説明

無線通報装置およびその電池容量低下検出方法

【課題】 パケット送信時の電池の電圧を正確に測定することが可能で、しかもパケットごとに電池の電圧を検出することにより、より正確な最低電圧の検出が可能な無線通報装置の提供。
【解決手段】 無線通報装置1は、パケット送信用の釦11と、電源供給用の電池12と、電池切れ検出用の電池電圧の閾値が格納される記憶部13と、パケットを送信する無線部14と、釦11が押下されると無線部14を介してパケット送信するとともに、パケットごとに電池12の電圧を記憶部13に格納された閾値と比較し電池切れの判定を行う制御部15とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通報装置およびその電池容量低下検出方法に関し、特に使用者に体調変化や事故等が発生した場合に、その旨を公衆回線等を介してセンターへ通知する無線通報装置およびその電池容量低下検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する無線通報装置、たとえば携帯式無線通報装置の電源として、リチウム電池のような小型軽量の電池が一般的によく使用されている。図10は本発明に関連する無線通報装置に使用されるリチウム電池の一例の電圧対時間特性図、図11は同リチウム電池の一例の電圧対電池容量特性図である。
【0003】
リチウム電池は図10に示すように、消費電流が比較的大きい場合(重負荷期間)は、電圧が急峻に低下する性質がある。したがって、待機時の電圧が問題なくても、無線使用時にIC(Integrated Circuit)等の定格電圧を割るおそれがある。
【0004】
また、図11はリチウム電池にある負荷を掛け続けた場合の放電カーブを示している。同図に示すように、同じ負荷を掛けても周囲温度の環境により、電池電圧や電池容量(電池残量)のカーブが異なる特性がある。同図の電池アラーム電圧(破線)のように、高温時も低温時も同じ閾値を使用していると、低温時には電池容量が未だ使い切れていないのに電池切れを表示する電池アラームが検出されてしまう。一方、高温時にはアラーム電圧に達してからの電池の残容量が低温時に比べて少なくなり、電池交換までの余力が不足することになる。
【0005】
一方、上記使用者に体調変化や事故等が発生した場合に、その旨を公衆回線等を介してセンターへ通知する無線通報装置の場合、突発的に発生する異常に備えて、常時その無線通報装置を使用できる状態に維持しておく必要がある。
【0006】
この対策として、電池電圧を監視する回路を設けて、任意の電圧を下回った際にセンターへ通知する方法が容易に考えられるが、リチウム電池の場合、上述の特性があり、正確に電圧を測定できないことや、電池容量が残っているにも関わらず電池容量の低下とみなされてしまうおそれがある。
【0007】
その解決方法の一例として、電圧検出回路にコンデンサを配置し電荷を蓄えることで、無線使用時の電圧検出回路での電圧ドロップの変動をなくし、電池切れ判定を実施する方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0008】
また、他の解決方法の一例として、電圧ドロップの地点から電圧が復旧するまでの時間を計測し、電池容量を確認する方法が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0009】
また、他の解決方法の一例として、2次電池を大電流で放電させる回路と、動作開始から一定時間経過後に2次電池の端子電圧を測定する回路と、この端子電圧から電圧降下量を算出する回路と、算出された電圧降下量を基準値と比較する回路とを有し、電圧降下量が基準値を超える場合に放電を停止する方法が提案されている(たとえば、特許文献3参照)。
【0010】
また、他の解決方法の一例として、第1サーミスタと第1抵抗を並列に接続した回路と、第2サーミスタと第2抵抗を直列に接続した回路とを直列に接続し、その両端にリチウムイオン2次電池の出力電圧を印加し、放電末期電圧を温度で補正して検出する補正回路が提案されている(たとえば、特許文献4参照)。
【0011】
また、他の解決方法の一例として、単色光をリチウム電池の電極表面に照射し、その反射光を受光部に導き、反射吸光度を演算し、予め記憶しておいた反射吸光度と電池容量との関係を比較して電池容量を算出するリチウム電池の残存容量測定方法が提案されている(たとえば、特許文献5参照)。
【0012】
また、他の解決方法の一例として、周期的にスイッチング素子を所定時間駆動して電池から通常の負荷電流より大きい過電流を流し、それに伴って低下する電池の端子電圧を測定し電池の寿命を判別する電池寿命検出装置が提案されている(たとえば、特許文献6参照)。
【0013】
