説明

無線電力配電システム

【課題】電波防護指針を遵守しつつ、開空間無線電力配電方式で、大電力を必要とするアクチュエータなどの無線機器に電力を供給する。
【解決手段】複数の人検知センサ6を室内空間1に設置する。無線電力供給装置2において、複数の人検知センサ6からの検知結果に基づいて、室内空間1に人が存在するか否かを判断する。室内空間1に人が存在すると判断した場合、人の存在を検知している人検知センサ6の検知エリアのうち無線電力供給装置2との距離が最も近い検知エリアを最短エリアとし、人体に影響を与える虞のない電力PWsafe以下の値としてその最短エリアに応じて定められる小電力の電磁波を室内空間に送信する。室内空間1に人が存在しないと判断した場合、PWsafeよりも大電力の電磁波を室内空間1に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電磁波などの波動によって無線機器へ非接触で電力を供給する無線電力配電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、オフィスビル等における空調制御システムは、温度,湿度等の環境情報を検出するセンサと、ダクト等の給気の吹出口に設けられて、その給気の吹出口の開度を制御するアクチュエータ、およびセンサが検出した環境情報並びにユーザからの操作指令を受けてアクチュエータの駆動制御を行う制御装置を備えて構成される。この空調制御システムでは、そのシステムを構成する機器(センサ、アクチュエータ、制御装置)間の配線作業を不要とするために、無線化が望まれている。
【0003】
この空調制御システムにおいて、センサは、小電力で動作可能であるので、内蔵電池を電源として使用することができる。しかし、駆動部を有するアクチュエータは、動作電力として7〜15Wの電力を必要とし、電池では能力不足であるため、外部電源と電線で接続して電力を供給するようにしている。
【0004】
これに対し、近年、無線による電力の配信技術が進歩し、アクチュエータが動作可能な電力を電磁波で空間伝送することが可能となってきた。この無線によるアクチュエータへの電力の配電方式には2通りある。
【0005】
1つの方式は、例えば特許文献1,2に示されているように、電源用の電磁波を室内に存在する人から隔絶した伝送路を介して、無線機器に電力伝送する方式(以下、閉空間無線電力配電方式と呼ぶ)である。
【0006】
もう1つの方式は、例えば特許文献3,4に示されているように、電源用の電磁波を人が存在する室内空間を伝送路として、無線機器に電力伝送する方式(以下、開空間無線電力配電方式と呼ぶ)である。
【0007】
なお、強い電磁波に人体が曝されていると好ましくない影響を及ぼすことが懸念されており、そのために国の指針として電波防護指針が定められている。この電波防護指針では、例えば、電磁波の周波数が1.5Hz〜300GHzである場合、常時電磁波に曝される環境下(非管理環境下)では電力密度の上限値は1mW/cm2 であり、1日8時間・週5日以内の時間、電磁波に曝されている環境下(管理環境下)では電力密度の上限値は5mW/cm2 と定められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−244015号公報
【特許文献2】特開2008−22429号公報
【特許文献3】特開2005−261187号公報
【特許文献4】特開平11−32451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した閉空間無線電力配電方式では、電磁波が室内の人から隔絶した伝送路を通って伝送されるので人が電磁波に曝される虞がなく、大電力の電磁波を伝送することができるという利点がある反面、専用の伝送路を設置する必要があり、大きな投資が必要となる。また、既存のオフィスビルについて、後からこのシステムを導入する場合には、大工事が必要となる。
【0010】
一方、開空間無線電力配電方式では、専用の伝送路を設置する必要がないため、閉空間無線電力配電方式に比べて費用がかからず、既存のオフィスビルについて、後からこのシステムを導入する場合も容易に行うことができる。しかし、人が存在する室内空間を使って電磁波が伝送されると、前述した電波防護指針を遵守する必要があり、その結果、アクチュエータを動作させるのに必要な大電力の電磁波を事実上伝送することができず、空調制御システムの完全な無線化に利用することができない。
