説明

無菌性水性懸濁製剤

【課題】水不溶性又は水難溶性薬物が長期間にわたって均一に分散する無菌性水性懸濁製剤を提供すること。
【解決手段】水不溶性又は水難溶性薬物、ならびにミクロゲル及び水溶性のイオン性ポリマーを含有する無菌性水性懸濁製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無菌性水性懸濁製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物の吸収効率や薬効を高めるために、アレルギー性鼻炎治療の点鼻剤、ドライ・アイ治療の点眼剤など直接粘膜に投与する製剤が開発されている。これらの粘膜投与製剤は、組織への刺激性を回避するために、水性基剤が用いられるが、一般に有効成分である薬物の溶解性が低いために、水性懸濁製剤として用いられることが多い。また、水性製剤のため、菌の繁殖を抑制する目的で、一般的に防腐剤・保存剤が添加されているが、長期的に使用される医薬品に用いられることは、粘膜組織に対する副作用の点から好ましくない。そのため、より安全な防腐剤・保存剤の開発や防腐剤・保存剤を使用しない製剤が提案されている。
【0003】
防腐剤・保存剤を使用しない、いわゆる無菌性製剤を得る手段として、オートクレーブ滅菌、放射線滅菌、ろ過滅菌などが一般的に利用されるが、単にこれらの滅菌方法を水性懸濁製剤の製造に適用しようとした場合、種々の問題が生じる。
【0004】
水性懸濁製剤は、通常、水に不溶又は難溶性である有効成分である薬物を長期間にわたって均一に分散させるための分散剤として水溶性又は水膨潤性の高分子が製剤の処方成分として添加されている。そのため、オートクレーブ滅菌、放射線滅菌等によって、水性懸濁剤を得ようとした場合、これら分散剤の構造が破壊され、製剤の安全性や長期間にわたる分散安定性に問題が生じる。この点に対して、飽和濃度以上の食塩を含有させた状態でオートクレーブ滅菌し、滅菌後希釈して無菌性水性懸濁剤を得る方法(特許文献1)や15%−40%の多価アルコール含む水溶液としてオートクレーブ滅菌し、無菌性水性懸濁剤を得る方法(特許文献2)が提案されている。しかしながら、これらの添加成分を加えることで、薬物の粘膜での吸収性が低下したり、粘膜への刺激性を誘発するといった問題が生じる。
【0005】
一方、ろ過滅菌により無菌性水性懸濁製剤を得ようとした場合には、0.22μmの無菌フィルターでろ過させるために、製剤は適度に低い粘度とする必要がある。そのため、製剤の粘度を低くさせた場合、長期間にわたる保存時に、水に不溶又は難溶性である薬物の均一分散性が低下するといった問題があった。この点に対しては、薬物の沈降はするものの、再分散性に優れた水性懸濁製剤が提案されている(特許文献3)。しかしながら、投薬時に薬物を再分散させるためにシェーキングをすると、気泡の噛み込みが生じるために投薬の定量性が損なわれるといった問題が生じる。
【0006】
【特許文献1】米国特許第3,962,430号明細書
【特許文献2】特開平8−187280号公報
【特許文献3】特開平8−295622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、水不溶性又は水難溶性薬物が長期間(好ましくは医薬品として一般的に要求される3年間)にわたって均一に分散する無菌性水性懸濁製剤を提供することにある。本発明者らは、このような目的を達成するために鋭意研究した結果、水不溶性又は水難溶性薬物を分散剤により分散させてなる水性懸濁製剤において、ミクロゲル及び水溶性のイオン性ポリマーを用いることにより、前記本発明の目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、水不溶性又は水難溶性薬物、ならびにミクロゲル及び水溶性のイオン性ポリマーを含有する無菌性水性懸濁製剤に関する(ただし、使用する水不溶性又は水難溶性薬物から、シクレソニドを除く)。
【0009】
本発明において、ミクロゲルは、水溶性ポリマーの架橋によりミクロゲル化したものであることが好ましく、中でもジェランガム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、寒天、キサンタンガム、及びゼラチンからなる群から選ばれる少なくとも1種を架橋によりミクロゲル化したものであることがより好ましい。
【0010】
本発明において、水溶性のイオン性ポリマーは、カルメロースナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、及びポリリジンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ミクロゲル形成可能な水溶性ポリマーをろ過滅菌した後、静電(イオン)結合や水素結合等による架橋によってミクロゲルを形成し、増粘させたものと、水不溶性又は水難溶性薬物の湿潤剤として水溶性のイオン性ポリマーとを混合することにより、水不溶性又は水難溶性薬物が長期間にわたって均一に分散する無菌性水性懸濁製剤を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、水不溶性又は水難溶性薬物(ただし、シクレソニドを除く)、ならびにミクロゲル及び水溶性のイオン性ポリマーを含有する無菌性水性懸濁製剤に関する。
