説明

無線通信装置

【課題】フィルタの設置面積を削減できる無線部を備えた無線通信装置を提供する。
【解決手段】無線通信装置が変調送信信号を送信し変調受信信号を受信する無線部100を備え、無線部が、変調送信信号を送信し変調受信信号を受信する送受信用アンテナ103と、変調受信信号を受信する受信アンテナ105と、変復調回路と送受信用アンテナとの間に介在し変調送信信号を透過する送信フィルタ107と、送受信用アンテナと変復調回路との間に介在するとともに受信アンテナと変復調回路との間に介在し変調受信信号を透過する受信フィルタ109と、送受信用アンテナからの変調受信信号を受信フィルタへ導く第1のサーキュレータ111と、受信用アンテナからの変調受信信号を受信フィルタへ導く第2のサーキュレータ113を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数分割複信(Frequency Division Duplex、FDD)を用いて通信を行う無線通信システムにおける無線通信装置に関し、特にMIMO(Multiple Input / Multiple Output)を用いて通信を行う無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送信と受信でそれぞれ異なる周波数を用いて通信を行うFDDにおいては、無線通信装置に、送信用のアンテナ及び送信周波数帯を透過させる送信フィルタ、並びに受信用のアンテナ及び受信周波数帯を透過させる受信フィルタが必要である。
【0003】
また、FDDにおいて、複数の無線送信ラインを同時に並列に利用し、複数の無線受信ラインを同時に並列に利用するMIMOを適用する場合には、無線通信装置に、送信用のアンテナ及び送信周波数帯を透過させる送信フィルタが送信ライン数分必要であり、受信用のアンテナ及び受信周波数帯を透過させる受信フィルタが受信ライン数分必要である。
【0004】
そのため、通信速度を上げるために送信ライン及び受信ラインを増やすには、増やしたライン数分のアンテナ及びフィルタが必要となり、アンテナ本数及びフィルタ設置のための回路面積が増えてしまうという問題がある。
【0005】
この問題に対し、例えば特許文献1に記載された技術を応用して対処することが考えられる。特許文献1には、複数のアンテナ、複数のフィルタ、複数のデュプレクサ(アンテナ共用器)、変調回路及び復調回路を有するマルチバンド無線通信装置が開示されている。かかる装置では、送信回路及び受信回路と接続されたデュプレクサが1本のアンテナに接続されているので、1本のアンテナで送信及び受信の両方が行える。このようにすることで、アンテナの本数を減らせると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−19939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、送信ライン数分の送信フィルタ及び受信ライン数分の受信フィルタを備える必要がある。そのため、この文献に記載の技術をMIMOに応用したとしても、フィルタの設置面積を削減することができないという課題がある。
【0008】
そこで、本発明は、フィルタの設置面積を削減することができる無線部を備えた無線通信装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る無線通信装置は、送信周波数で送信信号を変調して変調送信信号を生成する変調部と、前記送信周波数と異なる受信周波数で変調受信信号を復調して受信信号を生成する復調部と、前記変調部および前記復調部に接続されて、前記変調送信信号を送信し、前記変調受信信号を受信する少なくとも1つの送受信セットを備え、前記送受信セットは、前記変調送信信号を送信し、前記変調受信信号を受信する送受信用アンテナと、前記変調受信信号を受信する受信アンテナと、前記変調部と前記送受信用アンテナとの間に介在し、前記変調部で生成される前記変調送信信号を透過させる送信フィルタと、前記送受信用アンテナと前記復調部との間に介在するとともに、前記受信アンテナと前記復調部との間に介在し、前記送受信用アンテナおよび前記受信アンテナで受信される前記変調受信信号を透過させる受信フィルタと、前記送受信用アンテナで受信される前記変調受信信号を前記受信フィルタへ導く第1のサーキュレータと、前記受信用アンテナで受信される前記変調受信信号を前記受信フィルタへ導く第2のサーキュレータとを備える。
この構成においては、サーキュレータを用いることにより1つの受信フィルタが送受信アンテナで受信された信号及び受信アンテナで受信された信号に共用されるから、受信するアンテナ毎に受信フィルタを設置する必要がなく、受信フィルタ数を削減することができる。
【0010】
