説明

焦点検出装置及び焦点検出方法

【課題】 1つ以上のAFフレームで焦点調節するもので、焦点調節の不安定さを低減させる焦点検出部及び焦点検出方法を得られるようにする。
【解決手段】 被写体空間からの光束を受光する複数の画素からなる光電変換素子203と、前記光電変換素子203の出力信号からAFフレームの焦点検出範囲を切り出し、撮影レンズの合焦状態を検出する焦点検出手段112と、前記光電変換素子203上で蓄積制御を行う範囲を選択できる蓄積制御範囲選択手段112とを有し、前記蓄積制御範囲選択手段112により選択される蓄積制御範囲に対応付けられた焦点検出範囲で検出される合焦状態を優先的に選択して焦点調節するAFフレーム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動で焦点調節を行う機能を有する焦点検出装置及び焦点検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、カメラなどの焦点検出部として、いわゆる位相差検出方式の焦点検出部が知られている(特許文献1)。この方式では、撮影レンズの異なる射出瞳領域を通過した被写体からの光束を、一対のラインセンサ上に結像させ、被写体像を光電変換して得られた一対の被写体像の相対位置の変位量を求める。そして、被写体のデフォーカス量を検出して、これに基づいて撮影レンズの駆動を行うことにより撮影レンズの焦点調節ができる。
【0003】
また、特許文献1には、複数の測距点でデフォーカスを求めるために、焦点検出用センサ内に測距点にそれぞれ対応する複数のラインセンサを設け、焦点検出することが記載されている。
【0004】
一方、別の複数の測距点でデフォーカス量を検出する方法として、一対のラインセンサを複数の領域に分割して、領域ごとにデフォーカス量を検出する焦点検出部が知られている。例えば、特許文献2では、ラインセンサを複数の領域に分割して、それぞれのデフォーカス量を検出する。また、ラインセンサを1つに連結して焦点検出範囲を拡げることで、大きなデフォーカス量でも検出できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−054242号公報
【特許文献2】特開2006−220684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された焦点検出部では、焦点検出用センサの大きさが限られており、測距点の数には制限がある。
【0007】
また、特許文献2に開示された焦点検出部は、分割されたそれぞれの領域のデフォーカス量を検出するために、フレームメモリや蓄積信号を非破壊で各フレームメモリへ転送できる回路構成が必要であった。
【0008】
そこで、本発明は、構成を複雑にすることなく、複数のAFフレームにおける焦点調節を安定して行うことを可能とする焦点検出装置及び焦点検出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の技術的特徴としては、焦点状態検出領域の蓄積を開始させるための蓄積開始ステップと、前記焦点状態検出領域の一部のモニタ領域の蓄積状態をモニタ出力させるモニタステップと、前記モニタ出力に基づいて前記焦点状態検出領域の蓄積を終了させるか否かを判定し、終了させると判定された場合に前記焦点状態検出領域の蓄積を終了させる蓄積終了ステップと、前記焦点状態検出領域のうち前記モニタ領域を含む第1の領域の出力信号を、前記モニタ領域を含まない第2の領域の出力信号より優先させて焦点調節に用いる焦点調節ステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、構成を複雑にすることなく複数のAFフレームでデフォーカス量を検出でき、また、焦点調節の動作に安定感を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】カメラのブロック図である。
【図2】焦点検出部108にて合焦状態を検出する原理を説明する図である。
【図3】一対のラインセンサ列203aと203bの配置を説明する図である。
【図4】光電変換素子203の構成及び制御を説明する図である。
【図5】ラインセンサ列203aと203bの像信号をダーク画素301の出力VDを基準として示したものである。