また、他の解決方法の一例として、リチウム電池に第1の負荷を接続して電池の端子電圧を検出し、次いでリチウム電池に第1の負荷よりも小さい第2の負荷を接続して端子電圧を検出し、それぞれの検出電圧に基づいて電池の第1、第2の容量低下状態を検出する電池容量低下検出装置が提案されている(たとえば、特許文献7参照)。
【0014】
また、他の解決方法の一例として、リチウム電池の端子電圧および電流の各サンプリングデータに基づき、リチウム電池の電極内のリチウム拡散濃度勾配に応じてリチウム電池の起電力の電流依存性を補正し、この補正結果からチウム電池の開回路電圧を求め、この開回路電圧に基づきリチウム電池の残存容量を測定するリチウム電池の残存容量測定方法が提案されている(たとえば、特許文献8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2001−228221号公報
【特許文献2】特開平09−247865号公報
【特許文献3】特開平07−037621号公報
【特許文献4】特許第3851100号公報
【特許文献5】特開2000−131405号公報
【特許文献6】特開平01−127983号公報
【特許文献7】特開平04−346072号公報
【特許文献8】特開平11−204149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、特許文献1記載の発明では、待機時の電圧を見て判定するので、重負荷時にドロップした電圧が何ボルトであるか知ることができないという欠点がある。したがって、ドロップした電圧がIC等の素子の定格電圧を下回っている可能性があり、通報を実施したくてもIC等が動作せず、肝心な通報ができない可能性がある。
【0017】
また、コンデンサに蓄えた電圧は、漏れ電流や検出回路の入力抵抗で消費されるため、待機時にも常に消費電流が発生し、電池容量を低下させてしまい装置の寿命を縮めてしまうという欠点がある。
【0018】
また、特許文献2記載の発明では、電池電圧が復旧するまで計測を行わなければならず、長い場合は数分間監視を実施する必要がある。そのため、無線を実施していないときの消費電流が増加するため、電池寿命を縮めてしまうという欠点がある。
【0019】
また、電池切れアラームを復旧までの時間で判定しているため、電池電圧が実際に何ボルトまで低下したかは観察していない。図12はこの種の電池の一例の端子電圧対時間特性図である。一例として、同図に示すように、電池電圧が復旧途中の段階で、使用者が再度釦を押下することが想定されるが、その場合は電池電圧は復旧途中から急峻に低下する。
【0020】
したがって、最低電圧を測定していないと、この最低電圧がIC等の素子の定格を下回る危険があることを察知できないという欠点がある。また、復旧後の電圧は通常の1回釦が押下された場合に復旧する電圧よりも低くなるため、電池残量が存在するにも関わらず電池切れと判定するおそれがある。
【0021】
また、特許文献3記載の発明では、重負荷時に一度だけ2次電池の端子電圧を測定する構成である。一方、2次電池では重負荷状態が一定時間継続し電流を消費するほど容量が低下し、端子電圧も低下するという特性がある。したがって、この発明では重負荷状態が一定時間継続した場合の端子電圧の変化を検出することができないという欠点がある。
【0022】
また、特許文献4記載の発明では、温度による補正を加えた電圧値を読み取ることができる。しかし、実際のリチウム電池は温度により電池容量がなくなる付近の電圧のカーブが異なる特性がある。したがって、この発明では低音時と高温時の両方において効率よく電池残量を取り出す値を設定するのは困難と考えられる。
【0023】
また、この発明では電池端子電圧の相対値を周囲温度にしたがって補正し、その補正値を固定の閾値と比較している。すなわち、端子電圧が周囲温度に応じて変化し、閾値が固定という構成であり、本発明と全く逆である。このため、特許文献4記載の発明では周囲温度に応じた電池端子電圧の相対値を算出するためのサーミスタ回路を2個設ける必要があり、部品点数が増加し費用が増加するという欠点がある。
【0024】
また、他の特許文献5〜8記載の発明には、パケットごとに電池の電圧を閾値と比較するという本発明の特徴的構成は全く記載されていない。
【0025】
そこで本発明の目的は、パケット送信時の電池の電圧を正確に測定することが可能で、しかもパケットごとに電池の電圧を検出することにより、より正確な最低電圧の検出が可能な無線通報装置およびその電池容量低下検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前記課題を解決するために、本発明による無線通報装置は、パケット送信用の釦と、電源供給用の電池と、電池切れ検出用の電池電圧の閾値が格納される記憶部と、パケットを送信する無線部と、前記釦が押下されると前記無線部を介してパケット送信するとともに、パケットごとに前記電池の電圧を前記記憶部に格納された閾値と比較し電池切れの判定を行う制御部とを含むことを特徴とする。
