説明

無線LANシステム、無線LAN装置及びそのプログラム

【課題】無線LANを介して外部ネットワークへアクセスする際の、無線中継器の中継経路を自動的に効率化する。
【解決手段】無線LAN装置を3以上備えた無線LANシステムにおいて、無線LAN装置の各々は、無線LAN装置と外部ネットワークとの接続の有無を判断し、少なくともその判断結果に基づいて設定したプライオリティを他の無線LAN装置に通知する。このプライオリティは、無線ネットワーク内から外部ネットワークへ向けて送信される無線パケットの中継経路における、無線LAN装置についての中継先としての優先度を示し、外部ネットワークとの接続があると判断された場合には、相対的に上位に設定される。他の無線LAN装置から通知を受けた無線LAN装置は、受け取ったプライオリティに基づいた中継先に対して、前記外部ネットワークへ向けた無線パケットの中継を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ネットワークにおいて無線通信を行う無線LAN装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LANが普及している。無線LANにおいては、無線LAN機器の電波到達範囲内においてのみ通信が可能となるため、1つの無線LAN機器の電波到達範囲を超える広範囲のエリアに亘って通信を行いたい場合に、複数の無線中継器を設置して、通信可能エリアを広げる技術が開発されている。例えば、下記特許文献1では、無線端末から無線中継器を介して、アクセスポイントにアクセスし、アクセスポイントを介して外部ネットワークにアクセスする技術が開示されている。
【0003】
しかしながら、無線中継器は、ユーザの手によって、いずれの機器同士を接続するかを手動で設定しなければならず、ユーザにとって手間がかかる。同一の無線設定が行われた無線中継器が複数存在する場合、RSSI(Received Signal Strength Indicator、受信信号強度)レベルに基づいて、接続先を自動的に決定することも考えられるが、この場合、必ずしも、中継経路が最適化されないことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2005−523641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の問題の少なくとも一部を考慮し、本発明が解決しようとする課題は、無線LANを介して外部ネットワークへアクセスする際の、無線中継器の中継経路を自動的に効率化することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]無線ネットワークにおいて無線通信を行う無線LAN装置を3以上備えた無線LANシステムであって、
前記無線LAN装置の各々は、
有線によって外部ネットワークと通信を行う第1の通信手段と、
前記無線ネットワーク上で前記無線パケットを中継可能に、前記無線通信を行う第2の通信手段と、
前記無線LAN装置と前記外部ネットワークとの接続の有無を判断する判断手段と、
前記無線ネットワーク内から前記外部ネットワークへ向けて送信される前記無線パケットの中継経路における、前記無線LAN装置についての中継先としての優先度を示すプライオリティを、少なくとも前記判断手段の判断結果に基づいて設定する設定手段と、
前記設定したプライオリティを、前記無線LAN装置の電波到達範囲内に通信可能に存在する他の無線LAN装置に通知する通知手段と
を備え、
前記設定手段は、前記判断手段が前記外部ネットワークとの接続があると判断した場合に、前記プライオリティを相対的に上位に設定し、
前記第2の通信手段は、前記他の無線LAN装置から、該他の無線LAN装置についてのプライオリティの通知を受け取って、該プライオリティに基づいた中継先に対して、前記外部ネットワークへ向けた無線パケットの中継を行う
無線LANシステム。
【0008】
かかる構成の無線LANシステムは、無線LAN装置の各々が、無線LAN装置と外部ネットワークとの接続の有無を判断し、少なくともその判断結果に基づいて設定したプライオリティを、電波到達範囲内に存在する他の無線LAN装置に通知する。このプライオリティは、外部ネットワークとの接続があると判断された場合には、相対的に上位に設定される。他の無線LAN装置から通知を受けた無線LAN装置は、受け取ったプライオリティに基づいた中継先に対して、外部ネットワークへ向けた無線パケットの中継を行う。したがって、無線LAN装置は、電波到達範囲内に、外部ネットワークと接続された無線LAN装置が存在する場合には、外部ネットワークと接続された無線LAN装置に対してパケットを中継することができる。その結果、無線LANを介して外部ネットワークへアクセスする際の、無線LAN装置の中継経路を自動的に効率化することができる。
【0009】
[適用例2]前記設定手段は、前記判断手段が前記外部ネットワークとの接続がないと判断した場合に、前記他の無線LAN装置から通知を受けたプライオリティに基づいて、前記無線LAN装置についてのプライオリティを設定する適用例1記載の無線LANシステム。
【0010】
かかる構成の無線LANシステムは、外部ネットワークとの接続がないと判断した場合に、他の無線LAN装置のプライオリティに基づいてプライオリティを設定する。したがって、外部ネットワークとの接続がない無線LAN装置においても、好適にプライオリティを設定することができる。
【0011】
[適用例3]適用例2記載の無線LANシステムであって、前記設定手段は、前記他の無線LAN装置が複数存在し、該他の無線LAN装置から通知を受けたプライオリティの少なくとも1つが、最下位のプライオリティでない場合において、該通知を受けたプライオリティのうちで相対的に最も上位のプライオリティに対して1段階下位のプライオリティを前記無線LAN装置についてのプライオリティとして設定する無線LANシステム。
【0012】
かかる構成の無線LANシステムは、複数の他の無線LAN装置のプライオリティの少なくとも1つが、最下位のプライオリティでない場合には、これらのプライオリティのうちで相対的に最も上位のプライオリティに対して1段階下位のプライオリティを無線LAN装置についてのプライオリティとして設定する。したがって、外部ネットワークに接続された無線LAN装置を相対的に上位として、外部ネットワークに接続されていない無線LAN装置のプライオリティを、外部ネットワークに接続された無線LAN装置までの中継数に応じて階層的に設定することができる。その結果、無線LAN装置の中継経路を極めて効率化することができる。
【0013】
[適用例4]適用例2または適用例3記載の無線LANシステムであって、前記設定手段は、前記他の無線LAN装置が単数であり、該他の無線LAN装置から通知を受けたプライオリティが最下位のプライオリティでない場合において、該通知を受けたプライオリティに対して1段階下位のプライオリティを、前記無線LAN装置についてのプライオリティとして設定する無線LANシステム。
【0014】
かかる構成の無線LANシステムは、単数存在する他の無線LAN装置のプライオリティが最下位のプライオリティでない場合には、そのプライオリティに対して1段階下位のプライオリティを、無線LAN装置についてのプライオリティとして設定する。したがって、外部ネットワークに接続された無線LAN装置を相対的に上位として、外部ネットワークに接続されていない無線LAN装置のプライオリティを、外部ネットワークに接続された無線LAN装置までの中継数に応じて階層的に設定することができる。その結果、無線LAN装置の中継経路を極めて効率化することができる。
【0015】
[適用例5]適用例2ないし適用例4のいずれか記載の無線LANシステムであって、前記設定手段は、前記他の無線LAN装置から通知を受けたプライオリティの全てが最下位のプライオリティである場合において、前記最下位のプライオリティを前記無線LAN装置についてのプライオリティとして設定する無線LANシステム。
【0016】
かかる構成の無線LANシステムは、他の無線LAN装置のプライオリティの全てが最下位のプライオリティである場合には、最下位のプライオリティを無線LAN装置についてのプライオリティとして設定する。したがって、プライオリティが最下位の他の無線LAN装置に対して、外部ネットワークへ向けた無線パケットの中継を行うことを抑制し、中継経路を効率化することができる。
【0017】
[適用例6]前記設定手段は、前記第2の通信手段が、前記他の無線LAN装置と所定の接続関係を確立している場合に、前記プライオリティの新たな設定を禁止する適用例2ないし適用例5のいずれか記載の無線LANシステム。
【0018】
かかる構成の無線LANシステムは、無線LAN装置が他の無線LAN装置と所定の接続関係を確立している場合に、プライオリティの新たな設定を禁止するので、通信途中にプライオリティが変更されて、中継経路が変わることがない。したがって、実行中の通信を確実に終了することができる。
【0019】
[適用例7]前記通知手段は、前記無線ネットワーク上でやり取りされるマネジメントフレームに前記設定したプライオリティを含ませて、前記通知を行う適用例1ないし適用例6のいずれか記載の無線LANシステム。
【0020】
かかる構成の無線LANシステムは、無線LAN装置が、マネジメントフレームにプライオリティを含ませて他の無線LAN装置にプライオリティを通知するので、プライオリティの通知のみを目的とする特別な通信が必要ない。したがって、構成が簡単である。また、当該通知によって、ネットワーク負荷が増加することがない。
