説明

無線ICタグ

【課題】金属物に対して取り付けても、通信特性が良好な無線ICタグを提供する。
【解決手段】
無線ICタグ1は、ICチップ101、及びICチップ101に電気的に接続されるアンテナ102,102を有する無線ICタグシート100と、誘電層111、誘電層111の一の面上に形成される第一の導電部112、及び誘電層111の他の面上に形成される第二の導電部113,113を有する補助シート110とを備えている。無線ICタグシート100は、アンテナ102,102の少なくとも一部と第二の導電部113,113の少なくとも一部とが平面視で重なり、且つ、ICチップ101と第二の導電部113,113とが平面視で重ならないように、補助シート110の他の面側に積層され、アンテナ102,102と補助シート110とが電気的に絶縁されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ICタグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、物流管理等を目的として無線ICタグが盛んに活用されている。その中でも、検知距離が長く、コストが安価であることから、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波を利用した無線ICタグが注目されている。しかし、UHF帯の電波を利用した無線ICタグは、周囲の金属物又は誘電体等の影響により、容易に検知距離が悪化してしまうという問題がある。この問題を解決する技術として、特許文献1及び2が開示されている。
【0003】
特許文献1には、シート状の誘電体の両面に配置した導体層のパターンによりスロットアンテナを構成し、その上に無線ICタグを電気的に接合させることなく接触させ、磁界成分によって無線ICタグとスロットアンテナとを結合させる無線ICタグが開示されている。この無線ICタグによれば、通信距離を改善することが可能になる。
【0004】
また、特許文献2には、シート状の誘電体の両面に配置した導体層のパターンにより差動パッチアンテナを構成し、2枚のパッチアンテナの中間に位置する給電部と無線ICタグのICチップとを電気的に接合する無線ICタグが開示されている。この無線ICタグの場合、金属物に取り付けた場合でも安定して検知することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4580442号公報
【特許文献2】特開2008−294674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に開示された従来の無線ICタグでは、無線ICタグのチップ部分が導体層に近接すると無線通信特性が悪化してしまうために、スロットアンテナのパターンを構成する際に、無線ICタグのチップ部に対向するように導体層に孔又は切り欠きを設ける必要がある。この場合、無線通信特性に悪影響を与えない孔又は切り欠きの最適なパターンを設計するためには、高度な設計技術が必要になるという問題がある。また、複雑な形状の導体層を誘電体シート上に構成するため、製造工程が複雑になるという問題も生じる。
【0007】
他方、特許文献2に開示された従来の無線ICタグの場合、差動パッチアンテナを構成する導体層は、単純な方形状の形状であるため、簡易に設計・製造することができるが、無線ICタグのICチップを組み込み、一体として製造するためには、特殊な製造工程が必要になるという問題がある。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、上記課題を解決することができる無線ICタグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の無線ICタグは、ICチップ、及び前記ICチップに電気的に接続されるアンテナを有する無線ICタグシートと、誘電層、前記誘電層の一の面上に形成される第一の導電部、及び前記誘電層の他の面上に形成される第二の導電部を有する補助シートとを備え、前記無線ICタグシートが、前記アンテナの少なくとも一部と前記第二の導電部の少なくとも一部とが平面視で重なり、且つ、前記ICチップと前記第二の導電部とが平面視で重ならないように、前記補助シートの他の面側に積層され、前記アンテナと前記補助シートとが電気的に絶縁されている。
【0010】
この態様において、前記アンテナと前記第二の導電部とが、磁界成分を介して結合されるよう構成されていてもよい。
【0011】
この態様において、前記無線ICタグシートと前記補助シートとが、着離自在に構成されていることが好ましい。
【0012】