本発明において、ミクロゲルは分散剤として用いられる。該ミクロゲルを形成可能な物質は、水溶性であるとともに、ミクロゲル化により増粘するものであれば、特に制限されるものではない。
【0013】
該ミクロゲルは、水溶性ポリマーの架橋によりミクロゲル化したものが好ましく、かかるミクロゲルを形成可能な水溶性ポリマーとしては、具体的には、ジェランガム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、寒天、ペクチン、ゼラチン、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、及びポリアクリル酸アルキルエステルなどがあげられる。ミクロゲル形成の簡便性や医薬品としての安全性の点で、水素結合や静電(イオン)結合などの非共有結合による分子間結合でゲル形成可能な水溶性ポリマーが好ましく、中でもジェランガム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、寒天、キサンタンガム、及びゼラチンがより好ましい。
【0014】
ミクロゲルを形成する方法としては、攪拌しながら光架橋、熱架橋、放射線架橋等の共有接合により架橋し、ゲル化させる方法、または水素結合、静電(イオン)結合、疎水結合、キレート結合など分子間結合による架橋によりゲル化させる方法がある。医薬品として使用される場合には安全性が高いことが好ましいことから、水素結合、静電(イオン)結合、疎水結合、キレート結合など分子間結合による架橋によりゲル化させる方法がより好ましい。
【0015】
ミクロゲルの粒子サイズは、ミクロゲルが流動性を示す範囲であれば特に限定されないが、例えば、点眼剤や点鼻剤としての投薬時の粘膜面への均一性や製造の簡便性から、0.01μm〜1000μmであることが好ましく、0.1μm〜500μmであることがより好ましい。
【0016】
ミクロゲル形成可能な水溶性ポリマーの濃度は、水に溶解状態でろ過滅菌が可能であり、ミクロゲル化後に、薬物の長期間にわたる分散均一性を保持するとともに、粘膜投与に適した粘度を有すれば、特に限定はされないが、通常、製剤中の濃度として0.001重量%〜20重量%であることが好ましく、0.01重量%〜10重量%であることがより好ましい。
【0017】
また、本発明では、水不溶性又は水難溶性薬物の湿潤剤として水溶性のイオン性ポリマーを用いることが重要である。本発明で用いられる水溶性のイオン性ポリマーとしては、ろ過滅菌が可能であるものであれば特に限定されないが、具体的には例えば、カルメロースナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリリジン、ポリグルタミン酸ナトリウム、ポリアスパラギン酸ナトリウム、ポリエチレンイミン、キトサン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアミン、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体、及びメチレン-β-ナフタリンスルホン酸ナトリウム共重合体などがあげられる。中でも、高いチキソトロピー性や高い安全性及び経済性の点から、カルメロースナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、及びポリリジンが特に好ましい。
【0018】
なお、水不溶性又は水難溶性薬物の湿潤剤として、従来より知られているポリオキシエチレン20ソルビタンモノオレート(TWEEN80)及びステアリン酸グリセリン等の界面活性剤、またはヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリエチレングリコール等の非イオン性のポリマーを用いた場合、薬物の均一分散性を長期間維持することが困難である。
【0019】
水溶性のイオン性ポリマーの濃度は、湿潤剤として薬物の容器への付着を抑制したり、薬物を均一に分散させるために必要な量として決められ、薬物の種類、治療に必要な薬物の量に応じて決められる。通常、製剤中の濃度として0.01重量%〜10重量%であることが好ましい。また、薬物濃度の0.1倍〜20倍程度が、湿潤剤としての機能と経済性の点から好ましく用いられる。
【0020】
