無線ICデバイス
【課題】アンテナ利得が大きく、リーダライタと十分な距離をもって動作し、かつ、UHF帯以上の周波数帯域であっても十分に使用することのできる無線ICデバイスを得る。
【解決手段】所定の共振周波数を有する共振回路を含む給電回路7を有する無線ICチップ5と、該給電回路7から供給された送信信号を外部に放射する、及び、又は、外部からの受信信号を給電回路7に供給する放射部材11とを備えた無線ICデバイス。放射部材11と給電回路7とは電磁結合されている。放射部材11は、外部との送受信信号の交換を行う放射部13と、給電回路7との送受信信号の交換を行う平面状の給電部12とを有している。
【解決手段】所定の共振周波数を有する共振回路を含む給電回路7を有する無線ICチップ5と、該給電回路7から供給された送信信号を外部に放射する、及び、又は、外部からの受信信号を給電回路7に供給する放射部材11とを備えた無線ICデバイス。放射部材11と給電回路7とは電磁結合されている。放射部材11は、外部との送受信信号の交換を行う放射部13と、給電回路7との送受信信号の交換を行う平面状の給電部12とを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ICデバイス、特に、RFID(Radio Frequency Identification)システムに用いられる無線ICデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物品の管理システムとして、誘導電磁界を発生するリーダライタと物品に付された所定の情報を記憶したICタグ(以下、無線ICデバイスと称する)とを非接触方式で通信し、情報を伝達するRFIDシステムが開発されている。RFIDシステムに使用される無線ICデバイスは、一般的には、無線ICチップを搭載する基板にエッチングや印刷などにより形成された巻線コイルで形成されている。
【0003】
一方、特許文献1には、小型化などを目的として、無線ICチップにアンテナコイルを再配線によって形成した無線ICデバイスが開示されている。しかしながら、無線ICチップ自体が非常に小さいので、該チップに形成されたアンテナも非常に小さく、アンテナの利得が微小であり、リーダライタと密着レベルでないとICが駆動しないという問題点を有している。
【0004】
また、特許文献2には、放射用アンテナを有する基板に、アンテナコイル付きの無線ICチップを搭載した無線ICデバイス、即ち、基板のアンテナと無線ICチップのアンテナコイルとを対向配置させた構造の無線ICデバイスが開示されている。しかしながら、この構造では、基板側のアンテナは閉ループであるため、例えば、13.56MHzのような低周波帯域であれば十分な利得を得ることができるものの、UHF帯以上の周波数帯域になると、無線ICチップ側のアンテナコイルと基板側のアンテナとのインピーダンスマッチングが困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−276569号公報
【特許文献2】特開2000−311226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、アンテナ利得が大きく、リーダライタと十分な距離をもって動作し、かつ、UHF帯以上の周波数帯域であっても十分に使用することのできる無線ICデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明に係る無線ICデバイスは、
所定の共振周波数を有する共振回路を含む給電回路を有する無線ICチップと、前記給電回路から供給された送信信号を外部に放射する、及び/又は、外部からの受信信号を前記給電回路に供給する放射部材と、を備え、
UHF帯以上の周波数領域で利用される無線ICデバイスであって、
前記給電回路にはコイル状又はミアンダ状である電極パターンが含まれ、
前記放射部材と前記給電回路とは電磁結合されており、
前記放射部材は、外部との送受信信号の交換を行う放射部と、前記給電回路との送受信信号の交換を行う平面状の給電部とを有しており、
前記無線ICチップは、前記電極パターンの投影面が前記平面状の給電部の投影面内に位置するように、前記給電部上に配置されていること、
を特徴とする。
【0008】
本発明に係る無線ICデバイスにおいては、無線ICチップに給電回路を設け、放射部材を外部との送受信信号の交換を行う放射部と、前記給電回路と電磁結合されて送受信信号の交換を行う給電部とを有するため、放射部によってアンテナ利得が向上し、小さな給電回路であっても十分な利得を得ることができ、無線ICチップはリーダライタとは十分な距離をもって作動することになり、かつ、UHF帯以上の周波数帯域であっても十分に使用することができる。また、給電回路で共振周波数がほぼ決定され、放射部の形状が自由に設計可能であり、放射部の大きさなどで利得を調整でき、放射部の形状などで中心周波数を微調整できる。さらに、無線ICチップは、給電回路を構成する電極パターンの投影面が平面状の給電部の投影面内に位置するように、給電部上に配置されているため、給電部と給電回路とで交換されるエネルギー効率が大きくなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、小さな給電回路であっても十分な利得を得ることができ、リーダライタとは十分な距離をもって無線ICチップが作動することになり、かつ、UHF帯以上の周波数帯域であっても十分に使用することができる。また、無線ICチップ側の給電回路で共振周波数がほぼ決定されるため、放射部の形状が自由に設計可能であり、放射部の大きさなどで利得を調整でき、放射部の形状などで中心周波数を微調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】無線ICデバイスの第1実施例を示し、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図2】無線ICチップの変形例1を示し、(A)は第1主面側の斜視図、(B)は第2主面側の斜視図である。
【図3】無線ICチップの変形例2を示し、(A)は裏面図、(B)は断面図である。
【図4】無線ICチップの変形例2における給電回路の等価回路図である。
【図5】無線ICデバイスの第2実施例を示す平面図である。
【図6】無線ICデバイスの第3実施例を示す平面図である。
【図7】前記第3実施例の変形例を示す平面図である。
【図8】前記第3実施例の使用状態を示す斜視図である。
【図9】無線ICデバイスの第4実施例を示す平面図である。
【図10】無線ICデバイスの第5実施例を示し、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
【図11】前記第5実施例の使用状態を示す平面図である。
【図12】無線ICデバイスの第6実施例を示す平面図である。
【図13】無線ICデバイスの第7実施例を示す平面図である。
【図14】無線ICデバイスの第8実施例を示す平面図である。
【図15】無線ICデバイスの第9実施例を示す平面図である。
【図16】無線ICデバイスの第10実施例を示す平面図である。
【図17】無線ICデバイスの第11実施例を示す平面図である。
【図18】無線ICデバイスの第12実施例を示し、(A)は展開状態の平面図、(B)は使用時の斜視図である。
【図19】無線ICデバイスの第13実施例を示す平面図である。
【図20】前記第13実施例の要部を示す斜視図である。
【図21】無線ICデバイスの第14実施例を示す斜視図である。
【図22】無線ICデバイスの第15実施例を示す分解斜視図である。
【図23】無線ICデバイスの第16実施例を示す分解斜視図である。
【図24】無線ICデバイスの第17実施例を示し、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る無線ICデバイスの実施例について添付図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施例において共通する部品、部分は同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
(第1実施例、図1参照)