好ましくは、前記第1のサーキュレータは、前記受信アンテナから前記第2のサーキュレータを経て前記受信フィルタを透過する前記変調受信信号を、前記復調部へ導き、前記第2のサーキュレータは、前記送受信用アンテナから前記第1のサーキュレータを経て前記受信フィルタを透過する前記変調受信信号を、前記復調部へ導く。
この構成においては、第1のサーキュレータが、前記送受信用アンテナで受信される前記変調受信信号を前記受信フィルタへ導くだけでなく、前記受信アンテナから前記第2のサーキュレータを経て前記受信フィルタを透過する前記変調受信信号を前記復調部へ導く。また、第2のサーキュレータが、前記受信用アンテナで受信される前記変調受信信号を前記受信フィルタへ導くだけでなく、前記送受信用アンテナから前記第1のサーキュレータを経て前記受信フィルタを透過する前記変調受信信号を前記復調部へ導く。すなわち、各サーキュレータが2つの用途に用いられるから、個別の配線を設けた場合と比べて回路内の配線数を削減することができる。
【0011】
また、本発明に係る無線通信装置は、複数の前記送受信セットを備えると好ましい。
この構成においては、無線通信装置の送受信セットが増えて受信するアンテナの数が増えても、受信フィルタの数を受信するアンテナの数の半分に抑えることができる。
【0012】
さらに、前記変調部は、第1の送信周波数で送信信号を変調して第1の変調送信信号を生成することが可能であり、第2の送信周波数で送信信号を変調して第2の変調送信信号を生成することが可能であり、前記復調部は、前記第1の送信周波数と異なる第1の受信周波数で変調受信信号を復調して受信信号を生成することが可能であり、前記第2の送信周波数と異なる第2の受信周波数で変調受信信号を復調して受信信号を生成することが可能であり、前記送受信用アンテナは、前記変調部で生成される前記第1の変調送信信号と前記第2の変調送信信号を送信可能であり、前記送受信アンテナは、前記第1の受信周波数で変調された変調受信信号と前記第2の受信周波数で変調された変調受信信号を受信可能であり、前記受信アンテナは、前記第1の受信周波数で変調された変調受信信号と前記第2の受信周波数で変調された変調受信信号を受信可能であり、前記送信フィルタは、前記第1の変調送信信号を透過させる第1の送信フィルタと、前記第2の変調送信信号を透過させる第2の送信フィルタとを備え、前記受信フィルタは、前記第1の受信周波数で変調された変調受信信号を透過させる第1の受信フィルタと、前記第2の受信周波数で変調された変調受信信号を透過させる第2の受信フィルタとを備え、さらに、送信に前記第1の送信周波数が使用されるか前記第2の送信周波数が使用されるかに応じて、前記第1の送信フィルタと前記第2の送信フィルタのいずれかを有効にする送信切替部と、受信に前記第1の受信周波数が使用されるか前記第2の受信周波数が使用されるかに応じて、前記第1の受信フィルタと前記第2の受信フィルタのいずれかを有効にする受信切替部とを備えると好ましい。
この構成においては、複数の送信周波数及び複数の受信周波数の毎に送受信セットを設けなくても、フィルタ及び切替部を追加するだけで複数の送信周波数及び複数の受信周波数を用いた通信を可能にできるから、回路面積の増大が抑えられ、回路構造を単純化できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る移動局の無線部及び変復調回路を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る移動局の無線部及び変復調回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態は、上りリンク通信にSC−FDMA(Single Carrier Frequency Division Multiple Access)を用い、下りリンク通信にOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)を用いる無線通信システムに適用可能であるが、これに限定されるものではない。
【0015】
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態に係るMIMOが可能な移動局を説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る移動局の図である。移動局は、無線部(送受信セット)100及び120並びに変復調回路101とを備える。無線部100は、送受信用アンテナ103、受信用アンテナ105、送信フィルタ107、受信フィルタ109、第1のサーキュレータ111、第2のサーキュレータ113、増幅器115、増幅器117、増幅器119を有する。無線部100は変復調回路101に接続されている。
【0016】
無線部120の構成は無線部100の構成と同じである。具体的には、無線部120は、送受信用アンテナ123、受信用アンテナ125、送信フィルタ127、受信フィルタ129、第1のサーキュレータ131、第2のサーキュレータ133、増幅器135、増幅器137、増幅器139を有する。無線部120は変復調回路101に接続されている。
