説明

無電極放電灯点灯装置及び照明器具

【課題】 補助光源が点灯しない場合であっても無電極放電灯の始動時の電気的ストレスが抑えられる無電極放電灯点灯装置及び照明器具を提供する。
【解決手段】 無電極放電灯の点灯を開始させる際、補助光源が正常に点灯するか否かを判定する。そして、補助光源が正常に点灯しないと判定されれば、無電極放電灯が点灯しない程度に誘導コイルへの出力電力を少なくする始動準備動作P0を所定時間にわたって行い、次に無電極放電灯が点灯する程度に誘導コイルへの出力電力を多くする始動動作P1を行った後、無電極放電灯の点灯を維持する定常動作P2に移行する。一方、補助光源が正常に点灯すると判定されれば、始動準備動作P0を行わず、始動動作P1を開始する。補助光源が点灯しない場合であっても、始動準備動作P0が行われることで、無電極放電灯の始動時の電気的ストレスが抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電極放電灯点灯装置及び照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、無電極放電灯に近接配置された誘導コイルに高周波電力を供給し、無電極放電灯内に高周波電磁界によるプラズマを発生させることで無電極放電灯を点灯させる無電極放電灯点灯装置が提供されている。
【0003】
この種の無電極放電灯点灯装置において、無電極放電灯の点灯を開始させる際(始動時)には、誘導コイルが発生させる高周波電磁界は、消灯中から無電極放電灯内に存在する電子に対して作用する。つまり、消灯中から無電極放電灯内に存在する電子が少ないほど、始動性が悪化し、無電極放電灯の始動に必要な電力が増加する。
【0004】
無電極放電灯の外部から紫外線の入射があるような環境であれば、その紫外線が無電極放電灯内のガスを電離させるから、無電極放電灯内には消灯中から比較的に多くの電子が存在することにより、無電極放電灯の点灯開始(始動)のために必要な電力は比較的に少なくてすむ。
【0005】
しかし、上記のような紫外線の入射がない暗所では、無電極放電灯内に消灯中に存在する電子は比較的に少なくなってしまうから、無電極放電灯の始動のために必要な電力は比較的に多くなり、従って無電極放電灯の始動時に無電極放電灯点灯装置の回路部品にかかる電気的ストレスも高くなってしまう。
【0006】
そこで、無電極放電灯内に電子を発生させるための光を無電極放電灯に照射する別途の光源(以下、「補助光源」と呼ぶ。)を設け、この補助光源を無電極放電灯の始動時に点灯させることが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。すなわち、無電極放電灯の始動時には補助光源の光によって無電極放電灯内の電子が増加することで、無電極放電灯の始動に必要な電力が低減されるから、回路部品にかかる電気的ストレスが抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−223789号公報
【特許文献2】特開平8−180840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、無電極放電灯の寿命は他の多くの電気的光源と比較して長いので、無電極放電灯が寿命末期に達する前に補助光源が寿命末期となって点灯しなくなる可能性は高い。
【0009】
補助光源の寿命末期に限らず、補助光源への給電用の回路に故障が発生した場合や、補助光源が正しく接続されていない場合など、補助光源が点灯しない場合には、上記のように回路部品への電気的ストレスを抑える効果が得られない。
【0010】