【0021】
[適用例8]適用例1ないし適用例7のいずれか記載の無線LANシステムであって、前記無線LAN装置の各々は、更に、該無線LAN装置から、該無線LAN装置の電波到達範囲内に通信可能に存在し、前記設定したプライオリティが相対的に上位の上位無線LAN装置に対する要求に基づくインフラストラクチャモードに準拠した認証を経て、該上位無線LAN装置との接続関係を成立させる認証接続部を備え、前記第2の通信手段は、前記認証接続部によって接続された前記上位無線LAN接続装置との間で、無線ディストリビューションシステムに準拠して、前記無線パケットを転送する無線LANシステム。
【0022】
かかる構成の無線LANシステムは、無線LAN装置から、設定したプライオリティが相対的に上位の無線LAN装置に対する要求に基づいて、インフラストラクチャモードで無線LAN装置間の接続関係を成立させ、無線ディストリビューションシステムに準拠した通信を行う。したがって、設定したプライオリティに従って、無線ディストリビューションシステムに準拠したネットワークの接続形態を自動的に構築することができる。
【0023】
[適用例9]前記認証接続部は、前記上位無線LAN装置が複数存在する場合に、前記複数の上位無線LAN装置のうちで前記設定されたプライオリティが相対的に最上位であり、かつ、受信信号強度が最も強い無線LAN装置と前記認証を経た接続を行う適用例8記載の無線LANシステム。
【0024】
かかる構成の無線LANシステムは、設定したプライオリティが相対的に上位の無線LAN装置が複数存在する場合に、その中でプライオリティが相対的に最上位であり、かつ、受信信号強度が最も強い無線LAN装置と、インフラストラクチャモードで無線LAN装置間の接続関係を成立させ、無線ディストリビューションシステムに準拠した通信を行う。したがって、効率的かつ安定的に通信可能な接続形態を構築することができる。
【0025】
[適用例10]適用例8または適用例9記載の無線LANシステムであって、前記無線LAN装置の各々は、更に、前記他の無線LAN装置から、該他の無線LAN装置を識別可能な第1の識別情報を取得して、該第1の識別情報と、前記無線LAN装置に記憶され、該無線LAN装置を識別可能な第2の識別情報とに基づいて、予め定めた手法により、該無線LAN装置と該他の無線LAN装置との間で前記認証を経た接続関係を成立させるための地位を設定する設定手段を備え、前記認証接続部は、前記無線LAN装置に設定されたプライオリティと、前記他の無線LAN装置に設定されたプライオリティとが同位である場合に、前記設定した地位に基づいて、該他の無線LAN装置と前記認証を経た接続関係を成立させ、前記第2の通信手段は、前記認証接続部によって接続された前記他の無線LAN接続装置との間で、前記無線ディストリビューションシステムに準拠した転送を行う無線LANシステム。
【0026】
かかる構成の無線LANシステムは、無線LAN装置と他の無線LAN装置とのプライオリティが同位であっても、無線LAN装置が、他の無線LAN装置から取得した第1の識別情報と、自身が記憶する第2の識別情報とに基づいて、インフラストラクチャモードで無線LAN装置間の接続関係を成立させるための地位を設定し、その地位に基づいてインフラストラクチャモードで無線LAN装置間の接続関係を成立させる。したがって、無線LAN装置と他の無線LAN装置とのプライオリティが同位である場合においても、設定したプライオリティに従って、無線ディストリビューションシステムに準拠したネットワークの接続形態を自動的に構築することができる。
【0027】
[適用例11]適用例8ないし適用例10のいずれか記載の無線LANシステムであって、前記認証接続部は、前記認証を経た接続関係を成立させる処理と併せて、前記無線パケットを暗号化するための暗号鍵の交換を行い、前記第2の通信手段は、前記交換した暗号鍵を用いた暗号化通信によって、前記無線ディストリビューションシステムに準拠した転送を行う無線LANシステム。
【0028】
かかる構成の無線LANシステムは、交換した暗号鍵を用いた暗号化通信によって、無線ディストリビューションシステムに準拠した転送を行うので、暗号化通信によってセキュリティを確保することができる。しかも、無線LAN装置と他の無線LAN装置とがインフラストラクチャモードで無線LAN装置間の接続関係を成立させる処理と併せて暗号鍵の交換を行うので、親機と子機とで処理の内容が異なる非対称なプロトコルを用いた暗号鍵の交換が可能であり、高度な暗号化方式を採用することができ、セキュリティを向上させることができる。
【0029】
[適用例12]適用例1ないし適用例11のいずれか記載の無線LANシステムであって、前記第2の通信手段は、複数のチャンネルで無線通信が可能であり、前記無線LAN装置の各々は、更に、使用中のチャンネルを示すチャンネル情報を付与したプローブ要求を、前記複数のチャンネルのうちの、該使用中のチャンネルとは異なるチャンネルを用いて送信する要求手段と、前記プローブ要求の送信後、所定期間内に前記使用中のチャンネルに復帰する要求後復帰手段と、前記チャンネル情報を付与したプローブ要求を受信した際に、該プローブ要求に付与されたチャンネル情報が示すチャンネルを用いて、プローブ応答を送信する応答手段を備えた無線LANシステム。
【0030】
かかる構成の無線LANシステムにおいて、無線LAN装置は、使用中のチャンネルとは異なるチャンネルを用いて、使用中のチャンネルを示すチャンネル情報を付与したプローブ要求を送信し、プローブ要求の送信後、所定期間内に使用中のチャンネルに復帰するので、使用中のチャンネルで無線子機との接続関係を維持しながら、別のチャンネルでプローブ要求を送信することができる。しかも、このプローブ要求を受信した無線LAN装置は、受信したプローブ要求に付与されたチャンネル情報が示すチャンネルを用いて、プローブ応答を送信するので、プローブ要求を送信した無線LAN装置は、使用中のチャンネルを用いて、プローブ応答を受信することができる。したがって、無線LAN装置は、他の無線LAN装置が、自身とは異なるチャンネルで通信を行っている場合でも、自身と無線子機との接続関係を維持しながら、当該他の無線LAN装置を好適に検出して、無線LAN装置の中継経路を自動的に効率化することができる。
【0031】
また、本発明は、上述した無線LANシステムのほか、適用例13の無線LAN装置、適用例14のプログラム、当該プログラムを記録した記憶媒体、無線パケットの中継経路の決定方法等としても実現することができる。勿論、これらの実現形態に対しても、適用例2〜適用例12の構成を付加することも可能である。
[適用例13]無線ネットワークにおいて無線通信を行う無線LAN装置であって、有線によって外部ネットワークと通信を行う第1の通信手段と、前記無線ネットワーク上で無線パケットを中継可能に、前記無線通信を行う第2の通信手段と、前記無線LAN装置と前記外部ネットワークとの接続の有無を判断する判断手段と、前記無線ネットワーク内から前記外部ネットワークへ向けて送信される前記無線パケットの中継経路における、前記無線LAN装置についての中継先としての優先度を示すプライオリティを、少なくとも前記判断手段の判断結果に基づいて設定する設定手段と、前記設定したプライオリティを、前記無線LAN装置の電波到達範囲内に通信可能に存在する他の無線LAN装置に通知する通知手段とを備え、前記設定手段は、前記判断手段が前記外部ネットワークとの接続があると判断した場合に、前記プライオリティを相対的に上位に設定し、前記第2の通信手段は、前記他の無線LAN装置から、該他の無線LAN装置についてのプライオリティの通知を受け取って、該プライオリティに基づいた中継先に対して、前記外部ネットワークへ向けた無線パケットの中継を行う無線LAN装置。
【0032】
[適用例14]無線ネットワークにおいて無線通信を行う無線LAN装置が、他の無線LAN装置との間で、無線パケットを中継するためのプログラムであって、有線によって外部ネットワークと通信を行う第1の通信機能と、前記無線ネットワーク上で無線パケットを中継可能に、前記無線通信を行う第2の通信機能と、前記無線LAN装置と前記外部ネットワークとの接続の有無を判断する判断機能と、前記無線ネットワーク内から前記外部ネットワークへ向けて送信される前記無線パケットの中継経路における、前記無線LAN装置についての中継先としての優先度を示すプライオリティを、少なくとも前記判断機能の判断結果に基づいて設定する設定機能と、前記設定したプライオリティを、前記無線LAN装置の電波到達範囲内に通信可能に存在する前記他の無線LAN装置に通知する通知機能とをコンピュータに実現させ、前記設定機能は、前記判断機能が前記外部ネットワークとの接続があると判断した場合に、前記プライオリティを相対的に上位に設定し、前記第2の通信機能は、前記他の無線LAN装置から、該他の無線LAN装置についてのプライオリティの通知を受け取って、該プライオリティに基づいた中継先に対して、前記外部ネットワークへ向けた無線パケットの中継を行うプログラム。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例としての無線LANシステム20の概略構成を示す説明図である。
【図2】アクセスポイントAP1の概略構成を示す説明図である。
