説明

焦点検出装置および撮像装置

【課題】光学系の焦点検出を適切に行なうことができる焦点検出装置を提供すること。
【解決手段】光学系による像を撮像し、撮像した像に対応する画像信号を出力する撮像用画素221と、瞳分割された一対の光束を受光する一対の焦点検出用画素列22a,22b,22cとを有する撮像部22と、前記一対の焦点検出用画素列からそれぞれ出力された第1データ列および第2データ列を、一次元状に相対的にシフトさせながら、前記第1データ列と前記第2データ列との間の相関量を演算し、該相関量の極値が得られるシフト量を検出することで、前記光学系の焦点状態を検出する位相差検出部21と、を備え、前記位相差検出部は、前記相関量の演算をシフト量の絶対値が最も小さなものから開始し、前記シフト量の絶対値を順に大きくしていきながら前記相関量の演算および前記相関量の極値の検出を逐次行い、前記相関量の極値が検出された場合には、前記相関量の極値が検出された時点で、前記相関量の演算を終了することを特徴とする焦点検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点検出装置および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、撮像素子に一対の焦点検出用画素列を備え、一対の焦点検出用画素列から出力される第1データ列と第2データ列とを相対的にシフトさせながら、第1データ列と第2データ列との間の相関量を演算し、相関量の極値が得られるシフト量に基づいて、デフォーカス量を算出する焦点検出装置が知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−90143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、所定のシフト範囲の全域について、第1データ列と第2データ列とを相対的にシフトさせながら相関量を演算し、演算した相関量に基づいて相関量の極値を算出し、算出した極値に対応するシフト量からデフォーカス量を算出するものであるため、デフォーカス量を算出するために要する時間が長くなってしまうという課題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、光学系の焦点検出を適切に行なうことができる焦点検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の解決手段によって上記課題を解決する。なお、以下においては、本発明の実施形態を示す図面に対応する符号を付して説明するが、この符号は本発明の理解を容易にするためだけのものであって発明を限定する趣旨ではない。
【0007】
[1]本発明に係る焦点検出装置は、光学系による像を撮像し、撮像した像に対応する画像信号を出力する撮像用画素(221)と、瞳分割された一対の光束を受光する一対の焦点検出用画素列(22a,22b,22c)とを有する撮像部(22)と、前記一対の焦点検出用画素列からそれぞれ出力された第1データ列および第2データ列を、一次元状に相対的にシフトさせながら、前記第1データ列と前記第2データ列との間の相関量を演算し、該相関量の極値が得られるシフト量を検出することで、前記光学系の焦点状態を検出する位相差検出部(21)と、を備え、前記位相差検出部は、前記相関量の演算をシフト量の絶対値が最も小さなものから開始し、前記シフト量の絶対値を順に大きくしていきながら前記相関量の演算および前記相関量の極値の検出を逐次行い、前記相関量の極値が検出された場合には、前記相関量の極値が検出された時点で、前記相関量の演算を終了することを特徴とする。
【0008】
[2]本発明の焦点検出装置において、前記第1データ列および前記第2データ列を相対的にシフトさせるシフト演算範囲を、前記光学系に入射する光束を制限する絞りに応じて決定する演算範囲決定部(21)をさらに備え、前記位相差検出部(21)が、前記演算範囲決定部により決定された前記シフト演算範囲において、前記相関量の演算および前記相関量の極値の検出を行うように構成することができる。
【0009】
[3]本発明の焦点検出装置において、前記演算範囲決定部(21)が、前記絞りによる絞り値が大きいほど、前記シフト演算範囲を小さい範囲とするように構成することができる。
【0010】
[4]本発明の焦点検出装置において、前記撮像用画素(221)により出力された前記画像信号に基づいて、前記光学系による像のコントラストに関する評価値を算出することで、前記光学系の焦点状態を検出するコントラスト検出部(21)をさらに備えるように構成することができる。
【0011】
[5]本発明に係る撮像装置は、上記焦点検出装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光学系の焦点検出を適切に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本実施形態に係るカメラを示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示す撮像素子の撮像面を示す正面図である。
【図3】図3は、図2のIII部を拡大して焦点検出画素222a,222bの配列を模式的に示す正面図である。
【図4】図4は、撮像画素221の一つを拡大して示す正面図である。
【図5】図5(A)は、焦点検出画素222aの一つを拡大して示す正面図、図5(B)は、焦点検出画素222bの一つを拡大して示す正面図である。
【図6】図6は、撮像画素221の一つを拡大して示す断面図である。
【図7】図7(A)は、焦点検出画素222aの一つを拡大して示す断面図、図7(B)は、焦点検出画素222bの一つを拡大して示す断面図である。
【図8】図8は、図3のVIII-VIII線に沿う断面図である。
【図9】図9は、本実施形態に係るカメラ1における位相差検出方式による像ずれ量の演算処理を示すフローチャートである。