本発明は、上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、補助光源が点灯しない場合であっても無電極放電灯の始動時の電気的ストレスが抑えられる無電極放電灯点灯装置及び照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、無電極放電灯に近接配置される誘導コイルに対して交流電力を出力することにより無電極放電灯を点灯させる点灯部と、点灯部が点灯させる無電極放電灯に光を照射する電気的な光源である補助光源に対して電力を供給して点灯させる補助光源点灯部と、無電極放電灯の点灯が開始される前に補助光源が正常に点灯するか否かを判定する動作判定部と、動作判定部による判定結果に応じて点灯部を制御する制御部とを備え、制御部は、無電極放電灯の点灯を開始させる際、動作判定部により補助光源が正常に点灯しないと判定されていれば、無電極放電灯が点灯しない程度に誘導コイルへの出力電力を少なくする始動準備動作を所定時間にわたって行い、次に無電極放電灯が点灯する程度に誘導コイルへの出力電力を多くする始動動作を行った後、無電極放電灯の点灯を維持する定常動作に移行するように、点灯部を制御するものであって、制御部は、無電極放電灯の点灯を開始させる際、動作判定部により補助光源が正常に点灯すると判定されていれば、始動準備動作を行わず、又は動作判定部により補助光源が正常に点灯しないと判定されている場合よりも短時間の始動準備動作の後に、始動動作を開始するように、点灯部を制御することを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、補助光源が正常に点灯しないと判定された場合には、始動準備動作が行われることにより、始動準備動作が行われない場合に比べ、回路部品に対して比較的に高い電気的ストレスがかかる始動動作の継続時間を短くすることができるから、無電極放電灯の始動時に回路部品にかかる電気的ストレスが抑えられる。また、補助光源が正常に点灯すると判定された場合には、始動準備動作が行われないこと、又は、始動準備動作の継続時間が短縮されることにより、常に一定時間の始動準備動作が行われる場合に比べ、無電極放電灯の始動にかかる時間が短縮される。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、動作判定部は、補助光源に出力される電流に基いて、補助光源が正常に点灯するか否かを判定することを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2記載の無電極放電灯点灯装置と、点灯部に接続される誘導コイルとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、補助光源が正常に点灯しないと判定された場合には、始動準備動作が行われることにより、始動準備動作が行われない場合に比べ、回路部品に対して比較的に高い電気的ストレスがかかる始動動作の継続時間を短くすることができるから、無電極放電灯の始動時に回路部品にかかる電気的ストレスが抑えられる。また、補助光源が正常に点灯すると判定された場合には、始動準備動作が行われないこと、又は、始動準備動作の継続時間が短縮されることにより、常に一定時間の始動準備動作が行われる場合に比べ、無電極放電灯の始動にかかる時間が短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)(b)はそれぞれ本発明の実施形態において時間tを横軸にとりコイル電圧Vxと動作周波数fとの時間変化を示す説明図であり、(a)は補助光源が正常に点灯しないと判定された場合を示し、(b)は補助光源が正常に点灯すると判定された場合を示す。
【図2】同上を示す回路ブロック図である。
【図3】同上においてカプラの構造の一例を示す説明図である。
【図4】無電極放電灯の構造の一例を示す説明図である。
【図5】図3のカプラに図4の無電極放電灯が取り付けられたものの構造を示す説明図である。
【図6】図5のものにさらに反射板とカバーとが取り付けられたものの構造を示す説明図である。
【図7】同上における動作周波数fと電圧振幅|Vx|との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
本実施形態は、図2に示すように、無電極放電灯2に近接配置される誘導コイル3に高周波電力を出力することにより無電極放電灯2を点灯させる無電極放電灯点灯装置1であって、誘導コイル3に出力される上記の高周波電力を生成する点灯部4と、点灯部1を制御する制御部5とを備える。上記の無電極放電灯点灯装置1は、誘導コイル3とともに照明器具を構成する。
【0019】
