説明

無電解めっき方法及びLED実装用基板

【課題】 光の反射率を向上させるとともに高温条件下での銀めっき皮膜の変色を防止する。
【解決手段】 本発明に係る無電解めっき方法は、被めっき物上に形成されたNi−Pめっき皮膜上に、パラジウム処理を施すパラジウム処理工程と、パラジウム処理が施された被めっき物に対して、無電解銀めっきを施す無電解銀めっき工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Ni−Pめっき皮膜に無電解銀めっきを施す無電解めっき方法及びLED実装用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電気銀めっきは、古くから装飾用途として多用されている技術である。近年では、電気特性を生かして電子工業分野に、反射率の高さを生かしてLED(Light Emitting Diode)の反射板、車のヘッドライト等の光工業分野、その他電磁波シールド、殺菌コート等の分野に多く用いられている。
【0003】
現在、非常に注目を浴びているLEDの反射板に、電気ニッケル−電気銀をめっきするプロセスが多用されている(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。しかし、電気銀は、高アルカリ浴、シアン浴が一般的であるため、環境面や作業面が悪い。また、電気銀めっきでは、基板の独立した配線パターンへの対応が不可能であり、また、高い反射率を得るために膜厚を厚くする必要があるため、コストが高くなってしまう。
【0004】
また、無電解めっきで置換めっきを行うプロセスでは、液として比較的安定であるが、めっき対象の素材が限定されてしまう。また、無電解めっきで置換めっきを行うプロセスでは、素材の下地を荒らしてしまうため、高い反射率や光沢度が得られにくいという問題がある。
【0005】
一方、無電解還元反応による無電解銀めっき(以下、「無電解還元銀めっき」という)では、基板の独立した配線パターンへの対応が可能であり、無電解めっきでの置換銀めっきとは異なって銀の被覆が非常に高くレベリング効果もあるため、膜厚を薄くしても高反射率や高光沢度を得ることが可能である。また、無電解還元銀めっきでは、薄い膜厚でも反射率などの十分な特性が得られるため、コストの低減化を図るとともに、パターン幅が狭い基板への対応も可能である。
【0006】
しかし、Ni−Pめっき皮膜上に無電解還元銀めっきを施すと、下地のNi−Pめっき皮膜が溶解しやすいため、ニッケルと銀との間の密着性が不良となり、例えばNi−Pめっき皮膜と銀めっき皮膜との間から光が漏れて、光の反射率が低下してしまう問題があった。また、銀めっき皮膜は、高温条件下において変色してしまう問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−258514号公報
【特許文献2】特許第4367457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、光の反射率を向上させるとともに、高温条件下での銀めっき皮膜の変色を防止することができる無電解めっき方法及びLED実装用基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る無電解めっき方法は、被めっき物上に形成されたNi−Pめっき皮膜上に、パラジウム処理を施すパラジウム処理工程と、パラジウム処理が施された被めっき物に対して、無電解銀めっきを施す無電解銀めっき工程とを有する。
【0010】
本発明に係るLED実装用基板は、被めっき物上にNi−Pめっき皮膜が形成され、Ni−Pめっき皮膜上にパラジウムが存在し、無電解銀めっきを施すことによりパラジウムが存在するNi−Pめっき皮膜上に銀めっき皮膜が形成されている銀膜を反射面として有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、Ni−Pめっき皮膜と銀めっき皮膜との間の密着性を向上させ、光の反射率を向上させるとともに、高温条件下での銀めっき皮膜の変色を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した無電解めっき方法及びLED実装用基板の一例について、次の順序で説明する。
1.無電解めっき方法
1−1.Ni−Pめっき工程
1−2.パラジウム処理工程
1−3.無電解銀めっき工程
2.LED実装用基板
3.他の実施形態
4.実施例
【0013】
1.無電解めっき方法