【図10】図10(A)は、絞り値がF2.8である場合の射出瞳と焦点検出画素の測距瞳との関係の一例を示す図であり、図10(B)は、絞り値がF2.8である場合の第1データ列および第2データ列の信号強度の一例を示すグラフである。
【図11】図11(A)は、絞り値がF5.6である場合の射出瞳と焦点検出画素の測距瞳との関係の一例を示す図であり、図11(B)は、絞り値がF5.6である場合の第1データ列および第2データ列の信号強度の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係るデジタルカメラ1を示す要部構成図である。本実施形態のデジタルカメラ1(以下、単にカメラ1という。)は、カメラ本体2とレンズ鏡筒3から構成され、これらカメラ本体2とレンズ鏡筒3はマウント部4により着脱可能に結合されている。
【0016】
レンズ鏡筒3は、カメラ本体2に着脱可能な交換レンズである。図1に示すように、レンズ鏡筒3には、レンズ31,32,33、および絞り34を含む撮影光学系が内蔵されている。
【0017】
レンズ32は、フォーカスレンズであり、光軸L1方向に移動することで、撮影光学系の焦点距離を調節可能となっている。フォーカスレンズ32は、レンズ鏡筒3の光軸L1に沿って移動可能に設けられ、エンコーダ35によってその位置が検出されつつフォーカスレンズ駆動モータ36によってその位置が調節される。
【0018】
このフォーカスレンズ32の光軸L1に沿う移動機構の具体的構成は特に限定されない。一例を挙げれば、レンズ鏡筒3に固定された固定筒に回転可能に回転筒を挿入し、この回転筒の内周面にヘリコイド溝(螺旋溝)を形成するとともに、フォーカスレンズ32を固定するレンズ枠の端部をヘリコイド溝に嵌合させる。そして、フォーカスレンズ駆動モータ36によって回転筒を回転させることで、レンズ枠に固定されたフォーカスレンズ32が光軸L1に沿って直進移動することになる。
【0019】
上述したようにレンズ鏡筒3に対して回転筒を回転させることによりレンズ枠に固定されたフォーカスレンズ32は光軸L1方向に直進移動するが、その駆動源としてのフォーカスレンズ駆動モータ36がレンズ鏡筒3に設けられている。フォーカスレンズ駆動モータ36と回転筒とは、たとえば複数の歯車からなる変速機で連結され、フォーカスレンズ駆動モータ36の駆動軸を何れか一方向へ回転駆動すると所定のギヤ比で回転筒に伝達され、そして、回転筒が何れか一方向へ回転することで、レンズ枠に固定されたフォーカスレンズ32が光軸L1の何れかの方向へ直進移動することになる。なお、フォーカスレンズ駆動モータ36の駆動軸が逆方向に回転駆動すると、変速機を構成する複数の歯車も逆方向に回転し、フォーカスレンズ32は光軸L1の逆方向へ直進移動することになる。
【0020】
フォーカスレンズ32の位置はエンコーダ35によって検出される。既述したとおり、フォーカスレンズ32の光軸L1方向の位置は回転筒の回転角に相関するので、たとえばレンズ鏡筒3に対する回転筒の相対的な回転角を検出すれば求めることができる。
【0021】
本実施形態のエンコーダ35としては、回転筒の回転駆動に連結された回転円板の回転をフォトインタラプタなどの光センサで検出して、回転数に応じたパルス信号を出力するものや、固定筒と回転筒の何れか一方に設けられたフレキシブルプリント配線板の表面のエンコーダパターンに、何れか他方に設けられたブラシ接点を接触させ、回転筒の移動量(回転方向でも光軸方向の何れでもよい)に応じた接触位置の変化を検出回路で検出するものなどを用いることができる。
【0022】
フォーカスレンズ32は、上述した回転筒の回転によってカメラボディ側の端部(至近端ともいう)から被写体側の端部(無限端ともいう)までの間を光軸L1方向に移動することができる。ちなみに、エンコーダ35で検出されたフォーカスレンズ32の現在位置情報は、レンズ制御部37を介して後述するカメラ制御部21へ送出され、フォーカスレンズ駆動モータ36は、この情報に基づいて演算されたフォーカスレンズ32の駆動位置が、カメラ制御部21からレンズ制御部37を介して送出されることにより駆動する。
【0023】
絞り34は、上記撮影光学系を通過して撮像素子22に至る光束の光量を制限するとともにボケ量を調整するために、光軸L1を中心にした開口径が調節可能に構成されている。絞り34による開口径の調節は、たとえば自動露出モードにおいて演算された適切な開口径が、カメラ制御部21からレンズ制御部37を介して送出されることにより行われる。また、カメラ本体2に設けられた操作部28によるマニュアル操作により、設定された開口径がカメラ制御部21からレンズ制御部37に入力される。絞り34の開口径は図示しない絞り開口センサにより検出され、レンズ制御部37で現在の開口径が認識される。
【0024】
レンズ制御部37は、カメラ制御部21とマウント部4に設けられた電気信号接点部41により電気的に接続され、カメラ制御部21からの指令に基づき、フォーカスレンズ32の駆動、絞り34による開口径の調節などを行なうとともに、フォーカスレンズ32の位置、絞り34の開口径などのレンズ情報をカメラ制御部21に送信する。
【0025】
一方、カメラ本体2には、上記撮影光学系からの光束L1を受光する撮像素子22が、撮影光学系の予定焦点面に設けられ、その前面にシャッター23が設けられている。撮像素子22はCCDやCMOSなどのデバイスから構成され、受光した光信号を電気信号に変換してカメラ制御部21に送出する。カメラ制御部21に送出された撮影画像情報は、逐次、液晶駆動回路25に送出されて観察光学系の電子ビューファインダ(EVF)26に表示されるとともに、操作部28に備えられたレリーズボタン(不図示)が全押しされた場合には、その撮影画像情報が、記録媒体であるメモリ24に記録される。メモリ24は着脱可能なカード型メモリや内蔵型メモリの何れをも用いることができる。なお、撮像素子22の撮像面の前方には、赤外光をカットするための赤外線カットフィルタ、および画像の折り返しノイズを防止するための光学的ローパスフィルタが配置されている。撮像素子22の構造の詳細は後述する。