図1では図示されていないが、変復調回路101は変調部及び復調部を備える。
【0017】
無線部100の送受信用アンテナ103は、変調送信信号を送信し、下りリンク変調受信信号を受信する。受信用アンテナ105は、下りリンク変調受信信号を受信する。送信フィルタ107は、上りリンク周波数を透過する帯域制限フィルタである。受信フィルタ109は、下りリンク周波数を透過する帯域制限フィルタである。第1のサーキュレータ111及び第2のサーキュレータ113は、3つの入出力ポートを有する3ポートサーキュレータである。
【0018】
無線部120の送受信用アンテナ123は、上りリンク変調送信信号を送信し、下りリンク変調受信信号を受信する。受信用アンテナ125は、下りリンク変調受信信号を受信する。送信フィルタ127は、上りリンク周波数を透過する帯域制限フィルタである。受信フィルタ129は、下りリンク周波数を透過する帯域制限フィルタである。第1のサーキュレータ131及び第2のサーキュレータ133は、3つの入出力ポートを有する3ポートサーキュレータである。
【0019】
次に、上りリンク変調送信信号の送信処理について説明する。
変復調回路101の変調部は、異なる2系列の上りリンク送信信号を同一の上りリンク周波数で変調して、2系列の上りリンク変調送信信号を生成する。生成された2系列の上りリンク変調送信信号のうちの1系列は、無線部100の増幅器115へ導かれて増幅された後、送信フィルタ107へと導かれる。その系列は送信フィルタ107を透過して、送受信用アンテナ103へと向かう。
【0020】
変復調回路101の変調部で生成された、別の上りリンク変調送信信号の1系列は、無線部120の増幅器135へ導かれて増幅された後、送信フィルタ127へと導かれる。その系列は、送信フィルタ127を透過して、送受信アンテナ123へと向かう。
【0021】
これら2系列の上りリンク変調送信信号は、送受信アンテナ103及び送受信アンテナ123から同時に並列に基地局へ送信される。送信された2系列の上りリンク変調送信信号は空間多重され、図示されていない基地局に備えられた4本の受信アンテナで受信される。
【0022】
次に、下りリンク変調受信信号の受信処理について説明する。
図示されていない基地局が有する4本の送信アンテナから、それぞれ異なる4系列の下りリンク変調受信信号が、上りリンク周波数とは異なる、同一の下りリンク周波数で同時に送信されて空間多重される。
【0023】
空間多重された下りリンク変調受信信号が、無線部100の送受信用アンテナ103で受信される。送受信用アンテナ103で受信された下りリンク変調受信信号は、第1のサーキュレータ111により受信フィルタ109へと導かれ、受信フィルタ109を透過して第2のサーキュレータ113に向けられる。さらに、その下りリンク変調受信信号は、第2のサーキュレータ113により増幅器119へ導かれて増幅された後、変復調回路101の復調部へ向けられる。
【0024】
また、空間多重された下りリンク変調受信信号が、無線部100の受信用アンテナ105で受信される。受信用アンテナ105で受信された下りリンク変調受信信号は、第2のサーキュレータ113により受信フィルタ109へと導かれ、受信フィルタ109を透過して第1のサーキュレータ111に向けられる。さらに、その下りリンク変調受信信号は、第1のサーキュレータ111により増幅器117へ導かれて増幅された後、変復調回路101の復調部へ向けられる。
【0025】
同様にして、無線部120においても、送受信用アンテナ123に受信された下りリンク変調受信信号及び受信アンテナ125に受信された下りリンク変調受信信号が、変復調回路101の復調部へ向けられる。
【0026】
基地局が有する4本の送信アンテナのうちどの1本から送信された下りリンク変調受信信号であっても、移動局の4本の受信アンテナ(無線部100のアンテナ103及び105並びに無線部120のアンテナ123及び125)全てによって、空間多重された状態で受信される。換言すると、移動局の各々の受信アンテナは、基地局の4本の送信アンテナから送信されて空間多重された下りリンク変調受信信号を受信する。
【0027】
移動局の4本の受信アンテナでそれぞれ受信された、空間多重された下りリンク変調受信信号は、受信したアンテナに対応する無線部100又は無線部120を経て、変復調回路101の復調部へそれぞれ向けられる。
【0028】