【0027】
また、本発明による電池容量低下検出方法は、パケット送信用の釦と、電源供給用の電池と、電池切れ検出用の電池電圧の閾値が格納される記憶部と、パケットを送信する無線部と、制御部とを含む無線通報装置における電池容量低下検出方法であって、前記制御部は前記釦が押下されると前記無線部を介してパケット送信するとともに、パケットごとに前記電池の電圧を前記記憶部に格納された閾値と比較し電池切れの判定を行うことを特徴とする。
【0028】
また、本発明による電池容量低下検出方法のプログラムは、パケット送信用の釦と、電源供給用の電池と、電池切れ検出用の電池電圧の閾値が格納される記憶部と、パケットを送信する無線部と、制御部とを含む無線通報装置における電池容量低下検出方法のプログラムであって、前記制御部に、前記釦が押下されると前記無線部を介してパケット送信するとともに、パケットごとに前記電池の電圧を前記記憶部に格納された閾値と比較し電池切れの判定を行わせるためのものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、パケット送信時の電池の電圧を正確に測定することが可能で、しかもパケットごとに電池の電圧を検出することにより、より正確な最低電圧の検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る無線通報装置の動作原理を示す模式図である。
【図2】本発明に係る携帯式無線通報装置の第1実施形態の構成図である。
【図3】本発明に係る無線通報装置の電池電圧対時間特性の一例を示す図である。
【図4】電池電圧の検出値とノイズの関係の一例を示す電圧対時間特性図である。
【図5】電池電圧と電池容量との関係の一例を示す電圧対電池容量特性図である。
【図6】本発明に係る無線通報装置の第1実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係る無線通報装置の第2実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係る携帯式無線通報装置の第3実施形態の構成図である。
【図9】第3実施形態の動作の一例を示す模式図である。
【図10】本発明に関連する無線通報装置に使用されるリチウム電池の一例の電圧対時間特性図である。
【図11】同リチウム電池の一例の電圧対電池容量特性図である。
【図12】この種の電池の一例の端子電圧対時間特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
まず、実施の形態の説明に入る前に、本発明の動作原理について説明する。図1は本発明に係る無線通報装置の動作原理を示す模式図である。同図を参照すると、本発明に係る無線通報装置1は、釦11と、電池12と、記憶部13と、無線部14と、制御部15とを含んでいる。
【0032】
釦11はパケット送信を行う際に押下される。電池12は各部に電源を供給する。記憶部13には電池切れ検出用の電池電圧の閾値が格納される。無線部14はパケットを送信する。制御部15は釦11が押下されると無線部14を介してパケット送信するとともに、パケットごとに電池12の電圧を記憶部13に格納された閾値と比較し電池切れの判定を行う。
【0033】
すなわち、本発明によれば、パケット送信時という重負荷時に電池12の電圧を測定し、その値を閾値と比較して電池切れの判定を行うため、パケット送信時の電池の電圧を正確に測定することが可能となる。また、この電池切れの判定は待機時には行わないので待機時の消費電流を抑制することが可能となる。さらに、パケット送信時にパケットごとに電池切れの判定を行うため、パケット送信状態が一定時間継続した場合の端子電圧の変化を検出することが可能となる。
【0034】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。まず、第1の実施形態について説明する。図2は本発明に係る携帯式無線通報装置の第1実施形態の構成図である。なお、図1と同様の構成部分には同一番号を付し、その説明を省略する。
【0035】
同図では、無線通報装置の一例として携帯式のものを表示している。しかし、これに限定されるものではなく、固定式の無線通報装置に本発明を適用することも可能である。同図を参照すると、本発明に係る携帯式無線通報装置2は電池12と、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor ・ Field Effect Transistor)16と、温度検出部17と、釦11と、電池切れアラームLED(Light Emitting Diode)18と、無線部14と、制御部15とを含んで構成される。
【0036】