【0026】
カメラ本体2には、撮像素子22で撮像される像を観察するための観察光学系が設けられている。本実施形態の観察光学系は、液晶表示素子からなる電子ビューファインダ(EVF)26と、これを駆動する液晶駆動回路25と、接眼レンズ27とを備えている。液晶駆動回路25は、撮像素子22で撮像され、カメラ制御部21へ送出された撮影画像情報を読み込み、これに基づいて電子ビューファインダ26を駆動する。これにより、ユーザは、接眼レンズ27を通して現在の撮影画像を観察することができる。なお、光軸L2による上記観察光学系に代えて、または、これに加えて、液晶ディスプレイをカメラ本体2の背面等に設け、この液晶ディスプレイに撮影画像を表示させることもできる。
【0027】
カメラ本体2にはカメラ制御部21が設けられている。カメラ制御部21は、マウント部4に設けられた電気信号接点部41によりレンズ制御部37と電気的に接続され、このレンズ制御部37からレンズ情報を受信するとともに、レンズ制御部37へデフォーカス量や絞り開口径などの情報を送信する。また、カメラ制御部21は、上述したように撮像素子22から画素出力を読み出すとともに、読み出した画素出力について、必要に応じて所定の情報処理を施すことにより画像情報を生成し、生成した画像情報を、電子ビューファインダ26の液晶駆動回路25やメモリ24に出力する。また、カメラ制御部21は、撮像素子22からの画像情報の補正やレンズ鏡筒3の焦点調節状態、絞り調節状態などを検出するなど、カメラ1全体の制御を司る。
【0028】
また、カメラ制御部21は、上記に加えて、撮像素子22から読み出した画素データに基づき、位相検出方式による撮影光学系の焦点状態の検出、およびコントラスト検出方式による撮影光学系の焦点状態の検出を行う。なお、具体的な焦点状態の検出方法については、後述する。
【0029】
操作部28は、シャッターレリーズボタンやユーザがカメラ1の各種動作モードを設定するための入力スイッチであり、オートフォーカスモード/マニュアルフォーカスモードの切換や、オートフォーカスモードの中でも、ワンショットモード/コンティニュアスモードの切換が行えるようになっている。ここで、ワンショットモードとは、一度調節したフォーカスレンズ32の位置を固定し、そのフォーカスレンズ位置で撮影するモードであるのに対し、コンティニュアスモードとは、フォーカスレンズ32の位置を固定することなく被写体に応じてフォーカスレンズ位置を調節するモードである。この操作部28により設定された各種モードはカメラ制御部21へ送出され、当該カメラ制御部21によりカメラ1全体の動作が制御される。また、シャッターレリーズボタンは、ボタンの半押しでONとなる第1スイッチSW1と、ボタンの全押しでONとなる第2スイッチSW2とを含む。
【0030】
次に、本実施形態に係る撮像素子22について説明する。
【0031】
図2は、撮像素子22の撮像面を示す正面図、図3は、図2のIII部を拡大して焦点検出画素222a,222bの配列を模式的に示す正面図である。
【0032】
本実施形態の撮像素子22は、図3に示すように、複数の撮像画素221が、撮像面の平面上に二次元的に配列され、緑色の波長領域を透過するカラーフィルタを有する緑画素Gと、赤色の波長領域を透過するカラーフィルタを有する赤画素Rと、青色の波長領域を透過するカラーフィルタを有する青画素Bがいわゆるベイヤー配列(Bayer Arrangement)されたものである。すなわち、隣接する4つの画素群223(稠密正方格子配列)において一方の対角線上に2つの緑画素が配列され、他方の対角線上に赤画素と青画素が1つずつ配列されている。このベイヤー配列された画素群223を単位として、当該画素群223を撮像素子22の撮像面に二次元状に繰り返し配列することで撮像素子22が構成されている。
【0033】
なお、単位画素群223の配列は、図示する稠密正方格子以外にも、たとえば稠密六方格子配列にすることもできる。また、カラーフィルタの構成や配列はこれに限定されることはなく、補色フィルタ(緑:G、イエロー:Ye、マゼンタ:Mg,シアン:Cy)の配列を採用することもできる。
【0034】
図4は、撮像画素221の一つを拡大して示す正面図、図6は断面図である。一つの撮像画素221は、マイクロレンズ2211と、光電変換部2212と、図示しないカラーフィルタから構成され、図6の断面図に示すように、撮像素子22の半導体回路基板2213の表面に光電変換部2212が造り込まれ、その表面にマイクロレンズ2211が形成されている。光電変換部2212は、マイクロレンズ2211により撮影光学系の射出瞳(たとえばF1.0)を通過する撮像光束を受光する形状とされ、撮像光束を受光する。
【0035】
また、撮像素子22の撮像面の中心、ならびに中心から左右対称位置の3箇所には、上述した撮像画素221に代えて焦点検出画素222a,222bが配列された焦点検出画素列22a,22b,22cが設けられている。そして、図3に示すように、一つの焦点検出画素列は、複数の焦点検出画素222aおよび222bが、互いに隣接して交互に、横一列(22a,22c,22c)に配列されて構成されている。本実施形態においては、焦点検出画素222aおよび222bは、ベイヤー配列された撮像画素221の緑画素Gと青画素Bとの位置にギャップを設けることなく密に配列されている。
【0036】
なお、図2に示す焦点検出画素列22a〜22cの位置は図示する位置にのみ限定されず、何れか一箇所、二箇所にすることもでき、また、四箇所以上の位置に配置することもできる。また、実際の焦点検出に際しては、複数配置された焦点検出画素列22a〜22cの中から、撮影者が操作部28を手動操作することにより所望の焦点検出画素列を、焦点検出位置として選択することもできる。
【0037】