さらに、本実施形態は、暗所での無電極放電灯2の始動性を改善するための補助光源6を点灯させる補助光源点灯部61を備える。補助光源6としては例えば白熱灯や発光ダイオードを用いることができ、補助光源点灯部61は補助光源6に応じて電池や電源回路といった周知の電源を用いることができる。他の電源から供給された電力を適宜変換する電源回路を補助光源点灯部61として用いる場合、補助光源点灯部61の電源としては、交流電源ACを用いてもよいし、後述する直流電源部Eを用いてもよいし、点灯部4を用いてもよいし、別途の電池を用いてもよい。また、補助光源点灯部61は、制御部5によって制御されて補助光源6への給電をオンオフするものであってもよいし、無電極放電灯2の近傍に配置された例えばCdSのような受光素子によって光が検出されていない期間のみに補助光源6への給電をオンするものであってもよい。いずれの場合であっても補助光源点灯部61は周知技術で実現可能であるので詳細な図示並びに説明は省略する。
【0020】
誘導コイル3は図3に示すように磁性体からなる筒形状のコア31に巻回され、コア31を保持するカプラ本体32とコア31とともにカプラ30を構成する。図3の例では、無電極放電灯点灯装置1は、交流電源ACへの接続用のプラグ11と、誘導コイル3と、補助光源6とに、それぞれ電線12,131,132を介して接続されており、上記のプラグ11が交流電源ACのコンセント(図示せず)に挿入接続されることで、無電極放電灯点灯装置1はプラグ11と電線12とを介して交流電源ACに電気的に接続される。以下、上下方向は図3〜図5を基準として説明する。カプラ本体32は、上下方向に扁平なベース部321と、ベース部321の上面の中央から上方に突設された筒形状であって上端部がコア31に挿通されたボビン部322と、ベース部321の上面から上方に突設されてボビン部322を囲む筒形状のソケット部323とを有する。コア31は、カプラ本体32のボビン部322に対し、例えば嵌合によって保持されている。
【0021】
無電極放電灯2は、図4に示すように、例えばガラスのような透明な材料からなる中空のバルブ20を備える。バルブ20は、球形状の膨大部201と、膨大部201から下向きに突出してカプラ本体32のソケット部323に挿入される接続部202とを有する。また、接続部202の下面には、膨大部201内にまで至る接続凹部203が開口しており、接続部202は接続凹部203が上下に貫通した筒形状となっている。
【0022】
図5に示すように、無電極放電灯2は、接続凹部203にカプラ本体32のボビン部322が挿入される形でカプラ30に装着されるものであって、無電極放電灯2がカプラ30に装着された状態では無電極放電灯2の接続部202はカプラ本体32のソケット部323に囲まれる。無電極放電灯2の接続部202の外周面には係合溝204が設けられるとともに、カプラ本体32のソケット部323の内周面には係合凸部324が内向きに突設されており、無電極放電灯2がカプラ30に装着された状態では係合凸部324が係合溝204に係入することでカプラ30からの無電極放電灯2の脱落が防止される。係合溝204に対する係合凸部324の係脱は、例えばカプラ本体32のソケット部323の弾性変形により達成される。上記のように無電極放電灯2がカプラ30に装着されることで、誘導コイル3は接続凹部203内において無電極放電灯2に近接配置される。ここで、図5の例では補助光源6はソケット部323の内周面とボビン部322の外周面との間に配置されているが、補助光源6の光が無電極放電灯2に照射されるのであれば補助光源6の配置は上記に限られない。
【0023】
さらに、無電極放電灯2のバルブ20は、接続凹部203の底面(上端)から下方に突設された排気細管205を有する。排気細管205は無電極放電灯2の製造の過程でバルブ20内の排気に用いられたものであって、排気後に下端が閉塞されて上端は膨大部201内に開放されている。排気細管205内には、アマルガムが収納された金属容器21が、位置決め用の2本のガラス棒22,23に上下から挟まれた形で収納されており、この金属容器21内のアマルガムがバルブ20内において水銀蒸気の発生源となる。また、排気細管205の内面において上側のガラス棒22の上側には位置決め凸部206が内向きに突設されており、この位置決め凸部206と排気細管205の下端との間に挟まれることにより、金属容器21と各ガラス棒22,23との上下方向への変位は禁止されている。上側のガラス棒22は、金属容器21の上方への流路を狭くすることで水銀蒸気の過剰な拡散を防止し、バルブ20内の黒化を抑えるものでもある。無電極放電灯2がカプラ30に装着された状態では、排気細管205はボビン部322に挿入された形となる。