【0011】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、電波防護指針を遵守しつつ、開空間無線電力配電方式で、大電力を必要とするアクチュエータなどの無線機器に電力を供給することが可能な無線電力配電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的を達成するために本発明は、室内空間へ無線によってエネルギーを波動として送信する波動送信装置と、この波動送信装置から送信される波動を受信しその受信した波動から自己の電源電力を生成して動作する1台以上の無線機器とを備えた無線電力配電システムにおいて、自己を中心とする所定範囲を検知エリアとして人の在/不在を検知する複数の人検知センサを室内空間に設置し、波動送信装置に、複数の人検知センサからの検知結果に基づいて室内空間に人が存在するか否かを判断する在/不在判断手段と、在/不在判断手段によって室内空間に人が存在すると判断された場合、人の存在を検知している人検知センサの検知エリアのうち波動送信装置との距離が最も近い検知エリアを最短エリアとし、人体に影響を与える虞のない所定の電力(PWsafe)以下の値としてその最短エリアに応じて定められる小電力の波動を室内空間に第1の波動として送信し、在/不在判断手段によって室内空間に人が存在しないと判断された場合、人体に影響を与える虞のない所定の電力(PWsafe)よりも大電力の波動として定められる第2の波動を室内空間に送信する波動送信手段とを設けたものである。
【0013】
この発明において、波動送信装置に設けられた在/不在判断手段は、複数の人検知センサからの検知結果に基づいて、室内空間に人が存在するか否かを判断する。この発明において、波動を電磁波とした場合、在/不在判断手段によって室内空間に人が存在すると判断されると、波動送信装置は、人の存在を検知している人検知センサの検知エリアのうち自己との距離が最も近い検知エリアを最短エリアとし、その最短エリアに応じて人体に影響を与える虞のない所定の電力(PWsafe)以下の値として定められる小電力の電磁波を室内空間に第1電磁波として送信する。在/不在判断手段によって室内空間に人が存在しないと判断されると、第1の電磁波よりも大電力の電磁波して定められる第2の電磁波を室内空間に送信する。すなわち、本発明において、室内空間に人が存在すると判断された場合には、人が存在する最も近い検知エリア内の人体にも影響を与えない程度の小電力の電磁波(第1の電磁波)が室内空間を介して波動送信装置より無線機器に送られ、室内空間に人が存在しないと判断された場合には、大電力の電磁波(第2の電磁波)が室内空間を介して波動送信装置より無線機器に送られる。
【0014】
ここで、人体に影響を与える虞のない所定の電力PWsafe以下の値とは、電波防護指針に従えば、その周波数が1.5Hz〜300GHzである場合、非管理環境下では電力密度の上限値を1mW/cm2 とし、管理環境下では電力密度の上限値を5mW/cm2 とするものである。これにより、電波防護指針を遵守しつつ、開空間無線電力配電方式で、大電力を必要とするアクチュエータなどの無線機器に電力を供給することが可能となる。なお、この場合、室内空間に人が存在すると判断されると、無線機器には小電力の電磁波が送信されるようになるが、大電力の電磁波の受信時の電気エネルギーを蓄積しておけば、その蓄積された電気エネルギーによって小電力の電磁波の受信時の電源電力を確保することが可能である。また、室内空間に人が存在する場合、人が存在する最も近い検知エリア内の人体に影響を与えない程度の小電力の電磁波(第1の電磁波)を室内空間に送信することにより、電波防護指針を遵守しつつ、可能な限り大きな電力を無線機器に供給するようにして、室内空間に人が存在する場合の無線機器への小電力の供給を効率的に行うことが可能となる。
【0015】
本発明では、在/不在判断手段によって室内空間に人が存在すると判断された場合、人の存在を検知している人検知センサの検知エリアのうち波動送信装置との距離が最も近い検知エリアを最短エリアとし、PWsafe以下の値としてその最短エリアに応じて定められる小電力の波動を室内空間に第1の波動として送信するが、この場合の1つの方式として、人検知センサの各検知エリアと波動送信装置との最短距離との関係を示す第1のテーブルと、最短距離と第1の波動の電力レベルとの関係を示す第2のテーブルとを用いる方式が考えられる。この方式において、波動送信手段は、在/不在判断手段によって室内空間に人が存在すると判断された場合、人の存在を検知している人検知センサの検知エリアのうちその検知エリアに対応する第1のテーブル中の最短距離が最も短い検知エリアを最短エリアとし、この最短エリアの最短距離に応ずる第2のテーブル中の電力レベルの波動を第1の波動として室内空間に送信する。