本発明の無菌性水性懸濁製剤の一般的な製造方法としては、i)ミクロゲル形成可能な水溶性ポリマー液をろ過滅菌した後、ミクロゲルを形成させる工程、ii)薬物をろ過滅菌されたイオン性ポリマー水溶液に予備分散する工程、iii)ミクロゲルと、薬物を予備分散させたイオン性ポリマー水溶液とを混合する工程により行うことができる。これにより、無菌性水性懸濁製剤を調製することができる。
【0021】
i)ミクロゲルを形成させる工程は、静電(イオン)結合や配位結合による架橋によりミクロゲル化させる場合は、滅菌精製水にミクロゲル形成可能な水溶性ポリマーを溶解し、ろ過滅菌を行い、次に多価イオンの水溶液(例えば、塩化カルシウム水溶液等)を加熱下で攪拌しながら添加し、ホモミキサー等のせん断力の高い攪拌機で攪拌しながら室温まで冷却することにより行うことができる。水素結合で分子間架橋を形成する架橋によりミクロゲル化させる場合は、滅菌精製水にミクロゲル形成可能な水溶性ポリマーを加熱下で溶解し、ろ過滅菌した後、攪拌しながら室温まで冷却することにより行うことができる。疎水結合による架橋によりミクロゲル化させる場合は、滅菌精製水にミクロゲル形成可能な水溶性ポリマーを溶解し、ろ過滅菌を行い、次にリン脂質や非イオン性界面活性剤等のミセル形成成分を溶かした水溶液を攪拌しながら添加し、ホモミキサー等のせん断力の高い攪拌機で攪拌することにより行うことができる。これらの方法により、ミクロゲルを調製することができる。
【0022】
ii)薬物をイオン性ポリマー水溶液に予備分散する工程は、滅菌精製水に水溶性のイオン性ポリマーを溶解させた後、ろ過滅菌し、次に薬物を攪拌しながら添加することにより行うことができる。これにより、薬物が分散したイオン性ポリマー水溶液を調製することができる。
【0023】
また、水溶性のイオン性ポリマーは、ii)薬物の予備分散工程と、その後のiii)ミクロゲルと薬物を予備分散させたイオン性ポリマー水溶液を混合する工程の2回に分けて添加してもよい。この場合、予備分散時に溶解させる水溶性のイオン性ポリマー量を少なくし、予備分散液中低い濃度のイオン性ポリマーをろ過滅菌することができるため、水溶性のイオン性ポリマーの濃度が高い場合に有効である。また、残りの水溶性のイオン性ポリマーは、iii)工程で分割添加することにより、最終製剤の組成を変えずに無菌性製剤を得ることができる。
【0024】
iii)ミクロゲルと、薬物を予備分散させたイオン性ポリマー水溶液とを混合する工程は、ミクロゲルに薬物を予備分散させたイオン性ポリマー水溶液をホモミキサー等のせん断力の高い攪拌機で攪拌することにより行うことができる。これにより、本発明の無菌性水性懸濁製剤を調製することができる。
【0025】
本発明における無菌性水性懸濁製剤の粘度は、特に限定されないが、薬物の均一分散性、粘膜への均一な投薬性や容器からの取り出しやすさから、10mPa・s〜10000mPa・sであることが好ましく、50mPa・s〜2000mPa・sであることがより好ましい。
【0026】
本発明に使用される薬物としては、水不溶性又は水難溶性であればいずれの薬物でも適用可能である。例えば、抗不安剤用薬物、抗てんかん剤用薬物、解熱鎮痛消炎剤用薬物、虚血性心疾患用薬物、強心剤用薬物、利尿剤用薬物、血管拡張剤用薬物、血管収縮剤用薬物、気管支拡張剤用薬物、鎮痛剤用薬物、ホルモン剤用薬物、ワクチン類、抗生物質、局所麻酔剤用薬物、抗パーキンソン剤用薬物、アルツハイマー用薬物、精神神経用薬物、白内障用薬物、不整脈用薬物、血圧降下剤用薬物、高脂血症用薬物、アレルギー用薬物などをあげることができる。更に具体的には、トラニスト、アンレキサノクス、イブジラスト、ペミロラスト、クロモグリク酸ナトリウム、フマル酸エメダスチン、メキタジン、トシル酸スプラタスト、血小板活性化因子拮抗薬等の抗アレルギー薬、プロピオン酸ベクロメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、フルニソリド、モメタゾン、デキサメサゾン等のステロイド剤、ペニシン類、エリスロマイシン、テトラサイクリン等の抗生物質、インフルエンザHAワクチン等のワクチン類、アンチセンス・リボザイム・ベクター等遺伝子治療用薬物等などをあげることができる。なお、本発明の無菌性水性懸濁製剤において使用する水不溶性又は水難溶性薬物からは、シクレソニドを除く。