本実施の形態に係る無電解めっき方法は、被めっき物に無電解Ni−Pめっきを施すNi−Pめっき工程と、被めっき物上に形成された無電解Ni−Pめっき皮膜(以下、「Ni−Pめっき皮膜」という)上に、パラジウム処理を施すパラジウム処理工程と、パラジウム処理が施された被めっき物に対して、無電解銀めっきを施す無電解銀めっき工程とを有する。
【0014】
1−1.Ni−Pめっき工程
Ni−Pめっき工程では、めっき厚さを均一にすることができ、耐摩耗性に優れている等の観点から、基材となる被めっき物に無電解Ni−Pめっきを施す。
【0015】
Ni−Pめっき工程では、Ni−Pめっき皮膜の膜厚が0.1〜50μmとなるように、被めっき物に無電解Ni−Pめっきを施すことが好ましい。Ni−Pめっき皮膜の膜厚が0.1μm未満の場合には、光の反射率が低下してしまう。また、Ni−Pめっき皮膜の膜厚が50μmを超える場合には、コストが高くなり、作業性が悪くなってしまう。
【0016】
Ni−Pめっき工程では、無電解ニッケルめっき浴を用いて被めっき物に無電解Ni−Pめっきを施す。めっき浴としては、例えば、リン含量が1.5〜13%(低濃度から高濃度)であるものを用いることができる。具体的に、めっき浴としては、例えば、ニムデン LPX(商品名)、ニムデン KLP(商品名)(低濃度のリンを含む)、ニムデン NKYシリーズ(商品名)、ニムデン NPGシリーズ(商品名)、ニムデン NELシリーズ(商品名)、ニムデン KTYシリーズ(商品名)(中高濃度〜高濃度のリンを含む)等(以上、上村工業株式会社製)を用いることができる。
【0017】
Ni−Pめっき工程におけるめっき条件は、例えば、温度を約70〜100℃、めっき時間を20〜30分とすることができる。
【0018】
1−2.パラジウム処理工程
パラジウム処理工程では、被めっき物上に形成されたNi−Pめっき皮膜上にパラジウム処理を施すことにより、Ni−Pめっき皮膜上にパラジウムを存在させる。このように、Ni−Pめっき皮膜上にパラジウム処理を施すことにより、後述する無電解銀めっき工程において、Ni−Pめっき皮膜の溶解を抑制し、下地のニッケルへの影響を少なくすることができる。これにより、Ni−Pめっき皮膜と、無電解銀めっき工程で形成される無電解還元による銀めっき皮膜との間の密着性を向上させることができ、高温条件下での銀の変色(例えば、色ムラの発生や黄色への変色)を防止するとともに、光の反射率を向上させることができる。さらに、Ni−Pめっき皮膜上にパラジウム処理を施すことにより、Ni−Pめっき皮膜及び銀めっき皮膜の相互拡散層を薄くすることができる。
【0019】
パラジウム処理では、Ni−Pめっき皮膜上に1×10−4〜0.2mg/dmのパラジウムを存在させることが好ましい。パラジウムの量(パラジウムの濃度)が1×10−4mg/dm未満の場合には、パラジウムの量が十分ではないため、上述したNi−Pめっき皮膜と銀めっき皮膜との間の密着性が悪化したり、外観不良が発生してしまうおそれがある。パラジウムの量が0.2mg/dmを超える場合には、処理コストが高くなり、作業性が悪化してしまう。
【0020】
パラジウム処理に用いるパラジウム溶液としては、従来のアクチベータ(キャタリスト)用の液や、無電解パラジウム液を用いることができる。パラジウム溶液の浴種としては、例えば、置換型のパラジウム浴としては、アクセマルタ MPD−22(商品名)、アクセマルタ MPD−32(商品名)、アクセマルタ MNK−4(商品名)、KAT−450(商品名)、AT−700(商品名)、アクセマルタ MSR−41(商品名)等が挙げられ、還元型のパラジウム浴としてはアルタレア TPD−20(商品名)等(以上、上村工業株式会社製)が挙げられる。
【0021】
パラジウム処理後のパラジウムは、パラジウム処理に用いる処理液やパラジウムの量によってNi−Pめっき皮膜上に存在する状態が異なる。例えば、下地であるNi−Pめっき皮膜に対して、パラジウムが膜状に略均一な広がりをもつ状態やパラジウムがドット状に略均一に分布している状態(以下、これらの状態を「層状」という)、パラジウムが不均一に点在している状態、パラジウムが斑に存在する状態(斑状)が挙げられる。
【0022】
パラジウム処理方法としては、Ni−Pめっき皮膜上に、上述した量のパラジウムを存在させることができる方法であれば特に限定されず、例えば、Ni−Pめっき皮膜上にパラジウムを析出させる方法、具体的には、置換や還元による方法が挙げられる。パラジウム処理の条件は、例えば、温度を50〜70℃、処理時間を1〜5分とすることができる。
【0023】
