多数の通信装置2Aからの定期送信情報が登録されていても、ランダム送信を行う通信装置2B、2C、・・・側では、自身のランダム送信により他の通信装置2Aの定期送信に影響を与える定期送信期間に対してのみ、ランダム送信禁止期間を設定できることになり、ランダム送信期間が必要以上に制限されるのを防止できる。
【0129】
つまり、例えば、通信装置2Bの定期送信期間テーブル20には、自動車の移動に伴い、その走行経路周囲に設けられた多数の通信装置2Aからの定期送信情報が登録されることになるが、その内、転送回数Cがしきい値Cmaxに達し、非同期判定時間Toutが経過しても受信できない定期送信情報については、非同期情報として、制御に用いる定期送信情報から外されることから、図15に例示するように、通信装置2Bの定期送信期間テーブル20には、制御に用いる定期送信情報として、送信電波が相互に干渉する虞のある通信装置2A1、2A2、2A3の定期送信情報だけが残ることになり、その定期送信情報に基づきランダム送信禁止期間を設定して、自身のランダム送信期間を確保しつつ、定期送信に影響を与えるのを防止することが可能となる。
【0130】
(実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態の無線通信システムにおいては、定期送信機能を有する通信装置2Aが、定期送信期間を表す定期送信情報を送信し、ランダム送信機能を有する通信装置2B、2C、・・・が、その定期送信情報に基づき、ランダム送信禁止期間を設定する。
【0131】
また、定期送信情報には、送信時刻が付与されており、定期送信情報を受信した通信装置2B、2C、・・・は、この送信時刻と自身の受信時刻とから、各装置間の時計4の時刻ずれ量を算出して、時計4の時刻を補正する。
【0132】
このため、本実施形態の無線通信システムによれば、通信装置2Aの定期送信期間中に、通信装置2B、2C、・・・が、ランダム送信を開始するのを防止し、通信装置2Aによる重要データの定期送信を優先的に実行させることができる。
【0133】
また、通信装置2B、2C、・・・にて設定されるランダム送信禁止期間と、定期送信期間との間には、ガードタイムが設けられるため、各通信装置2A、2B、2C、・・・間で、時計4の時刻を高精度に一致させる必要がなく、時刻ずれが許容誤差範囲内にあれば、通信装置2Aでの定期送信期間と通信装置2B、2C、・・・でのランダム送信禁止期間とを同期させて、定期送信による送信データとランダム送信による送信データとが衝突するのを防止することができる。
【0134】
また、ランダム送信機能を有する通信装置2B、2C、・・・は、転送回数Cを更新しつつ、受信した定期送信情報を再送信することから、通信装置2Aからの定期送信情報を、伝達範囲を不必要に広げることなく、通信装置2Aからの送信電波が届かない他の通信装置に伝達することができ、定期送信された送信データとランダム送信された送信データが衝突する確率をより低くすることができる。
【0135】
ここで、本実施形態においては、通信装置2Aが本発明の第1通信装置に相当し、通信装置2B、2Cが本発明の第2通信装置に相当する。また、通信装置2において、データ送信部12は、本発明のデータ送信手段に相当し、変調処理部14は、本発明の変調処理手段に相当し、復調処理部16は、本発明の変調処理手段に相当し、データ受信部18は、本発明のデータ受信手段及び送信時刻付与手段に相当し、定期送信期間テーブル20は、本発明の記憶手段に相当し、送信時間判定部24は、送信時間設定手段に相当する。
【0136】
また同様に、定期送信期間決定部30は、本発明の定期送信許可手段に相当し、ランダム送信禁止期間決定部40は、本発明のランダム送信禁止期間設定手段及びランダム送信禁止手段に相当し、定期送信期間更新部50は、本発明の定期送信情報送信制御手段、定期送信情報登録手段、及び転送制御手段に相当し、タイマリセット部6は、本発明の第1計時制御手段及び第2計時制御手段に相当し、時刻差分計算部52及び時刻補正判断部54は、本発明の同期制御手段に相当し、このうち時刻補正判断部54は、本発明の時刻補正手段に相当する。
【0137】
以上本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内にて種々の態様をとることができる。
【0138】
[変形例1]
例えば、上記実施形態では、定期送信期間とランダム送信期間との間にガードタイムG、A、Bを設けるために、通信装置2Aが送信する定期送信情報には、本来の定期送信期間に、ガードタイムGと、通信装置2Aが送信する送信データの送信時間に対応したガードタイムAを付与したものを設定し、通信装置2B、2C、・・・側では、定期送信情報から得られる定期送信期間に、自らが送信する送信データの送信時間に対応したガードタイムBを付与することで、ランダム送信禁止期間を設定するものとして説明した。
【0139】
しかし、定期送信期間とランダム送信期間との間にガードタイムG、A、Bを設けるためには、必ずしもこのようにする必要はなく、定期送信情報には、通信装置2Aに割り当てられた定期送信期間をそのまま設定し、定期送信情報を受信してランダム送信禁止期間を設定する通信装置2B、2C、・・・側で、定期送信情報から得られる定期送信期間に、ガードタイムG、A、Bを加えることで、ランダム送信禁止期間を決定するようにしてもよい。