【図6】カメラ動作を説明するフローチャートである。
【図7】一対のラインセンサ列203aと203bとAFフレームの位置関係を説明する図である。
【図8】一対のラインセンサ列203aと203b上の蓄積制御範囲およびそれぞれに対応するAFフレーム及び焦点検出範囲を説明する図である。
【図9】一対のラインセンサ列の出力信号の例を説明する図である。
【図10】焦点検出制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態の一例は、以下の実施の形態に示す通りである。
【0013】
図1は撮像装置の一例であるカメラのブロック図である。図中、101は撮影レンズ、107は撮影レンズ101を通過した被写体光を受光し光電変換し画像信号データを出力するCCDやCMOSセンサ等の撮像素子である。撮像素子107より出力された撮像信号はアナログ信号処理回路109に入力される。そして、A/D変換器110によりアナログ信号からデジタル信号に変換される。
【0014】
102は、半透過部を有する主ミラーであり、図1では撮影光束中に挿入された状態(ミラーダウン)を示している。主ミラー102は、撮影時には撮影光束外へ退避し、焦点検出時に撮影光路内に斜設される。また、主ミラー102は、撮影光路内に斜設された状態で、撮影レンズ101を通過した光束の一部をピント板103、ペンタプリズム104及び接眼レンズ105から構成されるファインダ撮影レンズに導く。
【0015】
106は、主ミラー102の動作に同期して主ミラー102に対して折り畳み、展開が可能なサブミラーである。主ミラー102の半透過部を通過した光束の一部は、サブミラー106によって下方へ反射され、位相差方式の焦点検出部108に入射し、撮影レンズ101の合焦状態が検出される。
【0016】
112は、カメラ全体の制御を行うCPU、記憶装置であるRAMなどから構成されるシステムコントローラであり、後述する各部の動作を適宜制御する。
【0017】
113は、システムコントローラ112に接続され、撮影レンズ101と通信を行う通信回路と、焦点調節を行うためにレンズ駆動を行うレンズ駆動機構と、その駆動回路を備えたレンズ駆動部である。114は、システムコントローラ112に接続され、主ミラー102を撮影光束外へ駆動するためのミラー駆動部である。115は、システムコントローラ112に接続され、焦点検出部108を制御するためのセンサ制御部である。116は、システムコントローラ112に接続され、撮像素子107を駆動するための撮像素子駆動装置である。
【0018】
111は、システムコントローラ112に接続され、A/D変換器110によりデジタル信号に変換された信号に対してシェーディング補正やガンマ補正などの画像処理を施すデジタル信号処理回路である。
【0019】
117は、デジタル信号処理回路111に接続され、撮像素子107で撮像された複数フレーム分の画像信号データを記憶することができるフレームメモリである。A/D変換された信号は一旦このバッファメモリ117に記憶される。デジタル信号処理回路111ではバッファメモリ117に記憶された画像信号データを読み込んで上述した各処理を行い、処理後の画像信号データは再びバッファメモリ117に記憶される。
【0020】
118は、メモリカード等の記録媒体119に記録する記録・再生信号処理回路である。記録・再生信号処理回路118は、デジタル信号処理回路111に接続される。デジタル信号処理回路111で各種処理が施された画像信号データは、一旦バッファメモリ117に記憶された後に画像信号データを記録媒体119に記録する際には、画像信号データの圧縮、例えば、JPEG方式でデータ圧縮が行われる。一方、画像信号データを記録媒体119から読み込む際、記録・再生信号処理回路118は、画像信号データの伸長処理を行う。記録・再生信号処理回路118には記録媒体119とデータ通信を行うためのインタフェースも含まれている。
【0021】
121は、撮像された画像を表示するための表示部であり、記録媒体119に記録されている画像信号データを再生表示する際にも用いられる。表示部121に画像を表示する場合には、バッファメモリ117に記憶された画像信号データを読み出し、D/A変換器120によりデジタル画像信号データをアナログ映像信号に変換する。そして、そのアナログ映像信号を用いて表示部121に画像を表示する。