例えば、還元型のパラジウム浴を用いてパラジウム処理を施した場合には、Ni−Pめっき皮膜に対してパラジウムが均一な状態で析出する。すなわち、Ni−Pめっき皮膜上のパラジウムが層状となる。また、置換型のパラジウム浴を用いてパラジウム処理を施した場合には、Ni−Pめっき皮膜に対してパラジウムが不均一な状態で析出する。すなわち、Ni−Pめっき皮膜上にパラジウムが不均一に点在したり、Ni−Pめっき皮膜上のパラジウムが斑状となる。
【0024】
ここで、パラジウムがNi−Pめっき皮膜上に均一に存在していると想定したときのパラジウムの層厚は、0.8nm(パラジウムの量:1×10−4mg/dm)〜1600nm(パラジウムの量:0.2mg/dm)とすることが好ましい。
【0025】
1−3.無電解銀めっき工程
無電解銀めっき工程では、パラジウム処理工程でパラジウム処理が施された被めっき物に対して、無電解銀めっきを施して銀めっき皮膜を形成する。無電解銀めっき工程では、置換銀めっきではなく無電解還元銀めっきを施すことが好ましい。このように、無電解還元銀めっきを施すことにより、置換銀めっきの場合とは異なり無電解銀めっきの膜厚を薄くしても反射率等の特性を十分に得ることができる。
【0026】
無電解銀めっき工程では、銀めっき皮膜の膜厚が0.01〜5μmとなるように、被めっき物に無電解銀めっきを施すことが好ましい。銀めっき皮膜の膜厚が0.01μm未満の場合には、膜厚が十分ではないため光の反射率が低下するおそれがある。また、銀めっき皮膜の膜厚が5μmを超える場合には、コストが高くなり、作業性が悪化してしまう。
【0027】
めっき液としては、例えば、銀濃度が0.1〜10g/L、pHが2〜12、還元剤の濃度が0.1〜20g/Lであるものを用いることができる。
【0028】
還元剤としては、例えば、ヒドラジン誘導体、ホルムアルデヒド化合物、ヒドロキシルアミン類、糖類、ロッセル塩、水素化ホウ素化合物、次亜リン酸塩、ジメチルアミンボラン(DMAB)、アスコルビン酸を用いることができる。
【0029】
無電解銀めっき工程におけるめっき条件は、例えば、上述した濃度の無電解銀めっき液を用い、めっき浴の温度を30〜50℃とし、めっき時間を10〜20分とすることができる。めっき時間が短すぎると、十分な膜厚の無電解銀めっきが施されず、めっき時間が長すぎると、コストが高くなり、作業性が悪化してしまう。なお、無電解銀めっき工程におけるめっき時間は、使用する還元剤や、目的とする銀めっきの膜厚に応じて変化させてもよい。
【0030】
以上説明したように、本実施の形態に係る無電解めっき方法では、被めっき物上に形成されたNi−Pめっき皮膜上に、パラジウム処理を施すパラジウム処理工程と、パラジウム処理が施された被めっき物に対して、無電解銀めっきを施す無電解銀めっき工程とを有する。すなわち、本実施の形態に係る無電解めっき方法では、Ni−Pめっき皮膜と銀めっき皮膜との間に、パラジウム処理によってパラジウムを存在させることにより、Ni−Pめっき皮膜の溶解を抑制し、Ni−Pめっき皮膜と銀めっき皮膜との密着性を向上させることができる。これにより、高温条件下での銀めっき皮膜の変色を防止するとともに、光の反射率を向上させることができる。
【0031】
また、本実施の形態に係る無電解めっき方法では、無電解プロセスを用いることにより、銀めっき皮膜の膜厚を容易に制御して、銀めっき皮膜の膜厚を容易に薄くすることができる。
【0032】
したがって、本実施の形態に係る無電解めっき方法では、銀めっき皮膜の膜厚が薄くても高い光の反射率を維持することができるため、電気めっきプロセスを用いた場合のように、光の反射率の性能を得る目的で銀めっき皮膜を厚くする必要がなく、コストを低減することができる。
【0033】
上述した本実施の形態に係る無電解めっき方法で製造された銀膜は、被めっき物上にNi−Pめっき皮膜が形成され、Ni−Pめっき皮膜上に1×10−4mg/dm以上のパラジウムが存在し、無電解銀めっきを施すことによりパラジウムが存在するNi−Pめっき皮膜上に銀めっき皮膜が形成されている。
【0034】
本実施の形態に係る無電解めっき方法で製造された銀膜は、Ni−Pめっき皮膜と銀めっき皮膜との密着性が良好であるため、高温条件下での銀めっき皮膜の変色を防止するとともに、光の反射率を向上させることができる。
【0035】
2.LED実装用基板
本実施の形態に係る無電解めっき方法で製造された銀膜は、青色LEDの励起波長近傍の400〜500nmの波長領域における反射率を向上させることができるため、例えば、LED実装用基板に好ましく適用することができる。LED実装用基板は、図示しないが、上述した本実施の形態に係る銀膜を反射面として有する。