図5(A)は、焦点検出画素222aの一つを拡大して示す正面図、図7(A)は、焦点検出画素222aの断面図である。また、図5(B)は、焦点検出画素222bの一つを拡大して示す正面図、図7(B)は、焦点検出画素222bの断面図である。焦点検出画素222aは、図5(A)に示すように、マイクロレンズ2221aと、半円形状の光電変換部2222aとから構成され、図7(A)の断面図に示すように、撮像素子22の半導体回路基板2213の表面に光電変換部2222aが造り込まれ、その表面にマイクロレンズ2221aが形成されている。また、焦点検出画素222bは、図5(B)に示すように、マイクロレンズ2221bと、光電変換部2222bとから構成され、図7(B)の断面図に示すように、撮像素子22の半導体回路基板2213の表面に光電変換部2222bが造り込まれ、その表面にマイクロレンズ2221bが形成されている。そして、これら焦点検出画素222aおよび222bは、図3に示すように、互いに隣接して交互に、横一列に配列されることにより、図2に示す焦点検出画素列22a〜22cを構成する。
【0038】
なお、焦点検出画素222a,222bの光電変換部2222a,2222bは、マイクロレンズ2221a,2221bにより撮影光学系の射出瞳の所定の領域(たとえばF2.8)を通過する光束を受光するような形状とされる。また、焦点検出画素222a,222bにはカラーフィルタは設けられておらず、その分光特性は、光電変換を行うフォトダイオードの分光特性と、図示しない赤外カットフィルタの分光特性を総合したものとなっている。ただし、撮像画素221と同じカラーフィルタのうちの一つ、たとえば緑フィルタを備えるように構成することもできる。
【0039】
また、図5(A)、図5(B)に示す焦点検出画素222a,222bの光電変換部2222a,2222bは半円形状としたが、光電変換部2222a,2222bの形状はこれに限定されず、他の形状、たとえば、楕円形状、矩形状、多角形状とすることもできる。
【0040】
ここで、上述した焦点検出画素222a,222bの画素出力に基づいて撮影光学系の焦点状態を検出する、いわゆる位相差検出方式について説明する。
【0041】
図8は、図3のVIII-VIII線に沿う断面図であり、撮影光軸L1近傍に配置され、互いに隣接する焦点検出画素222a−1,222b−1,222a−2,222b−2が、射出瞳350の測距瞳351,352から照射される光束AB1−1,AB2−1,AB1−2,AB2−2をそれぞれ受光していることを示している。なお、図8においては、複数の焦点検出画素222a,222bのうち、撮影光軸L1近傍に位置するもののみを例示して示したが、図8に示す焦点検出画素以外のその他の焦点検出画素についても、同様に、一対の測距瞳351,352から照射される光束をそれぞれ受光するように構成されている。
【0042】
ここで、射出瞳350とは、撮影光学系の予定焦点面に配置された焦点検出画素222a,222bのマイクロレンズ2221a,2221bの前方の距離Dの位置に設定された像である。距離Dは、マイクロレンズの曲率、屈折率、マイクロレンズと光電変換部との距離などに応じて一義的に決まる値であって、この距離Dを測距瞳距離と称する。また、測距瞳351,352とは、焦点検出画素222a,222bのマイクロレンズ2221a,2221bにより、それぞれ投影された光電変換部2222a,2222bの像をいう。
【0043】
なお、図8において焦点検出画素222a−1,222b−1,222a−2,222b−2の配列方向は一対の測距瞳351,352の並び方向と一致している。
【0044】
また、図8に示すように、焦点検出画素222a−1,222b−1,222a−2,222b−2のマイクロレンズ2221a−1,2221b−1,2221a−2,2221b−2は、撮影光学系の予定焦点面近傍に配置されている。そして、マイクロレンズ2221a−1,2221b−1,2221a−2,2221b−2の背後に配置された各光電変換部2222a−1,2222b−1,2222a−2,2222b−2の形状が、各マイクロレンズ2221a−1,2221b−1,2221a−2,2221b−2から測距距離Dだけ離れた射出瞳350上に投影され、その投影形状は測距瞳351,352を形成する。
【0045】
すなわち、測距距離Dにある射出瞳350上で、各焦点検出画素の光電変換部の投影形状(測距瞳351,352)が一致するように、各焦点検出画素におけるマイクロレンズと光電変換部の相対的位置関係が定められ、それにより各焦点検出画素における光電変換部の投影方向が決定されている。
【0046】
図8に示すように、焦点検出画素222a−1の光電変換部2222a−1は、測距瞳351を通過し、マイクロレンズ2221a−1に向う光束AB1−1によりマイクロレンズ2221a−1上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。同様に、焦点検出画素222a−2の光電変換部2222a−2は測距瞳351を通過し、マイクロレンズ2221a−2に向う光束AB1−2によりマイクロレンズ2221a−2上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。
【0047】
また、焦点検出画素222b−1の光電変換部2222b−1は測距瞳352を通過し、マイクロレンズ2221b−1に向う光束AB2−1によりマイクロレンズ2221b−1上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。同様に、焦点検出画素222b−2の光電変換部2222b−2は測距瞳352を通過し、マイクロレンズ2221b−2に向う光束AB2−2によりマイクロレンズ2221b−2上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。
【0048】