また、制御部15はA/D(Analog to Digital )変換部19と、記憶部13とを含んで構成される。なお、A/D変換部19と、記憶部13とを制御部15とは別個に設け、制御部15がA/D変換部19と記憶部13とを制御する構成も可能である。
【0037】
電池12は一例としてリチウム電池である。本発明ではリチウム電池のような重負荷時に電圧が急峻に変動する電池を対象としている。したがって、リチウム電池以外でも、重負荷時に電圧が急峻に変動する電池であれば本発明の適用が可能である。この電池12により電源が携帯式無線通報装置2内の各部に供給される。
【0038】
MOSFET16はオン・オフ制御用のスイッチとして用いている。しかし、MOSFET16に限定されるものではなく、オフ時に電流を遮断することが可能なスイッチであれば本発明の適用が可能である。
【0039】
温度検出部17は電池12の周囲の温度を検出するものである。この温度検出部17は、当業者にとってよく知られており、また本発明とは直接関係しないので、その詳細な構成の説明は省略する。釦11はパケット送信するに際し押下される。電池切れアラームLED18は、電池切れ時にアラーム表示する(電池寿命低下を知らせる)ものであり、電池切れ時にLEDを点滅あるいは点灯させる。無線部14はパケットを送信する。
【0040】
A/D変換部19はアナログデータをデジタルデータに変換する。記憶部13には、予め電池12の周囲温度と、その周囲温度に対応する電池切れアラームの閾値が複数パターン格納されている。制御部15は、A/D変換部19、記憶部13、MOSFET16、温度検出部17、釦11、電池切れアラームLED18および無線部14を制御する。
【0041】
上記構成において、使用者が釦11を押下したことを制御部15が認識すると、制御部15は無線部14を通して情報を図示しない受信機側へ通知する。その際、制御部15はMOSFET16を動作させて、電池12の電圧がA/D変換部19に伝わるようにする。
【0042】
A/D変換部19は、電池12の電圧と、温度検出部17からの周囲温度情報をデジタル量にサンプリングする。制御部15はA/D変換部19から電池12の電圧と周囲温度情報を取得する。そして、その周囲温度情報に対応する電池切れアラームの閾値を記憶部13から読み出し、電池12の電圧と電池切れアラームの閾値とを比較する。そして、電池12の電圧がその閾値以下である場合、受信機側に電池切れアラームを通報する。
【0043】
まず、本発明の通信方法の一例について図3を参照しながら説明する。図3は本発明に係る無線通報装置の電池電圧対時間特性の一例を示す図である。電波法上、一回の通信で電波を出してよい時間が決められている。そこで、本発明では電波の送受信の確度を上げるために、電波法の制限時間内で、複数回のパケットを使用して釦11の押下があったことを受信機側に送信する。
【0044】
一方、電池12の電圧は、通信を開始することで消費電流が増えるため、待機時電圧から急峻に低下する。また、電池12は通信時間が増え電流を消費するほど容量が低下し、電圧も低下する。そこで、正確に電池切れアラームを検出するために、制御部15は通信が行われている重負荷時に電池電圧測定を実施し、毎回のパケット生成に電池切れアラーム検出結果情報を付加する。つまり、制御部15は図3のX印の点で電圧測定を実施し、電池切れアラーム判定を行う。これにより、一度の送信で複数のパケットを送信するシステムの場合も、重負荷時の低い電圧値で電池切れアラームの判定を行うことができる。
【0045】
また、パケット情報を作成する際に電池の電圧値を検出することにより、電池残量の低下を検出後、電池残量が少なくなったことを受信機側に知らせるだけの通信を行う必要がないため、即応性および無駄な通信削減による消費電流の削減という効果が得られる。
【0046】
また、複数のパケットのそれぞれに独立に測定した電池残量検出結果が付加されるので、連続2パケット以上電池残量低下アラームが検出された場合に初めて電池残量が少なくなっていると判断することにより、ノイズ等の影響による誤検出を防止することが可能となる。
【0047】
次に、なぜ本発明によれば電池切れと誤検出されるのを防止することができるのかについて説明する。図4は電池電圧の検出値とノイズの関係の一例を示す電圧対時間特性図である。電池電圧値を測定して電池切れアラームの判定に用いるのであるが、特に電池電圧が低い場合は電池電圧が変動しやすくなる傾向にある(同図参照)。また、電池電圧をアナログ値測定し、A/D変換部でデジタル化して判定するのであるが、アナログ信号の性質上突然ノイズが混入する可能性があり、電池切れと誤判定される可能性がある。
【0048】
また、電池電圧が閾値よりも十分上方にある場合も、測定したデータにノイズが乗ってしまうと電圧が低いと誤判定される可能性がある。また、特に電池残量が減ってくると電圧が変動しやすい特性があるため、閾値電圧より低いA点と、閾値電圧より高いB点(同図参照)との両方が測定される場合もある。閾値はマージンを持たせた値を設定するため、効率よく電池容量を使い切るには、B点の電圧の場合はまだ低電圧と判断しなくてもよい場合がある。そこで、パケット情報生成時に電池電圧の測定を行い、パケットごとに独立に電池電圧の測定を実施する。