この態様において、前記無線ICタグシートが複数の前記アンテナを有し、前記補助シートが当該アンテナに対応した複数の前記第二の導電部を有しており、複数の前記アンテナのそれぞれの少なくとも一部と複数の前記第二の導電部のそれぞれの少なくとも一部とが平面視で重なっていてもよい。
【0013】
この態様において、前記複数のアンテナは、前記ICチップを中心として配設されていてもよい。
【0014】
この態様において、前記補助シート側で取付対象物に取付可能に構成されており、前記補助シートと前記取付対象物との間に形成される断熱層をさらに備えていてもよい。
【0015】
この態様において、前記第一の導電部と前記第二の導電部とは、電気的に絶縁されていてもよい。
【0016】
この態様において、前記第二の導電部は、前記第一の導電部と電気的に接続されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る無線ICタグによれば、容易、かつ安価に金属物にも適用可能な無線ICタグを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態1に係る無線ICタグの構成を示す三面図。
【図2】図1に示すA−A線における断面図。
【図3】実施の形態1に係る無線ICタグの他の構成を示す三面図。
【図4】実施の形態1に係る無線ICタグの構成を示す三面図。
【図5】実施の形態1に係る補助シートの構成を示す三面図。
【図6】実施の形態1に係る無線ICタグの検知特性を示すグラフ。
【図7】実施の形態2に係る無線ICタグの構成を示す三面図。
【図8】実施の形態2に係る無線ICタグを対象物に取り付けた場合の構成を示す側面図。
【図9】変形例に係る無線ICタグの構成の一例を示す平面図。
【図10】変形例に係る無線ICタグの構成の他の例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す各実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための方法及び装置を例示するものであって、本発明の技術的思想は下記のものに限定されるわけではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る無線ICタグ1の構成を示す三面図であり、図1(a)は上面図、図1(b)は側面図、図1(c)は下面図である。また、図2は、図1に示すA−A線における断面図である。本実施の形態の無線ICタグ1は、長板状の無線ICタグシート100と、この無線ICタグシート100よりも長さ及び幅が大きい長板状の補助シート110とが積層されて構成されている。ここで、無線ICタグシート100は、粘着テープ(図示せず)を用いて補助シート110上に貼着されている。
【0021】
無線ICタグシート100は、その内部に、信号処理を実行するためのICチップ101及び当該ICチップ101と電気的に接続された長板状の2つのアンテナ102,102を備えている。ここで、ICチップ101は無線ICタグシート100の内部中央に設けられており、アンテナ102,102は当該ICチップ101を中心としてその両側に配設されている。
【0022】
補助シート110は、略均一な厚みで形成された長板状の誘電体からなる誘電層111と、誘電層111の下面に形成された板状の導電体からなる第一の導電部112と、誘電層111の上面に略均一な厚みで形成された板状の導電体からなる2つの第二の導電部113,113とを備えている。第二の導電部113,113は、誘電層111の長辺方向に離間して並設されている。これらの第二の導電部113,113間には空隙114が形成され、この空隙114の中心であって平面視においてICチップ101と重なる領域が、補助シート110の給電部115となっている。なお、ここでの給電部とは、アンテナ102,102に対して高周波信号を入力する点を意味する。
【0023】
第一の導電部112及び第二の導電部113,113を構成する材料としては、導電性を有する様々なものを用いることができる。具体的には、アルミニウム、鉄、ステンレス、銅、金、銀等の金属、又は導電性カーボン等を挙げることができる。
【0024】
また、誘電層111は、非導電性の誘電体で構成されており、具体的には、ポリエステル、ポリエチレン、塩化ビニル等の樹脂材料、空気等の気体、又は樹脂材料と空気との混合体である発泡樹脂等を用いて構成されている。
【0025】