【0024】
バルブ20内には不活性ガスが封入されており、この不活性ガスと上記のアマルガムから発生した水銀蒸気とで放電ガスが構成されている。さらに、バルブ20の内面には保護膜24が設けられ、この保護膜24上に重ねて蛍光体膜25が設けられている。すなわち、誘導コイル3が発生させる高周波電磁界によってバルブ20内にアーク放電が発生すると、発生した紫外線が蛍光体膜25において可視光に変換されることにより、無電極放電灯2が発光する。
【0025】
さらに、図6に示すように、無電極放電灯2の光を配光するための反射板71をカプラ30に取り付けてもよい。図6の反射板71は、下面が開口した半球形状であってカプラ30と無電極放電灯2とをそれぞれ収納及び保持している。このような反射板71は、内面が例えば白色に塗装されることによって無電極放電灯2の光を下方に配光することができる。また、図6の例では、透光性を有する材料からなり反射板71の開口を覆うカバー72が、反射板71に取り付けられている。上記のような反射板71やカバー72は周知技術で実現可能であるので、詳細な図示並びに説明は省略する。さらに、図6の例では、誘導コイル3と点灯部4とを接続する電線131と、補助光源点灯部61と補助光源6とを接続する電線132とが、一本のケーブル13とされている。
【0026】
また、本実施形態は、外部の交流電源ACから入力された交流電力を所定電圧の直流電力に変換して点灯部4に出力する直流電源部Eを備える。つまり、点灯部4は、直流電源部Eが出力した直流電力を高周波の交流電力に変換して誘導コイル3に出力するインバータ回路である。
【0027】
直流電源部Eは、交流電源ACから供給された交流電流を全波整流するダイオードブリッジDBと、ダイオードブリッジDBの出力端間に接続されたコンデンサCxと、ダイオードブリッジDBの出力端間に接続されたインダクタL0とダイオードD0と出力コンデンサC0との直列回路と、インダクタL0とダイオードD0との接続点とダイオードブリッジDBの低電圧側の出力端との間に接続されたスイッチング素子Q0と、スイッチング素子Q0を周期的にオンオフ駆動する駆動回路E1とを備える、周知の昇圧型コンバータ(ブーストコンバータ)である。駆動回路E1は、出力コンデンサC0の両端電圧(すなわち直流電源部11の出力電圧。以下、「インバータ入力電圧」と呼ぶ。)Vdcを検出するとともに、検出されたインバータ入力電圧Vdcを一定の目標電圧とするようなデューティ比でスイッチング素子Q0をオンオフ駆動するというフィードバック制御を行う。このような駆動回路E1は周知技術で実現可能であるので、詳細な図示並びに説明は省略する。
【0028】
点灯部4は、直流電源部Eの出力端間すなわち出力コンデンサC0の両端間に接続されたスイッチング素子Q1,Q2と検出抵抗Rdとの直列回路と、スイッチング素子Q1,Q2の接続点に一端が接続されたインダクタLsと、インダクタLsの他端に一端が接続されて他端が誘導コイル5の一端に接続された直列コンデンサCsと、一端がインダクタLsと直列コンデンサCsとの接続点に接続され他端が検出抵抗Rdと誘導コイル5との接続点に接続された並列コンデンサCpと、スイッチング素子Q1,Q2を交互にオンオフ駆動する駆動回路41とを備える、いわゆるハーフブリッジ形のインバータ回路である。つまり、スイッチング素子Q1,Q2が交互にオンオフされることで、インダクタLsと直列コンデンサCsと並列コンデンサCpと誘導コイル3とが構成する共振回路と直流電源部Eとの接続が切り換えられ、この共振回路の共振により、直流電源部Eが出力した直流電力が高周波の交流電力に変換されて誘導コイル3に供給される。また、各スイッチング素子Q1,Q2はそれぞれNチャネル型のFETからなり、駆動回路41は、各スイッチング素子Q1,Q2のゲートに対してそれぞれ矩形波状の駆動信号を出力することによって各スイッチング素子Q1,Q2をそれぞれオンオフ駆動する。さらに、駆動回路41は、制御端子CONを有し、制御端子CONから流出する制御電流Ioが多いほど、スイッチング素子Q1,Q2をオンオフする周波数(以下、「動作周波数」と呼ぶ。)