【0049】
次に、温度による電池電圧閾値の決定方法の一例について説明する。図5は電池電圧と電池容量との関係の一例を示す電圧対電池容量特性図である。同図を参照すると、高温時のカーブと低音時のカーブの一例が表示されている。高温時のカーブは低音時のカーブに比べ電圧が急に低下するため、高温時の閾値Cは低音時の閾値Dよりも電池容量の残量が多い点に設定する。
【0050】
次に、本発明に係る無線通報装置の動作の一例について説明する。図6は本発明に係る無線通報装置の第1実施形態の動作を示すフローチャートである。以下の動作は、電池容量低下検出方法に関するものである。なお、以下の動作は制御部15が、A/D変換部19、記憶部13、MOSFET16、温度検出部17、釦11、電池切れアラームLED18および無線部14を制御することにより実行される。
【0051】
使用者は緊急通報を送信する際に、釦11を押下する(ステップS1)。制御部15は釦11が押下されたことを認識すると、MOSFET16をオンにして電池12の電圧がA/D変換部19へ入力するように制御する(ステップS2)。次に、A/D変換部19は、電池12の電圧と温度検出部17で検出された周囲温度とをデジタル量にサンプリングする(ステップS3)。
【0052】
制御部15はA/D変換部19から電池12の電圧と周囲温度の情報を取得する。そして制御部15は、取得した周囲温度に対応する電池切れアラームの閾値を記憶部13から読み出し(ステップS4)、電池12の電圧と読み出した閾値とを比較する(ステップS5)。
【0053】
そして、電池12の電圧が閾値以下であった場合(ステップS5にて“YES”)、制御部15は送信パケットに電池切れアラーム情報を追加する(ステップS6)。そして、制御部15は受信機側にデータを送信する(ステップS7)。
【0054】
次に、制御部15は送信したパケットが最終パケットか否かを判定し(ステップS8)、最終パケットである場合は(ステップS8にて“YES”)、MOSFET16をOFFにする(ステップS9)。そして、制御部15は電池切れアラームが検出されたことを使用者に通知するために、電池切れアラームLED18を点滅あるいは点灯させる(ステップS10)。一方、ステップS8にて最終パケットではない場合は(ステップS8にて“NO”)、ステップS3の処理に戻る。
【0055】
また、ステップS5にて電池12の電圧が閾値を超えている場合(ステップS5にて“NO”)、制御部15は受信機側にデータを送信する(ステップS11)。この場合、データには電池切れアラーム情報は付加されない。
【0056】
次に、制御部15は送信したパケットが最終パケットか否かを判定し(ステップS12)、最終パケットである場合は(ステップS12にて“YES”)、MOSFET16をOFFにする(ステップS13)。一方、ステップS12にて最終パケットではない場合は(ステップS12にて“NO”)、ステップS3の処理に戻る。
【0057】
一方、図示しない受信機側の装置は、携帯式無線通報装置2の電池切れが通知されると(ステップS7参照)、PSTN(Public Switched Telephone Network) 回線や携帯電話回線を利用して、図示しないセンターに携帯式無線通報装置2の電池切れを通知する。
【0058】
以上説明したように、本発明の第1実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0059】
第1の効果は、電圧が急に低下する重負荷時に電池切れアラーム判定を行っているので、電池の最低電圧で判定が実施できることである。
【0060】
第2の効果は、パケット送信のたびに電池切れアラーム判定を行うので、より正確な最低電圧で判定が実施できることである。
【0061】
第3の効果は、周囲温度により閾値(判定値)を変更しているので、低温時に電池容量があるにも関わらず電池切れと判定されてしまうのを防止できることである。
【0062】
第4の効果は、周囲温度により閾値(判定値)を変更しているので、高温時でも任意の電池容量を確保できることである。
【0063】
第5の効果は、無線を使用しない待機状態では、MOSFETをOFFにするので、消費電流の節約ができ、電池寿命を大幅に延ばすことができることである。
【0064】
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態の構成は第1の実施形態(図2参照)と同様である。第1の実施形態では、電池電圧が1度でも閾値以下になると電池切れを検出していたが、第2の実施形態では電池電圧が2回連続して閾値以下になった場合にのみ電池切れを検出する。