第二の導電部113,113のそれぞれは、誘電層111の長辺方向の両端部において、第一の導電部112と物理的に接合されている。これにより、第一の導電部112と第二の導電部113,113とが電気的に接続されることになる。このように第一の導電部112と第二の導電部113,113とが電気的に接続されている場合、第二の導電部113の長さは、発信する電波の波長の4分の1よりも若干小さな値を、誘電層111の比誘電率の平方根で除した値とすればよい。例えば、無線ICタグ1がUHF帯の電波を用い、誘電層111の比誘電率が1である場合、第二の導電部113,113のそれぞれの長さはUHF帯の電波の波長316mmの4分の1よりも若干短い長さである65mm程度にすればよい。
【0026】
無線ICタグシート100内に設けられているアンテナ102,102と補助シート110とは、電気的に絶縁されている。また、これらのアンテナ102,102はそれぞれ、平面視においてその一部が第二の導電部113,113の一部と重なっている。他方、無線ICタグシート100内に設けられているICチップ101は、平面視において第二の導電部113,113と重なっていない。このような構成により、無線ICタグシート100内のアンテナ102,102と補助シート110内の第二の導電部113,113とは、電流により生じる磁界成分を介して結合されることになる。これにより、補助シート110は無線ICタグ1のアンテナ装置として機能する。このようにしてアンテナ装置として機能する補助シート110の場合、給電部115を中心に広い範囲にほぼ均一で高い利得が得ることができる。これにより、近傍に金属等の通信特性を悪化させるものがあったとしても、その影響を抑制することができる。
【0027】
なお、本実施の形態では、補助シート110が無線ICタグシート100よりも長さ及び幅ともに大きくなっているが、上述したようにアンテナ102,102の一部と第二の導電部113,133の一部とが平面視で重なっていれば、これらの大小関係は問わない。
【0028】
また、本実施の形態に係る無線ICタグ1では、給電部115が2つの第二の導電部113,113の間に形成される空隙114内に設けられるため、無線ICタグシート100のICチップ101と第二の導電部113,113との間に一定の距離を確保することができる。このため、ICチップと導電部との近接を防止するために導電部に孔又は切り欠きを設ける等の特殊な設計をする必要がなく、簡易な設計のみで無線ICタグを作製することができる。
【0029】
本実施の形態に係る無線ICタグ1の場合、特殊な製造工程を必要とせず、無線ICタグシート100と補助シート110とを貼着することにより容易に作製することができる。なお、本実施の形態の場合、無線ICタグシート100と補助シート110とは粘着テープにより貼着されており、容易に剥離することが可能である。そのため、無線ICタグシート100及び補助シート110のどちらかが破損した場合では、破損した方を交換するのみで、再度無線ICタグとして使用することができる。
【0030】
なお、本実施の形態に係る無線ICタグ1では、第一の導電部112と2つの第二の導電部113,113とは、誘電層111の長辺方向の両端部において物理的に接合されているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第二導電部113,113の給電部115側の端部から電気的接合点までの長さが共振波長に適合していれば、他の領域において、第一の導電部112と第二の導電部113,113とが物理的に接合されていてもよく、また、物理的に接合されていなくてもよい。
【0031】
図3は、上述したように第一の導電部112と第二の導電部113,113とが物理的に接合されていない構成例を示す三面図であり、図3(a)は上面図、図3(b)は側面図、図3(c)は下面図である。図3に示すように、無線ICタグ2が備える補助シート210は、誘電層211の上面に2つの第二の導電部213,213、その下面に第一の導電部212をそれぞれ具備しており、第一の導電部212と第二の導電部213,213とは物理的に接合されていない。この場合、第二の導電部213の長さは、発信する電波の波長の2分の1よりも若干小さな値を、誘電層211の比誘電率の平方根で除した値とすればよい。具体的には、UHF帯の電波を用い、誘電部211の比誘電率が1である場合、第二の導電部213,213のそれぞれの長さはUHF帯の電波の波長316mmの2分の1よりも若干短い長さである150mm程度にすればよい。
【0032】
なお、本実施の形態に係る無線ICタグ1では、無線ICタグシート100内のアンテナ102,102の一部と補助シート110の第二の導電部113,113の一部とが平面視で重なるように配設されるが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、アンテナ102,102と第二の導電部113,113とが磁界成分を介して結合されるのであれば、平面視において、アンテナ102,102の全面と第二の導電部113,113の一部又は全面とが重なっていてもよく、アンテナ102,102の一部と第二の導電部113,113の全面とが重なっていてもよい。