【0022】
撮像素子107で撮像された画像を表示部121で表示する形態には2つの形態がある。一つは、レリーズ操作が行われないときの表示形態であり、撮像素子107で繰り返し撮像される画像を逐次更新表示するライブビューと呼ばれる表示形態である。もう一つは、カメラのレリーズ操作後に、撮像素子107で撮像された画像を所定時間表示するフリーズ画と呼ばれる表示形態である。
【0023】
122は、システムコントローラ112に接続され、カメラの姿勢を検知する姿勢検知回路である。カメラの姿勢検知には、物体の角度や角速度を計測するジャイロスコープを用いても良い。
【0024】
123は、システムコントローラ112に接続され、カメラの電源をオン・オフするための電源スイッチ、レリーズボタン、人物撮影モードなどの撮影モードを選択するための設定ボタンなど、カメラを操作するための操作部材が設けられた操作部である。これらのスイッチやボタンを操作すると、その操作に応じた信号がシステムコントローラ112に入力される。なお、レリーズボタンには、撮影者により操作されるレリーズボタンの第1ストローク操作(半押し操作)によりONするSW1と、レリーズボタンの第2ストローク操作(全押し操作)によりONするSW2とが接続されている。また、焦点調節モードとして、任意選択モード、領域拡大モード、自動選択モードがあり、撮影者の操作により適宜設定できるものとする。
【0025】
図2は、焦点検出部108を用いてシステムコントローラ112が合焦状態を検出する原理を説明するための光路図であり、構成要素を撮影レンズ101の光軸上に展開して示したものである。ただし、主ミラー102及びサブミラー106は省略している。なお、図2において、図1と同じ構成要素には同じ参照番号を付している。
【0026】
図2の焦点検出部108内において、206は撮影レンズ101の予定焦点面、即ちフィルム面と共役な面付近に配置された視野マスク、201は同じく予定焦点面の付近に配置されたフィールドレンズを示している。また、202は2つのレンズ202aと202bからなる2次結像系、203は2次結像系202の2つのレンズ202aと202bに対応してその後方に配置された2つのラインセンサ列203aと203bを含む光電変換素子を示している。そして、204は2次結像系202の2つのレンズ202aと202bに対応して配置された2つの開口部204aと204bを有する絞り、205は分割された2つの領域205aと205bを含む撮影レンズ101の射出瞳を示している。
【0027】
このような構成において、例えば撮影レンズ101を図中左方に繰り出して、撮像素子107より左方に光束が結像すると、光電変換素子203上の一対の像は矢印Aの方向に変位する。この一対の像の相対的なずれ量を光電変換素子203で検出することで、撮影レンズ101の合焦状態を検出し、さらに撮影レンズ101の焦点調節駆動を行うことが可能である。なお、撮影レンズ101を図中右方に繰り込んだ場合、光電変換素子203上の一対の像は、図中矢印Aの方向とは反対方向に変位する。
【0028】
図3は、一対のラインセンサ列203aと203bを備えた光電変換素子203の配置を示したものである。ラインセンサ列は焦点状態を検出できる焦点状態検出領域であり、AFフレームに対応するラインセンサ列の一部の領域を焦点検出範囲という。そして、光電変換素子203の一対のラインセンサ列203aと203bにおける複数の焦点検出範囲より出力される信号からそれぞれのAFフレームに対応する像ずれ量を検出する。言い換えると、1組の一対のラインセンサ列に対して複数のAFフレームが対応付けられている。
【0029】
図4は、光電変換素子203の構成及び制御を説明するための図である。
【0030】
ラインセンサ列203aと203bに対して共通な遮光されたダーク画素301の出力(VD)と、ラインセンサ列203aと203bに共通な最大値検出回路302の出力(最大値を示す画素の出力(VP))との差が作動アンプ303により検出される。これに基づいて、蓄積制御範囲における信号レベルが所定レベル(VR)に到達するまでラインセンサ列における信号の蓄積を行い、到達時点で蓄積動作の終了を制御する。そして、蓄積動作が終了すると蓄積容量への読み出し信号となるΦRが蓄積制御部304からラインセンサ列203aと203bに送られる。このように、光電変換素子203の信号の蓄積状態をモニタ出力させて、所定レベルに達したら蓄積動作を終了させ、信号を読み出すことにより、適正な蓄積制御が行える。