【0065】
図7は本発明に係る無線通報装置の第2実施形態の動作を示すフローチャートである。なお、以下の動作は制御部15が、A/D変換部19、記憶部13、MOSFET16、温度検出部17、釦11、電池切れアラームLED18および無線部14を制御することにより実行される。
【0066】
また、記憶部13にはフラグAおよびフラグBの情報が格納される。制御部15はこれらフラグ情報を制御する。一例として、フラグAが“1”の場合は1回目の電池電圧低下(閾値以下)を検出したことを示し、フラグBが“1”の場合は2回目の電池電圧低下 (閾値以下)を検出したことを示している。また、初期設定ではフラグAおよびフラグBは“0”に設定されている。
【0067】
使用者は緊急通報を送信する際に、釦11を押下する(ステップS21)。制御部15は釦11が押下されたことを認識すると、MOSFET16をオンにして電池12の電圧がA/D変換部19へ入力するように制御する(ステップS22)。次に、A/D変換部19は、電池12の電圧と温度検出部17で検出された周囲温度とをデジタル量にサンプリングする(ステップS23)。
【0068】
制御部15はA/D変換部19から電池12の電圧と周囲温度の情報を取得する。そして制御部15は、取得した周囲温度に対応する電池切れアラームの閾値を記憶部13から読み出す(ステップS24)。
【0069】
制御部15は記憶部13からフラグBの情報を読み出す(ステップS25)。フラグBは現在“0”なので(ステップS25にて“NO”)、制御部15は電池12の電圧と読み出した閾値とを比較する(ステップS26)。
【0070】
そして、電池12の電圧が閾値以下であった場合(ステップS26にて“YES”)、現在フラグAは“0”なので(ステップS27にて“NO”)、制御部15はフラグAを“0”から“1”に書き替え記憶部13に格納する(ステップS28)。
【0071】
まだ、最終パケットではないので(ステップS29にて“NO”)、ステップS23に戻る。制御部15は再びステップS24、S25を実行し、ステップS25にてまだフラグBは“0”なので(ステップS25にて“NO”)、ステップS26に進む。
【0072】
そして、電池12の電圧が閾値以下であった場合(ステップS26にて“YES”)、フラグAは“1”なので(ステップS27にて“YES”)、制御部15はフラグBを“0”から“1”に書き替え記憶部13に格納する(ステップS30)。そして、制御部15は送信パケットに電池切れアラーム情報を追加し(ステップS31)、受信機にデータを送信する(ステップS37)。
【0073】
まだ、最終パケットではないので(ステップS29にて“NO”)、ステップS23に戻る。制御部15は再びステップS24、S25を実行し、ステップS25にてフラグBは“1”なので(ステップS25にて“YES”)、制御部15は送信パケットに電池切れアラーム情報を追加し(ステップS31)、受信機にデータを送信する(ステップS37)。そして、まだ最終パケットではない場合は(ステップS29にて“NO”)、ステップS23に戻り、上記の動作を繰り返す。
【0074】
一方、ステップS26にて電池12の電圧が閾値を超えている場合(ステップS26にて“NO”)、制御部15はフラグAを“0”に書き替え記憶部13に格納し(ステップS32)、受信機にデータを送信する(ステップS38)。この場合は電池切れを検出していないので送信するデータに電池切れ情報は付加されない。
【0075】
また、ステップS29にて最終パケットである場合(ステップS29にて“YES”)、制御部15はMOSFET16をOFFにする(ステップS33)。そして、フラグBが“1”の場合(ステップS34にて“YES”)、制御部15は電池切れアラームが検出されたことを使用者に通知するために、電池切れアラームLED18を点滅あるいは点灯させる(ステップS35)。
【0076】
そして、制御部15はフラグ“B”を“0”に書き替え記憶部13に格納する(ステップS36)。これで処理は終了となる。一方、ステップS34にてフラグBが“0”の場合(ステップS34にて“NO”)、これで処理は終了となる。
【0077】
以上説明したように、本発明の第2実施形態によれば、1回前の電池電圧判定情報を保持しておくことで、2回連続電池電圧が閾値以下となった場合に初めて電池切れと判断することが可能となる。これにより、ノイズの影響により、あるいは電池電圧の変動により電池切れと判定されるのを防止することが可能となる。
【0078】
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態における携帯式無線通報装置では、電池切れアラームの判定が定期的に行われる。図8は本発明に係る携帯式無線通報装置の第3実施形態の構成図である。なお、図2と同様の構成部分には同一番号を付し、その説明を省略する。
【0079】