そして、上述した2種類の焦点検出画素222a,222bを、図3に示すように直線状に複数配置し、各焦点検出画素222a,222bの光電変換部2222a,2222bの出力を、測距瞳351と測距瞳352とのそれぞれに対応した出力グループにまとめることにより、測距瞳351と測距瞳352とのそれぞれを通過する焦点検出光束が焦点検出画素列上に形成する一対の像の強度分布に関するデータが得られる。そして、この強度分布データに対し、相関演算処理または位相差検出処理などの像ずれ検出演算処理を施すことにより、いわゆる位相差検出方式による像ずれ量を検出することができる。
【0049】
そして、得られた像ずれ量に一対の測距瞳の重心間隔に応じた変換演算を施すことにより、予定焦点面に対する現在の焦点面(予定焦点面上のマイクロレンズアレイの位置に対応した焦点検出位置における焦点面をいう。)の偏差、すなわちデフォーカス量を求めることができる。
【0050】
なお、これら位相差検出方式による像ずれ量の演算と、これに基づくデフォーカス量の演算は、カメラ制御部21により実行される。
【0051】
また、カメラ制御部21は、撮像素子22の撮像画素221の出力を読み出し、読み出した画素出力に基づき、焦点評価値の演算を行う。この焦点評価値は、たとえば撮像素子22の撮像画素221からの画像出力の高周波成分を、高周波透過フィルタを用いて抽出し、これを積算することで求めることができる。また、遮断周波数が異なる2つの高周波透過フィルタを用いて高周波成分を抽出し、それぞれを積算することでも求めることができる。
【0052】
そして、カメラ制御部21は、レンズ制御部37に制御信号を送出してフォーカスレンズ33を所定のサンプリング間隔(距離)で駆動させ、それぞれの位置における焦点評価値を求め、該焦点評価値が最大となるフォーカスレンズ33の位置を合焦位置として求める、コントラスト検出方式による焦点検出を実行する。なお、この合焦位置は、たとえば、フォーカスレンズ33を駆動させながら焦点評価値を算出した場合に、焦点評価値が、2回上昇した後、さらに、2回下降して推移した場合に、これらの焦点評価値を用いて、内挿法などの演算を行うことで求めることができる。
【0053】
次いで、本実施形態に係るカメラ1における位相差検出方式による像ずれ量の演算処理について、図9に示すフローチャートを参照して、さらに詳細に説明する。なお、以下に説明する処理は、たとえば、カメラ1の電源がオンとされることにより開始する。
【0054】
まず、ステップS101では、カメラ制御部21により、レンズ制御部37を介して、絞り34の絞り値の取得が行われる。
【0055】
次いで、ステップS102では、カメラ制御部21により、ステップS101で取得した絞り値に基づいて、シフト演算を行なうためのシフト演算範囲を決定するための処理が行なわれる。
【0056】
ここで、図10、図11を参照して、絞り値と、一対のデータ列のずれ量との関係について説明する。図10(A)は、絞り値がF2.8である場合の射出瞳350と焦点検出画素の測距瞳351,352との関係の一例を示す図であり、図11(A)は、絞り値がF5.6である場合の射出瞳35と焦点検出画素の測距瞳351,352との関係の一例を示す図である。なお、図10(A)および図11(A)はともに、デフォーカス量がたとえば同じく1mmである場面(フォーカスレンズ32のレンズ位置が合焦位置まで像面移動である場面を例示している。また、図10(B)および図11(B)において、横軸は、焦点検出用画素列22a,22b,22cの各画素の画素位置を示している。
【0057】
図10(A)に示す例においては、絞り値がF2.8であり、図11(A)に示す例と比較して、射出瞳350が大きいため、測距瞳351,352の大部分が射出瞳350に含まれている。そのため、図10(A)に示す例では、射出瞳350に含まれる測距瞳351,352の受光領域も大きく、測距瞳351の受光領域の重心位置351a(測距瞳351の受光領域の重心点の位置)と、測距瞳352の受光領域の重心位置352a(測距瞳352の受光領域の重心点の位置)との間の重心間距離Lも長くなる。その一方で、図11(A)に示す例においては、絞り値がF5.6であり、図10(A)に示す例と比較して、射出瞳350が小さいため、射出瞳350に含まれる測距瞳351,352の受光領域も小さい。そのため、図11(A)に示す例では、測距瞳351の受光領域の重心位置351aと測距瞳352の受光領域の重心位置352aとの間の重心間距離Lも短くなる。
【0058】
また、図10(B)は、絞り値がF2.8である場合における、一対の焦点検出用画素列22a,22b,22cを構成する各焦点検出画素222a,222bから出力された第1データ列および第2データ列の信号強度の一例を示すグラフである。図10(B)に示す例においては、各焦点検出画素222aからの出力に基づくデータ列を第1データ列、各焦点検出画素222bからの出力に基づくデータ列を第2データ列として示している。
【0059】
同様に、図11(B)は、絞り値がF5.6である場合における、一対の焦点検出用画素列22a,22b,22cを構成する各焦点検出画素222a,222bから出力された第1データ列および第2データ列の信号強度の一例を示すグラフであり、図11(B)においても、各焦点検出画素222aからの出力に基づくデータ列を第1データ列、各焦点検出画素222bからの出力に基づくデータ列を第2データ列として示している。なお、図10(A)および図11(A)と同様に、図10(B)および図11(B)もともに、デフォーカス量がたとえば同じく1mmである場面を例示している。
【0060】