第1実施例である無線ICデバイス1aは、図1(A),(B)に示すように、支持フィルム10上に放射板11を形成し、支持フィルム10の上面であって放射板11の給電部12上に無線ICチップ5を接着剤にて貼り付けたものである。放射板11は、ライン状の給電部12と、比較的広い面積の放射部13とで構成された両面開放型(両端開放型)である。放射板11はフレキシブルなアルミ箔や金属蒸着膜などの金属薄膜からなり、支持フィルム10はPETなどの絶縁性のフレキシブルなフィルムからなる。フィルム以外に、紙や合成紙を使用することもできる。
【0013】
無線ICチップ5は、信号処理部6が内蔵され、給電部12と対向する第1主面5a側にコイル状の電極パターンからなる給電回路7が形成されている。給電回路7は所定の共振周波数を有する共振回路を含み、この給電回路7と信号処理部6とは電気的に接続されており、給電回路7と給電部12とは電磁結合されている。また、無線ICチップ5は周知のクロック回路、ロジック回路、メモリ回路を含み、必要な情報がメモリされており、所定の高周波信号を送受信できるものである。
【0014】
放射板11は、給電回路7から供給された所定の周波数を有する送信信号を給電回路7と磁界結合している給電部12を介して放射部13に供給し、該放射部13から外部のリーダライタに放射する。また、放射部13で受けたリーダライタからの受信信号(高周波信号、例えば、UHF周波数帯)を給電部12を介して給電回路7に供給する。給電回路7は放射板11で受けた信号から所定の周波数を有する受信信号を選択し、無線ICチップ5の信号処理部6に伝達する。
【0015】
即ち、この無線ICデバイス1aは、リーダライタから放射される高周波信号(例えば、UHF周波数帯)を放射部13で受信し、給電部12と磁界結合している給電回路7を共振させてエネルギーを無線ICチップ5に供給する。一方、このエネルギーを駆動源として無線ICチップ5にメモリされている情報を給電回路7から給電部12を介して放射部13に供給し、リーダライタに放射する。
【0016】
第1実施例である無線ICデバイス1aにおいて、無線ICチップ5に給電回路7を設け、放射板11を外部との送受信信号の交換を行う放射部13と、給電回路7と電磁的に結合されて送受信信号の交換を行う給電部12とを有する両面開放型としたため、放射部13によってアンテナ利得が向上し、小さな給電回路7であっても十分な利得を得ることができる。従って、無線ICチップ5はリーダライタとは十分な距離をもって作動することになり、かつ、UHF帯以上の周波数帯域であっても十分に使用することができる。
【0017】
また、給電回路7で共振周波数がほぼ決定され、放射部13の形状が自由に設計可能であり、放射部13の大きさなどで利得を調整でき、放射部13の形状などで中心周波数を微調整できる。しかも、無線ICデバイス1aを書籍の間に挟んだりしても共振周波数特性が変化することはなく、無線ICデバイス1aを丸めたり、放射部13のサイズを変化させても、共振周波数特性が変化することはない。そして、給電回路7に対して全ての方向に放射板11の放射部13を延ばすことができ、アンテナ利得が向上する。
【0018】
また、放射板11のライン状給電部12は、無線ICチップ5の給電回路7の投影面(給電回路7の外形線で囲まれた部分)内に、投影面を跨ぐように配置され、給電部12の面積は給電回路7の投影面の面積よりも小さい。ここで、給電部12の面積とは金属部分の面積を意味する。給電部12の面積を給電回路7の投影面の面積よりも小さくすれば、給電回路7の磁束を妨げる部分が小さくなるので、信号の伝達効率が向上する。また、無線ICチップ5を放射板11上に貼り付ける際にそれほどの高精度を要求されることはない。そして、放射部13が給電部12の両端側に設けられているため、給電部12と給電回路7との容量結合性が強くなる。
【0019】
さらに、放射板11はフレキシブルなフィルム10に保持されたフレキシブルな金属膜によって形成されているため、プラスチックフィルム製の袋のようなフレキシブルな物に何ら支障なく貼着することができる。
【0020】
また、放射板11と無線ICチップ5は接着剤で接合しているため、はんだ付けや導電性接着剤などの加熱接合を行う必要がなく、放射板11やその支持部材(フィルム10)には熱に弱い材料を使用することができる。
【0021】
なお、前記給電回路7はヘリカル状のコイルを例示したが、スパイラル状のコイルであってもよく、あるいは、ミアンダ状のライン電極パターンで形成されていてもよい。
【0022】
(無線ICチップの変形例1、図2参照)
図2に、無線ICチップ5の第1主面5a(放射板11と接合される面)にミアンダ状の給電回路7を形成してインピーダンス変換や中心周波数の設計を行い、第1主面5aとは反対側の第2主面5bに信号処理回路の集積回路8を形成した例を示す。第1主面5aに給電回路7を形成し、第2主面5bに集積回路8を形成することで、無線ICチップ5の小型化、強度アップを図ることができる。
【0023】
(無線ICチップの変形例2、図3及び図4参照)
図3に、無線ICチップ5の第1主面5a(放射板11と接合される面)にスパイラル状の導体パターン7a,7bからなる多層の給電回路7を形成した例を示す。導体パターン7aは一端がIN端子部とされ、導体パターン7bは一端がOUT端子部とされ、互いに重なり合い、かつ、互いの他端がビアホール導体7cを介して接続されている。この給電回路7は図4に示す等価回路を構成し、2重に巻回されているのでコイル自体が小型化されるとともに、浮遊容量が並列に形成されるため、共振周波数を低下させることができる。
【0024】
(第2実施例、図5参照)
第2実施例である無線ICデバイス1bは、図5に示すように、支持フィルム10上に十字形状の給電部12と該給電部12の両端に接続した比較的広い面積のx方向、y方向にそれぞれ延びた放射部13とからなる放射板11をアルミ箔や金属蒸着膜などの金属薄膜にて形成し、支持フィルム10上に無線ICチップ5をその給電回路7の中心が給電部12の交点に一致するように接着剤にて貼り付けたものである。なお、給電回路7の中心は給電部12の交点に一致していることが好ましいが、多少ずれても構わない。
【0025】
この無線ICデバイス1bの作用効果は前記第1実施例と同様である。即ち、リーダライタから放射される高周波信号(例えば、UHF周波数帯)を放射部13で受信し、給電部12と磁界結合している給電回路7を共振させてエネルギーを無線ICチップ5に供給する。一方、このエネルギーを駆動源として無線ICチップ5にメモリされている情報を給電回路7から給電部12を介して放射部13に供給し、リーダライタに放射する。
【0026】
(第3実施例、図6〜図8参照)
第3実施例である無線ICデバイス1cは、図6に示すように、無線ICチップ5の裏面に二つのコイル状電極パターンからなる給電回路7を設け、この給電回路7の間に放射板11のライン状給電部12を配置したものである。
【0027】
図7に変形例である無線ICデバイス1c'を示す。この無線ICデバイス1c'は無線ICチップ5の給電回路7を二つのミアンダ状の電極パターンにて形成したもので、他の構成は無線ICデバイス1cと同様である。なお、ミアンダの方向は縦横のいずれでも構わない。
【0028】
この無線ICデバイス1c,1c'の作用効果は前記第1実施例と同様である。即ち、リーダライタから放射される高周波信号(例えば、UHF周波数帯)を放射部13で受信し、給電部12と磁界結合している給電回路7を共振させてエネルギーを無線ICチップ5に供給する。一方、このエネルギーを駆動源として無線ICチップ5にメモリされている情報を給電回路7から給電部12を介して放射部13に供給し、リーダライタに放射する。
【0029】
特に、この無線ICデバイス1c,1c'にあっては、放射板11の給電部12が給電回路7を遮ることがないので、電磁界の乱れ(変化)が極めて小さく、中心周波数の変化がほとんどなく、無線ICチップ5の搭載位置が多少ずれたとしても中心周波数の変化が起きにくくなる。
【0030】
また、支持フィルム10及び放射板11がフレキシブルであることから、図8に示すように、湾曲させてボトル状の物品に貼り付けて使用することも可能である。給電回路7で共振周波数がほぼ決定され、放射部13の形状変化で中心周波数が変化しないという利点を生かすことができる。なお、支持フィルム10を丸めて物品に貼り付けることができる点は、他の実施例でも同様である。