fを高くする。通常、動作周波数fは、図7に示す周波数fh,feのように、上述した共振回路の共振周波数(以下、単に「共振周波数」と呼ぶ。)frよりも高い範囲とされており、制御電流Ioが少なくなって動作周波数が低くなるほど、点灯部4が誘導コイル3に出力する電圧(以下、「コイル電圧」と呼ぶ。)Vxの振幅(以下、「電圧振幅」と呼ぶ。)|Vx|は大きくなり、誘導コイル3に供給される電力は増加する。ここで、図7において、曲線Aは無電極放電灯2が点灯していない状態での特性を示し、曲線Bは無電極放電灯2が点灯した状態での特性を示す。
【0029】
また、制御部5は、点灯部4の出力電圧Vxを検出する出力検出回路50を有する。出力検出回路50は、電圧振幅|Vx|が大きいほど高い電圧値の直流電圧である検出電圧Vxsを出力するものである。より具体的には、出力検出回路50は、コイル電圧Vxを抵抗で分圧してダイオードで整流するとともにコンデンサで平滑化することで検出電圧Vxsを生成する。
【0030】
さらに、制御部5は、無電極放電灯2の始動時に動作周波数を徐々に低下させることにより点灯部4から誘導コイル3への出力電力を徐々に増加させるスイープ動作を行うスイープ回路51を備える。
【0031】
スイープ回路51は、反転入力端子が抵抗を介して出力端子に接続されるとともに抵抗を介して出力検出部50の出力端に接続されたオペアンプOP1を備える。オペアンプOP1の出力端子は、逆流防止用のダイオードと抵抗との直列回路を介して駆動回路41の制御端子CONに接続されている。また、スイープ回路51は、一端に定電圧Vdが入力された抵抗R1と、この抵抗R1の他端に一端が接続され他端が回路のグランドに接続されたスイッチSWと抵抗R3との直列回路と抵抗R2とコンデンサC1との並列回路とを有し、オペアンプOP1の非反転入力端子は上記の並列回路と抵抗R1との接続点に接続されている。本実施形態のスイープ回路51では上記のようにオペアンプOP1の反転入力端子が抵抗を介して出力検出部50の出力端に接続されているので、電圧振幅|Vx|が大きいほど、つまり点灯部4から誘導コイル3に供給される電力が多いほど、オペアンプOP1の出力電圧が低くなって駆動回路41の制御端子CONからスイープ回路51に流入する電流(以下、「スイープ電流」と呼ぶ。)Iswが増加し動作周波数が高くなることにより、点灯部4から誘導コイル3に供給される電力は少なくなる。すなわち、スイープ回路51は出力検出回路50が出力する検出電圧Vxsを用いたフィードバック動作も行う。また、スイープ回路51において、コンデンサC1の両端電圧Vc1が安定した状態での動作を考えると、スイッチSWがオフされている場合には、スイッチSWがオンされている場合に比べ、コンデンサC1の両端電圧Vc1が高くなりオペアンプOP1の出力電圧が高くなってスイープ電流Iswが減少し動作周波数が低くなることにより、点灯部4から誘導コイル3に供給される電力は多くなる。また、スイッチSWがオンからオフに切り換えられたときには、抵抗R1,R2とコンデンサC1とが構成する回路の時定数により、オペアンプOP1の出力電圧が徐々に高くなりスイープ電流Iswが徐々に減少することで動作周波数が徐々に低くされ点灯部4から誘導コイル3への供給電力が徐々に増加するスイープ動作が行われる。
【0032】
また、制御部5は、点灯部4においてローサイドのスイッチング素子Q2と検出抵抗Rdとの接続点の電圧、すなわち点灯部4に流れる電流に基いて動作周波数を制御するフィードバック回路52を有する。フィードバック回路52は、非反転入力端子に所定の基準電圧Vrが入力されるとともに出力端子が逆流防止用のダイオードと抵抗とを介して駆動回路41の制御端子CONに接続されたオペアンプOP2を有する。このオペアンプOP2の反転入力端子は、抵抗とコンデンサとの並列回路を介してオペアンプOP2の出力端子に接続されるとともに、抵抗を介して点灯部4のスイッチング素子Q2と検出抵抗Rdとの接続点に接続されている。すなわち、駆動回路41の制御端子CONからフィードバック回路52に流入する電流(以下、「フィードバック電流」と呼ぶ。)