4本の受信アンテナ(無線部100のアンテナ103及び105並びに無線部120のアンテナ123及び125)で受信された、空間多重された下りリンク変調受信信号の各々は、それぞれ異なる伝搬特性を有する伝搬路を経ているから、受けているフェージングも異なる。そのため、変復調回路101の復調部は、空間多重された下りリンク変調受信信号の各々に基づいて、基地局−移動局間の複数の伝搬路の特性値であるチャネル行列を求めることができる。変復調回路101の復調部は、そのチャネル行列の逆行列と空間多重された下りリンク変調受信信号とを乗算することにより、空間多重される前の4系列の下りリンク変調受信信号を求める。そして、変復調回路101の復調部は、下りリンク周波数で4系列の下りリンク変調受信信号を復調して、4系列の下り受信信号を生成する。
【0029】
以上のように、第1の実施の形態によれば、第1のサーキュレータ111,131が送受信用アンテナ103,123で受信した下りリンク変調受信信号を受信フィルタ109,129へ導くと共に、第2のサーキュレータ113,133が受信用アンテナ105,125で受信した下りリンク変調受信信号を同じ受信フィルタ109,129へと導く。すなわち、別々のアンテナで受信された下りリンク変調受信信号が1つの受信フィルタを透過するので、受信するアンテナ毎に受信フィルタを設ける必要がないから、受信するアンテナ2本を有する無線部1つにつき、受信フィルタ1つ分の回路面積を削減できる。
【0030】
上述した第1の実施の形態では、第1のサーキュレータ111,131が、受信アンテナ105,125から第2のサーキュレータ113,133を経て受信フィルタ109,129を透過する下りリンク変調受信信号を、変復調回路101の復調部へ導き、第2のサーキュレータ113,133が、送受信用アンテナ103,123から第1のサーキュレータ111,131を経て受信フィルタ109,129を透過する下りリンク変調受信信号を、変復調回路101の復調部へ導く。これにより、各サーキュレータが2つの用途に用いられるから、個別の配線を設けた場合と比べて回路内の配線数を削減することができるので好ましい。
【0031】
(第1の実施の形態の変形例)
但し、本発明はかかる形態に限定されるものではなく、受信アンテナから第2のサーキュレータを経て受信フィルタを透過する下りリンク変調受信信号が、第1のサーキュレータを経ずに変復調回路の復調部へ導かれてもよい。また、送受信用アンテナから第1のサーキュレータを経て受信フィルタを透過する下りリンク変調受信信号が、第2のサーキュレータを経ずに変復調回路の復調部へ導かれてもよい。
【0032】
上述した第1の実施の形態では、無線部100が、第1のサーキュレータと変復調回路101の間に存在し、下りリンク変調受信信号を増幅する増幅器117及び第2のサーキュレータと変復調回路101の間に存在し、下りリンク変調受信信号を増幅する増幅器119を含んでいるが、本発明はかかる形態に限定されるものではなく、変復調回路101がかかる増幅器を含んでもよい。また、無線部120が、第1のサーキュレータと変復調回路101の間に存在し、下りリンク変調受信信号を増幅する増幅器137及び第2のサーキュレータと変復調回路101の間に存在し、下りリンク変調受信信号を増幅する増幅器139を含んでいるが、本発明はかかる形態に限定されるものではなく、変復調回路101がかかる増幅器を含んでもよい。
【0033】
上述した第1の実施の形態は、各アンテナから異なる信号を送信する空間分割多重(Space Division Multiplexing、SDM)方式によるMIMOに使用されているが、本発明はかかる形態に限定されるものではなく、例えば、各送信ビーム毎に異なる信号を発信するE−SDM(Eigenbeam-Space Division Multiplexing)方式によるMIMO又はその他のMIMOに使用されてもよい。
【0034】
上述した第1の実施の形態は、移動局で2本の送信アンテナを用い、基地局で4本の受信アンテナを用いる移動局送信2×4MIMO、及び、基地局で4本の送信アンテナを用い、移動局で4本の受信アンテナを用いる移動局受信4×4MIMOに使用されているが、本発明はかかる形態に限定されるものではなく、例えば、移動局で2本の送信アンテナを用い、基地局で2本の受信アンテナを用いる移動局送信2×2MIMO等、異なるアンテナ構成を有するMIMOに使用されてもよい。
【0035】
上述した第1の実施の形態では1つの変復調回路内に変調部及び復調部が備えられているが、本発明はかかる形態に限定されるものではなく、変調部及び復調部が移動局にそれぞれ独立に設けられていてもよい。
【0036】
上述した第1の実施の形態では2つの無線部が設けられているが、本発明はかかる形態に限定されるものではなく、1つの無線部のみを有していてもよいし、3つ以上の無線部を有していてもよい。
【0037】
(第2の実施の形態)
続いて、本発明の第2の実施の形態に係るMIMOが可能な移動局を説明する。