【0031】
(第4実施例、図9参照)
第4実施例である無線ICデバイス1dは、図9に示すように、無線ICチップ5の裏面に四つのコイル状電極パターンからなる給電回路7を設け、かつ、支持フィルム10上には十字形状の給電部12と該給電部12の両端に接続した比較的広い面積の放射部13とからなる放射板11をアルミ箔や金属蒸着膜などの金属薄膜にて形成したものである。支持フィルム10上には無線ICチップ5が四つの給電回路7間の中心を給電部12の交点に一致させて貼り付けられている。
【0032】
この無線ICデバイス1dの作用効果は前記第1実施例と同様である。即ち、リーダライタから放射される高周波信号(例えば、UHF周波数帯)を放射部13で受信し、給電部12と磁界結合している給電回路7を共振させてエネルギーを無線ICチップ5に供給する。一方、このエネルギーを駆動源として無線ICチップ5にメモリされている情報を給電回路7から給電部12を介して放射部13に供給し、リーダライタに放射する。
【0033】
特に、この無線ICデバイス1dにあっては、前記第3実施例と同様に、放射板11の給電部12が給電回路7を遮ることがないので、電磁界の乱れ(変化)が極めて小さく、中心周波数の変化がほとんどなく、無線ICチップ5の搭載位置が多少ずれたとしても中心周波数の変化が起きにくくなる。
【0034】
(第5実施例、図10及び図11参照)
第5実施例である無線ICデバイス1eは、図10に示すように、無線ICチップ5の第1主面5aに二つのコイル状電極パターンからなる給電回路7を設け、この給電回路7の間に放射板11のライン状給電部12を配置したもので、給電回路7と給電部12とは磁性体15で覆われている。
【0035】
放射板11は長尺状の支持フィルム10上に1本のラインにて形成され、一端部が給電部12とされ、該給電部12から放射部13が延在している。そして、給電部12は二つの給電回路7の間に配置されている。また、支持フィルム10は給電部12に対応する部分が無線ICチップ5の第2主面5b側に回り込んでいる。
【0036】
この無線ICデバイス1eの作用効果は前記第1実施例と同様である。即ち、リーダライタから放射される高周波信号(例えば、UHF周波数帯)を放射部13で受信し、給電部12と磁界結合している給電回路7を共振させてエネルギーを無線ICチップ5に供給する。一方、このエネルギーを駆動源として無線ICチップ5にメモリされている情報を給電回路7から給電部12を介して放射部13に供給し、リーダライタに放射する。
【0037】
特に、この無線ICデバイス1eにあっては、給電回路7と給電部12とがフェライトなどの磁性粉末を樹脂中に分散してなる磁性体15によって覆われているため、電磁エネルギーが磁性体15から漏れなくなり、給電回路7と給電部12との結合度が向上し、アンテナ利得の向上につながる。また、前記第3実施例と同様に、放射板11の給電部12が給電回路7を遮ることがないので、電磁界の乱れ(変化)が極めて小さく、中心周波数の変化がほとんどなく、無線ICチップ5の搭載位置が多少ずれたとしても中心周波数の変化が起きにくくなる。なお、無線ICチップ5は放射板11の一端部ではなく、放射板11の中央部に設けられていてもよい。
【0038】
図11にこの無線ICデバイス1eを有価証券30に挟み込んだ使用例を示す。有価証券30を2枚のシートを貼り合わせたものとし、一方のシート上に放射板11を形成することで支持フィルム10は不要である。従来のマイクロチップなどは、アンテナ利得が小さいので実質的にリーダライタと密着させなければ通信が不可能である。即ち、図11中、矢印Aで示した箇所をリーダライタでスキャンしなければならず、実質的には使用することが難しい。これに対して、無線ICデバイス1eを用いればアンテナ利得が向上しており、矢印B,Cで示した箇所をリーダライタでスキャンしても通信が可能である。また、放射板11を数μmと薄くできるので、有価証券のみならず紙幣などにも使用可能である。また、本無線ICデバイス1eのみならず、前記無線ICデバイス1a〜1d、さらに以下に説明する種々の無線ICデバイスもこのような形態で使用することができる。
【0039】
(第6実施例、図12参照)
第6実施例である無線ICデバイス1fは、図12に示すように、ライン状の給電部12と比較的面積の大きい放射部13とからなる放射板11を支持フィルム10上にアルミ箔や金属蒸着膜などの金属薄膜にて形成し、支持フィルム10上に無線ICチップ5をその給電回路7が給電部12と重なるように貼り付けたものである。
【0040】
無線ICチップ5は放射板11の一端部に配置され、放射板11の電気長Lは中心周波数λに対してλ/2以下の長さとされている。放射板11の電気長Lが半波長の長さの場合、放射板11のエネルギーは端部で最も高くなる。従って、エネルギーの最も高くなる位置で無線ICチップ5の給電回路7と結合させることで、磁気結合が強くなり、アンテナ利得が向上する。
【0041】
この無線ICデバイス1fにおいて他の作用効果は前記第1実施例と同様である。即ち、リーダライタから放射される高周波信号(例えば、UHF周波数帯)を放射部13で受信し、給電部12と磁界結合している給電回路7を共振させてエネルギーを無線ICチップ5に供給する。一方、このエネルギーを駆動源として無線ICチップ5にメモリされている情報を給電回路7から給電部12を介して放射部13に供給し、リーダライタに放射する。
【0042】
(第7実施例、図13参照)
第7実施例である無線ICデバイス1gは、図13に示すように、基本的な形態は前記第6実施例である無線ICデバイス1fと同様であり、ここでは、放射板11の電気長Lを中心周波数λに対してλ/2の整数倍の長さとしている。放射板11の電気長Lが半波長の整数倍である場合、放射板11と給電回路7との共鳴が起こり、アンテナの利得が向上する。その他の作用効果は第6実施例と同様である。
【0043】
但し、放射板11の電気長はλ/2の整数倍でなくてもよい。即ち、放射板11から放射される信号の周波数は、給電回路7の共振周波数によって実質的に決まるので、周波数特性に関しては、放射板11の電気長に実質的に依存しない。放射板11の電気長がλ/2の整数倍であると、利得が最大になるので好ましい。
【0044】
(第8実施例、図14参照)
第8実施例である無線ICデバイス1hは、図14に示すように、広い面積の支持フィルム10上に広い面積の放射板11をアルミ箔又は金属蒸着膜などの金属薄膜で形成し、その一部をライン状の給電部12とし、他の部分を放射部13としたものである。無線ICチップ5は支持フィルム10上にその給電回路7が給電部12と重なるように接着剤にて貼り付けられている。
【0045】
この無線ICデバイス1hの作用効果は前記第1実施例や第6実施例と同様であり、特に、放射部13の面積が大きいので、アンテナ効率が向上する。
【0046】
(第9実施例、図15参照)
第9実施例である無線ICデバイス1iは、図15に示すように、前記第8実施例と同様に広い面積の支持フィルム10上に広い面積の放射板11をアルミ箔又は金属蒸着膜などの金属薄膜で形成し、その中央に開口部14を設けてライン状の給電部12を形成し、他の部分を放射部13としたものである。無線ICチップ5は支持フィルム10上にその給電回路7が給電部12と重なるように接着剤にて貼り付けられている。この無線ICデバイス1iの作用効果は前記第8実施例と同様である。
【0047】
(第10実施例、図16参照)
第10実施例である無線ICデバイス1jは、図16に示すように、広い面積の支持フィルム10上に広い面積の放射板11をアルミ箔又は金属蒸着膜などの金属薄膜で形成し、かつ、放射板11には部分的に、複数の開口部を規則的にあるいは不規則的に配したメッシュ状の給電部12を形成したものである。無線ICチップ5は支持フィルム10上にその給電回路7がメッシュ状の給電部12と重なるように接着剤にて貼り付けられ、給電回路7と給電部12とが磁界を介して結合している。この無線ICデバイス1jの作用効果は前記第8実施例、第9実施例と同様である。
【0048】
(第11実施例、図17参照)