Ifbは、誘導コイル3に流れる電流が多いほど(すなわち誘導コイル5に供給される電力が多いほど)多くなって誘導コイル3への供給電力を減少させるように作用するのであり、フィードバック回路52は点灯部4が誘導コイル3に供給する電力を安定させるように動作する。インバータ入力電圧Vdcが目標電圧で且つスイープ回路51においてスイッチSWがオフされてコンデンサC1の両端電圧が安定している状態では、動作周波数fが、図7に示すように、無電極放電灯2においてH放電(高周波電磁界放電や誘導結合型放電とも呼ばれるアーク放電)が発生する電圧振幅である始動電圧Vstよりも電圧振幅|Vx|を大きくするような周波数fhとなり、且つ、インバータ入力電圧Vdcが目標電圧で且つスイープ回路51においてスイッチSWがオンされてコンデンサC1の両端電圧が安定している状態では、動作周波数fが、無電極放電灯2においてE放電(高周波電界放電や容量結合型放電とも呼ばれるグロー放電)が発生する程度の電力が点灯部4から誘導コイル3に供給され且つ電圧振幅|Vx|が上記の始動電圧Vstよりも小さくなるような周波数feとなるように、スイープ回路51とフィードバック回路52とはそれぞれ設計されている。スイープ回路51とフィードバック回路52とのフィードバックにより、インバータ入力電圧Vdcが目標電圧よりも低い場合には動作周波数fは上記よりも低くされ、逆にインバータ入力電圧Vdcが目標電圧よりも高い場合には動作周波数fは上記よりも高くされる。つまり、電圧振幅|Vx|の目標値は、スイープ回路51においてスイッチSWがオフされてコンデンサC1の両端電圧が安定している状態では無電極放電灯2においてアーク放電(H放電)が発生する程度とされ、スイープ回路51においてスイッチSWがオンされてコンデンサC1の両端電圧が安定している状態では無電極放電灯2においてアーク放電(H放電)が発生せずグロー放電(E放電)が発生する程度とされる。
【0033】
さらに、制御部5は、スイープ回路51のスイッチSWをオンオフ制御することで点灯部4の動作を切り替える動作切換部53を有する。
【0034】
以下、本実施形態の特徴である、動作切換部53の動作について説明する。
【0035】
本実施形態の補助光源6は直流電力で点灯されるものであって、補助光源点灯部61から補助光源6への給電路には判定用抵抗R4が挿入されている。動作切換部53は、無電極放電灯2の始動時、判定用抵抗R4の両端電圧に基いて(すなわち補助光源6に出力される電流に基いて)、補助光源6が正常に点灯するか否かを判定する。すなわち、動作切換部53は請求項における動作判定部である。具体的には例えば、判定用抵抗R4の両端電圧を所定の判定電圧と比較し、判定用抵抗R4の両端電圧が判定電圧以上であれば(つまり補助光源6の点灯に十分な電流が流れていれば)補助光源6が正常に点灯すると判定し、判定用抵抗R4の両端電圧が判定電圧未満であれば(つまり補助光源6の点灯に十分な電流が流れていなければ)補助光源6が正常に点灯しないと判定する。
【0036】
そして、例えば白熱灯からなる補助光源6にフィラメント切れが発生していた場合や補助光源6が未装着の場合など、判定用抵抗R4に電流が流れないことにより、補助光源6が正常に点灯しないと判定された場合、動作切換部53は、まずスイープ回路51のスイッチSWを所定時間だけオン状態に維持し、その後、スイープ回路51のスイッチSWをオフする。これにより、図1(a)に示すように無電極放電灯2にグロー放電が発生し且つアーク放電が発生しない程度に電圧振幅|Vx|を小さく維持する始動準備動作P0が上記の所定時間だけ行われた後、無電極放電灯2にアーク放電が発生する程度まで電圧振幅|Vx|を大きくする始動動作P1への移行がなされる。始動動作中に無電極放電灯2にアーク放電が発生することで無電極放電灯2が点灯を開始(すなわち始動)すると回路特性の変化に伴って電圧振幅|Vx|が低下し、その後は誘導コイル3への出力電力が略一定に維持される定常動作P2が行われる。始動準備動作P0中には無電極放電灯2内の電子が増加するから、無電極放電灯2が点灯を開始するまで(すなわちアーク放電が発生するまで)の始動動作P1の継続時間は、始動準備動作P0が行われない場合よりも短縮される。動作周波数fは例えば50kHz〜200kHzであり、コイル電圧Vxの実効値は、始動準備動作P0中には例えば400V〜700Vであり、始動動作P1中には例えば1000V〜2500Vである。