【0140】
そして、この場合、通信装置2B、2C、・・・には、図16に示すように、定期送信を行う通信装置2Aから送信された送信データのデータ長(受信データ長情報)と、そのデータを復調処理部16で復調する際の復調方式とに基づき、受信時間(ガードタイムA)を設定する受信時間判定部26(本発明の受信時間設定手段に相当)を設け、この受信時間判定部26にて設定された受信時間情報(ガードタイムA)と、送信時間判定部24にて設定された送信時間情報(ガードタイムB)と、ガードタイム決定部22にて決定されたガードタイム情報(ガードタイムG)を、ランダム送信禁止期間決定部40に入力するようにすればよい。
【0141】
つまり、通信装置2B、2C、・・・をこのように構成すれば、ランダム送信禁止期間決定部40では、定期送信情報から得られる定期送信期間にガードタイムG、A、Bを加えることで、ランダム送信禁止期間を決定することができるようになる。
【0142】
また、この場合、通信装置2A側では、定期送信期間決定部30が、定期送信期間テーブル20に記憶された定期送信情報から得られる定期送信期間をそのままデータ送信部12に出力すればよいことから、定期送信期間決定部30の構成を簡単にすることができる。
【0143】
なお、このように、通信装置2B、2C、・・・において、定期送信期間にガードタイムG、A、Bを加えるようにした場合、最終的に得られるランダム送信禁止期間は、図17(a)に示すようにガードタイムB側でも、図17(b)に示すようにガードタイムA側でも、定期送信一周期の区切りを跨ぐことが考えられる。
【0144】
しかし、このようにランダム送信禁止期間が定期送信の一周期の区切りを跨ぐ場合には、上記実施形態と同様、ランダム送信禁止期間を、その区切りに沿って2つに分離して、各送信禁止期間1、2を、それぞれ、ランダム送信禁止期間としてデータ送信部12に指令するようにすれば、ランダム送信の禁止期間を制御するための回路構成を簡単にすることができる。
【0145】
[変形例2]
また、定期送信期間とランダム送信期間との間にガードタイムA、Bを設けるには、必ずしも上記実施形態や変形例1のようにする必要はなく、通信装置2Aから、定期送信期間にガードタイムA、Bを加えた定期送信情報を送信して、通信装置2B、2C、・・・側では、その定期送信情報から得られる定期送信期間を用いてランダム送信禁止期間を設定するようにしてもよく、或いは、通信装置2Aから、定期送信期間にガードタイムBを加えた定期送信情報を送信して、通信装置2B、2C、・・・側では、その定期送信情報から得られる定期送信期間にガードタイムAを加えることでランダム送信禁止期間を設定するようにしてもよい。
【0146】
そして、特に前者のように構成する場合、ガードタイムGも、定期送信情報の定期送信期間に加えるようにすれば、通信装置2B、2C、・・・側では、その定期送信情報から得られる定期送信期間をそのままランダム送信禁止期間として設定できることになり、ランダム送信禁止期間決定部40の構成を簡単にすることができる。
【0147】
但し、この場合、定期送信期間決定部30は、定期送信情報から得られる定期送信期間から、ガードタイムG、A、Bを減じることで、データ送信部12に出力する定期送信期間情報を設定するよう構成する必要はある。
【0148】
[変形例3]
一方、上記実施形態では、通信装置2Aの定期送信期間と、通信装置2B、2C、・・・のランダム送信禁止期間との同期を取るために、各通信装置に設けられた時計4の時刻を同期させるものとして説明したが、図18に示すように、通信装置2Aが定期送信にて定期送信情報を送信するとき、及び、通信装置2Bがランダム送信にて定期送信情報を再送信するときには、その送信時刻ではなく、送信時刻から次の定期送信期間の開始タイミングまでの時間を表す同期情報を、定期送信情報に追加するようにし、その定期送信情報を受信した通信装置2B、2C側では、定期送信情報の受信時刻と同期情報とに基づき、次の定期送信の開始時刻を予測し、その予測した開始時刻と定期送信情報とに基づき、通信装置2Aの定期送信期間を認識するようにしてもよい。
【0149】
そして、このようにすれば、時計4の時刻同期を行うことなく、通信装置2Aの定期送信期間と、通信装置2B、2C、・・・のランダム送信禁止期間との同期を取り、通信装置2Aの定期送信を優先的に実行させることができるようになる。
【0150】
なお、このような動作は、通信装置2において、マイクロコンピュータが実行する定期送信期間更新部50としてのソフトウェア処理を変更することで簡単に実現できることから、ここでは、詳細な説明は省略する。そしてこの場合、定期送信期間更新部50は、本発明の同期制御手段(詳しくは同期情報付与手段、開始時刻予測手段、第2同期情報付与手段)として機能することになる。
【0151】
[変形例4]