【0036】
LED実装用基板の製造工程の一例として、例えば、被めっき物としてBGA(Ball grid array)基板を用いた場合には、まず、BGA基板に対し無電解Ni−Pめっきを施すことによりNi−Pめっき皮膜を形成する。次に、被めっき物上に形成されたNi−Pめっき皮膜上に、パラジウム処理を施すことにより、Ni−Pめっき皮膜上に、上述の如くパラジウムを存在させる。次に、パラジウム処理が施された被めっき物に対して無電解銀めっきを施すことにより、パラジウムが存在するNi−Pめっき皮膜上に銀めっき皮膜を形成する。
【0037】
このように本実施の形態に係る銀膜をLED実装用基板の反射部に適用する場合には、実際の使用において高温条件下に置かれたときに、上述の如く銀めっき皮膜の膜厚を薄くしても銀めっき皮膜の変色が少ないため、光の反射率の低下を防止することができる。
【0038】
3.他の実施形態
上述した無電解めっき方法では、周知の前処理を行うようにしてもよい。例えば、上述した無電解めっき方法では、Ni−Pめっき工程の前に、周知の前処理を行うようにしてもよい。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。なお、下記の実施例に本発明の範囲が限定されるものではない。
【0040】
【表1】

【0041】
(実施例1)
実施例1では、表1に示すように、被めっき物であるBGA基板(上村工業株式会社製)に対して、ACL−738(上村工業株式会社製)によるクリーナー処理(脱脂)後、100g/Lの過硫酸ナトリウム溶液(SPS)にてソフトエッチングした。続いて、10%硫酸溶液でエッチング残渣を除去し(酸洗)、3%硫酸溶液でプリディップ後、MNK−4(上村工業株式会社製)でPd触媒付与(キャタリスト)した。
【0042】
Ni−Pめっき工程において、上記前処理後のBGA基板に、無電解Ni−Pめっき液(ニムデンNPR−4 上村工業株式会社製)を用いた浴を用いて、80℃、25分間のめっき条件で、無電解Ni−Pめっきを施して、膜厚が4μmのNi−Pめっき皮膜を形成した。
【0043】
パラジウム処理工程では、置換型のパラジウム浴であるアクセマルタ MPD−22(上村工業株式会社製)を用い、BGA基板上に形成されたNi−Pめっき皮膜上に、55℃で2分間パラジウム処理を施すことにより、Ni−Pめっき皮膜上に、1000×10−4mg/dmのパラジウムを析出させた。
【0044】
無電解銀めっき工程では、パラジウム処理が施されたBGA基板に、40℃、15分間のめっき条件で無電解銀めっきを施して、膜厚が0.1μmである銀めっき皮膜を形成した。なお、各工程間では、被めっき物であるBGA基板を水洗した。
【0045】
(実施例2)
実施例2では、実施例1で得られたBGA基板に対して、熱処理を175℃で16時間施した。
【0046】
(実施例3)
実施例3では、Ni−Pめっき工程で、前処理後のBGA基板に、膜厚が1μmのNi−Pめっき皮膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0047】
(実施例4)
実施例4では、Ni−Pめっき工程で、前処理後のBGA基板に、膜厚が2μmのNi−Pめっき皮膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0048】
(実施例5)
実施例5では、Ni−Pめっき工程で、前処理後のBGA基板に、膜厚が5μmのNi−Pめっき皮膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0049】
(実施例6)
実施例6では、Ni−Pめっき工程で、前処理後のBGA基板に、膜厚が20μmのNi−Pめっき皮膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0050】
(実施例7)
実施例7では、Ni−Pめっき工程で、リン含量が1.5wt%の無電解Ni−Pめっき液を用いて、前処理後のBGA基板にNi−Pめっき皮膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0051】
(実施例8)
実施例8では、Ni−Pめっき工程で、リン含量が6wt%の無電解Ni−Pめっき液を用いて、前処理後のBGA基板にNi−Pめっき皮膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0052】
(実施例9)