図10(B)に示すように、絞り値がF2.8の場合では、図11(B)に示すように、絞り値がF5.6である場合と比べて、測距瞳351,352の受光領域の重心位置351a,352a間の重心間距離Lが長いため、第1データ列と第2データ列との間のずれ量Wは大きくなる。一方、図11(B)に示すように、絞り値がF5.6である場合では、図10(B)に示すように絞り値がF2.8である場合と比べて、測距瞳351,352の受光領域の重心位置351a,352a間の重心間距離Lが短いため、第1データ列と第2データ列との間のずれ量Wは小さくなる。このように、デフォーカス量が同じ場合でも、絞り値に応じて、第1データ列と第2データ列との間のずれ量が異なることとなる。
【0061】
そして、この場合においては、図10(B)に示す例においては、第1データ列と、第2データ列とをシフトさせ、第1データ列と、第2データ列とがほぼ重なる状態とするためには、図11(B)に示す例と比較して、第1データ列と、第2データ列とをシフトさせるためのシフト量が比較的大きくなる。すなわち、デフォーカス量が同じ場合でも、絞り値が小さい場合(開放側である場合)には、絞り値が大きい場合(絞り込み側である場合)と比較して、第1データ列と、第2データ列とをシフトさせるためのシフト量を比較的大きくする必要がある。
【0062】
そこで、ステップS102では、カメラ制御部21は、下記式(1)に示すように、第1データ列と第2データ列とをシフトさせるシフト範囲を、絞り値に基づいて、シフト演算範囲Snaとして決定する。
Sna=So×(k1/k2) ・・・(1)
なお、上記式(1)において、Soは、シフト演算範囲を決定するための基準となる基準シフト範囲であり、たとえば、絞り値がF5.6、デフォーカス量が1mmである場合に、第1データ列と第2データ列とを相対的にシフトさせることで、第1データ列と第2データ列との間の相関量の極小値を得ることができるシフト範囲とすることができる。あるいは、Soは、たとえば、所定の絞り値において、デフォーカス量が5mmである場合に、第1データ列と第2データ列との相関量の極値を得ることができるシフト範囲とすることもできる。また、上記式(1)において、k1は、相関量の極小値が得られるシフト量をデフォーカス量に変換するための変換係数(変換係数については後述する。)のうち、基準となるシフト範囲Soの絞り値に対応する変換係数であり、たとえば、基準となるシフト範囲Soが、絞り値がF2.8、デフォーカス量が1mmである場合に、相関量の極値を得ることができるシフト範囲として設定されている場合には、k1は、絞り値F2.8に対応する変換係数となる。さらに、上記式(1)において、k2は、相関量の極値が得られるシフト量をデフォーカス量に変換するための変換係数のうち、ステップS101で取得された絞り値に対応する変換係数である。
【0063】
たとえば、基準シフト範囲Soが、絞り値がF5.6、デフォーカス量が1mmである場合に相関量の極値を得ることができるシフト範囲であり、ステップS101で取得された絞り値がF2.8である場合において、絞り値F5.6における変換係数k1が、たとえば絞り値F2.8における変換係数k2の2倍の値となる場合には、上記式(1)に基づいて、シフト演算範囲Snaを、絞り値F5.6におけるシフト範囲Soの2倍の大きさの範囲として決定することができる。なお、Sna,Soはともに整数であり、本実施系形態ではシフト演算範囲Snaを求める際に、So×(k1/k2)の小数部分を切り捨て、あるいは四捨五入等することにより、Snaを整数として算出する。
【0064】
なお、シフト演算範囲を決定する方法は、上述した方法に特に限定されず、たとえば、絞り値に応じた変換係数と絞り値とはほぼ線形の関係を有するため、シフト量をデフォーカス量に変換するための変換係数に代えて、絞り値をそのまま用いて、シフト演算範囲を決定してもよい。具体的には、下記式(2)に基づいて、シフト演算範囲Snaを決定してもよい。
Sna=So×(f1/f2) ・・・(2)
なお、上記式(2)において、f1は、基準シフト範囲Soにおける絞り値であり、f2は、ステップS101で取得された絞り値である。
【0065】
次いで、ステップS103に進み、カメラ制御部21により、撮像素子22の焦点検出用画素列22a,22b,22cを構成する各焦点検出画素222a,222bから一対の像に対応した一対の像データ、すなわち、第1データ列および第2データ列の読み出しが行なわれる。
【0066】
次いで、ステップS104において、カメラ制御部21により、シフト演算に用いる変数Nを、N=1とする処理が行なわれた後、ステップS105に進み、カメラ制御部21により、シフト量=0にて、相関量演算が行われる。
【0067】
具体的には、まず、カメラ制御部21は、各焦点検出画素列22a,22b,22cから読み出した第1データ列a,a,・・・,aと、第2データ列b,b,・・・bとを用いて、下記式(3)にしたがい、シフト量=0における相関量演算を実行し、シフト量=0における相関量C(0)を算出する。そして、算出された相関量C(0)は、カメラ制御部21に備えられたRAMに記憶される。
C(h)=Σ|a(n+h)−b(n)| …(3)
なお、上記式(3)において、Σ演算はnについての累積演算(相和演算)を示す。また、hはシフト量に対応する変数であり、ステップS105においては、h=0、すなわちシフト量=0とした場合における相関量の演算を行う。なお、上記式(3)の演算結果においては、第1データ列と第2データ列との間の相関が高いほど、相関量C(h)は小さくなる。
【0068】
次いで、ステップS106においては、カメラ制御部21により、シフト量=+Nにて、相関量演算が行われる。すなわち、上記式(3)において、h=+Nとして、シフト量=+Nにおける相関量C(+N)の算出が行なわれる。たとえば、N=+1である場合には、上記式(3)にしたがい、シフト量=+1における相関量演算を実行し、シフト量=+1における相関量C(+1)を算出する。そして、算出された相関量C(+N)は、カメラ制御部21に備えられたRAMに記憶される。
【0069】