第11実施例である無線ICデバイス1kは、図17に示すように、放射板11を90度に分岐させたものである。即ち、放射板11をx−y平面内においてx軸方向に延在する放射部13aとy軸方向に延在する放射部13bにて構成し、放射部13aの延長線上にライン状の給電部12を形成している。無線ICチップ5は支持フィルム10上にその給電回路7が給電部12と重なるように接着剤にて貼り付けられている。
【0049】
この無線ICデバイス1kにおいて作用効果は前記第1実施例と同様である。即ち、リーダライタから放射される高周波信号(例えば、UHF周波数帯)を放射部13a,13bで受信し、給電部12と磁界結合している給電回路7を共振させてエネルギーを無線ICチップ5に供給する。一方、このエネルギーを駆動源として無線ICチップ5にメモリされている情報を給電回路7から給電部12を介して放射部13a,13bに供給し、リーダライタに放射する。さらに、無線ICデバイス1kでは、放射部13a,13bがx軸方向及びy軸方向に延在しているため、円偏波の受信が可能であり、アンテナ利得が向上する。
【0050】
(第12実施例、図18参照)
第12実施例である無線ICデバイス1lは、図18(A),(B)に示すように、放射板11をx−y−z空間において、x軸方向、y軸方向、z軸方向に延在する放射部13a,13b,13cにて構成し、各放射部13a,13b,13cのほぼ中心にライン状の給電部12を形成している。無線ICチップ5は支持フィルム10上にその給電回路7が給電部12と重なるように接着剤にて貼り付けられている。
【0051】
この無線ICデバイス1lは、例えば、箱状物の隅部に貼り付けて使用することができ、放射部13a,13b,13cが3次元的に延在しているため、アンテナの指向性がなくなり、いずれの方向においても効率のよい送受信が可能になる。さらに、無線ICデバイス1lの他の作用効果は前記第1実施例と同様である。
【0052】
(第13実施例、図19及び図20参照)
第13実施例である無線ICデバイス1mは、図19及び図20に示すように、無線ICチップ5の第1主面5a上にコイル電極パターンにて給電回路7を設け、支持フィルム10上に給電回路7と同形状の給電部12と該給電部12の一端からコイル状に延在する放射部13とからなる両端開放型の放射板11を形成したものである。放射部13は給電部12よりも僅かに太いラインで形成されており、コイル状の給電部12と給電回路7とが磁気的に結合している。
【0053】
なお、図19においては理解しやすくするため、給電回路7は細線で示している。また、給電回路7のライン幅と給電部12のライン幅は同じである。
【0054】
この無線ICデバイス1mにおいて作用効果は前記第1実施例と同様である。即ち、リーダライタから放射される高周波信号(例えば、UHF周波数帯)を放射部13で受信し、給電部12と磁界結合している給電回路7を共振させてエネルギーを無線ICチップ5に供給する。一方、このエネルギーを駆動源として無線ICチップ5にメモリされている情報を給電回路7から給電部12を介して放射部13に供給し、リーダライタに放射する。さらに、無線ICデバイス1mでは、給電部12の投影面の面積と給電回路7の投影面の面積は同じであり、給電部12と給電回路7とで交換されるエネルギー効率が大きくなる。なお、給電部12の投影面の面積は、利得を向上させることができることから、給電回路7の投影面の面積より大きくてもよい。
【0055】
(第14実施例、図21参照)
第14実施例である無線ICデバイス1nは、図21に示すように、針状の放射部13の先端部を屈曲させて放射部13とは垂直な面内にヘリカル状の給電部12を形成し、この給電部12を無線ICチップ5の第1主面5aに接着剤にて固定することで、給電部12と第1主面5aに形成した給電回路7とを磁気的に結合させたものである。給電部12と給電回路7の形状は前記第13実施例と同様に同じ形状とされている。
【0056】
この無線ICデバイス1nでは、放射部13は給電回路7の形成面に対して垂直方向に延在しており、例えば、ピン止め具のように、針状の放射部13を物品に差し込むかたちで無線ICデバイス1nを物品に取り付けることが可能となる。無線ICデバイス1nの作用効果は前記第13実施例と同様である。
【0057】
(第15実施例、図22参照)
第15実施例である無線ICデバイス1oは、図22に示すように、支持フィルム10上にベタ状に放射板11をアルミ箔や金属蒸着膜などの金属薄膜にて形成し、放射板11上に無線ICチップ5を貼り付けたものである。無線ICチップ5の裏面には給電回路7が形成されており、この給電回路7が対向する部分が給電部12として機能し、その他の部分が放射部13として機能する。
【0058】
この無線ICデバイス1oでは、無線ICチップ5の給電回路7が平面状態の給電部12と電磁結合して送受信信号を交換する。その作用効果は前記第1実施例と基本的に同様である。
【0059】
(第16実施例、図23参照)
第16実施例である無線ICデバイス1pは、図23に示すように、金属製棒状体35を放射板として機能させたものである。無線ICチップ5は棒状体35の端面に貼り付けられており、給電回路7が対向する部分が給電部12として機能し、棒状体35の全表面が放射部13として機能する。
【0060】
この無線ICデバイス1pでは、無線ICチップ5の給電回路7が平面状態の給電部12と電磁結合して送受信信号を交換する。その作用効果は前記第1実施例と基本的に同様である。
【0061】
(第17実施例、図24参照)
第17実施例である無線ICデバイス1qは、図24に示すように、支持フィルム10上に放射板11がフレキシブルなアルミ箔や金属蒸着膜などの金属薄膜にて形成され、支持フィルム10上に無線ICチップ5を貼り付けたものである。無線ICチップ5はその第1主面5aにコイル状の電極パターンからなる給電回路7が形成され、第2主面5b側が支持フィルム10上に、給電部12が給電回路7の投影面内に該投影面を跨ぐように配置されている。
【0062】
この無線ICデバイス1qの作用効果は前記第1実施例と同様である。特に、給電回路7と給電部12とが直接対向することなく、無線ICチップ5の厚み分だけ一定の距離を保って対向しているので、送受信信号の中心周波数(fo)がずれにくい利点を有している。
【0063】
(他の実施例)
なお、本発明に係る無線ICデバイスは前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0064】
例えば、無線ICチップ5の内部構成の細部、放射板11や支持フィルム10の細部形状は任意である。また、無線ICチップ5を支持フィルム10上に固定するのに接着剤以外の手法を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように、本発明は、RFIDシステムに用いられる無線ICデバイスに有用であり、特に、アンテナ利得が大きく、リーダライタと十分な距離を持って動作し、かつ、UHF帯以上の周波数帯域であっても十分に使用することができる点で優れている。
【符号の説明】
【0066】
1o,1p…無線ICデバイス
5…無線ICチップ
7…給電回路(電極パターン)
10…支持フィルム
11…放射板
12…給電部
13…放射部
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ICデバイス、特に、RFID(Radio Frequency Identification)システムに用いられる無線ICデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物品の管理システムとして、誘導電磁界を発生するリーダライタと物品に付された所定の情報を記憶したICタグ(以下、無線ICデバイスと称する)とを非接触方式で通信し、情報を伝達するRFIDシステムが開発されている。RFIDシステムに使用される無線ICデバイスは、一般的には、無線ICチップを搭載する基板にエッチングや印刷などにより形成された巻線コイルで形成されている。
【0003】
一方、特許文献1には、小型化などを目的として、無線ICチップにアンテナコイルを再配線によって形成した無線ICデバイスが開示されている。しかしながら、無線ICチップ自体が非常に小さいので、該チップに形成されたアンテナも非常に小さく、アンテナの利得が微小であり、リーダライタと密着レベルでないとICが駆動しないという問題点を有している。
【0004】