【0016】
なお、本発明において、波動は電磁波に限られるものではなく、光や超音波などを波動として用いてもよい。また、第1の波動の電力レベルが大きくなるにつれ、室内空間に人が存在するか否かの判断周期を短くするようにしてもよい。すなわち、第1の波動の電力レベルが大きくなると、人体への影響も大きくなるので、第1の波動の電力レベルの決定の周期を短くして、警戒を強めるようにしてもよい。
【0017】
また、本発明において、人検知センサは、波動送信装置から送信される波動を受信しその受信した波動から自己の電源電力を生成して動作する無線機器の1つとしてもよい。このようにすることにより、人検知センサへの配線が不要となり、また、室内のレイアウト変更が生じた場合でも柔軟に対応することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の人検知センサを室内空間に設置し、波動送信装置において、複数の人検知センサからの検知結果に基づいて室内空間に人が存在するか否かを判断するようにし、室内空間に人が存在すると判断された場合、人の存在を検知している人検知センサの検知エリアのうち波動送信装置との距離が最も近い検知エリアを最短エリアとし、PWsafe以下の値としてその最短エリアに応じて定められる小電力の波動を室内空間に第1の波動として送信し、室内空間に人が存在しないと判断された場合、PWsafeよりも大電力の波動として定められる第2の波動を室内空間に送信するようにしたので、室内空間に人が存在する場合、小電力の波動(第1の波動)が室内空間を介して波動送信装置より無線機器に送られ、室内空間に人が存在しない場合、大電力の波動(第1の波動)が室内空間を介して波動送信装置より無線機器に送られるものとなり、電波防護指針を遵守しつつ、開空間無線電力配電方式で、大電力を必要とするアクチュエータなどの無線機器に電力を供給することが可能となる。また、電波防護指針を遵守しつつ、可能な限り大きな電力を無線機器に供給するようにして、室内空間に人が存在する場合の無線機器への小電力の供給を効率的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態(実施の形態1)を示す無線電力配電システムの構成図である。
【図2】この無線電力配電システムにおける人検知センサの設置状態を示す図である。
【図3】この無線電力配電システムにおける無線電力供給装置のシステム制御部が有する在/不在判断機能および配電レベル制御部が有する配電レベル決定機能を説明するためのフローチャートである。
【図4】この無線電力配電システムにおける無線電力供給装置のシステム制御部が有する在/不在判断機能および配電レベル制御部が有する配電レベル決定機能を説明するためのタイムチャートである。
【図5】この無線電力配電システムにおける配電レベル制御部で使用される距離順位と検知エリアと電力レベルとの関係を示すテーブルTAを示す図である。
【図6】この無線電力配電システムにおける無線電力供給装置の要部の機能ブロック図である。
【図7】本発明の他の実施の形態(実施の形態2)の無線電力配電システムにおける無線電力供給装置の要部の機能ブロック図である。
【図8】この無線電力配電システムにおける無線電力供給装置のシステム制御部が有する在/不在判断機能および配電レベル制御部が有する配電レベル決定機能を説明するためのフローチャートである。
【図9】人検知センサを多数設けた場合の配置例を示す図(天井側から見た図)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。
〔実施の形態1〕
図1はこの発明の一実施の形態(実施の形態1)を示す無線電力配電システムの構成図である。同図において、1は室内空間、2は室内空間1内に位置する無線電力供給装置、3は室内空間1内に位置する無線機器、4は外部電源、5はシステム全体の監視とアクチュエータに開度指令情報などを送信する外部コントローラ、6は人検知センサである。
【0021】