【0031】
ここで最大値VPとダーク出力VDとの差を取るのはダーク出力VDを基準とし、所定レベルVRに最大値VPが到達するまで蓄積することにより、焦点検出の位相差検出処理において、十分精度を出すレベルにするためである。この最大値VP以上に蓄積時間を増加すれば、出力信号が飽和して適切な焦点検出が行えなくなるので、読み出し信号となるΦRをラインセンサ列203aと203bにフィードバックする。ここで、ラインセンサでの蓄積動作の終了はライン全体が一度に制御されるものとする。
【0032】
また、蓄積制御範囲とは、作動アンプ303により検出・出力された出力信号が、所定レベル(VR)に到達するまで光電変換素子203における蓄積を行うよう制御する際に、監視対象となる光電変換素子203の範囲(モニタ領域)を示している。図8ではグレーにぬられている。言い換えると、ラインセンサ列203aと203bはそれぞれに、一部分の出力信号(モニタ出力)に基づいてラインセンサ列全体の信号の蓄積終了及び蓄積容量への読み出しが制御される。
【0033】
図5は、ラインセンサ列203aと203bの像信号をダーク画素301の出力VDを基準として示したもので、ラインセンサ列203aと203bのそれぞれの像信号であるA像とB像に対して共通の最大値出力VPが設定レベルVRとなっている。焦点検出は、ラインセンサ列203aと203bでそれぞれラインセンサ画素のいずれかが設定レベルVRを含む所定間隔内に収まったときの像信号を用いて行う。
【0034】
ここで、上記のラインセンサ列203aと203bからそれぞれ出力されるA像とB像から焦点ずれ量を検出する信号処理方法について説明する。
【0035】
焦点検出用画素を構成する画素数をLとし、画素番号i(i=0,・・・,L)としたときのA像信号をA(i)、B像信号をB(i)とするとき、
【0036】
【数1】


・・・ (1)
【0037】
あるいは、
【0038】
【数2】


・・・ (2)
【0039】
なる式を、k1≦k≦k2について演算する。なお、Mは(M=L−|k|)で表される演算画素数であり、kは相対変移量と呼ばれ、k1,k2は通常−L/2、L/2にとらえることが多い。また、max{a,b}なる演算子はa,bから大なるものを抽出することを表し、min{a,b}なる演算子はa,bから小なるものを抽出することを表す。したがって、前記式(1)、(2)におけるX1(k)、X2(k)、Y1(k)、Y2(k)は広義の相関量と考えることができる。更に前記式(1)、(2)を詳細に見ると、X1(k),Y1(k)は現実には(k−1)の変位における相関量を、X2(k),Y2(k)は(k+1)の変位における相関量を、それぞれ表している。それゆえ、X1(k),X2(k)の差である評価量X(k)は相対変位量kにおける被写体像信号A(i),B(i)の相関量の変化量を意味する。
【0040】
X1(k),X2(k)なる相関量は上記定義より2像の相関が最も高いときに最小となる。よって、その変化量であるX(k)は相関が最も高いのときに「0」で、かつ傾きは負となるはずである。ところが、X(k)は離散データであるから、実際には、
X(kp)≧0,X(kp+1)<0 ・・・ (3)
かつ、X(kp)−(kp+1)が最大なる相対変位の区間[kp,kp+1]に相関量のピークが存在すると考えて、
PR=kp+X(kp)/{X(kp)−X(kp+1)} ・・・ (4)
の補間演算を行うことにより、画素単位以下の焦点ずれ量PRを検出することができる。
【0041】
一方、Y1(k),Y2(k)なる相関量は上記定義より2像の相関が最も高いとき、X1(k),X2(k)とは逆に最大となる。よって、その変化量であるY(k)は相関が最も高いのときに「0」で、かつ傾きは正となるはずである。Y(k)もX(k)と同様に
Y(kp)≦0,Y(kp+1)>0 ・・・ (5)
でかつY(kp)−Y(kp+1)が最大のとき