次に、上記実施形態では、図8に示した定期送信情報転送処理において、定期送信情報をデータ送信部12へ出力して、定期送信情報を転送させる際には、定期送信情報は、ランダム送信する送信データにヘッダの一つとして付与するものとして説明したが、定期送信情報を転送させる際には、定期送信を行う通信装置2Aと同様、定期送信情報を単独の送信データとして送信(この場合ランダム送信)するようにしてもよい。
【0152】
[変形例5]
また、上記実施形態では、通信装置2B、2C、・・・は、定期送信情報を受信した際、その定期送信情報の転送回数Cから再送信するか否かを判断して、受信した定期送信情報を再送信するものとして説明したが、例えば、定期送信情報を受信したとき、或いは、定期送信の一周期毎に、定期送信期間テーブル20に記憶されている全ての定期送信情報(非同期情報は除く)を再送信するようにしてもよい。
【0153】
またこの場合、再送信する定期送信情報を、定期送信期間テーブル20に記憶された定期送信情報の中で、転送回数Cがしきい値Cmaxよりも小さい定期送信情報に制限するようにしてもよい。
【0154】
[変形例6]
また次に、上記実施形態では、定期送信情報の伝達範囲を制限するために、定期送信情報に転送回数Cを設け、通信装置2B、2C、・・・は、その転送回数Cがしきい値Cmaxに達するまで、受信した定期送信情報を転送するものとして説明したが、定期送信情報の伝達範囲を制限するには、例えば、定期送信情報を受信した受信時刻と、前回、装置IDが同じ定期送信情報を受信したときの受信時刻との時間差から、定期送信情報を前回受信してからの経過時間を求め、その時間がしきい値よりも長い場合には、定期送信情報の再送信(転送)を中止するようにしてもよい。
【0155】
そして、このようにしても、通信装置2B、2C、・・・は、通信装置2Aとの間の距離が長くなった場合に、定期送信情報の転送を中止することになるので、定期送信情報の伝達範囲を制限することができる。
【0156】
[変形例7]
また、上記実施形態では、図9に示した定期送信情報更新・時刻同期処理のS260において、定期送信情報の送信時刻と受信時刻との時刻差から時計4の同期ずれ量を算出する際には、送信側の変調処理部14で生じる変調処理遅延、電波伝播経路で生じる伝搬遅延、及び、受信側の復調処理部16で生じる復調処理遅延、に基づき予め設定されたオフセット量を用いるものとして説明したが、このオフセット量は、送信時間判定部24にて設定される送信時間(つまり変調処理遅延)と、受信時間判定部26(図16参照)にて設定される受信時間(つまり復調処理遅延)と、予め設定された伝播遅延とに基づき、算出するようにしてもよい。
【0157】
そして、このようにすれば、オフセット量を変調処理部14及び復調処理部16の動作に対応して設定することができ、定期送信情報の送信時刻と受信時刻とから、同期ずれ量をより正確に算出することができる。
【0158】
[変形例8]
また次に、上記実施形態では、通信装置2Aから通信装置2B、通信装置2Bから通信装置2Cへと、定期送信情報を順次送信する際に、定期送信情報に送信時刻を付与するようにし、定期送信情報を受信した通信装置側では、定期送信情報と共に送信されてきた送信時刻とその定期送信情報の受信時刻とに基づき時計4の時刻同期を行うものとして説明したが、時刻同期用の送信時刻は、定期送信情報とは異なるタイミングで、時刻情報として送信するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0159】
2,2A,2B,2C・・・通信装置、4・・・時計、6・・・タイマリセット部、12・・・データ送信部、14・・・変調処理部、16・・・復調処理部、18・・・データ受信部、20・・・定期送信期間テーブル、22・・・ガードタイム決定部、24・・・送信時間判定部、26・・・受信時間判定部、30・・・定期送信期間決定部、40・・・ランダム送信禁止期間決定部、50・・・定期送信期間更新部、52・・・時刻差分計算部、54・・・時刻補正判断部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データの送信要求が発生した際、通信チャンネルが空いているか否かを判定して、前記通信チャンネルが空いているときに無線によりランダム送信を行う無線通信装置において、
予め決められた定期送信一周期内に割り当てられた期間を利用してデータの定期送信を行う外部の通信装置から、前記通信チャンネルを利用して送信される定期送信期間を表す定期送信情報と送信時刻を含む送信データを受信可能な受信手段と、
前記受信手段より受信した前記送信時刻と受信時刻に基づき自身の時計の時刻を補正することによって時刻同期を行う同期制御手段と、
前記受信手段より受信した前記定期送信情報から得られる定期送信期間の前後に前記時刻同期の誤差に対応したガードタイムを加えて、前記ランダム送信の実行を禁止するランダム送信禁止期間を設定する期間設定手段と
を有することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
所定の通信チャンネルを利用して、予め決められた定期送信一周期内に割り当てられた期間を利用して無線送信を行う定期送信機能を有し、定期送信期間を表す定期送信情報と送信時刻を含む送信データの定期送信を行う第1通信装置と、