この実施の形態において、人検知センサ6は、室内空間1に複数設置されており、自己を中心とする所定範囲を検知エリアとして人の在/不在を検知する。この例では、簡単な例として、人検知センサ6を人検知センサ6−1〜6−4の4つとし、図2に示すように、室内空間1に分散して設置されているものとする。
【0022】
図2において、AR1,AR2,AR3,AR4はそれぞれ人検知センサ6−1,6−2,6−3,6−4の検知エリアであり、検知エリアAR1,AR2,AR3,AR4と無線電力供給装置2との間の最短距離R1,R2,R3,R4はR1<R3<R2<R4とされているものとする。なお、この例では、室内空間1内の全てのエリアをカバーするように人検知センサ6を設けているが、室内空間1の人が入ることができないようなエリアは除外したりしてもよい。また、人検知センサ6の検知エリアに大小を設けたりするなどしてもよい。
【0023】
なお、図1では分かり易いように、室内空間1内に無線電力供給装置2および無線機器3を位置させているが、室内空間1を通して相互に無線通信を行えればよく、無線電力供給装置2および無線機器3は室内空間1の外に位置していてもよい。また、この無線電力配電システムにおいて、無線電力供給装置2が本発明でいう波動送信装置に対応する。また、無線機器3は、複数設けられていてもよい。
【0024】
無線電力供給装置2は、外部電源4からの電源の供給を受けて安定した電源電圧を生成する安定化電源部2Aと、安定化電源部2Aからの電源電圧を受けて動作するシステム制御部2Bおよび配電レベル制御部2Cと、室内空間1への電磁波の送信および室内空間1からの電磁波の受信をアンテナANT1を介して行う送受信部2Dと、送受信部2Dを介して受信された外部からの情報をシステム制御部2Bへ送る受信制御部2Eとを備えている。
【0025】
無線機器3は、駆動部を有するアクチュエータであり、モータ3Aと、このモータ3Aの回転を減速して駆動軸DSに伝える減速部3Bと、モータ3Aを駆動するドライバ部3Cと、減速部3Bを介して駆動軸DSの回転角度位置を検出する位置検出部3Dと、位置検出部3Dによって検出される駆動軸DSの回転角度位置のフィードバックを受けてモータ3Aの回転をドライバ部3Cを介して制御する制御部3Eとを備えている。
【0026】
また、無線機器3は、アンテナATN2を介して受信した室内空間1における無線センサ(図示せず)からの温度,湿度等の環境情報および外部コントローラ5からの開度指令情報を制御部3Eへ送る受信部3Fと、制御部3Eからの情報をアンテナATN2を介して室内空間1へ送信する送信部3Gと、アンテナATN2を介して受信した無線電力供給装置2からの電磁波を電流に変換して整流する整流部3Hと、整流部3Hによって整流された電流による電荷を蓄える蓄電部3Iと、蓄電部3Iに蓄積された電荷から安定した電源電圧を生成する安定化電源部3Jとを備えている。安定化電源部3Jが生成する電源電圧はモータ3A,ドライバ部3C,制御部3E,受信部3F,送信部3Gに供給される。
【0027】
人検知センサ6は、本発明でいう無線機器の1つとして設けられ、無線電力供給装置2からの電磁波を受信し、自己の電源電力を生成して動作する機能を備えている。人検知センサ6において、6Aは人検知部、6Bは制御部、6Cは受信部、6Dは送信部、6Eは整流部、6Fは蓄電部、6Gは安定化電源部、ANT3はアンテナであり、安定化電源部6Gが生成する電源電圧は人検知部6A,制御部6B,受信部6C,送信部6Dに供給される。
【0028】
無線電力供給装置2において、システム制御部2Bや配電レベル制御部2Cは、プロセッサや記憶装置からなるハードウェアと、これらのハードウェアと協働して制御部としての各種機能を実現させるプログラムとによって実現される。
【0029】
システム制御部2Bは、本実施の形態特有の機能として、人検知センサ6−1〜6−4からの検知結果に基づいて室内空間1における人の在/不在を判断し、人が存在する検知エリアの情報も含めて、その判断結果を配電レベル制御部2Cへ送る在/不在判断機能を有している。
【0030】
配電レベル制御部2Cは、本実施の形態特有の機能として、システム制御部2Bからの在/不在の判断結果に従って、アンテナANT1から室内空間1へ送信する電磁波の電力レベル(配電レベル)を決定する配電レベル決定機能を有している。
【0031】