PR=kp+|Y(kp)/{Y(kp)−Y(kp+1)}| ・・・ (6)
の補間演算を行うことにより、画素単位以下の焦点ずれ量PRを検出することができる。
【0042】
式4、あるいは、式6で求めた焦点ずれ量PRより、被写体像面の予定結像面に対するデフォーカス量DEFを下記式7で求めることができる。
DEF=K・PR ・・・ (7)
式7において、Kは一対の測距瞳を通過する光束の重心の開き角の大きさによって決まる変換係数である。
【0043】
本実施形態におけるカメラの動作を図6を用いて説明する。
【0044】
本実施形態のカメラは、1組の一対のラインセンサ列に対して複数のAFフレームが対応付けられており、それぞれのAFフレームで上述のデフォーカス量を求めるもので、AFの動作に安定感を得られよう構成されている。
【0045】
まず、ステップ101では、システムコントローラ112が操作部の一つであるSW1が押されたかどうかを判断する。SW1が押されていなければ、SW1が押下されるまで処理を繰り返す。一方、SW1が押されていればステップ102へ進む。
【0046】
ステップ102では、焦点検出制御を行う。焦点検出制御の詳細については後述する。
【0047】
ステップ103では、AFフレーム選択を行う。AFフレーム選択の詳細については後述する。
【0048】
ステップ104では、ステップ103で選択した1つの合焦状態が合焦がどうかを判断する。合焦していなければ、ステップ105へ進む。一方、合焦していれば、ステップ106へ進む。
【0049】
ステップ105では、システムコントローラ112がステップ103で検出した合焦状態であるデフォーカス量をレンズの駆動量であるパルス数に変換し、レンズ駆動部113を介して撮影レンズ101を駆動する。
【0050】
ステップ106では、システムコントローラ112が操作部の1つであるSW2が押されているかどうかを判断する。SW2が押されていなければ、ステップ106を繰り返す。一方、SW2が押されていればステップ107へ進む。
【0051】
ステップ107では、システムコントローラ112がミラー駆動部114を介して、主ミラー102を撮影光束外へ駆動させ、撮像素子駆動装置116を介して撮像素子107を駆動させて画像信号データを出力させる。そして、さらに各画像処理をした後、画像信号データを記録媒体119に記録させる。
【0052】
次に、図3、図4にて説明したラインセンサ列203aと203bの蓄積制御の詳細を、図7〜図9を用いて説明する。
【0053】
操作部123におけるモードの設定において、AFフレームを撮影者が自由に選択する任意選択モードが選択されている場合には、任意の1点に対応する蓄積制御範囲を対象として蓄積制御が実行される。そして、図9のような光電変換素子全体からの出力信号を得るとともに選択されたAFフレームに対応する信号出力に基づきデフォーカス量が算出され、焦点調節が行われる。図6に照らし合わせると、ステップ102の焦点検出制御においては、予め撮影者によって設定された任意のAFフレームに対応する蓄積制御範囲における蓄積制御、及び焦点検出制御を行うこととなる。そして、ステップ103は省略し、ステップ104にて予め撮影者によって設定された任意のAFフレームの合焦状態が合焦がどうかを判断する。
【0054】
図7は光電変換素子203の一対のラインセンサ列203aと203bを視野マスク206上(1次結像面上)に逆投影した図であり、ラインセンサ列203aと203bとAFフレームの位置関係を説明する図である。ラインセンサ列の出力信号からそれぞれ3つの範囲を切り出すことにより、被写体空間で3つの異なる範囲に対する撮影レンズの合焦状態(デフォーカス量DEF)を検出することができる。
【0055】
また、図8は一対のラインセンサ列203積制御範囲及びそれぞれに対応するAFフレーム、焦点検出範囲を示している。
【0056】
AFフレーム401に対して、図8(a)の蓄積制御範囲A及び焦点検出範囲Aが対応付けられている。したがって、AFフレーム401でピントを合わせたいときには、ラインセンサ列の蓄積制御範囲Aを選択し、蓄積制御範囲Aより得られる出力信号が所定レベルに到達したらラインセンサ列全体(つまり、焦点状態検出領域全体)の蓄積の終了及び読み出しを行う。そして焦点検出範囲Aの出力信号に基づいて合焦状態(デフォーカス量DEF)を検出し、それに基づいて撮影レンズ101を移動させて焦点調節を行う。