【0037】
一方、補助光源6が正常に点灯すると判定された場合、動作切換部53は、点灯部1の動作開始時からスイープ回路51のスイッチSWをオフ状態とする。つまり、図1(b)に示すように、上記の始動準備動作P0が省略されて始動動作P1が開始される。ここで、コイル電圧Vxは高周波の交流電圧であるので、図1(a)(b)でのコイル電圧Vxは包絡線のみを示している。
【0038】
なお、補助光源6が正常に点灯すると判定された場合であっても、動作切換部53が、補助光源6が正常に点灯しないと判定された場合よりも短い時間だけ、スイープ回路51のスイッチSWをオンして始動準備動作P0を行わせるようにしてもよい。
【0039】
上記構成によれば、補助光源6が正常に点灯しないと判定された場合には、始動準備動作P0中に無電極放電灯2のバルブ20内の電子が増加されて始動性が改善されることにより、始動準備動作P0が行われない場合に比べ、回路部品に対して比較的に高い電気的ストレスがかかる始動動作P1の継続時間を短くすることができる。また、始動準備動作P0が行われない場合に比べ、点灯部4の出力電力が緩やかに増加されることになるから、直流電源部Eの駆動回路E1によるフィードバック制御や、スイープ回路51やフィードバック回路52によるフィードバック制御において、オーバーシュートが発生しにくくなる。以上により、無電極放電灯2の始動時に回路部品にかかる電気的ストレスが抑えられる。
【0040】
また、補助光源6が正常に点灯すると判定された場合には、始動準備動作P0が行われないこと、又は、始動準備動作P0の継続時間が短縮されることにより、常に一定時間の始動準備動作P0が行われる場合に比べ、無電極放電灯2の始動にかかる時間が短縮される。
【符号の説明】
【0041】
1 無電極放電灯点灯装置
2 無電極放電灯
3 誘導コイル
4 点灯部
5 制御部
6 補助光源
53 動作切換部(請求項における動作判定部)
61 補助光源点灯部
P0 始動準備動作
P1 始動動作
P2 定常動作

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無電極放電灯に近接配置される誘導コイルに対して交流電力を出力することにより無電極放電灯を点灯させる点灯部と、
点灯部が点灯させる無電極放電灯に光を照射する電気的な光源である補助光源に対して電力を供給して点灯させる補助光源点灯部と、
無電極放電灯の点灯が開始される前に補助光源が正常に点灯するか否かを判定する動作判定部と、
動作判定部による判定結果に応じて点灯部を制御する制御部とを備え、
制御部は、無電極放電灯の点灯を開始させる際、動作判定部により補助光源が正常に点灯しないと判定されていれば、無電極放電灯が点灯しない程度に誘導コイルへの出力電力を少なくする始動準備動作を所定時間にわたって行い、次に無電極放電灯が点灯する程度に誘導コイルへの出力電力を多くする始動動作を行った後、無電極放電灯の点灯を維持する定常動作に移行するように、点灯部を制御するものであって、
制御部は、無電極放電灯の点灯を開始させる際、動作判定部により補助光源が正常に点灯すると判定されていれば、始動準備動作を行わず、又は動作判定部により補助光源が正常に点灯しないと判定されている場合よりも短時間の始動準備動作の後に、始動動作を開始するように、点灯部を制御することを特徴とする無電極放電灯点灯装置。
【請求項2】
動作判定部は、補助光源に出力される電流に基いて、補助光源が正常に点灯するか否かを判定することを特徴とする請求項1記載の無電極放電灯点灯装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の無電極放電灯点灯装置と、点灯部に接続される誘導コイルとを備えることを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−44402(P2011−44402A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193462(P2009−193462)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】