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る移動局の図である。移動局は、無線部(送受信セット)200及び230並びに変復調回路201とを備える。無線部200は、送受信用アンテナ202、受信用アンテナ203、第1の送信フィルタ205、第2の送信フィルタ207、第1の受信フィルタ209、第2の受信フィルタ211、送信切替器213及び215、受信切替器217及び219、第1のサーキュレータ221、第2のサーキュレータ223、増幅器225及び227を有する。無線部200は変復調回路201に接続されている。
【0038】
無線部230の構成は無線部200の構成と同じである。無線部230は、送受信用アンテナ232、受信用アンテナ233、第1の送信フィルタ235、第2の送信フィルタ237、第1の受信フィルタ239、第2の受信フィルタ241、送信切替器243及び245、受信切替器247及び249、第1のサーキュレータ251、第2のサーキュレータ253、増幅器255及び257を有する。無線部200は変復調回路201に接続されている。
図2では図示されていないが、変復調回路201は変調部及び復調部を備える。
【0039】
無線部200の送受信用アンテナ202は、第1及び第2の上りリンク変調送信信号を送信し、第1及び第2の下りリンク変調受信信号を受信する。受信用アンテナ203は、第1及び第2の下りリンク変調受信信号を受信する。第1の送信フィルタ205は、第1の上りリンク周波数を透過する帯域制限フィルタである。第2の送信フィルタ207は、第2の上りリンク周波数を透過する帯域制限フィルタである。第1の受信フィルタ209は、第1の下りリンク周波数を透過する帯域制限フィルタである。第2の受信フィルタ211は、第2の下りリンク周波数を透過する帯域制限フィルタである。第1のサーキュレータ221及び第2のサーキュレータ223は、3つの入出力ポートを有する3ポートサーキュレータである。
【0040】
無線部230の送受信用アンテナ232は、第1及び第2の上りリンク変調送信信号を送信し、第1及び第2の下りリンク変調受信信号を受信する。受信用アンテナ233は、第1及び第2の下りリンク変調受信信号を受信する。第1の送信フィルタ235は、第1の上りリンク周波数を透過する帯域制限フィルタである。第2の送信フィルタ237は、第2の上りリンク周波数を透過する帯域制限フィルタである。第1の受信フィルタ239は、第1の下りリンク周波数を透過する帯域制限フィルタである。第2の受信フィルタ241は、第2の下りリンク周波数を透過する帯域制限フィルタである。第1のサーキュレータ251及び第2のサーキュレータ253は、3つの入出力ポートを有する3ポートサーキュレータである。
【0041】
第1の上りリンク周波数、第2の上りリンク周波数、第1の下りリンク周波数、及び第2の下りリンク周波数は、それぞれ相互に異なる。
【0042】
次に、上りリンク変調送信信号の送信処理について説明する。まず、第1の上りリンク周波数を用いる場合について説明する。
変復調回路201の変調部は、異なる2系列の上りリンク送信信号を第1の上りリンク周波数で変調して、2系列の第1の上りリンク変調送信信号を生成する。送信切替器215は、上りリンク送信に第1の上りリンク周波数が使用されるのに応じて、生成された第1の上りリンク変調送信信号のうちの1系列を増幅器225へ導く。その系列は、増幅器225で増幅された後、第1の上りリンク周波数を透過する第1の送信フィルタ205へと導かれる。その系列は、第1の送信フィルタ205を透過し、送信切替器213に導かれて送受信用アンテナ202に向かう。
【0043】
また、変復調回路201の変調部で生成された、別の第1の上りリンク変調送信信号の1系列が、送信切替器245へ導かれる。送信切替器245は、上りリンク送信に第1の上りリンク周波数が使用されるのに応じて、生成された第1の上りリンク変調送信信号のうちの別の1系列を増幅器255へ導く。その系列は、増幅器255で増幅された後、第1の上りリンク周波数を透過する第1の送信フィルタ235へと導かれる。その系列は、第1の送信フィルタ235を透過し、送信切替器243に導かれて送受信用アンテナ232に向かう。
【0044】
これら2系列の第1の上りリンク変調送信信号は、送受信アンテナ202及び送受信アンテナ232から同時に並列に基地局へ送信される。送信された2系列の第1の上りリンク変調送信信号は空間多重され、図示されていない基地局に備えられた4本の受信アンテナで受信される。
【0045】
続いて、第2の上りリンク周波数を用いる場合について説明する。基本的に、第1の上りリンク周波数を用いる場合の送信処理と同様であるが、第2の上りリンク周波数が使用されるのに応じて、各送信切替器が送信すべき第2の上りリンク変調送信信号を各第2の送信フィルタへと導く点が異なる。
【0046】
次に、下りリンク変調受信信号の受信処理について説明する。まず、第1の下りリンク周波数を用いる場合の受信処理について説明する。
図示されていない基地局が有する4本の送信アンテナから、異なる4系列の下りリンク変調受信信号が、第1の下りリンク周波数で同時に送信されて空間多重される。