【0057】
また、AFフレーム402に対して、図8(b)の蓄積制御範囲B及び焦点検出範囲Bが対応付けられている。また、AFフレーム403に対して、図8(c)の蓄積制御範囲C及び焦点検出範囲Cが対応付けられている。
【0058】
AFフレーム402、403についても同様に前述の対応付けられた蓄積制御範囲、及び、焦点検出範囲B、Cを選択して合焦状態(デフォーカス量DEF)を検出する。
【0059】
一方、操作部123におけるモード設定において、領域拡大モードが選択されている場合には、下記のようなラインセンサ列203aと203bの蓄積制御が行われる。ここで、領域拡大モードとは、撮影者により選択されたAFフレームとその周りのAFフレームの中から信頼度の高いAFフレームを選択して焦点調節をする焦点調節モードである。なお、複数のAFフレームから自動的に信頼度の高いAFフレームを選択して焦点調節をする自動選択モードが選択されている場合も同様である。
【0060】
複数のAFフレームで焦点検出をする領域拡大モード、又は、自動選択モードのときには、光電変換素子上のラインセンサ列203aと203bの蓄積制御範囲の選択によっては焦点検出結果が不安定になる恐れがある。これは、ラインセンサ列内で部分読み出しができない構成になっているためでる。例えば、明るい被写体の像信号に基づいて蓄積制御が行われる場合には暗い被写体の像信号の振幅が出なくなったり、明るい被写体の像信号が蓄積制御範囲外となることで電荷が飽和しやすくなったりして、被写体像の再現性が低下することによるものである。
【0061】
具体的に、撮影シーンごとの光電変換素子203上のラインセンサ列の出力信号の例を図9に示すような出力信号A、B、Cとして以下に説明する。
【0062】
図9は、AFフレーム401に明るい被写体が存在し、AFフレーム402に主被写体が存在し、AFフレーム403には被写体が存在していないことを表わしている。なお、AFフレーム402の主被写体はAFフレーム401の明るい被写体よりも輝度が暗く、AFフレーム403の領域はAFフレーム402の主被写体の輝度よりも暗いものとする。
【0063】
まず、図9のラインセンサ列の出力信号Aは、図8(a)の蓄積制御範囲Aを選択したときの出力信号である。出力信号Aは、AFフレーム401の明るい被写体の像信号で蓄積制御を行ったものであるため、AFフレーム402の主被写体の像信号の振幅が出ていない。このため、AFフレーム402の合焦状態(デフォーカス量DEF)を検出できない。また、図9のラインセンサ列の出力信号Bは、図8(b)の蓄積制御範囲Bを選択したときの出力信号である。出力信号Bは、AFフレーム401の明るい被写体の像信号が飽和しているが、AFフレーム402の被写体の像信号の振幅が出ている。このため、AFフレーム402の合焦状態(デフォーカス量DEF)を検出できる。さらに、図9のラインセンサ列の出力信号Cは、図8(c)の蓄積制御範囲Cを選択したときの出力信号である。出力信号Cは、AFフレームCが他のAFフレームの被写体輝度よりも暗いため、AFフレーム401の明るい被写体、及び、AFフレーム402の主被写体の像信号が飽和している。出力信号Bに比べ出力信号CのAFフレーム402の被写体の像信号は、飽和しているために被写体像の再現性が低下し、合焦状態(デフォーカス量DEF)を検出できないか、または、検出できたとしてもピントが大きくずれることになる。
【0064】
上述のように、蓄積制御範囲の設定によっては、主要AFフレームがAFフレーム402だった場合、合焦状態(デフォーカス量DEF)を検出できないか、または、検出できたとしてもピントが大きくずれるという問題が生じる。
【0065】
このような問題を防止するために、本実施形態ではAFフレームの選択の際に優先順位を設ける。図10を用いて図6のステップ102の焦点検出制御(前述の複数のAFフレームに対応する焦点検出範囲にてそれぞれ焦点検出をし、検出結果に応じてAFフレームを選択する場合)について説明する。なお、上記説明では図7ように1つのラインセンサ列から出力信号から3つの焦点検出範囲を切り出して、被写体空間で3つの異なる領域に対する撮影レンズの合焦状態を検出することを想定している。