また、特許文献2には、放射用アンテナを有する基板に、アンテナコイル付きの無線ICチップを搭載した無線ICデバイス、即ち、基板のアンテナと無線ICチップのアンテナコイルとを対向配置させた構造の無線ICデバイスが開示されている。しかしながら、この構造では、基板側のアンテナは閉ループであるため、例えば、13.56MHzのような低周波帯域であれば十分な利得を得ることができるものの、UHF帯以上の周波数帯域になると、無線ICチップ側のアンテナコイルと基板側のアンテナとのインピーダンスマッチングが困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−276569号公報
【特許文献2】特開2000−311226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、アンテナ利得が大きく、リーダライタと十分な距離をもって動作し、かつ、UHF帯以上の周波数帯域であっても十分に使用することのできる無線ICデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明に係る無線ICデバイスは、
所定の共振周波数を有する共振回路を含む給電回路を有する無線ICチップと、前記給電回路から供給された送信信号を外部に放射する、及び/又は、外部からの受信信号を前記給電回路に供給する放射部材と、を備え、
UHF帯以上の周波数領域で利用される無線ICデバイスであって、
前記給電回路にはコイル状又はミアンダ状である電極パターンが含まれ、
前記放射部材と前記給電回路とは電磁結合されており、
前記放射部材は、外部との送受信信号の交換を行う放射部と、前記給電回路との送受信信号の交換を行う平面状の給電部とを有しており、
前記無線ICチップは、前記電極パターンの投影面が前記平面状の給電部の投影面内に位置するように、前記給電部上に配置されていること、
を特徴とする。
【0008】
本発明に係る無線ICデバイスにおいては、無線ICチップに給電回路を設け、放射部材を外部との送受信信号の交換を行う放射部と、前記給電回路と電磁結合されて送受信信号の交換を行う給電部とを有するため、放射部によってアンテナ利得が向上し、小さな給電回路であっても十分な利得を得ることができ、無線ICチップはリーダライタとは十分な距離をもって作動することになり、かつ、UHF帯以上の周波数帯域であっても十分に使用することができる。また、給電回路で共振周波数がほぼ決定され、放射部の形状が自由に設計可能であり、放射部の大きさなどで利得を調整でき、放射部の形状などで中心周波数を微調整できる。さらに、無線ICチップは、給電回路を構成する電極パターンの投影面が平面状の給電部の投影面内に位置するように、給電部上に配置されているため、給電部と給電回路とで交換されるエネルギー効率が大きくなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、小さな給電回路であっても十分な利得を得ることができ、リーダライタとは十分な距離をもって無線ICチップが作動することになり、かつ、UHF帯以上の周波数帯域であっても十分に使用することができる。また、無線ICチップ側の給電回路で共振周波数がほぼ決定されるため、放射部の形状が自由に設計可能であり、放射部の大きさなどで利得を調整でき、放射部の形状などで中心周波数を微調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】無線ICデバイスの第1実施例を示し、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図2】無線ICチップの変形例1を示し、(A)は第1主面側の斜視図、(B)は第2主面側の斜視図である。
【図3】無線ICチップの変形例2を示し、(A)は裏面図、(B)は断面図である。
【図4】無線ICチップの変形例2における給電回路の等価回路図である。
【図5】無線ICデバイスの第2実施例を示す平面図である。
【図6】無線ICデバイスの第3実施例を示す平面図である。
【図7】前記第3実施例の変形例を示す平面図である。
【図8】前記第3実施例の使用状態を示す斜視図である。
【図9】無線ICデバイスの第4実施例を示す平面図である。
【図10】無線ICデバイスの第5実施例を示し、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
【図11】前記第5実施例の使用状態を示す平面図である。
【図12】無線ICデバイスの第6実施例を示す平面図である。
【図13】無線ICデバイスの第7実施例を示す平面図である。
【図14】無線ICデバイスの第8実施例を示す平面図である。
【図15】無線ICデバイスの第9実施例を示す平面図である。
【図16】無線ICデバイスの第10実施例を示す平面図である。
【図17】無線ICデバイスの第11実施例を示す平面図である。
【図18】無線ICデバイスの第12実施例を示し、(A)は展開状態の平面図、(B)は使用時の斜視図である。
【図19】無線ICデバイスの第13実施例を示す平面図である。
【図20】前記第13実施例の要部を示す斜視図である。
【図21】無線ICデバイスの第14実施例を示す斜視図である。
【図22】無線ICデバイスの第15実施例を示す分解斜視図である。
【図23】無線ICデバイスの第16実施例を示す分解斜視図である。
【図24】無線ICデバイスの第17実施例を示し、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る無線ICデバイスの実施例について添付図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施例において共通する部品、部分は同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
(第1実施例、図1参照)
第1実施例である無線ICデバイス1aは、図1(A),(B)に示すように、支持フィルム10上に放射板11を形成し、支持フィルム10の上面であって放射板11の給電部12上に無線ICチップ5を接着剤にて貼り付けたものである。放射板11は、ライン状の給電部12と、比較的広い面積の放射部13とで構成された両面開放型(両端開放型)である。放射板11はフレキシブルなアルミ箔や金属蒸着膜などの金属薄膜からなり、支持フィルム10はPETなどの絶縁性のフレキシブルなフィルムからなる。フィルム以外に、紙や合成紙を使用することもできる。
【0013】
無線ICチップ5は、信号処理部6が内蔵され、給電部12と対向する第1主面5a側にコイル状の電極パターンからなる給電回路7が形成されている。給電回路7は所定の共振周波数を有する共振回路を含み、この給電回路7と信号処理部6とは電気的に接続されており、給電回路7と給電部12とは電磁結合されている。また、無線ICチップ5は周知のクロック回路、ロジック回路、メモリ回路を含み、必要な情報がメモリされており、所定の高周波信号を送受信できるものである。
【0014】
放射板11は、給電回路7から供給された所定の周波数を有する送信信号を給電回路7と磁界結合している給電部12を介して放射部13に供給し、該放射部13から外部のリーダライタに放射する。また、放射部13で受けたリーダライタからの受信信号(高周波信号、例えば、UHF周波数帯)を給電部12を介して給電回路7に供給する。給電回路7は放射板11で受けた信号から所定の周波数を有する受信信号を選択し、無線ICチップ5の信号処理部6に伝達する。
【0015】
即ち、この無線ICデバイス1aは、リーダライタから放射される高周波信号(例えば、UHF周波数帯)を放射部13で受信し、給電部12と磁界結合している給電回路7を共振させてエネルギーを無線ICチップ5に供給する。一方、このエネルギーを駆動源として無線ICチップ5にメモリされている情報を給電回路7から給電部12を介して放射部13に供給し、リーダライタに放射する。
【0016】
第1実施例である無線ICデバイス1aにおいて、無線ICチップ5に給電回路7を設け、放射板11を外部との送受信信号の交換を行う放射部13と、給電回路7と電磁的に結合されて送受信信号の交換を行う給電部12とを有する両面開放型としたため、放射部13によってアンテナ利得が向上し、小さな給電回路7であっても十分な利得を得ることができる。従って、無線ICチップ5はリーダライタとは十分な距離をもって作動することになり、かつ、UHF帯以上の周波数帯域であっても十分に使用することができる。