【0047】
第1の下りリンク周波数で変調されている第1の下りリンク変調受信信号が無線部200の送受信用アンテナ202で受信される。送受信用アンテナ202で受信された第1の下りリンク変調受信信号は、第1のサーキュレータ221により受信切替器217へ導かれる。受信切替器217は、下りリンク受信に第1の下りリンク周波数が使用されるのに応じて、受信された第1の下りリンク変調受信信号を、第1の下りリンク周波数を透過する第1の受信フィルタ209へと導く。その第1の下りリンク変調受信信号は、第1の受信フィルタ209を透過した後、受信切替器219へと導かれ、受信切替器219により第2のサーキュレータ223に向けられる。さらに、その第1の下りリンク変調受信信号は、第2のサーキュレータ223により変復調回路201の復調部へ導かれる。図2には示されていないが、変復調回路201にはその第1の下りリンク変調受信信号を増幅する増幅器が設けられている。但し、かかる増幅器を無線部200に設けてもよい。
【0048】
第1の下りリンク周波数で変調されている第1の下りリンク変調受信信号が無線部200の受信用アンテナ203で受信される。受信用アンテナ203で受信された第1の下りリンク変調受信信号は、第2のサーキュレータ223により受信切替器219へ導かれる。受信切替器219は、下りリンク受信に第1の下りリンク周波数が使用されるのに応じて、受信された第1の下りリンク変調受信信号を、第1の下りリンク周波数を透過する第1の受信フィルタ209へと導く。その第1の下りリンク変調受信信号は、第1の受信フィルタ209を透過した後、受信切替器217へと導かれ、受信切替器217により第1のサーキュレータ221に向けられる。さらに、その第1の下りリンク変調受信信号は、第1のサーキュレータ221により変復調回路201の復調部へ導かれる。図2には示されていないが、変復調回路201にはその第1の下りリンク変調受信信号を増幅する増幅器が設けられている。但し、かかる増幅器を無線部200に設けてもよい。
【0049】
同様にして、無線部230においても、送受信用アンテナ232に受信された第1の下りリンク変調受信信号及び受信アンテナ233に受信された第1の下りリンク変調受信信号が、変復調回路201の復調部へ導かれる。図2には示されていないが、変復調回路201にはこれらの第1の下りリンク変調受信信号を増幅する増幅器が設けられている。但し、かかる増幅器を無線部230に設けてもよい。
【0050】
基地局が有する4本の送信アンテナのうちどの1本から第1の下りリンク周波数で送信された第1の下りリンク変調受信信号であっても、移動局の4本の受信アンテナ(無線部200のアンテナ202及び203並びに無線部230の232及び233)全てによって、空間多重された状態で受信される。換言すると、移動局の各々の受信アンテナは、基地局の4本の送信アンテナから第1の下りリンク周波数で送信されて空間多重された第1の下りリンク変調受信信号を受信する。
【0051】
移動局の4本の受信アンテナでそれぞれ受信された、空間多重された第1の下りリンク変調受信信号は、受信したアンテナに対応する無線部200又は無線部230を経て、変復調回路201の復調部へそれぞれ向けられる。
【0052】
4本の受信アンテナ(無線部200のアンテナ202及び203並びに無線部230の232及び233)で受信された、空間多重された第1の下りリンク変調受信信号の各々は、それぞれ異なる伝搬特性を有する伝搬路を経ているから、受けているフェージングも異なる。そのため、変復調回路201の復調部は、空間多重された第1の下りリンク変調受信信号の各々に基づいて、基地局−移動局間の複数の伝搬路の特性値であるチャネル行列を求めることができる。変復調回路201の復調部は、そのチャネル行列の逆行列と空間多重された第1の下りリンク変調受信信号とを乗算することにより、空間多重される前の4系列の第1の下りリンク変調受信信号を求める。そして、変復調回路201の復調部は、第1の下りリンク周波数で4系列の第1の下りリンク変調受信信号を復調して、4系列の下り受信信号を生成する。
【0053】
続いて、第2の下りリンク周波数を用いる場合の受信処理について説明する。基本的に、第1の下りリンク周波数を用いる場合の受信処理と同様であるが、第2の下りリンク周波数が使用されるのに応じて、各受信切替器が受信された第2の下りリンク変調受信信号を各第2の受信フィルタへと導く点が異なる。
【0054】
以上のように、第2の実施の形態によれば、1つの無線部が第1及び第2の上りリンク周波数に応じて、透過させるべき周波数特性を有する送信フィルタに向けて送信切替器が送信信号を導く。また、1つの無線部が第1及び第2の下りリンク周波数に応じて、透過させるべき周波数特性を有するフィルタに向けて受信切替器が受信信号を導く。