データの送信要求が発生した際、前記通信チャンネルが空いているか否かを判定して、前記通信チャンネルが空いているときに無線によりランダム送信を行うランダム送信機能を有する通信装置であって、前記第1通信装置からの送信データを受信する受信手段と、前記受信手段より受信した送信時刻と受信時刻に基づき自身の時計の時刻を補正することによって時刻同期を行う同期制御手段と、前記受信手段より受信した前記定期送信情報から得られる定期送信期間の前後に前記時刻同期の誤差に対応したガードタイムを加えて、前記ランダム送信の実行を禁止するランダム送信禁止期間を設定する設定手段とを備える第2通信装置とを有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
前記定期送信期間の直前に、更に、前記ランダム送信による送信データ1パケット分の送信時間に対応した第1時間を設定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記定期送信期間の直後に、更に、前記定期送信による送信データ1パケット分の送信時間に対応した第2時間を設定することを特徴とする請求項1または3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記第1時間を設定する第1時間設定手段を備え、
前記期間設定手段は、前記ランダム送信禁止期間を設定する際に、前記定期送信期間の直前に前記第1時間設定手段にて設定された前記第1時間を加えることを特徴とする請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記第2時間を設定する第2時間設定手段を備え、
前記期間設定手段は、前記ランダム送信禁止期間を設定する際に、前記定期送信期間の直後に前記第2時間設定手段にて設定された前記第2時間を加えることを特徴とする請求項4に記載の通信装置。
【請求項7】
前記ランダム送信禁止期間は前記外部の通信装置が定期送信を行う一周期内の特定期間として設定するよう構成されており、
前記定期送信期間に前記ガードタイムと前記第1時間を付加することにより導出される一つのランダム送信禁止期間が前記定期送信一周期の区切りを跨るときには、当該ランダム送信禁止期間を、前記定期送信一周期の区切りで分割した2つのランダム送信禁止期間として設定すること
を特徴とする請求項3または5に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記定期送信期間の直前に、更に、前記第2通信装置の前記ランダム送信による送信データ1パケット分の送信時間に対応した第1時間を設定することを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項9】
前記定期送信期間の直後に、更に、前記第1通信装置の前記定期送信による送信データ1パケット分の送信時間に対応した第2時間を設定することを特徴とする請求項2または8に記載の無線通信システム。
【請求項10】
前記第1通信装置は、前記第2通信装置が実行する前記ランダム送信による送信データ1パケット分の送信時間に対応した時間を設定する第1時間設定手段を備え、
前記第1通信手段は、前記定期送信期間を設定する際に、前記定期送信期間から前記第1時間設定手段にて設定された時間を減じることで、前記送信データの出力を許可する定期送信期間を決定することを特徴とする請求項2、8、9の何れか一つに記載の無線通信システム。
【請求項11】
前記第1通信装置は、自身の定期送信による送信データの1パケット分の送信時間に対応した時間を設定する第2時間設定手段を備え、
前記第1通信装置は、前記定期送信期間から前記第2時間設定手段にて設定された時間を減じることで、前記送信データの出力を許可する定期送信期間を決定することを特徴とする請求項2、8乃至10の何れか一つに記載の無線通信システム。
【請求項12】
前記ランダム送信禁止期間は前記第1通信装置が定期送信を行う一周期内の特定期間として設定するよう構成されており、
前記定期送信期間に前記ガードタイムと前記第1時間を付加することにより導出される一つのランダム送信禁止期間が前記定期送信一周期の区切りを跨るときには、当該ランダム送信禁止期間を、前記定期送信一周期の区切りで分割した2つのランダム送信禁止期間として設定すること
を特徴とする請求項8または10に記載の無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−205697(P2011−205697A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145082(P2011−145082)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【分割の表示】特願2008−181709(P2008−181709)の分割
【原出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】