【図3】優先順位設定処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】優先順位設定処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】アクセスポイント検索処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】受信処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】アクセスポイント検索処理及び受信処理におけるチャンネルの切り替えの様子を示す説明図である。
【図8】接続処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】接続設定処理及び接続要求処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】中継処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施例について説明する。
A.実施例:
A−1.無線LANシステム20の概略構成:
図1は、本発明の実施例としての無線LANシステム20の概略構成を示す説明図である。図示するように、無線LANシステム20は、3台のアクセスポイントAP1〜AP3と無線端末STAとを備えている。ただし、アクセスポイントは、3台以上であればよい。本実施例では、予め同一のESSID(Extended Service Set Identifier)、無線暗号設定されたアクセスポイントAP1〜AP3と無線端末STAとは、IEEE802.11規格に準拠した無線LAN装置であり、無線LANシステム20は、これらの無線LAN装置によって、無線LANを構築する。アクセスポイントAP1〜AP3は、本実施例においては、いずれも同一の構成であり、有線LANと無線LANとを接続するブリッジ機能と、アクセスポイント間で無線パケットを中継するWDS(Wireless Distribution System、無線ディストリビューションシステム)機能とを有している。
【0035】
アクセスポイントAP1〜AP3のうちのアクセスポイントAP1は、有線によって接続されたルータRTを介して、インターネットINTに接続されている。なお、アクセスポイントAP1は、外部ネットワークに接続されていればよく、例えば、インターネットINTに代えて、WAN(Wide Area Network)に接続されていてもよい。ルータRTは、本実施例では、ゲートウェイ機能とDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)機能とを有している。
【0036】
アクセスポイントAP1〜AP3は、それぞれが互いに電波到達範囲内に設置されており、相互に通信が可能である。アクセスポイントAP1〜AP3の設置場所は、図1に示すように、アクセスポイントAP3から見ると、アクセスポイントAP2は、アクセスポイントAP1よりも近い距離に設置されている。アクセスポイントAP1〜AP3の詳細については後述する。
【0037】
無線端末STAは、本実施例では、無線LANカードを備えた、または、無線LANモジュールを内蔵した汎用のパーソナルコンピュータであり、アクセスポイントAP1〜AP3を介して、図示しない無線端末と通信を行うことが可能である。また、無線端末STAは、アクセスポイントAP1〜AP3を介して、インターネットINTにアクセスすることが可能である。具体的には、無線端末STAは、アクセスポイントAP3,AP2,AP1の順の中継経路、アクセスポイントAP3,AP1の順の中継経路のうちのいずれによっても、インターネットINTにアクセスすることができる。なお、アクセスポイントAP3に接続される無線端末STAは、複数台であってもよい。また、図示は省略しているが、アクセスポイントAP1,AP2にも任意の台数の無線端末が接続されていてもよい。
【0038】
同一構成のアクセスポイントAP1〜AP3を代表して、アクセスポイントAP1の概略構成を図2に示す。図示するように、アクセスポイントAP1は、CPU30、RAM50、ROM61、フラッシュROM62、有線LANインタフェース63、無線通信インタフェース70を備え、それぞれがバスにより相互に接続されている。
【0039】
CPU30は、フラッシュROM62やROM61に記憶されたファームウェア等のプログラムをRAM50に展開して実行することで、アクセスポイントAP1の動作全般を制御する。また、CPU30は、当該プログラムを実行することで、第1通信部31、第2通信部32、判断部33、プライオリティ設定部34、通知部35、要求部36、要求後復帰部37、応答部38、応答後復帰部39、認証接続部41、地位設定部42としても機能する。これらの各機能部の詳細については、後述する。
【0040】
RAM50には、プライオリティテーブル51が記憶されている。プライオリティテーブル51には、無線LANシステム20からインターネットINTに向けて送信される無線パケットの中継経路における、無線中継器として機能するアクセスポイントAP1〜AP3の各々の中継先としての優先度を示すプライオリティが、アクセスポイントAP1〜AP3の識別情報、例えば、MACアドレスと関連付けて記録されている。プライオリティテーブル51に記録される優先順位は、後述する優先順位設定処理によって設定される。
【0041】
有線LANインタフェース63は、有線LANに接続するためのインタフェースである。有線LANインタフェース63は、ケーブルを介してルータRTに接続されている。無線通信インタフェース70は、無線通信を行うためのインタフェースであり、無線親機インタフェース71と、無線子機インタフェース72とを含んでいる。無線親機インタフェース71は、無線親機(以下、単に親機ともいう)として機能して、無線子機(以下、単に子機ともいう)から無線パケットを受信する。無線子機インタフェース72は、子機として機能して、親機へ無線パケットを送信する。つまり、アクセスポイントAP1は、親機としても子機としても機能する。この無線親機インタフェース71及び無線子機インタフェース72は、外部への電波の送信や外部からの電波の受信が可能な状態で、アクセスポイントAP1に内蔵されている。なお、無線親機インタフェース71と無線子機インタフェース72とは、1つの無線モジュールで構成されてもよいし、それぞれ異なるモジュールで構成されてもよい。
【0042】
A−2.優先順位設定処理:
無線LANシステム20における優先順位設定処理について、図3及び図4を用いて説明する。優先順位設定処理とは、アクセスポイントAP1〜AP3の各々のプライオリティを設定する処理であり、アクセスポイントAP1〜AP3の各々において実行される。本実施例においては、優先順位設定処理は、アクセスポイントAP1〜AP3が、無線通信可能に接続設定がなされたことを契機に開始され、その後、所定期間(例えば、10秒ごと)に繰り返し実行される。なお、本実施例においては、プライオリティを2ビットで表現することとしたため、最上位の「3」から最下位の「0」までの4段階で設定することとしたが、プライオリティの段階数は、無線LANシステム20が備えるアクセスポイントの数などに応じて適宜設定すればよく、例えば、2段階であってもよいし、6段階であってもよい。また、アクセスポイントAP1〜AP3のプライオリティは、いずれもデフォルトでは最下位の「0」に設定されている。
【0043】
優先順位設定処理が開始されると、アクセスポイントAP1〜AP3のCPU30は、図3に示すように、まず、第1通信部31の処理として、有線LAN、すなわち、有線LANインタフェース63を介して、DHCP−Discoverメッセージを送信する(ステップS110)。DHCP−Discoverメッセージを送信すると、CPU30は、判断部33の処理として、その応答であるDHCP−Offerメッセージを受信したか否かを判断する(ステップS120)。このステップS110,S120の処理は、アクセスポイントAP1と外部ネットワークとの接続の有無を判断するものである。一般家庭などの比較的小規模の使用環境では、ゲートウェイ機能とDHCP機能とは、ルータ装置やゲートウェイサーバなどに一体化されていることが多いため、かかる構成とすることによって、DHCP−Discoverメッセージへの応答の有無によって、外部ネットワークとの接続の有無を高い精度で判断することができる。ただし、アクセスポイントAP1と外部ネットワークとの接続の有無の判断は、他の手法を用いてもよく、例えば、外部ネットワークとの接続以外には有線LANインタフェース63を使用しない環境であれば、有線LANインタフェース63へのケーブルの接続の有無を検出することによって行ってもよい。あるいは、ユーザが、WEBブラウザなどを介して、アクセスポイントAP1が外部ネットワークと接続されることを示す設定を行い、CPU30が、その設定情報を読み込むことによって行ってもよい。
【0044】
その結果、応答があれば(ステップS120:YES)、有線LANインタフェース63が外部ネットワークと接続されているということであり、CPU30は、プライオリティ設定部34の処理として、自身のプライオリティを最上位の「3」に設定し、通知部35の処理として、設定したプライオリティを含ませたビーコンの送信を開始し(ステップS130)、優先順位設定処理を終了する。なお、ビーコンのフレーム構成は、IEEE802.11規格によって規定されており、ビーコンフレームを構成するフレーム要素には、ベンダが自由に定義可能なオプショナル領域が用意されている。CPU30は、このオプショナル領域に、設定したプライオリティを含ませてビーコンを送信する。ステップS130の処理は、子機として動作していた場合には、無線子機インタフェース72を停止して、実行される。かかる構成により、中継経路の効率化を早期に図ることができる。