なお、本発明でシクレソニドとは、化学名[11β,16α(R)]−16,17−[(シクロヘキシルメチレン)ビス(オキシ)]−11−ヒドロキシ−21−(2−メチル−1−オキソプロポキシ)プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン(Rエピマー)([11β,16α(R)]-16,17-[(cyclohexylmethylen) bis(oxy)]-11-hydroxy-21-(2-methyl-1-oxoprop-oxy)pregna-1,4-dien-3,20-dione)の化合物、[11β,16α(S)]−16,17−[(シクロヘキシルメチレン)ビス(オキシ)]−11−ヒドロキシ−21−(2−メチル−1−オキソプロポキシ)−プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン(Sエピマー)([11β,16α(S)]-16,17-[(cyclohexylmethylen) bis(oxy)]-11-hydroxy-21-(2-methyl-1-oxoprop-oxy)pregna-1,4-dien-3,20-dione)の化合物、これら化合物の任意の比の混合物(エピマー混合物)、これら化合物の薬学的に許容される塩、これら化合物の溶媒和物とその塩、これら化合物の生理学的に機能的な誘導体とその塩及び溶媒和物を含む。シクレソニドとその製法は、例えば、ドイツ特許第4129535号および国際公開第9809982号パンフレットに記載されている。"生理学的に機能的な誘導体"という用語は、シクレソニドと同じ生理学的機能を有するシクレソニドの化学的誘導体を意味し、例えば生体内でシクレソニドに変換可能であるか、又はシクレソニドの活性代謝産物である。本発明の関連で挙げることができるシクレソニドの生理学的に機能的な誘導体は、例えば化学名16α,17−(22R,S)−シクロヘキシルメチレンジオキシ−11β,21−ジヒドロキシプレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン、16α,17−(22S)−シクロヘキシルメチレンジオキシ−11β,21−ジヒドロキシプレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン、特に16α,17−(22R)−シクロヘキシルメチレンジオキシ−11β,21−ジヒドロキシプレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン、のシクレソニドの21−ヒドロキシ誘導体である。これら化合物とその製法はWO9422899号に記載されている。
【0027】
本発明における薬物量は、有効治療量であり、それぞれの薬物、疾患の種類や程度、患者の年齢や体重等に応じて決めることができる。
更に本発明の水性懸濁製剤に従来既知の安定化剤、抗酸化剤、pH調整剤、等張化剤や矯臭剤などを必要に応じて添加することもできる。具体的には、例えば、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどの安定化剤、アスコルビン酸、トコフェロールなどの抗酸化剤、塩酸、水酸化ナトリウム、リン酸塩などのpH調整剤、食塩やグルコースなどの等張化剤、メントールなどの矯臭剤をあげることができる。これらは単独でも、1種または2種以上の混合系でも使用できる。
【実施例】
【0028】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中、部及び%は重量部及び重量%を意味する。また、実施例中の遠心安定性は、長期間の保存時の分散安定性を評価する方法として実施し、8mmΦのミクロバイアルに水性懸濁製剤1gを加えて20時間静置した後、遠心機で600rpm、800rpm、1000rpm、2000rpm、3000rpmでそれぞれ10分処理した後、目視にて相分離の有無を目視にて評価した。
【0029】
[参考例1]
ジェランガム0.4部を精製水199.6部に溶解し、0.2%ジェランガム水溶液を調製した。得られた0.2%ジェランガム水溶液の粘度をレオメータ(TAインスツルメント社製、AR−2000)を用い、せん断速度200/sで10分前処理し、2時間静置した後、せん断速度14.2/sで、温度25℃下で測定したところ、5mPa・sであり、0.22μmのフィルターを用いて容易にろ過滅菌することができた。0.2%ジェランガム水溶液200部を90℃で攪拌しながら、0.22μmのフィルターでろ過滅菌した400mM塩化カルシウム水溶液1.5部を加え、ホモミキサーで12000rpm、30分攪拌しながら室温まで冷却し、無菌性ミクロゲルを調製した。得られたミクロゲルの粘度をレオメーターで測定したところ、137mPa・sであり、薬物を長期間均一分散させるための適度な粘度を有していることが確認された。
【0030】
ジェランガムと同様にして、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、寒天、キサンタンガム、及びゼラチン等ミクロゲル形成可能な水溶性ポリマー液も、ろ過滅菌することができる。このように、ろ過滅菌されたミクロゲル形成可能な水溶性ポリマーを、ろ過滅菌された塩化カルシウム水溶液と混合させたり、その他適当な方法で、ミクロゲル化させることにより、無菌性ミクロゲルを調製することができる。
【0031】
[実施例1]