そして、ステップS106においては、カメラ制御部21により算出された相関量C(h)を用いて、相関量の極小値の検出を行う。なお、相関量の極小値の検出は、下記式(4)〜(7)に示す3点内挿の手法を用いて、連続的な相関量に対する極小値C(x)が得られるシフト量xを求めることにより行なわれる。ここで、下記式に示すC(hj)は、上記式(3)により算出された相関量C(h)のうち最も小さい値である。
D={C(hj−1)−C(hj+1)}/2 …(4)
C(x)= C(hj)−|D| …(5)
x=hj+D/SLOP …(6)
SLOP=MAX{C(hj+1)−C(hj),C(hj−1)−C(hj)} …(7)
なお、本実施形態において、たとえば、最も小さい相関量である相関量C(hj)が得られている場合でも、相関量C(hj+1)、C(hj−1)が算出されていない場合(たとえば、最も小さい相関量が、C(+1)である場合に、C(+2)が算出されていない場合)には、相関量の極小値の検出を行うことができないため、相関量の極小値の検出については実行しない。
【0070】
次いで、ステップS107においては、ステップS106において、相関量の極小値が検出できたか否かの判定が行なわれる。相関量の極小値が検出できた場合には、ステップS112に進み、一方、相関量の極小値が検出できなかった場合には、ステップS108に進む。
【0071】
ステップS108では、カメラ制御部21により、シフト量=−Nにて、相関量演算が行われる。すなわち、上記式(3)において、h=−Nとして、シフト量=−Nにおける相関量C(−N)の算出が行なわれる。たとえば、N=−1である場合には、上記式(3)にしたがい、シフト量=−1における相関量演算を実行し、シフト量=−1における相関量C(−1)を算出する。そして、算出された相関量C(−N)は、カメラ制御部21に備えられたRAMに記憶される。
【0072】
そして、ステップS108においては、上述したステップS106と同様に、カメラ制御部21により算出された相関量C(h)を用いて、上記式(4)〜(7)に示す3点内挿の手法を用いて、相関量の極小値の検出を行う。なお、ステップS108においても、たとえば、最も小さい相関量である相関量C(hj)が得られている場合でも、相関量C(hj+1)、C(hj−1)が算出されていない場合には、相関量の極小値の検出を行うことができないため、相関量の極小値の検出については実行しない。
【0073】
次いで、ステップS109においては、ステップS108において、相関量の極小値が検出できたか否かの判定が行なわれる。相関量の極小値が検出できた場合には、ステップS112に進み、一方、相関量の極小値が検出できなかった場合には、ステップS110に進む。たとえば、相関量C(−1)、C(0)、C(+1)が算出されており、これらの相関量のうちC(0)である場合に、上記式(4)〜(7)にしたがって、極小値C(x)が得られた場合には、ステップS112に進む。
【0074】
ステップS110では、ステップS102で決定したシフト演算範囲Snaについて、相関量演算が終了したか否かの判定が行なわれる。シフト演算範囲Snaについて、相関演算が終了していないと判定された場合には、ステップS111に進み、N=N+1とする処理が実行され、ステップS106に戻り、再度、相関量演算が実行される。すなわち、たとえば、シフト演算範囲Sna=−10〜+10に設定されている場合に、相関量演算が終了している範囲がシフト量=−1〜+1である場合には、ステップS111において、N=2(N=1+1)とし、ステップS106に戻る。そして、ステップS106において、シフト量=+2における相関量C(+2)の演算が行われ、相関量の極小値C(x)が検出できない場合には、さらに、シフト量=−2における相関量C(−2)の演算が実行される。このように本実施形態では、相関量の極小値C(x)が検出されるまで、シフト量を0,+1,−1,+2,−2,+3,−3,・・・と絶対値の大きなシフト量に変更しながら、相関演算を行う。
【0075】
そして、相関演算の結果、ステップS106またはステップS108において、相関量の極小値C(x)が検出された場合には、ステップS107またはステップS109から、ステップS112に進み、ステップS112において、デフォーカス量の算出が行なわれる。具体的には、ステップS112では、相関量の極小値C(x)が検出されたため、カメラ制御部21は、相関量演算を終了し、検出された相関量の極小値C(x)が得られるシフト量xに基づいて、下記式(8)に従い、デフォーカス量dfを算出する。
df=x・k・p …(8)
なお、上記式(8)において、kは、相関量の極小値C(x)が得られるシフト量xをデフォーカス量に変換するための変換係数である。上述したように、絞り値に応じて、相関量の極値が得られるシフト量は異なるため、変換係数は、絞り値に応じて予め設定されている。また、pは焦点検出画素列22a〜22cを構成する焦点検出画素222a,222bのピッチ幅によって定まる定数である。
【0076】
一方、ステップS102で決定したシフト演算範囲Snaについて、相関量演算を行なった結果、相関量の極小値C(x)が検出できなかった場合には、ステップS113に進み、デフォーカス量が検出不能であると判定する。
【0077】
そして、ステップS112において、デフォーカス量を算出した場合、およびステップS113において、デフォーカス量が検出不能であると判定された場合のいずれも、ステップS101に戻り、再度、ステップS101〜S113の処理を実行し、本実施形態では、このような処理を繰り返し実行することにより、デフォーカス量の算出を繰り返し実行することが可能となる。そして、本実施形態によれば、たとえば、撮影者により操作部28に備えられたレリーズボタンの半押しが行なわれた場合に、このようにして算出されたデフォーカス量に基づいてフォーカスレンズ32を駆動することにより、光学系の焦点調節を適切に行うことができる。
【0078】