実施例9では、Ni−Pめっき工程で、リン含量が9wt%の無電解Ni−Pめっき液を用いて、前処理後のBGA基板にNi−Pめっき皮膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0053】
(実施例10)
実施例10では、Ni−Pめっき工程で、リン含量が11wt%の無電解Ni−Pめっき液を用いて、前処理後のBGA基板にNi−Pめっき皮膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0054】
(実施例11)
実施例11では、パラジウム処理工程において、BGA基板上に形成されたNi−Pめっき皮膜上に1×10−4(0.0001)mg/dmのパラジウムを析出させたこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0055】
(実施例12)
実施例12では、パラジウム処理工程において、BGA基板上に形成されたNi−Pめっき皮膜上に10×10−4(0.001)mg/dmのパラジウムを析出させたこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0056】
(実施例13)
実施例13では、パラジウム処理工程において、BGA基板上に形成されたNi−Pめっき皮膜上に100×10−4(0.01)mg/dmのパラジウムを析出させたこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0057】
(実施例14)
実施例14では、パラジウム処理工程において、BGA基板上に形成されたNi−Pめっき皮膜上に500×10−4(0.05)mg/dmのパラジウムを析出させたこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0058】
(実施例15)
実施例15では、実施例1と同様にして行った。
【0059】
(実施例16)
実施例16では、パラジウム処理工程において、BGA基板上に形成されたNi−Pめっき皮膜上に5000×10−4(0.5)mg/dmのパラジウムを析出させたこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0060】
(実施例17)
実施例17では、パラジウム処理工程において、酸性で置換型のパラジウム浴であるアクセマルタ MNK−4(上村工業株式会社製)を用いて、Ni−Pめっき皮膜上に、3×10−4(0.0003)mg/dmのパラジウムを析出させたこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0061】
(実施例18)
実施例18では、パラジウム処理工程において、中性で置換型のパラジウム浴であるアクセマルタ MPD−22(上村工業株式会社製)を用いて、Ni−Pめっき皮膜上に、20×10−4(0.002)mg/dmのパラジウムを析出させたこと以外は、実施例1と同様にして行った。
(実施例19)
実施例19では、パラジウム処理工程において、中性で還元型のパラジウム浴であるアルタレア TPD−20(上村工業株式会社製)を用いて、Ni−Pめっき皮膜上に、100×10−4(0.01)mg/dmのパラジウムを析出させたこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0062】
(比較例1)
比較例1では、パラジウム処理工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0063】
(比較例2)
比較例2では、パラジウム処理工程を行なわず、無電解銀めっき工程の代わりに、光沢銀めっき液(Ag濃度:45g/L、アルカリ−シアン浴、光沢剤:アルグナS(上村工業株式会社製)を用いて、電気めっきにより膜厚が5μmの銀めっき皮膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0064】
(比較例3)
比較例3では、比較例1で得られたBGA基板に対して、熱処理を175℃で16時間施した。
【0065】
(比較例4)
比較例4では、パラジウム処理工程において、Ni−Pめっき皮膜上に検出下限未満のパラジウム、すなわち、パラジウム処理の時間が短すぎて濃度の測定が不可能な量のパラジウムを析出させたこと以外は、実施例1と同様にして行った。
(評価結果)
【0066】
【表2】

【0067】