0.2%ジェランガム水溶液200部を90℃で攪拌しながら、400mM塩化カルシウム水溶液1.5部を加え、ホモミキサーで12000rpm、30分攪拌しながら室温まで冷却し、ミクロゲルを調製した。カルメロースナトリウム0.8部を精製水19.2部に加え溶解させた後、薬物として、プロピオン酸ベクロメタゾン0.11部を加えてプロペラミキサーで予備分散したのち、ミクロゲル溶液に添加し、ホモミキサーで10000rpm、10分攪拌して水性懸濁製剤を得た。
得られた水性懸濁製剤をミクロバイアルに1gとり、24時間静置させた後、遠心機で遠心安定性を評価した。結果を表1に示す。表1に示すように相分離が観察されず、良好な遠心安定性を示した。
なお、表中「wt%」は、各成分の製剤中の濃度であることを表す。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
【表3】

【0035】
[実施例2〜3、実施例6〜10、参考例2、比較例3〜4、比較例6〜7]
表1〜3に示す配合組成に変えた以外は実施例1と同様にして水性懸濁製剤を得た。
表1〜3に示すように実施例2〜3、実施例6〜10及び参考例2は、良好な遠心安定性を示した。これに対して、比較例3〜4及び比較例6〜7に示すように、水溶性のイオン性ポリマーの代わりに界面活性剤または水溶性の非イオン性ポリマーを薬物の湿潤剤として用いた水性懸濁製剤では、相分離が観察された。
【0036】
[比較例1、2及び5]
表1及び2に示す配合組成に変え、水溶性のイオン性ポリマー水溶液を用いないで、薬物をミクロゲルに直接加え、湿潤剤を含まないミクロゲル単独の水性懸濁製剤とした以外は、実施例1と同様にして水性懸濁製剤を得た。表1に示すように、ミクロゲル単独の水性懸濁製剤では、遠心安定性の評価において、相分離が観察された。また、薬物としてシクレソニドを使用した比較例5では、薬物の容器への著しい付着又は相分離が観察された。
【0037】
[実施例4]
0.3%ジェランガム水溶液200部を90℃で攪拌しながら、400mM塩化カルシウム水溶液1.5部を加え、ホモミキサーで12000rpm、30分攪拌しながら室温まで冷却し、ミクロゲルを調製した。カルメロースナトリウム0.8部を精製水19.2部に加え溶解させた後、薬物として、プロピオン酸ベクロメタゾン0.11部を加えてプロペラミキサーで予備分散したのち、ミクロゲル溶液に添加した。更にカルメロースナトリウム0.52部を加えて溶解させた後、ホモミキサーで10000rpm、10分攪拌して水性懸濁製剤を得た。
得られた水性懸濁製剤について遠心安定性を評価した結果、表1に示すように相分離が観察されず、良好な遠心安定性を示した。
【0038】
[実施例5]
カルメロースナトリウム0.52部の代わりにカルメロースナトリウム1.4部を加えた以外は、実施例4と同様にして水性懸濁製剤を得た。
得られた水性懸濁製剤について遠心安定性を評価した結果、表1に示すように相分離が観察されず、良好な遠心安定性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、ミクロゲル形成可能な水溶性ポリマーをろ過滅菌した後、静電(イオン)結合や水素結合等による架橋によってミクロゲルを形成し、増粘させたものと、水不溶性又は水難溶性薬物の湿潤剤として水溶性のイオン性ポリマーとを混合することにより、水不溶性又は水難溶性薬物が長期間にわたって均一に分散する無菌性水性懸濁製剤を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水不溶性又は水難溶性薬物(ただし、シクレソニドを除く)、ならびにミクロゲル及び水溶性のイオン性ポリマーを含有する無菌性水性懸濁製剤。
【請求項2】
ミクロゲルが、水溶性ポリマーの架橋によりミクロゲル化したものである請求項1記載の無菌性水性懸濁製剤。
【請求項3】
ミクロゲルが、ジェランガム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、寒天、キサンタンガム、及びゼラチンからなる群から選ばれる少なくとも1種を架橋によりミクロゲル化したものである請求項1又は2記載の無菌性水性懸濁製剤。
【請求項4】
水溶性のイオン性ポリマーが、カルメロースナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、及びポリリジンからなる郡から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の無菌性水性懸濁製剤。

【公開番号】特開2008−179623(P2008−179623A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332157(P2007−332157)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(503369495)帝人ファーマ株式会社 (159)
【Fターム(参考)】