本実施形態においては、位相差検出方式により、デフォーカス量の算出を行なう際における、相関量の演算をシフト量=0から開始し、シフト量の絶対値を順に大きくしていきながら相関量の演算および相関量の極小値の検出を逐次行い、相関量の極小値が検出された場合には、相関量の極小値が検出された時点で、相関量の演算を終了する。そして、相関量の極小値が得られるシフト量に基づいて、デフォーカス量を算出する。そのため、本実施形態によれば、デフォーカス量を算出するために要する時間の短縮化が可能となる。特に、従来例のように、所定のシフト範囲全域について、第1データ列と第2データ列とを相対的にシフトさせながら相関量の演算を行い、次いで、所定のシフト範囲全域について求めた相関量に基づいて、デフォーカス量を算出した場合には、デフォーカス量を算出するために要する時間が長くなってしまうという問題がある。これに対して、本実施形態では、相関量の極小値が検出された場合には、その時点で、相関量演算を打ち切ってしまうため、これにより、デフォーカス量を算出するために要する時間を短縮することができる。
【0079】
特に、たとえば、コンティニュアスモードなどの、撮影者によりレリーズボタンの半押しが行なわれている間中、フォーカスレンズ32を合焦位置に移動させ続けるモードにおいては、一度、フォーカスレンズ32を合焦位置に移動させた後においては、光学系の焦点状態が変化しない場合が多く、このような場合には、シフト量の絶対値が小さな範囲、具体的には、シフト量=0近傍に、相関量の極小値が存在する場合が多くなる。そして、このような場合において、本実施形態のように、相関量の演算をシフト量=0から開始し、シフト量の絶対値を順に大きくしていきながら相関量の演算および相関量の極小値の検出を逐次行った場合には、比較的短時間で、相関量の極小値を検出することが可能となり、これにより、デフォーカス量を算出するために要する時間を短縮することができる。また、これに加えて、本実施形態によれば、相関量演算に要する演算負荷を低減することもできる。
【0080】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0081】
たとえば、上述した実施形態では、位相差検出方式により焦点検出を行う構成を例示して説明したが、このような構成に加えて、たとえば、位相差検出方式により焦点検出を行い、位相差検出方式では焦点状態を検出できない場合に、フォーカスレンズ32を駆動させながら、コントラスト検出方式により焦点検出を行う構成としてもよい。あるいは、位相差検出方式により焦点検出を行い、位相差検出方式では焦点状態を検出できない場合に、フォーカスレンズ32を駆動させながら、位相差検出方式による焦点検出と、コントラスト検出方式により焦点検出とを同時に行う構成としてもよい。
【0082】
なお、上述した実施形態のカメラ1は特に限定されず、例えば、デジタルビデオカメラ、一眼レフデジタルカメラ、レンズ一体型のデジタルカメラ、携帯電話用のカメラなどのその他の光学機器に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…デジタルカメラ
2…カメラ本体
21…カメラ制御部
22…撮像素子
221…撮像画素
222a,222b…焦点検出画素
24…メモリ
28…操作部
3…レンズ鏡筒
32…フォーカスレンズ
36…フォーカスレンズ駆動モータ
37…レンズ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系による像を撮像し、撮像した像に対応する画像信号を出力する撮像用画素と、瞳分割された一対の光束を受光する一対の焦点検出用画素列とを有する撮像部と、
前記一対の焦点検出用画素列からそれぞれ出力された第1データ列および第2データ列を、一次元状に相対的にシフトさせながら、前記第1データ列と前記第2データ列との間の相関量を演算し、該相関量の極値が得られるシフト量を検出することで、前記光学系の焦点状態を検出する位相差検出部と、を備え、
前記位相差検出部は、前記相関量の演算をシフト量の絶対値が最も小さなものから開始し、前記シフト量の絶対値を順に大きくしていきながら前記相関量の演算および前記相関量の極値の検出を逐次行い、前記相関量の極値が検出された場合には、前記相関量の極値が検出された時点で、前記相関量の演算を終了することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の焦点検出装置において、
前記第1データ列および前記第2データ列を相対的にシフトさせるシフト演算範囲を、前記光学系に入射する光束を制限する絞りに応じて決定する演算範囲決定部をさらに備え、
前記位相差検出部は、前記演算範囲決定部により決定された前記シフト演算範囲において、前記相関量の演算および前記相関量の極値の検出を行うことを特徴とする焦点検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の焦点検出装置であって、
前記演算範囲決定部は、前記絞りによる絞り値が大きいほど、前記シフト演算範囲を小さい範囲にすることを特徴とする焦点検出装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の焦点検出装置であって、
前記撮像用画素により出力された前記画像信号に基づいて、前記光学系による像のコントラストに関する評価値を算出することで、前記光学系の焦点状態を検出するコントラスト検出部をさらに備えることを特徴とする焦点検出装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の焦点検出装置を備える撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−54261(P2013−54261A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193544(P2011−193544)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】