図8を参照すると、第3の実施形態における携帯式無線通報装置3の構成が、図2の第1の実施形態における携帯式無線通報装置2の構成と異なる点は、タイマー21が追加された点のみであり、その他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0080】
タイマー21は釦11が押下されるたびに起動するよう構成されている。タイマー21は起動すると、一定時間をカウントし、カウントアップするとカウント値をリセットし、再びカウントを開始する。このようにカウントを繰り返す。
【0081】
一方、釦11が再度押下されると、ほぼ同時にタイマー21はリセットされ、再び一定時間のカウントを開始する。この動作の一例を図9に示す。図9は第3実施形態の動作の一例を示す模式図である。
【0082】
制御部15は釦11が押下されると、第1の実施形態で示した動作を実行する(図6参照)。したがって、釦11が押下された場合、押下された場合に送信するデータおよびこれに追加する電池切れアラーム情報が受信機側に送信される。
【0083】
一方、釦11が押下されてから一定時間経過後(タイマー21がカウントアップ時)に、制御部15によって送信されるデータは電池切れアラーム情報のみとなる。これは、一定時間経過後には釦11が押下されないためである。
【0084】
したがって、このデータを受信した受信機側では、押下された場合に送信するデータおよびこれに追加する電池切れアラーム情報が受信された場合は、送信機側(携帯式無線通報装置3)にて釦11が押下されたと判断することができる。一方、受信機側で電池切れアラーム情報のみが受信された場合は、釦11は押下されていないと判断することができる。
【0085】
以上説明したように、本発明の第3実施形態によれば、一定の間隔で定期的に電池切れアラームの判定を実行するので、使用者の釦押下と次の釦押下との間に暫く期間が空いても、確実に通報することができる電圧を保つことが可能となる。
【0086】
次に、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は無線通報装置における電池容量低下検出方法のプログラムに関するものである。制御部15(図2および図8参照)の図示しないメモリに、図6および図7にフローチャートで示す電池容量低下検出方法のプログラムが格納されている。
【0087】
制御部15はそのメモリからそのプログラムを読み出し、そのプログラムにしたがって、A/D変換部19、記憶部13、MOSFET16、温度検出部17、釦11、電池切れアラームLED18および無線部14を制御する。その制御内容については既に述べたので、ここでの説明は省略する。
【0088】
以上説明したように、本発明の第4実施形態によれば、パケット送信時の電池の電圧を正確に測定することが可能で、しかもパケットごとに電池の電圧を検出することにより、より正確な最低電圧の検出が可能な無線通報装置における電池容量低下検出方法のプログラムが得られる。
【0089】
なお、その他の構成として、以下の構成を本発明に適用することが可能である。その1は、制御部15(図2および図8参照)において、制御部15に使用するマイクロコントローラーが温度検出を備えている場合は、温度検出部17を省略することができる。また、電池切れアラームLED18は、ブザーやスピーカーを備えて音で通知してもよい。これにより、盲目者や色弱者でもアラームの認識が可能となる。
【0090】
その2は、取得した周囲温度にも上限および下限を設定し、周囲温度がその上限および下限の範囲外となった場合(すなわち、一例として、携帯式無線通報装置2、3の周囲温度が、使用者が生活するのに厳しい温度になっている場合)に、制御部15(図2および図8参照)がパケット情報にその情報を付加し受信機側に送信する構成も可能である。これにより、使用者の安否の確認が可能となる。
【0091】
(付記1)無線通報装置に電池および制御部間に接続されるスイッチを含み、
前記制御部は釦が押下されると前記スイッチを閉にして前記電池の電圧検出を開始し、パケットの送信が終了すると前記スイッチを開にして前記電池の電圧検出を終了することを特徴とする電池容量低下検出方法。
【0092】
(付記2)前記無線通報装置に電池切れアラームを表示する電池切れアラーム部を含み、
前記制御部は前記電池の電圧が前記閾値以下であることを1回、もしくは2回連続して検出した場合、前記電池切れアラーム部にアラーム表示させることを特徴とする付記1に記載の電池容量低下検出方法。
【0093】
(付記3)前記制御部は前記電池の電圧が前記閾値以下であることを1回、もしくは2回連続して検出した場合、前記パケット送信するデータに電池切れを通知するデータを追加することを特徴とする付記1または2に記載の電池容量低下検出方法。
【0094】
(付記4)前記無線通報装置に一定時間を計測するタイマーを含み、