【0017】
また、給電回路7で共振周波数がほぼ決定され、放射部13の形状が自由に設計可能であり、放射部13の大きさなどで利得を調整でき、放射部13の形状などで中心周波数を微調整できる。しかも、無線ICデバイス1aを書籍の間に挟んだりしても共振周波数特性が変化することはなく、無線ICデバイス1aを丸めたり、放射部13のサイズを変化させても、共振周波数特性が変化することはない。そして、給電回路7に対して全ての方向に放射板11の放射部13を延ばすことができ、アンテナ利得が向上する。
【0018】
また、放射板11のライン状給電部12は、無線ICチップ5の給電回路7の投影面(給電回路7の外形線で囲まれた部分)内に、投影面を跨ぐように配置され、給電部12の面積は給電回路7の投影面の面積よりも小さい。ここで、給電部12の面積とは金属部分の面積を意味する。給電部12の面積を給電回路7の投影面の面積よりも小さくすれば、給電回路7の磁束を妨げる部分が小さくなるので、信号の伝達効率が向上する。また、無線ICチップ5を放射板11上に貼り付ける際にそれほどの高精度を要求されることはない。そして、放射部13が給電部12の両端側に設けられているため、給電部12と給電回路7との容量結合性が強くなる。
【0019】
さらに、放射板11はフレキシブルなフィルム10に保持されたフレキシブルな金属膜によって形成されているため、プラスチックフィルム製の袋のようなフレキシブルな物に何ら支障なく貼着することができる。
【0020】
また、放射板11と無線ICチップ5は接着剤で接合しているため、はんだ付けや導電性接着剤などの加熱接合を行う必要がなく、放射板11やその支持部材(フィルム10)には熱に弱い材料を使用することができる。
【0021】
なお、前記給電回路7はヘリカル状のコイルを例示したが、スパイラル状のコイルであってもよく、あるいは、ミアンダ状のライン電極パターンで形成されていてもよい。
【0022】
(無線ICチップの変形例1、図2参照)
図2に、無線ICチップ5の第1主面5a(放射板11と接合される面)にミアンダ状の給電回路7を形成してインピーダンス変換や中心周波数の設計を行い、第1主面5aとは反対側の第2主面5bに信号処理回路の集積回路8を形成した例を示す。第1主面5aに給電回路7を形成し、第2主面5bに集積回路8を形成することで、無線ICチップ5の小型化、強度アップを図ることができる。
【0023】
(無線ICチップの変形例2、図3及び図4参照)
図3に、無線ICチップ5の第1主面5a(放射板11と接合される面)にスパイラル状の導体パターン7a,7bからなる多層の給電回路7を形成した例を示す。導体パターン7aは一端がIN端子部とされ、導体パターン7bは一端がOUT端子部とされ、互いに重なり合い、かつ、互いの他端がビアホール導体7cを介して接続されている。この給電回路7は図4に示す等価回路を構成し、2重に巻回されているのでコイル自体が小型化されるとともに、浮遊容量が並列に形成されるため、共振周波数を低下させることができる。
【0024】
(第2実施例、図5参照)
第2実施例である無線ICデバイス1bは、図5に示すように、支持フィルム10上に十字形状の給電部12と該給電部12の両端に接続した比較的広い面積のx方向、y方向にそれぞれ延びた放射部13とからなる放射板11をアルミ箔や金属蒸着膜などの金属薄膜にて形成し、支持フィルム10上に無線ICチップ5をその給電回路7の中心が給電部12の交点に一致するように接着剤にて貼り付けたものである。なお、給電回路7の中心は給電部12の交点に一致していることが好ましいが、多少ずれても構わない。
【0025】
この無線ICデバイス1bの作用効果は前記第1実施例と同様である。即ち、リーダライタから放射される高周波信号(例えば、UHF周波数帯)を放射部13で受信し、給電部12と磁界結合している給電回路7を共振させてエネルギーを無線ICチップ5に供給する。一方、このエネルギーを駆動源として無線ICチップ5にメモリされている情報を給電回路7から給電部12を介して放射部13に供給し、リーダライタに放射する。
【0026】
(第3実施例、図6〜図8参照)
第3実施例である無線ICデバイス1cは、図6に示すように、無線ICチップ5の裏面に二つのコイル状電極パターンからなる給電回路7を設け、この給電回路7の間に放射板11のライン状給電部12を配置したものである。
【0027】
図7に変形例である無線ICデバイス1c'を示す。この無線ICデバイス1c'は無線ICチップ5の給電回路7を二つのミアンダ状の電極パターンにて形成したもので、他の構成は無線ICデバイス1cと同様である。なお、ミアンダの方向は縦横のいずれでも構わない。
【0028】
この無線ICデバイス1c,1c'の作用効果は前記第1実施例と同様である。即ち、リーダライタから放射される高周波信号(例えば、UHF周波数帯)を放射部13で受信し、給電部12と磁界結合している給電回路7を共振させてエネルギーを無線ICチップ5に供給する。一方、このエネルギーを駆動源として無線ICチップ5にメモリされている情報を給電回路7から給電部12を介して放射部13に供給し、リーダライタに放射する。
【0029】
特に、この無線ICデバイス1c,1c'にあっては、放射板11の給電部12が給電回路7を遮ることがないので、電磁界の乱れ(変化)が極めて小さく、中心周波数の変化がほとんどなく、無線ICチップ5の搭載位置が多少ずれたとしても中心周波数の変化が起きにくくなる。
【0030】
また、支持フィルム10及び放射板11がフレキシブルであることから、図8に示すように、湾曲させてボトル状の物品に貼り付けて使用することも可能である。給電回路7で共振周波数がほぼ決定され、放射部13の形状変化で中心周波数が変化しないという利点を生かすことができる。なお、支持フィルム10を丸めて物品に貼り付けることができる点は、他の実施例でも同様である。
【0031】
(第4実施例、図9参照)
第4実施例である無線ICデバイス1dは、図9に示すように、無線ICチップ5の裏面に四つのコイル状電極パターンからなる給電回路7を設け、かつ、支持フィルム10上には十字形状の給電部12と該給電部12の両端に接続した比較的広い面積の放射部13とからなる放射板11をアルミ箔や金属蒸着膜などの金属薄膜にて形成したものである。支持フィルム10上には無線ICチップ5が四つの給電回路7間の中心を給電部12の交点に一致させて貼り付けられている。
【0032】
この無線ICデバイス1dの作用効果は前記第1実施例と同様である。即ち、リーダライタから放射される高周波信号(例えば、UHF周波数帯)を放射部13で受信し、給電部12と磁界結合している給電回路7を共振させてエネルギーを無線ICチップ5に供給する。一方、このエネルギーを駆動源として無線ICチップ5にメモリされている情報を給電回路7から給電部12を介して放射部13に供給し、リーダライタに放射する。
【0033】
特に、この無線ICデバイス1dにあっては、前記第3実施例と同様に、放射板11の給電部12が給電回路7を遮ることがないので、電磁界の乱れ(変化)が極めて小さく、中心周波数の変化がほとんどなく、無線ICチップ5の搭載位置が多少ずれたとしても中心周波数の変化が起きにくくなる。
【0034】
(第5実施例、図10及び図11参照)
第5実施例である無線ICデバイス1eは、図10に示すように、無線ICチップ5の第1主面5aに二つのコイル状電極パターンからなる給電回路7を設け、この給電回路7の間に放射板11のライン状給電部12を配置したもので、給電回路7と給電部12とは磁性体15で覆われている。
【0035】
放射板11は長尺状の支持フィルム10上に1本のラインにて形成され、一端部が給電部12とされ、該給電部12から放射部13が延在している。そして、給電部12は二つの給電回路7の間に配置されている。また、支持フィルム10は給電部12に対応する部分が無線ICチップ5の第2主面5b側に回り込んでいる。
【0036】
この無線ICデバイス1eの作用効果は前記第1実施例と同様である。即ち、リーダライタから放射される高周波信号(例えば、UHF周波数帯)を放射部13で受信し、給電部12と磁界結合している給電回路7を共振させてエネルギーを無線ICチップ5に供給する。一方、このエネルギーを駆動源として無線ICチップ5にメモリされている情報を給電回路7から給電部12を介して放射部13に供給し、リーダライタに放射する。