【0045】
一方、応答がなければ(ステップS120:NO)、有線LANインタフェース63が外部ネットワークと接続されていないということであり、CPU30は、無線子機インタフェース72を用いて、子機として、他のアクセスポイントAP1〜AP3(ここでは、AP2,AP3)に接続中であるか否かを判断する(ステップS140)。
【0046】
その結果、子機として接続中であれば(ステップ140:YES)、CPU30は、プライオリティを設定することなく、優先順位設定処理を終了する。このような構成とするのは、後述する処理によって、現在接続中の親機とは異なる親機を検出した場合に、切断と再接続とが繰り返されるおそれがあるので、このような状況を回避するためである。
【0047】
一方、子機として接続中でなければ(ステップS140:NO)、CPU30は、無線親機インタフェース71に子機が接続中であるか否かを判断する(ステップS150)。その結果、子機が接続中であれば(ステップS150:YES)、CPU30は、子機との間での通信が頻繁に行われているか否かを判断する(ステップS160)。通信が頻繁であるか否かは、予め定めた所定期間内に通信が行われたか否かで判断してもよく、所定期間内に通信が行われた場合に、通信が頻繁に行われていると判断する。本実施例においては、所定期間は、ビーコン周期(ここでは100msec)の2倍で設定した。その結果、通信が頻繁に行われていれば(ステップS160:YES)、CPU30は、プライオリティを設定することなく、優先順位設定処理を終了する。このような構成とするのは、上記ステップS140において子機として接続中である場合の処理(ステップ140:YES)と同様の理由による。
【0048】
一方、通信が頻繁でなければ(ステップS160:NO)、あるいは、無線親機インタフェース71に子機が接続中でなければ(ステップS150:NO)、CPU30は、アクセスポイント検索処理を行う(ステップS170)。この処理は、接続対象となる、他のアクセスポイントAP1〜AP3(ここでは、AP2,AP3)を検索する処理であり、ここでは、プローブ要求(ProbeRequest)をブロードキャストすることにより行う。この処理の詳細については、後述する。
【0049】
接続対象となるアクセスポイントを検索すると、CPU30は、他のアクセスポイントAP1〜AP3が送信するプローブ応答(ProbeResponse)を受信して、接続対象となるSSID(Service Set Identifier)、つまり自身と同一のSSIDを検出できたか否かを判断する(ステップS180)。なお、プローブ応答のフレーム構成は、IEEE802.11規格によって規定されており、ビーコンフレームと同様にオプショナル領域が用意されている。本実施例においては、アクセスポイントAP1〜AP3のCPU30は、通知部35の処理として、このオプショナル領域に、優先順位設定処理で設定したプライオリティを含ませてプローブ応答を送信する。
【0050】
その結果、接続対象となるSSIDを検出できなければ(ステップS180:NO)、接続対象となるアクセスポイントは存在しないということであるから、プライオリティを設定する必要はないので、CPU30は、優先順位設定処理を終了する。一方、接続対象となるSSIDが検出できれば(ステップS180:YES)、CPU30は、検出されたアクセスポイントが複数あるか否かを判断する(ステップS190)。
【0051】
その結果、検出されたアクセスポイントが複数あれば(ステップS190:YES)、CPU30は、検出されたアクセスポイントの中で、プライオリティの最も高いもののうち、RSSIレベルが最も大きいアクセスポイントを選択する(ステップS200)。なお、CPU30は、検出されたアクセスポイントのプライオリティを、受信したプローブ応答のオプショナル領域を解釈することで判断する。
【0052】
そして、検出されたアクセスポイントが単数であれば(ステップS190:NO)、または、アクセスポイントを選択すると(ステップS200)、CPU30は、このアクセスポイント(対象アクセスポイントともいう)のプライオリティが、最下位の「0」であるか否かを判断する(ステップS210)。その結果、プライオリティが「0」でなければ(ステップS210:NO)、CPU30は、プライオリティ設定部34の処理として、対象アクセスポイントのプライオリティから1段階下位のプライオリティを、自身のプライオリティとして設定する(ステップS220)。例えば、対象アクセスポイントのプライオリティが「2」である場合には、設定するプライオリティは「1」となる。
【0053】
一方、プライオリティが「0」であれば(ステップS210:YES)、CPU30は、プライオリティ設定部34の処理として、自身のプライオリティを「0」に設定する(ステップS230)。こうして、優先順位設定処理は終了となる。
【0054】
上記ステップS200において、RSSIレベルが最も高いアクセスポイントを選択するのは、RSSIレベルが最も高い、すなわち、電波の受信感度が高く、通信が安定する可能性が高いアクセスポイントを親機として、後述する接続処理において、子機側からの接続を試みるためである。
【0055】
このようにして優先順位設定処理を実行すると、アクセスポイントAP1〜AP3は、通知部35の処理として、ビーコン、プローブ応答といったマネジメントフレームを用いて、自身に設定されたプライオリティを、他のアクセスポイントに通知する。このように、マネジメントフレームを利用して、プライオリティの通知を行えば、プライオリティの通知のみを目的とする特別な通信が必要ない。したがって、構成が簡単である。また、当該通知によって、ネットワーク負荷が増加することがない。こうして他のアクセスポイントのプライオリティを知ったアクセスポイントAP1〜AP3のCPU30は、自身及び他のアクセスポイントのプライオリティを、プライオリティテーブル51に記録する。
【0056】
A−3.アクセスポイント検索処理:
上述したアクセスポイント検出処理(ステップS170)について説明する。以下では、アクセスポイントAP3が、無線端末STAとの接続中にプローブ要求を送信するものとして説明する。また、本実施例では、アクセスポイントAP3が無線端末STAとの間でチャンネルCH1による通信を行っていることとして説明する。アクセスポイント検出処理の流れを図5に示す。アクセスポイント検出処理が開始されると、図示するように、アクセスポイントAP3のCPU30は、まず、アクセスポイントAP3がサポートしているチャンネルCH1〜CHnを検出する(ステップS310)。この処理は、本実施例では、ROM40に記憶されたサポート情報を読み込むことにより行うものとした。なお、チャンネルに付した1〜nの番号は、N個のチャンネルを区別するために便宜的に付したものである。
【0057】
チャンネルCH1〜CHnを検出すると、CPU30は、プローブ要求を未だ送信していないチャンネルのうちから、1つのチャンネルCHj(jは1以上N以下の整数)を選択する(ステップS320)。チャンネルCHjを選択すると、CPU30は、選択したチャンネルCHjが、無線端末STAとの通信に使用中のチャンネルCH1と異なる場合には、出力バンドをチャンネルCH1からチャンネルCHjに変更する(ステップS330)。なお、チャンネルCHjとチャンネルCH1とが一致する場合には、出力バンドの変更は行われない。
【0058】
出力バンドを変更すると、CPU30は、要求部36の処理として、チャンネルCHjを利用して、チャンネル情報を付与したプローブ要求をブロードキャストする(ステップS340)。チャンネル情報とは、子機との通信に使用中のチャンネルCH1を示す情報である。プローブ要求のフレーム構成は、IEEE802.11規格によって規定されており、プローブ要求フレームを構成するフレーム要素には、ベンダが自由に定義可能なオプショナル領域が用意されている。本実施例においては、CPU30は、このオプショナルな領域に、チャンネル情報を書き込むことで、プローブ要求にチャンネル情報を付与する。なお、本実施例においては、上記ステップS330で出力バンドを変更しなかった場合には、ステップS340では、チャンネル情報を付与せずに、プローブ要求を送信する構成とした。ただし、チャンネル情報を付与して、プローブ要求を送信してもかまわない。
【0059】
プローブ要求を送信すると、CPU30は、要求後復帰部37の処理として、所定の期間内に、使用中であった元のチャンネルCH1に復帰する(ステップS350)。本実施例では、プローブ要求の送信後、即時にチャンネルCH1に復帰するものとした。所定の期間は、短いほど、より望ましく、アクセスポイントAP1のビーコンの送信周期以下に設定することが望ましい。こうすれば、チャンネルCH1でのビーコンの送信が欠落することを抑制でき、その結果、無線端末STAとの通信接続が解除されることを抑制することができる。なお、上記ステップS330で出力バンドの変更が行われなかった場合には、ステップS350では、チャンネルCH1への復帰は必要ない。
【0060】