【0066】
ステップ201では、システムコントローラ112がセンサ制御部115を介して焦点検出部108を駆動させるための電源の設定、蓄積制御を行う光電変換素子203の蓄積設定、光電変換素子上の蓄積制御範囲の選択、及び、最長蓄積時間の設定を行う。そして、蓄積開始を指示すると同時にタイマーを起動させる。
【0067】
以降の説明では、光電変換素子上のラインセンサ列の蓄積制御範囲の選択は、図8(b)の蓄積制御範囲Bを選択した例をとりあげる。これは例えば、上述の領域拡大モードの場合にAFフレームBが撮影者に選択されているときを想定している。もしくは、上述の自動選択モードの場合に中央優先のためAFフレームBを重視して蓄積制御をすることを想定している。これは、撮影者がよく選択するであろうAFフレームが図8のように3つであれば中央だと考えられるためである。また、AFフレームが2つであれば、撮影者がよく選択するAFフレームは外側だろうと予測されるので、外側のAFフレームを重視して蓄積制御をするように構成してもよい。
【0068】
また、例えば、領域拡大モードにおいて撮影者がAFフレームAが選択されている場合には、光電変換素子上の蓄積制御範囲の選択は、図8(a)の蓄積制御範囲Aで固定としてもよい。
【0069】
ステップ202では、蓄積開始からの蓄積時間とステップ201で設定した最長蓄積時間とを比較する。蓄積時間が最長蓄積時間よりも長ければ焦点検出制御を終了する。一方、短ければステップ203へ進む。
【0070】
ステップ203では、割り込み信号が発生したかどうかを判定する。割り込み信号が発生していなければステップ203を繰り返す。割り込み信号は、ステップ201で蓄積設定を行った光電変換素子の蓄積が終了したときに焦点検出部108からセンサ制御部115を介してシステムコントローラに通知される。具体的には、蓄積設定を行った蓄積制御範囲Bにおいて、予め決められた信号値に達したらラインセンサ列の蓄積動作を終了させると共に、割り込み信号を発生させる。
【0071】
一方、割り込み信号が発生すればステップ204へ進む。
【0072】
ステップ204では、ラインセンサ列の蓄積制御が終了するとセンサ制御部115内に存在する不図示の内蔵メモリに記憶される蓄積終了情報をシステムコントローラ112が読み出し、どの光電変換素子の蓄積制御が終了したかを処理する。
【0073】
ステップ205では、ステップ201で蓄積設定を行った全てのラインセンサ列から出力信号を読み出したかどうかを判定する。蓄積設定を行った全てのラインセンサ列から出力信号を読み出していれば焦点検出制御を終了する。一方、蓄積設定を行った全てのラインセンサ列から出力信号を読み出していなければステップ206へ進む。
【0074】
ステップ206では、システムコントローラ112がセンサ制御部115を介してラインセンサ列から出力信号を読み出す。
【0075】
ステップ207では、焦点検出を行う。焦点検出の詳細については前述した焦点ずれ量を検出する信号処理方法を適用する。
【0076】
次に、図6のステップ103のAFフレーム選択について説明する。
【0077】
AFフレーム選択とは、1つ以上のAFフレームで測距する場合、最終的に1点のAFフレームでピントを合わせるため、1つ以上のAFフレームの中から1つのAFフレームを選択する処理のことである。AFフレームの選択としては、検出した合焦状態の信頼性が高いものの中から最近点を選択する方法がある。
【0078】
このAFフレーム選択に対してさらに選択した蓄積制御範囲に応じて選択するAFフレームの優先度を変更する。具体的には下記の通りである。
【0079】
図10のステップ201において、光電変換素子203上のラインセンサ列の蓄積制御範囲の選択を図8(b)の蓄積制御範囲Bとしたとする。このとき、ラインセンサ列の出力信号から図8に示す焦点検出範囲A、B、Cから検出した合焦状態のうち焦点検出範囲Bから検出した合焦状態を優先して選択する。
【0080】
同様に、ステップ201において、光電変換素子203上のラインセンサ列の蓄積制御範囲を図8(a)の蓄積制御範囲Aを選択すれば焦点検出範囲Aから検出した合焦状態を優先して選択する。また、光電変換素子203上のラインセンサ列の蓄積制御範囲を図8(c)の蓄積制御範囲Cを選択すれば焦点検出範囲Cから検出した合焦状態を優先して選択する。