以下、図3に示すフローチャートおよび図4に示すタイムチャートを参照しながら、この実施の形態1における無線電力供給装置2のシステム制御部2Bが有する在/不在判断機能および配電レベル制御部2Cが有する配電レベル決定機能について説明する。
【0032】
なお、この例では、配電レベル制御部2Cに、空調空間1に人が存在している時の配電レベルを決定するためのテーブルとして、検知エリアAR1〜AR4の最短距離R1〜R4を距離の短い順に順位を付けた距離順位と検知エリアと電力レベルとの関係を示すテーブルTA(図5参照)が記憶されているものとする。この例では、検知エリアAR1〜AR4の最短距離R1〜R4は、R1<R3<R2<R4とされているので、検知エリアAR1,AR3,AR2,AR4の順で、距離順位1位,2位,3位,4位とされている。
【0033】
また、テーブルTAにおいて、検知エリアAR1〜AR4に対応付けられる電力レベルは、人体に影響を与える虞のない所定の電力(PWsafe)以下の値とされ、距離順位が高くなるに従って小さな値とされている。この例では、検知エリアAR1,AR3,AR2,AR4に対して電力レベルL1,L2,L3,L4が対応づけられているが、この電力レベルL1,L2,L3,L4は距離順位に応じてL1<L2<L3<L4≦PWsafeとされている。
【0034】
〔室内空間1に人が存在している場合〕
人検知センサ6は、自己の検知エリア内における人の存在を検知すると、その検知結果を無線電力供給装置2へ送信する。無線電力供給装置2は、人検知センサ6からの検知結果を受信すると、その検知結果をアンテナANT1,送受信部2D,受信制御部2Eの経路でシステム制御部2Bへ送る。
【0035】
システム制御部2Bは、受信制御部2Eを経由して送られてくる人検知センサ6からの検知結果に基づいて、室内空間1に人が存在すると判断する。この場合、人検知センサ6は人検知センサ6−1〜6−4の4つあり、この人検知センサ6−1〜6−4から検知結果S1〜S4が送られてくる。
【0036】
システム制御部2Bは、この人検知センサ6−1〜6−4からの検知結果S1〜S4に基づき、その内の1つでも人の存在を示す検知結果であった場合、室内空間1に人が存在すると判断する (図4(a)に示すt1点)。室内空間1に人が存在すると判断すると、システム制御部2Bは、人が存在する検知エリアの情報も含めて、その判断結果を配電レベル制御部2Cへ送る。
【0037】
配電レベル制御部2Cは、システム制御部2Bから室内空間1に人が存在する旨の判断結果が与えられると(図3:ステップS101の「在」)、その判断結果に含まれる人が存在する検知エリアの情報に基づき、その人が存在する検知エリアのうち無線電力供給装置2との距離が最も近い検知エリアを最短エリアとする(ステップS102)。この場合、テーブルTA内の距離順位に従って、その距離順位が最も高い検知エリアを最短エリアとする。例えば、人が存在する検知エリアがAR1とAR4の2つであった場合、検知エリアAR1の方が距離順位が高いので、検知エリアAR1を最短エリアとする。
【0038】
そして、配電レベル制御部2Cは、テーブルTA内の電力レベルに従って、最短エリアに対応付けられている電力レベルを配電レベルとして決定する(ステップS103)。例えば、最短エリアが検知エリアAR1であれば、検知エリアAR1に対応付けられている電力レベルL1を配電レベルとする。最短エリアが検知エリアAR4であれば、検知エリアAR4に対応付けられている電力レベルL4を配電レベルとする。そして、この決定した配電レベルで、室内空間1への電磁波の送信を行う(ステップS105)。
【0039】
この場合、テーブルTAにおいて検知エリアAR1〜AR4に対応付けられている電力レベルは、人体に影響を与える虞のない所定の電力PWsafe以下の値とされている。ここで、人体に影響を与える虞のない所定の電力PWsafe以下の値とは、電波防護指針で定められている人体に影響を与えない程度の電磁波であり、その周波数が1.5Hz〜300GHzである場合、非管理環境下では電力密度の上限値を1mW/cm2 とし、管理環境下では電力密度の上限値を5mW/cm2 とするものである。図4では、この場合の電力密度の上限値に応ずる電力レベルをPWsafeとして示している。
【0040】
したがって、室内空間1に人が存在すると判断された場合、無線電力供給装置2からは、人体に影響を与える虞のない電力レベルPWsafeよりも小さい小電力の電磁波が室内空間1に送信されるものとなる。また、この小電力の電磁波は、人が存在する最も近い検知エリア内の人体に影響を与えない程度の小電力の電磁波とされる。これにより、電波防護指針を遵守しつつ、可能な限り大きな電力を無線機器3に供給するようにして、室内空間1に人が存在する場合の無線機器3への小電力の供給を効率的に行うことができるようになる。