前記制御部は前記釦が押下されると前記タイマーに一定時間を計測させ、前記釦が押下された時に前記パケット送信および前記電池切れの判定を行い、かつ前記一定時間経過ごとに前記電池切れの判定を行うことを特徴とする付記1から3のいずれかに記載の電池容量低下検出方法。
【0095】
(付記5)前記釦が押下されたときに送信されるパケットは使用者が通報すべきデータおよび電池切れの判定に関するデータであり、その後一定時間ごとに送信されるパケットは電池切れの判定に関するデータであることを特徴とする付記4に記載の電池容量低下検出方法。
【符号の説明】
【0096】
1、2、3 無線通報装置
11 釦
12 電池
13 記憶部
14 無線部
15 制御部
16 MOSFET
17 温度検出部
18 電池切れアラームLED
19 A/D変換部
21 タイマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パケット送信用の釦と、
電源供給用の電池と、
電池切れ検出用の電池電圧の閾値が格納される記憶部と、
パケットを送信する無線部と、
前記釦が押下されると前記無線部を介してパケット送信するとともに、パケットごとに前記電池の電圧を前記記憶部に格納された閾値と比較し電池切れの判定を行う制御部とを含むことを特徴とする無線通報装置。
【請求項2】
前記電池の周囲温度を検出する温度検出部を含み、
前記記憶部には前記周囲温度に対応する閾値が格納され、
前記制御部は前記温度検出部で検出される周囲温度に対応する閾値を前記記憶部から取得し、前記電池の電圧を取得した閾値と比較して電池切れの判定を行うことを特徴とする請求項1 記載の無線通報装置。
【請求項3】
前記電池および前記制御部間に接続されるスイッチを含み、
前記制御部は前記釦が押下されると前記スイッチを閉にして前記電池の電圧検出を開始し、前記パケットの送信が終了すると前記スイッチを開にして前記電池の電圧検出を終了することを特徴とする請求項1 または2 記載の無線通報装置。
【請求項4】
電池切れアラームを表示する電池切れアラーム部を含み、
前記制御部は前記電池の電圧が前記閾値以下であることを1回、もしくは2回連続して検出した場合、前記電池切れアラーム部にアラーム表示させることを特徴とする請求項1 から3 のいずれかに記載の無線通報装置。
【請求項5】
前記制御部は前記電池の電圧が前記閾値以下であることを1回、もしくは2回連続して検出した場合、前記パケット送信するデータに電池切れを通知するデータを追加することを特徴とする請求項1 から4のいずれかに記載の無線通報装置。
【請求項6】
一定時間を計測するタイマーを含み、
前記制御部は前記釦が押下されると前記タイマーに一定時間を計測させ、前記釦が押下された時に前記パケット送信および前記電池切れの判定を行い、かつ前記一定時間経過ごとに前記電池切れの判定を行うことを特徴とする請求項1 から5のいずれかに記載の無線通報装置。
【請求項7】
前記釦が押下されたときに送信されるパケットは使用者が通報すべきデータおよび電池切れの判定に関するデータであり、その後一定時間ごとに送信されるパケットは電池切れの判定に関するデータであることを特徴とする請求項6記載の無線通報装置。
【請求項8】
パケット送信用の釦と、電源供給用の電池と、電池切れ検出用の電池電圧の閾値が格納される記憶部と、パケットを送信する無線部と、制御部とを含む無線通報装置における電池容量低下検出方法であって、
前記制御部は前記釦が押下されると前記無線部を介してパケット送信するとともに、パケットごとに前記電池の電圧を前記記憶部に格納された閾値と比較し電池切れの判定を行うことを特徴とする電池容量低下検出方法。
【請求項9】
前記無線通報装置に前記電池の周囲温度を検出する温度検出部を含み、前記記憶部には前記周囲温度に対応する閾値が格納され、
前記制御部は前記温度検出部で検出される周囲温度に対応する閾値を前記記憶部から取得し、前記電池の電圧を取得した閾値と比較して電池切れの判定を行うことを特徴とする請求項8記載の電池容量低下検出方法。
【請求項10】
パケット送信用の釦と、電源供給用の電池と、電池切れ検出用の電池電圧の閾値が格納される記憶部と、パケットを送信する無線部と、制御部とを含む無線通報装置における電池容量低下検出方法のプログラムであって、
前記制御部に、前記釦が押下されると前記無線部を介してパケット送信するとともに、パケットごとに前記電池の電圧を前記記憶部に格納された閾値と比較し電池切れの判定を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−130539(P2011−130539A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284643(P2009−284643)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】