チャンネルCH1に復帰すると、CPU30は、全てのチャンネルCH1〜CHnが上記ステップS320で選択されたか否かを判断する(ステップS360)。その結果、未選択のチャンネルがあれば(ステップS360:NO)、CPU30は、所定期間だけ待機する(ステップS170)。ステップS370の待機期間では、他の無線処理、つまり、チャンネルCH1を利用したビーコンの送信や、無線端末STAとの通信が実行される。こうして、所定期間待機すると、CPU30は、処理を上記ステップS320に戻し、ステップS320〜S360の処理を繰り返す。
【0061】
ステップS370の待機期間は、アクセスポイントAP1のビーコン送信周期Tの1倍以上とすることが望ましく、ビーコン送信周期Tの2倍以上とすることがさらに望ましい。ビーコン送信周期Tの1倍以上とすれば、ステップS370の待機期間内にビーコンを少なくとも1回は送信できるので、無線端末STAとの通信接続が解除されることを抑制することができる。また、ビーコン送信周期Tの2倍以上、例えば、2倍、3倍などとすれば、ビーコンを2回以上送信できるので、ビーコンの消失の可能性などを考慮しても、通信接続が解除されることを確実に抑制することができる。
【0062】
こうして、全てのチャンネルCH1〜CHnについて、プローブ要求を送信すると(ステップS360:YES)、送信側のアクセスポイント検索処理は終了となる。以上の説明から明らかなように、アクセスポイントAP3は、図7に示すように、僅かな期間のみ、使用中のチャンネルCH1から他のチャンネル、例えばCH3に出力バンドを変更して、使用中のチャンネルCH1を示すチャンネル情報を付与したプローブ要求を送信するのである。こうすることで、自身が待機しているチャンネルCH1を、他のアクセスポイントに報知することができる。
【0063】
かかるアクセスポイント検索処理によって送信されたプローブ要求を受信したアクセスポイントAP1〜AP3、または、当該プローブ要求に対するプローブ応答を受信したアクセスポイントAP1〜AP3が、受信したフレームに応じて行う処理(以降、受信処理ともいう)について説明する。以下では、アクセスポイントAP2が、アクセスポイントAP3からプローブ要求またはプローブ応答を受信するものとして説明する。受信処理の流れを図6に示す。受信処理が開始されると、図示するように、アクセスポイントAP2のCPU30は、まず、プローブ要求を受信したか否かを判断する(ステップS410)。
【0064】
その結果、プローブ要求を受信していれば(ステップS410:YES)、CPU30は、さらに、プローブ要求の上述したオプショナル領域に、チャンネル情報が含まれているか否かを判断する(ステップS420)。その結果、チャンネル情報が含まれていれば(ステップS420:YES)、プローブ要求を送信したアクセスポイントAP3は、チャンネル情報が示すチャンネルCH1で、プローブ応答を待機しているということであるから、CPU30は、応答部38の処理として、使用中のチャンネル、例えば、チャンネルCH3から、チャンネル情報が示すチャンネルCH1に一時的に、出力バンドを変更する(ステップS430)。
【0065】
チャンネルCH1に出力バンドを変更すると、CPU30は、応答部38の処理として、自身の情報(SSID、チャンネル情報など)を含めたプローブ応答を、アクセスポイントAP3に送信する(ステップS440)。なお、IEEE802.11規格において、プローブ応答の情報要素の1つとしてチャンネル情報が規定されているので、CPU30は、容易にチャンネル情報をプローブ応答に付与することができる。一方、チャンネル情報が含まれていなければ(ステップS420:NO)、チャンネルの変更(上記ステップS430)を省略して、プローブ応答を、アクセスポイントAP3に送信する(ステップS440)。
【0066】
こうして、プローブ応答の送信が終了すると、CPU30は、応答後復帰部39の処理として、上記ステップS430でチャンネルを変更した場合には、変更前のもとのチャンネルCH3に復帰し(ステップS450)、受信処理を終了する。なお、もとのチャンネルに復帰するための期間は、上記ステップS350と同様に設定することが望ましい。以上の説明から明らかなように、アクセスポイントAP2は、図7に示すように、僅かな期間のみ、使用中のチャンネル、例えばチャンネルCH3から、アクセスポイントAP3が使用中のCH1に出力バンドを変更して、プローブ応答を送信するのである。こうすることで、アクセスポイントAP3は、使用中のチャンネルCH1を用いて、プローブ応答を受信することができる。
【0067】
一方、プローブ要求を受信していなければ(ステップS410:NO)、CPU30は、プローブ応答を受信したか否かを判断する(ステップS460)。その結果、プローブ応答を受信していなければ(ステップS460:NO)、CPU30は、受信処理を終了する。一方、プローブ応答を受信していれば(ステップS460:YES)、CPU30は、プローブ応答から無線機器の情報(SSID、チャンネル情報など)を抽出し、RAM50などに記録する(ステップS470)。こうして、受信処理は終了となる。このようにチャンネル情報を記録すれば、無線LANシステム20を構成するアクセスポイントのチャンネルを事前設定しておかなくても、その後、他のアクセスポイントとの通信に用いるチャンネルを特定することができる。また、チャンネルが記録されたアクセスポイントのみを検出するのであれば、上記ステップS320において選択するチャンネル数を減らして、アクセスポイント検索処理を効率化することも可能である。
【0068】
A−4.接続処理:
無線LANシステム20における接続処理について説明する。接続処理とは、アクセスポイントAP1〜AP3が、上述した優先順位設定処理によって設定したプライオリティに従って、WDSに準拠したネットワークの接続形態を自動的に構築する処理である。接続処理の流れを図8に示す。本実施例においては、接続処理は、優先順位設定処理の終了を契機として開始される。接続処理が開始されると、アクセスポイントAP1〜AP3のCPU30は、まず、優先順位設定処理において、自身に設定されたプライオリティが最上位の「3」であるか否かを判断する(ステップS510)。その結果、自身のプライオリティが「3」であれば(ステップS510:YES)、CPU30は、接続処理を終了する。一方、自身のプライオリティが「3」でなければ(ステップS510:NO)、CPU30は、続いて、対象アクセスポイントのプライオリティが「0」であるか否かを判断する(ステップS520)。その結果、プライオリティが「0」でなければ(ステップS520:NO)、CPU30は、接続処理を終了する。
【0069】
一方、プライオリティが「0」であれば(ステップS520:YES)、CPU30は、対象アクセスポイントのBSSIDの値が、自己のBSSIDの値よりも大きいか否かを判断する(ステップS530)。対象アクセスポイントのBSSIDは、プローブ応答のMACヘッダから取得することができる。本実施例では、BSSIDを2進数の値に変換して比較することで、BSSIDの値の判断を行うこととした。このステップS530の判断は、WDS機能を有するアクセスポイント間の仮想的な親子関係を設定するために行う。このように、仮想的な親子関係を設定するのは、後述する接続要求処理及び接続設定処理が、無線LAN装置の親機と子機とで処理の内容が異なる非対称なプロトコルを用いるので、当該プロトコルを実行するためには、親子関係を便宜的に設定する必要があるからである。このような親子関係は、非対称なプロトコルを実行するための地位として捉えることができる。
【0070】
その結果、対象アクセスポイントのBSSIDの値が、自身のBSSIDの値よりも大きければ(ステップS530:YES)、または、プライオリティが「0」でなければ(ステップS520:NO)、CPU30は、地位設定部42の処理として、自身を仮想的に子機として設定する(ステップS540)。一方、対象アクセスポイントのBSSIDの値が、自身のBSSIDの値以下であれば(ステップS530:NO)、CPU30は、CPU30は、接続処理を終了する。地位設定部42の処理として、自身を仮想的に親機として設定する(ステップS540)。なお、ステップS530,S540の処理は、BSSIDの値の大小関係に基づいて、仮想的な親子関係を設定するものであればよく、BSSIDの値の大小関係と、設定する親子関係との対応関係が、上述の例と逆であってもかまわない。また、BSSIDの値は、BSSIDを構成する数値やアルファベットの並び順として比較してもよいし、BSSIDを2進数の値に変換し、その値に対して所定の演算を行った結果で比較してもよい。
【0071】
こうして自身を子機として設定すると(ステップS540)、CPU30は、認証接続部41の処理として、接続要求処理を行う(ステップS550)。なお、上記ステップS540において子機として設定されなかったアクセスポイントは、子機として設定された接続要求処理に応じて、親機として接続設定処理を実行することとなる。接続要求処理及び接続設定処理は、親機と子機との間で、インフラストラクチャモードに準拠した認証を経て、接続関係を成立させると共に、WDS機能処理モードでの暗号通信に用いる暗号鍵の交換を行う処理である。この接続要求処理及び接続設定処理については、図9を用いて詳しく説明する。以下、接続要求処理及び接続設定処理について、上記ステップS540において、アクセスポイントAP1が親機として設定され、アクセスポイントAP2が子機として設定されたものとして、すなわち、アクセスポイントAP2が接続要求処理を実行し、アクセスポイントAP1が接続設定処理を実行するものとして説明する。
【0072】