【0033】
[無線ICタグの検知特性]
本実施の形態の無線ICタグの検知特性を評価するために、本実施の形態に基づく具体的な実施例を作製し、評価テストを行った。以下、この評価テストの内容及び結果について説明する。
【0034】
まず、本実施例の無線ICタグ3の構成を説明する。図4は無線ICタグ3の構成を示す三面図であり、図5は本実施例における補助シート310の構成を示す三面図である。図4(a)及び図5(a)は上面図であり、図4(b)及び図5(b)は側面図であり、図4(c)及び図5(c)は下面図である。なお、無線ICタグ3は、UHF帯(950MHz帯、波長316mm)の電波を利用したものである。
【0035】
無線ICタグシート300は、幅W1が85mm、長さL1が185mmのカンバンサイズのUHF帯リライタブル無線ICタグシートである。これは、熱による印字面の消去、再書き込みが可能なリライタブルシート内にICチップ301及びアンテナ302,302が組み込まれたものである。本実施例では、ICチップ301は無線ICタグシート300の内部中央に設けられており、アンテナ302,302は当該ICチップ301を中心としてその両側に配設されている。ここで、ICチップ301とアンテナ302,302とは、電気的に接続されている。
【0036】
補助シート310は、ポリエステル製の誘電層311と、アルミテープ製の第一の導電部312及び2つの第二の導電部313,313とを備えている。補助シート310の厚さD2は約6mm、幅W2は60mm、長さL2は105mmである。第一の導電部312及び第二の導電部313,313は、幅60mm、厚さ0.1mmのアルミテープを誘電層311に巻き付けることで形成される。このとき、第二の導電部313,313のそれぞれの長さは、UHF帯の電波の波長の4分の1よりも若干短い値である65mmを、ポリエステルの比誘電率2.3の平方根で除して得られる43mm程度としている。また、第二の導電部313,313の間には、約20mm程度の空隙314が設けられている。この空隙314の中心であって平面視においてICチップ301と重なる領域が、補助シート310の給電部315となっている。
【0037】
無線ICタグシート300と補助シート310とは、平面視において、無線ICタグシート300内のアンテナ313,313の一部と第二の導電部313,313の一部とが重なり、且つ、無線ICタグシート300内のICチップ301と第二の導電部313,313とが重ならないように積層されている。なお、無線ICタグシート300は、補助シート310の上面に、粘着テープを用いて貼着されている。
【0038】
上述したようにして構成された無線ICタグ3を金属物に取り付けた場合の検知特性の評価について、以下説明する。ここでは、評価対象となる無線ICタグと金属物とを一定の距離隔てて配置し、無線ICタグから一定の距離を離して設置された無線ICタグリーダーが当該無線ICタグを検知することができる最小送信電力を確認することで、検知感度を測定し、検知特性を評価した。この場合、最小送信電力が小さいほど、無線ICタグの検知が容易であり、検知感度が高いと考えることができる。
【0039】
図6は本実施例の無線ICタグ3と従来の無線ICタグとの検知特性を比較した結果を示すグラフである。比較対象となる従来の無線ICタグは、本実施例における無線ICタグシート300と同一の構成の無線ICタグシートのみで構成されている。このグラフにおいて、横軸は金属板と無線ICタグとの距離を、縦軸は最小送信電力をそれぞれ示している。また、丸印のプロットが本実施例の無線ICタグ3の検知特性を、四角印のプロットが従来の無線ICタグの検知特性をそれぞれ示している。
【0040】
なお、本実施例の無線ICタグ3の場合、補助シート310の下面に金属板を取り付けている。ここで、補助シート310は厚さが約6mmであるため、その補助シート310の下面に金属板を取り付けた場合、無線ICタグ3と金属板とは約6mm離れることになる。そのため、比較対象となる従来の無線ICタグについては、金属板との間を6mm離した上で検出感度を測定した。
【0041】
上述したように無線ICタグと金属板との間の距離を6mmとした場合、図6に示すとおり、従来の無線ICタグでは、検出感度が25.5dBmであるのに対し、本実施例の無線ICタグ3では検出感度が14.5dBmであり、11dBm向上していることがわかる。
【0042】