【0037】
特に、この無線ICデバイス1eにあっては、給電回路7と給電部12とがフェライトなどの磁性粉末を樹脂中に分散してなる磁性体15によって覆われているため、電磁エネルギーが磁性体15から漏れなくなり、給電回路7と給電部12との結合度が向上し、アンテナ利得の向上につながる。また、前記第3実施例と同様に、放射板11の給電部12が給電回路7を遮ることがないので、電磁界の乱れ(変化)が極めて小さく、中心周波数の変化がほとんどなく、無線ICチップ5の搭載位置が多少ずれたとしても中心周波数の変化が起きにくくなる。なお、無線ICチップ5は放射板11の一端部ではなく、放射板11の中央部に設けられていてもよい。
【0038】
図11にこの無線ICデバイス1eを有価証券30に挟み込んだ使用例を示す。有価証券30を2枚のシートを貼り合わせたものとし、一方のシート上に放射板11を形成することで支持フィルム10は不要である。従来のマイクロチップなどは、アンテナ利得が小さいので実質的にリーダライタと密着させなければ通信が不可能である。即ち、図11中、矢印Aで示した箇所をリーダライタでスキャンしなければならず、実質的には使用することが難しい。これに対して、無線ICデバイス1eを用いればアンテナ利得が向上しており、矢印B,Cで示した箇所をリーダライタでスキャンしても通信が可能である。また、放射板11を数μmと薄くできるので、有価証券のみならず紙幣などにも使用可能である。また、本無線ICデバイス1eのみならず、前記無線ICデバイス1a〜1d、さらに以下に説明する種々の無線ICデバイスもこのような形態で使用することができる。
【0039】
(第6実施例、図12参照)
第6実施例である無線ICデバイス1fは、図12に示すように、ライン状の給電部12と比較的面積の大きい放射部13とからなる放射板11を支持フィルム10上にアルミ箔や金属蒸着膜などの金属薄膜にて形成し、支持フィルム10上に無線ICチップ5をその給電回路7が給電部12と重なるように貼り付けたものである。
【0040】
無線ICチップ5は放射板11の一端部に配置され、放射板11の電気長Lは中心周波数λに対してλ/2以下の長さとされている。放射板11の電気長Lが半波長の長さの場合、放射板11のエネルギーは端部で最も高くなる。従って、エネルギーの最も高くなる位置で無線ICチップ5の給電回路7と結合させることで、磁気結合が強くなり、アンテナ利得が向上する。
【0041】
この無線ICデバイス1fにおいて他の作用効果は前記第1実施例と同様である。即ち、リーダライタから放射される高周波信号(例えば、UHF周波数帯)を放射部13で受信し、給電部12と磁界結合している給電回路7を共振させてエネルギーを無線ICチップ5に供給する。一方、このエネルギーを駆動源として無線ICチップ5にメモリされている情報を給電回路7から給電部12を介して放射部13に供給し、リーダライタに放射する。
【0042】
(第7実施例、図13参照)
第7実施例である無線ICデバイス1gは、図13に示すように、基本的な形態は前記第6実施例である無線ICデバイス1fと同様であり、ここでは、放射板11の電気長Lを中心周波数λに対してλ/2の整数倍の長さとしている。放射板11の電気長Lが半波長の整数倍である場合、放射板11と給電回路7との共鳴が起こり、アンテナの利得が向上する。その他の作用効果は第6実施例と同様である。
【0043】
但し、放射板11の電気長はλ/2の整数倍でなくてもよい。即ち、放射板11から放射される信号の周波数は、給電回路7の共振周波数によって実質的に決まるので、周波数特性に関しては、放射板11の電気長に実質的に依存しない。放射板11の電気長がλ/2の整数倍であると、利得が最大になるので好ましい。
【0044】
(第8実施例、図14参照)
第8実施例である無線ICデバイス1hは、図14に示すように、広い面積の支持フィルム10上に広い面積の放射板11をアルミ箔又は金属蒸着膜などの金属薄膜で形成し、その一部をライン状の給電部12とし、他の部分を放射部13としたものである。無線ICチップ5は支持フィルム10上にその給電回路7が給電部12と重なるように接着剤にて貼り付けられている。
【0045】
この無線ICデバイス1hの作用効果は前記第1実施例や第6実施例と同様であり、特に、放射部13の面積が大きいので、アンテナ効率が向上する。
【0046】
(第9実施例、図15参照)
第9実施例である無線ICデバイス1iは、図15に示すように、前記第8実施例と同様に広い面積の支持フィルム10上に広い面積の放射板11をアルミ箔又は金属蒸着膜などの金属薄膜で形成し、その中央に開口部14を設けてライン状の給電部12を形成し、他の部分を放射部13としたものである。無線ICチップ5は支持フィルム10上にその給電回路7が給電部12と重なるように接着剤にて貼り付けられている。この無線ICデバイス1iの作用効果は前記第8実施例と同様である。
【0047】
(第10実施例、図16参照)
第10実施例である無線ICデバイス1jは、図16に示すように、広い面積の支持フィルム10上に広い面積の放射板11をアルミ箔又は金属蒸着膜などの金属薄膜で形成し、かつ、放射板11には部分的に、複数の開口部を規則的にあるいは不規則的に配したメッシュ状の給電部12を形成したものである。無線ICチップ5は支持フィルム10上にその給電回路7がメッシュ状の給電部12と重なるように接着剤にて貼り付けられ、給電回路7と給電部12とが磁界を介して結合している。この無線ICデバイス1jの作用効果は前記第8実施例、第9実施例と同様である。
【0048】
(第11実施例、図17参照)
第11実施例である無線ICデバイス1kは、図17に示すように、放射板11を90度に分岐させたものである。即ち、放射板11をx−y平面内においてx軸方向に延在する放射部13aとy軸方向に延在する放射部13bにて構成し、放射部13aの延長線上にライン状の給電部12を形成している。無線ICチップ5は支持フィルム10上にその給電回路7が給電部12と重なるように接着剤にて貼り付けられている。
【0049】
この無線ICデバイス1kにおいて作用効果は前記第1実施例と同様である。即ち、リーダライタから放射される高周波信号(例えば、UHF周波数帯)を放射部13a,13bで受信し、給電部12と磁界結合している給電回路7を共振させてエネルギーを無線ICチップ5に供給する。一方、このエネルギーを駆動源として無線ICチップ5にメモリされている情報を給電回路7から給電部12を介して放射部13a,13bに供給し、リーダライタに放射する。さらに、無線ICデバイス1kでは、放射部13a,13bがx軸方向及びy軸方向に延在しているため、円偏波の受信が可能であり、アンテナ利得が向上する。
【0050】
(第12実施例、図18参照)
第12実施例である無線ICデバイス1lは、図18(A),(B)に示すように、放射板11をx−y−z空間において、x軸方向、y軸方向、z軸方向に延在する放射部13a,13b,13cにて構成し、各放射部13a,13b,13cのほぼ中心にライン状の給電部12を形成している。無線ICチップ5は支持フィルム10上にその給電回路7が給電部12と重なるように接着剤にて貼り付けられている。
【0051】
この無線ICデバイス1lは、例えば、箱状物の隅部に貼り付けて使用することができ、放射部13a,13b,13cが3次元的に延在しているため、アンテナの指向性がなくなり、いずれの方向においても効率のよい送受信が可能になる。さらに、無線ICデバイス1lの他の作用効果は前記第1実施例と同様である。
【0052】
(第13実施例、図19及び図20参照)
第13実施例である無線ICデバイス1mは、図19及び図20に示すように、無線ICチップ5の第1主面5a上にコイル電極パターンにて給電回路7を設け、支持フィルム10上に給電回路7と同形状の給電部12と該給電部12の一端からコイル状に延在する放射部13とからなる両端開放型の放射板11を形成したものである。放射部13は給電部12よりも僅かに太いラインで形成されており、コイル状の給電部12と給電回路7とが磁気的に結合している。
【0053】
なお、図19においては理解しやすくするため、給電回路7は細線で示している。また、給電回路7のライン幅と給電部12のライン幅は同じである。