そのため、第1及び第2の上りリンク周波数での信号送信と第1及び第2の下りリンク周波数での信号受信を1つの無線部で行うことができるから、周波数毎に無線部を設けた構成と比較して、無線部面積の増大が抑えられ、回路構造を単純化できる。
【0055】
(第2の実施の形態の変形例)
上述した第2の実施の形態においては、第1の実施の形態における変形例が全て適用される。
【0056】
上述した第2の実施の形態では、上りリンク周波数として第1の上りリンク周波数及び第2の上りリンク周波数の2周波数が用いられているが、本発明はかかる形態に限定されるものではなく、3以上の上りリンク周波数が用いられてもよい。
これは、下りリンク周波数においても同様である。
【0057】
上述した第2の実施の形態では、1つの無線部につき2対の送信切替器を備え、各送信切替器の対の間に周波数特性の異なる2つの送信フィルタが並列に設置されているが、本発明はかかる形態に限定されるものではない。各送信切替器の対の代わりに、いずれか片方の送信切替器のみを備えてもよい。すなわち、例えば図2の無線部200においては、送信切替器213及び215が備えられているが、送信切替器213のみ備え、送信切替器215の部分を配線としてもよく、また、送信切替器215のみ備え、送信切替器213の部分を配線としてもよい。
これは、受信切替器及び受信フィルタにおいても同様である。
【0058】
(第3の実施の形態(基地局への応用))
上述した第1及び第2の実施の形態は、少なくとも1つの上りリンク周波数で基地局に変調送信信号を送信し、少なくとも1つの下りリンク周波数で基地局から変調受信信号を受信する、MIMOが可能な移動局に用いられているが、本発明はかかる形態に限定されるものではなく、例えば、少なくとも1つの下りリンク周波数で複数の移動局に変調送信信号を送信し、少なくとも1つの上りリンク周波数で複数の移動局から変調受信信号を受信する、MIMOが可能な基地局に応用することもできる。このような応用は、「移動局」と「基地局」を相互に読み替え、「上りリンク」と「下りリンク」を相互に読み替えることにより、第1及び第2の実施の形態を修正することによって実現できる。
【0059】
この第3の実施の形態は、第1及び第2の実施の形態と同様、上りリンク通信にSC−FDMAを用い、下りリンク通信にOFDMAを用いる無線通信システムに適用可能であるが、これに限定されるものではない。
【0060】
第3の実施の形態に係る基地局の構成、送信処理、及び受信処理は、第1の実施の形態に係るMIMOが可能な移動局と同じである。但し、送信処理において変復調回路101が行う変調送信信号の生成処理、及び受信処理において変復調回路101が行う変調受信信号の生成処理が異なるため、以下に説明する。
【0061】
まず、基地局からの下りリンク変調送信信号の送信処理について説明する。
変復調回路101の変調部は、複数ユーザに対する送信データを表す、異なる2系列の下りリンク送信信号を同一の下りリンク周波数で変調して、2系列の下りリンクOFDMA変調送信信号を生成する。
【0062】
生成された2系列の下りリンク変調送信信号のうちの1系列は、無線部100の増幅器115へ導かれ、別の下りリンク変調送信信号の1系列は、無線部120の増幅器135へ導かれる。生成された2系列の下りリンク変調送信信号が、それぞれ増幅器115及び増幅器135に導かれた後の処理は、第1の実施の形態の送信処理と同じである。
【0063】
次に、基地局での上りリンク変調受信信号の受信処理について説明する。図示されていない複数の移動局がそれぞれ有する4本の送信アンテナから送信されて、空間多重された上りリンクSC−FDMA変調受信信号が、送受信用アンテナ103及び123並びに受信用アンテナ105及び125で受信される。その後、空間多重された上りリンク変調受信信号が受信フィルタを経て復調部へ導かれるまでの処理は、第1の実施の形態の受信処理と同じである。
【0064】
変復調回路201の復調部が、4本の受信アンテナで受信された、空間多重された上りリンクSC−FDMA変調受信信号から、空間多重される前の上りリンクSC−FDMA変調受信信号を求める。そして、変復調回路201の復調部が、上りリンク周波数で各移動局に対応する上りリンク変調受信信号を復調して、上りリンク受信信号を生成する。
【0065】
なお、第3の実施の形態に係る基地局の構成、送信処理、及び受信処理は、第2の実施の形態に係るMIMOが可能な移動局と同じでもよい。但し、送信処理において変復調回路201が行う変調送信信号の生成処理、及び受信処理において変復調回路201が行う変調受信信号の生成処理が、上記の第1の実施の形態を応用した基地局と同様に異なる。
【0066】
以上のように、第3の実施の形態によれば、第1及び第2の実施の形態により実現されたのと同様の効果を、基地局においても実現することができる。
【0067】