また、従来の無線ICタグと金属板との距離を12mm、18mm、24mm、30mmと離していくと、図6に示すとおり、12mmでは20.5dBm、18mmでは17.5dBm、24mmでは14.5dBm、30mmでは12.5dBmであった。上述したように、本実施例の無線ICタグ3の場合、検知感度が14.5dBmであるため、従来の無線ICタグを金属板から24mm離した場合と同等の検知特性を有していることがわかる。
【0043】
これらの結果から、本実施例の無線ICタグ3は、従来の無線ICタグと比較して検知特性が大幅に向上していることが確認できる。
【0044】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る無線ICタグ4の構成について説明する。図7は、本実施の形態に係る無線ICタグ4の構成を示す三面図であり、図7(a)は上面図、図7(b)は側面図、図7(c)は下面図である。また、図8は、本実施の形態に係る無線ICタグ4を対象物aに取り付けた場合の構成を示す側面図である。本実施の形態に係る無線ICタグ4は、実施の形態1に係る無線ICタグ1と同様に、無線ICタグシート400及び補助シート410を備えている。無線ICタグシート400は、プリンタにより管理対象となる製品の製品番号等を示す情報を上面に印刷することができるラベルシール型ICタグシートであり、その内部中央に設けられたICチップ401と、当該ICチップ401を中心としてその両側に配設され、ICチップ401と電気的に接続された2つのアンテナ402,402とを有している。
【0045】
本実施の形態に係る補助シート410は、実施の形態1に係る補助シート110と同様に、誘電層411と、第一の導電部412及び2つの第二の導電部413,413とを有している。なお、第一の誘電部412及び第二の導電部413,413は、ステンレスにより構成されている。第二の導電部413,413は、誘電層411の長辺方向に離間して並設されている。これらの第二の導電部413,413間には空隙414が形成され、この空隙414の中心であって平面視においてICチップ401と重なる領域が、補助シート410の給電部415となっている。
【0046】
第一の導電部412と第二の導電部413,413とは、耐熱性の高い誘電体により構成される4つの棒状の保持部416,416,416,416を介して結合されている。各保持部416,416,416,416は、補助シート410の長辺方向の両端部付近に2つずつ配設され、その両端が第一の導電部412の上面及び第二の導電部413,413の下面にそれぞれ固着されている。これにより、第一の導電部412と2つの第二の導電部413,413との距離が保持される。また、このように、第一の導電部412と2つの第二の導電部413,413との距離が保持されることで、第一の導電部412と第二の導電部413,413との間に一定の厚みを有する空気層が形成される。本実施の形態における誘電層411は、この空気層により構成される。
【0047】
上述したように、4つの保持部416,416,416,416が誘電体により構成されている。そのため、第一の導電部412と第二の導電部413,413とは、電気的に絶縁されている。
【0048】
また、補助シート410の下面の長辺方向における両端部には、板状のスペーサ417,417が下方に向かって外側に傾斜するように立設されている。図8に示すように、本実施の形態の無線ICタグ4を対象物aに取り付ける場合、これらのスペーサ417,417の下部が対象物aに固定される。このとき、第一の導電部412と対象物aとの間に空気層bが形成される。
【0049】
無線ICタグシート400は、実施の形態1に係る無線ICタグシート100と同様に、補助シート410の上面に粘着テープによって貼着される。ここで、無線ICタグシート400及び補助シート410の位置関係は、実施の形態1に係る無線ICタグシート100及び補助シート110の場合と同様であるので、その説明を省略する。
【0050】
[部材管理サイクル]
次に、本実施の形態に係る無線ICタグ4を用いた部材管理サイクルについて説明する。まず、無線ICタグ4が備える無線ICタグシート400のラベル面(上面)に部材番号等の部材を識別するための情報を印字する。このとき、ICチップ401に同様の情報を記録させる。次に、無線ICタグシート400と補助シート410とを粘着テープにより貼着する。その後、本実施の形態に係る無線ICタグ4を管理対象となる対象物aに粘着テープにより貼着し、当該対象物aを製造工程に搬送する。
【0051】