【0081】
これまでの説明では、光電変換素子203のラインセンサ列の蓄積制御範囲を固定としたが、検出した合焦状態に応じて可変にしても良い。つまり、今回の測距で選択した蓄積制御範囲に対応付けられた焦点検出範囲から検出される合焦状態の信頼性が低ければ、次回の焦点調節動作では、異なる蓄積制御範囲に切り換えてもよい。これは複数回の焦点調節動作が必要になるが、いずれかの焦点調節動作で被写体像の再現性が高いラインセンサ列の出力信号が得られる。
【0082】
また、蓄積制御範囲外に対応付けられた焦点検出範囲の出力信号でも飽和していなければ蓄積制御範囲に対応付けられた焦点検出範囲で検出される合焦状態の選択を優先させず同等にAFフレーム選択を行っても良い。
【0083】
また、AFフレーム401には蓄積制御範囲Aと焦点検出範囲Aを、AFフレーム402には蓄積制御範囲Bと焦点検出範囲Bを、AFフレーム403には蓄積制御範囲Cと焦点検出範囲Cを対応付けて説明したが、これに限らない。つまり、AFフレームに対応する蓄積制御範囲と焦点検出範囲は完全に一致していなくてもよい。
【0084】
以上説明したように、本実施形態では、光電変換素子上のラインセンサ列の出力信号から複数のAFフレームの焦点検出範囲を切り出して被写体空間で異なる範囲に対する撮影レンズの合焦状態を検出する。光電変換素子上のラインセンサ列の蓄積制御範囲に対応付けられた焦点検出範囲で検出される合焦状態を優先的に選択するので、蓄積制御範囲外に対応付けられた焦点検出範囲で検出される合焦状態を選択して大きくピントがずれることを低減できる。したがって、焦点調節動作の安定感を得られる。
【符号の説明】
【0085】
101 撮影レンズ
102 主ミラー
106 サブミラー
112 システムコントローラ
113 レンズ駆動部
123 操作部
203 光電変換素子
401〜403 AFフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦点状態検出領域の蓄積を開始させるための蓄積開始手段と、
前記焦点状態検出領域の一部のモニタ領域の蓄積状態をモニタ出力させるモニタ手段と、
前記モニタ出力に基づいて前記焦点状態検出領域の蓄積を終了させるか否かを判定し、終了させると判定された場合に前記焦点状態検出領域の蓄積を終了させる蓄積終了手段と、
前記焦点状態検出領域のうち前記モニタ領域を含む第1の領域の出力信号を、前記モニタ領域を含まない第2の領域の出力信号より優先させて焦点調節に用いる焦点調節手段とを有することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項2】
前記第1の領域及び前記第2の領域は、それぞれAFフレームに対応付けられた領域であることを特徴とする請求項1に記載の焦点検出装置。
【請求項3】
前記焦点調節手段は、前記第2の領域の出力信号が飽和していなければ、前記第1の領域を優先させる動作を行わないことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の焦点検出装置。
【請求項4】
焦点状態検出領域の蓄積を開始させるための蓄積開始ステップと、
前記焦点状態検出領域の一部のモニタ領域の蓄積状態をモニタ出力させるモニタステップと、
前記モニタ出力に基づいて前記焦点状態検出領域の蓄積を終了させるか否かを判定し、終了させると判定された場合に前記焦点状態検出領域の蓄積を終了させる蓄積終了ステップと、
前記焦点状態検出領域のうち前記モニタ領域を含む第1の領域の出力信号を、前記モニタ領域を含まない第2の領域の出力信号より優先させて焦点調節に用いる焦点調節ステップとを有することを特徴とする焦点検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−48265(P2011−48265A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198412(P2009−198412)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】