【0041】
〔室内空間1に人が存在していない場合〕
人検知センサ6は、室内空間1における人の不在を検知すると、その検知結果を無線電力供給装置2へ送信する。無線電力供給装置2は、人検知センサ6からの検知結果を受信すると、その検知結果をアンテナANT1,送受信部2D,受信制御部2Eの経路でシステム制御部2Bへ送る。
【0042】
システム制御部2Bは、受信制御部2Eを経由して送られてくる人検知センサ6からの検知結果に基づいて、室内空間1に人が存在しないと判断する。この場合、人検知センサ6は人検知センサ6−1〜6−4の4つあり、この人検知センサ6−1〜6−4から検知結果S1〜S4が送られてくる。
【0043】
システム制御部2Bは、この人検知センサ6−1〜6−4からの検知結果S1〜S4に基づき、その内の全てが人の存在を示さない検知結果であった場合、室内空間1に人が存在しないと判断する(図4(a)に示すt2点)。そして、この判断結果を配電レベル制御部2Cへ送る。
【0044】
配電レベル制御部2Cは、システム制御部2Bから室内空間1に人が存在しない旨の判断結果が与えられると(図3:ステップS101の「不在」)、予め定められている電力レベルLmaxを配電レベルとして決定する(ステップS104)。そして、この決定した配電レベルで、室内空間1への電磁波の送信を行う(ステップS105)。
【0045】
この場合の電力レベルLmaxは、人体に影響を与える虞のない電力レベルPWsafeよりも大きな値であり、無線機器3の動作電力を十分確保し得る電力である。したがって、室内空間1に人が存在しないと判断された場合、無線電力供給装置2からは、人体に影響を与える虞のない電力レベルPWsafeよりも大きい大電力の電磁波が室内空間1に送信されるものとなる。
【0046】
無線電力供給装置2から送信された電磁波(小電力の電磁波、大電力の電磁波)は、室内空間1を通り、無線機器3で受信される。無線機器3において、無線電力供給装置2からの電磁波は、整流部3Hへ送られる。整流部3Hは、その電磁波を電流に変換して整流し、この整流された電流を蓄電部3Iに送る。蓄電部3Iは、蓄電部3Iからの電流による電荷を蓄える。
【0047】
この場合、室内空間1に人が存在すると判断されているときには、無線電力供給装置2からの小電力の電磁波からの電気エネルギーを受けて、蓄電部3Iへの蓄電が行われる。室内空間1に人が存在しないと判断されているときには、無線電力供給装置2からの大電力の電磁波からの電気エネルギーを受けて、蓄電部3Iへの蓄電が行われる。
【0048】
ここで、室内空間1に人が存在すると判断されている場合、無線電力供給装置2からの小電力の電磁波より得られる電気エネルギーは小さい。しかし、この場合、蓄電部3Iには、室内空間1に人が存在いないと判断されていた場合の大電力の電磁波より得られる電気エネルギーが蓄えられている。室内空間1に人が存在すると判断されている場合には、この蓄電部3Iに蓄積されている電気エネルギーが使用され、小電力の電磁波の受信時の電源電力が確保される。
【0049】
このようにして、本実施の形態では、室内空間1に人が存在すると判断されている場合、無線電力供給装置2から人体に影響を与える虞れのない小電力の電磁波が室内空間1に送信されるものとなり、電波防護指針を遵守しつつ、開空間無線電力配電方式で、大電力を必要とする無線機器3に支障なく電力を供給することができるようになる。また、電波防護指針を遵守しつつ、可能な限り大きな電力を無線機器3に供給するようにして、室内空間1に人が存在する場合の無線機器3への小電力の供給を効率的に行うことができるようになる。
【0050】
図6にこの実施の形態1における無線電力供給装置2の要部の機能ブロック図を示す。無線電力供給装置2は、在/不在判断部2−1と、配電レベル決定部2−2と、テーブルTAおよび電力レベルLmaxを記憶する記憶部2−3とを備えている。
【0051】
この無線電力供給装置2において、在/不在判断部2−1は、人検知センサ6−1〜6−4からの検知結果に基づいて室内空間1における人の在/不在を判断し、人が存在する検知エリアの情報も含めて、その判断結果を配電レベル決定部2−3へ送る。
【0052】