製造工程において、ICチップ401に記録された情報がICタグリーダーにより読み取られることにより、製造工程内での進捗状況等が管理される。そして、対象物aの組み立て又は加工等が完了し、製品が完成すると、当該製品を出荷する前に、各対象物aに貼り付けられている無線ICタグ4が対象物aから剥がされる。このとき、無線ICタグシート400と補助シート410とは剥離され、無線ICタグシート400は廃棄される。補助シート410については、破損していないかを点検し、破損していない場合、新しい無線ICタグシート400を貼り付けることで再利用される。
【0052】
本実施の形態に係る無線ICタグ4の場合、第一の導電部412及び第二の導電部413,413の間に空気層である誘電層411が、第一の導電部412と対象物aとの間に空気層bがそれぞれ形成される。空気は高い断熱効果を有しているため、これらの空気層は断熱層として機能する。本実施の形態のように、二層の断熱層を設けることにより、対象物aが高温になるような製造工程において、無線ICタグシート400を熱から保護することができる。これにより、これまで無線ICタグを使用することができなかった製造工程等においても本実施の形態の無線ICタグ4を適用することができる。
【0053】
また、本実施の形態によれば、補助シート410を複数回繰り返して利用することが可能であり、無線ICタグシート400を交換するだけで再使用可能な無線ICタグを実現することができる。このため、従来の無線ICタグと比較して、コストを低減することができる。
【0054】
なお、上述したように、無線ICタグ4が対象物aから剥がされた後、無線ICタグシート400は補助シート410から剥離され廃棄されているが、本発明はこのような使用方法に限定されるものではない。例えば、無線ICタグシート400のICチップ401を初期化することで、無線ICタグシート400を再利用できるよう構成されていてもよい。この他、無線ICタグシート400のICチップ401に製品の情報を付加し、無線ICタグシート401を製品とともに出荷すること等も可能である。
【0055】
また、本実施の形態では、保持部416が補助シート410の長辺方向の両端部に配設されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、第一の導電部412と第二の導電部413,413との間に誘電層411を形成することができるのであれば、保持部416が配設される場所はどこであってもよい。また、保持部416の数も4個に限定されないことは勿論である。
【0056】
また、本実施の形態では、保持部416が耐熱性の高い誘電体により構成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、保持部416が導電性を有する材料で構成されていてもよい。この場合、第一の導電部412及び第二の導電部413,413は電気的に接続されることになる。
【0057】
また、本実施の形態では、誘電層411が空気層により構成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、空気以外の誘電体により構成されていてもよい。この場合、保持部416を設ける必要はない。
【0058】
また、保持部416の場合と同様に、スペーサ417の数及び設置位置は上述した態様に限定されず、無線ICタグ4を対象物に取り付けたときに補助シート410と当該対象物との間に空気層を設けることができるのであれば他の態様であってもよい。なお、このような空気層の代わりに、良好な断熱性能を有するグラスウール、ロックウール、ウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、又は発泡ゴム等の断熱材等で構成される断熱層を補助シート410の下面に設けることにより、無線ICタグシート400を熱から保護するように構成されていてもよい。
【0059】
(その他の実施の形態)
上記の各実施の形態の無線ICタグは、無線ICタグシートのアンテナ及び補助シートの第二の導電部をそれぞれ2つずつ備えているが、本発明はこれに限定されるものではない。アンテナと第二の導電部とが磁界成分を介して結合することにより、補助シートが無線ICタグシートのアンテナ装置として機能するのであれば、アンテナ及び第二の導電部の数はいくつであってもよい。
【0060】