接続要求処理及び接続設定処理の流れを図9に示す。アクセスポイントAP2で接続要求処理が開始され、アクセスポイントAP1で接続設定処理が開始されると、子機としての地位が設定されたアクセスポイントAP2のCPU30は、アクセスポイントAP1にプローブ要求を送信する(ステップS5601)。一方、親機としての地位が設定されたアクセスポイントAP1のCPU30は、このプローブ要求を受信すると、プローブ応答をアクセスポイントAP2に送信する(ステップS5501)。
【0073】
一方、アクセスポイントAP2のCPU30は、アクセスポイントAP1が送信したプローブ応答を受信すると、認証要求をアクセスポイントAP1に送信する(ステップS5602)。アクセスポイントAP1のCPU30は、この認証要求を受信すると、認証応答をアクセスポイントAP2に送信する(ステップS5502)。なお、本実施例においては、オープンシステム認証により認証を行う。
【0074】
アクセスポイントAP2のCPU30は、この認証応答を受信すると、アクセスポイントAP1にアソシエーション要求(Association Request)を送信する(ステップS5603)。一方、アクセスポイントAP1のCPU30は、接続要求を受信すると、アクセスポイントAP2にアソシエーション応答(Association Response)を送信する(ステップS5503)。このアソシエーション応答をアクセスポイントAP2が受信することにより、アクセスポイントAP1,AP2間での接続関係が成立する。なお、アソシエーション要求のフレーム構成は、IEEE802.11規格によって規定されており、アソシエーション要求を構成するフレーム要素には、上述のオプショナル領域が用意されている。本実施例においては、アクセスポイントAP2のCPU30は、このオプショナルな領域に、WDS動作を行うか否かの情報を含ませて、ステップS5603においてアソシエーション要求を送信するものとした。一方、アクセスポイントAP1のCPU30は、受信したアソシエーション要求に含まれるWDS動作を行うか否かの情報を解釈し、当該情報がWDS動作を行う内容であれば、アクセスポイントAP2を識別するための情報であるMACアドレスと、WDS動作を行うことを示す情報とを対応付けてRAM51に記憶する。かかる構成とすれば、アクセスポイントAP1,AP2間の通信を、WDSモードに準拠した通信に自動的に移行させることができる。
【0075】
また、親機としての地位が設定されたアクセスポイントAP1のCPU30は、アソシエーション要求を送信すると、乱数(ANonce)を生成し、子機としての地位が設定されたアクセスポイントAP2に送信する(ステップS5504)。一方、アクセスポイントAP2のCPU30は、ANonceを受信すると、乱数(SNonce)を生成し、マスター鍵PMK(Pairwise Master Key)とANonceとSNonceとから一時鍵PTK(Pairwise Transient Key)を生成すると共に、アクセスポイントAP1にSNonceを送信する(ステップS5604)。一方、アクセスポイントAP1のCPU30は、このSNonceを受信すると、アクセスポイントAP2と同様にして、マスター鍵PMKとANonceとSNonceとから一時鍵PTKを生成する。こうして、アクセスポイントAP1,AP2間で、一時鍵PTKを交換(共有)すると、接続設定処理及び接続要求処理は終了となる。なお、この一時鍵PTKは、後述するWDS動作としての中継処理において、無線パケットの暗号化に用いられる。
【0076】
本実施例においては、かかる一時鍵PTKの共有化のための通信は、事前共有鍵PSK(PreShared Key)を用いて、予め定められた暗号化方法で暗号化して行う構成とした。本実施例では、AES(Advanced Encryption Standard)によって暗号化するものとした。ただし、WEP(Wired Equivalent Privacy)、TKIP(Temporal Key Integrity Protocol)など、他の手法を用いてもよい。このように暗号化通信を行えば、セキュリティをより高めることができる。なお、本実施例では、製造段階でアクセスポイントAP1〜AP3の各々にデフォルト設定された事前共有鍵PSKをマスター鍵PMKとして用いることとした。
【0077】
A−5.中継処理:
無線LANシステム20における中継処理について図10を用いて説明する。中継処理とは、無線LANシステム20の無線端末(ここでは、無線端末STA)がインターネットINTに向けて送信した無線パケットを、WDSに準拠したアクセスポイント間の通信を介して、ルータRTに転送するための処理である。中継処理においては、上述した優先順位設定処理で設定されたアクセスポイントAP1〜AP3のプライオリティに基づいて、無線パケットの中継経路が決定される。
【0078】
中継処理が開始されると、アクセスポイントAP1〜AP3のCPU30は、図10に示すように、無線端末STA、または、子機として動作する他のアクセスポイントAP1〜AP3から、インターネットINTに向けて送信された無線パケットの受信を待機する(ステップS610)。なお、本実施例においては、無線パケットに含まれる宛先情報が未知(未登録)の宛先である場合に、インターネットINTに向けて送信された無線パケットであると判断する。そして、当該無線パケットを受信すると(ステップS610:YES)、CPU30は、プライオリティテーブル51を参照し(ステップS620)、自身のプライオリティが最上位、つまり「3」であるか否かを判断する(ステップS630)。
【0079】
その結果、自身のプライオリティが最上位であれば(ステップS630:YES)、自身は、有線LANインタフェース63を介してルータRTに接続されているということであるから、CPU30は、受信した無線パケットをルータRTに転送する(ステップS640)。一方、自身のプライオリティが最上位でなければ(ステップS630:NO)、CPU30は、第2通信部32の処理として、プライオリティテーブル51に記録された他のアクセスポイントAP1〜AP3のうちの、プライオリティが最も上位のアクセスポイントAP1〜AP3に対して、受信した無線パケットをWDSに準拠して転送する(ステップS650)。ステップS650における通信は、上述した接続処理においてアクセスポイント間で交換した暗号鍵を用いて、暗号化して行われる。なお、電波到達範囲内に、プライオリティが最も上位のアクセスポイントAP1〜AP3が複数存在する場合には、上述した優先順位設定処理において、RSSIレベルが最も大きいアクセスポイントAP1〜AP3を選択し(上記ステップS200)、当該アクセスポイントに対して接続を試行する(上記ステップS550)ことから、最もRSSIレベルが大きいアクセスポイントに対して無線パケットを中継することとなる。こうして、無線パケットを転送すると、中継処理は終了となる。
【0080】
こうして、中継処理が行われると、CPU30は、WDS動作を行う他のアクセスポイントAP1〜AP3との間で共有する一時鍵PTKを所定のタイミングで変更することができる。変更した一時鍵PTKの共有方法は、上記ステップS550及びS560と同様の方法とすることができる。一時鍵PTKを変更するタイミングとしては、適宜設定すればよく、所定の期間ごと、例えば、所定の通信時間ごと、セッションごと、所定の通信量ごとなどとしてもよいし、これらの期間をランダムに変更する構成としてもよい。このように、動的な一時鍵PTKを共有することにより、セキュリティを著しく高めることができる。
【0081】
A−6.効果:
かかる構成の無線LANシステム20において、無線LANシステム20を構成するアクセスポイントAP1〜AP3の各々は、インターネットINTとの接続を判断し、少なくともその判断結果に基づいて設定したプライオリティを、電波到達範囲内に存在する他のアクセスポイントAP1〜AP3に通知する。このプライオリティは、外部ネットワークとの接続があると判断された場合には、相対的に上位に設定される。他のアクセスポイントAP1〜AP3から通知を受けたアクセスポイントAP1〜AP3は、受け取ったプライオリティに基づいた中継先に対して、外部ネットワークへ向けた無線パケットの中継を行う。したがって、アクセスポイントAP2,AP3は、電波到達範囲内に、外部ネットワークと接続されたアクセスポイントAP1が存在する場合には、アクセスポイントAP1に対してパケットを中継することができる。その結果、無線LANを介して外部ネットワークへアクセスする際の、アクセスポイントAP1〜AP3の中継経路を自動的に効率化することができる。
【0082】
また、無線LANシステムにおいて、アクセスポイントAP1〜AP3は、外部ネットワークとの接続がないと判断した場合に、他のアクセスポイントAP1〜AP3のプライオリティに基づいてプライオリティを設定する。したがって、外部ネットワークとの接続がないアクセスポイントAP2,AP3においても、好適にプライオリティを設定することができる。
【0083】
また、無線LANシステム20において、検出した他のアクセスポイントAP1〜AP3のプライオリティのいずれもが最下位の「0」でない場合には、これらの他のアクセスポイントAP1〜AP3のプライオリティのうちで相対的に最も上位のプライオリティ(検出したアクセスポイントAP1〜AP3が単数の場合は、そのアクセスポイントAP1〜AP3のプライオリティ)に対して1段階下位のプライオリティを設定する。したがって、外部ネットワークに接続されたアクセスポイントAP1を相対的に上位として、外部ネットワークに接続されていないアクセスポイントAP2,AP3のプライオリティを、アクセスポイントAP1までの中継数に応じて階層的に設定することができる。その結果、アクセスポイントAP1〜AP3の中継経路を極めて効率化することができる。