上述した第3の実施の形態においては、第1及び第2の実施の形態における変形例が、「移動局」と「基地局」を相互に読み替え、「上りリンク」と「下りリンク」を相互に読み替えた上で、全て適用される。
【符号の説明】
【0068】
100、120 無線部(送受信セット)
101 変復調回路(変調部、復調部)
103、123 送受信用アンテナ
105、125 受信用アンテナ
107、127 送信フィルタ
109、129 受信フィルタ
111、131 第1のサーキュレータ
113、133 第2のサーキュレータ
200、230 無線部(送受信セット)
201 変復調回路(変調部、復調部)
202、232 送受信用アンテナ
203、233 受信用アンテナ
205、235 第1の送信フィルタ
207、237 第2の送信フィルタ
209、239 第1の受信フィルタ
211、241 第2の受信フィルタ
221、251 第1のサーキュレータ
223、253 第2のサーキュレータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信周波数で送信信号を変調して変調送信信号を生成する変調部と、
前記送信周波数と異なる受信周波数で変調受信信号を復調して受信信号を生成する復調部と、
前記変調部および前記復調部に接続されて、前記変調送信信号を送信し、前記変調受信信号を受信する少なくとも1つの送受信セットを備え、
前記送受信セットは、
前記変調送信信号を送信し、前記変調受信信号を受信する送受信用アンテナと、
前記変調受信信号を受信する受信アンテナと、
前記変調部と前記送受信用アンテナとの間に介在し、前記変調部で生成される前記変調送信信号を透過させる送信フィルタと、
前記送受信用アンテナと前記復調部との間に介在するとともに、前記受信アンテナと前記復調部との間に介在し、前記送受信用アンテナおよび前記受信アンテナで受信される前記変調受信信号を透過させる受信フィルタと、
前記送受信用アンテナで受信される前記変調受信信号を前記受信フィルタへ導く第1のサーキュレータと、
前記受信用アンテナで受信される前記変調受信信号を前記受信フィルタへ導く第2のサーキュレータとを備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記第1のサーキュレータは、前記受信アンテナから前記第2のサーキュレータを経て前記受信フィルタを透過する前記変調受信信号を、前記復調部へ導き、
前記第2のサーキュレータは、前記送受信用アンテナから前記第1のサーキュレータを経て前記受信フィルタを透過する前記変調受信信号を、前記復調部へ導くことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記変調部は、第1の送信周波数で送信信号を変調して第1の変調送信信号を生成することが可能であり、第2の送信周波数で送信信号を変調して第2の変調送信信号を生成することが可能であり、
前記復調部は、前記第1の送信周波数と異なる第1の受信周波数で変調受信信号を復調して受信信号を生成することが可能であり、前記第2の送信周波数と異なる第2の受信周波数で変調受信信号を復調して受信信号を生成することが可能であり、
前記送受信用アンテナは、前記変調部で生成される前記第1の変調送信信号と前記第2の変調送信信号を送信可能であり、
前記送受信アンテナは、前記第1の受信周波数で変調された変調受信信号と前記第2の受信周波数で変調された変調受信信号を受信可能であり、
前記受信アンテナは、前記第1の受信周波数で変調された変調受信信号と前記第2の受信周波数で変調された変調受信信号を受信可能であり、
前記送信フィルタは、前記第1の変調送信信号を透過させる第1の送信フィルタと、前記第2の変調送信信号を透過させる第2の送信フィルタとを備え、
前記受信フィルタは、前記第1の受信周波数で変調された変調受信信号を透過させる第1の受信フィルタと、前記第2の受信周波数で変調された変調受信信号を透過させる第2の受信フィルタとを備え、
さらに、送信に前記第1の送信周波数が使用されるか前記第2の送信周波数が使用されるかに応じて、前記第1の送信フィルタと前記第2の送信フィルタのいずれかを有効にする送信切替部と、
受信に前記第1の受信周波数が使用されるか前記第2の受信周波数が使用されるかに応じて、前記第1の受信フィルタと前記第2の受信フィルタのいずれかを有効にする受信切替部とを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無線通信装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−120156(P2011−120156A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277668(P2009−277668)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】