配電レベル決定部2−3は、在/不在判断部2−1における人の在/不在の判断結果に基づいて、室内空間1に人が存在すると判断した場合、記憶部2−3中のテーブルTAに従って、人の存在を検知している人検知センサ6の検知エリアのうち無線電力供給装置2との距離が最も近い検知エリアを最短エリアとし、その最短エリアに対応付けられている電力レベルを配電レベルとして決定し、室内空間1に人が存在すると判断した場合、記憶部2−3中の電力レベルLmaxを配電レベルとして決定し、その決定した配電レベルで室内空間1への電磁波の送信を行わせる。
【0053】
〔実施の形態2〕
図7はこの発明の他の実施の形態(実施の形態2)における無線電力供給装置2の要部の機能ブロック図である。この実施の形態2では、記憶部2−3に、人検知センサ6の各検知エリアと無線電力供給装置2との最短距離との関係を示す第1のテーブルTB1と、最短距離と小電力の電磁波の電力レベルとの関係を示す第2のテーブルTB2と、大電力の電磁波の電力レベルLmaxを記憶させている。
【0054】
この例において、人検知センサ6−1の検知エリアAR1の最短距離R1は5m、人検知センサ6−2の検知エリアAR2の最短距離R1は15m、人検知センサ6−3の検知エリアAR3の最短距離R1は10m、人検知センサ6−4の検知エリアAR4の最短距離R4は20mとし、この検知エリアと最短距離との関係を第1のテーブルTAに書き込んでいる。
【0055】
また、最短距離が0〜5mまでの範囲では電力レベルL1、5〜10mまでの範囲では電力レベルL2、10〜15mまでの範囲では電力レベルL3、15〜20mまでの範囲では電力レベルL4、20〜25mまでの範囲では電力レベルL5、25〜30mまでの範囲では電力レベルL6というように、この最短距離と電力レベルとの関係を第2のテーブルTB2に書き込んでいる。なお、この場合の電力レベルL1〜L6は、L1<L2<L3<L4<L5<L6≦PWsafeとする。
【0056】
この無線電力供給装置2において、在/不在判断部2−1は、人検知センサ6−1〜6−4からの検知結果に基づいて室内空間1における人の在/不在を判断し、人が存在する検知エリアの情報も含めて、その判断結果を配電レベル決定部2−3へ送る。
【0057】
配電レベル決定部2−3は、在/不在判断部2−1における人の在/不在の判断結果に基づいて、室内空間1に人が存在すると判断した場合(図8:ステップS201の「在」)、人の存在を検知している人検知センサ6の検知エリアのうちその検知エリアに対応する第1のテーブルTB1中の最短距離が最も短い検知エリアを最短エリアとし(ステップS202)、この最短エリアの最短距離に応ずる第2のテーブルTB2中の電力レベルを配電レベルとして決定し(ステップS203)、この決定した配電レベルで室内空間1への電磁波の送信を行わせる(ステップS205)。室内空間1に人が存在しないと判断した場合(ステップS201の「不在」)、配電レベル決定部2−3は、記憶部2−3中の電力レベルLmaxを配電レベルとして決定し(ステップS204)、この決定した配電レベルで室内空間1への電磁波の送信を行わせる(ステップS205)。
【0058】
なお、上述した実施の形態1や2では、電磁波を波動として用いた場合について説明したが、波動は電磁波に限られるものではなく、光や超音波などを波動として用いてもよい。波動が光の場合は、送信手段としてレーザ光照射手段、LED、電球などを用い、受信手段として太陽電池やフォトダイオードなどを用いる。また、波動が超音波の場合は、送受信手段としてピエゾ式振動子や電歪式振動子などを用いる。
【0059】
また、上述した実施の形態1や2において、無線電力供給装置2での室内空間1における人の在/不在の判断は周期的に行われるが、この在/不在の判断周期を送信する小電力の電磁波の電力レベルに応じて変化させるようにしてもよい。この場合、小電力の電磁波の電力レベルが大きくなるにつれ、室内空間1に人が在/不在の判断周期を短くするようにする。すなわち、小電力の電磁波の電力レベルが大きくなると、人体への影響も大きくなるので、小電力の電磁波の電力レベルの決定の周期を短くして、警戒を強めるようにする。
【0060】