【0084】
また、無線LANシステム20において、検出した他のアクセスポイントAP1〜AP3のプライオリティの全てが最下位の「0」である場合には、「0」をプライオリティとして設定する。したがって、プライオリティが「0」の他のアクセスポイントAP1〜AP3に対して、外部ネットワークへ向けた無線パケットの中継を行うことを抑制し、中継経路を効率化することができる。
【0085】
かかる効果を図1に示したアクセスポイントAP1〜AP3の使用環境に基づいて具体的に説明する。優先順位設定処理において、アクセスポイントAP1は、ルータRTに接続されているので、自らのプライオリティを「3」に設定する。また、アクセスポイントAP2,AP3は、いずれもアクセスポイントAP1を検出可能であるから、そのプライオリティをアクセスポイントAP1のプライオリティ「3」から1段階下位の「2」に設定する。そして、中継処理において、アクセスポイントAP3が、無線端末STAからインターネットINTに向けた無線パケットを送信すると、アクセスポイントAP3は、プライオリティが最も上位であるアクセスポイントAP1に対して、受信した無線パケットを中継する。したがって、無線パケットをアクセスポイントAP3からアクセスポイントAP2を経由してアクセスポイントAP1に中継されることがない。つまり、中継経路を効率化することができる。一方、RSSIレベルにより中継先を決定すると、アクセスポイントAP3−AP2間の距離は、アクセスポイントAP3−AP1間の距離よりも短いので、アクセスポイントAP3は、RSSIレベルが相対的に大きいアクセスポイントAP2に無線パケットを中継することとなり、中継経路が必要以上に増加することとなる。
【0086】
また、無線LANシステム20において、アクセスポイントAP1〜AP3は、優先順位設定処理で設定したプライオリティが相対的に上位のアクセスポイントAP1〜AP3に対して子機としてアクセスして、インフラストラクチャモードで接続関係を成立させ、WDSに準拠した通信を行う。したがって、設定したプライオリティに従って、WDSに準拠したネットワークの接続形態を自動的に構築することができる。しかも、アクセスポイントAP1〜AP3は、設定したプライオリティが相対的に上位のアクセスポイントAP1〜AP3が複数存在する場合に、その中でプライオリティが相対的に最上位であり、かつ、受信信号強度が最も強いアクセスポイントAP1〜AP3と接続関係を成立させるので、効率的かつ安定的に通信可能な接続形態を構築することができる。
【0087】
また、無線LANシステム20において、アクセスポイントAP1〜AP3は、アクセスポイントAP1〜AP3間でプライオリティが同位であっても、互いのBSSIDに基づいて、インフラストラクチャモードで接続関係を成立させるための地位を設定するので、当該地位に基づいて接続関係を成立させることができる。
【0088】
また、無線LANシステム20において、アクセスポイントAP1〜AP3の各々は、共有した暗号鍵を用いて無線パケットを暗号化して中継するので、セキュリティを確保することができる。しかも、インフラストラクチャモードで接続関係を成立させる処理と併せて、当該処理に用いた親子関係を利用して、暗号鍵の交換を行うので、親機と子機とで処理の内容が異なる非対称なプロトコルを用いた暗号鍵の交換が可能であり、セキュリティ強度が高いWPA(Wi-Fi Protected Access)、WPA2などを用いて、暗号化通信を行うことができ、セキュリティが著しく向上する。なお、仮想的な親子関係が設定できなければ、動的な一時鍵PTKを共有することができず、静的な暗号鍵を用いるWEPなどによって、セキュリティ強度が相対的に低い暗号化通信しか行うことができない。
【0089】
また、無線LANシステム20において、アクセスポイントAP1〜AP3は、無線端末との通信に使用中のチャンネルとは異なるチャンネルを用いて、使用中のチャンネルCH1を示すチャンネル情報を付与したプローブ要求を送信し、プローブ要求の送信後、所定期間内に使用中のチャンネルに復帰するので、使用中のチャンネルCH1で無線端末との接続関係を維持しながら、別のチャンネルでプローブ要求を送信することができる。しかも、このプローブ要求を受信したアクセスポイントAP1〜AP3は、受信したプローブ要求に付与されたチャンネル情報が示すチャンネルCH1を用いて、プローブ応答を送信するので、プローブ要求を送信したアクセスポイントAP1〜AP3は、使用中のチャンネルCH1を用いて、プローブ応答を受信することができる。したがって、アクセスポイントAP1〜AP3は、他のアクセスポイントAP1〜AP3が、自身とは異なるチャンネルで通信を行っている場合でも、自身と無線子機との接続関係を維持しながら、当該他のアクセスポイントAP1〜AP3を好適に検出して、無線LANシステム20における中継経路を自動的に効率化することができる。
【0090】
また、無線LANシステム20において、アクセスポイントAP1〜AP3は、プローブ応答を送信するためにチャンネルを変更した場合には、プローブ応答の送信後に、変更前のチャンネルに復帰するので、変更前のチャンネルでの無線端末との接続が解除されることを抑制することができる。
【0091】
上述した実施例の変形例について説明する。
B:変形例:
B−1.変形例1:
上述の実施形態においては、同一の構成のアクセスポイントAP1〜AP3によって無線LANシステム20を構成したが、無線LANシステム20には、有線LANインタフェース63を有しないタイプが混入してもよい。かかるタイプの無線中継器においては、上記ステップS110〜S130は、省略可能である。
【0092】
B−2.変形例2:
上述の実施形態においては、優先順位設定処理で設定したプライオリティをマネジメントフレームに含ませることで、自身のプライオリティを他のアクセスポイントAP1〜AP3に通知する構成としたが、プライオリティを通知することのみを目的とした通信により、当該通知を行う構成としてもよい。
【0093】
B−3.変形例3:
上述の実施形態では、無線LANシステム20において、外部ネットワークと接続されたアクセスポイントは、単数であったが、複数であってもよい。かかる場合、外部ネットワークと接続されたアクセスポイントのプライオリティは、いずれも最上位(実施例では「3」)としてもよい。あるいは、外部ネットワークと接続されたアクセスポイントのみが取り得る相対的に上位な複数のプライオリティ(例えば、「4」と「3」)と、外部ネットワークと接続されていないアクセスポイントのみが取り得る複数のプライオリティ(例えば、「2」〜「0」)とを定めておき、この範囲内で、上記ステップS120の判断結果に応じたプライオリティの設定を行ってもよい。かかる場合、外部ネットワークと接続されたアクセスポイントは、外部ネットワークと接続されている旨を通知する無線パケットをブロードキャストし、他のアクセスポイントは、当該無線パケットを所定回数転送する構成とすることで、外部ネットワークと接続されたアクセスポイント同士が、お互いのMACアドレスを交換し合い、上記ステップS520に倣って、その値の大小関係から、相対的な差を有するプライオリティを設定してもよい。
【0094】
上述の実施形態においては、上記ステップS520において、BSSIDに基づいて、非対称なプロトコルを実行するための地位(親機、子機としての便宜的な親子関係)を設定する構成としたが、当該地位を設定するための情報は、アクセスポイントAP1〜AP3を識別可能な情報であればよく、例えば、MACアドレスなどであってもよい。
【0095】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態における本発明の構成要素のうち、独立クレームに記載された要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略、または、組み合わせが可能である。また、本発明はこうした実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を脱しない範囲において、種々なる態様で実施できることは勿論である。例えば、本発明は、無線LANシステムとしての構成のほか、無線LAN装置、そのプログラム、当該プログラムを記録した記憶媒体、無線パケットの中継経路の決定方法等としても実現することができる。
【符号の説明】
【0096】
20…無線LANシステム
30…CPU
31…第1通信部
32…第2通信部
33…判断部
34…プライオリティ設定部
35…通知部
36…要求部
37…要求後復帰部
38…応答部
39…応答後復帰部
41…認証接続部
42…地位設定部
50…RAM
51…プライオリティテーブル
61…ROM
62…フラッシュROM
63…有線LANインタフェース
70…無線通信インタフェース
71…無線親機インタフェース
72…無線子機インタフェース
RT…ルータ
AP1〜AP3…アクセスポイント
STA…無線端末
INT…インターネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線ネットワークにおいて無線通信を行う無線LAN装置を3以上備えた無線LANシステムであって、