また、上記の各実施の形態では、2つのアンテナがICチップを中心に配設されているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図9に示すように、第二の導電部513,513と平面視で重なるように配設されたアンテナ502と、第二の導電部513,513の外側に設けられたICチップ501とが接続されるような構成であってもよい。この場合でも、第二の導電部513,513間に形成された空隙514の中心に給電部が設けられ、アンテナ502から第二の導電部513,513へ発信される信号は、その給電部を起点として発信されることになる。その他にも、図10に示すように、2個の第二の導電部613,613のペアを例えば2つ設けておき、当該2つのペアのそれぞれと平面視で重なるように配設されたアンテナ602,602と、当該2つのペアの外側に設けられたICチップ601とが接続されるような構成であってもよい。この場合も、それぞれのペアに係る2個の第二の導電部613,613間に形成された空隙614,614の中心に給電部が設けられ、アンテナ602,602から第二の導電部613,613の2つのペアのそれぞれへ発信される信号は、それらの給電部を起点として発信されることになる。なお、図9における符号511及び図10における符号611は誘電層を示している。
【0061】
また、上記の各実施の形態では、無線ICタグシートと補助シートとが粘着テープにより貼着されているが、無線ICタグシート及び補助シートの固定態様はこれに限定されるわけではない。例えば、無線ICタグシートを収容することができるホルダーを補助シート側に設け、そのホルダーに無線ICタグシートを収容することにより無線ICタグシートと補助シートとを固定してもよい。その他にも、無線ICタグシートと補助シートとをクリップ等の固定器具で固定する等、様々な固定態様が想定され得る。
【0062】
また、上記の各実施の形態では、無線ICタグシートと補助シートとが直接接触して積層されているが、通信特性を阻害しないのであれば、他の部材を介して無線ICタグシートと補助シートとが積層されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の無線ICタグは、物流管理等の各種の用途に用いられる無線ICタグとして有用である。
【符号の説明】
【0064】
1,2,3,4 無線ICタグ
100,200,300,400 無線ICタグシート
101,201,301,401 ICチップ
102,202,302,402 アンテナ
110,210,310,410 補助シート
111,211,311,411,511,611 誘電層
112,212,312,412 第一の導電部
113,213,313,413,513,613 第二の導電部
114,214,314,414,514,614 空隙
115,215,315,415 給電部
416 保持部
417 スペーサ
a 対象物
b 空気層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップ、及び前記ICチップに電気的に接続されるアンテナを有する無線ICタグシートと、
誘電層、前記誘電層の一の面上に形成される第一の導電部、及び前記誘電層の他の面上に形成される第二の導電部を有する補助シートと
を備え、
前記無線ICタグシートが、前記アンテナの少なくとも一部と前記第二の導電部の少なくとも一部とが平面視で重なり、且つ、前記ICチップと前記第二の導電部とが平面視で重ならないように、前記補助シートの他の面側に積層され、
前記アンテナと前記補助シートとが電気的に絶縁されている、
無線ICタグ。
【請求項2】
前記アンテナと前記第二の導電部とが、磁界成分を介して結合される、
請求項1に記載の無線ICタグ。
【請求項3】
前記無線ICタグシートと前記補助シートとが、着離自在に構成されている、
請求項1又は2に記載の無線ICタグ。
【請求項4】
前記無線ICタグシートが複数の前記アンテナを有し、前記補助シートが当該アンテナに対応した複数の前記第二の導電部を有しており、
複数の前記アンテナのそれぞれの少なくとも一部と複数の前記第二の導電部のそれぞれの少なくとも一部とが平面視で重なっている、
請求項1乃至3の何れかに記載の無線ICタグ。
【請求項5】
複数の前記アンテナは、前記ICチップを中心として配設される、
請求項4に記載の無線ICタグ。
【請求項6】
前記補助シート側で取付対象物に取付可能に構成されており、
前記補助シートと前記取付対象物との間に形成される断熱層をさらに備える、
請求項1乃至5の何れかに記載の無線ICタグ。
【請求項7】
前記第一の導電部と前記第二の導電部とは、電気的に絶縁されている、
請求項1乃至6の何れかに記載の無線ICタグ。
【請求項8】
前記第二の導電部は、前記第一の導電部と電気的に接続されている、
請求項1乃至6の何れかに記載の無線ICタグ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−58129(P2013−58129A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196877(P2011−196877)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】