また、上述した実施の形態1や2では、人検知センサ6を人検知センサ6−1〜6−4の4つとしたが、2つ以上あればよく、さらにその数を増やすようにしてもよい。図9に人検知センサを多数設けた場合の配置例(天井側から見た図)を示す。同図において、Aは送受信機(無線電力供給装置)、Bは無線電力配電内蔵人体検知センサ(人検知センサ)、Cは無電電力配電内蔵電動操作器である。この例において、無線電力配電内蔵人体検知センサBは、照明制御など別目的として、室内空間1にすでに設置されている。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の無線電力配電システムは、電磁波などの波動によって無線機器へ非接触で電力を供給するシステムとして、建物だけではなく、工場の執務室や作業場、プラントなどで作業員がいる屋外など様々な場所で利用することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1…室内空間、2…無線電力供給装置、2A…安定化電源部、2B…システム制御部、2C…配電レベル制御部、2D…送受信部、2E…受信制御部、3…無線機器、3A…モータ、3B…減速部、3C…ドライバ部、3D…位置検出部、3E…制御部、3F…受信部、3G…送信部、3H…整流部、3I…蓄電部、3J…安定化電源部、4…外部電源、5…外部コントローラ、6(6−1〜6−4)…人検知センサ、6A…人検知部、6B…制御部、6C…受信部、6D…送信部、6E…整流部、6F…蓄電部、6G…安定化電源部、ANT1,ANT2,ANT3…アンテナ、DS…駆動軸、2−1…在/不在判断部、2−2…配電レベル決定部、2−3…記憶部、AR1,AR2,AR3…検知エリア、TA,TB1,TB2…テーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空間へ無線によってエネルギーを波動として送信する波動送信装置と、この波動送信装置から送信される波動を受信しその受信した波動から自己の電源電力を生成して動作する1台以上の無線機器と、前記室内空間に設置され自己を中心とする所定範囲を検知エリアとして人の在/不在を検知する複数の人検知センサとを備え、
前記波動送信装置は、
前記複数の人検知センサからの検知結果に基づいて前記室内空間に人が存在するか否かを判断する在/不在判断手段と、
前記在/不在判断手段によって前記室内空間に人が存在すると判断された場合、人の存在を検知している前記人検知センサの検知エリアのうち前記波動送信装置との距離が最も近い検知エリアを最短エリアとし、人体に影響を与える虞のない所定の電力以下の値としてその最短エリアに応じて定められる小電力の波動を前記室内空間に第1の波動として送信し、前記在/不在判断手段によって前記室内空間に人が存在しないと判断された場合、前記人体に影響を与える虞のない所定の電力よりも大電力の波動として定められる第2の波動を前記室内空間に送信する波動送信手段と
を備えることを特徴とする無線電力配電システム。
【請求項2】
請求項1に記載された無線電力配電システムにおいて、
前記波動送信装置は、
前記人検知センサの各検知エリアと前記波動送信装置との最短距離との関係を示す第1のテーブルと、前記最短距離と前記第1の波動の電力レベルとの関係を示す第2のテーブルとを記憶する手段を備え、
前記波動送信手段は、
前記在/不在判断手段によって前記室内空間に人が存在すると判断された場合、人の存在を検知している前記人検知センサの検知エリアのうちその検知エリアに対応する前記第1のテーブル中の最短距離が最も短い検知エリアを最短エリアとし、この最短エリアの最短距離に応ずる前記第2のテーブル中の電力レベルの波動を第1の波動として前記室内空間に送信する
ことを特徴とする無線電力配電システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された無線電力配電システムにおいて、
前記在/不在判断手段は、前記第1の波動の電力レベルが大きくなるにつれ、前記室内空間に人が存在するか否かの判断周期を短くする
ことを特徴とする無線電力配電システム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載された無線電力配電システムにおいて、
前記人検知センサは、
前記波動送信装置から送信される波動を受信しその受信した波動から自己の電源電力を生成して動作する無線機器である
ことを特徴とする無線電力配電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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