前記無線LAN装置の少なくとも1つは、有線によって外部ネットワークと通信を行う第1の通信手段を備え、
前記無線LAN装置の各々は、
前記無線ネットワーク上で無線パケットを中継可能に、前記無線通信を行う第2の通信手段と、
前記無線LAN装置と前記外部ネットワークとの接続の有無を判断する判断手段と、
前記無線ネットワーク内から前記外部ネットワークへ向けて送信される前記無線パケットの中継経路における、前記無線LAN装置についての中継先としての優先度を示すプライオリティを、少なくとも前記判断手段の判断結果に基づいて設定する設定手段と、
前記設定したプライオリティを、前記無線LAN装置の電波到達範囲内に通信可能に存在する他の無線LAN装置に通知する通知手段と
を備え、
前記設定手段は、前記判断手段が前記外部ネットワークとの接続があると判断した場合に、前記プライオリティを相対的に上位に設定し、
前記第2の通信手段は、前記他の無線LAN装置から、該他の無線LAN装置についてのプライオリティの通知を受け取って、該プライオリティに基づいた中継先に対して、前記外部ネットワークへ向けた無線パケットの中継を行う
無線LANシステム。
【請求項2】
前記設定手段は、前記判断手段が前記外部ネットワークとの接続がないと判断した場合に、前記他の無線LAN装置から通知を受けたプライオリティに基づいて、前記無線LAN装置についてのプライオリティを設定する請求項1記載の無線LANシステム。
【請求項3】
請求項2記載の無線LANシステムであって、
前記設定手段は、
前記他の無線LAN装置が複数存在し、該他の無線LAN装置から通知を受けたプライオリティの少なくとも1つが、最下位のプライオリティでない場合において、
該通知を受けたプライオリティのうちで相対的に最も上位のプライオリティに対して1段階下位のプライオリティを前記無線LAN装置についてのプライオリティとして設定する
無線LANシステム。
【請求項4】
請求項2または請求項3記載の無線LANシステムであって、
前記設定手段は、
前記他の無線LAN装置が単数であり、該他の無線LAN装置から通知を受けたプライオリティが最下位のプライオリティでない場合において、
該通知を受けたプライオリティに対して1段階下位のプライオリティを、前記無線LAN装置についてのプライオリティとして設定する
無線LANシステム。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のいずれか記載の無線LANシステムであって、
前記設定手段は、
前記他の無線LAN装置から通知を受けたプライオリティの全てが最下位のプライオリティである場合において、
前記最下位のプライオリティを前記無線LAN装置についてのプライオリティとして設定する
無線LANシステム。
【請求項6】
前記設定手段は、前記第2の通信手段が、前記他の無線LAN装置と所定の接続関係を確立している場合に、前記プライオリティの新たな設定を禁止する請求項2ないし請求項5のいずれか記載の無線LANシステム。
【請求項7】
前記通知手段は、前記無線ネットワーク上でやり取りされるマネジメントフレームに前記設定したプライオリティを含ませて、前記通知を行う請求項1ないし請求項6のいずれか記載の無線LANシステム。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか記載の無線LANシステムであって、
前記無線LAN装置の各々は、更に、該無線LAN装置から、該無線LAN装置の電波到達範囲内に通信可能に存在し、前記設定したプライオリティが相対的に上位の上位無線LAN装置に対する要求に基づくインフラストラクチャモードに準拠した認証を経て、該上位無線LAN装置との接続関係を成立させる認証接続部を備え、
前記第2の通信手段は、前記認証接続部によって接続された前記上位無線LAN接続装置との間で、無線ディストリビューションシステムに準拠して、前記無線パケットを転送する
無線LANシステム。
【請求項9】
前記認証接続部は、前記上位無線LAN装置が複数存在する場合に、前記複数の上位無線LAN装置のうちで前記設定されたプライオリティが相対的に最上位であり、かつ、受信信号強度が最も強い無線LAN装置と前記認証を経た接続を行う請求項8記載の無線LANシステム。
【請求項10】
請求項8または請求項9記載の無線LANシステムであって、
前記無線LAN装置の各々は、更に、前記他の無線LAN装置から、該他の無線LAN装置を識別可能な第1の識別情報を取得して、該第1の識別情報と、前記無線LAN装置に記憶され、該無線LAN装置を識別可能な第2の識別情報とに基づいて、予め定めた手法により、該無線LAN装置と該他の無線LAN装置との間で前記認証を経た接続関係を成立させるための地位を設定する設定手段を備え、
前記認証接続部は、前記無線LAN装置に設定されたプライオリティと、前記他の無線LAN装置に設定されたプライオリティとが同位である場合に、前記設定した地位に基づいて、該他の無線LAN装置と前記認証を経た接続関係を成立させ、
前記第2の通信手段は、前記認証接続部によって接続された前記他の無線LAN接続装置との間で、前記無線ディストリビューションシステムに準拠した転送を行う
無線LANシステム。
【請求項11】
請求項8ないし請求項10のいずれか記載の無線LANシステムであって、
前記認証接続部は、前記認証を経た接続関係を成立させる処理と併せて、前記無線パケットを暗号化するための暗号鍵の交換を行い、
前記第2の通信手段は、前記交換した暗号鍵を用いた暗号化通信によって、前記無線ディストリビューションシステムに準拠した転送を行う
無線LANシステム。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか記載の無線LANシステムであって、
前記第2の通信手段は、複数のチャンネルで無線通信が可能であり、
前記無線LAN装置の各々は、更に、
使用中のチャンネルを示すチャンネル情報を付与したプローブ要求を、前記複数のチャンネルのうちの、該使用中のチャンネルとは異なるチャンネルを用いて送信する要求手段と、
前記プローブ要求の送信後、所定期間内に前記使用中のチャンネルに復帰する要求後復帰手段と、
前記チャンネル情報を付与したプローブ要求を受信した際に、該プローブ要求に付与されたチャンネル情報が示すチャンネルを用いて、プローブ応答を送信する応答手段を備えた
無線LANシステム。
【請求項13】
無線ネットワークにおいて無線通信を行う無線LAN装置であって、
有線によって外部ネットワークと通信を行う第1の通信手段と、
前記無線ネットワーク上で無線パケットを中継可能に、前記無線通信を行う第2の通信手段と、
前記無線LAN装置と前記外部ネットワークとの接続の有無を判断する判断手段と、
前記無線ネットワーク内から前記外部ネットワークへ向けて送信される前記無線パケットの中継経路における、前記無線LAN装置についての中継先としての優先度を示すプライオリティを、少なくとも前記判断手段の判断結果に基づいて設定する設定手段と、
前記設定したプライオリティを、前記無線LAN装置の電波到達範囲内に通信可能に存在する他の無線LAN装置に通知する通知手段と
を備え、
前記設定手段は、前記判断手段が前記外部ネットワークとの接続があると判断した場合に、前記プライオリティを相対的に上位に設定し、
前記第2の通信手段は、前記他の無線LAN装置から、該他の無線LAN装置についてのプライオリティの通知を受け取って、該プライオリティに基づいた中継先に対して、前記外部ネットワークへ向けた無線パケットの中継を行う
無線LAN装置。
【請求項14】
無線ネットワークにおいて無線通信を行う無線LAN装置が、他の無線LAN装置との間で、無線パケットを中継するためのプログラムであって、
有線によって外部ネットワークと通信を行う第1の通信機能と、
前記無線ネットワーク上で無線パケットを中継可能に、前記無線通信を行う第2の通信機能と、
前記無線LAN装置と前記外部ネットワークとの接続の有無を判断する判断機能と、
前記無線ネットワーク内から前記外部ネットワークへ向けて送信される前記無線パケットの中継経路における、前記無線LAN装置についての中継先としての優先度を示すプライオリティを、少なくとも前記判断機能の判断結果に基づいて設定する設定機能と、
前記設定したプライオリティを、前記無線LAN装置の電波到達範囲内に通信可能に存在する前記他の無線LAN装置に通知する通知機能と
をコンピュータに実現させ、
前記設定機能は、前記判断機能が前記外部ネットワークとの接続があると判断した場合に、前記プライオリティを相対的に上位に設定し、
前記第2の通信機能は、前記他の無線LAN装置から、該他の無線LAN装置についてのプライオリティの通知を受け取って、該プライオリティに基づいた中継先に対して、前記外部ネットワークへ向けた無線パケットの中継を行う
プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−95339(P2012−95339A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−281120(P2011−281120)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【分割の表示】特願2010−38744(P2010−38744)の分割
【原出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(390040187)株式会社バッファロー (378)
【Fターム(参考)】