【0054】
この無線ICデバイス1mにおいて作用効果は前記第1実施例と同様である。即ち、リーダライタから放射される高周波信号(例えば、UHF周波数帯)を放射部13で受信し、給電部12と磁界結合している給電回路7を共振させてエネルギーを無線ICチップ5に供給する。一方、このエネルギーを駆動源として無線ICチップ5にメモリされている情報を給電回路7から給電部12を介して放射部13に供給し、リーダライタに放射する。さらに、無線ICデバイス1mでは、給電部12の投影面の面積と給電回路7の投影面の面積は同じであり、給電部12と給電回路7とで交換されるエネルギー効率が大きくなる。なお、給電部12の投影面の面積は、利得を向上させることができることから、給電回路7の投影面の面積より大きくてもよい。
【0055】
(第14実施例、図21参照)
第14実施例である無線ICデバイス1nは、図21に示すように、針状の放射部13の先端部を屈曲させて放射部13とは垂直な面内にヘリカル状の給電部12を形成し、この給電部12を無線ICチップ5の第1主面5aに接着剤にて固定することで、給電部12と第1主面5aに形成した給電回路7とを磁気的に結合させたものである。給電部12と給電回路7の形状は前記第13実施例と同様に同じ形状とされている。
【0056】
この無線ICデバイス1nでは、放射部13は給電回路7の形成面に対して垂直方向に延在しており、例えば、ピン止め具のように、針状の放射部13を物品に差し込むかたちで無線ICデバイス1nを物品に取り付けることが可能となる。無線ICデバイス1nの作用効果は前記第13実施例と同様である。
【0057】
(第15実施例、図22参照)
第15実施例である無線ICデバイス1oは、図22に示すように、支持フィルム10上にベタ状に放射板11をアルミ箔や金属蒸着膜などの金属薄膜にて形成し、放射板11上に無線ICチップ5を貼り付けたものである。無線ICチップ5の裏面には給電回路7が形成されており、この給電回路7が対向する部分が給電部12として機能し、その他の部分が放射部13として機能する。
【0058】
この無線ICデバイス1oでは、無線ICチップ5の給電回路7が平面状態の給電部12と電磁結合して送受信信号を交換する。その作用効果は前記第1実施例と基本的に同様である。
【0059】
(第16実施例、図23参照)
第16実施例である無線ICデバイス1pは、図23に示すように、金属製棒状体35を放射板として機能させたものである。無線ICチップ5は棒状体35の端面に貼り付けられており、給電回路7が対向する部分が給電部12として機能し、棒状体35の全表面が放射部13として機能する。
【0060】
この無線ICデバイス1pでは、無線ICチップ5の給電回路7が平面状態の給電部12と電磁結合して送受信信号を交換する。その作用効果は前記第1実施例と基本的に同様である。
【0061】
(第17実施例、図24参照)
第17実施例である無線ICデバイス1qは、図24に示すように、支持フィルム10上に放射板11がフレキシブルなアルミ箔や金属蒸着膜などの金属薄膜にて形成され、支持フィルム10上に無線ICチップ5を貼り付けたものである。無線ICチップ5はその第1主面5aにコイル状の電極パターンからなる給電回路7が形成され、第2主面5b側が支持フィルム10上に、給電部12が給電回路7の投影面内に該投影面を跨ぐように配置されている。
【0062】
この無線ICデバイス1qの作用効果は前記第1実施例と同様である。特に、給電回路7と給電部12とが直接対向することなく、無線ICチップ5の厚み分だけ一定の距離を保って対向しているので、送受信信号の中心周波数(fo)がずれにくい利点を有している。
【0063】
(他の実施例)
なお、本発明に係る無線ICデバイスは前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0064】
例えば、無線ICチップ5の内部構成の細部、放射板11や支持フィルム10の細部形状は任意である。また、無線ICチップ5を支持フィルム10上に固定するのに接着剤以外の手法を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように、本発明は、RFIDシステムに用いられる無線ICデバイスに有用であり、特に、アンテナ利得が大きく、リーダライタと十分な距離を持って動作し、かつ、UHF帯以上の周波数帯域であっても十分に使用することができる点で優れている。
【符号の説明】
【0066】
1o,1p…無線ICデバイス
5…無線ICチップ
7…給電回路(電極パターン)
10…支持フィルム
11…放射板
12…給電部
13…放射部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の共振周波数を有する共振回路を含む給電回路を有する無線ICチップと、
前記給電回路から供給された送信信号を外部に放射する、及び/又は、外部からの受信信号を前記給電回路に供給する放射部材と、を備え、
UHF帯以上の周波数領域で利用される無線ICデバイスであって、
前記給電回路にはコイル状又はミアンダ状である電極パターンが含まれ、
前記放射部材と前記給電回路とは電磁結合されており、
前記放射部材は、外部との送受信信号の交換を行う放射部と、前記給電回路との送受信信号の交換を行う平面状の給電部とを有しており、
前記無線ICチップは、前記電極パターンの投影面が前記平面状の給電部の投影面内に位置するように、前記給電部上に配置されていること、
を特徴とする無線ICデバイス。
【請求項2】
前記放射部材はフレキシブルな金属膜によって形成されていること、を特徴とする請求項1に記載の無線ICデバイス。
【請求項3】
前記金属膜はフレキシブルなフィルムによって支持されていること、を特徴とする請求項2に記載の無線ICデバイス。
【請求項4】
前記放射部材は金属製棒状体であり、該棒状体の端面が前記給電部として機能し、該棒状体の全表面が前記放射部として機能すること、を特徴とする請求項1に記載の無線ICデバイス。
【請求項1】
所定の共振周波数を有する共振回路を含む給電回路を有する無線ICチップと、
前記給電回路から供給された送信信号を外部に放射する、及び/又は、外部からの受信信号を前記給電回路に供給する放射部材と、を備え、
UHF帯以上の周波数領域で利用される無線ICデバイスであって、
前記給電回路にはコイル状又はミアンダ状である電極パターンが含まれ、
前記放射部材と前記給電回路とは電磁結合されており、
前記放射部材は、外部との送受信信号の交換を行う放射部と、前記給電回路との送受信信号の交換を行う平面状の給電部とを有しており、
前記無線ICチップは、前記電極パターンの投影面が前記平面状の給電部の投影面内に位置するように、前記給電部上に配置されていること、
を特徴とする無線ICデバイス。
【請求項2】
前記放射部材はフレキシブルな金属膜によって形成されていること、を特徴とする請求項1に記載の無線ICデバイス。
【請求項3】
前記金属膜はフレキシブルなフィルムによって支持されていること、を特徴とする請求項2に記載の無線ICデバイス。
【請求項4】
前記放射部材は金属製棒状体であり、該棒状体の端面が前記給電部として機能し、該棒状体の全表面が前記放射部として機能すること、を特徴とする請求項1に記載の無線ICデバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2012−168983(P2012−168983A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−112098(P2012−112098)
【出願日】平成24年5月16日(2012.5.16)
【分割の表示】特願2008−511995(P2008−511995)の分割
【原出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月16日(2012.5.16)
【分割の表示】特願2008−511995(P2008−511995)の分割
【原出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
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