表2において、「反射率」とは、熱処理前における各実施例及び比較例で得られたBGA基板における各波長(400nm、450nm又は500nm)の反射率(%)を示す。また、「b値」とは、黄色の度合いを表す値であり、その値が高いほど測定物の黄色が濃くなり、評価として悪いことを示す。さらに、「密着性」とは、熱処理前における目視確認によるNi−Pめっき皮膜と銀めっき皮膜との密着性の良否をいう。密着性が「○」とは、Ni−Pめっき皮膜と、銀めっき皮膜との密着性が良好であることを示し、密着性が「×」とは、Ni−Pめっき皮膜と、銀めっき皮膜との密着性が良好でないことを示す。
【0068】
実施例1では、Ni−Pめっき皮膜上にパラジウム処理を施しているため、反射率、b値及び密着性が、全て良好であった。
【0069】
比較例1では、Ni−Pめっき皮膜上にパラジウム処理を施していないため、実施例1と比較して光の反射率が良好ではなかった。また、比較例1では、実施例1よりもb値が高く、実施例1と比較してNi−Pめっき皮膜と銀めっき皮膜との密着性が良好ではなかった。
【0070】
比較例2では、パラジウム処理工程を行わずに、電気銀めっき皮膜の膜厚を5μmとした実施例1と比較してNi−Pめっき皮膜と銀めっき皮膜との密着性は良好であるが、また、実施例1と比較して波長が長くなるほど光の反射率が悪くなった。
【0071】
【表3】

【0072】
実施例2では、パラジウム処理工程で無電解Ni−Pめっきに対してパラジウム処理を施しているため、高温条件下での熱処理後において外観変色が観察されなかった。
【0073】
比較例3では、パラジウム処理工程でNi−Pめっき皮膜上に、パラジウム処理を施していないため、高温条件下での熱処理後において外観変色が観察された。
【0074】
【表4】

【0075】
実施例3〜実施例6の結果から、Ni−Pめっき皮膜膜厚を種々の厚さとしても、光の反射率及び密着性が良好であり、熱処理後において外観への影響がないことがわかる。
【0076】
【表5】

【0077】
実施例7〜実施例10の結果から、無電解Ni−Pめっき浴のリン含量が低濃度から高濃度の範囲において、光の反射率及び密着性が良好であり、熱処理後において外観への影響がないことがわかる。
【0078】
【表6】

【0079】
実施例11〜実施例16の結果から、パラジウムの量が1×10−4以上の範囲において、光の反射率及び密着性が良好であり、熱処理後において外観への影響がないことがわかる。
【0080】
一方、比較例4では、パラジウムの量が1×10−4mg/dm未満であるため、密着性が良好でなく、450nmでの光の反射率が89%未満と良好ではなかった。また、比較例4では、パラジウムの量が1×10−4mg/dm未満であるため、熱処理後において外観変色が観察された。
【0081】
【表7】

【0082】
実施例17〜実施例19の結果から、パラジウム処理に用いる液種にかかわらず、光の反射率及び密着性が良好であり、熱処理後において外観への影響がないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被めっき物上に形成されたNi−Pめっき皮膜上に、パラジウム処理を施すパラジウム処理工程と、
上記パラジウム処理が施された被めっき物に対して、無電解銀めっきを施す無電解銀めっき工程と
を有する無電解めっき方法。
【請求項2】
上記パラジウム処理工程では、上記パラジウム処理として、上記Ni−Pめっき皮膜上に、1×10−4mg/dm以上のパラジウムを存在させる請求項1記載の無電解めっき方法。
【請求項3】
上記Ni−Pめっき皮膜の膜厚が、0.1〜50μmである請求項1又は2記載の無電解めっき方法。
【請求項4】
被めっき物上にNi−Pめっき皮膜が形成され、該Ni−Pめっき皮膜上にパラジウムが存在し、無電解銀めっきを施すことにより該パラジウムが存在するNi−Pめっき皮膜上に銀めっき皮膜が形成されている銀膜を反射面として有するLED実装用基板。
【請求項5】
上記Ni−Pめっき皮膜上に、1×10−4mg/dm以上のパラジウムが存在する請求項4記載のLED実装用基板。
【請求項6】
上記Ni−Pめっき皮膜の膜厚が、0.1〜50μmである請求項4又は5記載のLED実装用基板。

【公開番号】特開2012−36426(P2012−36426A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175287(P2010−175287)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000189327)上村工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】